説明

プロテインAおよびイオン交換クロマトグラフィーによる抗体精製

プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製された抗体から漏れ出たプロテインAを選択的に除去するための新規な方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、生物工学的生成における抗体精製の分野に関する。本発明の目的は、このような抗体の精製のための新規なプロセスについて説明することである。
【0002】
プロテインAクロマトグラフィーは、抗体の工業的製造において広く使用されている。これは、細胞培養上清から単一工程で抗体(すなわち通常はIgG)のほとんど完全な精製を可能にするからである。プロテインAアフィニティーカラムは、繰り返し使用することによってカラムからのリガンドのある程度の漏れは避けられない。部分的には、これはカラムからのプロテインAのタンパク質分解性の切り取りが原因である。薬学的適用のための抗体の工業的製造において、プロテアーゼ阻害剤カクテルは、規制上の理由のために加えられない。不幸にも、このプロテインAまたはプロテインA断片汚染物質はIgGについてのその親和力を保つので、継続している複合体構成のために、精製抗体から取り除くことが難しい。細菌性タンパク質であるプロテインAは、不必要な免疫反応を誘発するので、その除去は必須である。さらに、単量体IgGに対してプロテインAを加えることによって形成されるモデル複合体が、Fc支持白血球および補体系を活性化し、インビトロにおいてオキシダントおよびアナフィラトキシン活性を生み出すことが報告されている(Balint etal., Cancer Res. 44,734, 1984)。
【0003】
組換え型の化学種が単一のチオエステル結合を介してカラムマトリックスに付着しているUS 6,399,750に示された組換え型のプロテインA化学種の商品化は、より大きい容量のプロテインAカラムを可能にする。付随する不利な点として、このような組換え型プロテインAマトリックスの漏れ速度は、CNBrカップリングによって得られた多くの伝統的な複数の場所で付着した天然のプロテインAマトリックスとは対照的にしばしば劇的に増加する。従って、プロテインA汚染物質の除去を、複合体化したIgGの付随した除去を伴わずに進行させるべきである。
【0004】
Balint et al.(ibd.)は、ゲル濾過によってIgG-タンパク質複合体を未複合体化IgGから分離できることを実証した。この方法の不利な点は、低処理量および抗体収量の減少である。
【0005】
US 4,983,722は、汚染物質プロテインAを、プロテインAで精製された抗体製剤から選択的に分離することを教示する。この混合物を陰イオン交換材料に吸収させ、増加するイオン強度の条件下で抗体およびプロテインAを経時的に溶出させることによって両成分を分離する。この解決方法は、特異的である抗体のpIに強く依存し、与えられる抗体に応じて大きく変化する。さらに、分離を行うために必要とされる塩勾配の険しさによって処理量が制限される。
【0006】
本発明の目的は、プロテインAまたはプロテインA断片を抗体、好ましくはIgGから分離する方法であって、先行技術の不利益を回避するための他の方法を発明することである。本発明によれば、その目的は、独立した請求項1および9に基づいて達成される。
【0007】
本発明によれば、抗体を精製するための方法を考案した。当該方法は、第1に、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する。プロテインAは天然のプロテインAまたはその機能的誘導体である。
【0008】
第2に、プロテインAまたはその機能的誘導体の結合を可能にする条件下で、陰イオン交換材料上に前記精製された抗体をロードする。第3に、全ての汚染物質プロテインAまたはプロテインA誘導体がイオン交換材料に結合している間に、イオン交換材料上にロードされた前記抗体をイオン交換体の貫流中に収集し、好ましくは前記抗体の量の少なくとも70%を収集し、より好ましくは少なくとも80%を収集し、最も好ましくは少なくとも90%を収集する。
【0009】
プロテインAは、黄色ブドウ球菌に見出される細胞表面タンパク質である。これは、哺乳類の抗体、特にIgGクラスの抗体のFc領域を結合する性質をもつ。与えられたクラスの抗体の中では、化学種起源および抗体サブクラスまたはアロタイプに関して親和力がわずかに変化する(reviewed in Surolia, A. et al., 1982, Protein A: Nature's universal, antibody', TIBS 7,74-76 ; Langone et al. , 1982, Protein A of staphylococcus aureus and related immunoglobulin receptors, Advances in Immunology 32: 157-252)。プロテインAは、プロテインAを分泌している黄色ブドウ球菌の培養物から直接的に単離することができ、あるいはより便利には大腸菌内で組換え的に発現させる(Lofdahl et al. , 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 697-701)。抗体、特にモノクローナルIgGの精製のためのその使用は、先行技術において十分に説明されている(例えばLangone et al., supra; Hjelm et al,1972 ; FEBS Lett. 28: 73-76)。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの使用のために、個体マトリックス、例えば架橋された無電荷のアガロース(Sepharose, freed from charged fraction of natural agarose)、トリスアクリル(trisacryl)、架橋デキストランまたはシリカベースの材料とプロテインAを結合させる。このような方法は当業者に広く知られており、例えばタンパク質の一級アミノ官能基を介してCNBr活性化マトリックスと結合させる。プロテインAは、IgGのFc部分、すなわちLangone et al., 1982,supraに記載されたIgGのCγ2-Cy3境界面領域に対して高い親和力および高い特異性をもって結合する。特に、プロテインAは、ヒトアロタイプまたはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3およびマウスアロタイプまたはサブクラスIgG2a、IgG2b、IgG3と強く結合する。プロテインAはまた、VH遺伝子ファミリー、VHIIIによってコードされている免疫グロブリンのFab領域についての親和力を示す(Sasso et al., 1991, J. Immunol, 61:3026-3031 ; Hilson et al., J Exp. Med., 178: 331-336 (1993))。プロテインAをコードする遺伝子の配列は、2つの機能的に異なる領域を明らかにする(Uhlen et al., J. Biol. Chem., 259: 1695-1702(1984); Lofdahl et al., Proc. Nutl. Acad. Sci. (USA), 80: 697-701 (1983))。アミノ末端領域が、5つの高い相同性のIgG結合ドメインを含み(E、D、A、BおよびCと命名される)、カルボキシ末端領域が、細胞壁および膜に対してタンパク質を固定する。プロテインAのBドメインの場合においてDeisenhofer et al.(1981, Biochemistry 20: 2361-2370)およびSauer-Eriksson et al.(1995, Structure 3: 265-278)に結晶構造について示されるように、プロテインAの全ての5つのIgG結合ドメインは、例えばヒトのIgG-Fc残基252-254, 433-435および311を含むFc領域を介してIgGと結合する。Fc部分の2つの主要な近接する結合部位の発見は、Gouda et al., 1998, Biochemsitry 37: 129-136のNMR解法研究において確認された。原則として、プロテインAのIgG結合ドメインA〜Eの各々が、IgGのFc部分と結合するのに十分である。
【0010】
さらに、ヒトのVH3ファミリーの対立遺伝子は、ヒトIgのプロテインAによる任意的結合を仲介することが解った(Ibrahim et al., 1993, J. Immunol. 151: 3597-3603; V-region mediated binding of human Ig by protein A)。本発明のもう1つの別な目的における本出願の内容において、プロテインAに対する抗体のFc領域結合への適用について言及した全ては、抗体のFc領域がそれ自身に対する高親和性プロテインAの結合を可能にしない場合において、VH3ファミリープロテインA結合対立遺伝子を介した抗体の結合にも同様に適用する。主要なFcに基づいた本発明の方法の等価な実施形態が考えられうる。後者については後続の項においてさらに説明する。
【0011】
本発明によるIgG抗体は、高親和性型のプロテインAと結合することができるアロタイプの抗体として理解されるべきである。さらに、プロテインAとの結合に関連性のある抗体のFc部分を除いて、抗体は天然に生じる抗体と一致する必要はない。特に、その可変鎖領域部分では、当該技術において日常的に考案されるような加工されたキメラまたはCDR移植抗体とすることができる。本発明によるIgG抗体は、簡単に言えばIgGタイプの抗体として理解されるべきである。
【0012】
本発明によるプロテインAの機能的誘導体は、マウスIgG2aまたはヒトIgG1のFc部分に対して少なくともK=10-8M、好ましくはK=10-9Mの結合定数によって特徴づけられる。このような結合定数の値に従う相互作用を、本願明細書では「高親和性結合」と呼ぶ。好ましくは、このようなプロテインAの機能的誘導体は、野生型のプロテインAの機能的IgG結合ドメインの少なくとも一部を含み、このドメインは、天然ドメインE、D、A、B、CまたはIgG結合機能性を保持する加工されたその変異体から選択される。このような例は、US 6013763において示された抗体精製のために使用し得るプロテインAのドメインBの機能的59アミノ酸「Z」断片である。しかしながら、本発明による抗体結合断片は、好ましくはこの段落で定義されたような少なくとも2つの完全なFc結合ドメインを含む。このような例は、例えば、Repligen CorporationからのEP-282 308およびEP-284 368の両方に開示された組換え型プロテインAの配列である。
【0013】
さらに、先の段落に定義されたプロテインAまたは機能的プロテインA断片またはその誘導体またはこれらの組み合わせは、好ましくは単一点での結合を可能にするように加工されたプロテインA断片である。単一点での結合とは、タンパク質の官能基がプロテインAアフィニティークロマトグラフィーのクロマトグラフィー支持材料との単一の共有結合を介して付着されていることを意味する。理想的にはループ形状における露出したアミノ酸部分に位置する適切な反応性残基によるこのような単一点での付着は、NまたはC末端に近く、タンパク質の折り畳みの外側周辺の他の場所に近い。適切な反応基は、例えばスルフヒドリルまたはアミノ官能基である。より好ましくは、このような組換え型のプロテインAまたはその機能的断片は、そのアミノ酸配列中にシステインを含む。最も好ましくは、システインは、組換え型のプロテインAまたはその機能的断片のC末端アミノ酸配列の最後の30個のアミノ酸からなる部分に含まれる。このようなタイプのさらなる好ましい実施形態において、組換え型のプロテインAまたはその機能的断片は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー媒体のクロマトグラフィー支持体またはマトリックス材料に対して、チオエーテル硫黄結合を介して少なくとも50%まで付着される。このような実施形態の例は、例えばPharmaciaからのUS 6399750に記載され、かつ使用される支持マトリックスの性質に基づいて、Amersham-BiosciencesからのStreamlineTMまたはMabSelectTMの商品名のもとで商業的に利用可能である。本願明細書では、チオエーテルは、この点について通常の化学用語から逸脱する化学背景とは関係なく、−S−の結合スキームとして狭く理解されるべきである。例えば、本発明による前記−S−「チオエーテル」架橋は、本願出願の内容に関しては、化学者の反応性に基づいた通常の用語から逸脱して、より大きな官能基、例えばチオエステルまたは混合アセタールの一部である。好ましくは、チオエーテル架橋は、その通常の、狭い化学的意味でのチオエーテル架橋である。このような架橋チオエーテル基は、例えばプロテインAのスルフヒドリル基のシステイン残基を、活性クロマトグラフィー支持材料上に存在するエポキシド基と反応させることによって生み出すことができる。末端のシステイン残基では、タンパク質の露出した唯一のスルフヒドリル基の結合のみを可能にするような適切な条件下で反応を行うことができ、結果としてこのようなタンパク質の単一点での付着を生じる。
【0014】
特に好ましい実施形態では、本発明によるプロテインAまたは機能的プロテインA誘導体は、末端近傍に加工されたシステイン残基を含むUS 6399750に開示された組換え型のプロテインAであり、好ましくは少なくとも50%まで、より好ましくは少なくとも70%まで、唯一の付着点としての前記システイン残基の硫黄原子を通してクロマトグラフィー支持材料に結合している。さらに好ましくは、このような結合は、エポキシド仲介活性化によって達成され、より好ましくは、例えばSepharose Fast Flow(agarose beads crosslinked with epichlorohydrin, Amersham Biosciences, UK)といったアガロースマトリックスの1,4-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)ブタン活性化によって、または、例えばSepharose FFといったアガロースマトリックスのエピクロルヒドリン活性化によって達成される。第1のイオン交換体が、陰イオン交換体、特にSepharose QTM FF(Amersham-Biosciences/Pharmacia)といった4級アミンに基づいた陰イオン交換体であり、最も好ましくは機能的交換体基Qをマトリックス支持体に結合させた陰イオン交換体であって、前記基QがN,N,N-トリメチルアミノ-メチルである陰イオン交換体であり、最も好ましくは陰イオン交換体がPharmacia/Amersham BiosciencesからのSepharoseQTM FFであることが、この段落による上述の好ましい実施形態との組み合わせにおいてさらに好ましい。4級アミノ基は、ローディング/ウォッシュバッファーのpHの変化を受けにくい強力な交換体である。高速流の交換体マトリックスは、より高い物理的安定性のために高度の架橋を有する45〜165μmのアガロースビーズに基づいている。セファロースはさらに、天然アガロースの帯電した硫酸化分子画分を欠いており、大量の抗体をロードする条件下でさえも抗体の非特異的マトリックス吸着を許さない。このような実施形態の例は、実験の項において見出すことができる。
【0015】
本発明による汚染物質プロテインAは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムから結合抗体を溶出させるときに得られる、上記に定義したようなプロテインAまたはその機能的誘導体の任意のタイプの機能的IgG結合産物である。このような汚染物質プロテインA化学種は、例えば、特に工業的製造における酵素作用によって非常に起こり易いペプチド結合の加水分解から生じ得る。プロテインAクロマトグラフィーは、大ざっぱに精製された新鮮な製品溶液が依然として相当なプロテアーゼ活性を有するときに、下流のプロセスのより早い段階として適用される。細胞培養液中の死細胞または最初の遠心分離もしくはろ過工程において破壊された細胞は、プロテアーゼを遊離しやすい。生化学的研究プラクティスとは対照的に、規制目的のために、下流のプロセスの前または最中におけるプロテアーゼ阻害剤を含む細胞培養液の補充は通常行われない。例としてはフェニル-メチル-スルホニル-塩化物(PMSF)またはε-カプロン酸がある。このような化学薬剤は、生物学的薬剤の生産における添加物として望ましくない。さらに、プロテインAの組換え型の機能的誘導体またはその断片は、野生型のプロテインAと比較して、タンパク質の折り畳みの三次構造に依存するプロテアーゼ抵抗力が弱いおそれがある。個々のIgG結合ドメインをつなぐアミノ酸部分は、いったん結合ドメインの総数が減少すると露出してしまうおそれがある。ドメイン間の接触は、ドメインの折り畳みの安定性に貢献することができる。また、プロテインAまたはその機能的誘導体による抗体の結合は、抗体の結合時に導入された高次構造の変化によって、プロテアーゼ作用に対する感受性に影響を与え、その感受性を高めるであろう。また、野生型または全長プロテインAまたはその機能的に加工された断片は異なる挙動を示す。好ましくは、本発明による汚染物質プロテインAは、未だ機能的なIgG結合タンパク質であり、本発明による後のイオン交換分離媒体上に流されるプロテインAによって精製された抗体に会合している。汚染物質プロテインAの精製抗体との高い親和力に基づいた会合が、汚染物質プロテインAを精製抗体から効率的に分離することを困難にする理由である。
【0016】
好ましくは、本発明によれば、精製を試みる抗体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する前に細胞培養物から収集される。より好ましくは、前記細胞培養物は哺乳類の細胞培養物である。哺乳類の細胞は、死細胞または収集細胞では破壊されている消化酵素を有するリソソームと呼ばれる大きな区画を備える。特に前記細胞培養物は、例えばNSO細胞といったミエローマ細胞培養物とすることができる(Galfre,G. and Milstein, C. MethodsEnzymology, 1981,73, 3)。ミエローマ細胞は、プラズマ細胞腫、すなわちリンパ系の細胞系列の細胞である。模範的なNSO細胞株は、例えば、European Collection of Cell Cultures (ECACC), Centre for Applied Microbiology & Research,Salisbury,Wiltshire SP4OJG, United Kingdomから無料で入手できる細胞株ECACC No.85110503である。NSOは、特に組換え型の抗体の生産について使用される場合に、非常に高い生成物収量を生み出すことができる。その代償として、野生型プロテインAの組換え型のより短小化された断片(組換え型プロテインAはおそらく単一点付着のプロテインAである)を使用するプロテインAアフィニティークロマトグラフィー系では、NSO細胞は、少なくとも他の宿主細胞型よりも非常に高いレベルの汚染物質プロテインAを生み出すことが解っている。このような例は、StreamlineTM rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー樹脂である(Amersham Biosciences ; essentially thioester single-point attached recombinant proteinA as described in US 6,399,750)。約1000ngの汚染物質プロテインA/mg抗体またはこれを超えるレベルが、StreamlineTM rProtein Aアフィニティーカラムにおいて生じてしまう。単一の高速精製工程において、汚染物質プロテインAを前記上昇したレベルから<1 ng/mg抗体まで効率的に減少させる、すなわち約1000倍の精製効率を有する本発明の方法は、先行技術とは区別される。
【0017】
さらに、単独または先の段落との組み合わせにおいて、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製される抗体は、収集時または収集後にプロテアーゼを不活性化させるために処理されないのが好ましく、より好ましくは、少なくとも1つの外因的に補充されたプロテアーゼ阻害剤とは収集後には混合しない。最も好ましくは、前記プロテアーゼ阻害剤は、PMSF、Laskowski et al.,1980に記載されたような特定のプロテアーゼ阻害ペプチド、プロテアーゼのタンパク質阻害剤、Ann. Rev. Biochem. 49,593-626、およびε-カプロン酸からなる群から選択される。
【0018】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの操作は、技術文献において広く記載されており、さらに説明する必要性はない。上記に参照したもの以外の他の例には、例えばDuhamel et al., J. Immunological Methods 31,(1979) 211-217, pH Gradient elution of human IgGl, IgG2 and IgG4 from protein A-Sepharoseがある。
【0019】
好ましくは、汚染物質プロテインAは、第1のイオン交換体の貫流中に、<10ng/mg抗体、より好ましくは<4ng/mg抗体、最も好ましくは<1ng/mg抗体の濃度まで減少する。抗体は、好ましくはIgGとして理解されるべきである。これらの閾値の確認のためのELISAアッセイ方法について実験の項で詳細に説明する。好ましくはマイルドな溶剤の存在中におけるpH≦4までのサンプルの酸性化が、漏出したプロテインAの量の正確な決定のために重要であることは留意されるべきである。この閾値は、汚染物質プロテインAの不可避的な漏れを導く第1のイオン交換体のプロテインAの結合についての流入容量を決して越えない状態において理解されるべきであることは言うまでもない。プロテインAまたはプロテインA断片を検定する適切なELISAに基づいた方法は、US 4,983,722に記載されている。適切な抗プロテインA抗体は、商業的にはSigma-Aldrichから入手可能である。特に、追加のスルフヒドリル基をもつように加工されたプロテインAの誘導体を使用するとき、基準化されたタンパク質の適切な保守が重要である。−S−S−架橋を介して形成された共有結合性の二量体または多量体は誤った結果をもたらすおそれがあるので、試験サンプルの定量化のための基準として純粋プロテインA誘導体の単量体性質を検証することが重要である。検証は、当該技術分野において習慣的であるように、還元状態または非還元状態下で、SDS-PAGE分析によって容易に行うことができる。このようなプロテインA誘導体標準溶液のDDTまたはβ-メルカプトエタノールによる還元は、ELISA技術における測定の誤差を回避するのに相応に役立つ。
【0020】
さらに、本発明による方法において、第1のイオン交換体上にロードされる少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の抗体が、イオン交換体の貫流の中に回収され得るのが好ましい。
【0021】
本発明による第1のイオン交換体は、陰イオン交換体樹脂である。プロテインAは、上述したような両タイプの樹脂に結合することができる(EP-289 129B1)。第1のイオン交換体または陰イオン交換体は、ゆるやかに撹拌されたサンプル溶液で陰イオン交換樹脂を浸し、続いてろ過によって液体培地を交換することによって、一定の流速のカラムモデルまたはバッチ操作モードで操作することができる。本発明によれば、与えられた抗体のpIを考慮して、第1のイオン交換体にロードするためのpHの適切な条件およびイオン強度を規定することができ、この条件は貫流中に抗体を保持し、その間にプロテインA汚染物質が結合して抗体から取り除かれる。前に述べたように、本発明による方法は、汚染物質プロテインAからの抗体のより速い分離を可能にする。マトリックス支持体に付着する第1の陰イオン交換体の官能基の例は、例えば1級、2級、および特に3級または4級アミノ基、例えばアミノエチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアミノエチル、トリメチルアミノメチルおよびジエチル-(2-ヒドロキシプロピル)-アミノエチルである。陰イオン交換体のための適切なクロマトグラフィー支持体マトリックスが当業者に知られている。アガロースに基づいた樹脂およびビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレンビーズおよびポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂がその代表例である。最も好ましくは、陰イオン交換体は、アガロースマトリックス、例えばAmersham-Biosciences/PharmaciaからのSepharose CL-6BまたはSepharose Fast Flow(FF)上に固定された4級アミンに基づいた陰イオン交換体である。このような陰イオン交換体の例としては、Amersham-Biosciences/PhamiaciaからのSepharose QTMがある。第1のイオン交換体の使用との組み合わせにおいて、本発明による抗体は、上述の少なくとも2つのpH単位に等電点(pI)をもつモノクローナル抗体であるのが好ましい。すなわち、先行するプロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程中で使用されたプロテインAのpIよりも塩基性である。例えば、天然のプロテインAは約5.0のpIをもち、合理化された組換え型のプロテインAは、約4.5のpIをもつ。好ましくは、本発明による抗体は、少なくとも6.5以上、より好ましくは7.0以上、最も好ましくは少なくとも7.5以上の等電点(pI)をもつモノクローナル抗体である。これは、実際に収集されて精製された抗体のpIを意味し、アミノ酸配列から単に予測されたpIではないことに留意すべきである。実際に精製された抗体分子は、ポリペプチドの背骨の修飾、例えばグリコシル化を受けていてもよい。修飾は帯電した基を加えるので分子のpIを変化させる。等電点電気泳動(IEF)による抗体生成物についてのpIの決定において、抗体タンパク質、例えばモノクローナル抗体タンパク質の翻訳後修飾の微小不均一性は、個々の生成物である抗体糖タンパク質分子についての幅のあるpI範囲を導く。これは、単一のバンド、すなわち生成物の少なくとも過半数についての特定の数値ではなくIEFゲル中のにじみに関連している。本発明によれば、上述の好ましい実施形態において、「抗体のpI」とは、上記に特定されたpIの好ましい範囲内にある抗体生成物分子の比率をいう。この説明の全ての定義、例えば精製工程後に回収された抗体の%比率は、抗体の前記pI適合比率をいう。
【0022】
本発明による第1のイオン交換体の操作モードは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程の酸性および中和性溶出液と第1のイオン交換体の平衡バッファーとのバッファーの交換を必要とする。平衡バッファーおよびローディングバッファーは、本発明の方法において同一である。例えばSephadex G-25といった低分子重量の多孔質ろ過マトリックスを使用する間における希釈効果を避けるために、一般に使用されている限外ろ過装置、例えばAmiconまたはMilliporeによって市販されているものを便宜上使用することができる。本発明による平衡バッファーは、好ましくは1〜150mM、より好ましくは5〜110mM、最も好ましくは20〜100mMの範囲内にある置換塩、例えば塩化ナトリウムの塩濃度を有する。平衡バッファーのpHは、好ましくはpH6.5〜pH9.0、より好ましくはpH7.5〜pH8.5、最も好ましくはpH7.9〜pH8.4の範囲内にある。タンパク質のN末端アミノ官能基は約9.25のpKs値を有し、汚染物質プロテインAおよび任意の他の既に負に帯電されたプロテインAの陰イオン交換体に対する結合は、より塩基性のpHで一層強くなるであろうことに留意すべきである。与えられた適用について、ローディングバッファーのpHは、pHの選択された範囲内での電荷の変化に貢献できる異なるpI値および異なる含量のシステインおよびヒスチジン側鎖を有する、抗体と汚染物質プロテインAのペアについての結合および非結合の至適な区別のための微調整を必要とするかもしれない。さらに、pHをより塩基性にするとイオン強度が増加するので、プロテインA-抗体相互作用は妨げられる。同様に、イオン強度は、抗体の結合の防止と汚染物質プロテインAの結合を取り除く必要性とのバランスをとるために微調整を必要とする。バッファーのイオン強度が通常はpH値と反比例的な相関関係に立つことは、当業者にとって言うまでもない。プロテインAがpHに依存しながら陰イオン交換体とより強力に結合すればする程、塩が抗体の結合を一層強く防止し、かつ潜在的なプロテインA-抗体相互作用を一層強く妨げる。従って、pHおよび置換塩についての上述した範囲には相関関係があることを理解すべきである。pHが低下すればする程、本発明を機能させるための上記に得られた好ましい範囲内において塩の許容性が一層低下していくのが解る。pHバッファー物質によってさらなる塩フレイト(freight)が加えられると、さらに溶液のイオン強度が増加する。イオン強度は、平衡バッファーの導電率を測定することによって決定することができる。用語「導電率」とは、2つの電極測定値間に電流を流す水溶液の能力をいう。イオンの総量は、さらに電荷とイオン移動度とを考慮に入れる。それゆえ、水溶液中に存在するイオンの量が増加すると、溶液はより高い導電率を示す。導電率についての測定の単位は、mS/cm(milliSiemens/cm)であり、商業的に利用可能な導電率測定器(例えばTopac Inc. (Hingham, MA/U.S.A.)またはHoneywellから入手可能)を使用して測定することができる。本願出願の内容において、全ての数値は25℃での特定の導電率に属する。好ましくは、第1のイオン交換工程のためのローディングまたは平衡バッファーは、0.5〜5 mS/cm、より好ましくは1〜3 mS/cm、最も好ましくは1.25〜2.5 mS/cmの導電率を有する。理想的には、約2 mS/cmの導電率を有する。適切なバッファーの塩の例は、Good,N.E.(1986, Biochemistry 5:467-476).E.gに見出すことができる。習慣的に使用されるものとしてトリスHClバッファーまたは亜リン酸水素ナトリウムバッファーが適切なバッファー物質である。バッファー物質の濃度は、習慣的に例えば10〜40 mMバッファー塩の範囲内にある。バッファーを考案するために役に立つ潜在的な陰イオン種の中で、塩化物と比較したときにより低い陰イオン溶出の特定の強度(低溶出強度の性質は、イオン電荷の密度とおおよそ反比例的な相関関係に立ち、かつイオンの大きさとおおよそ比例的関係に立つ)をもつものが好ましい。イオン溶出強度の実験比較は、標準的な生化学の教科書の中で表になっている。より好ましくは、本発明によるバッファー物質はリン酸塩バッファーである。リン酸水素は、特に8以下のpHで行う場合に低溶出強度を示す。さらに、特に低い攪乱(chaotropic)性質によって優れている。
【0023】
バッチモード操作が可能であるがゆえに、カラム操作モードが第1の陰イオン交換体の工程について好ましい。この場合において、約10〜60 ml/hの流速を有利に使用することができる。抗体のローディング濃度は、10〜30 mg抗体/ml交換樹脂の範囲内にあるのが好ましい。当業者に知られているように、極端に希釈されたサンプルの使用が抗体の収量を減少させることは言うまでもない。精製を試みる抗体を、同じ平衡バッファーでの約1カラム容積の洗浄を含むローディング操作の貫流中に収集した。貫流のpHは、安定性を向上させ、かつ抗体タンパク質の凝集および/または沈殿を防ぐために中性pHに調節してもよい。
【0024】
第1の陰イオン交換体の後、抗体は使用のための準備が整う。ここで、習慣的な精製方法によるさらなる洗練を必要とすると判断されてもよい。さらなる好ましい実施形態において、第1の陰イオン交換工程は、第2のイオン交換工程によって追従される。この第2の工程では、抗体は第2のイオン交換媒体によってロードされかつ結合され、ローディングバッファー以外のバッファーで、塩および/またはpHを増加させることによって、本質的に単量体の凝集塊のない抗体として溶出される。「本質的」とは、本明細書中において5%未満を意味する。好ましくは、単独または先の項に記載された好ましい実施形態との組み合わせにおいて、第2のイオン交換体は、陽イオン交換体である。このような第1の陰イオン交換体および第2の陽イオン交換体の工程によって追従されるプロテインAクロマトグラフィー工程の組み合わせは新規なものである。細胞培養液からの最も微量な汚染物質タンパク質が、抗体(特にIgG抗体)よりもかなり低いpI値を有することはよく知られている。従って、陽イオン交換は、凝集した抗体および潜在的な感染物質(例えばウイルスキャプシド)ならびに抗体以外のタンパク質汚染物質の両方の効率的な除去を可能にするであろう。迅速な操作、ローディング、同および高容量のローディングでの結合およびそこからの溶出後の抗体の高い効率的な回収のために、結合および溶出の1回転で達成される精製率の付加的効果をもつ抗体の単一バッチでの繰り返しの循環操作を可能にする。好ましくは、ローディングバッファーのpHは、約pH 4〜7、より好ましくはpH 4.01〜6、最も好ましくはpH 4.02〜5.5である。さらに好ましくは、抗体は、0.1〜1.2 M塩の範囲内にある塩勾配で陽イオン交換体から溶出される。前記塩は、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはリチウム、カリウムまたはナトリウム塩である。好ましくは、凝集塊の除去を最大化し、かつ酸性条件が原因の抗体の損傷を最小化するために、溶出はpH 7〜8のpHで行う。任意的に好ましくは、汚染物質プロテインAの除去を最大化するために、溶出はpH 4〜7、より好ましくはpH 4.01〜6の酸性pHで行う。この方法において<0.4 ng/mg抗体ほどの低いレベルを実現することができる。この第2の陽イオン交換体工程は、伝統的なゲルを無意味にする一方で、イオン交換体について典型的であるように高容量および高速操作を可能にする。イオン交換体の支持体は、10〜30 mg抗体/ml樹脂のローディングを支える。特に好ましい実施形態において、プロテインAクロマトグラフィーの後の第1の陰イオン交換体および第2の陽イオン交換体の工程による精製方法は、さらなる末端サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)工程を除外して医療用レベルの抗体を与える。
【0025】
このSEC工程は、抗体凝集塊および/または抗体−プロテインA複合体を単量体の抗体、例えば正常なIgGから分離するのに適切な分子量を切り捨てる。
【0026】
一般的注意事項として、本発明の方法は、プロテインAが持っているエピトープに対して生じさせる抗体を利用することはできない。これは当業者にとって明らかな制限であるけれども、このような抗体は放棄される。
【0027】
本発明の方法の最も魅力的な特徴は、非結合または貫流モードにおいて陰イオン交換体を介して抗体を精製することである。カラムの容量は材料のスループットを制限するとは限らない。カラムは少量の汚染物質プロテインA残留物についてのみ決定的である。これは、プロテインA汚染物質の非常に効率的な除去を可能にする間、多くの処理回数と材料資源をセーブする。
【0028】
実験
1.プロテインA ELISA
プロテインAまたは組換え型のプロテインAの試験用の多数のELISAが記載されている(US 4983722および本明細書中に記載された参照文献を参照)。以下に記載れた全ての作業のために、平坦底の96穴マイクロタータプレート(NuncTM)上にコーティングされた捕捉用の抗プロテインA抗体がプロテインAを保持する、単純なサンドイッチ型のELISAを使用した。その後、結合したプロテインAを、ストレプトアビジンを抱合したホースラディッシュペルオキシダーゼを結合することができるビオチン化された抗プロテインA検出用抗体で検出した(Amersham ♯RPN 1231)。捕捉用の商業的に利用可能な抗プロテインAウサギ抗体(天然の黄色ブドウ球菌のプロテインAに対して産生された)がSigma-Aldrich (#P-3775)から入手可能である。この抗体はこの研究を通して使用された。検出用ウサギ抗体をSigma-Aldrich(#3775)から同様に購入した。非特異的吸着プロセスによってタンパク質をコーティングした後、コーティングされたタンパク質は、プロテインA−特異的なプロテインA捕捉用抗体を保持するために使用された。捕捉用抗体は、さらにビオチン化されたウサギ抗プロテインAおよびストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼで検出された。テトラメチルベンジンは、色素生産性物質として使用された。未知の濃度のサンプルは、検出を試みるプロテインAまたは汚染物質プロテインAのプロテインA誘導体そのものを使用する標準曲線に対して読取られる。酸性pHでのコーティングおよび標準溶液の適切な調製は重要である。特に、付加的なシステイン残基を有するように加工された組換え型のプロテインA、例えばStreamline protein ATM (Amersham Biosciences, formerly Pharmacia)については、標準溶液は、タンパク質標準溶液の単量体状態を保障するために、スルフヒドリル還元剤での前処理を必要とすることが解った。
【0029】
これとは対照的に、標準化された野生型のプロテインAは、多数の会社、例えばSigma-Aldrich/Switzerland(#P6031)またはPharmacia(#17-0770-01)から商業的に入手可能であり、かつこのような前処理を必要としない。StreamlineTM matrixから汚染物質プロテインAの漏れを観察する以下に記載の実施例のために、製造業者から得られた未結合の組換え型プロテインAのサンプルを標準物質として使用した。
【0030】
1.1 Cys富化プロテインAの前処理−標準化
StreamlineTMプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Amersham Biosciences)カラム材料中で商業的に使用されるような純粋な組換え型のプロテインA-Cysは、Pharmacia/Amersham Biosciencesから凍結乾燥状態で得られた。20mg/mlまでのタンパク質は、0.5M NaCl、1mM EDTAおよび20mMジチオエリスリトールを含む0.1MトリスpH8中に溶解され、15〜30分間室温でインキュベートされ、使い捨てのPD-10ゲルろ過カラム(Amersham Biosciences)で脱塩化された。コーティング前に標準溶液を操作するために使用される全てのバッファーは、チオール基の酸化を防止するためにN2で処理されるべきである。標準化されたタンパク質の調製は、マイクロタータプレートをコーティングする標準溶液の使用のできるだけ直前に行われた。任意的に、1mg/mlのストック溶液を調製し、冷凍庫中で-65℃に保持した。解凍後、プロテインAの単量体の特性が、非還元SDS-PAGE上にロードされたアリコットから検定された。標準化されたタンパク質の濃度は、ブラッドフォードアッセイ(Bradford et al., 1976, Anal.Biochem. 72:248-254 ; Splittgerber etal., 1989, Anal. Biochem. 179: 198-201)および自動化されたアミノ酸分析によって決定された。このような前処理の結果を、非還元10%SDS-PAGEによって図1中に示した。標準化されたブドウ球菌性のプロテインA(レーン1:天然のプロテインA;レーン2:前処理後)および純粋な未結合のStreamlineTM組換え型のプロテインA(Phamlacia、現在のAmersham-Bioscicnsesの好意によって提供された;レーン4:天然の組換え型のプロテインA;レーン5:前処理後)。レーン1は、相当する分子量が垂直軸上に表示されている分子量マーカーである。付加的なCys残基を有するPhamlaciaからの組換え型プロテインAは、還元後により低分子量にシフトする。約34kDでの単量体のバンドが保存され、かつより一層強くなっている。これがジスルフィド架橋ダイマーの解離に由来していることは明らかで
ある。
【0031】
1.2 ELISA
1.2.1 サンプルの調製
2つの希釈工程によって、1mg/mlプロテインA標準ストック溶液の1:200.000希釈溶液を調製し、50ng/mlの1番上の標準溶液を提供した。その後直ちに、0.2ng/mlまで低下させた希釈液を、標準曲線を検定するために調製した。さらに、この標準化(「スパイキング溶液」)の希釈液を、サンプル中の妨害物質の存在を排除するために、試験対象の二重の生成物サンプルのスパイキングのために使用した。
【0032】
試験を行う最終生成物サンプルのために、全てのサンプルを500μlの2つの等しい量に分けた。一方を1000ng/mlスパイキング溶液でスパイクし、適切な場合は10μg/ml溶液でスパイクし、1mgの抗体当たり10ngプロテインAの最終プロテインA含量を与えた。もう半分を同じ量の同じバッファーでスパイクした。スパイキングによる生成サンプルの希釈率を計算した。両タイプの調製液を、以下「スパイクされたサンプル」と呼ぶ。サンプルバッファーを、7.51gグリシン(塩基)、5.84g NaCl、0.5mlトリトンX-100から1Lの量まで脱イオン化水または蒸留(bidestillated)水で調整した。
【0033】
最適な正確な測定のために、サンプル中の抗体濃度を当業者に周知の習慣的なELISAによって予め決定した。酸性化工程の効率を決定し、かつ検定中の捕獲からプロテインAと結合してこれを捕捉してしまう抗体によって導入される潜在的な誤差を補正し易くするために、さらなる標準溶液を、プロテインAについての匹敵しうる定常領域親和性の既知の標準抗体の等しい量でスパイクした。
【0034】
酸性化:450μlのスパイクされたサンプルまたは標準溶液に、200μlの0.2 Mクエン酸塩/0.05%トリトンX-100バッファーをpH3.0で加えた。全てのサンプルについて三重試験を行った。さらに、サンプルの希釈液を調製して三重試験を行った。抗体濃度についての最適な検定結果は、1 mg/ml〜0.2 mg/mlの範囲にあるからである。酸性化工程は、さもなければサンプル溶液中に存在する超過の抗体と結合してしまう汚染物質プロテインAまたはA断片を遊離させる当該検定において重大である。
【0035】
1.2.2 マイクロタータプレートの抗体でのコーティング
1.59g/L Na2CO3, 2.93g/L NaHC03および0.20g/Lアジ化ナトリウムからコーティングバッファーを調整した。バッファーのpHをpH9.6に調整した。ウェル当たり100μlの添加された抗体溶液は、標準化されたプロテインAが飽和状態を示さないように十分な量の抗体を含んでいる。プラスチックフィルムでプレートを覆い、湿潤容器中に置いた。37℃で終夜およそ18時間にわたってインキュベートした。全てのウェルを少なくとも300μlの洗浄バッファー[NaCl 5.8g/L,Na2HPO4 1.15 g/L, NaH2PO.H20 0.26g/L, EDTA 3.7g/L, Tween-20 0.2 g/L, ブタノール 10 ml/L, pH 7.2]で3回すすぎ、軽く叩いて乾燥させた。250μlブロッキングバッファー[0.5%カゼインハマルステンを含むコーティングバッファー]を各ウェルに加え、ベンチトップの回転振盪機(速度120rpm)上で外界温度で2時間にわたってインキュベートした。全てのウェルを少なくとも300μlの洗浄バッファーで3回すすぎ、軽く叩いて乾燥させた。
【0036】
1.2.3 サンプルのインキュベーションおよび検出
任意のスパイクされたサンプルを含む標準溶液およびサンプルを100μl/ウェルでプレートアウトした。プラスチックフィルムでプレートを覆い、ベンチトップの回転振盪機上で外界温度で90分間にわたってインキュベートした。全てのウェルを少なくとも300μlの洗浄バッファーで3回すすぎ、軽く叩いて乾燥させた。ビオチン化されたウサギ抗プロテインAを予め決定された最適な希釈率で希釈した。100μl/ウェルを加え、プレートをプラスチックフィルムで覆い、回転振盪機上で外界温度で90分間にわたってインキュベートした。すすぎを繰り返した。
【0037】
抱合バッファー[Na2HPO4 1.15 g/L, NaCl 5.84g/L, NaH2PO4.H2O 0.26 g/L, EDTA 3.73 g/L, トリトンX-100 0.05%(v/v), pH 7.2]を使用して予め決定された最適な希釈率でストプレトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼを希釈した。100μ/ウェルを加え、プレートをプラスチックフィルムで覆い、回転振盪機上で外界温度で45分間にわたってインキュベートした。すすぎを繰り返した。100μlの新たに調製されたテトラメチルベンジジン(TMB, ICN生成物番号#980502)置換溶液を加えた。置換溶液は以下のように調製される。ストック溶液を1mlDMSO中10mg TMBを溶解させることによって調製する。10μlの前記ストック溶液、さらに10μlのH2O2を、0.5Mのクエン酸でpH6.0に調節された2.05%(w/w)酢酸ナトリウム水溶液に加えた。検定のあらゆる試薬を調製するために使用される全ての水が最も高い品質を有することは言うまでもない。これは、脱イオン化超純水であり、少なくとも蒸留水である。
【0038】
置換溶液を振盪機上で8〜11分間にわたって外温でインキュベートした。その後、50μl/ウェルの停止溶液[13% H2SO4]を加えることによって反応を停止させた。停止溶液の添加後10分以内において、波長450nmでのウェルの吸光度をスペクトル光度計で決定する。
【0039】
このようなELISAについての検出限界は0.2ng/ml プロテインAであり、0.2〜50ng/mlの検出範囲をもつ。アッセイのばらつきは10%未満である。図2は、チオエーテル結合による単一点付着のプロテインAを含むStreamlineTM 組換え型のプロテインAクロマトグラフィーからの抗体溶出液中に漏れ出た組換え型のプロテインAのレベルを示している。サイクル数は、1M塩化ナトリウムでの溶出および再平衡後に繰り返された使用を意味している。ハイブリドーマ細胞培養物由来の細胞培養液からの漏れは、典型的には500ppmのオーダーであり、他の細胞タイプでは1000ppm程度のレベルを与える。異なる材料からの漏れの割合についての概要を表1に与える。クロマトグラフィーを製造業者の説明書に従って行った。
【表1】

【0040】
図3はさらに、同じ親和性マトリックス材料でのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーの繰り返しの操作中における汚染物質プロテインAの微弱な減少した漏れについてのデータを提供する。野生型のプロテインAの多点付着のセファロース4FF(Amersham-Biosciences)は、以下のセクション2.1に記載されたように繰り返し使用され、溶出液中の汚染物質プロテインAのレベルは、溶出液の任意のさらなる処理の前に、上述したようなELISAによって決定された。
【0041】
2.プロテインAおよびセファロースQクロマトグラフィー
2.1 StreamlineTMのプロテインAアフィニティークロマトグラフィー
NSOミエローマ細胞培養物からの細胞培養物上清を、遠心分離によって大ざっぱに精製し、深層ろ過を行い、限外ろ過によって濃縮した。限外ろ過を使用して培養液をpH7.5のPBSで交換した。細胞によって生成された抗体#5の力価は0.2mg/mlであり、1L バッファーで交換された上清の全てをロードした。モノクローナル抗体#5のpIは8.5であった。プロテインAStreamlineTMカラム(5.0ml 体積)を、50mMグリシン/グリシン酸塩pH 8.8, 4.3M NaClの10カラム体積で予め平衡化した。流速を200cm/hにした。ローディングのために、カラムを50cm/hの流速で操作した。ローディング容量は、約20mg/mlマトリックス材料であった。溶出を行う前に、カラムを追加の200mM NaClおよび0.1%Tween-20で補充されたグリシン平衡バッファーの少なくとも10カラム体積で洗浄した。溶出を0.1Mグリシン/HCl pH4.0バッファーで調製された溶出バッファーで達成した。
【0042】
溶出直後に、抗体ピークを含む溶出の画分を0.5MトリスHCl pH7.5の十分なアリコットで中和し、バッファーをAmiconダイアフィルトレーション装置で酸性pHに対するより長い曝露を妨げるために後の陰イオン交換工程のための本発明のローディング/平衡バッファー(l0mM Tris/HCl pH8.0, 50mM NaCl)と交換した。
【0043】
抗体濃度および汚染物質プロテインA濃度を上述のように決定した。溶出液中の汚染物質プロテインAのレベルは、ダイアフィルトレーション前に1434ng/mg抗体に達し、ダイアフィルトレーション後に1650ng/mg抗体に達する。ローディングする前のバッファー交換された上清溶液の力価に基づいた抗体の回収率は81%であった。ダイアフィルトレーション溶液中の抗体の濃度は3.6mg/mlであった。
【0044】
2.2 非結合モードにおけるQ-セファロースFF陰イオン交換工程
セクション2.1からの精製された抗体を上述したようにさらに処理した。5.0ml Q-セファロースFFカラム(Amersham-Biosciences)を10mlの0.1M NaOHでパックし、0.1M トリスpH8の2カラム体積によって追従され、10mMトリスpH8/50mM NaClの10カラム体積で、75cm/hの流速で平衡化した。平衡化の後、流速を50cm/hまで減速した。6mlのダイアフィルトレートされた抗体溶液をカラム上にロードし、貫流をさらなるプロセッシングのために収集した。前記最初の6mlでカラムをロードし、その後に純粋なローディングまたは平衡バッファー10mMトリスpH8, 50mM NaClで継続した後、280nmでモニターされた前記貫流の吸収がベースラインに戻るまで、前記貫流の収集を継続した。貫流中の抗体の合計の回収量は23mg抗体(87%)であった。汚染物質プロテインAのレベルの測定結果は<3ng/mg抗体であった。
【0045】
10mMリン酸塩pH7.0, 140mM NaClバッファー中のSephacryl S-300一面で10cm/hの流速で1mlゲル当たり15mg抗体のローディング率で行うゲルろ過(サイズ排除クロマトグラフィー、SEC)による、このQ−セファロースで精製された抗体群のさらなるプロセスは、この微量な汚染物質プロテインAのレベルを実質的にこれ以上変化させないことが解った。実験では、SECは約30〜100ng/mgの汚染物質プロテインAのレベルを約1〜5ng/mgまでさらに減少させるのに使用することができる。従って、SECは微量のプロテインAに関しては非常に低い精製率を示し、おそらく抗体と汚染物質Aとの間の親和性相互作用が主な原因である。しかしながら、サンプルの不可避的な希釈および抗体タンパク質の同時崩壊を可能にする遅いプロセッシングのために、SECはロードされた抗体の量のたった70%の回収を可能にするだけであろう。これはSECが非常に長い時間を必要とする間に物質が不可避的に損失してしまうことを意味する。
【0046】
Q-セファロースカラムを、上述したような2M NaClの別個の溶出およびさらなる平衡化によってさらなる使用のためにリサイクルした。
【0047】
3.後続の陽イオン交換工程を伴うプロテインAおよびセファロースQ精製
さらなる実験において、Q-セファロース陰イオン交換による非結合モードで精製された例2.2からの抗体を使用した。さらなる最終SEC精製工程を試験する代わりに、セファロースQカラムの貫流中に収集された抗体を、Amersham-BiosciencesからのSP-セファロースFF(SP=スルホプロピル-)マトリックスでの第2の陽イオン交換工程にさらす。SP-セファロースFFは、100cm/hの流速で、ローディング、洗浄および陽イオン交換体からの抗体の溶出後に再現性のある93%抗体の収量を可能にした。ローディングのために、セファロースQ精製工程後に得られた抗体溶液のpHは、50mM酢酸塩バッファーpH4.5でpH4.5〜5.0に調整した。ローディング容量を10mg/mlのマトリックス材料で17mS/cmのローディング溶液の導電率にセットした。50mMの酢酸塩バッファーをベースラインまで洗浄するためにさらに使用した。50mMの酢酸ナトリウムpH4.5、1M NaCl高濃度の塩バッファーを抗体の溶出のために使用した。単量体の抗体が最初に溶出し、凝集塊が高イオン強度での最後の方の画分に溶出した。カラム上でポンピングする前の溶出液バッファー中の塩勾配の実行によるゆるやかな塩勾配の使用は、同等に可能である。高濃度の塩バッファーの直接的な適用は、あまり希釈されていない抗体を生じ、より正確なサンプリングおよび酸性溶液中でのより短時間の滞留を得る。溶出後、酸性バッファーをPBS pH7.5に素早く交換した。貯留された溶出液中の汚染物質プロテインAのレベルは、<0.4ng/mg抗体と測定され、抗体はサイズ排除HPLCによって>99%が単量体となることが示された。
【0048】
4.注文で製造されたStreamlineTMプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、多点付着のプロテインA
この多点付着のStreamlineTMプロテインA親和性マトリックスを注文して製造した。Pharmacia Biotech (現在Amersham-Pharmacia)によって提供された。これは製造業者によって製造され、末端Cys残基を有する同じ34kD StreamlineTMタイプの組換え型プロテインAを、同じセファロースマトリックス材料に結合させることによって製造された。但し、エポキシド仲介活性および−SH基が単独で結合するための選択的反応条件の代わりに活性についての伝統的なCNBr化学現象を使用した(製造業者からの生成情報を参照)。例2.1の方法を繰り返し、汚染物質プロテインAのレベルは353ng/mg抗体と測定された。これは、前記結合の様式が高容量で単一点で付着した組換え型プロテインA親和性マトリックスからのタンパク質の漏出が増加することを部分的に明らかにすることを意味する。このような組換え型プロテインAに導入されたアミノ酸配列中の修飾は、完全長の野生型のプロテインAと比較したときに、増加したタンパク質の漏出量の大きな一因となる。
【0049】
5.方法のパラレルな比較:Miles方法との比較(US4,983,722)
Miles特許(No:4,983,722)は、溶出のための塩勾配(0.025M〜0.25M NaCl)を伴う第2のクロマトグラフィー工程として使用される結合DEAEセファロースは、溶出液中のプロテインA含量を15ng/mg抗体未満(プロテインAの範囲は抗体当たり0.9〜14ng/mgであった)まで減少できることを主張している。
【表2】

【0050】
これらの実験の目的は、より低いpI抗体(pI 6.5〜7.5)でMabSelect(新しい単一点で付着されたrプロテインAマトリックス)を使用するこれらの結果を確認すること、および非結合Q-セファロース方法(異なる平衡/ローディングバッファーを使用する)をMiles特許の方法と直接的に比較することである。
【0051】
適用された方法:
6A1抗体(pI 6.5〜7.5)の精製は、Q-セファロース陰イオン交換クロマトグラフィー(非結合)またはDEAEセファロースクロマトグラフィー(結合)工程によって追従されたMabSelectプロテインA工程からなる2つのクロマトグラフィー工程を含めた。
【0052】
MabSelect プロテインAクロマトグラフィー:
カラムマトリックス Mab Select 組換え型プロテインA(単一点で付着されたrPA)
カラム寸法 1.6cm 内径×15cm ベッド高さ
カラム容積 30mL
操作流速 500cm/hr(16.80mL/min)
洗浄液 6MグアニジンHCL(2カラム容積)
ローディング容量 35mg/mlマトリックス
平衡溶液 50mgグリシン/グリシン酸塩pH 8.0/250mM NaCL
(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 50mgグリシン/グリシン酸塩pH 8.0/250mM NaCL
(8カラム容積)
溶出バッファー 100mM グリシン pH 3.50(6カラム容積)
洗浄液 100mM クエン酸 pH 2.1(2カラム容積)
6A1抗体を含む細胞上清を、AKTA FPLCシステムに接続されたMabSelectカラム(30ml)上で精製した。使用された条件は上記の表に記載された通りである。抗体を0.1MグリシンpH3.5を使用して溶出した。溶出後、溶出液のpHをpH7.0に調整し、その後、溶出サンプルを5つのアリコットに分けた。その後、各アリコットを、陰イオン交換クロマトグラフィーのための異なるバッファーにダイアフィルトレートした。
【0053】
第1のアリコットを、Q-セファロースクロマトグラフィーrun1のための50mMトリスHCl pH8/75mM NaClにダイアフィルトレートした。第2のアリコットを、Q-セファロースクロマトグラフィーrun2のための50mMトリスHCl pH8/100mM NaClにダイアフィルトレートした。第3のアリコットを、Q-セファロースクロマトグラフィーrun3のための20mMリン酸ナトリウムpH 6.5/80mM NaClにダイアフィルトレートした。第4および第5のアリコットは、Miles特許に記載された結合DEAEセファロース方法の平衡化のための25mMトリスHCl pH 8.0/25mM NaClに交換されたバッファーであった。Run4と5の間の差異は、Run4では、主要なピークが1つの画分として収集され、分析前に標準化されたリン酸緩衝生理食塩水にダイアフィルトレートされるのに対し、Run5では、溶出ピークを分画し、Miles特許に記載されているように調製されたリン酸バッファーに透析した。
【0054】
5つのカラム操作の各々についての条件を以下に記載する:
Q−セファロースクロマトグラフィー:Run1
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 16mL
カラム調製 150cm/hrの0.1M水酸化ナトリウム中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 15mg/mlマトリックス
平衡溶液 50mM トリスHCl pH 8.0/75mM NaCl(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 50mM トリスHCl pH 8.0/75mM NaCl(5カラム容積)
溶出バッファー 2M 塩化ナトリウム(2カラム容積)
洗浄液 0.1M 水酸化ナトリウム(2カラム容積)
Q−セファロースクロマトグラフィー:Run2
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 16mL
カラム調製 150cm/hrの0.1M水酸化ナトリウム中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 7.5mg/mlマトリックス
平衡溶液 50mM トリスHCl pH 8.0/100mM NaCl(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 50mM トリスHCl pH 8.0/100mM NaCl(5カラム容積)
溶出バッファー 2M 塩化ナトリウム(2カラム容積)
洗浄液 0.1M 水酸化ナトリウム(2カラム容積)
Q−セファロースクロマトグラフィー:Run3
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 16mL
カラム調製 150cm/hrの0.1M水酸化ナトリウム中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 7.5mg/mlマトリックス
平衡溶液 20mM トリスHCl pH 6.5/80mM NaCl
ローディング後の洗浄液 20mM トリスHCl pH 6.5/80mM NaCl
(5カラム容積)
溶出バッファー 2M 塩化ナトリウム(2カラム容積)
洗浄液 0.1M 水酸化ナトリウム(2カラム容積)
DEAEセファロース:Run4
カラムマトリックス DEAE Sepharose
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 16mL
カラム調製 150cm/hrの平衡バッファー中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 7.5mg/mlマトリックス
平衡溶液 25mM トリスHCl pH 8.6/25mM NaCl(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 25mM トリスHCl pH 8.6/25mM NaCl(5カラム容積)
溶出バッファー 25mM トリスHCl pH 8.6/25mM NaClから25mM トリスHCl pH 8.6/250mM NaClまで(10カラム容積)
洗浄液 2M 塩化ナトリウム(2カラム容積)
DEAEセファロース結合方法:Run5(Miles方法)
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 16mL
カラム調製 150cm/hrの平衡バッファー中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 7.5mg/mlマトリックス
平衡溶液 25mM トリスHCl pH 8.0/25mM NaCl(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 25mM トリスHCl pH 8.0/25mM NaCl(5カラム容積)
溶出バッファー 25mM トリスHCl pH 8.6/25mM NaClから25mM トリスHCl pH 8.6/250mM NaClまで(10カラム容積)
洗浄液 2M 塩化ナトリウム(2カラム容積)
この研究において使用された異なるバッファーの性質を表3に示した。陰イオン交換クロマトグラフィー操作の各々の溶出結果を図2〜5に示した。
【0055】
5つのイオン交換操作から得られた溶出サンプルをrPA ELISA中でプロテインAレベルについて検定した。結果を表4に示す。
【表3】

【0056】
DEAE-セファロースRun5(Miles方法)の抽出結果の端から端までの画分を収集し、rプロテインA ELISAで分析を行った。結果を表5に示す。
【表4】

【表5】

【0057】
この抗体(6A1; pI 6.5〜7.5)についての最も高い回収率(85%)およびrプロテインAの最良のクリアランスは、20mMリン酸ナトリウムpH6.5/80mM NaClバッファー(Run3に相当)を使用するQ-セファロース上の非結合条件下で得られた。Run1はまた良好な回収率(82%)およびrプロテインAクリアランスを示した。しかしながら、このrunの溶出容積は、非結合方法について予想されたものよりも著しく高かった。これはこのバッファー系におけるカラム上での抗体の部分的遅延を示唆している。NaCl濃度を増加させると(Run2)、より低いrプロテインAクリアランスを生じる。従って、Run3において使用されるバッファー系はこの抗体にとってより適切であった。Run1で使用されたバッファー系は高いpI抗体にとってより適切であり、Run3に使用されたバッファー系は中性またはわずかに酸性の抗体にとって特に有用であることが我々のこれまでの観察であった。これらの実験は、同様の容量(7.5mg/ml 樹脂)で行われる。我々は非常に高い容量(>30 mg/ml)でこの非結合方法を使用することができることを期待する。我々は、この非結合方法が多くの陰イオン交換体、例えば陰イオン交換膜吸着体に加えてQ-Hyper D(例えばMustang Q, Intercept Q およびSartobindQ)に適用可能であることを期待する。我々はまた、このプロセスがより高い容量が適用可能であるときに、Miles方法と比較して大規模な生産物に一層適用可能であることを期待する。
【0058】
Run 5 (Miles方法)の場合において、rプロテインAの画分が、表5に示したように主要な溶出ピークの端から端まで観察された。従って、画分の注意深い貯留が、rプロテインAの良好なクリアランスを保障するために必要とされる。これは回収率(73%)を与えたが、それでもこのケースは、非結合方法で得られたもの程の良好なクリアランスを与えなかった。従って、Miles方法にとって、非常に多量の漏出が観察される場合(例えば、一般に単一点で付着されたマトリックスで得られた場合)において、細胞株/抗体についての良好なクリアランスおよび高い回収率を達成することは一層難しい。
【0059】
Run5からのデータはMiles特許に記載された条件の代表例である。方法の比較の概要と得られたデータを以下の表6に示す。
【表6−1】

6.高pI抗体の精製
Q−セファロース陰イオン交換クロマトグラフィー(非結合条件下;微量な汚染物質の除去のために)、SP-セファロース陽イオン交換クロマトグラフィー(凝集塊の除去のための結合条件下)によって追従されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MabSelect-単一点で付着した組換え型のプロテインAマトリックス)を使用して高pI抗体(pI9.0〜9.3)を精製した。
【表6−2】

実験材料および方法
MabSelect プロテインAクロマトグラフィー:
カラムマトリックス Mab Select組換え型プロテインA(単一点で付着されたrPA)
カラム寸法 1.6cm 内径×8cm ベッド高さ
カラム容積 30mL
操作流速 500cm/hr(16.80mL/min)
洗浄液 6M グアニジン HCL(2カラム容積)
ローディング容量 35mg/mlマトリックス
平衡溶液 50mgグリシン/グリシン酸塩pH 8.0/250mM NaCL
(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 50mgグリシン/グリシン酸塩pH 8.0/250mM NaCL
(8カラム容積)
溶出バッファー 100mM グリシン pH 3.50(6カラム容積)
洗浄液 100mM クエン酸 pH 2.1(2カラム容積)
高pI抗体を含む培養上清を、AKTA FPLCシステムに接続されたMabSelectプロテインAアフィニティーカラム(30ml)上で精製した。使用された条件は上記の表に記載された通りである。抗体を0.1MグリシンpH3.5を使用して溶出した。溶出後に、溶出液をpH3.69(必要とされる調整はない)で60分間(低pHウイルス不活性化工程)にわたって保持し、その後2Mトリス塩を使用してpH8まで中和した。プロテインA上で3サイクルを行った。生成物の回収率をA280nmによって決定し、各サイクルについて表7に示した。
【表7】

【0060】
MabSelectプロテインAクロマトグラフィー後、3サイクルの各々からの溶出液を共に貯留し、バッファーを10kDa Millipore 膜に適合したAmicon撹拌細胞濃縮器を使用して25mM トリスpH8.0(Q-セファロース平衡バッファー)と交換した。
【0061】
Q−セファロースクロマトグラフィー:
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×15cm ベッド高さ
カラム容積 30mL
カラム調製 225cm/hrの0.1M水酸化ナトリウム中でパッキング
操作流速 150cm/hr(5.0mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 40mg/mlマトリックス
平衡溶液 20mM トリスpH 8.0(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 20mM トリスpH 8.0(5カラム容積)
溶出バッファー 20M トリスpH 8.0/2M NaCl(2カラム容積)
洗浄液 0.1M 水酸化ナトリウム(2カラム容積)
40mlの濃縮された/ダイアフィルトレーションされたMabSelectプロテインA溶出液を、40mg/mlマトリックスのローディング容量でQ−セファロースカラム上にロードした。カラムを非結合モード中で操作し、抗体を含む非結合画分を収集した。この工程での回収率はA280で69%であった。これは、この抗体についてのこれらの条件のもとで得られるものよりもわずかに低い。FPLCサンプルポンプ中の容積を保持するために、ロード容積の不正確な概算が原因であるかもしれない。
【0062】
Q-セファロースクロマトグラフィー後、10kDaミリポア限外ろ過膜に適合したAmicon撹拌細胞を使用して未結合画分を13.98mg/mlまで濃縮し、かつSP-セファロース平衡バッファー(25mM酢酸ナトリウムpH5.0/2.5mM NaCl)中でダイアフィルトレートした。
【0063】
SP−セファロースクロマトグラフィー:
カラムマトリックス Q-Sepharose Fast Flow
カラム寸法 1.6cm 内径×15cm ベッド高さ
カラム容積 30mL
カラム調製 150cm/hrの0.1M水酸化ナトリウム中でパッキング
操作流速 100cm/hr(3.35mL/min)
洗浄液 0.1M水酸化ナトリウム(2カラム容積)
ローディング容量 10 mg/mlマトリックス
平衡溶液 25mM 酢酸ナトリウム pH5.00/25mM NaCl(8カラム容積)
ローディング後の洗浄液 25mM 酢酸ナトリウム pH5.00/25mM NaCl(6カラム容積)
溶出液 25mM 酢酸ナトリウム pH5.00/186mM NaCl(25カラム容積)
溶出バッファー 25mM 酢酸ナトリウム pH5.00/2M NaCl(2カラム容積)
洗浄液 0.1M 水酸化ナトリウム(2カラム容積)
24mlのバッファーで交換されたQ−セファロース溶出液を、10mg/mlマトリックスのローディング容量でSP−セファロースカラム上にロードした。カラムを結合モードで操作した。溶出液を画分として収集した。溶出結果の端から端までの画分をGP-HPLCによって分析し、凝集塊レベルの結果を測定し、これを表8に示した。各クロマトグラフィー工程後のサンプルを収集し、rプロテインA残留物について分析を行った。結果を表9に示す。
【表8】

【表9】

【0064】
結論:凝集の画分は、抗体ピークの溶出工程中で観察された(表4を参照)。後方で溶出する凝集に富んだ画分(溶出ピークの最後)を凝集塊を含まない画分と比較した。後方の画分を、99%の単量体の貯留を得るために主要貯留から取り除くことができる。これでもなお高い回収率(>95%)を有する。
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】標準化されたブドウ球菌性のプロテインA(レーン1:天然のプロテインA;レーン2:前処理後)および純粋な未結合のStreamlineTM組換え型のプロテインA(Phamlacia、現在のAmersham-Bioscicnsesの好意によって提供された;レーン4:天然の組換え型のプロテインA;レーン5:前処理後)についての非還元10%SDS-PAGE。
【図2】チオエーテル結合による単一点付着のプロテインAを含むStreamlineTM 組換え型のプロテインAクロマトグラフィーからの抗体溶出液中に漏れ出た組換え型のプロテインAのレベル(サイクル数は、1M塩化ナトリウムでの溶出および再平衡後に繰り返された使用を意味している)。
【図3】プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの繰り返しの操作中における汚染物質プロテインAの微弱な減少した漏れについてのデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体、好ましくはIgG抗体を精製するための方法であって、
・プロテインAが天然のプロテインAまたはその機能的誘導体である、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する工程と、
・プロテインAまたはその誘導体の結合を可能にする条件下で、前記精製された抗体をイオン交換材料上にロードする工程と、
・汚染物質プロテインAがイオン交換材料に結合している間に、イオン交換材料上にロードされた前記抗体をイオン交換体の貫流中に収集する工程であって、好ましくは前記抗体の量の少なくとも70%を収集し、より好ましくは少なくとも80%を収集し、最も好ましくは少なくとも90%を収集する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記プロテインAが、カラム材料に対する単一点での付着を可能にするように加工された組換え型のプロテインAであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記組換え型のプロテインAが、そのアミノ酸配列においてシステインを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記システインが、組換え型のプロテインAのアミノ酸配列のC末端の最後の30アミノ酸からなる部分に含まれていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組換え型のプロテインAが、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのクロマトグラフ支持材料に対して、チオエーテル硫黄結合を介して少なくとも50%まで付着されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
プロテインAまたはその機能的誘導体が、イオン交換体の貫流中に<1ng/mg IgGの濃度まで減少することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換体が、陰イオン交換体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、少なくとも6.5以上のpIを有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗体を精製するための方法であって、
・プロテインAが天然のプロテインAまたはその機能的誘導体である、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する工程と、
・プロテインAまたはその誘導体の結合を可能にする条件下で、前記精製された抗体を第1のイオン交換材料上にロードする工程と、
・汚染物質プロテインAがイオン交換材料に結合している間に、イオン交換材料上にロードされた抗体をイオン交換体の貫流中に収集する工程であって、好ましくは前記抗体の量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の抗体を収集する工程と、
・前記抗体を第2のイオン交換体上にローディング、結合、および溶出させることによって前記抗体をさらに精製する工程と
を含む方法。
【請求項10】
前記第1のイオン交換体が、陰イオン交換体であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、少なくとも7.5以上のpIを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のイオン交換体が、陽イオン交換体であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記精製された抗体が、実質的に単量体の非凝集性の抗体であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体がモノクローナル抗体、好ましくはIgG抗体であって、前記IgG抗体がキメラまたはCDR移植IgG抗体であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記IgG抗体が、プロテインAとの結合に関連性のある抗体の部分において、好ましくはプロテインAとの結合に関連性のあるFc部分において、より好ましくはプロテインAについての結合サイトを含むIgGのCγ2-Cy3境界面領域において少なくとも存在し、このような種起源およびIgGサブクラス起源がプロテインAに対する高い親和性結合を可能にすることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記IgG抗体が、前記抗体のFc部分についてのヒトIgG1、IgG2、およびIgG4を含む群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する前に細胞培養物から収集されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、哺乳類細胞培養物から収集されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製される前記抗体が、プロテアーゼを不活性化させるために処理されず、好ましくは少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤との混合物でないことを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアーゼ阻害剤が、PMSF、プロテアーゼ阻害ペプチド、ε-カプロン酸、および還元剤スルフヒドリル化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−525412(P2007−525412A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501980(P2006−501980)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002041
【国際公開番号】WO2004/076485
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504120486)ロンザ・バイオロジクス・ピーエルシー (12)
【Fターム(参考)】