説明

プロトン伝導性材料の製造方法

【課題】 熱安定性、機械的安定性、耐溶媒性などが良好で、高湿度においても低湿度においてもプロトン伝導性の優れたプロトン伝導性材料を1段階で操作性よく安価に製造することが可能なプロトン伝導性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、過酸化水素のような酸化剤と、界面活性剤と、必要に応じてテトラエチルオルトシリケートおよび水酸化アンモニウムのような塩基を0〜80℃で反応させることによって1段階で、下記一般式(1): (HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m(SiO)z ‥(1)
(式中、n=0.35〜0.57、z=0.57以下、n+m+z=1である。)で表されるプロトン伝導性材料を製造する。このプロトン伝導性材料は、燃料電池、キャパシター、電解セルなどの電気化学素子に応用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導性材料の製造方法に関し、特に、燃料電池、キャパシター、電解セルなどの電気化学素子への応用に好適なハイブリッドシリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料を簡便に製造することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロトン伝導体としては、有機化合物から構成されているパーフルオロポリマー、例えば、Nafion(デュポン社製、登録商標)がある。このパーフルオロポリマーは、パーフルオロ化された線状の主鎖と、スルホン酸基を有するパーフルオロ化された側鎖とから形成されており、スルホン酸基がプロトン供給サイト(部位)としての役割を担っている。このNafionの場合、通常、分子量1100当たり、1個のスルホン酸基(プロトン供給部位)を含んでおり、分子量当たりのプロトン供給部位の比率(重量比)は、必ずしも大きくない。また、プロトン伝導性は、湿度によって影響を受け、例えば、低湿度状態(RH<11%)でのプロトン伝導性は、10-6S/cmよりも低いという問題がある。
【0003】
それに対して近年、特許文献1に記載されているように、プロトン伝導性材料としてテトラアルコキシシランにリン酸を添加して加水分解によりゲル状とし、これを高温で加熱処理することによってホスホシリケートとしたものが開発されている。
【0004】
一方、非特許文献1では、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランと、テトラエチルオルトシリケートと、非イオン性界面活性剤(Pluronic123コポリマー)と、塩酸と、過酸化水素水を用いて、Si(シリカ)に結合した置換SH(チオール)が10及び20mol%であり、そのうち66%のチオールがSOHに酸化されたものが記載されている。最終生成物の組成は、スルホン酸の含有量が最も多いもので、(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.132(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.068(SiO20.80である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−80214号公報
【非特許文献1】Chem.Mater.2000,12,2448-2459(SBA-15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているホスホシリケートは、プロトン伝導性の点では十分なものではない。
また、非特許文献1では、このハイブリッドシリカポリマーをプロトン伝導性材料に供してはおらず、またこの材料を用いてプロトン伝導性を測定しても、低湿度で<10-8S/cmであり、高湿度で<10-3S/cmと、特に低湿度におけるプロトン伝導性が低く、プロトン伝導性材料として用いることはできなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、熱安定性、機械的安定性、耐溶剤性などが良好で、高湿度においても低湿度においてもプロトン伝導性の優れたプロトン伝導性材料を1段階で操作性よく安価に製造することの可能なプロトン伝導性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件下で無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料を1段階で高収率に製造することができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m(SiO)z ‥(1)
(式中、n=0.35〜0.57、z=0.57以下(ただし0ではない)、n+m+z=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、テトラエチルオルトシリケートと、酸化剤と、界面活性剤とを0〜60℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法である。
【0010】
ここで、前記界面活性剤としては、一般式(2):
CH−(CH−N(CH・X ・・・(2)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21であり、X=Br、ClまたはOHである。)
または一般式(3):
CH−(CH−NH2 ・・・(3)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21である。)
で表される化合物を用いることが好ましい。
【0011】
前記酸化剤としては、H22水溶液を用いることが好ましい。またさらに塩基を用いることが好ましく、塩基としては特に水酸化アンモニウムを用いることが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、下記一般式(4):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m ‥(4)
(式中、n=0.35〜0.57、n+m=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、酸化剤の混合物を20〜80℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法が提供される。
前記酸化剤としては、H22水溶液を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるプロトン伝導性材料の製造方法によれば、熱安定性、機械的安定性、耐溶媒性などが良好で、高湿度においても低湿度においてもプロトン伝導性の優れたプロトン伝導性材料を1段階で操作性よく安価に製造することができる。
すなわち、本発明の方法によって得られる無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料は、電気化学素子(例えば、燃料電池)の使用環境(約−20〜130℃)に耐えられる熱安定性(150℃以上:TGA測定)と、機械的、化学的安定性を有し、自己保湿性が良好で低湿度下でもプロトン伝導性が優れたものであり、燃料電池、キャパシター、電解セルなどの電気化学素子へ広く応用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(1)請求項1の発明(第1の発明)
本発明は、下記一般式(1):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m(SiO)z ‥(1)
(式中、n=0.35〜0.57、z=0.57以下(ただし0ではない)、n+m+z=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、テトラエチルオルトシリケートと、酸化剤と、界面活性剤とを0〜60℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法である。
本発明によって得られた上記一般式(1)で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有メソポーラスシリカポリマーは、一般式(1)中に含有されるチオールおよび/またはスルホン酸によってプロトン伝導性が発現する。
【0015】
本発明の方法で用いられる3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランとしては、限定するものではないが、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(略、3−MPTMS)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(略、3−MPTES)などが挙げられる。3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランの配合量は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランとテトラエチルオルトシリケート(全シリカ材料)の合計量に対して43モル%以上である。43モル%未満では良好なプロトン伝導性が得られない。
【0016】
反応に用いられる界面活性剤としては、一般式(2):
CH−(CH−N(CH・X ・・・(2)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21であり、X=Br、ClまたはOHである。)
または一般式(3):
CH−(CH−NH2 ・・・(3)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21である。)
で表される化合物、あるいはPluronic123(Mav=5800、EO20PO70EO17)、Brij58(ノニオン性トリブロックポリマー、C1633(OCH2CH220OH)、Brij76(ノニオン性トリブロックポリマー、C1837(OCH2CH210OH)が挙げられる。
【0017】
このうち、特に上記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物を用いることが好ましく、中でも一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0018】
ここで、アルキル基部分の具体例としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。界面活性剤の配合量は、全シリカ材料1モルに対して0.005〜0.6モルが適当である。
【0019】
本発明においては、さらに塩基を用いることができる。反応に用いられる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム等が例示される。このうち特に水酸化アンモニウムが好ましい。塩基の配合量は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランとテトラエチルオルトシリケートの合計量(全シリカ材料)に対して4モル%以下であり、特に2〜4モル%が適当である。
【0020】
酸化剤としては、H22水溶液、メタノールに溶解したH22、ターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液、n−デカンに溶解したターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられるが、特にH22水溶液が好ましい。酸化剤の配合量は、全シリカに対して25〜32モル%である。
【0021】
反応溶媒としては、例えば、過酸化水素を用いる場合には水やメタノール、ターシャリブチルハイドロパーオキシドの場合には水やブタノール、n−デカンなどが用いられる。すなわち、用いる過酸化物の性質に応じて好適な溶媒を選択するが、好ましくは酸化剤がH22で、反応溶媒が水である。
【0022】
本発明のプロトン伝導性材料である無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーの製造にあたっては、上記の3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、テトラエチルオルトシリケートと、酸化剤と、界面活性剤と、必要に応じて塩基とを、水、アルコールなどの溶媒中で、0〜60℃の温度で1〜4日間反応させる。
この結果、式、(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m(SiO)z ‥(1)
(式中、n=0.35〜0.57、z=0.57以下(ただし0ではない)、n+m+z=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料がゲルとして得られる。無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーにおけるnのより好ましい値は、0.47〜0.57である。
【0023】
酸化処理により、チオール(HS−)基は、最大で約81モル%が酸化されてプロトン伝導性を有するスルホン酸基になる。この結果、上記一般式(1)で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーが得られる。Nafionがアルコールに可溶であるのに対し、この無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーはアルコールに不溶である。
【0024】
(2)請求項5の発明(第2の発明)
本発明は、下記一般式(4):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m ‥(4)
(式中、n=0.35〜0.57、n+m=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、酸化剤の混合物を20〜80℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法である。
本発明によって得られた上記一般式(1)で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有メソポーラスシリカポリマーは、一般式(1)中に含有されるチオールおよび/またはスルホン酸によってプロトン伝導性が発現する。
【0025】
本発明で用いられる3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランとしては、請求項1の発明で説明したものと同様のものが用いられる。
【0026】
酸化剤としては、H22水溶液、メタノールに溶解したH22、ターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液、n−デカンに溶解したターシャリ−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられるが、特にH22水溶液が好ましい。酸化剤の配合量は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランに対して20〜46モル%である。
【0027】
反応溶媒としては、例えば、過酸化水素を用いる場合には水やメタノール、ターシャリブチルハイドロパーオキシドの場合には水やブタノール、n−デカンなどが用いられる。すなわち、用いる過酸化物の性質に応じて好適な溶媒を選択して酸化反応処理を行うが、好ましくは酸化剤がH22で、反応溶媒が水である。
【0028】
本発明のプロトン伝導性材料である無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーの製造にあたっては、上記の3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、酸化剤の混合物を、水、アルコールなどの溶媒中で、20〜80℃の温度で15分間〜2日間反応させる。
この結果、式、(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m ‥(4)
(式中、n=0.35〜0.57、n+m=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料がゲルとして得られる。無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーにおけるnのより好ましい値は、0.42〜0.57である。
【0029】
酸化処理により、チオール(HS−)基は、最大で57モル%、通常は52モル%までが酸化されてプロトン伝導性を有するスルホン酸基になる。この結果、上記一般式(1)で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーが得られる。Nafionがアルコールに可溶であるのに対し、この無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーはアルコールに不溶である。
【0030】
本発明の方法によればいずれの方法においても無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料を一段階で製造することができる。この材料はメソポーラス体または非−ポーラス材料(非晶質)である。メソ構造材料は、結晶性の材料であり、XRD[X線回折]において散乱角2θが3°以下に回折ピークを有する。これら材料のポアサイズは、2nm以上、50nm以下であり、メソポーラス材料と呼ばれるものである。合成されるこの材料のポアサイズは、最大12nmである。原料にテトラエチルオルトシリケートを含まない場合には非−ポーラス材料(非晶質)が製造され、原料にテトラエチルオルトシリケートを含む場合には条件によって非−ポーラス材料(非晶質)またはメソポーラス材料が製造される。
【0031】
また本発明の方法のうち、テトラエチルオルトシリケートを配合する方法(第1の発明)をとった場合には、硫黄原子の全含量は少なくなるが、チオール基からスルホン酸基への変換率は、テトラエチルオルトシリケートを配合しない場合(第2の発明)よりも大きくなる。
【0032】
非−ポーラス材料(非晶質)とメソポーラス材料の違いについては、メソポーラスでない、即ち非ポーラスシリカ材料にはポアがなく、このためメタノールあるいはどのような燃料も通過することができないという特徴を有している。そして、この非ポーラスシリカ材料は、低湿度で高プロトン伝導性があるという特徴がある。一方、ポアを有するメソポーラス材料の場合には、水分子がプロトンサイト(HOS−)に近接して強く吸着している。このため、高いプロトン伝導性を有する。特に、高湿度におけるメソポーラス材料のプロトン伝導性は非ポーラス材料よりも高い。このように、ポーラスシリカポリマー及び非ポーラスシリカポリマーのいずれもそれぞれに異なる明確な特性を有しており、それらのいずれも重要であり、同様及び異なった目的のために応用することができる。
【0033】
本発明の方法によって得られるプロトン伝導性材料は、低湿度において高プロトン伝導性(σ=10-4S/cm程度以上)、高湿度において高プロトン伝導性(σ=8×10-2S/cm程度以上)を達成することができ、従来報告されているものより顕著に高いものである。
【0034】
また熱安定性も優れ、例えば、TG−DTAによる測定で、およそ150℃まで安定であり、更に、機械的安定性や、水性あるいは非水性溶媒に対する高い安定性(耐溶媒性)、あるいは化学安定性などを示す。低湿度におけるプロトン伝導性も優れている。このため燃料電池の応用環境(80〜130℃程度)において十分実用寿命を超えて用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り下記実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1[第1の発明]
出発原料として、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(3−MPTES)または3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−MPTMS)、界面活性剤(RX)、過酸化水素水、NH4OHを用い、界面活性剤(RX)の種類を下記のように振り、また出発原料の各成分を振って、水熱反応を、0、20(室温),40及び60℃で1〜4日間実施し、下記モル組成を有する合成ゲル(乾燥条件下)を製造した。
【0037】
[界面活性剤(RX)]
CH3−(CH2n−N(CH33X(n=7,9,11,13,15,17,19;X=Br、Cl、OH)
【0038】
[合成ゲルのモル組成]
TEOS+3−MPTES(3−MPTMS):1.0(ただし、このうちTEOSは57モル%以下)
界面活性剤 :0.005〜0.6
22 :25〜32
2O :30〜180
NH4OH :0〜4
上記各出発原料の各モル成分および合成条件を振って合成したが、代表的な合成例を以下に記載する。
【0039】
(代表的な合成方法)
(1)無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーゲルの合成
6.92gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(100%、Aldrich Chem.)を25gの水に撹拌しながら10分で投入する。この溶液に、11.76gの3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−MPTMS)(Azmax、Japan chem.、95%)及び9.40gのテトラエチルオルトシリケート(Aldrich、98%)を一緒に、撹拌下10分で添加した後、7.0gのアンモニア水(NH4OH)を高速撹拌しながら15分で滴下して加える。次いで、283gの30%H22水溶液を撹拌下に加え、2時間撹拌する。最後に、均一なゲルを室温で3日間熟成する。生成物をろ過し、水洗した後、40℃で1日乾燥する。
【0040】
上記で合成した合成ゲルのモル組成は以下のようであった。
TEOS 0.44
3−MPTMS 0.56
16TMABr 0.19
22 25
2O 126
NH4OH 3.0
【0041】
(2)ゲル中の界面活性剤の除去:
合成した生成物の界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)を除去するため、1gのサンプルを100mlのエタノールと1.2mlの塩酸(4M)を用い40℃で8時間処理する。次いで、ろ過し、エタノールで洗浄した後、40℃で1日乾燥する。
【0042】
最終生成物のモル組成は、(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.47(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.11(SiO20.42・1.7H2Oである。この生成物は、47mol%のSO3Hを含有する(すなわち、3.09mmol(SO3H)/g(ソリッド))シリカポリマーである。
【0043】
実施例2[第2の発明]
出発原料として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(3−MPTES)または3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−MPTMS)、過酸化水素水を用い、また出発原料の各成分を振って、20(室温),40,60あるいは80℃で15分〜2日間、撹拌下に反応させ、下記モル組成を有する合成ゲル(乾燥条件下)を製造した。
【0044】
[合成ゲルのモル組成]
3−MPTES(3−MPTMS):1.0
22 :20〜46
2O :17〜202
上記各出発原料の各モル成分および合成条件を振って合成したが、代表的な合成例を以下に記載する。
【0045】
(代表的な合成方法)
17.37gの3-MPTES(95%、Aldrich)と283gの30%H22水溶液をテフロン(登録商標)をライニングしたステンレス製オートクレーブ中に入れて、素早く閉める。混合物を室温で1時間撹拌する。最後に、生成物をろ過し、蒸留水とエタノールで洗浄し、40℃で1日乾燥する。
【0046】
上記で合成した合成ゲルのモル組成は以下のようであった。
3−MPTES 1.0
22 36.1
2O 159
【0047】
最終生成物のモル組成は、(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.42(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.58・1.42H2Oである。この生成物は、42mol%のSO3Hを含有する(すなわち、2.43mmol(SO3H)/g(ソリッド))シリカポリマーである。
【0048】
実施例3[ハイブリッドシリカポリマーの合成]
実施例1の(代表的な合成方法)において、13.86gの3−MPTESと、7.264gのTEOSと360gの30%H22水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.50(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.15(SiO0.35・1.74H2Oで表されるハイブリッドシリカポリマーを合成した。
【0049】
比較例1[ハイブリッドシリカポリマーの合成]
実施例1の(代表的な合成方法)において、0.42gの3−MPTESと、20.94gのTEOSと45gの30%H22水溶液を用いたこととした以外は実施例1と同様にして(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.02(SiO0.98で表されるハイブリッドシリカポリマーを合成した。
【0050】
実施例4[ハイブリッドシリカポリマーの合成]
実施例2の(代表的な合成方法)において、17.37gの3−MPTESと、360gの30%H22水溶液を用いたこと以外は実施例2と同様にして(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.52(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.48・1.5H2Oで表されるハイブリッドシリカポリマーを合成した。
【0051】
比較例2[ハイブリッドシリカポリマーの合成]
実施例2の(代表的な合成方法)において、17.37gの3−MPTESと、45gの30%H22水溶液を用いたこと以外は実施例2と同様にして(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.02(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.98で表されるハイブリッドシリカポリマーを合成した。
【0052】
実施例1〜4、比較例1,2で得られたハイブリッドシリカポリマーの元素分析値を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
[評価]
次に、種々のハイブリッドシリカポリマーを、めのう乳鉢でかき混ぜて微粉末化させ、錠剤成型器を用いて、直径13mm、厚さ0.4mmの円柱状ペレットに加圧成形した。作製した円柱状ペレットを金電極に挟持し、導電率を交流法により測定評価した。低湿度(20%未満、25℃)におけるプロトン伝導度、および高湿度(90%以上、25℃)におけるプロトン伝導度を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
次に、ハイブリッドシリカポリマーとして、(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.52(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.48・1.5H2Oを用い、相対湿度(RH)および温度を種々変化させてプロトン伝導度を測定した。その結果をそれぞれ表3および表4に示す。なお、表3は25℃での測定であり、表4は高温度においては相対湿度5%未満である。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
実施例5[ハイブリッドシリカポリマーの合成]
実施例1の(代表的な合成方法)において、10.08gの3−MPTESと、11.109gのTEOSと250gの30%H22水溶液を用いたこととした以外は実施例1と同様にして(HO3S−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.35(HS−CH2−CH2−CH2−SiO3/20.13(SiO0.52で表されるメソポーラスシリカポリマーを合成した。得られたハイブリッドシリカポリマーのXRDプロファイルを図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の方法によって得られたメソポーラスシリカポリマーの一例のXRDプロファイルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m(SiO)z ‥(1)
(式中、n=0.35〜0.57、z=0.57以下(ただし0ではない)、n+m+z=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、テトラエチルオルトシリケートと、酸化剤と、界面活性剤とを0〜60℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤として、一般式(2):
CH−(CH−N(CH・X ・・・(2)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21であり、X=Br、ClまたはOHである。)
または一般式(3):
CH−(CH−NH2 ・・・(3)
(式中、n=7,9,11,13,15,17,19または21である。)
で表される化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項3】
前記酸化剤として、H22水溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項4】
さらに塩基を用いることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項5】
前記塩基として水酸化アンモニウムを用いることを特徴とする請求項4に記載のプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(4):
(HO3S-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)n(HS-CH2-CH2-CH2-SiO3/2)m ‥(4)
(式中、n=0.35〜0.57、n+m=1である。)
で表される無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーよりなるプロトン伝導性材料の製造方法であって、
前記無機−有機ハイブリッドスルホン酸含有シリカポリマーは、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランと、酸化剤の混合物を20〜80℃で反応させることによって1段階で製造されることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項7】
前記酸化剤として、H22水溶液を用いることを特徴とする請求項6に記載のプロトン伝導性材料の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−120560(P2006−120560A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309645(P2004−309645)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】