説明

プロトン伝導性有機−無機ハイブリッド膜とその製造方法

【課題】プロトン伝導性電解質膜を固体高分子型燃料電池の電解質として実用するためには、電解質膜が高い成形性を有しながらも化学安定性、機械的特性および耐熱性に優れたプロトン伝導性高分子膜であることが必要である。
【解決手段】プロトン伝導性を有する高分子中に、表面を有機化した粘土をナノスケールで分散させることにより、上記課題を解決した。より詳細には、未修飾の粘土を用いると、均一なハイブリッドが得られないが、粘土表面を修飾剤により有機化することで、粘土をマトリックス高分子中に均一に分散させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導性を有する有機−無機ハイブリッド膜とその製造法に関する。特にプロトン伝導性を側鎖に有する合成高分子と表面を有機化した粘土とのハイブリッド膜、及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
継続可能な社会システムを構築する上で、エネルギー問題は重要な課題である。現在主流である化石燃料では将来的にその枯渇が指摘されているだけでなく、二酸化炭素の排出など環境負荷が大きいことが世界的な問題となっている。様々な代替エネルギーが提案されているが、中でも水素をベースとしたエネルギー供給システムは環境負荷が非常に小さく、注目を集めている。燃料電池は水素と酸素を反応させて電気を発生させる発電システムであり、排出する物質としては水しか生成しないという優れた性質を有しているので、地球温暖化やオゾン層破壊といった環境問題に対処する技術として注目されている。
【0003】
燃料電池には使用する電解質の種類により、固体高分子型燃料電池(あるいは高分子電解質型燃料電池)、りん酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池の4種類があり、これらの中でも、固体高分子型燃料電池は作動温度が低いという利点がある。固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性を有する高分子膜と白金電極から成り、水素と酸素(空気)をベースとして発電する電気化学的デバイスである。固体高分子型燃料電池は、燃料電池としての使用条件下で長期間安定である必要があるが、通常の合成高分子にとって、この条件、すなわち白金触媒が接触した状態での水素および酸素との共存や酸性条件下などは高分子にとって非常に苛酷である。例えば、合成高分子中の脂肪族成分などは直ちに酸化され、破壊されてしまう。現時点では、この過酷な条件に耐えるポリマーとして、芳香族を主鎖骨格に持つポリイミドなどの芳香族系高分子やフッ素化ポリマーのみが使用されている。しかしながら、このような高分子は不溶・不融性のものが多く、成形加工性に非常に劣る。
【0004】
代表的な固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜としては米国デュポン社のナフィオンが知られているが、耐熱性ならびに機械的強度が低く、コストも高い。一方、低い作動温度と広範囲の出力性能を有する燃料電池は、携帯用、車載用など多くのアプリケーションが考えられ、非常に魅力的である。このような特性を有する固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜ついては数多く研究されているが(特許文献1〜3、非特許文献1)、更なる高性能化と製造コストの削減が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−294323
【特許文献2】特開2006−117828
【特許文献3】特開2006−100058
【非特許文献1】高分子学会予稿集、第56回(2007年)高分子学会年次大会、p.1742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロトン伝導性電解質膜を固体高分子型燃料電池の電解質として実用するためには、少なくとも電解質膜が高い成形性を有しながらも化学安定性、機械的特性および耐熱性に優れたプロトン伝導性高分子膜であることが必要である。
【0007】
従って、本発明の第1の目的は有機物と無機物をハイブリッド化することにより、従来の高分子電解質膜に比べて簡便かつ低コストで、より高性能なプロトン伝導性高分子膜を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、有機成分として比較的柔軟なビニルポリマーを用い、無機成分として粘土を用いることで、高い成形性を有しながらも化学安定性、機械的特性および耐熱性に優れたプロトン伝導性高分子膜を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、プロトン伝導性を有する高分子中に、表面を有機化した粘土をナノスケールで分散させることにより、上記目的を達成し、本発明を完成するに至った。より詳細には、未修飾の粘土を用いると、均一なハイブリッドが得られないが、粘土表面を修飾剤により有機化することで、粘土をマトリックス高分子中に均一に分散させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下に記載の構成により特定される。
【0010】
(請求項1)
プロトン伝導性を有する合成高分子100重量部に対し、有機化粘土1〜100重量部を配合してなる樹脂組成物。
【0011】
(請求項2)
有機化粘土が膨潤性層状珪酸塩に含まれるアルカリ金属イオンを有機アンモニウムイオンでイオン交換して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【0012】
(請求項3)
膨潤性層状珪酸塩がモンモリナイト、バラデナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、フッ素化雲母化合物、よりなる群から1種または2種以上選択されることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【0013】
(請求項4)
有機アンモニウムイオンが下記一般式(1)で表されるアンモニウム塩であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
一般式(1)

(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、もしくは置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、ここでいう置換基とは、スチレン基、メタクリレート基、アクリレート基もしくは重合性を有するこれら以外の官能基を意味する。また一般式(1)中、Xはハロゲン化物イオンを示す。)
【0014】
(請求項5)
プロトン伝導性を有する合成高分子がポリリン酸ビニルである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
(請求項6)
プロトン伝導性を有する合成高分子のモノマーを、有機化粘土存在下で重合させることにより製造する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
(請求項7)
請求項4に記載の有機化粘土を構成するアンモニウム塩の重合能を持つ官能基にプロトン伝導性を有する高分子を共重合させることで得られる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
(請求項8)
請求項1〜7に記載の樹脂組成物を膜化することにより得られる膜厚み0.5mm以下の有機−無機ハイブリッド膜。

【発明の効果】
【0018】
有機物と無機物をハイブリッド化することにより、従来の高分子電解質膜に比べて簡便かつ低コストで、より高性能なプロトン伝導性高分子膜が提供された。すなわち、有機成分として比較的柔軟なビニルポリマーを用い、無機成分として表面を修飾剤により有機化した粘土を用いることで、高い成形性を有しながらも化学安定性、機械的特性および耐熱性に優れたプロトン伝導性高分子膜が提供された。

【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明が提供する樹脂組成物を得るためには、マトリックスポリマーであるプロトン伝導性を有する合成高分子中に、有機化粘土を均一に分散させることが必要である。そのためには、有機溶媒中で有機化粘土と該プロトン伝導性を有する合成高分子を混合することが望ましい。また、有機化粘土が溶媒中に均一に分散した状態で、該プロトン伝導性を有する合成高分子のモノマーの重合を行う方が、より望ましい。さらに、重合性基を導入した有機化粘土を用い、有機溶媒中でロトン伝導性を有する合成高分子のモノマーとの共重合を行うことで、より分散性が高まる。
【0021】
プロトン伝導性を有する合成高分子と有機化粘土の配合割合については、プロトン伝導性を有する合成高分子100重量部に対し、有機化粘土1〜100重量部を配合することが望ましい。有機化粘土の配合がこれより少ないとハイブリッド膜の機械的強度が低く、実用的でなく、これより多いとプロトン伝導性が損なわれる。
【0022】
本発明における粘土としては、膨潤性層状珪酸塩が用いられる。この膨潤性層状珪酸塩としては、例えば、モンモリナイト、バラデナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、フッ素化雲母化合物などが挙げられる。
【0023】
マトリックスポリマーであるプロトン伝導性を有する合成高分子としては、特に制限はなく、プロトン伝導性を有する合成高分子であれば何でもよい。
【0024】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、プロトン伝導性を有する合成高分子には共重合体を使用してもよく、その構造はランダム、ブロック、グラフト共重合体でもよい。また、2種以上のプロトン伝導性を有する合成高分子をブレンドしてもよい。
【0025】
粘土の修飾剤としては次の一般式(1)で表わされるアンモニウム塩を用いことが望ましい。
一般式(1)

(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、もしくは置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、ここでいう置換基とは、スチレン基、メタクリレート基、アクリレート基もしくは重合性を有するこれら以外の官能基を意味する。また一般式(1)中、Xはハロゲン化物イオンを示す。)
【0026】
粘土の含有量としては特に制限はなく、僅かな含有量であっても製膜上問題がなければ、本発明の有機−無機ハイブリッド膜に包含されるものになる。好ましい含有量としては、マトリックスポリマーであるプロトン伝導性を有する合成高分子100重量部に対して1重量部以上が挙げられ、さらに効果を確実にするため、好ましくは3重量部以上あればよい。

【0027】
本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
(有機化粘土(OA−MMT)の合成)
ジメチルオクタデシルアンモニュウム(Dimethyloctadecylammonium )修飾粘土(OA−MMT)の合成手順を以下の手順で行った。
【0029】
1Lのビーカーに蒸留水200mlとジメチルオクタデシルアミン(dimethyloctadecylamine)(1.19 mmol,0.353g)を加えて激しく撹拌し、懸濁させる。 さらに濃塩酸(1.19mmol,0.045g)を加えた後、混合物を80℃に加熱し、撹拌することで透明な溶液が得られる。この得られたジメチルオクタデシルアンモニュウムの溶液に、モンモリナイト(MMT)10gを200mlの蒸留水に懸濁させたものを80℃で撹拌しながら加えた。10時間後、沈殿した有機化粘土をろ別により回収した。さらに過熱した蒸留水に懸濁させ、1時間攪拌した後、再びろ別操作を行うことで有機化粘土の洗浄を行った。洗液中に0.1N−AgNOを加え、AgClの白色沈殿が見られなくなるまで洗浄操作を繰り返した。回収物をエタノールで洗浄し、80℃で2日間、真空乾燥を行った。さらにふるいにより粒径63μm未満の有機化粘土を回収した。本操作による有機化粘土(OA−MMT)の合成は、下記一般式(2)で表すことができる。
一般式(2)

【実施例2】
【0030】
(有機化粘土(AOA−MMT)の合成)
次に、アリルジメチルオクタデシルアンモニュウム(Allyldimethyloctadecyl ammonium)修飾粘土(AOA−MMT)の合成 を以下の手順で実施した。
【0031】
100mlの丸底フラスコに20mlのジエチルエーテルとジメチルオクタデシルアミン(25g,84mmol))を加えた後、アリルクロライド(6.43g,84mmol)を撹拌しながら滴下した。一晩撹拌した後、白色沈殿をろ過により回収した。回収物をジエチルエーテルで洗浄し、室温で24時間真空乾燥することによりアリルジメチルオクタデシルアンモニュウムクロライド(allyldimethyloctadecyl−(4−vinylbenzyl)ammonium chloride、AOA)を得た。
【0032】
蒸留水を入れたビーカー中でモンモリナイト(MMT)を室温で一晩攪拌することで分散させた。水/エタノール(70:30,v/v)混合液に溶解させた作製直後のAOAをMMT懸濁液に滴下した後、室温で12時間激しく撹拌した。得られる白色沈殿をろ別し蒸留水で洗浄した。洗液中に0.1N−AgNOを加え、AgClの白色沈殿が見られなくなるまで洗浄操作を繰り返した。回収物をさらにエタノール/水(80/20,v/v)混合溶媒洗浄し、室温で2日間真空乾燥を行うことによりallyldimethyloctadecylammonium修飾粘土(AOA−MMT)を得た。さらにふるいにより粒径63μm未満の有機化粘土を回収した。本操作による有機化粘土(AOA−MMT)の合成は、下記一般式(3)で表すことができる。
一般式(3)

【実施例3】
【0033】
(有機化粘土(VOA−MMT)の合成)
更に、ジメチルオクタデシル−(4−ビニルベンジル)アンモニュウム(Dimethyloctadecyl−(4−vinylbenzyl)ammonium) 修飾粘土(VOA−MMT)の合成を以下の手順で実施した。
【0034】
100mlの丸底フラスコに20mlのジエチルエーテルとジメチルオクタデシルアミン(25g,84mmol))を加えた後、ビニルベンジルクロライド(12.8g,84mmol)を撹拌しながら滴下した。一晩撹拌した後、白色沈殿をろ過により回収した。回収物をジエチルエーテルで洗浄し、室温で24時間真空乾燥することによりジメチルオクタデシル−(4−ビニルベンジル)クロライド(dimethyloctadecyl−(4−vinylbenzyl)ammonium chloride、VOA)(30g,収率79%)を得た。
【0035】
500mLの蒸留水を入れたビーカー中でMMT(20g,23.8mmol)を室温で一晩攪拌することで分散させた。200mlの水/エタノール(70:30,v/v)混合液に溶解させた作製直後のVOA(11.7g,26mmol)をMMT懸濁液に滴下した後、室温で12時間激しく撹拌した。得られる白色沈殿をろ別し蒸留水で洗浄した。洗液中に0.1N−AgNOを加え、AgClの白色沈殿が見られなくなるまで洗浄操作を繰り返した。回収物をさらにエタノール/水(80/20,v/v)混合溶媒洗浄し、室温で2日間真空乾燥を行うことによりdimethyloctadecyl−(4−vinylbenzyl)ammonium修飾粘土(VOA−MMT)を26g得た。さらにふるいにより粒径63μm未満の有機化粘土を回収した。本操作による有機化粘土(VOA−MMT)の合成は、下記一般式(4)で表すことができる。
一般式(4)

【0036】
X線回折(XRD)により、修飾前後における粘土の層間隔の変化を測定した。測定結果を図1に示す。未修飾MMT(Na−MMT)と有機化粘土(OA−MMT、AOA−MMT、VOA−MMT)のXRDパターンは、MMTのd‐間隔による典型的回折ピークが、有機陽イオンによる修飾により、低ブラッグ角へ移動し、層間隔の増加を示した。未修飾MMTのd−間隔(1.28nm)は、サイズの小さなNaイオンが、有機化により大きなサイズの有機陽イオンと交換し、OA−MMT、AOA−MMT、VOA−MMTとなるため、層間隔はそれぞれ1.97、2.22、2.34 nmに増加した。粘土層間隔は、以下の順序で増加した;Na−MMT<OA−MMT<AOA−MMT<VOA−MMT。この順序は、大きな芳香環を持つ有機物を用いることで、より大きな層間隔を持つ有機化粘土を得ることができることを示唆している。
【0037】
粘土に導入した有機物の量は、空気中での熱重量分析(TGA)により見積もった。OA−MMT、VOA−MMTのTGA測定で観測された有機物による重量減少は、それぞれ29および32wt%であった。また、粘土中に導入した有機物の分解による重量減少の他に、400℃から700℃の温度範囲で、Si−OHの縮合による水の重量減少が観測された。

【実施例4】
【0038】
(H修飾粘土(H−MMT)の合成)
比較のため、有機化粘土ではないがH修飾粘土(H−MMT)の合成を以下の手順で実施した。
【0039】
蒸留水1Lが入ったビーカーに濃塩酸(14.3mmol,0.54g)を加えた後、MMT 10gを500mlの蒸留水に分散させた懸濁液を80℃で攪拌しながら加えた。10時間撹拌した後、ろ別により粘土を回収した。得られた粘土は、洗液中に0.1N−AgNOを加え、AgClの白色沈殿が見られなくなるまで蒸留水で洗浄を繰り返した。さらに回収物をエタノールで洗浄した後、80℃で2日間、真空乾燥を行うことで、H 修飾粘土(H−MMT)を得た。さらにふるいにより粒径63μm未満のH−MMTを回収した。本操作によるH 修飾粘土(H−MMT)の合成は、下記一般式(5)で表すことができる。
一般式(5)

【0040】
(プロトン伝導性電解質膜の製造)
上記実施例1〜4で製造した樹脂組成物を使って、有機・無機ハイブリッド膜、すなわち、固体高分子型燃料電池用プロトン伝導性電解質膜を製造した。
【0041】
(ブレンドによるポリリン酸ビニル/OA−MMTハイブリッド膜の合成)
テトラヒドロフラン中に合成したOA−MMTを加えて激しく撹拌し、OA−MMTを溶媒中に分散させた。これにポリリン酸ビニルのTHF溶液を添加した。得られた混合液をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/OA−MMTハイブリッド膜を調製した。混合比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−1とする。
【0042】
(In−situ法によるポリリン酸ビニル/OA−MMTハイブリッド膜の合成)
・テトラヒドロフラン中に合成したOA−MMTを加えて激しく撹拌し、OA−MMTを溶媒中に分散させた。これにリン酸ビニルモノマーのTHF溶液を添加し、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよびクミルジチオベンゾエートを加え、混合液を60℃で加熱撹拌した。12時間後、反応混合物をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/OA−MMTハイブリッド膜を調製した。仕込み比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−2とする。
【0043】
(ブレンドによるポリリン酸ビニル/AOA−MMTハイブリッド膜の合成)
・テトラヒドロフラン中に合成したAOA−MMTを加えて激しく撹拌し、AOA−MMTを溶媒中に分散させた。これにポリリン酸ビニルのTHF溶液を添加した。得られた混合液をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/AOA−MMTハイブリッド膜を調製した。混合比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−3とする。
【0044】
(In−situ法によるポリリン酸ビニル/AOA−MMTハイブリッド膜の合成)
・テトラヒドロフラン中に合成したAOA−MMTを加えて激しく撹拌し、AOA−MMTを溶媒中に分散させた。これにリン酸ビニルモノマーのTHF溶液を添加し、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよびクミルジチオベンゾエートを加え、混合液を60℃で加熱撹拌した。12時間後、反応混合物をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/AOA−MMTハイブリッド膜を調製した。仕込み比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−4とする。
【0045】
(ブレンドによるポリリン酸ビニル/VOA−MMTハイブリッド膜の合成)
・テトラヒドロフラン中に合成したVOA−MMTを加えて激しく撹拌し、VOA−MMTを溶媒中に分散させた。これにポリリン酸ビニルのTHF溶液を添加した。得られた混合液をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/VOA−MMTハイブリッド膜を調製した。混合比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−5とする。
【0046】
(In−situ法によるポリリン酸ビニル/VOA−MMTハイブリッド膜の合成)
テトラヒドロフラン中に合成したVOA−MMTを加えて激しく撹拌し、VOA−MMTを溶媒中に分散させた。これにリン酸ビニルモノマーのTHF溶液を添加し、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよびクミルジチオベンゾエートを加え、混合液を60℃で加熱撹拌した。12時間後、反応混合物(樹脂組成物)をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/VOA−MMTハイブリッド膜を調製した。仕込み比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−6とする。上記操作による樹脂組成物の合成は下記一般式(6)で表される。
一般式(6)

【0047】
(ブレンドによるポリリン酸ビニル/H−MMTハイブリッド膜の合成)
・テトラヒドロフラン中に合成したH−MMTを加えて激しく撹拌し、H−MMTを溶媒中に分散させた。これにポリリン酸ビニルのTHF溶液を添加した。得られた混合液をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/H−MMTハイブリッド膜を調製した。混合比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−7とする。
【0048】
(In−situ法によるポリリン酸ビニル/H−MMTハイブリッド膜の合成)
テトラヒドロフラン中に合成したH−MMTを加えて激しく撹拌し、H−MMTを溶媒中に分散させた。これにリン酸ビニルモノマーのTHF溶液を添加し、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよびクミルジチオベンゾエートを加え、混合液を60℃で加熱撹拌した。12時間後、反応混合物をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/H−MMTハイブリッド膜を調製した。仕込み比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−8とする。
【0049】
(ブレンドによるポリリン酸ビニル/未修飾MMT(Na−MMT)ハイブリッド膜の合成)
テトラヒドロフラン中に合成したNa−MMTを加えて激しく撹拌し、Na−MMTを溶媒中に分散させた。これにポリリン酸ビニルのTHF溶液を添加した。得られた混合液をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/Na−MMTハイブリッド膜を調製した。混合比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−9とする。
【0050】
(In−situ法によるポリリン酸ビニル/未修飾MMT(Na−MMT)ハイブリッド膜の合成)
テトラヒドロフラン中に合成したNa−MMTを加えて激しく撹拌し、Na−MMTを溶媒中に分散させた。これにリン酸ビニルモノマーのTHF溶液を添加し、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよびクミルジチオベンゾエートを加え、混合液を60℃で加熱撹拌した。12時間後、反応混合物をガラス基板上にキャストし、真空下で100℃まで徐々に昇温することで膜厚約0.2mmのポリリン酸ビニル/Na−MMTハイブリッド膜を調製した。仕込み比により、粘土含量を3〜50%に調整した。これをプロトン伝導性電解質膜−10とする。
【0051】
(プロトン伝導性電解質膜の評価)
上記操作で製造したプロトン伝導性電解質膜1〜10についてプロトン伝導性を実施した。プロトン伝導性電解質膜を水中(25℃)で膨潤させ、その後2枚の白金電極に挟んで、ヒューレットパッカード社製LCRメーターHP4284Aを用いて、インピーダンス測定を行い、プロトン伝道度を算出した。その結果、本発明に基づいて作成したプロトン伝導性電解質膜1〜10のプロトン伝道度は、10−2S/cm程度であった。一方、同様な方法で測定したナフィオン117のプロトン伝道度は、7.6x10−2S/cmであった。

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に基づくプロトン伝導性樹脂組成物のX線測定結果
【符号の説明】
【0053】
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性を有する合成高分子100重量部に対し、有機化粘土1〜100重量部を配合してなる樹脂組成物。
【請求項2】
有機化粘土が膨潤性層状珪酸塩に含まれるアルカリ金属イオンを有機アンモニウムイオンでイオン交換して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
膨潤性層状珪酸塩がモンモリナイト、バラデナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、フッ素化雲母化合物、よりなる群から1種または2種以上選択されることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
有機アンモニウムイオンが下記一般式(1)で表されるアンモニウム塩であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
一般式(1)

(一般式(1)中、R、R、R、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、もしくは置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、ここでいう置換基とは、スチレン基、メタクリレート基、アクリレート基もしくは重合性を有するこれら以外の官能基を意味する。また一般式(1)中、Xはハロゲン化物イオンを示す。)
【請求項5】
プロトン伝導性を有する合成高分子がポリリン酸ビニルである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
プロトン伝導性を有する合成高分子のモノマーを、有機化粘土存在下で重合させることにより製造する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の有機化粘土を構成するアンモニウム塩の重合能を持つ官能基にプロトン伝導性を有する高分子を共重合させることで得られる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の樹脂組成物を膜化することにより得られる膜厚み0.5mm以下の有機−無機ハイブリッド膜。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291184(P2008−291184A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140652(P2007−140652)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】