説明

プロトン伝導性ポリマー膜

【課題】新規なポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜の提供。
【解決手段】ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜は優れた化学的および熱的性質を持つため、特に、高分子電解質膜(PEM)燃料電池用の膜−電極ユニットを製造するためのPEMとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜に関する。この膜は優れた化学的および熱的性質を持つため、様々な用途に用いられ、特に、高分子電解質膜(PEM)燃料電池用のPEMとして有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリベンズイミダゾール(登録商標CELAZOLE)等のポリアゾールは古くから知られている。ポリベンズイミダゾール(PBI)は、通常、3,3’4,4’−テトラアミノビフェニルをイソフタル酸もしくはジフェニルイソフタル酸またはこれらのエステルと溶融状態で反応させて製造される。得られたプリポリマーは反応器中で固化するが、これを次に機械的に粉砕する。粉砕したプリポリマーを、400度までの温度で固相重合させて目的とするポリベンズイミダゾールを得る。
【0003】
ポリマーフィルムとするためには、次いで、PBIをジメチルアセタミドなどの極性非プロトン性溶媒に溶解させ、これを従来法によりフィルム化する。
【0004】
PEM燃料電池に用いる、プロトン伝導性、即ち酸ドープしたポリアゾ−ル系ポリマー膜は既に公知である。濃リン酸もしくは硫酸でドーピングした塩基性のポリアゾ−ル系ポリマー膜は、高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)のプロトン伝導体およびセパレータとして作用する。
【0005】
ポリアゾ−ル系ポリマーは優れた性質を持つため、この高分子電解質膜は、これを膜−電極ユニット(MEE)としたとき、100℃以上、特に120℃以上の温度で連続的に作動する燃料電池として用いることができる。高温下で連続運転できるため、膜−電極ユニット(MEE)に用いる貴金属系触媒の活性が増大する。特に、炭化水素からの改質生成物を用いる場合、改質ガス中には大量の一酸化炭素が存在するため、通常、高コストなガス処理またはガス精製工程によりこれを除く必要がある。この場合、運転温度を高くすることができれば、より高い一酸化炭素不純物濃度にたいしても長時間耐えることができる。
【0006】
ポリアゾ−ル系ポリマーを用いた高分子電解質膜は、第1に、高コストなガス処理またはガス精製工程を少なくとも部分的には削減でき、第2に、膜−電極ユニットにおける触媒担持量を減少できる。これらのことは、大規模なPEM燃料電池システムとするためには不可欠な要件であって、さもないとPEM燃料電池システムのコストは著しく高くなってしまう。
【0007】
従来の酸ドープポリアゾ−ル系ポリマー膜は、好ましい性質を示すものであるが、PEM燃料電池、特に自動車部門や分散型発電または発熱(固定施設)に利用する場合などでは、依然として総合的な改良が望まれている。更に、従来のポリマー膜はジメチルアセトアミド(DMAc)の濃度が高く、公知の乾燥方法では完全に除くことができない。ドイツ特許出願第10109829.4号(特許文献1)には、DMAcの混入がないポリアゾ−ル系ポリマー膜が開示されている。このポリアゾ−ル系ポリマー膜は、改良された機械的性質を示すものであるが、その比伝導率は0.1S/cm(140℃における)を超えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許出願第10109829.4号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、第1に、ポリアゾ−ル系ポリマー膜の利点を維持するとともに、第2に、高められた比伝導率、特に100℃以上の温度で作動において高い比伝導率を示し、燃焼ガスの増湿を行わなくとも作動可能な、酸ドープしたポリマー膜を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、原料モノマーをポリリン酸に鹸濁もしくは溶解し、次いで薄膜とした後、ポリリン酸中で重合させることにより、ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜が得られることを見出した。この新規なポリアゾ−ル系ポリマー膜の場合には、前記ドイツ特許出願第10109829.4号に記載されるような特定の後処理や、ポリマー溶液の作成やその後のフィルムのドーピング等が不要である。更に、ドープポリマー膜は、著しく優れたプロトン伝導性を示す。
【0011】
本発明によれば、ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜であって、下記工程A〜D:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて支持体上に層を塗布する工程、
C. 工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する工程、
D. 工程Cで得た膜を、(自己支持性を有するまで)処理する工程、
からなる方法により得られるプロトン伝導性ポリマー膜が提供される。
【0012】
本発明で好ましく用いられる芳香族またはヘテロ芳香族テトラアミノ化合物としては、3,3’4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、3,3’4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、および3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタン、ならびにこれらの塩、特にモノ、ジ、トリおよびテトラ塩酸誘導体が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる芳香族カルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸ならびにこれらのエステル、酸無水物および酸クロリドである。ここで「芳香族カルボン酸」なる語はヘテロ芳香族カルボン酸をふくむものである。好ましい芳香族カルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドである。
【0014】
好ましい芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドとしては、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジ酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸、3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸が挙げられる。好ましい芳香族テトラカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドとしては、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるヘテロ芳香族カルボン酸は、ヘテロ芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸ならびにこれらのエステルおよび酸無水物である。本発明において、ヘテロ芳香族カルボン酸は、芳香環中に少なくとも1つの窒素、酸素、イオウまたはリン原子を持つものである。好ましいヘテロ芳香族カルボン酸としては、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドが挙げられる。
【0016】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含有量は、用いるジカルボン酸に基づき0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である。
【0017】
本発明で用いられる芳香族およびヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくは、ジアミノ安息香酸およびそのモノ塩酸塩およびジ塩酸塩である。
【0018】
工程Aにおいては、少なくとも2つの異なる芳香族カルボン酸の混合物を用いることが好ましい。特に、芳香族カルボン酸とヘテロ芳香族カルボン酸の混合物を用いることが好ましい。この場合、ヘテロ芳香族カルボン酸に対する芳香族カルボン酸の混合比は1:99〜99:1で、このましくは1:50〜50:1である。このような混合物としては、特に、N−ヘテロ芳香族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合物が挙げられる。このようなものの具体例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0019】
工程Aにおいてもちいるポリリン酸は、例えばリーデルデハーエン社から得られるような市販のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+23n+1(n>1)は、通常、酸滴定によるP換算の分析値が少なくとも83%のものである。モノマーの溶液の代わりに、分散液もしくは鹸濁液を用いることができる。工程Aで得られる混合物において、全モノマー合計量に対するポリリン酸の重量比は、1:10000〜10000:1、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0020】
工程Bは、フィルム形成法として従来から知られている公知の方法、例えばキャスティング、スプレー、ドクターブレード塗布法、により行われる。支持体としては、採用される条件下で不活性なあらゆる支持体が使用できる。粘度を調整するために、必要に応じて、リン酸(85%濃リン酸)を溶液中に加えることができる。これにより、粘度を所望の値に調節でき、膜の形成が容易となる。工程Bで得られる膜の厚みは、20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、特に50〜3000μmである。
【0021】
工程Cで形成されるポリアゾ−ル系ポリマーは、下記式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)(XIII)(XIV)(XV)(XVI)(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII)のアゾ−ル繰り返し単位からなる。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
【化19】

【0041】
【化20】

【0042】
【化21】

【0043】
【化22】

【0044】
上記式中、
Arは同一または異なっても良く各々4価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価または3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々4価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価または3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar10は同一または異なっても良く各々2価または3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar11は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Xは同一または異なっても良く各々酸素、イオウまたはアミノ基であり、このアミノ基は水素原子、および更なる置換基として、炭素数1〜20を持つ基、好ましくは分岐もしくは非分岐のアルキル基、アルコキシ基またはアリール基を持ち、
Rは同一または異なっても良く各々水素、アルキル基または芳香族基であり、
nおよびmは10以上の整数、好ましくは100以上の整数である。
【0045】
好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルヂメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアジアゾールベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドーリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アシリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレンから誘導される基が挙げられる。これらの基は置換基を持つことができる。
【0046】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11はいかなる置換パターンをとることができる。例えばフェニレンの場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11はオルト−、メタ−またはパラフェニレンであることができる。特に好ましい置換基としては、ベンゼンおよびビフェニルから誘導される基であり、これらのものは更に置換基を持つことができる。好ましいアルキル基は、炭素数1〜4の短鎖アルキル基であり、具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルおよびt−ブチル基が挙げられる。好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。これらのアルキル基および芳香族基は、置換基を持つことができる。
【0047】
好ましい置換基としては、フッ素等のハロゲン原子、アミノ基、水酸基、およびメチル基やエチル基等の短鎖アルキル基が挙げられる。
【0048】
式(I)で表される繰り返し単位からなり、式中Xが同一のポリアゾールが特に好ましい。ポリアゾールは、原理的には、例えばXが異なるような異なる繰り返し単位からなることができるが、繰り返し単位中、同一のXからのみなるポリアゾールが好ましい。
【0049】
好ましいポリアゾールポリマーとしては、ポリイミダゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンズオキサゾール類、ポリオキサジアゾ−ル類、ポリキノキサリン類、ポリチアジアゾール類、ポリ(ピリジン)類、ポリ(ピリミジン)類、およびポリテトラアザピレン類が挙げられる。
【0050】
本発明の更なる態様においては、繰り返しアゾール単位からなるポリマーは、互いに異なる式(I)〜(XXII)の少なくとも2種からなる共重合体またはブレンドである。このようなポリマーは、ブロック(ジブロック、トリブロック)共重合体、ランダム共重合体、周期共重合体および/または交互重合体であることができる。本発明の特に好ましい態様においては、繰り返しアゾール単位からなるポリマーは、式(I)および/または式(II)の単位のみ含むポリアゾールである。繰り返しアゾール単位の数は好ましくは10以上であり、特に好ましいポリマーは100以上の繰り返しアゾール単位からなる。
【0051】
本発明においては、ベンズイミダゾール繰り返し単位からなるポリマーが好ましい。特に有利に用いられるベンズイミダゾール繰り返し単位からなるポリマーの例としては下記の式を有するものが挙げられる。
【0052】
【化23】

【0053】
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
【化27】

【0057】
【化28】

【0058】
【化29】

【0059】
【化30】

【0060】
【化31】

【0061】
【化32】

【0062】
【化33】

【0063】
【化34】

【0064】
【化35】

【0065】
【化36】

【0066】
【化37】

【0067】
【化38】

【0068】
【化39】

【0069】
【化40】

【0070】
【化41】

【0071】
【化42】

【0072】
【化43】

【0073】
【化44】

【0074】
【化45】

【0075】
【化46】

【0076】
上記式中、nおよびmは10以上の整数、好ましくは100以上の整数である。
【0077】
上記の方法で得られたポリアゾール、特にポリベンズイミダゾールは高い分子量を有する。固有粘度で表すと、少なくとも1.4dl/gであり、市販のポリベンズイミダゾールの固有粘度(1.1dl/g)よりも著しく高い。
【0078】
工程Aで得られた混合物がトリカルボン酸またはテトラカルボン酸を含む場合、ポリマーの分岐または架橋が起き、それにより機械的性質が改良される。
【0079】
工程Cで得られたポリマー層は、水分の存在下、該層が燃料電池に用いるに十分な強度を持つために充分な時間、高められた温度で処理される。この処理は、膜が自己支持性を持つようになるまで行うことができ、その結果、膜は支持体から破損することなく分離できる。
【0080】
本発明の方法の1態様においては、工程Aで得られた混合物を350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で加熱することにより、オリゴマーおよび/またはポリマーを形成することができる。温度および時間を適宜選択することにより、その後の工程Cにおける熱処理を部分的または全面的に省くことができる。この態様も、また、本発明の主題の1つである。
【0081】
更に、芳香族カルボン酸(またはヘテロ芳香族カルボン酸)として、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4,6−ジヒドロキシイソフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸を用いる場合、工程Cまたは工程A(この工程でオリゴマーおよび/またはポリマーを形成することを望む場合)で採用する温度は、300℃以下、好ましくは100〜250℃の範囲とするのが良い。
【0082】
工程Dにおける膜の処理は、0℃から150℃の温度、好ましくは10℃から120℃の温度、特に室温(20℃)から90℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気および/または85%以下の濃度のリン酸含有水の存在下で行う。この処理は好ましくは常圧で行うが、加圧下で行うこともできる。この処理を充分な水分の存在下で行うことが重要である。それにより、存在するポリリン酸が、部分加水分解による膜の強化に寄与でき、低分子量化したポリリン酸またはリン酸が形成される。
【0083】
工程Dにおけるポリリン酸の部分加水分解により、膜は強化されるとともに膜厚が減少して、15から3000μm、好ましくは20から2000μm、特に20から1500μmの厚さの、自己支持性を持つ膜が形成される。工程Bで得られたポリリン酸層に存在する分子間および分子内構造(相互浸透性ネットワーク)により、工程Cにおいて、規則正しい膜が形成され、それに起因して形成された膜に特別な性質が付与される。
【0084】
工程Dにおける処理温度の上限は通常150℃である。ただし、過熱スチームの場合のように、水分が極めて短時間存在する場合は、スチーム温度を150℃よりも高くすることができる。処理の時間が処理温度の上限を決定する重要な因子となる。
【0085】
部分加水分解(工程D)は、また、温度および湿度制御室内で行うことができ、これにより加水分解を所定の水分量の存在下で所望の条件下行うことができる。この場合の水分量は、膜が接している環境(例えば、空気、窒素、炭酸ガス、その他の適当なガス、スチーム等)の温度および飽和度を制御することにより、所望の状態に設定できる。処理時間は、選択した上記のパラメータに依存する。また、処理時間は膜の厚みによっても異なる。
【0086】
処理時間は、通常、過熱スチームによる場合などでは数秒から数分の範囲であり、空気中室温、低相対湿度下などでは最大数日である。好ましい処理時間は、10秒から300時間、特に1分から200時間である。部分加水分解を室温(20℃)で、相対湿度40〜80%の大気中で行う場合、処理時間は1時間ないし200時間である。
【0087】
工程Dで得られる膜は自己支持性とすることができる。即ち、膜は支持体から破損することなく分離でき、必要に応じ、直ちに次の工程に用いることができる。
【0088】
本発明におけるリン酸の濃度、即ちポリマー膜の伝導性は、加水分解の程度、即ち温度、時間および水分濃度により制御可能である。本発明においては、リン酸の濃度はポリマーの繰り返し単位1モルあたりの酸のモル数で規定されている。本発明においては、この濃度(式(III)の繰り返し単位1モルあたりのリン酸のモル数)は10〜50が好ましく、特に12〜40が好ましい。このような高いドーピング度(濃度)は、市販のオルトリン酸によりポリアゾールをドーピングしても達成は難しいか、または不可能である。
【0089】
上述の工程Dに引き続き、膜を大気の酸素存在下で加熱することにより、表面を架橋させることができる。この膜表面の硬化により、膜の特性を更に改良することができる。架橋は、また、IRまたはNIR(IRは赤外、即ち波長700nm以上の光;NIRは近赤外、即ち波長約700〜2000の光、または約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギー)の作用で起こさせることができる。更にベータ線照射により行うことができる。この場合の照射量は5〜200kGyである。
【0090】
本発明のポリマー膜は、従来公知のドープしたポリマー膜と比べ優れた物性を有する。特に、従来公知のドープしたポリマー膜と比べ優れた性能を持つ。これは、改良されたプロトン伝導性によるものである。即ち、プロトン伝導性は、120℃で、少なくとも0.1S/cm、好ましくは少なくとも0.11S/cm、特に好ましくは少なくとも0.12S/cmである。
【0091】
使用上の特性を更に改良するために、フィラー、特にプロトン伝導性フィラーおよび追加的な酸を膜に添加することができる。この添加は工程Aの間または重合の後で行うことができる。
【0092】
プロトン伝導性フィラーの具体例を以下に示すが、これに限るものではない。
硫酸塩:CsHSO、Fe(SO、(NHH(SO、LiHSO、NaHSO、KHSO、RbSO、LiNSO、NHHSO等;
リン酸塩:Zr(PO、Zr(HPO、HZr(PO、UOPO.3HO、HUOPO、Ce(HPO、KHPO、NaHPO、LiHPO、NHPO、CsHPO、CaHPO、MgHPO、HSbP、HSb14、HSb20等;
ポリ酸:HPW1240.nHO(n=21〜29)、HSiW1240.nHO(n=21〜29)、HWO、HSbWO、HPMo1240、HSb11、HTaWO、HNbO、HTiNbO、HSbTeO、HTi、NSbO、HMoO等;
セレン化物および砒素化物:(NHH(SeO、UOAsO、(NHH(SeO、KHAsO、CsH(SeO、RbH(SeO等;
酸化物:Al、Sb、ThO、SnO、ZrO、MoO等;
ケイ酸塩:ゼオライト、ゼオライト(NH)、シートケイ酸塩、ネットワークケイ酸塩、H−ナトロライト、H−モルデンナイト、NH−アナルシン、NH−ソーダライト、NH−ガレート、H−モンモリロナイト等;
酸:HClO、SbF等;
フィラー:SiC等の炭化物、Si、ガラス繊維などの繊維、ガラス粉、および/または好ましくはポリアゾール系のポリマー繊維等。
【0093】
本発明の膜は、また、過フッ化スルホン酸添加剤を0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%含むことができる。これらの添加剤を用いることにより、陰極近辺での性能が改良され、酸素溶解度が増加し、および白金へのリン酸およびリン酸塩の吸着が減少する。”Electrolyte additives for phosphoric acid fuel cells”,Gang,Xiao;Hjuler,H.A.;Olsen,C;Berg,R.W.;Bjerrum,N.J.,Chem.Dep.A,Tech.Univ.Denmark,Lyngby,Den.J.Electrochem.Soc.(1993),140(4),896−902および”perfluorosulfonimide as an additive in phosphoric acid fuel cell”,Razaq,A.;Yeager,E.;DesMarteau,Darryl D.;Singh、S.、Case Cent. Electrochem. Soc. (1989),136(2)385−90参照。
【0094】
過フッ化スルホン酸添加剤の具体例を以下に示すが、これに限るものではない。
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロへキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロへキサンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロへキサンスルホン酸リチウム、パーフルオロへキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロへキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロへキサンスルホン酸トリエチルアンモニウム、パーフルオロへキサンスルホンイミド、およびナフィオン。
【0095】
本発明の膜には、更に、特開2001−118591号公報に記載されているような、作動中の酸素の還元により生成する過酸化物ラジカルを取り除く(1次的酸化防止剤)か、または破壊する(2次的酸化防止剤)添加剤を加えることができ、これにより膜もしくは膜電極ユニットの寿命および安定性を改善することができる。このような添加剤の分子構造および作用機能に関しては、Gugumus in Plastics Additives,Hanser Verlag,1990;N.S.Allen,M.Edge Fundamentals of Polymer Degradation and Stability、Elsevier、1992;またはH.Zweifel, Stabilization of Polymeric materials, Springer,1998に記載されている。
【0096】
このような添加剤の具体例を以下に示すが、これに限るものではない。
ビス(トリフルオロメチル)ニトロオキシド、2,2−ジフェニル−1−ピクリニルヒドラジル、フェノール類、アルキルフェノール類、イルガノックス等の立体障害アルキルフェノール類、芳香族アミン類、キマスソルブ等の立体障害アミン類、立体障害ヒドロキシアミン類、立体障害アルキルアミン類、立体障害ヒドロキシアミン類、立体障害ヒドロキシアミンエーテル類、イルガフォス等の亜リン酸塩、ニトロベンゼン、メチル−2−ニトロソプロパン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒドt−ブチルニトロン、システアミン、酸化鉛、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト。
【0097】
本発明のドープポリマー膜の可能な適用例としては、特に、燃料電池、電解、コンデンサー、バッテリー系などにおける使用が挙げられる。本発明のドープポリマー膜は、その物性プロファイルに起因して、燃料電池に好ましく用いられる。
【0098】
本発明は、また、少なくとも1つの本発明のポリマー膜を備える膜−電極ユニットに関するものである。膜−電極ユニットの詳細については専門文献、特にアメリカ合衆国特許第4191618号、第4212714号および第4333805号公報に記載されている。上記の特許文献、アメリカ合衆国特許第4191618号、第4212714号および第4333805号公報、における膜−電極ユニットの構造および製造に関する記載をここに引用することにより、それらは本明細書に導入されているものとする。
【0099】
本発明の1態様においては、膜は、支持体上ではなく、電極上に直接形成することができる。これにより、膜を自己支持性とする必要がなくなり、工程Dが簡素化できる。このような膜も本発明の主題の1つである。
【0100】
即ち、本発明は、ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー被覆を持つ電極であって、下記工程A〜D:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて電極上に層を塗布する工程、
C. 工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で350℃以下、好ましくは280℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する工程、
D. 工程Cで得た膜を処理する工程、
からなる方法により得られる電極を更に提供するものである。
【0101】
工程Aにおいては、重合またはオリゴマーの形成を行うことができ、溶液はブレードコーティングにより電極に塗布することができる。工程Cはこの場合部分的にまたは全面的に省略できる。
【0102】
この態様には、前記した種々の変形例および好ましい態様が適用できるが、その説明はここでは繰り返しを省略する。
【0103】
工程Dで得られる被覆の厚みは、2から3000μm、好ましくは3から2000μm、特に5から1500μmである。かくして得られた被覆電極は膜−電極ユニットに導入できるが、この場合膜−電極ユニットは、必要に応じ、少なくとも1つの本発明のポリマー膜を持つことができる。
【0104】
一般的測定法
<IECの測定法>
膜の伝導率は、イオン交換容量(IEC)で表される酸基の高含有量に依存する。イオン交換容量を測定するために、直径3cmに打ち抜いた試料を、100mlの水で満たしたビーカーに浸漬する。放出された酸を0.1M苛性ソーダで滴定する。次いで、試料を取り出し、過剰の水を拭き取り、160℃で4時間乾燥する。乾燥重量mを0.1mgの精度で測定する。イオン交換容量は下記式により計算される:
IEC = V × 300/m
(式中、V は第1中和終了点までに要した0.1M苛性ソーダの量(ml)、mは乾燥重量(mg)である)。
<比伝導率の測定方法>
比伝導率は、白金電極(直径0.25mmのワイア)を用いた定電圧モードの4極配置型インピーダンススペクトルスコープにより測定する。電流補足電極間距離は2cmである。得られたスペクトルを、オーム抵抗と蓄電器の並列配置からなる単一モデルを用いて評価する。リン酸でドープした膜試料の断面を、膜を取り付ける直前に測定する。温度依存性を測定するために、測定セルを、オーブン中で所定の温度に曝し、試料に近接して配置したPt−100抵抗温度計により温度を制御する。所定温度に到達したら、試料をこの温度に10分間保持した後、測定を行う。
【実施例】
【0105】
実施例1
<ポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール(PBI)膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコ中の32.338gのイソフタル酸(0.195モル)と41.687gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(0.195モル)との混合物に、525.95gのPPAを加えた。この混合物を先ず120℃で2時間、次いで150℃で3時間、更に180℃で2時間、続いて220℃で16時間、撹拌しながら加熱した。次にこの溶液に85%濃度のリン酸を200g加えた。得られた溶液を220℃で2時間撹拌し、最後に温度を1時間で240℃に上昇させた。得られた高粘度溶液を、この温度で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のこげ茶色のポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンジイミダゾール(PBI)膜が得られた。この膜を室温で1時間放置して、自己支持性の膜を得た。
【0106】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlPBI溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=1.8dl/gの値を得た。
実施例2
<ポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール(PBI)膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコ中の32.338gのイソフタル酸(0.195モル)と41.687gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(0.195モル)との混合物に、525.95gのPPAを加えた。この混合物を先ず120℃で2時間、次いで150℃で3時間、更に180℃で2時間、続いて220℃で16時間、撹拌しながら加熱した。次にこの溶液に85%濃度のリン酸を200g加えた。得られた溶液を220℃で2時間撹拌し、最後に温度を6時間で240℃に上昇させた。得られた高粘度溶液を、この温度で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のこげ茶色のポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンジイミダゾール(PBI)膜が得られた。この膜を室温で1時間放置して、自己支持性の膜を得た。
【0107】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlPBI溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.2dl/gの値を得た。
【0108】
実施例3
<ポリ(6,6’−ビベンジイミダゾール−2,2’−ジイル)2,5−ピリジン膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコに、3.34g(20ミリモル)の2,5−ピリジンジカルボン酸と、4.26gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルおよび60gのポリリン酸を入れた。反応溶液を180℃で20時間撹拌した。次いで、温度を240℃に上げ、混合物を4時間撹拌した。反応溶液を240℃で10mlのリン酸で希釈し、1時間撹拌した。得られた高粘度溶液を、この温度で、予熱したガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のオレンジ色の2,5−ピリジン−PBI膜が得られた。この膜を室温で1時間放置して、自己支持性の膜を得た。
【0109】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.9dl/gの値を得た。
実施例4
<ポリ(2,2’−(1H−ピラゾール)5,5’−ビベンジイミダゾール膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコに、2.104g(9.82ミリモル)の3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1.7094g(9.82ミリモル)の1H−ピラゾール−3,5−ジカルボン酸と、41.4gのポリリン酸を入れた。反応溶液を100℃で1時間、150℃で1時間、180℃で6時間、続いて220℃で8時間撹拌した。次いで、温度を200℃に下げた。得られた高粘度溶液を、この温度で、予熱したガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のオレンジ色の2,5−ピリジン−PBI膜が得られた。この膜を室温で3時間放置した。
【0110】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=1.9dl/gの値を得た。
実施例5
<ポリ(2,2’−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール−コ−ポリ(6,6’−ビベンジイミダゾール−2,2’−ジイル)2,5−ピリジン膜>
500mlの3つ口フラスコに、5.283gの2,5−ピリジンジカルボン酸(125ミリモル)と、15.575gのテレフタル酸(375ミリモル)、26.785gのTAB(0.5モル)および468gのPPAを入れた。反応鹸濁液を150℃で2時間、190℃で4時間、続いて220℃で16時間加熱した。反応溶液を220℃で600gの85%濃度リン酸で希釈し、240℃で6時間撹拌した。得られた高粘度溶液を、この温度で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のこげ茶色の2,5−ピリジン−PBI−コ−パラPBI膜が得られた。この膜を室温で1時間放置した。
【0111】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.6dl/gの値を得た。
実施例6
<AB−コ−AABB−PBI膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコ中の32.338gのイソフタル酸(0.195モル)と41.687gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(0.195モル)と29.669gのジアミノ安息香酸(0.195モル)との混合物に、802gのPPAを加えた。この混合物を先ず120℃で2時間、次いで150℃で3時間、更に180℃で2時間、続いて220℃で16時間、撹拌しながら加熱した。次にこの溶液に85%濃度のリン酸を200g加えた。得られた溶液を220℃で4時間撹拌し、最後に温度を6時間で240℃に上昇させた。得られた高粘度溶液を、この温度で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のこげ茶色のポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンジイミダゾール−コ−ポリベンジイミダゾール膜が得られた。この膜を室温で5時間放置して、自己支持性の膜を得た。
【0112】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlPBI溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.1dl/gの値を得た。
実施例7
<ポリ(2,2’−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール−コ−ポリ−(2,2’−(1H−ピラゾール)5,5’−ビベンジイミダゾール膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコに、3.037g(0.0142モル)の3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2.119g(0.0128モル)のイソフタル酸、0.2467g(1.42ミリモル)の1H−ピラゾール−3,5−ジカルボン酸、および43.8gのポリリン酸を入れた。反応溶液を100℃で1時間、150℃で1時間、180℃で6時間、続いて220℃で8時間撹拌した。次いで、温度を200℃に下げた。得られた高粘度溶液を、この温度で、予熱したガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のオレンジ色の2,5−ピリジン−PBI膜が得られた。この膜を室温で3日放置して自己支持性膜(254μm)を得た。
【0113】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=1.8dl/gの値を得た。
実施例8
<BPI−Zr(HPO膜(反応時)>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコに、3.208g(0.015モル)の3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2.487g(0.015モル)のイソフタル酸、0.462gのリン酸水素ジルコニウム、および64.8gのポリリン酸を入れた。反応溶液を100℃で1時間、150℃で1時間、180℃で6時間、続いて220℃で8時間撹拌した。次いで、温度を200℃に下げた。得られた高粘度溶液を、この温度で、予熱したガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。透明のオレンジ色の2,5−ピリジン−PBI膜が得られた。この膜を室温で3日放置して自己支持性膜を得た。
実施例9
<SiC/PBI(10/10)膜(反応時)>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ100mlフラスコ中の2.6948gのイソフタル酸、5gのSiC(約400メッシュ)および3.474gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルとの混合物に、93.86gのポリリン酸(83.4±0.5%のP)を加えた。この混合物を先ず120℃に加熱し2時間撹拌した。次いで温度を150℃に上昇させて3時間、更に180℃で2時間、続いて220℃で18時間加熱した。次に85%濃度のリン酸11.09gを得られたPPA中のPBI溶液に30分かけて加え、溶液を220℃で0.5時間撹拌した。得られたSiC−PBI(50/50)溶液(11%濃度のPPA中)を、220℃で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した(381μm)。この膜を室温まで冷却し、室温で1日放置した。
<SiC/PBI膜作成用の5%濃度PBIストック溶液(113.6%PPA中)>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ1.5リットルフラスコ中の26.948gのイソフタル酸および34.74gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルとの混合物に、938.6gのポリリン酸(83.4±0.5%のP)を加えた。この混合物を先ず120℃に加熱し、120℃で2時間、次いで150℃で3時間撹拌した。更に180℃で2時間、続いて220℃で18時間加熱した。得られた5%濃度PBI溶液(PPA中)を室温まで冷却し、以下に記載のSiC/PBI膜の作成に用いた。この溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=1.56dl/gの値を得た。
実施例10
<SiC/PBI(10/10)膜(重合後にSiCを添加)>
5gのSiC(約400メッシュ)を100gの5%濃度PBIストック溶液(113.6%PPA中)に加えた。この混合物を220℃で3時間加熱した。次に85%濃度のリン酸11gを加え、混合物をさらに0.5時間撹拌した。得られたSiC−PBI(10/10)混合物(110%濃度のPPA中)を、220℃で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。この膜を室温まで冷却し、室温で1日放置した。
実施例11
<α−Si/PBI(30/10)膜(重合後にα−Siを添加)>
13.75gのα−Si(約325メッシュ)を100gの5%濃度PBIストック溶液(113.6%PPA中)に加えた。この混合物を220℃で3時間加熱した。得られたα−Si−PBI(30/10)混合物(110%濃度のPPA中)を、220℃で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。この膜を室温まで冷却し、室温で1日放置した。
実施例12
<Zr(HPO/PBI(3/97)膜(重合後にZr(HPOを添加)>
25gのZr(HPOを100gの5%濃度PBIストック溶液(113.6%PPA中)に加えた。この混合物を220℃で3時間加熱した。得られたZr(HPO−PBI(3/97)混合物(110%濃度のPPA中)を、220℃で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。この膜を室温まで冷却し、室温で1日放置した。
実施例13
<ポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール(PBI)膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコ中の64.676gのイソフタル酸(0.39モル)と83.374gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(0.39モル)との混合物に、525.95gのPPAを加えた。この混合物を先ず120℃で2時間、次いで150℃で3時間撹拌しながら加熱した。次にこの混合物に85%濃度のリン酸を200g加えた。得られた混合物を、この温度で、ガラスプレート上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布した。得られたガラスプレートを、オーブン中、窒素雰囲気下で、先ず180℃で4時間、次いで220℃で18時間、更に240℃で加熱した。これを室温まで冷却し、こげ茶色のポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンジイミダゾール(PBI)膜を得た。この膜を室温で16時間放置して、自己支持性の膜を得た。
実施例14
<ポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール(PBI)膜>
メカニカル撹拌機と窒素導入および導出口を持つ3つ口フラスコ中の97.014gのイソフタル酸(0.585モル)と135.061gの3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(0.585モル)との混合物に、525.95gのPPAを加え、室温で撹拌した。得られた混合物を、この室温で、ガラスプレート上に、ドクターブレードにより塗布した。得られたガラスプレートを、オーブン中、窒素雰囲気下で、先ず120℃で1時間、次いで150℃で3時間、更に180℃で4時間、次いで220℃で18時間、最後に240℃で加熱した。これを室温まで冷却し、こげ茶色のポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンジイミダゾール(PBI)膜を得た。この膜を室温で20時間放置して、自己支持性の膜を得た。
実施例15
<ポリ(2,2’−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール−コ−ポリ(6,6’−ビベンジイミダゾール−2,2’−ジイル)2,5−ピリジン膜>
500mlの3つ口フラスコに、5.283gの2,5−ピリジンジカルボン酸(125ミリモル)と、15.575gのテレフタル酸(375ミリモル)、26.785gのTAB(0.5モル)および468gのPPAを入れた。反応鹸濁液を120℃で2時間、次に150℃で4時間、続いて190℃で6時間、更に220℃で20時間加熱した。反応溶液を220℃で600gの85%濃度リン酸で希釈し、240℃で6時間撹拌した。得られた高粘度溶液を、この温度で、水で湿らせた濾紙上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布し、膜表面に水をスプレーガンを用いてスプレーした。透明のこげ茶色の2,5−ピリジン−PBI−コ−パラPBI膜が得られた。この膜を室温で2時間放置した。
【0114】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.8dl/gの値を得た。
実施例16
<ポリ(2,2’−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール−コ−ポリ(6,6’−ビベンジイミダゾール−2,2’−ジイル)2,5−ピリジン膜>
500mlの3つ口フラスコに、5.283gの2,5−ピリジンジカルボン酸(125ミリモル)と、15.575gのテレフタル酸(375ミリモル)、26.785gのTAB(0.5モル)および468gのPPAを入れた。反応鹸濁液を120℃で3時間、次に150℃で3時間、続いて190℃で4時間、更に220℃で15時間加熱した。反応溶液を220℃で600gの85%濃度リン酸で希釈し、240℃で4時間撹拌した。得られた高粘度溶液を、この温度で、水を含浸したガラス繊維不織布上に、予熱したドクターブレード塗布装置により塗布し、膜表面に水をスプレーガンを用いてスプレーした。透明のこげ茶色の2,5−ピリジン−PBI−コ−パラPBI膜が得られた。この膜を室温で5時間放置した。
【0115】
前記溶液の少量を、水で沈殿させた。沈殿した樹脂をろ過し、3回水洗し、水酸化アンモニウムで中和し、水洗後、0.001バール圧下、100℃で24時間乾燥させた。96%濃度の硫酸100ml中の0.2g/dlポリマー溶液の固有粘度ηintを測定したところ、30℃で、ηint=2.4dl/gの値を得た。
下記表にIECおよび導電性測定結果を示す。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜であって、下記工程A〜D:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて支持体上に層を塗布する工程、
C. 工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で350℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する工程、
D. 工程Cで得た膜を、0℃から150℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気および/または85%以下の濃度のリン酸含有水の存在下で、自己支持性を有するまで処理する工程、
からなる方法により得られるプロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項2】
工程Cで、工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で280℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜であって、下記工程A、B及びD:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合し、350℃以下の温度で加熱して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて支持体上に層を塗布する工程、
D. 工程Bで得た膜を、0℃から150℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気および/または85%以下の濃度のリン酸含有水の存在下で、自己支持性を有するまで処理する工程、
からなる方法により得られるプロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項4】
工程Aが、ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合し、350℃以下の温度で加熱して、溶液または分散液を作成する工程である、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
用いる芳香族テトラアミノ化合物が、3,3’4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、3,3’4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルメタンおよび3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタンである、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
用いる芳香族カルボン酸が、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジエチルアミノイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシ桂皮酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドである、請求項1に記載の膜。
【請求項7】
用いる芳香族カルボン酸が、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドである、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
用いる芳香族カルボン酸が、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジ酢酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸、3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸および/または2,4,6−ピリジントリカルボン酸である、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
用いる芳香族カルボン酸が、テトラカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドである、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
用いる芳香族カルボン酸が、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸である、請求項9に記載の膜。
【請求項11】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含有量が、用いるジカルボン酸に基づき0〜30モル%である、請求項7に記載の膜。
【請求項12】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含有量が、用いるジカルボン酸に基づき0.1〜20モル%である、請求項11に記載の膜。
【請求項13】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含有量が、用いるジカルボン酸に基づき0.5〜10モル%である、請求項12に記載の膜。
【請求項14】
用いるヘテロ芳香族カルボン酸が、芳香環中に少なくとも1つの窒素、酸素、イオウまたはリン原子を持つ、ヘテロ芳香族ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸である、請求項1に記載の膜。
【請求項15】
用いるヘテロ芳香族カルボン酸が、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸、これらのC1〜C20アルキルエステルもしくはC5〜C12アリールエステル、または酸無水物または酸クロリドである、請求項14に記載の膜。
【請求項16】
工程Aで、酸滴定によるP換算の分析値が少なくとも83%のポリリン酸を用いる、請求項1に記載の膜。
【請求項17】
工程Aで、溶液または分散液もしくは鹸濁液を作成する、請求項1に記載の膜。
【請求項18】
工程Cで形成されるポリアゾ−ルポリマーが、下記式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XVI)(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)のアゾ−ル繰り返し単位からなる、請求項1に記載の膜
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

式中、
Arは同一または異なっても良く各々4価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Arは同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar2は同一または異なっても良く各々3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar3は同一または異なっても良く各々3価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar4は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar5は同一または異なっても良く各々4価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar6は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar7は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar8は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar9は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar10は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Ar11は同一または異なっても良く各々2価の、1つまたは複数の環を持つ芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
Xは同一または異なっても良く各々酸素、イオウまたはアミノ基であり、このアミノ基は水素原子、および更なる置換基として、炭素数1〜20の分岐もしくは非分岐のアルキル基、アルコキシ基またはアリール基を持ち、
Rは同一または異なっても良く各々水素、アルキル基または芳香族基であり、
nは10以上の整数である;
【化15】

式中
Rは同一または異っても良く各々アルキル基または芳香族基であり、
nは10以上の整数である。
【請求項19】
nが、100以上の整数である、請求項18に記載の膜。
【請求項20】
工程Cで、ポリベンズイミダゾール、ポリ(ピリジン)類、ポリ(ピリミジン)類、ポリイミダゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンズオキサゾール類、ポリオキサジアゾ−ル類、ポリキノキサリン類およびポリテトラアザピレン類の中から選ばれたポリマーが形成される、請求項1に記載の膜。
【請求項21】
工程Cで形成されるポリマーが、下記式で表される少なくとも1つのベンズイミダゾール繰り返し単位からなる、請求項1に記載の膜
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

式中、nおよびmは10以上の整数である。
【請求項22】
nおよびmが、100以上の整数である、請求項21に記載の膜。
【請求項23】
工程Aの後、かつ、工程Bの前に、リン酸を加えることにより粘度を調整する、請求項1に記載の膜。
【請求項24】
工程Cで得られた膜を、水分の存在下、膜が自己支持性を持ち、かつ、該支持体から損傷なく分離し得るまでの時間と温度で処理する、請求項1に記載の膜。
【請求項25】
工程Dにおける膜の処理を0℃から150℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気の存在下で行う、請求項1に記載の膜。
【請求項26】
工程Dにおける膜の処理を10℃から120℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気の存在下で行う、請求項25に記載の膜。
【請求項27】
工程Dにおける膜の処理を室温(20℃)から90℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気の存在下で行う、請求項26に記載の膜。
【請求項28】
工程Dにおける膜の処理を10秒から300時間にわたって行う、請求項1に記載の膜。
【請求項29】
工程Dにおける膜の処理を1分から200時間にわたって行う、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
ポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー膜であって、下記工程A〜D:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて支持体上に層を塗布する工程、
C. 工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で350℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する工程、
D. 工程Cで得た膜を、0℃から150℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気および/または85%以下の濃度のリン酸含有水の存在下で処理する工程、
からなる方法により得られるプロトン伝導性ポリマー膜であり、
工程Bで支持体として電極を選ぶとともに、工程Dの処理を、形成した膜が自己支持性を持たないように行う、プロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項31】
工程Bで、10から4000μmの厚さを持つ層を形成する、請求項1に記載の膜。
【請求項32】
工程Bで、20から3500μmの厚さを持つ層を形成する、請求項31に記載の膜。
【請求項33】
工程Bで、50から3000μmの厚さを持つ層を形成する、請求項32に記載の膜。
【請求項34】
工程Dで形成された膜が、15から3000μmの厚さを持つ、請求項1に記載の膜。
【請求項35】
工程Dで形成された膜が、20から2000μmの厚さを持つ、請求項34に記載の膜。
【請求項36】
工程Dで形成された膜が、20から1500μmの厚さを持つ、請求項35に記載の膜。
【請求項37】
下記工程A〜D:
A. ポリリン酸中で、1つまたは複数の芳香族テトラアミノ化合物を、カルボン酸モノマー1分子あたり少なくとも2つの酸基を持つ、1つまたは複数の芳香族カルボン酸またはそのエステルと混合するか、または1つまたは複数の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合して、溶液または分散液を作成する工程、
B. 工程Aで得た混合物を用いて電極上に層を塗布する工程、
C. 工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で350℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する工程、
D. 工程Cで得た膜を、0℃から150℃の温度で、水分もしくは水および/または水の蒸気および/または85%以下の濃度のリン酸含有水の存在下で処理する工程、
からなる方法により得られるポリアゾ−ル系プロトン伝導性ポリマー被覆を持つ電極。
【請求項38】
工程Cで、工程Bで得た平坦構造層を、不活性ガス中で280℃以下の温度で加熱してポリアゾールポリマーを形成する、請求項37に記載の電極。
【請求項39】
該被覆が、2から3000μmの厚さを持つ、請求項37に記載の電極。
【請求項40】
該被覆が、3から2000μmの厚さを持つ、請求項39に記載の電極。
【請求項41】
該被覆が、5から1500μmの厚さを持つ、請求項40に記載の電極。
【請求項42】
少なくとも1つの電極と、請求項1〜36の1つまたはそれ以上に記載の少なくとも1つの膜からなる膜−電極ユニット。
【請求項43】
少なくとも1つの請求項37から41の1つに記載の電極と、請求項1〜36の1つまたはそれ以上に記載の少なくとも1つの膜からなる膜−電極ユニット。
【請求項44】
請求項42または43に記載の膜−電極ユニットを1つまたはそれ以上有する燃料電池。

【公開番号】特開2011−6690(P2011−6690A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177244(P2010−177244)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2002−585516(P2002−585516)の分割
【原出願日】平成14年4月9日(2002.4.9)
【出願人】(505118475)ベーアーエスエフ フューエル セル ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】