説明

プロテオグリカンの製造方法

【課題】軟骨型プロテオグリカンのより効率的で、かつ脂質およびタンパクが狭雑しない、環境に配慮した工業的製造法を提供する。
【解決手段】
軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料を、0.03重量%〜3重量%のクエン酸水溶液に浸漬し、プロテオグリカンを抽出してプロテオグリカン抽出液を得る工程、および得られたプロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程を含むプロテオグリカンの製造方法、及び、上記プロテオグリカン抽出液を濾過分離後、濾液を疎水性担体又は疎水性プラスチックビーズに接触させ、脂質を除去する工程を更に含むプロテオグリカンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨型プロテオグリカンの製造方法に関する。特に魚類などから効率的に、食用、医療用及び化粧品などに応用できる高純度のプロテオグリカンを環境に配慮した方法で工業的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカンは、コアの蛋白質に長鎖の硫酸化グリコサミノグリカンが結合した複合糖質の一つである。糖タンパクでは、アスパラギンに結合したN型糖鎖、スレオニンあるいはセリンに結合したO型糖鎖がタンパクの糖鎖修飾として代表的なものであるが、プロテオグリカンの場合は、コンドロイチン硫酸やヘパラン硫酸、デルマタン硫酸などのグリコサミノグリカン糖鎖がタンパクに結合した複合生体物質である。
これまで、その構造の複雑性のために高純度のプロテオグリカンを効率よく製造する方法が確立しておらず、わずかに酢酸を用いた軟骨型プロテオグリカンの精製方法(特許文献1)、アルカリ溶液を用いた抽出方法(特許文献2)等が報告されているに過ぎない。
【0003】
しかし、上記酢酸を用いる方法は、4%という大量の酢酸溶液、アルコールを用いることから、これを工業的に応用するには多くの改良が必要である。また酢酸が結合した副産物が得られる可能性が免れないという課題があった。さらにこの方法では、抽出効率が必ずしも満足するものではない。
一方、上記アルカリを用いた方法では、タンパク質の変性・分解に加えプロテオグリカンの糖鎖の脱離が懸念されるほか、狭雑するタンパク質の含量が多くなり、純度の高いプロテオグリカンを得るにはさらに何段階もの精製過程が必要となる。
また、両方法においては混入する脂質の除去操作がないために、調製したプロテオグリカン標品が褐色を呈したり、保存中に脂質の酸化による異臭が生ずるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−0690978号公報
【特許文献2】国際公開第2007/094248号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、軟骨型プロテオグリカンのより効率で、かつ脂質およびタンパクが狭雑しない、環境に配慮した工業的製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の溶液による軟骨型プロテオグリカンの抽出を検討したところ、サケ鼻軟骨等からクエン酸の希薄溶液でプロテオグリカンが効率よく抽出できることを見出し本発明に到った。
【0007】
即ち、本発明は、次の発明に係るものである。
(1)軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料を、0.03重量%〜3重量%のクエン酸水溶液に浸漬し、プロテオグリカンを抽出してプロテオグリカン抽出液を得る工程、および得られたプロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程を含むプロテオグリカンの製造方法。
(2)上記浸漬し、抽出する工程を室温にて行う前記(1)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
(3)上記プロテオグリカン抽出液を濾過分離後、濾液を疎水性担体又は疎水性プラスチックビーズに接触させ、脂質を除去する工程を更に含む前記(1)又は(2)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
(4)上記脂質を除去する工程の後に、プロテオグリカン抽出液を分子サイズ選択メンブランによって分子量100万以下で10万以上のプロテオグリカンを含有するプロテオグリカン抽出液を分離する工程を含む前記(3)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
(5)プロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程が、抽出液に食塩飽和エタノールを加えることにより行う工程を含む前記(1)から(4)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
(6)軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料が、魚の軟骨由来のプロテオグリカンである前記(1)から(5)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
(7)軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料が、サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンである前記(1)から(5)に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、クエン酸希薄溶液によりきわめて簡単な方法でプロテオグリカンを高収率で抽出、精製できる工業的製法を提供する。また、本発明は、抽出濾液を疎水性担体又は疎水性プラスチックビーズに接触させることにより、脂質を効率的に除去するプロテオグリカンの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸0.01wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−2】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸0.05wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−3】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸0.1wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−4】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸0.5wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−5】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸1.0wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−6】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸2.0wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図1−7】実施例1にかかるプロテオグリカン抽出量(クエン酸4.0wt%)の経時変化を示すグラフである。
【図2】参考例1の酢酸溶液によるプロテオグリカン抽出量の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例2で得られたプロテオグリカンのHPLCプロファイルである。
【図4】実施例2で得られたプロテオグリカンの電気泳動プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料を、0.03重量%〜3重量%のクエン酸水溶液に浸漬し、プロテオグリカンを抽出してプロテオグリカン抽出液を得る工程、および得られたプロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程を含むプロテオグリカンの製造方法に関する。
即ち、本発明は、クエン酸の希薄溶液による軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料からのプロテオグリカンの抽出を第一の特徴とする。
ここで、軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料としては、魚類、軟体動物、鳥類や哺乳類の軟骨組織由来のプロテオグリカンが例示される。中でも、サケの頭部やサメのヒレ部の軟骨組織由来のプロテオグリカンが好適に使用され、特に、サケの頭部にその平均重量で約3%含まれている鼻軟骨組織由来のものが好適に用いられる。
【0011】
ここで、本発明のクエン酸の希薄溶液とは、クエン酸の0.03重量%〜3重量%の水溶液をいう。クエン酸濃度が、0.03重量%未満では抽出に時間がかかり、また抽出時間の経過と共にゲル化や腐敗臭等が発生し易くなる。一方、クエン酸濃度が3重量%を超えると、かえって抽出速度が遅くなる。クエン酸濃度は、好ましくは0.05重量%〜2重量%、より好ましくは0.05重量%〜1重量%、更に好ましくは0.1重量%〜0.5重量%である。
【0012】
なお、前記文献1の酢酸による抽出法では、酢酸濃度は4%が最適とされているが、本発明ではより低い濃度のクエン酸を使用することができ、下記の回収工程でのアルコール使用量を低減することが出来るという利点を併有する。
【0013】
本発明においては、抽出温度は、0℃から室温が使用できるが、好ましくは室温である。ここで、室温とは、10℃以上30℃以下の温度であり、好ましくは15℃から25℃である。一般に本発明の対象である生物学的試料は、腐敗しやすいことから出来るだけ低温で処理される。例えば、前記文献1の酢酸による抽出法では、4℃にて抽出を行っており、また、前記文献2のアルカリ金属による抽出でも0℃から4℃の浸漬温度がより好ましい温度とされている。本発明は、クエン酸を使用することにより、室温での浸漬、抽出を可能とし、抽出効率を上げることができる点で画期的である。
【0014】
本発明のクエン酸溶液によるプロテオグリカンの抽出は、約40時間前後で飽和に達することから、35時間から50時間が好ましいが、適宜決定することができる。また、抽出方法は、攪拌に伴い生ずる狭雑物をさける観点から、浸漬法が使用される。
【0015】
次に、本発明では、上記抽出したプロテオグリカンを疎水性担体や疎水プラスチックビーズを用いることにより、混入すると考えられる脂質成分を簡便に吸着除去することが可能である。
疎水性担体としては、例えば、ODS(オクタデシルシリル基)やオクチル基をシリカやポリマーに化学結合した樹脂が使用できる。担体の粒子径は、通常5μm〜10μmのものが好適に使用される。また、疎水性プラスチックビーズとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチックのビーズが使用でき、ビーズの大きさは、適宜選択できるが、一般には平均直径が0.5mmから3mmのものが挙げられる。上記のうち、疎水性プラスチックビーズが、吸着効率や経済的な観点から好適に使用できる。
【0016】
上記脂質を吸着除去した疎水性担体や疎水性ビーズを濾過分離した濾液から得られるプロテオグリカン抽出液は、通常プロテオグリカンを2%〜4%程度含有し、その濃度が高いため、少量の食塩飽和アルコールで沈澱させることにより収率よく回収することができる。沈殿は、遠心分離を使用することにより効率的に行うことができる。
なお、上記回収工程の少なくとも後に、次の限外濾過による分子量調整、濃縮工程を有することが好ましい。
【0017】
即ち、上記脂質を吸着除去した疎水性担体や疎水性ビーズを濾過分離した濾液から得られるプロテオグリカンは、分子サイズ選択メンブランによりプロテオグリカンの分子量を10万以上、100万以下にすることが好ましい。
具体的には、遠心分離によって沈澱したプロテオグリカンを蒸留水に溶解し、メンブランフィルター(分子量100万以上の分子を除去:1000kカット)を通して巨大プロテオグリカンおよび複合物などを除去する。次にこの濾液を10万カット(分子量10万以下の分子を除去:100kカット)のメンブランフィルターによって分子量10万以下のプロテオグリカンやタンパク質およびミネラルなどの塩類を除去する。
【0018】
その後、メンブラン上に回収したプロテオグリカンは、上記の食塩飽和エタノールにより選択的に沈殿回収される。
ところで、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン糖鎖は、糖鎖中に硫酸基やカルボキシル基の負電荷を持つため、お互いに反発し沈殿ができにくい。そこでエタノール沈殿を行う場合は塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムなどをエタノールに加え、糖鎖の負電荷を中和することで、エタノール沈殿の効率を飛躍的に向上することが可能となる。
このようにして得られたプロテオグリカンは、エタノール(好ましくは、100%エタノール)で数回洗浄した後に乾燥させる。乾燥は、一般的な真空乾燥や加熱乾燥にて行われるが、加熱する場合は40℃位の温度が好適に用いられる。
【0019】
上記プロテオグリカンは、陰イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーやゲル濾過カラムを用い精製することができる。
【0020】
上記のように、本発明により、極めて簡単な方法でサケ鼻軟骨等の生物学的試料からプロテオグリカンを高収率で抽出、精製できる。本発明の利点を以下に示す。
【0021】
本発明により従来4℃付近で抽出していた方法を室温に変えることができ、より短時間で、高い収率による抽出可能となった。工業生産にかかる設備投資を抑えることができ、従って、これを低価格に反映することが出来る。
なお、従来の酢酸による抽出では、酢酸が糖質、タンパク質の水酸基とエステル結合して酢酸エステルを生成し、これが経時後に問題となる酢酸の戻り臭の原因となっている。そのため、酢酸エステルの生成が危惧される室温での抽出や、長時間に亘る抽出には問題があった。
さらに、本発明では、従来攪拌していた抽出法を浸漬法に変えることによって抽出効力は増加すると共に攪拌によって生ずる狭雑物の分離操作が省けることなり、工業的操作上の大きなメリットとなる。
従来の操作では最後まで脂質の混入を危惧されたが、疎水性担体、あるいは疎水性プラスチックビーズ処理によって簡単に脂質のみを効果的に吸着除去できることになり、以後の操作がスムースに行える。
【0022】
プロテオグリカンの抽出に要するクエン酸は、従来の酢酸に比べ約1/3の容量に減少することができ、その結果、酢酸抽出法に比べ約1/5量の食塩飽和エタノールでプロテオグリカンを沈澱回収することが可能となった。時間的にも経費的にも、環境的にも大きなメリットである。
さらに、分子量10万カットと100万カットのメンブランフィルターを用いることにより連続的にプロテオグリカンを濃縮することが可能となった。
【0023】
本発明では、特に、抽出溶媒としてクエン酸を使用することから、上記酢酸臭(戻り臭)の危惧がなくなったため、プロテオグリカンの食品や化粧品への応用が大きく広がった。
また、陰イオンカラムクロマトグウフィーによる精製プロテオグリカンの調製は、均一な金属塩として調製することを可能にし、品質管理の方法として重要な意味を持つ。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
1.プロテオグリカンのHPLC分析:
HPLC分析条件は次の通りである。
1)カラム:TOSOH TSK-gel G5000PWXL+TSK-guard column PWXL
G5000PWXL:R0019
guard column PWXL:P0771(東ソー社製)
2)溶出液:0.2M−NaCl
流 速:0.5ml/min
カラム温度:30℃
3)検出器:UV−VIS検出器(215nm)
4)導入量:50μl(サンプル:0.1%溶液)
【0026】
2.限外濾過(分子サイズ選択メンブラン):
限外濾過の装置、濾過膜は次の通りである。
1)装置名;送液ポンプMODEL7553(マスターフレックス社)
2)限外濾過膜
・100万カット オメガメンブレンミニメイトTFFカプセル(日本ポール社)
・10万カット オメガメンブレンミニメイトTFFカプセル(日本ポール社)
【実施例1】
【0027】
シロサケの頭部から分離した鼻軟骨部分を凍結保存しておく。
凍結保存した鼻軟骨を鋭利な刃物で2〜3ミリ角に細切する。30gの細切鼻軟骨に対して、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%および4.0重量%クエン酸水溶液をそれぞれ90ml用いて4℃及び室温(22〜24℃)にて浸漬した。30分後、5時間後、12時間後、24時間後、36時間後、56時間後及び72時間後にそれぞれの浸漬液の上澄みから一部をとりウロン酸の定量(カルバゾール硫酸法)を行いプロテオグリカンの抽出効率を調べた。その結果を図1−1から図1−7に示す。
結果は、図1−1に示すように、クエン酸濃度が0.01重量%であると、初期の抽出効率が悪く、抽出液のゲル化や濁りなどの物性変化もみられた。また、24時間以降は腐敗臭の発生や色調・濁りなど、明らかな物性変化が見られた。
一方、図1−7に示すようにクエン酸濃度が4.0重量%になると、それ以下のクエン酸濃度の場合に比べ明らかに抽出効率が低下した。
なお、低温(4℃)に比べ室温の方が抽出効率良いことがわかる。また、低温と室温では、試料の物性変化に差は見られなかった。
【参考例1】
【0028】
実施例1において、クエン酸溶液の代わりに、4.0重量%酢酸溶液を使用した以外は実施例1と同様に行いプロテオグリカンの抽出効率を調べた。その結果を図2に示す。
クエン酸溶液では、室温での処理が可能であり、0.05重量%という希薄溶液でも4重量%酢酸溶液と同様な抽出率を達成できることが分かる。
【実施例2】
【0029】
実施例1と同様に凍結保存したシロサケの鼻軟骨を細切し、20gの鼻軟骨に対して60mlの0.1重量%クエン酸溶液にて、室温でプロテオグリカンを抽出した。
24時間後ステンスメッシュ(150μm)、濾紙(No.2:孔径は10μm)、濾紙(No.5C:孔径は1μm)さらにガラス繊維濾紙(GB−140:孔径は0.4μm)を通して濾過した後、濾液にポリスチレンビーズ20mlを添加して30分ほど緩やかに攪拌して脂質を吸着させ、ステンレスメッシュ(150μm)にて濾過した。
濾液を分子量100万カットのメンブランを装着した限外濾過器にかけ、巨大プロテオグリカンとその複合物を除去した。次に、濾過された溶液を分子量10万カットのメンブランを装着した限外濾過器にかけて小分子を除いた濃縮液(残留液)5mlを得た。
残留液に食塩飽和エタノール15mlを添加して30分攪拌後、プロテオグリカンを遠心分離機(5分間、1500rpm)にて沈澱分離した。
上澄みを除いた後、エタノール5mlを添加して攪拌、遠心分離機(5分間、1500rpm)にてプロテオグリカンを沈澱させた。この洗浄操作を2回繰り返した。沈澱したプロテオグリカンに50mlの蒸留水を添加して、澄明な溶液を得た。本液を凍結乾燥してプロテオグリカン画分(Lot A)を200mg得た。
図3に、この段階で得られたプロテオグリカン標品のHPLC分析の抽出プロファイルを示す。
【0030】
次に、上記操作を繰り返し、 Lot B〜Dの各ロットを作成した。
この各ロットのプロテオグリカンをDEAEセルロースカラムにかけ0.2〜1.0M NaCl、1.0〜2.0M NaClの濃度勾配による抽出を行った。図4に、各ロットの電気泳動プロファイルを示す。DEAEカラムから得られた単一のピークはコンドロイチン硫酸であり、サケ鼻軟骨由来の精製プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであることが示された。なお、図中、HPはヘパリン、ChSはコンドロイチン硫酸、HSはヘパラン硫酸、HAはヒアルロン酸を表す。
分子量はプルランの分子マーカーを用いて上記HPLCのピークの最高値の保持時間から45万と決定された。
脂質成分はプロテオグリカンをクロロフォルム、メタノール2:1混液にて抽出、分析を行ったが検出できなかった。また、タンパク含量は0.51重量%、コラーゲン含量は0.25重量%であった。
【実施例3】
【0031】
アブラツノザメ乾燥胸ヒレ軟骨50gを粉砕し、500mlの0.1重量%クエン酸を加えて1時間放置した。膨潤したヒレを取出し細切し、先の0.1重量%クエン酸溶液に戻し18時間浸漬、抽出した。
ナイロンメッシュ(150μm)にて濾過後、濾液はNo.2、およびNo.5Cの濾紙、さらにガラス繊維濾紙(GB−140)で濾過し400mlの濾液を得た。濾液を1000kカットの限外濾過にかけ、10mlまでの濃縮後、30mlの蒸留水を加え濃縮した。この操作を3回繰り返し、これを1000k残留液(1)とした。
1000kの濾過液は合わせて回収し450mlとなった。これを100kカットの限外濾過にかけた。約10mlになるまで濃縮し、30mlの蒸留水を加えて濾過する操作を3階繰り返し100k濃縮液30ml(2)を得た。一方、100k濾過液は500ml(3)であった。
次に、先の0.1%クエン酸抽出液の残渣を1%クエン酸550mlで抽出し、0.1%クエン酸による抽出と同様の操作にて1000k残留液25ml(4)、1000k濾過液で100k残留液26ml(5)、そして100k濾過液600ml(6)を得た。
上記(1)〜(6)の画分にそれぞれ3倍量の食塩飽和エタノールを加えて4℃にて24時間静置した。沈殿物を遠心分離(10分間、3000rpm)にて分離し、回収した沈殿を100%エタノールで洗浄後に遠心分離(10分間、3000rpm)した。このエタノールによる洗浄沈澱を3回繰り返した。これらの操作後、沈殿を回収、乾燥して重量を測定した。
その結果、分子量1000k以上のプロテオグリカン385.9mg((1)+(4))、分子量100〜1000kのプロテオグリカン531.7mg((2)+(5))、分子量100k以下の成分20.7mg((3)+(6))を得た。分子量100k以上のプロテオグリカンは合わせて917.6mgであり、50gからの回収率は1.8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、軟骨型プロテオグリカンのより効率で、かつ脂質およびタンパクが狭雑しない、環境に配慮した工業的製造法を提供される。本発明の方法で得られたプロテオグリカンは、健康食品やサプリメント、医薬品および化粧品等の原料として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料を、0.03重量%〜3重量%のクエン酸水溶液に浸漬し、プロテオグリカンを抽出してプロテオグリカン抽出液を得る工程、および得られたプロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程を含むことを特徴とするプロテオグリカンの製造方法。
【請求項2】
上記浸漬し、抽出する工程を室温にて行う請求項1に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【請求項3】
上記プロテオグリカン抽出液を濾過分離後、濾液を疎水性担体又は疎水性プラスチックビーズに接触させ、脂質を除去する工程を更に含む請求項1又は2に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【請求項4】
上記脂質を除去する工程の後に、プロテオグリカン抽出液を分子サイズ選択メンブランによって分子量100万以下で10万以上のプロテオグリカンを含有するプロテオグリカン抽出液を分離する工程を含む請求項3に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【請求項5】
プロテオグリカン抽出液からプロテオグリカンを回収する工程が、抽出液に食塩飽和エタノールを加えることにより行う工程を含む請求項1から4に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【請求項6】
軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料が、魚の軟骨由来のプロテオグリカンである請求項1から5に記載のプロテオグリカンの製造方法。
【請求項7】
軟骨型プロテオグリカンを含有する生物学的試料が、サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンである請求項1から5に記載のプロテオグリカンの製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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