説明

プロトイソフラボン類の製造方法

【課題】高い生理活性を有するイソフラボン類化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】式(1)の化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理することを特徴とする、イソフラボン類化合物の製造方法。式中R1〜R5,Aは特定の基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトイソフラボン類を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソフラボン類は、大豆由来の機能性成分としてよく知られている物質である。大豆に含まれるイソフラボン類としては、これまでに、ダイゼイン、ゲニステイン、及びグリシテインの3種類のアグリコンとその配糖体とを含む12種類のイソフラボンの存在が確認されている(特許文献1)。
【0003】
イソフラボン類が抗炎症作用を有することが知られている。例えば、特許文献1には、5,7,4’−トリヒドロキシイソフラボン(ゲニステイン)、及びイソフラボン類を含有することが知られているオノニス根抽出物に、美白作用や抗炎症作用があることが開示されている。しかしその一方で、特許文献2にはイソフラボンの抗アレルギー作用はきわめて弱いことが開示されていることから、イソフラボン類の抗炎症作用は必ずしも充分なものとはいえない。
【0004】
他方、特定の大豆加工品に高い抗炎症作用や抗アレルギー作用があることが知られている。特許文献3には、青大豆抽出物がIgE低下作用や、Th1−Th2バランスをTh1有意に改善する作用を有し、抗アレルギー剤として使用できることが、非特許文献1には、光照射した青大豆抽出物がIL−2産生抑制活性を有し、抗炎症作用を発揮することが、それぞれ記載されている。しかし、これらの有効成分がどのような物質であるかは明らかにされていなかった。
【0005】
上記のとおり、特定の大豆加工品に高い抗炎症効果があることが知られていたものの、その有効成分については未だ不明であり、他方イソフラボン類の抗炎症効果は充分とはいえないのが実状であった。大豆の抗炎症活性を発揮する成分を明らかにするとともに、より抗炎症活性の高いイソフラボン類を得ることができれば、医薬や食品等の有効成分として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−16531号公報
【特許文献2】特開2007−197398号公報
【特許文献3】特開2010−53125号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本食品科学工学会第57回大会講演集、第109頁2Fp5、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる従来の実状に鑑み、より高い生理活性を有するイソフラボン類化合物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、大豆等に含まれるイソフラボンをクロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理することによって、優れた抗炎症作用を有する化合物群が製造できることを見出し、これらをプロトイソフラボン化合物と命名した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【0011】
【化1】

〔式中、
1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示し;
Aは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示すか、又は下記式(i)
【化2】

(式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜4のカルボキシアルキル基で置換されたアシルである)
で示される基を示す〕、
で表される化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理することを特徴とする、下記式(2):
【0012】
【化3】

(式中、R1〜R4及びAは、上記と同じく定義される)
で表されるプロトイソフラボン化合物の製造方法を提供することにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記式(1)で表される化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理して、上記式(2)で表されるプロトイソフラボン化合物に変換することを特徴とする、イソフラボン化合物の抗炎症活性の増強方法を提供することにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記方法により製造されたプロトイソフラボン化合物を提供することにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記方法により製造されたプロトイソフラボン化合物又はその塩を含有する抗炎症剤を提供することにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記方法により製造されたプロトイソフラボン化合物又はその塩を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、顕著な抗炎症作用を有し、種々の炎症性疾患、炎症症状の予防及び/又は改善に有効なプロトイソフラボン化合物を簡便且つ安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法によれば、フラボノイドのB環が酸化された構造を有する化合物を得ることができる。これらの化合物は、本明細書において、以下、プロトイソフラボン化合物と総称される。
【0015】
本発明の製造方法は、下記式(1)で表されるイソフラボン化合物を出発物質とする。
【0016】
【化4】

【0017】
上記式(1)中、R1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示す。
【0018】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、このうちフッ素原子及び塩素原子が好ましい。
上記炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル等が挙げられ、このうち、メチル及びエチルが好ましい。
上記炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基としては、ビニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、2−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル等が挙げられ、このうち、3−メチル−2−ブテニルが好ましい。
上記炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル等が挙げられ、このうち、メトシキ及びエトキシが好ましい。
【0019】
上記式(1)中、Aは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基であり得る。当該ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基は、上記でR1〜R4について定義したものと同じである。
【0020】
あるいは、Aは、下記式(i)で定義されてもよい。
【0021】
【化5】

【0022】
式(i)中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜4のカルボキシアルキル基で置換されたアシルである。
上記アシルを置換している炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル等が挙げられ、このうち、メチル及びエチルが好ましい。
上記アシルを置換している炭素数1〜4のカルボキシアルキル基のアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが挙げられ、このうち、メチル及びエチルが好ましい。すなわち、当該カルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル及びカルボキシエチルが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法の出発物質である式(1)で表されるイソフラボン化合物のうち、より好ましいものとしては、R1〜R4が何れも水素原子であるもの、R1、R2及びR4が水素原子でありR3がメトキシであるもの、ならびにR1、R3及びR4が水素原子であり、R2がヒドロキシ基であるものが挙げられる。このときのAは、ヒドロキシ基であるか、又はR5が水素原子、アセチル又はカルボキシメチルカルボニルである式(i)で表される化合物であるのが好ましい。
【0024】
式(1)で表されるイソフラボン化合物の具体的な例としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、テクトリゲニン、イソホルモノネチン、プルネチン、ムニンギン、ジヒドロキシイソフラボン、トリヒドロキシイソフラボン、4’−ヒドロキシ−7−イソプロピルオキシイソフラボン、4’,7−ジヒドロキシ−5−メチルイソフラボン、4’,7−ジヒドロキシ−8−メチルイソフラボン、4’,5,6−トリヒドロキシ−7−メトキシイソフラボン、4’,5,7−トリヒドロキシ−6,8−ジメトキシイソフラボン、イソフラボン配糖体であるダイジン、ゲニスチン、グリシチン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、ならびにそれらの誘導体、等を挙げることができる。
【0025】
本発明の製造方法の出発物質であるイソフラボン化合物は、化学合成によって得られたものでもよいし、天然物、特にキク科、クワ科、オシロイバナ科、ショウガ科、マメ科、マキ科、ヒノキ科、ハリガネゴケ科等の植物から抽出されたものであってもよい。あるいは、市販品(例えば、常盤植物化学製のアイソマックス10、アイソマックス30、アイソマックス40、アイソマックス80、不二製油製のソヤフラボンHG、ソヤフラボンRS、ソヤフラボンR33、タマ生化学製のイソフラボン20、イソフラボン40、イソフラボン80、ニチモウバイオテックス製のAgliMax等)を購入してもよい。
【0026】
例えば、化学合成の方法としては、Tetrahedron Lett.Vol.51, No.33, p4408-4410(2010)、Synthesis No.10, p1590-1592(2010)、J. Chem. Soc., Perkin Trans. Vol.1, 2481-2484(1998)、Eur. J. Org. Chem. 33,5622-5629(2008)等に記載の方法が利用できる。
【0027】
植物から抽出する方法としては、上記植物を適宜乾燥、粉砕し、これを、減圧、常圧あるいは加圧下で、室温あるいは加温した溶媒中に加え、浸漬や攪拌しながら抽出する方法、溶媒中で還流しながら抽出する方法等が挙げられる。
植物としては、キク科、クワ科、オシロイバナ科、ショウガ科、マメ科、マキ科、ヒノキ科、ハリガネゴケ科等の植物、好ましくは、ダイズ、サヤマメ、アルファルファ、ムラサキツメクサ等のマメ科植物が挙げられ、中でもダイズがより好ましい。適用し得る植物の部位としては、種子、葉、茎等が挙げられるが、中でも種子が好ましい。
【0028】
抽出溶媒は、好ましくは水又は有機溶媒が挙げられ、また好ましくは極性溶媒である。具体的には、水としては、純水、蒸留水、水道水、酸性水、アルカリ水、中性水等が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、および1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の室温で液体であるアルコールを好適に用いることができ、炭素原子数1〜4の低級アルコールがより好ましく、エタノールがより好ましい。また上記有機溶媒は、含水アルコール等の含水有機溶媒であってもよい。
好ましい抽出溶媒としては、水、エタノール等のアルコール、及び含水エタノール等の含水アルコールが挙げられる。水、エタノール、含水エタノールがさらに好ましい。
上記含水有機溶媒中の有機溶媒の含有量は、通常50体積%以上、好ましくは通常80体積%以上、より好ましくは通常90体積%以上であるのが望ましい。
【0029】
抽出温度は5℃から溶媒の沸点以下の温度とするのが適切であり、抽出時間は使用する溶媒の種類や抽出条件、含水有機溶媒の場合にはさらに水性成分含有量によっても異なるが、30分〜72時間程度とするのが適切である。還流操作により抽出を行う場合は、抽出物が変性や熱分解を起こさないように低沸点の溶媒を用いるのが好ましい。また、二酸化炭素等を用いる超臨界流体抽出法により抽出操作を実施することもできる。
得られた、抽出液は、必要に応じて濾過あるいは遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去する。なお、除去した固形成分を再度、抽出操作に供することもでき、さらにこの操作を何回か繰り返してもよい。
【0030】
得られた抽出液は、そのまま本発明の製造方法の出発物質として用いてもよく、あるいはさらに濃縮あるいは凍結乾燥やスプレードライ等の方法により乾燥、粉末化するか、又は液状、粉末状又はペースト状にして、本発明の製造方法の出発物質として使用してもよい。
【0031】
本発明の製造方法においては、斯くして得られた出発物質である式(1)で表される化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理する。より具体的には、上記出発物質をクロロフィルと混合し、これに光照射及び/又は加熱処理を行う。
【0032】
本明細書において、クロロフィルとしては、緑色植物に含まれるクロロフィル(クロロフィルa、クロロフィルb)だけでなく、藻類に含まれるクロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルdや、クロロフィリン等が挙げられる。当該クロロフィルは、精製されたクロロフィルであってもよく、又は植物や藻類を、クロロフィルが利用できるように公知の方法で加工したもの(例えば、粉砕又は抽出したもの等)であってもよい。あるいは、試薬として市販されているもの、例えば、クロロフィルa、クロロフィルb(SIGMA製)などを用いてもよい。
混合する出発物質とクロロフィルとの比率は、式(1)の化合物と精製クロロフィルとの質量比として、10000:1〜0.01:1であればよく、1000:1〜10:1が好ましい。出発物質が植物抽出物の場合、抽出物(乾燥固形質量)と精製クロロフィルとの質量比として、50000:1〜10:1であればよく、20000:1〜50:1が好ましい。
上記出発物質とクロロフィルは、好ましくはさらに反応媒体と混合された状態で、光照射及び/又は加熱処理に供される。反応媒体としては、DMSO、メタノールやエタノール等のアルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書において、光照射における「光」とは、可視光線のみならず、赤外線及び紫外線等の不可視光線も含み、例えば、200nm〜800nm、好ましくは280〜700nm、さらに好ましくは360〜650nmの波長を有する光線であり得る。光照射の具体的な手順は、特に限定されないが、好ましくは、上記混合物に対する照度(キロルクス:klx)及び照射時間(hr)の積が20klx・hr以上、好ましくは40klx・hr以上、より好ましくは100klx・hr以上となるように光を照射する処理である。
【0034】
本明細書において、「加熱」とは、例えば、40〜105℃、好ましくは70〜105℃の温度で、0.5時間〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜48時間、上記混合物を加熱することであり得る。加熱の具体的な手順は、特に限定されず、当該分野で公知の任意の加熱手段を用いることができる。
【0035】
本明細書において、光照射処理と加熱処理とを組み合わせる場合は、各々の処理を上記各々の処理条件に基づいて、同時及び/又は順次行えばよい。光照射処理と加熱処理とをあわせて活性化に必要な処理量が達成できればよい。例えば、光照射処理と加熱処理を上記に設定した量の各々50%ずつ、すなわち10klx・hr以上の光処理と0.25時間以上の熱処理、あるいは20klx・hr以上の光処理と0.5時間以上の熱処理、等を同時または順次行えばよい。また例えば、光照射処理と加熱処理とは、上記に設定した処理量の5%:同95%〜同95%:同5%の割合で行われてもよい。あるいは、光照射処理と加熱処理との合計処理量は上記で設定した処理量を超えてもよい。例えば、100klx・hr以上の光処理と1日間以上の熱処理との組み合わせ等であってもよい。
【0036】
上記光照射及び/又は加熱処理により、混合物中に式(2)のプロトイソフラボン化合物が生成される。生成された化合物は、カラムクロマトグラフィー等の公知の手段によって単離すればよい。例えば、シリカゲルカラムを用いたHPLCによる単離が好ましい。シリカゲルカラムとしては、例えば、inertsil(登録商標)C8(ジーエルサイエンス株式会社)、inertsil(登録商標)ODS-3(ジーエルサイエンス株式会社)、カプセルパックC18(資生堂)、シリカC18M(昭和電工)、CLC-ODS(島津製作所)等を使用することができ、溶出には、必要に応じて酸の存在下、水と有機溶剤のグラジエント法を採用することができる。ここで酸としては、酢酸、塩酸、トリフルオロ酢酸などを挙げることができ、有機溶剤としては、アセトニトリル、メタノール、エタノール等のアルコール、DMSO,DMF等が挙げられる。HPLCは逆相系のグラジエントが好ましく、イソクラティックやステップワイズ等を適宜組み合わせて、最適な溶出パターンを得ることができる。例えば、0.1%酢酸10%アセトニトリル溶液から0.1%酢酸35%アセトニトリル溶液へのグラジエント等を好ましい例として用いることができる。当該グラジエントで溶出されるプロトイソフラボン画分を取得することにより、式(2)のプロトイソフラボン化合物の画分を単離することができる。
【0037】
以上の手順により、下記式(2)で表されるプロトイソフラボン化合物(以下、式(2)化合物とも称する)が製造される。
【0038】
【化6】

【0039】
式(2)中、R1〜R4及びAは、式(1)について上記で定義したものと同じである。
上記本発明の製造方法によって製造された式(2)化合物は、出発物質のイソフラボンにおけるB環が酸化されており、すなわち、その4’位にオキソ基を有し、且つ1’位にヒドロキシ基が置換した構造を有する。
従来、フラボノイドのB環を酸化する方法としては、フラボノイド化合物をTEMPOの存在下にTAIBと反応させて酸化することによる、プロトアピゲノン誘導体の合成方法が知られていた(特開2009−23990号公報)。しかし、この方法は、種々の副生産物や未反応物が反応液中に残存してしまうため、高度な精製処理を必要とするという問題があった。本発明の方法によれば、より簡便且つ安価に、しかも天然の化合物を利用するものであるため環境負荷が少ない方法で、フラボノイドのB環が酸化されたプロトイソフラボン化合物を提供することが可能になる。特に原料として、天然物由来のイソフラボン及びクロロフィルを用いることによって、簡便且つ安全性の高い方法でプロトイソフラボン化合物を得ることが可能である。
【0040】
上記本発明の製造方法により製造されるプロトイソフラボン化合物(式(2)化合物)の好ましい例を以下に列挙する。
7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
5,7−ジヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−(カルボキシメチルカルボニル)−β−D−グルコピラノシルオキシ]−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−[(カルボキシメチル)カルボニル]−β−D−グルコピラノシルオキシ]−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−[(カルボキシメチル)カルボニル]−β−D−グルコピラノシルオキシ]−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
【0041】
本発明により得られた式(2)化合物は、後記試験例に示されるとおり、リポポリサッカライドによって産生されるNOを効果的に抑制し、優れた抗炎症作用を有する。すなわち、上記式(2)化合物は、出発物質である式(1)で表される化合物と比べて、抗炎症活性が顕著に増強されているという利点を有する。
従って、本発明はまた、上記式(1)で表されるイソフラボン化合物を、上述の手順に従ってクロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理して上記式(2)化合物に変換することによる、イソフラボン化合物の抗炎症活性の増強方法を提供する。
なお、本明細書において、「炎症」とは、局所的な炎症及び全身的な炎症を含み、「炎症」の症状および状態としては、炎症の4大徴候である疼痛、発赤、熱感、腫脹;ならびにそれらによって誘発される様々な二次的症状、例えば、炎症性の皮膚炎、胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎、ならびに花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等を含む。
【0042】
本発明により得られる式(2)化合物、又はその塩は、増強した抗炎症活性を有しており、上記炎症の症状又は状態を予防、治療、改善又は緩和させるために有用である。
従って、本発明はまた、上記式(2)化合物又はその塩を含有する抗炎症剤を提供する。
ここで、式(2)化合物の塩としては、Aが上記式(i)で示される基であり、R5がカルボキシアルキル基で置換されたアシルである化合物の塩(例えば、マロニル配糖体の塩)が挙げられ、そのうち、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
本発明の抗炎症剤は、例えば、ヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等のために使用することができる。
【0043】
さらに本発明は、上記式(2)化合物又はその塩を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供する。式(2)化合物又はその塩は、ヒト又は動物用の医薬、化粧品、飲食品、飼料等に有効成分として使用され、抗炎症効果を発揮することができる。
【0044】
本発明の医薬は、式(2)化合物又はその塩を有効成分として含有する抗炎症薬、あるいはヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善若しくは緩和等のための医薬であり得る。
本発明の医薬の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤;吸入剤、坐剤等の経腸製剤;点滴剤;注射剤;外用剤;経皮、経粘膜、経鼻剤;吸入薬;貼布剤等が挙げられる。
なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングされていてもよい。
【0045】
本発明の化粧品は、式(2)化合物又はその塩を有効成分として含有する。当該化粧品の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧品が通常とり得る任意の形態が挙げられる。好ましくは、本発明の化粧品は、肌の炎症や赤み、アレルギー、アトピー、ニキビ等の症状を予防、改善若しくは緩和することができる化粧品である。
【0046】
本発明の医薬及び化粧品は、式(2)化合物又はその塩を単独で含有していてもよく、あるいは、各々、医薬として許容される担体及び化粧料として許容される担体を組み合わせて含有していてもよい。本発明の医薬及び化粧品は、式(2)化合物又はその塩に、慣用される担体、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、アルコール、水、水溶性高分子、香料、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。必要に応じてさらに、他の有効成分又は薬効成分を配合してもよい。
【0047】
本発明の医薬及び化粧品における式(2)化合物又はその塩の含有量は、その剤型により異なるが、通常は、0.1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%の範囲である。
【0048】
本発明の飲食品又は飼料は、式(2)化合物又はその塩を有効成分として含有する。これらの飲食品又は飼料は、抗炎症効果、あるいはヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等の効果を企図して、その旨を表示した健康食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品、家畜、競走馬、鑑賞動物等のための飼料、ペットフード等であり得る。
【0049】
本発明の飲食品及び飼料の形態は特に制限されず、式(2)化合物又はその塩を配合できる全ての形態が含まれる。例えば当該形態としては、固形、半固形または液状であり得、あるいは、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ゲル、シロップ、経管経腸栄養用流動食等の各種形態が挙げられる。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
本発明の飼料は飲食品とほぼ同様の組成や形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることが出来る。
【0050】
上記飲食品及び飼料は、式(2)化合物又はその塩、ならびに飲食品や飼料の製造に用いられる他の飲食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。あるいは、通常食されている飲食品又は飼料に式(2)化合物又はその塩を配合することにより、本発明に係る飲食品又は飼料を製造することができる。
【0051】
本発明の飲食品及び飼料における式(2)化合物又はその塩の含有量は、食品の形態により異なるが、通常は、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜50質量%の範囲である。
【0052】
上記医薬、化粧品、飲食品及び飼料は、式(2)化合物又はその塩の質量を基準として、成人1日当たり0.1〜100gの範囲で投与又は摂取される。経口投与又は摂取の場合、一般的な1日当たりの投与量は1〜50gである。上記1日当たりの投与又は摂取量は、1回で投与又は摂取してもよいが、数回に分けて投与又は摂取してもよい。
上記1日当たりの量を適切に投与又は摂取できるよう、本発明の医薬の剤型若しくは投与レジメン、又は飲食品及び飼料の形態を、1日当たりの投与又は摂取量が管理できる形にすることが望ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0054】
製造実施例1 7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(化合物1)の調製(光照射)
【0055】
【化7】

【0056】
シャーレに、ダイゼイン(7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)〔フナコシ〕60.4mg、クロロフィル(クロロフィルb:SIGMA製)1mg(ダイゼインに対する質量比として1/60)、及びDMSO 5mLを添加して、混合した。シャーレを蓋で密封し、25℃で攪拌(300rpm)しながら、光(蛍光灯:照度2klx/h)を6日間照射した。照射後、シャーレから溶液を回収し、濃縮乾固して、103.4mgの固形物を得た(収率171.2%)。
【0057】
得られた固形物をDMSOに溶解し、得られた試料溶液(4mg/ml)500μlをHPLCに供した。HPLCの条件は以下のとおりである。
カラム名:inertsil(登録商標)C8 20mm×250mm(ジーエルサイエンス株式会社)
溶離液:A液 0.1%酢酸10%アセトニトリル溶液、B液 0.1%酢酸35%アセトニトリル溶液
グラジエント条件:
0分〜50分(A液100%/B液0% → A液0%/B液100%)、
50分〜55分(B液100%)
55分〜60分(A液100%)
流量:0.7mL/min、温度:40℃、測定時間:60分、検出:190nm
試料濃度:4mg/ml、注入:500μL、

RT=26分のピークを分取し、溶媒を除去してプロトイソフラボン化合物を含む画分を得た。収量0.02mg(収率1%)。
【0058】
得られた画分についてNMR解析及び質量分析を行い、化合物1の生成を確認した。
1H-NMR(重DMSO, δppm):10.76ppm(1H, s br), 8.36ppm(1H, s), 7.79ppm(1H, d, J = 8.4Hz ), 6.89ppm(1H, d, J = 8.4 Hz ), 6.83ppm(1H, s), 6.77ppm(2H , d, J = 9.6 Hz ), 6.50ppm(1H, s br ), 6.13ppm(2H, d, J = 9.6 Hz);MS: m/z 271.1[M+H]+.
【0059】
製造実施例2 7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(化合物1)の調製(加熱)
製造実施例1と同様の手順でダイゼインとクロロフィルのDMSO溶液を得た(ダイゼインに対するクロロフィルの質量比1/60)。これを遮光したフラスコ中で攪拌(300rpm)しながら、85℃で40時間加熱した。加熱後、フラスコから溶液を回収し、濃縮乾固して、100.2mgの固形物を得た(収率165.9%)。得られた固形物を、製造実施例1と同様の手順でHPLCにかけ、分画物0.51mgを得た(収率0.84%)。製造実施例1と同様の手順でNMR解析及び質量分析を行い、化合物1の生成を確認した。
【0060】
製造実施例3 7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(化合物1)の調製(光照射+加熱)
製造実施例1と同様の手順でダイゼインとクロロフィルのDMSO溶液を得た(ダイゼインに対するクロロフィルの質量比1/60)。これを、攪拌(300rpm)しながら、25℃で3日間光照射(蛍光灯:照度2klx/h)し、次いで遮光したフラスコに移し、85℃で24時間加熱した。その後、フラスコから溶液を回収し、濃縮乾固して、98.9mgの固形物を得た(収率163.7%)。得られた固形物を、製造実施例1と同様の手順でHPLCにかけ、分画物0.60mgを得た(収率0.99%)。製造実施例1と同様の手順でNMR解析及び質量分析を行い、化合物1の生成を確認した。
【0061】
試験例1
NO産生抑制作用
マクロファージをリポポリサッカライド(LPS)で活性化してNO産生を増強させ、このNO産生に対する上記で調製した化合物の作用を調べた。
RAW264.7細胞(DSファーマバイオメディカル株式会社)は10%FCS+DMEM培地で継代維持した。RAW264.7細胞を2×105細胞/mL(10%FCS+DMEM培地)に調整した細胞浮遊液を、1mLずつ24ウェルプレートに播種し、24時間予備培養した。次いで、培地を500ng/mlのLPSと化合物1とを含む10%FCS+DMEM培地に交換し、18時間培養した。コントロールとして、LPSのみで試験化合物を含まない培地に交換し、同じ時間培養した。培養終了後、培地中に放出されたNOをNO2イオンに誘導して定量を行った。
NO2イオンの定量は、測定キット(Griess Reagent System:Promega社)を用いて、操作説明書に従って行った。結果は、下記式によってコントロールを100とする、NO産生量の抑制率として計算した。なお、各組成物は、DMSOに溶解して0.2体積%で培地に添加した。

100−{(サンプルのNO産生量/コントロールのNO産生量)×100}

各種濃度の添加によるNO産生抑制率から、50%抑制濃度(IC50)を算出し、その結果を表1に示す。本発明のプロトイソフラボン化合物(化合物1)は出発物質であるイソフラボン化合物(ダイゼイン)に比べて顕著なNO産生抑制効果を有し、抗炎症剤として優れていることが示された。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

〔式中、
1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示し;
Aは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示すか、又は下記式(i)
【化2】

(式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜4のカルボキシアルキル基で置換されたアシルである)
で示される基を示す〕、
で表される化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理することを特徴とする、下記式(2):
【化3】

(式中、R1〜R4及びAは、上記と同じく定義される)
で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
下記式(1):
【化4】

〔式中、
1〜R4は、それぞれ同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示し;
Aは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルケニル基、炭素数1〜5の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルオキシ基を示すか、又は下記式(i)
【化5】

(式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜4のカルボキシアルキル基で置換されたアシルである)
で示される基を示す〕、
で表される化合物を、クロロフィルの存在下で光照射及び/又は加熱処理して、下記式(2):
【化6】

(式中、R1〜R4及びAは、上記と同じく定義される)
で表される化合物に変換することを特徴とする、イソフラボン化合物の抗炎症活性の増強方法。
【請求項3】
前記光照射処理が、200nm〜800nmの波長の光を、照度(キロルクス:klx)と照射時間(hr)の積が20klx・hr以上となるように照射する処理である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記加熱処理が、40〜105℃の温度で0.5〜144時間加熱する処理である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法により製造された化合物。
【請求項6】
請求項1記載の方法により製造された化合物又はその塩を含有する抗炎症剤。
【請求項7】
請求項1記載の方法により製造された化合物又はその塩を含有する医薬。
【請求項8】
請求項1記載の方法により製造された化合物又はその塩を含有する化粧品。
【請求項9】
請求項1記載の方法により製造された化合物又はその塩を含有する飲食品。
【請求項10】
請求項1記載の方法により製造された化合物又はその塩を含有する飼料。

【公開番号】特開2013−60397(P2013−60397A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200276(P2011−200276)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】