説明

プロテインキナーゼCのペプチドインヒビター

【課題】PKC V5アイソザイム特異的ペプチドを提供すること。
【解決手段】配列およびこの配列を含む組成物は、それぞれ由来する、PKCアイソザイムに関連した疾患状態を処置するために有用である。処置方法、薬学的処方物およびこのペプチドの活性を模倣する化合物を同定する方法もまた記載される。好ましい実施形態では、このペプチドは、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、同時係属中の仮出願第60/374,530号(2002年4月22日出願)の利益を主張する。仮出願第60/374,530号は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(政府の利益に関する言及)
本研究は、The National Institutes of Health Grants NS13108およびDA08256によって部分的に支持された。従って、米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、プロテインキナーゼCのアイソザイム特異的調節に有用なペプチドに関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
プロテインキナーゼC(「PKC」)は、種々の細胞機能(細胞の増殖、遺伝子発現の調節、イオンチャネル活性を含む)に関与するシグナル伝達における重要な酵素である。アイソザイムのPKCファミリーとしては、それらの相同性およびアクチベーターに対する感度に基づいて少なくとも3つのサブファミリーに分けられ得る、少なくとも11個の異なるプロテインキナーゼが挙げられる。各アイソザイムは、アイソザイムに特有の(「可変」または「V」)ドメインが分散した、多数の相同な(「保存された」すなわち「C」)ドメインを含む。「古典的」すなわち「cPKC」サブファミリーのメンバー(αPKC、βPKC、βIIPKCおよびγPKC)は、4つの相同ドメイン(C1、C2、C3およびC4)を含み、そしてカルシウム、ホスファチジルセリン、およびジアシルグリセロールエステルまたはホルボールエステルを活性化のために必要とする。「新たな」すなわち「nPKC」サブファミリー(δPKC、εPKC、ηPKCおよびθPKC)のメンバーは、C2相同ドメインを欠き、そしてカルシウムを活性化のために必要としない。最後に、「異常な」すなわち「αPKC」サブファミリーのメンバー(ζPKCおよびλ/PKC)は、C2相同ドメインおよびC1相同ドメインの半分の両方を欠き、そしてジアシルグリセロール、ホルボールエステルおよびカルシウムに非感受性である。
【0005】
PKCアイソザイムの細胞下分布に対する研究は、PKCの活性化が、その細胞内でのその再分布(トランスロケーションとも呼ばれる)をもたらし、その結果、活性化PKCアイソザイムが、原形質膜、細胞骨格要素、核、および他の細胞下区画と会合することを実証する(Saito,N.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3409−3413(1989);Papadopoulos,V.およびHall,P.F.J.Cell Biol.108:553−567(1989);Mochly−Rosen,D.ら,Molec.Biol.Cell(以前はCell Reg.)1:693−706,(1990))。異なるPKCアイソザイムの独特の細胞機能は、それらの細胞下位置によって決定される。例えば、活性化βPKCは、核の内側に見出され、一方、活性化βIIPKCは、心筋細胞の核周辺および細胞周辺に見出される(Disatnik,M.H.ら,Exp.Cell Res.210:287−297(1994))。カルシウムからは独立しているが、リン脂質を活性化のために必要とする新たなPKCファミリーのメンバーであるεPKCは、後根神経節ならびに背側脊髄の浅層の両方の一次求心性ニューロンに見出されている。
【0006】
細胞の異なる領域への異なるPKCアイソザイムの局在は、次いで、活性化C−キナーゼについてのレセプター(Receptors for Activated C−Kinase;「RACK」)と称される特異的係留分子への活性化アイソザイムの結合に起因するようである。RACKは、活性化PKCアイソザイムをそれらのそれぞれの細胞下部位へと選択的に係留することによって機能すると考えられている。RACKは、完全に活性化されたPKCのみを結合し、そして必ずしも、この酵素の基質ではない。Norは、このキナーゼの触媒ドメインによって媒介されるRACKへの結合である(Mochly−Rosen,D.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3997−4000(1991))。PKCのトランスロケーションは、細胞粒状画分へと固定されたRACKへの活性化酵素の結合を反映し、そしてRACKへの結合は、PKCがその細胞応答を生じるのに必要とされる(Mochly−Rosen,D.ら,Science 268:247−251(1995))。インビボでのRACKへのPKC結合の阻害は、PKCトランスロケーションおよびPKC媒介機能を阻害する(Johnson,J.A.ら,J.Biol.Chem.,271:24962−24966(1996a);Ron,D.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:492−496(1995);Smith,B.L.およびMochly−Rosen,D.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,188:1235−1240(1992))。
【0007】
一般に、PKCのトランスロケーションは、PKCアイソザイムの適切な機能に必要とされる。RACK上のPKC結合部位(Mochly−Rosen,D.ら,J.Biol.Chem.,226:1466−1468(1991a);Mochly−Rosen,D.ら,1995)またはPKC上のRACK結合部位(Ronら,1995;Johnson,J.A.ら,1996a)のいずれかを模倣するペプチドは、インビボでこの酵素の機能を選択的に阻害するPKCのアイソザイム特異的トランスロケーションインヒビターである。
【0008】
PKCの個々のアイソザイムは、以下を含む種々の疾患状態の機構に関与している:癌(αPKCおよびδPKC);心肥大および心不全(βI PKCおよびβII PKC)侵害受容(γPKCおよびεPKC);心筋梗塞を含む虚血(δPKC);免疫応答(特に、T細胞媒介性)(θPKC);および線維芽細胞(fibrablast)増殖および記憶(ζPKC)。種々のPKCアイソザイム特異的ペプチドおよび改変領域特異的ペプチドは、以前に記載されている(例えば、米国特許第5,783,405号を参照のこと)。疼痛知覚におけるεPKCの役割は、εV1−2ペプチド(上記の’405特許に最初に記載されたεPKCの選択的インヒビター)の治療用途を含め、近年報告されている(WO 00/01415;米国特許第6,376,467号)。RACK1(βIIPKCについての選択的係留タンパク質)の結合特異性は、特定のN−末端ペプチド、中間ペプチド、およびC末端ペプチドの単独、組み合わせおよびβC2ドメイン由来の3つのペプチドの混合物と一緒での試験を含めて、βIIPKCのV5領域に存在すると近年報告されている(Stebbins,E.ら,J.Biol.Chem.271:29644−29650(2001))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような報告の進展にもかかわらず、疾患の処置のための新たな選択的薬剤および方法(既知のPKCアイソザイム特異的ペプチドおよび可変領域特異的ペプチドに対する代替物を含む)が所望されており、現在も所望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、PKCアイソザイムによって媒介される疾患を処置するための、PKC V5アイソザイム特異的ペプチド、薬学的組成物および方法を提供する。これらのペプチドは、対応するPKCアイソザイムの選択的モジュレータである。
【0011】
1つの局面では、本発明は、PKC V5アイソザイム特異的ペプチドに関する。
【0012】
本発明の別の局面では、このペプチドは、V5ドメインのN末端15アミノ酸の6〜12から選択される。
【0013】
なお別の局面では、このペプチドは、V5ドメインのN末端2アミノ酸を含まない。
【0014】
なお別の局面では、このペプチドは、6〜8アミノ酸を有する。
【0015】
本発明のなお別の局面は、キャリアペプチドに結合体化された(好ましくは、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合された)上記のペプチドに関する。
【0016】
本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤および上記のペプチドまたはペプチド/キャリア結合体を含む薬学的処方物をさらに提供する。
【0017】
上記のペプチド、ペプチド結合体および薬学的処方物は、所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせ、またはハイブリッドを含む。本発明のペプチドから排除されるのは、以下である:配列番号5、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号48、配列番号57、配列番号63および配列番号64。
【0018】
本発明においてまた提供されるのは、PKCアイソザイムによって調節される疾患状態についての処置方法であり、この方法は、治療有効量の上記PKC V5アイソザイム特異的ペプチド、ペプチド/キャリア結合体(または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッド)、またはそれらの薬学的処方物を、この処置を必要とする哺乳動物へと投与する工程を包含する。1つの実施形態では、本発明の処置方法から排除されるのは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、または配列番号21のペプチドを用いる方法である。別のこのような実施形態では、本発明の処置方法から排除されるのは、配列番号5、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号48、配列番号57、配列番号63または配列番号64のペプチドを用いる方法である。
【0019】
別の局面では、本発明は、疾患を処置する化合物を同定するための、本明細書中に記載されるペプチドの使用を包含する。
【0020】
さらなる局面は、疾患の処置において使用するための医薬の調製における、ペプチドまたはペプチド/キャリア結合体の使用を含む。
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明が添付の図面と関連して読まれる場合、より充分に認識される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(1)
PKCアイソザイムによって調節される疾患状態についての処置方法であって、治療有効量の対応するPKC V5アイソザイム特異的ペプチドを、該処置を必要とする哺乳動物へと投与する工程を包含し、ただし、該ペプチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、または配列番号21のいずれでもない、方法。
(2)
前記ペプチドが、V5ドメイン、または所望の活性を保持する、その改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの、N末端15アミノ酸の6〜12から選択される、項目1に記載の方法。
(3)
前記ペプチドが、前記V5ドメインのN末端の2アミノ酸を含まない、項目2に記載
の方法。
(4)
前記ペプチドが、6〜8アミノ酸を有する、項目3に記載の方法。
(5)
項目4に記載の方法であって、ただし、前記ペプチドが、配列番号5、配列番号11
、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号48、配列番号57、配列番号63または配列番号64のいずれでもない、方法。
(6)
前記ペプチドが、キャリアペプチドに結合体化される、項目4に記載の方法。
(7)
前記ペプチドが、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合している、項目6に記載の方法。
(8)
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目1に記載の方法。
(9)
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号33、配列番号34、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号46、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号55、配列番号59および配列番号60、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目8に記載の方法。
(10)
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目9に記載の方法。
(11)
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目10に記載の方法。
(12)
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59の群から選択される、項目11に記載の方法。
(13)
PKC V5アイソザイム特異的ペプチド、または所望の活性を保有する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドであり、ただし、該ペプチドは、配列番号5、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号31、配列番号37、配列番号43、配列番号48、配列番号57、配列番号63または配列番号64のいずれでもない、ペプチド、または所望の活性を保有する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッド。
(14)
前記ペプチドが、前記V5ドメイン、または所望の活性を保持する、その改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの、N末端15アミノ酸の6〜12から選択される、項目13に記載のペプチド。
(15)
前記ペプチドが、前記V5ドメインのN末端の2アミノ酸を含まない、項目14に記
載のペプチド。
(16)
前記ペプチドが、6〜8アミノ酸を有する、項目15に記載のペプチド。
(17)
前記ペプチドが、キャリアペプチドに結合体化される、項目13に記載のペプチド。
(18)
前記ペプチドが、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合している、項目17に記載のペプチド。
(19)
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目13に記載のペプチド。
(20)
配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号33、配列番号34、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号46、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号55、配列番号59および配列番号60、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目19に記載のペプチド。
(21)
配列番号2、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目19に記載のペプチド。
(22)
配列番号2、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59、または所望の活性を保持する、それらの改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせもしくはハイブリッドの群から選択される、項目21に記載のペプチド。
(23)
配列番号2、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59の群から選択される、項目22に
記載のペプチド。
(24)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目13に記載のペプチド
を含む、処方物。
(25)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目14に記載のペプチド
を含む、処方物。
(26)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目15に記載のペプチド
を含む、処方物。
(27)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目16に記載のペプチド
を含む、処方物。
(28)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目17に記載のペプチド
/キャリア結合体を含む、処方物。
(29)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目18に記載のペプチド
/キャリア結合体を含む、処方物。
(30)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目19に記載のペプチド
を含む、処方物。
(31)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目20に記載のペプチド
を含む、処方物。
(32)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目21に記載のペプチド
を含む、処方物。
(33)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目22に記載のペプチド
を含む、処方物。
(34)
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および項目23に記載のペプチド
を含む、処方物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒトαPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0023】
配列番号2は、配列番号1由来のフラグメントである。
【0024】
配列番号3は、配列番号1由来の改変フラグメントである。
【0025】
配列番号4は、配列番号1由来の改変フラグメントである。
【0026】
配列番号5は、配列番号1由来のフラグメントである。
【0027】
配列番号6は、ヒトβPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0028】
配列番号7は、配列番号6由来のフラグメントである。
【0029】
配列番号8は、配列番号6由来のフラグメントである。
【0030】
配列番号9は、配列番号6由来の改変フラグメントである。
【0031】
配列番号10は、配列番号6由来の改変フラグメントである。
【0032】
配列番号11は、配列番号6由来のフラグメントである。
【0033】
配列番号12は、配列番号6由来のフラグメントである。
【0034】
配列番号13は、配列番号6由来のフラグメントである。
【0035】
配列番号14は、ヒトβIIPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0036】
配列番号15は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0037】
配列番号16は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0038】
配列番号17は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0039】
配列番号18は、配列番号14由来の改変フラグメントである。
【0040】
配列番号19は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0041】
配列番号20は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0042】
配列番号21は、配列番号14由来のフラグメントである。
【0043】
配列番号22は、ヒトγPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0044】
配列番号23は、配列番号22由来のフラグメントである。
【0045】
配列番号24は、配列番号22由来のフラグメントである。
【0046】
配列番号25は、配列番号22由来の改変フラグメントである。
【0047】
配列番号26は、ヒトδPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0048】
配列番号27は、配列番号26由来のフラグメントである。
【0049】
配列番号28は、配列番号26由来のフラグメントである。
【0050】
配列番号29は、配列番号26由来の改変フラグメントである。
【0051】
配列番号30は、配列番号26由来の改変フラグメントである。
【0052】
配列番号31は、配列番号26由来のフラグメントである。
【0053】
配列番号32は、ヒトεPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0054】
配列番号33は、配列番号32由来のフラグメントである。
【0055】
配列番号34は、配列番号32由来のフラグメントである。
【0056】
配列番号35は、配列番号32由来の改変フラグメントである。
【0057】
配列番号36は、配列番号32由来の改変フラグメントである。
【0058】
配列番号37は、配列番号32由来のフラグメントである。
【0059】
配列番号38は、ヒトηPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0060】
配列番号39は、配列番号38由来のフラグメントである。
【0061】
配列番号40は、配列番号38由来のフラグメントである。
【0062】
配列番号41は、配列番号38由来の改変フラグメントである。
【0063】
配列番号42は、配列番号38由来の改変フラグメントである。
【0064】
配列番号43は、配列番号38由来のフラグメントである。
【0065】
配列番号44は、ヒトηPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0066】
配列番号45は、配列番号44由来のフラグメントである。
【0067】
配列番号46は、配列番号44由来のフラグメントである。
【0068】
配列番号47は、配列番号44由来の改変フラグメントである。
【0069】
配列番号48は、配列番号44由来のフラグメントである。
【0070】
配列番号49は、ヒトμPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0071】
配列番号50は、配列番号49由来のフラグメントである。
【0072】
配列番号51は、配列番号49由来のフラグメントである。
【0073】
配列番号52は、配列番号49由来の改変フラグメントである。
【0074】
配列番号53は、ヒトθPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0075】
配列番号54は、配列番号53由来のフラグメントである。
【0076】
配列番号55は、配列番号53由来のフラグメントである。
【0077】
配列番号56は、配列番号53由来の改変フラグメントである。
【0078】
配列番号57は、配列番号53由来のフラグメントである。
【0079】
配列番号58は、ヒトξPKCアイソザイムのV5ドメインを表す。
【0080】
配列番号59は、配列番号58由来のフラグメントである。
【0081】
配列番号60は、配列番号58由来のフラグメントである。
【0082】
配列番号61は、配列番号58由来の改変フラグメントである。
【0083】
配列番号62は、配列番号58由来の改変フラグメントである。
【0084】
配列番号63は、配列番号58由来のフラグメントである。
【0085】
配列番号64は、ヒトμPKCアイソザイムのV5ドメイン由来のフラグメントを表す。
【0086】
配列番号65は、Tat由来キャリアペプチド(Tat 47−57):Tyr Gly Lys Lys Arg Arg Gln Arg Arg Argである。
【0087】
配列番号66は、Drosophila Antennapediaホメオドメイン由来キャリアペプチド:Cys Arg Gln Ile Lys Ile Trp Phe Gln Asn Arg Arg Met Lys Trp Lys Lysである。
【0088】
(発明の詳細な説明)
(定義)
他に示さない限り、本明細書中に記載される全ての用語は、本発明の分野の当業者にとっての用語と同じ意味を有する。実施者は、特に、当該分野の定義および用語に関してCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.ら,John Wiley and Sons,Inc.,Media Pa.)が示される。
【0089】
アミノ酸残基に関する略語は、20種の一般的L−アミノ酸のうちの1つを言及するために当該分野において用いられる標準的な3文字コードおよび/または1文字コードである。
【0090】
「保存されたセット」のアミノ酸とは、一群のタンパク質のメンバー間で同一であるかまたは非常に相同である、(例えば、保存的アミノ酸置換のみを有する)アミノ酸連続配列をいう。保存されたセットは、2〜50を超えるアミノ酸残基長のどれかであり得る。代表的に、保存されたセットは、2と10との間の個数連続する残基長である。例えば、2つのペプチドCGRNAE(配列番号15)およびACGRNAE(配列番号19)に関して、これらの2つの配列に関して保存されたセットのアミノ酸を形成する、6つの同一位置(CGRNAE)が存在する。
【0091】
「保存的アミノ酸置換」は、選択されたポリペプチドまたはタンパク質の活性にも三次構造にも顕著な変化をもたらさない置換である。このような置換は代表的に、選択されたアミノ酸残基を、類似の物理化学的特性を有する異なる残基で置換することを含む。
例えば、GluによるAspの置換は、保存的置換と考えられる。なぜなら、両方とも、同様のサイズの負に荷電したアミノ酸であるからである。物理化学的性質によるアミノ酸のグループ分けは、当業者に公知である。
【0092】
「ドメイン」および「領域」は、本明細書中で交換可能に用いられ、そして(代表的には保存されているかまたは可変性であるかのいずれかによって特徴付けられる)PKCアイソザイム内のアミノ酸の連続配列をいう。
【0093】
「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に用いられ、そしてペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基鎖から構成される化合物をいう。他に示されない限り、ペプチドについての配列は、「N」(すなわちアミノ)末端から「C」(すなわちカルボキシル)末端への順番で与えられる。
【0094】
2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列は、これらが、プログラムALIGNを変異ギャップマトリクスおよび6以上のギャップペナルティ(Dayhoff,M.O.,ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE(1972)第5巻,National Biomedical Research
Foundation,101−110頁、およびこの巻に対する補遺2,1−10頁)で用いて5より高いアライメントスコア(標準偏差単位において)を有するならば、(この用語は、好ましくは本明細書中で用いられる場合)「相同」と考えられる。これらの2つの配列(またはそれらの部分)は、それらのアミノ酸が、上記のALIGNプログラムを用いて最適にアライメントした場合に50%以上(より好ましくは70%以上、なおより好ましくは80%以上)同一であるならば、より好ましくは相同である。
【0095】
ペプチドまたはペプチドフラグメントは、親ペプチドまたは親ポリペプチドのアミノ酸配列に対して相同であるアミノ酸配列を有するか、または親ペプチドまたは親ポリペプチドからの保存されたフラグメントであるならば、親ペプチドまたは親ポリペプチド「由来」である。
【0096】
「調節する」とは、PKC活性化の低下、増大、またはPKC活性化における何らかの他の測定可能な変化を意図する。
【0097】
「管理」とは、例えば、疼痛を処置する状況では、疼痛の低下および/または痛覚脱失の誘導の両方を意図する。
【0098】
用語「処置」または「処置する」は、以下を包含する、哺乳動物における疾患の任意の処置を意味する:(a)この疾患を予防するかもしくはこの疾患に対して保護する、すなわち、臨床的徴候を発症させないこと;(b)この疾患を阻害する、すなわち、臨床的徴候の発症を阻止もしくは抑制する;および/または(c)この疾患を軽減する、すなわち、臨床的徴候の後退を引き起こす。ヒトの医薬において、「予防すること」と「抑制すること」との間を区別することが常に可能なわけではないことが当業者によって理解される。なぜなら、最終的な誘導性事象が未知であり得るか、潜伏性であり得るか、またはその患者はその事象の発生のずっと後まで確認しないからである。それゆえ、本明細書中で用いられる場合、用語「予防」は、本明細書中で定義される、「予防する」および「抑制する」の両方を包含する、「処置」の1要素であると意図される。用語「保護」は、本明細書中で用いられる場合、「予防」を包含することを意図する。
【0099】
用語「有効量」は、処置されるべき障害または疾患状態についての処置を提供するに充分な投薬量を意味する。これは、患者、疾患およびもたらされる処置に依存して変動する。
【0100】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な賦形剤」は、任意のそして全ての溶媒和物、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、組成物中に組み込まれ得る。
【0101】
(本発明のPKCペプチド)
先行技術の報告は、V1ドメイン、V3ドメインおよびV5ドメイン由来のPKCアイソザイム特異的ペプチドおよび可変領域特異的ペプチドに焦点を合わせているが、V5ドメイン由来のペプチドの治療可能性および関連の可能性が大部分同定されていないままである。さらに、V5ドメイン由来のペプチドが記載される程度まで、このようなペプチドは、V5ドメインのN末端由来の約25アミノ酸から始まって、V5ドメインのほぼ中心から優先的に選択されている。
【0102】
一般に、本発明は、疾患を処置および/または管理する際に使用するための、任意のプロテインキナーゼCアイソザイムのV5領域由来のペプチドの使用を意図する。本発明は、このようなPKCアイソザイム特異的V5ペプチド(使用方法および処置方法、組成物、およびその薬学的処方物を含む)に関する。特に、好ましいのは、V5ドメインのN末端15アミノ酸、またはそれらの保存的改変物および並列物の約6〜12から選択されるペプチドである。さらに好ましいのは、V5ドメインのN末端2アミノ酸を含まないペプチド(特に、6〜8アミノ酸を有するペプチド)である。これらのペプチドは、ネイティブな形態で用いられ得るか、または(例えば、キャリア上のCysとこのペプチド(例えば、以下に記載されるもの)内のCysもしくはこのペプチドに付加されたCysとの間でのジスルフィド結合を介して)キャリアに結合体化されることにより改変され得る。
【0103】
ネイティブ配列に相同なペプチドおよび保存的アミノ酸置換および/または並列を有するペプチド、ならびに活性を保持するフラグメントが、意図されるペプチドの範囲内にあることが認識される。例えば、RとKとの間;V、L、I、RおよびDの間;ならびに/またはG、A、PおよびNの間で1以上のアミノ酸(好ましくは、2以下)を交換し得る。従って、用語「PKC V5ペプチド」は、ネイティブ配列、ならびに所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせ、およびハイブリッドを意図する。
【0104】
以下の配列は、種々のPKCアイソザイムのV5ドメインおよびそれら由来の例示的なフラグメントに対応する。例示的な改変ペプチドもまた以下に記載され、ここで、置換が小文字で示される。全ての場合において、本明細書中に明示される配列に由来する配列および明示される配列と相同な配列(例えば、他種由来の極めて相同な配列)が意図されることが認識される。本明細書中に記載される全てのペプチドは、当該分野で公知の、自動または手動のいずれかの固相合成技術を用いる化学合成によって調製され得る。これらのペプチドはまた、当該分野で公知の技術を用いて組換え調製され得る。
【0105】
αPKCアイソザイムのV5ドメインは、αPKCの配列のアミノ酸残基616から得られたアミノ酸配列:「PKVCG KGAENFDKFF TRGQPVLTPP DQLVIANIDQ SDFEGFSYVNPQFVHPILQS AV」(配列番号1)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基620〜625に対応するGKGAEN(配列番号2)、ならびに改変ペプチド「arGAEN」(配列番号3)およびcGKGAEN(配列番号4)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドQLVIAN(配列番号5)である。
【0106】
βPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PK ARDKRDTSNF DKEFTRQPVE LTPTDKLFIM NLDQNEFAGF SYTNPEFVIN V」(配列番号6)を有する。例示的なペプチドとしては、RDKRDTS(配列番号7)およびARDKRDTSNF DK(配列番号8)、ならびに改変ペプチドcARDKRDTS(配列番号9)およびgRDKRDTS(配列番号10)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドARDKRDTS(配列番号11)、KLFIMN(配列番号12)およびAGFSYTNPEF VINV(配列番号13)である。
【0107】
βII−PKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PK ACGRNAENFDRFFTRHPPVL TPPDQEVIRN IDQSEFEGFS FVNSEFLKPE VKS」(配列番号14)を有する。例示的なペプチドとしては、CGRNAE(配列番号15)、KACGRNAE(配列番号16)およびCGRNAEN(配列番号17)ならびに改変ペプチドACGkNAE(配列番号18)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドACGRNAE(配列番号19)、QEVIRN(配列番号20)およびSFVNSEFLKP EVKS(配列番号21)である。
【0108】
γPKCアイソザイムのV5ドメインは、γPKCの配列のアミノ酸残基633から選んだアミノ酸配列:「PRPCGRSGENFDKFFTRA APALTPPDRL VLASIDQADF QGFTYVNPDF VHPDARSPTS PVPVPVM」(配列番号22)を有する。例示は、ペプチドGRSGEN(配列番号23)およびPCGRSGEN(配列番号24)、ならびに改変ペプチドGkSGEN(配列番号25)である。
【0109】
δPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PKVKSPRDY SNFDQEFLNE KARLSYSDKNLIDSMDQSAF AGFSFVNPKF
EHLLED」(配列番号26)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基624〜631から得られたVKSPRDYS(配列番号27)、PKVKSPRDY SN(配列番号28)、ならびに改変ペプチドVKSPcRDYS(配列番号29)およびiKSPRlYS(配列番号30)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドKNLIDS(配列番号31)である。
【0110】
εPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PRIKTKRDVNNFDQDFTREEPVLTLVDEAIVKQI NQEEFKGFSYFGEDLMP」(配列番号32)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基689〜695から得られたIKTKRDV(配列番号33)およびTKRDVNNFDQ(配列番号34)、ならびに改変ペプチドcEAIVKQ(配列番号35)およびIKTKRli(配列番号36)。除かれるのは、ペプチドEAIVKQ(配列番号37)である。
【0111】
ηPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PRIKSREDV SNFDPDFIKE EPVLTPIDEGHLPMINQDEF RNFSYVSPEL
QP」(配列番号38)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基634〜641から得られたIKSREDVS(配列番号39)、およびPRIKSREDV(配列番号40)、ならびに改変ペプチドvrSREDVS(配列番号41)およびEGHdPM(配列番号42)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドEGHLPM(配列番号43)である。
【0112】
ιPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PNISGEFGL DNFDSQFTNEPVQLTPDDDD IVRKIDQSEF EGFEYINPLL
MSAEECV」(配列番号44)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基534〜541から得たISGEFGLD(配列番号45)およびDDDIVRK(配列番号46)、ならびに改変ペプチドcSGEFGLD(配列番号47)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドDDIVRK(配列番号48)である。
【0113】
μPKCアイソザイムのV5ドメインは、以下のアミノ酸配列を有する:
【0114】
【化1】


例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基723〜730から得たVKLCDFGF(配列番号50)、およびQVKLCDFGFA(配列番号51)、ならびに改変ペプチドirLCDFaF(配列番号52)が挙げられる。
【0115】
θPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PKVKSPFD CSNFDKEFLN EKPRLSFADRALINSMDQNM FRNFSFMNPG MERLIS」(配列番号53)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基655〜662から得たVKSPFDCS(配列番号54)、およびDRALINS(配列番号55)、ならびに改変ペプチドVrSPFDCS(配列番号56)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドRALINS(配列番号57)である。
【0116】
ξPKCアイソザイムのV5ドメインは、アミノ酸配列:「PQIT DDYGLDNFDT QFTSEPVQLTPDDEDAIKRI DQSEFEGFEY INPLLLSTEE SV」(配列番号58)を有する。例示的なペプチドとしては、アミノ酸残基539〜546から得たITDDYGLD(配列番号59)、およびDDYGLDN(配列番号60)、ならびに改変ペプチドITDDYGdl(配列番号61)およびEDAIR(配列番号62)が挙げられる。除かれるのは、ペプチドEDAIKR(配列番号63)である。
【0117】
また除かれるのは、米国特許第5,783,405号においてμPKC V5ペプチド「μV5−1」と同定されるペプチドSDSPEA(配列番号64)である。
【0118】
上記に記載した例示的なフラグメントの全てにおいて、認められるほどには活性を改変しない、保存的改変体および他の改変体が作製され得、そして意図されるペプチド内に入る。
【0119】
好ましいのは、以下の群のペプチドである:配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62(必要に応じて、所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせおよびハイブリッドを包含する)。
【0120】
より好ましいのは、以下の群のペプチドである:配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号28、配列番号33、配列番号34、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号46、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号55、配列番号59および配列番号60(必要に応じて、所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせおよびハイブリッドを包含する。
【0121】
なおより好ましいのは、以下の群のペプチドである:配列番号2、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59(必要に応じて、所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせおよびハイブリッドを包含する)。
【0122】
同様に好ましいのは、以下の群のペプチドである:配列番号2、配列番号23、配列番号27、配列番号33、配列番号39、配列番号45、配列番号50、配列番号54および配列番号59(必要に応じて、所望の活性を保持する、それらの全ての改変体、誘導体、フラグメント、組み合わせおよびハイブリッドを包含する)。
【0123】
(有用性)
(治療適応症)
本発明のPKCアイソザイム特異的V5ペプチドは、それらが由来するアイソザイムに対して選択的であるPKCのモジュレータとして有用である。その点について、これらのペプチドは、以下を含む、特定のPKCアイソザイムに関連した、哺乳動物(特に、ヒト)の疾患状態の処置において用いられ得る:αPKC(過剰増殖性細胞疾患(例えば、癌);βPKCおよびβIIPKC(心肥大および心不全);γPKC(疼痛管理);δPKC(組織を虚血事象または低酸素性事象(例えば、心筋梗塞および発作)に起因した損傷、またはUV照射によって誘導されるアポトーシスから保護し、そして瘢痕のない創傷治癒を促進するために線維芽細胞増殖を阻害する);εPKC(疼痛管理、心筋機能不全);θPKC(免疫系の調節(特に、T細胞媒介応答を含む));およびζPKC(記憶および刺激線維芽細胞増殖)。
【0124】
例として、疼痛は、医師によって認められる基本的臨床症状であり、しばしば、軽度、中程度または重度に分類される。本明細書中に記載されるγPKCペプチドおよびεPKCペプチドは、これらの任意のカテゴリーにおいて、疼痛の処置に適切である。例えば、癌および手術後外科的疼痛は、中程度から重度の分類であるとしばしば記載される。骨、神経、軟組織、または内臓の腫瘍浸潤は、癌疼痛の一般的原因である。種々の因子(例えば、腫瘍の型、状態、および部位、ならびに患者の変動要因)は、患者における癌疼痛の有病率に影響を与える。手術後疼痛に関して、疼痛の重篤度はしばしば、介入の位置および程度に依存する。
【0125】
より詳細には、γPKCペプチドおよびεPKCペプチドは、例えば、神経障害状態または炎症状態によって引き起こされる、急性または慢性の疼痛の処置に適している。処置が意図される例示的な炎症状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:日焼け、変形性関節症、大腸炎、心臓炎、皮膚炎、筋炎(myostis)、神経炎、および慢性関節リウマチ、狼瘡および他のコラーゲン血管疾患、ならびに手術後外科的疼痛。神経障害疼痛に関連した状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:外傷、外科手術、切断、膿瘍、脱髄疾患、三叉神経痛、癌、慢性アルコール症、発作、視床疼痛症候群、糖尿病、ヘルペス感染など。
【0126】
炎症および神経損傷は、痛覚過敏を誘導し得、ここで、有害刺激が、疼痛の閾値の低下に起因して、激しく有痛であると知覚される。従って、疼痛の処置に取り組む実施形態では、本発明は、患者における痛覚過敏を処置するための組成物および方法を意図する。さらに、本発明は、被験体における異痛症を処置する(すなわち、通常無害の刺激に関連した疼痛を処置する)ための組成物および方法を意図する。
【0127】
(同定方法における使用)
本発明の有用性の別の局面は、(例えば、本明細書中に記載されるペプチドを、これらのペプチドの活性を模倣する化合物の同定のための調査ツールとして用いることにより)疼痛を調節する化合物を同定する方法である。本発明はまた、これらのペプチドの作用部位を検出するためのアッセイにおける、またはこれらのペプチドの作用機構についての研究における、ペプチドの使用を意図する。これらのペプチドの活性を模倣する化合物を同定する際に、これらのペプチドが結合する細胞レセプターに結合し得るかさもなければこれらのペプチドと同様の生理学的様式で作用し得る化合物は、いくつかの技術によって同定され得る。例えば、1つの方法は、本発明のPKCペプチドの活性を決定する生物学的アッセイに試験化合物を添加し、そして試験化合物の活性を検出することを包含する。あるいは、PKCアイソザイムの活性を調節する試験化合物は、アッセイを用いて決定され得、次いで対応する治療活性について試験され得る。
【0128】
例えば、競合的結合スクリーニングアッセイは、試験化合物および検出可能に標識された本発明のペプチドを、このペプチドの結合を可能にする条件下で、哺乳動物の細胞、組織または適切なRACKへと添加し、そして結果を細胞、組織またはRACKに対する(試験化合物なしの)標識ペプチドの結合に対して比較することにより、PKCアイソザイムの活性を模倣する化合物を同定するために用いられ得る。ペプチドの活性を模倣する化合物は、細胞、組織またはRACKへの結合について、このペプチドと競合し得る。その結果、レセプターに結合することによって試験化合物がこのペプチドの活性を模倣する場合、(試験化合物がペプチドの活性を模倣せず、レセプターに結合せず、しかも親和性がより低い場合の遊離およびRACK結合標識ペプチドの量と比較して)より少量のRACKに結合した標識ペプチド(またはより多量のRACK未結合標識ペプチド)が測定される。
【0129】
一般に、PKCアイソザイムの活性を模倣する化合物の同定は、試験化合物が、対応するPKCアイソザイムの活性を阻害、増強または調節する能力を測定することにより、同定される。選択されたアッセイにおけるPKCアイソザイムの活性は、試験化合物の存在下および不存在下において測定される。このアッセイは、競合的結合アッセイ(例えば、上記の通り)または第2メッセンジャーの産生調節、細胞代謝の変化、もしくは酵素活性に対する影響をモニタリングする細胞アッセイであり得る。次いで、PKCアイソザイムの活性を模倣または調節すると同定される化合物は、対応するインビボ疾患モデルを用いて、治療活性について試験される。
【0130】
(試験)
本発明のペプチドの活性は、上記の適応症の処置における効力の、確立されたインビトロアッセイおよびインビボアッセイのいずれかを用いて決定され得る。もちろん、最終的には、安全性および効力が、制御されたヒト臨床研究において決定される。
【0131】
代表的試験プロトコルは、疼痛の処置についての活性および虚血の処置についての活性を決定する状況について以下にまとめられる。他のPKC V5ペプチド適応症についての試験プロトコルは、当業者に周知である。
【0132】
(疼痛管理についてPKCペプチドによって例示されるV5ドメイン活性)
PKCペプチドが侵害受容を調節する効果は、カプサイシンまたはホルマリンによって誘導される急性炎症性疼痛のモデルを用いて調査される。これらのモデルおよび有害刺激に対する感受性の長期上昇を有する他のモデルは、特定のヒト病理学的疼痛をモデル化する際に有用であり得る。炎症のカプサイシンモデルは、低速熱試験とともに、慢性疼痛から生じる主な感作および痛覚過敏を模倣する。皮膚へのカプサイシンの塗布は、低加熱速度熱試験の間の足引っ込め潜在時間の顕著な低下によって示される、頑強な、何時間にもわたる、C線維選択的痛覚過敏を生じる。カプサイシンは、香辛料の利いた「辛い」食品における活性成分である。カプサイシンについてのレセプター(C線維上に見出されるVR−1バニロイド(vanilloid)レセプター)は、近年クローニングされた。これは、リガンドゲートの非選択的カチオンチャネルである。カプサイシンに応答することに加えて、VR−1はまた、熱刺激(約43℃)(Kidd B.L.ら,Br.J.Anaesth.,87(1):3−11(2001))およびプロトンにも応答する。このことは、その活性が炎症の間に増強されることを示唆する。カプサイシンは、C線維に対して選択的に活性化および感作し、Aδに対してはそうでないことが示されている。それゆえ、Aδ潜伏時間の測定値は、研究の間の動物の幸福についてのコントロールとして用いられる。
【0133】
齧歯動物におけるホルマリンモデルは、ヒトにおける損傷誘導性疼痛を処置する際の予測試験として確認されている(Dennis,S.G.およびMelzack,R.,Advances in Pain Research and Therapy,第3巻,747,J.J.Bonicaら編,Raven Press,New York,1979;Tjolsen,A.ら,Pain,51:5−17(1992))。このモデルは、二期応答を生じ、ここで、第1期は、化学的侵害受容器がメディエータであること以外は、急性期試験について記載されている特徴と特徴が類似して、一次求心性バレッジによって誘発される。第2期は、初期組織損傷から生じる痛覚過敏自然活性であると考えられ、侵害受容閾値の低下および対応する脊髄回路の起動または「興奮」を反映する。従って、末梢ニューロン回路および中枢ニューロン回路ならびにメディエータの両方とも、この有痛性組織損傷状態を誘導して維持するために必要とされる。
【0134】
上記の通りに試験された場合、γPKC V5ペプチドおよびεPKC V5ペプチドは、疼痛における実質的低減を付与する。
【0135】
(虚血についてPKCペプチドによって例示されるV5ドメイン活性)
単離されたラット心筋細胞への投与は、虚血からの保護におけるδPKCペプチドの活性を決定するために用いられ得る。ペプチドまたはキャリア−ペプチド結合体は、単離された成体ラット心筋細胞へと、長期虚血の10分前に導入される。細胞損傷は、トリパンブルーの取り込みを測定することによる、浸透圧脆弱性試験を用いて評価される。
【0136】
エクスビボでの心臓全体への投与は、器官全体へと細胞外導入された場合、ペプチドが活性を有するか否かを決定するために用いられ得る。キャリアペプチドであるTat由来ペプチドへと必要に応じて結合体化されたペプチドは、虚血期間の誘導の前に、ランゲルドルフ灌流ラット心臓へと送達される。これらのペプチドを用いた灌流の後、全体的虚血が30分間もたらされる。30分間の虚血後、放出されたクレアチンホスホキナーゼ(CPK)の量が、30分間の再灌流期間の間、モニタリングされる。
【0137】
別の研究は、これらのペプチドがインタクトな器官へと送達されて、虚血傷害後に防御を提供し得るか否かを決定する。この研究において、上記のラット心臓モデルが用いられ、そして血流力学パラメーターが、20分間の全体的虚血および20分間の再灌流の間に測定される。試験ペプチドは、再灌流期間の間のみ、500nMの濃度にて送達される。
【0138】
組織を、虚血性事象または低酸素自称に起因する損傷から保護することは、ペプチドを成体雌性ブタに(好ましくは、30分間の虚血性損傷の最後の10分間の間に)インビボで投与することにより、評価され得る。5日後、心臓が組織損傷に関して分析される。
【0139】
別の研究では、左心室図(ventricurogram)を、ブタ(n=5)において、3つの時点で行う:(1)バルーンカテーテルによる左前室間動脈の閉塞前(虚血前);(2)2.5μM/10mLのδV1−1を用いた再灌流直後(虚血後);および(3)6Fr.のピッグテイルカテーテルを用いた5日後の屠殺前(虚血後5日後)。LVGは、2視野(右前斜めおよび左前斜め)によって記録される。左心室に存在する総最大量値に対する最大収縮の間の駆出率(EF)(1拍動において駆出された血液のパーセント)は、ソフトウェアPlus Plus(Sanders Data Systems)によって分析され、そして2視野の平均が評価される。駆出率は、左心室の寸法に基づいて計算される。駆出率は、心臓がどれくらい良好に機能しているかの尺度であり、より高い駆出率は、より良好に機能する心臓の指標である。短期間における50%未満の駆出率は、心不全の状態への進行を示唆し得る。
【0140】
発作の結果としての脳に対する損傷の阻害は、ラットの大脳虚血モデルにおいて調べられ得る。虚血は、管内縫合を用いて中脳動脈の口を閉塞させることで誘導される。Tatペプチドへ必要に応じて結合体化された試験ペプチドまたはTatペプチド単独は、2時間の閉塞期間の前および後に頸動脈へと注射される。各動物からの脳は、24時間後に収集され、染色され、そして調べられる。
【0141】
上記の通りに試験された場合、δPKC V5ペプチドは、虚血の前、間または後に送達された場合、虚血によって誘導される心臓および脳に対する損傷の実質的低減を付与する。
【0142】
(投与)
これらのペプチドは、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と合わせることにより、投与のために調製される。従って、本発明のさらなる局面は、本発明のペプチドを含む薬学的組成物を、被験体への投与のための投薬形態で提供する。このような投薬形態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:経口投与のための、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、シロップ剤(ここで、適切な薬学的キャリアとしては、デンプン、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水溶液、油−水乳濁剤などが挙げられる)。他の投薬形態としては、髄腔内、静脈内、筋肉内、皮下が挙げられ、ここで、適切な薬学的キャリアとしては、緩衝化水性媒体または非水性媒体が挙げられる。これらのペプチドは、(例えば、炎症部位付近または末梢神経損傷部位付近に)(例えば、局所適用、皮内注射または薬物送達カテーテルによって)局所投与され得る。
【0143】
組成物中のこれらのペプチドの量は、適切な用量が得られて治療効果が達成されるように変化され得る。投薬量は、多数の因子(例えば、投与経路、処置の持続時間、患者のサイズおよび身体状態、このペプチドの効力および患者の応答)に依存する。このペプチドの有効量は、このペプチドを、本明細書中に記載されるモデルを含め、当該分野で公知の1以上のモデルにおいて試験することにより、決定され得る。
【0144】
これらのペプチドは、毎時間、1日あたり数回、毎日、または疼痛を経験している人またはその人の医師が適切とみなす頻度で、必要に応じて投与され得る。これらのペプチドは、慢性適応症の継続中の管理に基づいて投与され得るか、または急性適応症の後の前に短時間に基づいて投与され得る。
【0145】
本発明のペプチドは、単独で、またはキャリアペプチド(例えば、Tatキャリアペプチド(このうち、配列番号65と同定される配列を有するこのペプチドが例示的である))に連結されて、投与され得る。他の適切なキャリアペプチド(例えば、Drosophila Antennapediaホメオドメイン(配列番号66;Theodore,L.ら、J.Neurosci.15:7158(1995);Johnson,J.A.ら,Circ.Res.79:1086(1996b))は、公知であり、そして意図され、ここで、PKCペプチドは、N末端Cys−Cys結合を介してAntennapediaキャリアへと架橋される。ポリアルギニンは、別の例示的なキャリアペプチドである(Mitchellら,J.Peptide Res.,56:318−325(2000);Rolhbardら,Nature Med.,6:1253−1257(2000))。
【実施例】
【0146】
以下の実施例は、本明細書中に記載される発明をさらに例示し、そして本発明の範囲を限定することを決して意図しない。
【0147】
(実施例1:カプサイシン誘発性侵害受容に対するPKCペプチドの影響)
成体雄性Sprague−Dawleyラット(200g〜250gの間の体重)に、ウレタン(800mg.kg、i.p.)を用いて軽く麻酔する。各動物の背表面に、墨を塗布して、背表面に熱が均質的に適用されることを確実にする。全ての動物(n=10/試験群)のベースライン測定値を、C線維(0.9℃/秒加熱速度)およびAδ線維(6.5℃/秒加熱速度)の両方に関して45分間採取する。投与されたこれらのペプチドは、このアッセイにおいて以前に活性であると同定された、アミノ酸配列EAIVKQ(配列番号37)を有するポジティブコントロールのεPKCアンタゴニスト、配列番号23、配列番号24および配列番号25として同定されるγPKCペプチド、ならびに配列番号33、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36として同定されるεPKCペプチドである。全てのペプチドは、Tatキャリアペプチドへと連結され、このうち、配列番号65と同定される配列は、例示的である。第2のシリーズのこれらのペプチドは、キャリアなしで試験される。コントロールペプチドおよび試験ペプチドは、左後肢でのカプサイシン(100μLの3%カプサイシン)の局所投与の15分前に、直接腰椎穿刺(20μL中の10μMペプチド)を介して髄腔内送達される。ネガティブコントロールとして、生理食塩水およびTat−キャリアペプチドもまた、2つの別の群の試験動物へと投与する。潜伏時間測定は、直接的なペプチド効果についてのコントロールのために、ペプチド後だがカプサイシン適用前に行われる。カプサイシンの適用の20分後、このインクが再度適用され、そして後足の背側表面は、低速加熱に最大20秒間供される。足引っ込め潜伏時間を、15分間の間隔で測定する。εPKC試験ペプチドおよびγPKC試験ペプチドは、ネガティブコントロールパップ(pup)と比較して、疼痛スコアの低下をもたらす。
【0148】
(実施例2:既存のカプサイシン誘発性侵害受容に対するPKCペプチドの影響)
既存の慢性疼痛の処置のためのγPKCペプチドおよびεPKCペプチドの試験を以下の通りに行う。このペプチドが、確立されたカプサイシン誘発性熱痛覚過敏を逆転させる能力を、試験ペプチドを、試験ペプチドの種々の濃度(1μM、50μM、および100μM)で、25分間のカプサイシン後処置に開始する10分間の期間にわたって投与する(すなわち、カプサイシンは、ベースライン測定の後に投与される)こと以外は、実施例1に記載の手順を用いて決定する。次いで、熱試験を、実施例1に記載の通りに行う。カプサイシン適用の30分後、足引っ込め潜伏時間を、定期的間隔で75分間測定した。εPKC試験ペプチドおよびγPKC試験ペプチドは、ネガティブコントロールパップ(pup)と比較して、疼痛スコアの低下をもたらす。
【0149】
(実施例3:δPKCトランスロケーションの阻害)
(A.ペプチド調製)
δV5 PKCペプチド(配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30)を合成し、そして精製する。これらのペプチドを、Drosophila Antennapediaホメオドメイン(Theodore,L.ら;Johnson,J.A.ら,1996b)またはTat由来ペプチドへのN末端Cys−Cys結合を介した架橋により、キャリアペプチドを用いて改変する。
【0150】
(B.細胞へのペプチド送達)
初代心筋細胞培養物(90%〜95%純粋)を、新生仔ラットから調製する(Gray,M.O.ら;Disatnik M.−H.ら)。これらのペプチドを、10〜20分間にわたる、それぞれ、3nmおよび10nmの濃度のホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)の存在下および不存在下にて500nMの適用濃度で、細胞へと導入する。第3セットの細胞では、これらのペプチドを、500nM ψδRACKの存在下および不存在下にて、500nMの濃度で適用する。
【0151】
δPKCアイソザイムのトランスロケーションを、ウェスタンブロット分析(Santa Cruz Biotechnology)においてδPKCアイソザイム特異的抗体を用いることにより評価する。処理した細胞の細胞質ゾル画分および粒状画分のウェスタンブロット分析を、Johnsonら,1995によって記載される通りに実施する。δPKCアイソザイムの細胞下局在を、抗δPKC抗体、抗αPKC抗体および抗εPKC抗体を用いてプローブしたブロットの化学発光によって評価する。各画分におけるPKCアイソザイムの量を、スキャナを用いて定量し、そしてトランスロケーションを、非処理細胞におけるアイソザイムの量に対する粒状画分におけるアイソザイムの量として表す。δPKCアイソザイムのトランスロケーションにおける変化をまた、処理して固定した細胞の細胞免疫蛍光研究(Grayら,1997)によって決定する。トランスロケーションを、盲検様式で、100細胞/処置について計数することによって決定する。
【0152】
上記の通りに試験した場合、δV5 PKCペプチドは、δPKCトランスロケーションの活性なインヒビターである。
【0153】
(実施例4:単離された心筋細胞に対するペプチド投与)
これらのペプチドを、実施例3に記載の通りに調製する。
【0154】
成体雄性Wistarラットの心筋細胞を、コラゲナーゼ処理(Armstrong,S.ら)により、ランゲルドルフ装置(van der Heide,R.S.ら)上に調製する。これらの細胞を、1μMのψδRACKの存在下または不存在下において10nM、100nM、500nM、および1μMの濃度でペプチドを用いて処理する。βPKC選択的アクチベータをまた、コントロールとして用いた。
【0155】
刺激された虚血に関して、キャリアに対して結合体化されたδV1−1ペプチドおよび/またはψδRACKペプチドを用いて微量遠心管中で処理した成体筋細胞を、脱気した無グルコースインキュベーション緩衝液で2回洗浄し、そしてペレット化させる。最少量の緩衝液の頂部に、マイクロバルーン(Sig Manufacturing,Montezuma,IA)または脱気して窒素で飽和した緩衝液のいずれかを用いて、細胞ペレットを重層し、そして気密トップを用いてシールする。次いで、チューブを、37℃にて180分間または90分間のいずれかでインキュベートする。
【0156】
細胞損傷を、低張性(85mosM)溶液中に添加したトリパンブルーの取り込みを測定することにより、浸透圧脆弱性試験によって評価する。同様の結果をまた、生死キット(live−dead kit)(Molecular Probes)を用いることにより、または以前(Chenら,1999;Grayら,1997;Mackayら,1999)に記載された通りにキット(Sigma)を用いて培地中へのラクトースデヒドロゲナーゼの放出を測定することにより、得る。
【0157】
δV5 PKCペプチドは、上記の通りに試験した場合、虚血損傷を阻害する。
【0158】
(実施例5:心臓全体へのエキソビボペプチド投与および細胞損傷に対する影響)
成体雄性ラットにi.p.アベルチン(avertin)で麻酔をかけ、そしてそれらの心臓を迅速に取り出し、そしてランゲルドルフセットアップを用いて、当該分野(Colbert,M.C.ら)で記載される通りの灌流のために大動脈を介してカニューレ挿入する。心臓を、取り出して90秒以内に灌流するように注意する。これらの心臓に、NaCl 120;KCl 5.8;NaHCO 25;NaH 1.2;MgSO 1.2;CaCl 1.0;およびデキストロース10(37℃にてpH7.4)(nmol/L)を含む酸素化Krebs−Henseleit溶液を灌流する。
【0159】
10〜20分間の平衡化期間の後、心臓を、Tat誘導体化ペプチドに結合体化されたこと以外は実施例1に記載された通りに調製したδV5 PKCペプチドで20分間灌流する。灌流を、0.5μMの適切なペプチドを含むKrebs−Hanseleit溶液を用いて10mL/分の一定の流れで維持する。用いたランゲルドルフ法は、心室から大動脈へと入り、そして肺動脈を迂回して、冠状動脈へと入る逆向性の流れを用いる。
【0160】
全体的虚血を誘導するために、流れを30分間中断させる。虚血事象の後、これらの心臓を30〜60分間再灌流する。再灌流の間、虚血誘発性細胞損傷を、Sigmaキットを用いて灌流液においてクレアチンホスホキナーゼ(CPK)(520nmでの吸光度)の活性を測定することにより決定する。コントロールとして、いくつかのエキソビボ心臓を未処置のままにするか、または酸素正常状態条件下で維持するか、またはTat−キャリアペプチド単独を用いて処置するか、または以前に同定された不活性ペプチドへと結合体化されたTat−キャリアペプチドを用いて処置する。
【0161】
これらのδV5 PKCペプチドは、上記の通りに試験した場合、虚血損傷を阻害する。
【0162】
(実施例6:虚血後のδV1−1のインビボ投与)
成体雌性ブタ(体重35〜40kg)に麻酔をかけ、そしてカテーテルを、頸動脈を通して心臓へと導入する。従来の介入心臓学技術を用いて、ワイアをカテーテルを介して、そして左前室間動脈内に配置する。バルーンをこのワイヤ上を閉塞部位へと走らせ、次いで、閉塞部位において膨張させて、血流を30分間ブロックする。この30分間の閉塞のうちの最後の10分間の間に、キャリアペプチド単独を含むコントロールまたは試験ペプチド(必要に応じて、上記のキャリアTatペプチドへと結合体化される)のいずれかを、ゆっくりとして拡散(1mL/分)によって、閉塞の下流に直接的に送達する。約20μgの試験ペプチド(体重1kgあたり約400ng)を投与する。
【0163】
30分間の閉塞後、このバルーンを除去し、そしてブタを、手術から回復させる。5日後、ブタを安楽死させ、そして心臓を収集する。心臓除去後、LADを閉塞させる。適所での閉塞を用いて、Evans Blue色素(これは、梗塞の危険性がない全ての領域を青色に染色し、一方、血流と接近しない全ての領域を赤色のままにする)を灌流する。次いで、心臓をスライスに切断し、そしてテトラゾリウム赤色色素(これは、全ての生存領域を赤色に染色し、梗塞を起こした死んだ組織を白色に染色する)で染色する。各心臓は、複数の組織スライスを有し、独特の領域が、虚血についての危険性のある領域および梗塞を起こした領域と一致する。このことから、各スライスおよび心臓全体についての危険性のある領域あたりの梗塞のパーセントを決定する。
【0164】
δV5 PKCペプチドは、上記の通りに試験した場合、虚血損傷を阻害する。
【0165】
(実施例7:発作損傷保護についての、ラットへのインビボ投与)
(A.大脳虚血モデル)
成体雄性Sprague−Dawleyラット(280〜320gの間の体重)を用いる。動物を、全ての手術手順の間、イソフルラン麻酔下で維持する。生理学的パラメータをモニタリングし、そして正常範囲内に維持する。直腸温度もまた測定する。この実験の完了時、これらの動物を過用量のバルビツレートで安楽死させ、そして組織学的分析のために調製する。
【0166】
(B.病巣モデル)
虚血を、管内閉塞縫合を用いて誘導する。炎によって先端を丸めた、3−0ナイロンモノフィラメント縫合のコーティングしていない30mmの長さのセグメントを、総頸動脈の断端へと挿入し、そして中大脳動脈の口を閉塞させるために、分岐から約19〜20mmの内部頸動脈へと前進させる。偽コントロール動物は、類似の麻酔および外科的操作を経るが、虚血を経験しない。2時間の虚血期間の最後に、この縫合を除去し、そして動物を回復させる。脳を再灌流の24時間後に収集する。
【0167】
(C.ペプチド送達)
Tatペプチドへと必要に応じて結合体化された試験ペプチド、またはTatキャリアコントロールペプチド(50μL生理食塩水中10μM溶液)を、2時間の閉塞の直前に、または2時間の閉塞の前および後のいずれかにおいて、頸動脈中に注射する。試験ペプチドの最終血液濃度は、1μMである。
【0168】
(D.組織学)
動物を、ヘパリン処理生理食塩水で灌流し、そして脳を取り出し、そして2mmの厚さのスライスに切片化する。虚血傷害を評価するために、脳切片を、クレシルバイオレットまたはトリフェニルテトラゾリウムクロリド(梗塞の領域を示すための生組織染料)で染色する。次いで、梗塞(白色)の領域を、以前(Yenari,M.A.ら,1998;Maier,C.ら,1998)に記載された画像解析システムを用いて測定する。
【0169】
δV5 PKCペプチドは、上記の通りに試験した場合、虚血損傷を阻害する。
【0170】
本発明を、本発明の特定の実施形態を参照して記載してきたが、種々の変更が行われ得、そして等価物が、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく置換され得ることが当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの工程を、本発明の目的、趣旨および範囲に適応させるために、多くの改変がなされ得る。このような全ての改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。上記に引用した全ての特許および刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
(配列表)
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14】


【表15】


【表16】


【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
δPKCアイソザイムによって調節される疾患状態について処置するための薬学的組成物であって、治療有効量の、(a)配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30、ならびに(b)(a)におけるアミノ酸配列における保存的アミノ酸置換を有し、かつ、δPKCアイソザイムによって調節される疾患状態の処置の活性を有するペプチドからなる群より選択されるペプチドを含み、該処置を必要とする哺乳動物へと投与するために処方されたものである、薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号26のN末端の2アミノ酸を含まない、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが、キャリアペプチドに結合体化されている、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合している、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが、配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
(a)配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30、ならびに(b)(a)におけるアミノ酸配列における保存的アミノ酸置換を有し、かつ、δPKCアイソザイムによって調節される疾患状態の処置の活性を有するペプチドからなる群より選択されるδPKC V5ペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、配列番号26のN末端の2アミノ酸を含まない、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、キャリアペプチドに結合体化されている、請求項6に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、ポリ−Arg、Tat、またはDrosophila Antennapediaホメオドメインから選択されるキャリアペプチドにCys−Cys結合している、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号27、配列番号28、配列番号29および配列番号30からなる群から選択される、請求項6に記載のペプチド。
【請求項11】
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および請求項6に記載のペプチドを含む、処方物。
【請求項12】
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および請求項8に記載のペプチド/キャリア結合体を含む、処方物。
【請求項13】
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および請求項9に記載のペプチド/キャリア結合体を含む、処方物。
【請求項14】
薬学的処方物であって、薬学的に受容可能な賦形剤および請求項10に記載のペプチドを含む、処方物。

【公開番号】特開2012−176978(P2012−176978A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−128849(P2012−128849)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2003−586176(P2003−586176)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】