説明

プロトン交換燃料電池

プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーをベースとしていて、そしてアノード(101)とカソード(103)の間に置かれた電解質膜(102)を含む少なくとも一つの膜-電極集成体を有するプロトン交換膜燃料電池(100)であって、アノード(101)は触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有する。触媒層は電解質膜(102)からアノード(101)の外表面に向かって増大するフッ素/触媒の比率を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明はプロトン交換膜燃料電池および前記燃料電池を含む装置に関する。
典型的な燃料電池は少なくとも一つの膜電極集成体(MEA)を有する。一般に、MEAはアノード、カソードおよびアノードとカソードの間に配置された固体または液体の電解質を含む。様々なタイプの燃料電池は、燃料電池において用いられる電解質によって分類され、五つの主要なタイプはアルカリ燃料電池、溶融炭酸塩燃料電池、リン酸燃料電池、固体酸化物燃料電池およびプロトン交換膜(PEM)燃料電池または固体高分子電解質燃料電池(PEFC)である。携帯用として特に好ましい燃料電池は、その小型の構造、電力密度、効率および動作温度の故に、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)であり、これにおいては燃料としてギ酸、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ジメトキシおよびトリメトキシエタン、ホルムアルデヒド、トリオキサン、またはエチレングリコールなどの流体を利用することができる。
【0002】
先行技術
PEMFCに関する研究の大部分は燃料リフォーマー(reformer)を伴わずにメタノールを直接用いる電池に焦点が当てられ、これはDMFC(直接メタノール燃料電池)と呼ばれる。
【0003】
現今では、携帯電話、ノートブック型パソコンおよびビデオカメラなどの携帯用機器は、例えばニッケル-金属水素化物バッテリーまたはリチウムイオンバッテリーなどの再充電可能なバッテリーから動力を供給される。例えばR. W. Reeveによる「直接メタノール燃料電池についての最新の状況」DTI/Pub URN 02/592, Crown Copyright 2002で報告されているように、DMFCは長い動作時間と容易で迅速な燃料補給の見込みを提供するので、多くの適用について再充電可能なバッテリーに取って代わる可能性を有する。
【0004】
DMFCにおいては、次の反応機構に従ってアノードにおいてメタノールが二酸化炭素に酸化され、カソードにおいて酸素が還元される:
アノード:CH3OH + H2O →CO2 + 6H+ + 6e-
カソード:3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O ;
全体:CH3OH + 3/2O2 →CO2 + 2H2O
メタノールの酸化の反応速度の方が遅いので、アノード反応の速度論的制限により、DMFCの性能は温度依存性である。動力が供給される機器の種類を考慮すると、できるだけ室温に近い温度において電力密度(mW/cm)に関して望ましい性能が得られるのが重要である。
【0005】
温度のほかに、DMFCの性能はMEAの構成材料に依存する。
電極は典型的に、反応触媒として白金-ルテニウム合金(アノード)と白金(カソード)を含む。触媒は炭素粒子、例えばカーボンブラックの上に担持させることができて、そしてイオノマー、通常はテトラフルオロエチレンとペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテン-スルホン酸の共重合体であるNafion(登録商標、DuPont Chemical Companyから)を触媒層の中に含ませることができる。
【0006】
DMFC用に商業的に入手できる電極はELAT(登録商標)電極(E-TEKから)である。ELAT(登録商標)電極は、炭素布の支持体と、支持体の一方の側だけにある疎水性フルオロカーボン/炭素の層を用いた気体側の防湿層と、PtまたはPt/Ruを含ませたカーボンブラックからなる触媒層によって形成される三層構造に基づく。
【0007】
電解質膜に関しては、その材料はアノードからカソードへのプロトンの拡散を可能にするべきであり、そしてアノードからカソードへの燃料の浸透を防ぐものでなければならない。
【0008】
現在、ペルフルオロカーボンの膜が最も一般的に用いられている。通常のペルフルオロカーボン膜は、プロトン伝導性の官能基を含む非架橋ペルフルオロアルキレンポリマーの主鎖を有する。Nafion(登録商標)膜はその典型的な例である。
【0009】
例えば米国特許6,444,343号によって報告されているように、Nafion(登録商標)膜は高い伝導性が証明されていて、また高い電力密度とエネルギー密度の特性を有する。しかし、DMFCにおけるNafion(登録商標)膜の使用は、非常に高いコストと、アノード区画から高分子電解質膜を通してのカソードへのメタノールの高い浸透速度を含む不利益を伴う。この「メタノールの通り抜け(crossover)」は燃料電池の効率を低下させる。
【0010】
代替の高分子膜が提案されていて、これらの中では放射線グラフトさせた高分子膜が注目される。例えばK. ScottらによるJournal of Membrane Science, 171 (2000), 119-130において報告されているように、グラフトによってイオン交換膜が製造され、これにおいては予備成形したポリマー構造物の上にモノマーが共重合され、その結果、支持体から成長した新しいポリマー構造が形成される。支持体の中でポリマーラジカルを形成することによってグラフト反応が行われ、これは化学的に誘起されるかあるいは電離線によって誘起されうるプロセスである。
【0011】
上記のK. Scottらは特に、放射線グラフトによって製造されるLDPEとスチレンとの共重合体を研究している。DMFCの試験において、フッ素を含まない幾つかの放射線グラフトしたLDPE-PSSA(低密度ポリエチレン/硫酸ポリスチレン)の膜は非常に低いメタノール拡散係数を示し、それはNafion(登録商標)よりも少なくとも一桁低いのであるが、しかし、高い電気抵抗と膜の表面に対する触媒層の望ましくない離層を呈する。
【0012】
フッ素を含まない高分子膜の別の欠点は、電極の触媒層の中にNafion(登録商標)が存在していることと関係している。一般に、この材料は触媒層を貫通し、そして触媒の活性部位と膜の表面の間のイオン性の橋としての役割をすると考えられている。この顕著な突き抜け(breakthrough)は、Nafion(登録商標)に対する膜の代替物を試行する際の大きな制限の一つとなっている。膜が化学組成の点でNafion(登録商標)と著しく異なっている場合は、電極の触媒層の中に溶解したNafion(登録商標)の溶液は適合しないかもしれず、そして一般に、MEAを形成している様々な複合層の間の良好な電気的接触または良好な付着を促進しないかもしれない。上記のK. Scottらは、結論として、放射線グラフトした固体高分子膜材料の主要な問題は、膜の表面への触媒層の積層に関してのMEAの安定性であることを強調している。
【0013】
要約すると、Nafion(登録商標)を含む電極はイオンの輸送の点からはMEAにおいて最良の性能を提供するものであることが示されている。同時に、Nafion(登録商標)以外の電解質膜をベースとするMEAは、経済的な理由から、またメタノールの通り抜けの現象を低減させるためにも、望ましいものである。しかし、フッ素を含まない高分子材料は、化学的な不適合性のために、Nafion(登録商標)を含む電極を有するMEAにおいて低い性能と安定性を示す。
【0014】
発明の概要
アノードのフッ素化材料と電解質膜のフッ素を含まないポリマーとの間の相互作用は、触媒の分布を改良することによって電力密度と動作時間に関して改善されうることを、出願人は理解した。
【0015】
MEAに基づくプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)は、このMEAに関して、アノードのフッ素化イオノマーについてのアノード触媒の含有量がアノード触媒層におけるよりも電解質膜の近傍における方が高い場合に、1気圧において40℃以下の温度においてさえも有効な電力密度をもたらすことを、出願人は見出した。
【0016】
従って、本発明は、プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーをベースとしていて、そしてアノードとカソードの間に置かれた電解質膜を含む少なくとも一つの膜-電極集成体を有するプロトン交換膜燃料電池に関するものであり、アノードは触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有していて、前記触媒層は電解質膜からアノードの外表面に向かって増大するフッ素/触媒の比率を有する。
【0017】
本明細書と特許請求の範囲の目的に関して、特に示さない限り、量やパーセントなどを表す全ての数値は、全ての場合において「約」という用語によって集成されうることが理解されるべきである。また、全ての範囲は、本明細書中で特に列挙されていてもいなくても、開示された最大値と最小値のいかなる組み合わせをも含み、またあらゆるその中間の範囲をも含む。
【0018】
以下の説明および特許請求の範囲において、アノードとカソードは包括的に「電極」と呼ぶこともできる。
本発明に従うプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)には、ギ酸、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ジメトキシおよびトリメトキシエタン、ホルムアルデヒド、トリオキサン、およびエチレングリコールから選択される燃料を供給することができる。好ましくは、燃料はメタノールであり、さらに好ましくは、燃料リフォーマーを伴わずに直接これが用いられる。
【0019】
本発明に従う好ましいPEMFCは、直接メタノール燃料電池(DMFC)である。
本発明の好ましい態様において、電解質膜は、プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーからなる。
【0020】
好ましくは、プロトン伝導性の官能基を含む側鎖は、酸素の橋かけ(bridge)を介してフッ素を含まないポリマーにグラフトされている。
有利な場合として、前記側鎖のグラフト化の量[Δp(%)]は10%〜250%であり、好ましくは30%〜100%である。グラフト化の量は次の式に従って計算することができる:
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、wとwはそれぞれグラフト化処理の前と後での膜の乾量(dry weight)である。
有利な場合として、グラフトは放射線グラフトである。放射線グラフトは、例えば本出願人の名義によるWO 04/004053によって開示されているもののような当分野で公知の放射線照射処理によって得られる。
【0023】
好ましくは、フッ素を含まないポリマーはポリオレフィンである。本発明において用いることのできるポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-プロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、ポリ二塩化ビニリデン、ポリクロロエチレンから選択されるものであろう。ポリエチレンは特に好ましい。ポリエチレンは高密度ポリエチレン(HDPE)(d=0.940〜0.970 g/cm3);中密度ポリエチレン(MDPE)(d=0.926〜0.940 g/cm3);低密度ポリエチレン(LDPE)(d=0.910〜0.926 g/cm3)であろう。低密度ポリエチレン(LDPE)が特に好ましい。
【0024】
有利な場合として、側鎖は、プロトン伝導性の官能基を含むか、あるいはプロトン伝導性の官能基を与えるように変性されうる、あらゆる炭化水素ポリマー鎖から選択される。側鎖は不飽和炭化水素モノマーのグラフト重合によって得られ、その炭化水素モノマーは場合により塩素化または臭素化されている。前記不飽和炭化水素モノマーは、スチレン、クロロアルキルスチレン、α-メチルスチレン、α,β-ジメチルスチレン、α,β,β-トリメチルスチレン、オルト-メチルスチレン、p-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルキルスルホン酸、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジン、およびこれらの共重合体から選択することができる。スチレンとα-メチルスチレンは特に好ましい。
【0025】
好ましい態様によれば、プロトン伝導性の官能基はスルホン酸基とリン酸基から選択することができる。スルホン酸基が特に好ましい。
本発明の電解質膜材料中に存在するプロトン伝導性の官能基のパーセント[Δg(%)]は、これらの基を付加した後の(例えばスルホン化処理した後の)膜の重量増加として定義され、そしてグラフト化の量[Δp(%)]の計算に関して上で既に述べた式に従って、必要な変更を加えて計算することができて、すなわち、wとwはそれぞれプロトン伝導性の官能基を付加する前と後での膜の乾量である。好ましくは、Δg(%)は10%〜100%であり、より好ましくは20%〜70%である。
【0026】
アノードの触媒層について、触媒は白金、金、およびタングステンの酸化物から選択することができる。アノードの触媒層のための好ましい触媒は白金であり、そして燃料の酸化が高まるように促進されるのが有利である。触媒の促進剤の例は、クロム、鉄、スズ、ビスマス、ルテニウム、モリブデン、オスミウム、イリジウム、チタン、レニウム、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、タンタルである。金属または酸化物のいずれかの形態で、スズ、モリブデン、オスミウム、イリジウム、チタンおよびルテニウムのうちの少なくとも一つから選択される触媒促進剤が好ましい。酸化物の形態での触媒促進剤の例は含水-酸化ルテニウムである。少なくとも一つの促進剤が金属の形態にあるとき、触媒との合金が好ましい。少なくとも一つの触媒促進剤と白金との合金が特に好ましい。好ましいものは白金-ルテニウム合金(Pt-Ru)であり、Pt:Ruの比率は9:1〜1:1の範囲であってよい。
【0027】
本発明に従うフッ素/触媒の比率は、触媒層の中に場合によって存在する促進剤を考慮せずに、触媒の含有量に基づいて計算される。
本発明のカソードは、好ましくは触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有する。
【0028】
カソードの触媒は、白金;金;鉄またはコバルトのポルフィリン、フタロシアニン、ジメチルグリオキシムの誘導体など、遷移金属の大員環の誘導体;およびルテニウム-モリブデン-セレン酸化物など、混合の遷移金属の酸化物から選択することができる。カソードの触媒層のための好ましい触媒は白金である。
【0029】
有利な場合として、アノードとカソードの触媒のうちの少なくとも一つは導電性の炭素粒子の上に分散される。好ましくは、炭素の粒子は100m2/gよりも大きな表面積を有する。炭素粒子の例は、大表面積黒鉛、Vulcan(登録商標)XC-72(Cabot Corp.)、Ketjenblack(登録商標、Akzo Nobel Polymer Chemicals)およびアセチレンブラックなどのカーボンブラック、または活性炭である。
【0030】
好ましくは、触媒は炭素粒子の上に10wt%〜90wt%の量で分散される。アノードの触媒については、分散体のパーセントは40wt%〜85wt%の範囲であるのが有利である。カソードの触媒については、分散体のパーセントは20wt%〜70wt%の範囲であるのが有利である。
【0031】
フッ素化イオノマーの例は、場合によりスルホン酸基を含む過フッ素化化合物である。好ましくは、フッ素化イオノマーはペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテン-スルホン酸(Nafion(登録商標))である。
【0032】
有利な場合として、フッ素化イオノマーの量は、触媒層の全構成成分の5wt%〜95wt%を占める。好ましいのは10wt%〜45wt%である。
好ましくは、各々の電極は10mg/cm2未満、より好ましくは5mg/cm2未満の触媒含有量を示す。
【0033】
場合により、アノードとカソードのうちの少なくとも一つの触媒層には支持体が設けられる。支持体の例は炭素の布および炭素の紙である。
場合により、電解質膜との境界部を形成する表面の反対側で、アノードとカソードのうちの少なくとも一つの触媒層の表面と接して、拡散層が設けられる。場合により、拡散層は支持体と触媒層の間に置かれる。拡散層は、MEAの外側から触媒層までの反応物質(燃料と空気)の分散と、MEAからの反応副生物の除去を改善するために用いられる。例えば、拡散層はアセチレンカーボンからなる。拡散層のために適した炭素の例は、上に触媒を分散することのできる炭素粒子に関連して、前にすでに挙げたものである。
【0034】
有利な場合として、各々の電極は、例えばポリマー材料からなる結合剤をさらに含む。そのようなポリマー材料としては、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの炭化水素ポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレンなどの部分フッ素化ポリマー、あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリフッ化ビニリデンなどの過フッ素化ポリマーがある。結合剤は電極の構造上の一体性を確実にするのに役立つ。また、結合剤は電極の疎水性を調整する役割をもつこともできる。
【0035】
アノードとカソードはそれらの触媒層によって電解質膜に結合し、そして電解質膜のポリマーと各々の触媒層は互いに浸透する。以下では、それぞれの浸透領域を「境界部」と呼ぶ。境界部は、燃料または酸素、電解質膜のプロトン伝導性の基、および触媒の間での3相の接点が成立する位置である。この境界部の性質は、燃料電池の電気化学的性能において重要な役割を演じる。
【0036】
電解質膜ポリマー/アノード触媒層の境界部は3μm〜10μmの厚さとすることができる。
電解質膜ポリマー/カソード触媒層の境界部は3μm〜15μmの厚さとすることができる。
【0037】
本発明によれば、フッ素/触媒の比率(以下、「F/Pt」という)は、電解質膜からアノードの外表面に向かって増大する。このことは、例えば、この比率がアノード触媒層におけるよりも境界部における方が低いことを意味する。
【0038】
以下の例で示すように、フッ素を含まない電解質膜を有する公知のMEAにおいては、アノードだけがフッ素と触媒を含んでいるために、F/Ptの値は境界部を含めてアノードの触媒層の全体にわたって実質的に一定である。本発明のMEAは、アノード触媒層のフッ素イオノマーに関して触媒で富化した電解質膜/アノードの境界部を示す。
【0039】
この特徴は、本発明の膜とアノードの間の改善された相乗的な相互作用を示すものである。境界部は、電解質膜ポリマーからのプロトン伝導性の基および触媒粒子で富化していて、そしてイオノマーの疎水性成分からのフッ素が減少していることが触媒の最も有効な活性を可能にする。
【0040】
本発明のプロトン交換燃料電池は、電解質膜とアノードとカソードを調製し、そしてそれらに圧力をかけて、好ましくは80℃〜150℃の温度において加熱することによって組立てることで得られる。好ましくは、圧力は1〜5バールの範囲である。
【0041】
少なくともアノードの触媒層は、しかし好ましくはカソードの触媒層も、触媒とフッ素化イオノマーの均質混合物を支持体の上に堆積することによって調製することができて、それは例えば、A. S. Arico, A. K. Shukla, K. M. el-Khatib, P. Creti, V. Antonucci, J. Appl. Electrochem. 29 (1999) 671 に記載されたプロセスに従って行われる。
【0042】
最初の工程において、触媒、好ましくは炭素粒子の中に細かく分散させた触媒を超音波を用いて水の中に分散させることができて、次いでイオノマーが、例えばアルコール懸濁液の形で添加される。次いで、この混合物は、好ましくは50℃〜100℃の温度で予熱した支持体の上に塗布され、所望の塗布量が得られるまでこれが行われる。溶剤が完全に除去された後、得られた電極が、好ましくは乾燥状態で膜とともに組立てられる。
【0043】
別の面において、本発明は少なくとも一つのプロトン交換膜燃料電池から動力を供給される携帯用機器に関し、そのプロトン交換膜燃料電池は、プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーをベースとしていて、そしてアノードとカソードの間に置かれた電解質膜を含む少なくとも一つの膜-電極集成体を有し、アノードは触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有していて、前記触媒層は電解質膜からアノードの外表面に向かって増大するフッ素/触媒の比率を有する。
【0044】
本発明に従う携帯用機器の例は、携帯電話、ノートブック型パソコン、ビデオカメラ、および携帯情報端末である。
好ましい態様の詳細な説明
以下の実施例と図面を参照して本発明をさらに説明する。
【0045】
図1はPEMFC(100)を概略的に示している。PEMFC(100)はアノード(101)、カソード(103)およびそれらの間に置かれた電解質膜(102)を有する。第一および第二の境界部(104a、104b)はそれぞれ、電解質膜(102)とアノード(101)の間および電解質膜(102)とカソード(103)の間にある。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、酸化される燃料としてメタノールがアノード(101)に供給される。直流(DC)の形の電力をそのまま携帯型デバイスによって利用することができ、あるいは出力調節器(図示せず)によって交流(AC)に変換される。未反応の燃料および/または反応生成物(例えば水および/または二酸化炭素)を含みうる排出液がアノード(101)から流出する。
【0047】
実施例1
直接メタノール燃料電池(DMFC)のための膜電極集成体
a)電解質膜の調製
40μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムが、60Co照射源を用いて60rad/sの線量率で0.05MGyの総放射線量になるまで空気中でγ線の照射を受けた。この照射されたフィルムは空気中に室温で168時間放置された。
【0048】
スチレンモノマー(純度99%以上、Aldrichから)が30%水酸化ナトリウムの水溶液で洗浄され、次いで、中性のpHになるまで蒸留水で洗浄された。この処理されたスチレンは塩化カルシウム(CaCl2)の上で乾燥され、そして減圧下で蒸留された。2mg/mlの硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)を含有するスチレン/メタノール溶液(50:50vol.%)が、還流冷却器を備えたスチールの反応器を用いて調製された。スチールの反応器は水浴中で溶液の沸点になるまで加熱された。
【0049】
照射されたLDPEフィルムは、100mlのこのスチレン/メタノール溶液(グラフト化混合物)の中に浸漬された。2.5時間(グラフト化の時間)の後、LDPEフィルムは反応容器から取り出され、トルエンとメタノールで3回洗浄され、次いで空気中と真空中で室温において一定の重量になるまで乾燥された。
【0050】
グラフト化したLDPEフィルムは濃硫酸の溶液(96%)の中に浸漬され、そして還流冷却器を備えたスチールの反応器の中で98℃において2.8時間加熱された。次いで、フィルムは溶液から取り出され、異なる硫酸の水溶液(それぞれ80%、50%および20%)で洗浄され、そして最後に、中性のpHになるまで蒸留水で洗浄された。次いで、フィルムは空気中で室温において乾燥され、続いて真空中で50℃において一定の重量になるまで乾燥されて、電解質膜が得られた。
【0051】
グラフト化したポリスチレンの量[Δp(%)]およびスルホン化度[Δg(%)]は、Δp=83%およびΔg=53%であった。電解質膜は73μmの最終の厚さを有していた。
【0052】
b)電解質膜のイオン交換容量(IEC)の測定
a)において得られた電解質膜の試料(10cm2)が真空炉中で80℃において2時間乾燥され、そして乾量(mdry)が測定された。次いで、膜は水中で膨張され、そして20mlの1M NaClの中に室温において18時間浸漬されて、それによりポリマーからのH+イオンが溶液中に存在するNa+イオンで交換された。最後に、膜を入れたこの溶液は0.01M NaOHで滴定されて、滴定の間のpHが観察された。
【0053】
加えたNaOHの容積の関数としてpHをプロットして、試料の当量容積(equivalent volume)(Veq)およびIECは次の式によって決定された:
【0054】
【数2】

【0055】
イオン交換容量の値は2.84meq/gであった。
c)電極材料および構造
アノードとカソードは、0.33mmの厚さのPTFE処理された炭素の布(AvCarb(登録商標)1071 HCB)の上に順に堆積された薄い(約20μm)の拡散層と触媒層によって形成された複合構造を有していた。
【0056】
拡散層はアセチレンカーボンと20wt%のPTFEから作られたものであり、最終的な炭素の使用量は2mg/cm2であった。
アノードの触媒層は、Nafion(登録商標)イオノマーと60wt%PtRu/Vulcan(登録商標)XC-72粉末の混合物(E-TEK)であり、3:1の粉末/ Nafion(登録商標)比率(乾燥wt%)と2.1mg/cm2の全Pt含有量(触媒インク)を有していた。
【0057】
カソードの触媒層は、Nafion(登録商標)イオノマーと30wt%Pt/Vulcan(登録商標)XC-72粉末の混合物(E-TEK)であり、3:1の粉末/ Nafion(登録商標)比率(乾燥wt%)と2.3mg/cm2の全Pt含有量(触媒インク)を有していた。
【0058】
d)拡散層の調製
PTFE処理された炭素の布の18×12cm2のピース(厚さ0.33mm)は、40℃で予熱された金属板の上に固定され、次いで板の温度は80℃まで上げられた。
【0059】
650mgの細かく粉砕されたアセチレンブラックが、10.4mgの脱イオン水と10.4mgのイソプロピルアルコールを用いて10分間超音波処理された。次いで、さらに0.2mlの60wt%のPTFEの水中懸濁液(Aldrich)、5.2mgの水および5.2mgのイソプロピルアルコールが混合物に添加され、これが15分間超音波処理された。得られたスラリーはc)の項の炭素の布の上に噴霧され、これは炭素の最終塗布量が2mg/cm2になるまで行われた。この堆積された層は空気中で90℃において乾燥するために放置され、次いで空気流を伴った炉中で350℃において4時間熱処理され、このとき温度は5℃/分の速度で上昇された。
【0060】
e)アノードの調製
d)の項の拡散層/支持体の6×6cm2のピースが切り出され、そしてc)の項からのアノード触媒層で被覆された。堆積を行う前に、拡散層/支持体は金属板の上で80℃で加熱された。
【0061】
273.2mgの60%PtRu/Vulcan(登録商標)粉末(E-TEK)が水の中に分散され、10分間超音波処理され、2.70gの5wt%Nafion(登録商標)分散液(Aldrich)が添加され、そしてさらに20分間処理された。得られた触媒インクは、Ptの最終使用量が2mg/cm2になるまで気体拡散層の上に塗布された。2〜3回の堆積のそれぞれの回の後に、空気流の下で溶剤が蒸発された。次いで、得られたアノードは、空気中で室温において18時間放置して乾燥された。
【0062】
f)カソードの調製
d)の項の拡散層/支持体の6×6cm2のピースが切り出され、そしてc)の項からのカソード触媒層で被覆された。堆積を行う前に、拡散層/支持体は金属板の上で80℃で加熱された。
【0063】
360mgの30%Pt/Vulcan(登録商標)粉末(E-TEK)が水の中に分散され、10分間超音波処理され、3.55gの5wt%Nafion(登録商標)分散液(Aldrich)が添加され、そしてさらに20分間処理された。得られた触媒インクは、Ptの最終使用量が2mg/cm2になるまで気体拡散層の上に塗布された。2〜3回の堆積のそれぞれの回の後に、空気流の下で溶剤が蒸発された。次いで、得られたカソードは、空気中で室温において18時間放置して乾燥された。
【0064】
g)膜/電極集成体(MEA)の作製
工程e)およびf)で得られた電極およびa)で説明した電解質膜を用いてMEAが作製された。
【0065】
MEAを作製するために、5×5cm2の電解質膜と2.5×2.5cm2の電極(アノードとカソードの二つ)が用いられた。二つの電極はそれぞれ電解質膜のいずれかの側に配置され、このときそれらの触媒層が電解質膜に面するようにされた。全体を二つのPTFEシートの間に挟み、油圧プレス(ATS FAAR)を用いて高温で組み付けた。プレスの圧盤(30cm2)は予め80℃に加熱された。MEAを装入した後、圧盤の温度は100℃まで上げられ、次いで3バールの圧力が1.5分間加えられた。
【0066】
実施例2
グラフト化した放射線照射膜を有するDMFCのための膜電極集成体および市販用のELAT電極(E-TEK)(比較例)
実施例1のa)に記載された電解質膜が、DMFCのための二つのELAT(登録商標、E-TEK)市販用ガス拡散電極とともに組み付けられた。各々の電極(アノードとカソード)は、炭素の布の支持体(0.35mm)、厚い微孔質で耐湿性の拡散層(0.45〜0.55mm)および触媒層によって形成された三層構造からなっていた。
【0067】
Vulcan(登録商標)XC-72の上の60%PtRu(1:1)とPTFE(結合剤)からアノード(A-11電極)の触媒層が調製され、そしてNafionイオノマー懸濁液を上に噴霧することによって機能化(functionalize)された。Vulcan(登録商標)XC-72の上の40%PtとPTFE(結合剤)からカソード(A-6電極)の触媒層が調製され、そしてNafionイオノマー懸濁液を上に噴霧することによって機能化された。各々の電極の上のPtの使用量は2mg/cm2であった。
【0068】
アノードとカソードの両者の触媒層の上にNafion(登録商標)イオノマー懸濁液(Aldrich)を、最終のNafion(登録商標)含有量が0.6mg/cm2(乾量)になるように噴霧した後、実施例1のg)で説明した手順を用いて膜電極集成体が作製された。電極/膜集成体の幾何学的な有効電極面積は5cm2であった。
【0069】
実施例3
CH3OH/空気燃料電池の構成におけるMEAの電気化学的な特徴づけ
実施例1および2のMEAのそれぞれが単一の電池試験装置(Globo Tech Inc)に組みつけられた。この装置は二つの銅製集電体の端板とリブ状のチャネルパターンを有する二つの黒鉛板を有していて、チャネルパターンはアノードに水溶液を通し、そしてカソードに加湿空気を通すものである。
【0070】
MEA集成体をそれぞれの単一の試験ハウジングの中に挿入した後、蒸留水と加湿空気を用いて30℃において電池を平衡させた。蠕動ポンプおよび電池温度に維持された予熱器によって、アノードに水が供給された。大気圧においてカソードに加湿空気が供給され、そして空気加湿器は電池温度よりも10℃高い温度に維持された。
【0071】
単一の電池は4338B型のACインピーダンスアナライザ(Agilent)に接続され、そして1KHzの固定周波数および開回路の条件において電池の抵抗(Ωcm2で表される)が測定された。一定の値の電池抵抗に達したとき、アノードに2.4ml/分の供給速度で1Mのメタノール溶液が供給され、一方、カソードにおける空気の流れは500ml/分に変えられた。開回路および30℃における電池抵抗が再度測定され、そして動的分極曲線が記録された。次いで、電池は60℃まで段階的に加温され、このとき異なる温度における電池抵抗と分極曲線が記録された。
【0072】
全て40℃と60℃において記録された電池抵抗(Rcell)、開回路電圧(OCV)および最大出力密度(Pmax)を表1に報告する。
【0073】
【表1】

【0074】
図2aと図2bはそれぞれ、40℃と60℃において記録された分極と出力の曲線を示す。
両者のMEAは低い電池抵抗によって特徴づけられるが、しかし実施例1のMEAは40℃においても高い開回路の値を示し、このことは効果的な膜と電極の境界部を意味する。これらの温度と大気圧における最大の出力密度は10.8mW/cm2および28mW/cm2であった。
【0075】
実施例2のMEAは不適切なものであることが示された。表1と図2の両者において報告されたデータは、記録されたOCVの値と電力密度が60℃においても非常に低いので、この実施例の膜電極集成体はDMFCのためには有効でないことを明白に示している。
【0076】
実施例4
膜/電極集成体の作製およびその境界部の特徴づけ
a)電解質膜の調製
実施例1に記載した手順に従って膜が調製されたが、ただしグラフト化混合物は30vol.%のスチレンモノマーと70vol.%のメタノールを含んでいた。グラフト化とスルホン化の時間はそれぞれ330分と240分であり、最終のグラフト化度とスルホン化度はそれぞれ71%と45%であった。この膜のイオン交換容量は2.93meq/gと見積もられた。
【0077】
b)膜/電極集成体(MEA)の作製
MEAを作製するために、実施例1において作製したようにして、a)の項の5×5cm2の電解質膜と2.5×2.5cm2の電極(アノードとカソードの二つ)が用いられた。
【0078】
二つの電極は電解質膜のいずれかの側に配置され、このときそれらの触媒層が電解質膜に面するようにされ、そして全体を二つのPTFEシートの間に挟み、油圧プレス(ATS FAAR)を用いて高温で組み付けた。プレスの圧盤(30cm2)は予め80℃に加熱され、そしてMEAを装入した後、温度は100℃まで上げられ、そして3バールの圧力が1.5分間加えられた。
【0079】
c)境界部の特徴づけ
次のようにして、a)の項のMEAの中心部から試料を取り出すことによって、境界部の特徴づけが行われた。最初に、アノード、カソードおよび電解質膜の長手方向の厚さに実質的に直角な面に従う二つの部分にMEAが切断され、このときこの面はMEAの長手方向の伸長部について実質的に中央位置にあった。次いで、これらの部分のうちの一つが、最初の切断面に実質的に直角な二つの面に従って切断され、これにより所望の試料が得られた。
【0080】
試料は垂直な壁を有するホルダーに導電性のリボンを用いて固定され、次いで、2〜3nmの銀の層をスパッターすることによってメタライジングされた。
走査型電子顕微鏡(Hitachi S-2700)を用いて組成が観察され、次いで、EDAX分析(Oxford ISIS 300装置)によって、電解質膜/電極の境界部からそれぞれの電極に向かってF、S、PtおよびRu元素の組成の変化が分析された。
【0081】
断面に平行なラインスキャン上に位置する長さ20μmおよび幅5μmのウィンドーについて元素分析が行われた。アノード/電解質膜の境界部の中央を規定するライン上のEDAXウィンドーを中心とすることによって最初の点(0μm)が記録された。断面での異なる位置における幾つかのラインスキャンが分析され、その平均値を表2に報告する。この表は、記録されたF/SおよびS/Ptの比率も示している。図3はMEAにおいて電解質膜からアノードの外表面に向かう方向でのF/Pt比の値の曲線を示す。
【0082】
実施例5
膜/電極集成体の作製およびその境界部の特徴づけ(比較例)
a)電解質膜の調製
実質的に実施例1のa)に従って電解質膜が調製され、それぞれ71%と32%の最終的なグラフト化度とスルホン化度を有していた。グラフト化とスルホン化の時間はそれぞれ330分と180分であった。この膜のイオン交換容量は2.89meq/gと見積もられた。
【0083】
b)アノードとカソードの調製
実施例1に従って電極が調製されたが、ただし前述のScottらによって記述されたように、各々の電極の表面上に噴霧されたNafion(登録商標)イオノマー(0.6mg/cm2の乾量)からなる追加の層が設けられた。
【0084】
c)膜/電極集成体の作製
実施例4に記載したようにして膜と電極が組み付けられた。
d)境界部の特徴づけ
実施例4の特徴づけの手順が適用された。結果を表2と図3に示す。
【0085】
本発明に従う実施例4のMEAについて記録されたものと比較して、この比較例のMEAによって得られたF/Pt比の値は電解質膜からアノードの外表面に向かう方向で減少し、このことは触媒がフッ素イオノマーによって「覆われている」ことを証明している。言い換えると、このMEAにおいては、アノードの触媒層についてより一層高い(F/Pt)の値によって示されるように、境界部においては露出しているPt触媒がより一層少なくなる。
【0086】
実施例6
膜/電極集成体の作製およびその境界部の特徴づけ(比較例)
a)電解質膜の調製
実質的に実施例5に従って電解質膜が調製された。
【0087】
b)アノードとカソードの調製
E-TEKから購入され、そして実施例2で説明された60%PtRu/C-ELATおよび40%Pt/C-ELATの組成を有する二つの電極が用いられた。
【0088】
c)膜/電極集成体の作製
実施例4に記載したようにして膜と電極が組み付けられた。
d)境界部の特徴づけ
実施例4の特徴づけの手順が適用された。結果を表2と図3に示す。
【0089】
本発明に従う実施例4のMEAについて記録されたものと比較して、この比較例のMEAによって得られたF/Pt比の値は電解質膜からアノードの外表面に向かう方向で減少し、このことは触媒がフッ素イオノマーによって「覆われている」ことを証明している。
【0090】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明に従うPEMFCを概略的に示す。
【図2】図2aと図2bはそれぞれ、本発明のMEAと比較のMEAについて記録された分極と出力の曲線を示す。
【図3】図3は本発明に従うMEAと先行技術に従うMEAにおいて電解質膜からアノードの外表面に向かう方向でのF/Pt比の値を示す。
【図4】図4aと図4bは本発明に従うMEAのアノード触媒層のエネルギー分散X線(EDAX)スペクトルであり、それぞれ電解質膜から0μmと40μmの位置におけるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーをベースとしていて、そしてアノードとカソードの間に置かれた電解質膜を含む少なくとも一つの膜-電極集成体を有するプロトン交換膜燃料電池であって、アノードは触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有していて、前記触媒層は電解質膜からアノードの外表面に向かって増大するフッ素/触媒の比率を有する、前記プロトン交換膜燃料電池。
【請求項2】
直接メタノール燃料電池(DMFC)である、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項3】
電解質膜はプロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーからなる、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項4】
プロトン伝導性の官能基を含む側鎖は、酸素の橋かけを介してフッ素を含まないポリマーにグラフトされている、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項5】
プロトン伝導性の官能基を含む側鎖は10%〜250%の量でフッ素を含まないポリマーにグラフトされている、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項6】
プロトン伝導性の官能基を含む側鎖は30%〜100%の量でフッ素を含まないポリマーにグラフトされている、請求項5に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項7】
プロトン伝導性の官能基を含む側鎖は放射線グラフトされたものである、請求項5に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項8】
フッ素を含まないポリマーはポリオレフィンである、請求項5に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項9】
ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-プロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、ポリ二塩化ビニリデン、ポリクロロエチレンから選択される、請求項8に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項10】
ポリオレフィンはポリエチレンである、請求項9に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項11】
ポリエチレンは低密度ポリエチレン(LDPE)である、請求項10に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項12】
側鎖は、スチレン、クロロアルキルスチレン、α-メチルスチレン、α,β-ジメチルスチレン、α,β,β-トリメチルスチレン、オルト-メチルスチレン、p-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルキルスルホン酸、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジン、およびこれらの共重合体から選択される、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項13】
側鎖はスチレンとα-メチルスチレンから選択される、請求項12に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項14】
プロトン伝導性の官能基はスルホン酸基とリン酸基から選択される、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項15】
プロトン伝導性の官能基はスルホン酸基である、請求項14に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項16】
プロトン伝導性の官能基は10%〜100%のパーセント[Δg(%)]になっている、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項17】
プロトン伝導性の官能基は20%〜70%のパーセント[Δg(%)]になっている、請求項16に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項18】
アノードの触媒層の触媒は、場合により触媒促進された白金、金、およびタングステンの酸化物から選択される、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項19】
白金はルテニウムによって触媒促進されている、請求項18に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項20】
白金とルテニウムは合金を形成している、請求項19に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項21】
カソードは、触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有する、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項22】
触媒は、白金;金;遷移金属の大員環の誘導体;およびルテニウム-モリブデン-セレン酸化物などの混合の遷移金属の酸化物から選択される、請求項21に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項23】
触媒は白金である、請求項22に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項24】
アノードの触媒は導電性の炭素粒子の上に分散されている、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項25】
炭素の粒子は100m2/gよりも大きな粒子表面積を有する、請求項24に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項26】
触媒は炭素粒子の上に10wt%〜90wt%の量で分散されている、請求項24に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項27】
フッ素化イオノマーはペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテン-スルホン酸である、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項28】
フッ素化イオノマーの量は、触媒層の全構成成分の5wt%〜95wt%を占める、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項29】
触媒は10mg/cm2未満の量にある、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項30】
触媒は5mg/cm2未満の量にある、請求項29に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項31】
懸濁液の形の触媒とフッ素化イオノマーの均質混合物を支持体の上に堆積し、前記混合物を乾燥することによってアノードが調製され、そしてこのアノードが電解質膜とともに組立てられる、請求項1に記載のプロトン交換膜燃料電池。
【請求項32】
少なくとも一つのプロトン交換膜燃料電池から動力を供給される携帯用機器であって、そのプロトン交換膜燃料電池は、プロトン伝導性の官能基を含む側鎖でグラフト化されたフッ素を含まないポリマーをベースとしていて、そしてアノードとカソードの間に置かれた電解質膜を含む少なくとも一つの膜-電極集成体を有し、アノードは触媒とフッ素化イオノマーを含む触媒層を有していて、前記触媒層は電解質膜からアノードの外表面に向かって増大するフッ素/触媒の比率を有する、前記携帯用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−524781(P2008−524781A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545843(P2007−545843)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014445
【国際公開番号】WO2006/063611
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(503437727)ピレリ・アンド・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (35)
【Fターム(参考)】