説明

プロトン伝導性膜、これを用いた燃料電池およびその製造方法

【課題】 プロトン伝導性を維持しつつクロスオーバーを防止し、安定で信頼性の高い燃料電池用プロトン伝導性膜を提供する。機械的強度が高く、長期にわたって安定に作動する高効率の燃料電池を提供する。
【解決手段】 少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜からなり、前記空孔の内壁がシラノール基で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導性膜、これを用いた燃料電池およびその製造方法に係り、特に、長期にわたって安定的に作動する直接メタノール形燃料電池用のプロトン伝導性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、近年、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。
燃料電池は、一般に電解質の種類によりいくつかのタイプに分類されるが、この中でも液体燃料であるメタノールを電池に直接供給し、電気化学反応を起こすことで改質器を用いることなく駆動することのできる直接メタノール形電池(以下、DMFCと略称する)が注目されている。
DMFCは高エネルギー密度を有する液体燃料を使用することができ、改質器を必要としないためシステムをコンパクトにすることができる。このためリチウムイオン電池に変わる携帯機器用ポータブル電源として特に注目されている。
DMFC内では以下に示す電気化学反応に従ってアノードでメタノールが直接反応しカソードで水を生成する。
アノード:CHOH+HO→CO+6H+6e
カソード:6H+2/3O+6e→3H
【0003】
ここで、プロトン伝導性膜は、アノードで生じたプロトンをカソード側に伝える役目を持つ。プロトンの移動は、電子の流れと協奏的に起こるものである。DMFCにおいて、高出力すなわち高電流密度を得るためには、十分な量のプロトン伝導を、高速に行う必要がある。従って、プロトン伝導性膜の性能はDMFCの性能を大きく左右することになる。また、プロトン伝導性膜は、プロトンを伝導するだけではなく、アノードとカソードの電気的絶縁と、アノード側に供給される燃料がカソード側に漏れないようにするための燃料バリアとの2つの役割を持つ。
【0004】
従来、高機能のプロトン伝導性膜としてパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ(ナフィオン(Nafion:登録商標))などのフッ素系樹脂が用いられている(特許文献1)。
これらのプロトン伝導性膜においては、スルホン酸基がいくつか凝集し、逆ミセル構造をとるものであるため、膨潤しやすく、メタノールのクロスオーバーを生じ易いという問題がある。すなわちパーフルオロ鎖に結合されたスルホン酸基で構成される逆ミセル構造部分にプロトン伝導路が形成される。
【0005】
これらフッ素系樹脂膜は、膨潤によってメタノールのクロスオーバーを生じ易くなり、膜中のプロトン伝導構造も変化し、メタノールを十分に利用することができず、カソード電位の低下が引き起こされるため、安定的な電極反応を生起することができず、発電効率が十分でないという問題があった。
また膨潤を繰り返すことにより、機械的強度の低下を生じ易いという問題もあった。さらにまたスルホン酸基という強酸を用いるため、耐薬品性の高い新規電解質膜が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−90111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、プロトン伝導性を維持しつつクロスオーバーを防止し、安定で信頼性の高い燃料電池用プロトン伝導性膜を提供することを目的とする。
また本発明は、機械的強度が高く、長期にわたって安定に作動する高効率の燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明のプロトン伝導性膜は、無機材料であり、規則的な空孔構造を持つメソポーラスシリカに着目してなされたもので、無機材料であることから高い耐熱性、耐薬品性を期待でき、またその空孔内または骨格内をスルホン酸基やリン酸基のようなプロトン供与体で修飾することでプロトン伝導性の向上も期待できる。
本発明のプロトン伝導性膜は、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜からなり、前記空孔の内壁が修飾基で被覆されている。
かかる構成によれば、空孔表面が安定なシラノール基やP−OH基等の修飾基で被覆されるとともに、空孔を囲む架橋構造体は強固な金属−酸素骨格をもつため、骨格構造自体が強固であり、膨潤することなく、空孔径を一定に維持することができ、メタノールのクロスオーバーを低減し、信頼性の高いプロトン伝導性膜を提供することができる。また、孔径を小さくすることができるが、この空孔はシラノール基などの修飾基で覆われているため、プロトン伝導性の低下は抑制される。従ってプロトン伝導性を低下することなくクロスオーバーの低減を図ることができる。
【0009】
また、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、前記架橋構造体がシリコン―酸素結合を主成分とする。
かかる構成によれば、安定でかつ耐熱性の高いプロトン伝導性膜を提供することができる。
【0010】
また、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、前記修飾基はシラノール基であるものを含む。
かかる構成によれば、孔径を小さくすることができるが、この空孔はシラノール基で覆われているため、プロトン伝導性の低下は抑制される。従ってプロトン伝導性を低下することなくクロスオーバーの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、前記修飾基はP−OH基であるものを含む。
かかる構成によれば、孔径を小さくすることができるが、この空孔はP−OH基で覆われているため、プロトン伝導性の低下は抑制される。従ってプロトン伝導性を低下することなくクロスオーバーの低減を図ることができる。
【0012】
望ましくは、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、前記架橋構造体は、前記メゾポーラスシリカ薄膜の厚さ方向に沿って円柱状の空孔が周期的に配列されている。
かかる構成によれば、円柱状の空孔がメゾポーラスシリカ薄膜の厚さ方向に沿って貫通するように周期的に配列されているため、プロトン伝導路がこの厚さ方向にでき、プロトン伝導路を短縮し、高速伝導を可能とすることができる。またこの空孔径を調整することができるため、適切な空孔径となるように調整すれば、メタノールクロスオーバを抑制することができる。
【0013】
また、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、膜厚が10μm以下である。
かかる構成によれば、薄型でかつ機械的強度の高いプロトン伝導性膜を提供することができ、燃料電池のプロトン伝導性を高めることができる。
望ましくは、前記プロトン伝導性膜において、前記酸基はスルホン酸基である。
かかる構成によれば、強酸であるスルホン酸基を備えているため、高度のプロトン伝導性を得ることができる。
【0014】
また、本発明では、前記プロトン伝導性膜において、前記シラノール基は多岐構造であるものを含む。
これにより、孔径を小さくすることができる。また、この多岐構造の枝数で孔径を調整することができる。
また、本発明の燃料電池は、上記プロトン伝導性膜を用いて形成される。
【0015】
また本発明のプロトン伝導性膜の製造方法は、金属-酸素誘導体と界面活性剤を含む前駆体溶液を調製する工程と、前記前駆体溶液を架橋し、架橋構造体を形成する架橋工程と、前記架橋工程で得られた架橋構造体から、前記界面活性剤を分解除去し、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜を形成する除去工程と、前記空孔の表面に修飾基を付加する工程とを含むようにしている。
かかる構成によれば、空孔の内壁にシラノール基やP−OH基などの修飾基を付加することにより、安定でかつ強固な構造体を形成することができる。また、界面活性剤の量および組成を調整することにより、容易に空孔径を調整することができる。また、骨格構造自体が強固で、膨潤することなく、空孔径を一定に維持することができ、メタノールのクロスオーバーを低減し、信頼性の高いプロトン伝導性膜を容易に形成することができる。 なおここで分子長の調整も有効であるがここでは分子長も組成の一部として調整する。
【0016】
また本発明は、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記付加する工程は、前記メゾポーラス薄膜をシリル化し、前記空孔の表面をシリル基で修飾する工程と、前記メゾポーラス薄膜を焼成し、前記空孔の表面のOH基をシラノール基とする焼成工程とを含む。
かかる構成によれば、メゾポーラス薄膜の空孔の内壁のシラノール基をシリル化することによりシリル基で被覆し、さらにこれを焼成することによりシラノール基を形成することができる。この方法によれば、空孔の内壁にSi−O結合が形成されることになり、孔径を縮小するとともに強固で信頼性の高いメゾポーラス薄膜を形成することができる。
【0017】
また本発明は、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記付加する工程は、前記メゾポーラス薄膜を燐酸処理し、前記空孔の表面をP−OH基で修飾する工程と、前記メゾポーラス薄膜を焼成し、前記空孔の表面をP−O基とする焼成工程とを含む。
かかる構成によれば、メゾポーラス薄膜の空孔の内壁をP−OH基で修飾し、さらにこれを焼成することによりP−O基を形成することができる。この方法によれば、空孔の内壁にP−O結合が形成されることになり、孔径を縮小するとともに強固で信頼性の高いメゾポーラス薄膜を形成することができる。
なおシリル化処理、燐酸処理、いずれの場合も孔径は0.5nm以下にならないようにするのが望ましい。0.5nm以下になるとプロトン伝導性が低下する。
【0018】
また本発明は、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記付加する工程は、前記修飾する工程と前記焼成する工程とを複数回含み、前記空孔径が所望の値となるように孔径を制御するようにしたものを含む。
かかる構成によれば、メゾポーラス薄膜の空孔の内壁のOH基をシリル化することによりシリル基で被覆し、さらにこれを焼成することによりシラノール基を形成する工程を複数回繰り返すことにより、多岐構造のシラノール基を形成することができる。すなわちこの方法によれば、空孔の内壁にSi−O結合が複数段形成された多岐構造となり、孔径を小さくすることができ、強固で信頼性の高いメゾポーラス薄膜を形成することができる。
【0019】
また本発明は、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記修飾する工程は、前記空孔表面にトリメチルエトキシシラン蒸気を接触させる工程を含む。
この方法により信頼性の高いメゾポーラス薄膜を形成することができる。
【0020】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、基体の表面に前記前駆体溶液を供給する工程を含み、前記架橋工程は、前記基体表面で前記前駆体溶液を架橋せしめる工程を含む。
かかる構成により、特別に電極を形成することなく、集電構造を形成することができ、製造が容易で小型の燃料電池を形成することができる。
【0021】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記多孔質導電体はポア径が10nmから10μmの範囲にある。
かかる構成によれば、燃料のメタノールを良好に通過せしめることができ、かつメゾポーラスシリカ薄膜を形成しやすくなる。また従来のフッ素系樹脂膜では薄くしすぎると温度が上がったとき、水を含んでクリープしやすくなり強度が低下するなどの問題があるが、本発明の方法で形成されるプロトン伝導性膜によればシリコン−酸素骨格を含む架橋構造体で構成しているためこのようなおそれもない。
さらに望ましくは50nmから1μmの範囲とするとよりメタノールの透過性もよく、強度も良好に維持することができる。
【0022】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、シリカ誘導体と界面活性剤を含む前駆体溶液を調製する工程と、前記前駆体溶液を架橋し、架橋構造体を形成する架橋工程と、前記界面活性剤を分解除去する工程とを含み、少なくとも一部に酸基の結合されたシリコン−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜を形成するようにしている。
かかる構成によれば、容易に架橋構造体を形成することができる。
【0023】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記分解除去する工程は、前記架橋構造体を焼成し、界面活性剤を除去する工程を含む。
かかる構成によれば、容易に空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜を形成することができる。
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記界面活性剤の除去に先立ち、前記前駆体溶液の供給された基体をTEOS蒸気にさらし、前記シリコン−酸素骨格を高密度化する工程を含む。
かかる方法によれば、シリコン−酸素骨格を高密度化することができ、酸基の導入量を増大することができる。
【0024】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記架橋構造体を形成する工程が、界面活性剤を酸で抽出する工程を含むようにしている。
これにより、高温工程を経ることなく界面活性剤を抽出することが可能となるため、シリル化工程で導入された酸基の脱離なしに界面活性剤の抽出を行うことができる。
すなわち、先にシリル化をした場合、焼成によるとメルカプト基が脱落する可能性があるが、酸で抽出することにより容易に界面活性剤を除去することができる。
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記界面活性剤の除去に先立ち、前記前駆体溶液の供給された基体をMPTMS(メルカプトプロメトキシシラン)蒸気にさらし、前記シリコン−酸素骨格をシリル化する工程を含む。
かかる方法によれば、シリコン−酸素骨格のマイクロポアにも酸基を導入することができ、プロトン伝導性の高いプロトン伝導性膜を形成することができ、酸基の導入量を増大することができる。
【0025】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記基体を多孔質カーボンで構成する。
かかる構成によれば、良好な導電性を具備し、酸素−シリコン架橋構造体との密着性も良好である。
【0026】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、前記基体を多孔質シリコンで構成する。
【0027】
また望ましくは、前記プロトン伝導性膜の製造方法において、水とエタノールと塩酸と界面活性剤と、TEOSとを含む前駆体溶液を調製する工程と、前記前駆体溶液を基体に塗布する工程と、前記界面活性剤を除去しシリコン−酸素骨格を持つ架橋構造体を形成する工程と、前記架橋構造体をシリル化し、シリコン−酸素骨格にメルカプト基をもつ架橋構造体を形成する工程と、前記架橋構造体のメルカプト基を酸化し、スルホン酸基を持つ架橋構造体を形成する工程とを含む。
この方法によれば、前駆体溶液の組成比や、シリル化、酸化の条件を制御することにより、空孔率をはじめプロトン伝導路の形成を制御することができる。これにより、メタノールとプロトンの透過性を制御することが可能となる。また、一旦メルカプト基を導入してこれを酸化することにより、スルホン酸基の導入密度を高めることができる。
【0028】
また望ましくは、基体に前駆体溶液を供給する工程は、基体を前記前駆体溶液に浸せきし、所望の速度で引き上げる工程を含むことを特徴とする。
【0029】
また望ましくは、前記供給する工程は、前記前駆体溶液を基体上に順次繰り返し塗布する工程であることを特徴とする。
更に望ましくは、前記供給する工程は、前記前駆体溶液を基体上に滴下し、前記基板を回転させる回転塗布工程であることを特徴とする。
上記方法によれば、膜厚や空孔径を調整することにより、メタノール透過性およびプロトン伝導性を容易に調整可能であり、生産性よくプロトン伝導性膜を形成することが可能となる。
また本発明の方法では、シリル化工程と焼成工程とを繰り返す回数を調整することにより、さらなる空孔径の調整を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明してきたように、本発明によれば、空孔の内壁をシラノール基で修飾した強固な金属−酸素骨格をもつ架橋構造体で構成されているため、骨格構造自体が強固であり、膨潤することもない。また、空孔径を小さくするとともに、一定に維持することができ、またプロトン伝導性を低下させることなく、メタノールのクロスオーバーを低減し、信頼性の高いプロトン伝導性膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に係るプロトン伝導性膜の一実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
実施の形態1
本実施の形態のプロトン伝導性膜は、図1に模式図を示すように、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、円柱状の空孔が膜の厚さ方向に沿って配列され、この内壁がシラノール基で覆われたプロトン伝導路3を構成するメゾポーラス薄膜で構成されたことを特徴とする。このシラノール基の存在により、プロトン伝導路3を構成する空孔の孔径が小さくなっており、メタノール透過性を低下することができる一方でプロトン伝導性の低下を招くこともない。
図2(a)はシラノール基の付加過程を示す拡大模式図であり、プロトン伝導路3となる円柱状の空孔内にシラノール基が導入されており、孔径を縮小してメタノールのクロスオーバーを防止するとともに、プロトン伝導性を高めている。
次に、このプロトン伝導性膜を用いた燃料電池の電極−電解質接合体(MEA)を形成する方法について説明する。図3(a)乃至(f)はその工程説明図、図4はプロトン伝導性膜を形成する工程のフローチャートである。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、比抵抗5×1018cm−3の(100)面を主表面とするn型シリコン基板11を用意する。
続いて、図3(b)に示すように、このシリコン基板11の裏面側にセル形成領域に開口を有するレジストパターンを形成し、83℃のTMAH溶液を用いた異方性エッチングにより所望の深さまでエッチングし、肉薄部を形成するための開口12を形成する。
この後、図3(c)に示すように、シリコンの陽極酸化を行い空孔径10nm〜1μmの肉薄部となったシリコン基板11の全体を多孔質シリコン13とする。
【0033】
さらに、この多孔質シリコン13上に、シリコン基板表面に垂直となるように円柱状の空孔が周期的に配列されたメゾポーラスシリカ薄膜(プロトン伝導性膜)を形成する。
【0034】
メゾポーラスシリカ薄膜の形成に際しては、まずシリカ誘導体としてTEOS(テトラエトキシシラン)と、界面活性剤として陽イオン型のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(C16TAB:C1633(CHBr)と、酸触媒としての塩酸(HCl)とを、H2O/Et−OH(水―アルコール)混合溶媒に溶解し、混合容器内で、前駆体(プレカーサー)溶液を調整する。この前駆体溶液の仕込みのモル比を、H2O:Et−OH:HCl:C16TAB:TEOS=100:25:0.7:0.9として混合し、この混合溶液を図3(b)に示すように多孔質シリコン13の形成されたシリコン基板表面にスピナを用いて塗布し(図4ステップ101)、90℃で5分乾燥する(図4ステップ102)ことによりシリカ誘導体を加水分解重縮合反応で重合させて(予備架橋工程)、界面活性剤の周期的な自己凝集体を形成する。
【0035】
この自己凝集体はC1633(CHBrを1分子とする複数の分子が凝集してなる棒状のミセル構造体を形成し、高濃度化により凝集度が高められるにつれてメチル基の脱落した部分が空洞化し、空孔が配向してなる架橋構造体が形成される。
そして、水洗、乾燥を行った後、500℃の窒素雰囲気中で6時間加熱・焼成し(図4ステップ103)、鋳型の界面活性剤を完全に熱分解除去して純粋なメゾポーラスシリカ薄膜を形成する。そして180℃のMPTMS蒸気で4時間処理し(図4ステップ104)、メルカプト基を結合せしめられたシリコン−酸素架橋構造体を形成する。こののち30%の過酸化水素中で30分の熱処理を行い(図4ステップ105)乾燥する(図4ステップ106)。
そしてさらにこの空孔内をトリメチルエトキシシランを用いて修飾し、図2に示すように、シリル化し、シリル基を形成し、これを873Kで焼成し有機基の分解を行うことにより、シラノール基を形成した。
【0036】
このようにして、図3(d)に示すようにプロトン伝導性膜14が形成される。このプロトン伝導性膜は、膜の厚さ方向に沿って円柱状の空孔が配列された構造を形成している。
図1はこの状態での断面状態を示す構造説明図である。この図からあきらかなように空孔が円柱状に形成され、かつ多数の空孔を含む骨格構造を有するポーラスな薄膜が形成されていることがわかる。
【0037】
こののち、白金担持カーボン、5質量%のナフィオン(登録商標)溶液、エタノールを混合し超音波で分散し懸濁液Aを作成した。上記多孔質シリコン13の裏面側にこの懸濁液を接触させて、他方の側に0.1M過塩素酸水溶液Bを配し電圧を印加し、図5に示すように電気泳動法により触媒層15を形成する。このとき懸濁液中において、ナフィオン(登録商標)は多孔質シリコン13表面に付着し分散剤として働き、白金を含む触媒層15が形成される。
【0038】
さらに、図3(e)に示すように、前記プロトン伝導性膜14の表面側にも同様にして触媒層16を形成する。
そして、図3(f)に示すように、電極層17を形成する。
【0039】
このようにしてMEAが形成される。このMEAに拡散電極(図示しない)を装着しDMFC形燃料電池が形成される。
この構造では、プロトン伝導性膜が内壁にシラノール基が形成された円柱状の空孔が規則的に配列されたシリコン−酸素架橋構造体で構成されているため、機械的強度が高く、膨潤を生じることもない。また、空孔がシラノール基で覆われ、空孔径が小さくなっている上、膨潤を生じないため、メタノールクロスオーバーもほとんどなくプロトン伝導性を維持することができ、高効率で信頼性の高いものとなる。
なお焼結に先立ちTEOS蒸気処理を行い、焼成時の体積収縮を低減しシリカ骨格を強固にすることにより、機械的強度のさらなる向上をはかることができる。
また、前記実施の形態では、シリコン−酸素結合を含む架橋構造体を主成分とする無機構造体でプロトン伝導性膜を構成したが、シリコン−酸素骨格中に有機基を含む有機―無機ハイブリッド構造の架橋構造体を用いても良い。
さらに、前記実施の形態では、図2(a)に示すように、シラノール基により空孔内壁を修飾したが、図2(b)に示すように、燐酸基により修飾してもよい。
【0040】
次に、このプロトン導電性膜の特性を、X線回折(XRD)、FT−IR、FRA、メタノール(MeOH)吸着実験、N2吸着実験により検証した。
前記実施の形態1で示したシラノール基により空孔内壁を修飾したものに加え、同様にしてシリル基による修飾に代えて燐酸基により空孔内壁を修飾したものとを作成した。
この検証結果について説明する。(ii)シラノール基により空孔内壁を修飾したものと、(i)燐酸基により空孔内壁を修飾したものとを作成し、検証した。
【0041】
(i)(ii)の方法で合成した薄膜のXRDを図6(a)および(b)に示す。aは塗布後、bはVI処理後、cは焼成後、dは燐酸処理後、eは焼結後、fはシリル化処理後、gはシリル化後焼成したものを示す。(i)(ii)共にスピンコーティング後にヘキサゴナル構造に起因すると考えられるピークが確認され、シリル化処理、リン処理を行っても規則的構造が維持されることがわかった。
【0042】
(i)リン酸基による空孔修飾
合成した試料を用いてMeOH吸着実験を行った。この結果を図7に示す。焼成後、180℃燐酸処理6時間、180℃燐酸処理24時間後のMeOH吸着量を示す。この結果、リン処理の時間を増加させていくと焼成後に比べてMeOH吸着量が減少している事が確認された。これは空孔内をリンで修飾することにより空孔径、空孔体積が減少したためであると考えられる。これを確認するために、N2吸着実験を行い、空孔径を測定したところ空孔径はリン処理前後でそれぞれ約2nm、1.5nmであった。この結果から、リン処理によって空孔内がリンによって修飾されていることがわかる。この結果はMeOH吸着実験の結果と一致する事がわかった。
次にイオン伝導度の測定結果を図8に示す。横軸はリン処理時間、縦軸はイオン伝導度を示しているが、処理時間とイオン伝導度の相関性を見出すことはできなかった。またデータの再現性も乏しかった。これはサンプルにクラックが存在するなど膜質の違いが大きく影響していると考えられる。
【0043】
(ii) シリル化による空孔修飾
合成した試料のIRスペクトルを図9に示す。1100cm−1、2900cm−1、3300cm−1付近にそれぞれSi−O−Si、C−H、−OHに起因する吸収バンドが確認された。この結果から、シリル化を行うとC−H結合のバンドが現れ、−OH結合のバンドが消失することが確認された。シリル化後の薄膜を焼成すると逆の現象が起こる。つまり、シリル化により空孔内に有機基が導入され、疎水化されるために−OH基が減少しそれを高温焼成することによって有機基が分解され−OH基が増加したものと考えられる。この傾向はシリル化を2回行った場合も同じであった。
【0044】
次に、MeOH吸着実験の結果を図10に示す。リン処理の場合と同様に、空孔内を有機基で修飾することでMeOH吸着量の減少が確認された。さらに、シリル化を2回繰り返すことによりさらに吸着量が減少することが確認された。このことからシリル化を繰り返すことで空孔径が減少したためであると考えられる。そこでN吸着測定を行い、空孔径分布を測定した。
【0045】
その結果、空孔径はシリル化を1回、2回行った場合について、それぞれ2nm、1.7nmであった。これは、シリル化を行うことにより空孔内に有機基が導入され、高温焼成で有機基を分解し、分解された部分をさらに修飾することで空孔径が徐々に減少していったものと考えられる。この方法で合成した薄膜のイオン伝導度を図11,12に示す。これはシリル化を行った後の焼成前後のイオン伝導度である。ここからシリル化後の高温焼成を行った場合の方が行わなかった場合よりも伝導度が全体的に向上していることがわかる。これはシリル化後の高温焼成によって有機基が分解され、イオン伝導性を有する−OH基に変化したためであると考えられる。また図12からもその傾向を読み取ることができる。この傾向はシリル化を繰り返し行っても同様であることが確認された。
【0046】
合成したメソポーラスシリカ薄膜の空孔内をリンまたは有機基で修飾し、種々のキャラクタリゼーションを行った。どちらの方法においても修飾を行うことで、空孔径やMeOH吸着量の減少が確認された。今、また、今回粉末試料はテンプレートにC16TABを用いたが、Brij30を用いて合成した試料は違う挙動を示す可能性も考えられるため、Brij30を用いた粉末試料の合成を試みたこれによっても同様の必要がある。リンで修飾した薄膜については、今回処理時間と電気伝導度の間に相関性は十分に確認できなかった。また有機基で修飾したものについては、シリル化後に高温焼成を行うことにより−OH基が増加し電気伝導度が向上する。しかし、電気伝導度測定実験においてはやや再現性に問題がある。
【0047】
実施の形態2
なお、前記実施の形態1では、焼成後にシリル化を行ったが、本実施の形態では、図13にフローチャートを示すように、焼結による界面活性剤の抽出に先立ち、シリル化を行いシリコン−酸素骨格中に酸基(メルカプト基)を導入し、この後、塩酸で界面活性剤を抽出するようにしたことを特徴とするものである。
図13にフローチャートを示すように、まず界面活性剤として陽イオン型のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(C16TAB:C1633(CHBr)と、シリカ誘導体としてTEOS(テトラエトキシシラン)と、酸触媒としての塩酸(HCl)とを、HO/Et−OH(水―アルコール)混合溶媒に溶解し、混合容器内で、前駆体(プレカーサー)溶液を調整する。この前駆体溶液の仕込みのモル比を、HO:Et−OH:HCl:C16TAB:TEOS=100:76:5:0.5:3として混合し、この混合溶液を図14に示すように多孔質シリコン13の形成されたシリコン基板表面にスピナを用いて塗布し(図13ステップ201)、90℃で5分乾燥する(図13ステップ202)ことによりシリカ誘導体を加水分解重縮合反応で重合させて(予備架橋工程)、界面活性剤の周期的な自己凝集体を形成する。
【0048】
この自己凝集体はC1633(CHBrを1分子とする複数の分子が凝集してなる球状のミセル構造体を形成し、高濃度化により凝集度が高められるにつれてメチル基の脱落した部分が空洞化し、空孔が配向してなる架橋構造体が形成される。
そして、MPTMS蒸気にさらし、シリコン−酸素骨格中にも酸基を導入し(図13ステップ203)、水洗、乾燥を行った後、塩酸で界面活性剤を抽出し(図13ステップ204)、鋳型の界面活性剤を完全に分解除去して純粋なメゾポーラスシリカ薄膜を形成する。そして再度180℃のMPTMS蒸気で4時間処理し(図13ステップ205)、メルカプト基を結合せしめられたシリコン−酸素架橋構造体を形成する。こののち30%の過酸化水素中で30分の熱処理を行い(図13ステップ206)乾燥する(図13ステップ207)。
【0049】
この方法により、前記実施の形態1の効果に加え、界面活性剤の除去に先立ち酸基を導入することにより、より、酸基を多く含有するようにすることができ、反応性の高いプロトン伝導性膜を得ることができる。
【0050】
なお、前駆体溶液の組成については、前記実施の形態の組成に限定されることなく、溶媒を100として、界面活性剤0.01から0.1、シリカ誘導体0.01から0.5、酸触媒0から5とするのが望ましい。かかる構成の前駆体溶液を用いることにより、筒状の空孔を有する膜を形成することが可能となる。
【0051】
また、前記実施の形態では、界面活性剤として陽イオン型のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB:C1633(CHBr-)を用いたが、これに限定されることなく、他の界面活性剤を用いてもよいことは言うまでもない。
【0052】
ただし、触媒としてNaイオンなどのアルカリイオンを用いると半導体材料としては、劣化の原因となるため、陽イオン型の界面活性剤を用い、触媒としては酸触媒を用いるのが望ましい。酸触媒としては、HClの他、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)、燐酸(HPO)、HSO等を用いてもよい。
【0053】
またシリカ誘導体としては、ハイドロジェンシロセスコクサン(HSQ:Hydrogen silosesquioxane)やメチルシルセスキオキサン(MSQ:Methyl silsesquioxane)に限定されることなく、4員環以上のシロキサン骨格を有する材料であればよい。
【0054】
また溶媒としては水H2O/アルコール混合溶媒を用いたが、水のみでもよい。
さらにまた、焼成雰囲気としては窒素雰囲気を用いたが、減圧下でもよく、大気中でもよい。望ましくは窒素と水素の混合ガスからなるフォーミングガスを用いることにより、耐湿性が向上し、リーク電流の低減を図ることが可能となる。
また、界面活性剤、シリカ誘導体、酸触媒、溶媒の混合比については適宜変更可能である。
【0055】
さらに、予備重合工程は、30から150℃で1時間乃至120時間保持するようにしたが、望ましくは、60から120℃、更に望ましくは90℃とする。
また、焼成工程は、500℃6時間としたが、250℃から500℃で1乃至8時間程度としてもよい。望ましくは350℃から450℃6時間程度とする。
【0056】
なお同じ処理をしても界面活性剤があるときとないときとでは結果が異なる。つまりMPTMS処理を界面活性剤の除去に先立ちおこなう工程(ステップ203)ではマイクロポア(孔)に界面活性剤が存在するのでシリル化剤はシリカ内部に浸透し、修飾する。一方界面活性剤除去後のMPTMS処理工程(ステップ205)ではシリル化剤は孔を拡散し空孔表面を修飾する。)
【0057】
実施の形態3
なお、前記実施の形態1では、触媒層の形成を電気泳動法により、行ったが、本実施の形態では、図14(a)乃至(g)に工程図を示すように、めっきにより、行っても良い。
図14(a)乃至(c)に示すように、シリコン基板11を肉薄化して多孔質シリコン13を形成する工程までは前記実施の形態1と同様に処理する。
この後、図14(d)に示すように、多孔質シリコン13上に、めっき法により白金を含む金属からなる触媒層25を形成する。
【0058】
この後、図14(e)に示すように、前記実施の形態1と同様にして、シリコン基板表面に垂直となるように内壁がシラノール基で修飾された円柱状の空孔が周期的に配列されたメゾポーラスシリカ薄膜(プロトン伝導性膜)24を形成する。
さらにこの後、図14(f)に示すように、プロトン伝導性膜24上に、めっき法により白金を含む金属からなる触媒層26を形成する。
【0059】
この触媒層の上層に図14(g)に示すように、カーボン粒子を含むペーストを塗布し、焼成することにより電極層27を形成する。
このようにしてMEAが形成される。
【0060】
実施の形態4
なお、前記実施の形態1では、メゾポーラスシリカ薄膜の形成は、スピンコート法によって形成したが、スピンコート法に限定されることなく、浸漬法を用いてもよい。
すなわち、まず界面活性剤として陽イオン型のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB:C1633(CHBr)と、シリカ誘導体としてハイドロジェンシロセスコクサン(HSQ:Hydrogen silosesquioxane)と、酸触媒としての塩酸(HCl)とを、HO/アルコール混合溶媒に溶解し、混合容器内で、前駆体(プレカーサー)溶液を調整する。この前駆体溶液の仕込みのモル比は、溶媒を100として、界面活性剤0.5、シリカ誘導体0.01酸触媒2として混合し、この混合溶液内に多孔質シリコン13の形成されたシリコン基板11を浸漬し、混合容器を密閉したのち、30から150℃で1時間乃至120時間保持することによりシリカ誘導体を加水分解重縮合反応で重合させて(予備架橋工程)、界面活性剤の周期的な自己凝集体を形成する。
【0061】
この自己凝集体はC1633(CHBrを1分子とする複数の分子が凝集してなる球状のミセル構造体を形成し、高濃度化により凝集度が高められるにつれてメチル基の脱落した部分が空洞化し、空孔が配向してなる架橋構造体が形成される。
そして基板を引き上げ、水洗、乾燥を行った後、400℃の窒素雰囲気中で3時間加熱・焼成し、鋳型の界面活性剤を完全に熱分解除去して純粋なメゾポーラスシリカ薄膜を形成する。
【0062】
実施の形態5
なお、前記実施の形態1では、メゾポーラスシリカ薄膜の形成は、スピンコート法によって形成したが、スピンコート法に限定されることなく、ディップコート法を用いてもよい。
すなわち、調整された前駆体溶液の液面に対して基板を垂直に1mm/s乃至10m/sの速度で下降させて溶液中に沈め、1秒間乃至1時間静置する。
そして所望の時間経過後再び、基板を垂直に1mm/s乃至10m/sの速度で上昇させて溶液から取り出す。
そして最後に、前記第1の実施の形態と同様に、焼成することにより、界面活性剤を完全に熱分解、除去して純粋なデュアルポーラスシリカ薄膜を形成する。
【0063】
また本発明の実施の形態では、円柱状の空孔が周期的に配列されたメゾポーラス薄膜を用いたが、空孔の径、配列については前記実施の形態に限定されることなく変更可能である。
【0064】
その他触媒としてはC16TABのほかBrij30(C1225(OCHCHOH)等も適用可能である。
また界面活性剤をプルオニック(Pluronic F127:商標)とすることにより3次元空孔構造の薄膜を形成することも可能である。
また、前記実施の形態ではシリコン−酸素結合を持つ架橋構造体について説明したが、この他チタン−酸素架橋構造体などの金属−酸素架橋構造体を含むものも適用可能である。
さらにまた、シリコン−酸素架橋構造体に結合され、プロトン伝導(イオン伝導)を担う酸基としては、スルホン酸の他、燐酸(HPO)、過塩素酸(HClO)を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明してきたように、本発明は、DMFC形燃料電池への適用に有効であり、携帯電話、ノートパソコンなどの小型機器用の電源として有効利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態の方法で形成したプロトン伝導性膜の構造を示す模式図
【図2】同プロトン伝導性膜の要部拡大説明図
【図3】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜を用いた燃料電池の製造工程を示す図
【図4】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜の形成工程を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における電気泳動法を示す構造説明図
【図6】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜の面間隔を測定した結果を示す図(燐酸処理)(シリル化処理)
【図7】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜の燐酸処理のメタノール吸着量を測定した結果を示す図
【図8】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜のシリル化処理のメタノール吸着量を測定した結果を示す図
【図9】本発明の実施の形態1のプロトン伝導性膜のFT−IRスペクトルの測定結果を示す図
【図10】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜のシリル化および焼成後のメタノール吸着量の測定結果を示す図
【図11】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜のシリル化前後における導電性の測定結果を示す図
【図12】本発明の実施の形態1におけるプロトン伝導性膜の繰り返しシリル化を行った場合の導電性の測定結果を示す図
【図13】本発明の実施の形態2のプロトン伝導性膜の形成工程を示すフローチャート
【図14】本発明の実施の形態3におけるプロトン伝導性膜を用いた燃料電池の製造工程を示す図
【符号の説明】
【0067】
1 パーフルオロ基
2 スルホン酸基
3 プロトン伝導路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空
孔が周期的に配列されたメゾポ−ラス薄膜からなり、前記空孔の内壁が修飾基で被覆されているプロトン伝導性膜。
【請求項2】
請求項1に記載のプロトン伝導性膜であって、前記架橋構造体はシリコン―酸素結合を
主成分とするプロトン伝導性膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロトン伝導性膜であって、前記修飾基はシラノール基であるプロトン伝導性膜。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプロトン伝導性膜であって、前記修飾基はP−OH基であるプロトン伝導性膜。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のプロトン伝導性膜であって、前記修飾基は多岐構造であるプロトン伝導性膜。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のプロトン伝導性膜を用いた燃料電池。
【請求項7】
金属-酸素誘導体と界面活性剤を含む前駆体溶液を調製する工程と、
前記前駆体溶液を架橋し、架橋構造体を形成する架橋工程と、
前記架橋工程で得られた架橋構造体から、前記界面活性剤を分解除去し、
少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素骨格を持つ架橋構造体を主成分とし、空
孔が周期的に配列されたメゾポ−ラス薄膜を形成する除去工程と、
前記空孔の表面に修飾基を付加する工程とを含むプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプロトン伝導性膜の製造方法であって、
前記付加する工程は、
前記メゾポ−ラス薄膜をシリル化し、前記空孔の表面をシリル基で修飾する工程と、
前記メゾポ−ラス薄膜を焼成し、前記空孔の表面のシリル基をシラノール基とする焼成工程とを含むプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のプロトン伝導性膜の製造方法であって、
前記付加する工程は、
前記メゾポ−ラス薄膜を燐酸処理し、前記空孔の表面をP−OH基で修飾する工程と、
前記メゾポ−ラス薄膜を焼成し、前記空孔の表面をP−OH基とする焼成工程とを含むプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の製造方法であって、
前記付加する工程は、
前記修飾する工程と前記焼成する工程とを複数回含み、
前記空孔径が所望の値となるように孔径を制御するようにしたプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のプロトン伝導性膜の製造方法であって、
前記修飾する工程は、前記空孔表面にトリメチルエトキシシラン蒸気を接触させる工程を含むプロトン伝導性膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−196290(P2006−196290A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6097(P2005−6097)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】