説明

プロバイオティクス経口剤形

種々の保存条件下で安定性が増強したプロバイオティクス組成物が提供される。前記プロバイオティクス組成物の安定性は、種々の薬剤および賦形剤を添加することにより増強される。プロバイオティクス組成物の安定性増強に使用される場合がある薬剤および賦形剤の例には、糖アルコールであるマンニトール、ソルビトールおよびラクチトールなどのプレバイオティクス、ならびに/またはオリゴマープロアントシアニジン(OPC)などの植物性栄養素が含まれる。プロバイオティクス組成物は、錠剤、カプレット剤、およびカプセル剤などの経口剤形として配合される場合もあれば、チューインガムとして、または水、牛乳、ジュース、もしくはヨーグルトなどの液体に溶解する粉末として製造される場合もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプロバイオティクス製剤に関し、より具体的には保存条件下で安定性を維持するプロバイオティクス経口剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(「GI」)管は、宿主の粘膜内層が、内壁に住むまたは内壁に付着する数十億の微生物と共存する、微小生態系である。胃腸管に住む微生物には「プロバイオティクス(probiotic)」細菌があり、宿主生物の胃腸管の健康維持に役立つ。宿主の胃腸管内では、プロバイオティクス細菌に住処と援助、そして大量の食物基質が与えられる代わりに、プロバイオティクス細菌は宿主に種々の潜在的な治療用途を提供する。これらの用途としては、抗生物質によって破壊される腸内細菌の置換、消化促進および病原菌の抑制、特にロタウイルス(通常小児下痢症を引き起こすウイルス)由来の下痢(感染性下痢症を含む)の予防および治療、胃腸管中の「悪性」生物の過成長(下痢を発症する傾向があり、抗生物質の使用によって起こり得る状態)の治療、過敏性腸症候群および場合によっては炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)の症状の緩和、腟酵母菌感染、尿路感染および膀胱炎(膀胱の炎症)の再発の予防および/または抑制、ラクトース不耐症者のラクトース吸収消化の改善、ならびに免疫応答の増強が含まれる。プロバイオティクスが多くの有益な用途を有することから、当該技術分野ではプロバイオティクス補助食品が必要とされている。
【0003】
補助食品に含まれる場合があるプロバイオティクスには、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.ブルガリクス(L.bulgaricus)、L.カゼイ(L.casei)、L.ファーメンタム(L.fermentum)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、B.インファンティス(B.infantis)、B.アニマリス亜種ラクティス(B.animalis subsp.lactis)、B.ロンガム(B.longum)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、およびE.フェシウム(E.faecium)があり、これらはすべてヒトの胃腸管および膣管に存在する。ラクトバチルス菌種は、腸管内のラクトースおよび他の単糖を吸収して乳酸を産生するグラム陽性乳酸菌であり、乳酸は、臓器のPHを低下させて、有害な細菌の成長に不利な臓器環境を作り出す有益な効果を有する。ビフィドバクテリウム菌種は、母親から授乳を受ける新生児の無菌の大腸にコロニーを形成する最初の微生物種である。ビフィドバクテリウムは、他の場合では有害な細菌が繁殖に使用する栄養素を消化するために、込み合いの機序を使用する。プロバイオティクス補助食品は、各補助食品につき最高で約100億のコロニー形成単位を有する場合がある。
【0004】
L.アシドフィルスは、特に抗菌物質(すなわち天然の抗生物質)であるアシドリン、アシドフィリン、ラクトシジン、およびバクテリオシンを産生するというさらなる有益な効果を有し、これらの物質により、カンジダ菌などの真菌や、有害な菌種である大腸菌、黄色ブドウ球菌、およびサルモネラ菌に対する免疫系の耐性が増強される。
【0005】
L.ブルガリクスは、タンパク質および乳製品の消化率を向上させて、天然の抗生物質の産生を助け、全腸炎などの胃腸疾患の治療に使用されている。
【0006】
L.カゼイは、病原性リステリア菌に対する保護活性を有することが明らかになっている。
【0007】
L.ファーメンタムは、乳児の免疫細胞がヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)に感染するのを予防することが明らかになっている(Karla Gale,Reuters Health,May 25,2004,http://pronutrition.org/archive/200406/msg00002.php)。
【0008】
L.プランタルムは、天然の抗生物質であるラクトリンの産生を助け、L−リジンを合成する。
【0009】
L.サリバリウスは、口腔およびガムに最も多く存在する通性細菌(すなわち、嫌気性および好気性の両環境下で生存し、成長する菌種)である。L.サリバリウスは、プロバイオティクスとしての利点をいくつか有する。すなわち、この菌種は、未消化のタンパク質を分解して、タンパク質の腐敗によって発生する毒素を分離する能力を有し、潰瘍の原因であることが知られているヘリコバクターピロリの予防および除菌に有用であり、またこの菌種の集団が20分ごとに倍増することから、患者へのプロバイオティクス投与量をより少量にすることによって、プロバイオティクスの使用に経済的な利点を加えることが可能となる。
【0010】
L.ラムノサスは、幅広い温度およびPH値にわたって優れた安定性を有しており、湿疹や食物アレルギーを持つ個体の過敏性反応や腸の炎症を軽減する。
【0011】
B.アニマリスは、腸粘膜を保護する役割を果たすプロバイオティクス細菌である。B.アニマリスには、B.アニマリス亜種アニマリスとB.アニマリス亜種ラクティスという2種類の亜種が存在し、これらの亜種はいずれも、2004年まではB.アニマリスとB.アニマリス亜種ラクティスと呼ばれていた(非特許文献1)。B.アニマリス亜種アニマリスは嫌気性環境下においてのみ成長し、牛乳培養物中で増殖できないためプロバイオティクスとして有用ではない。対照的に、B.アニマリス亜種ラクティスは、高い酸素耐性を有し、大量のギ酸塩を産生することを特徴とした乳酸菌であり、牛乳培養物中でよく成長することから、有用なプロバイオティクスである。B.アニマリス亜種ラクティスは、授乳を受けていない新生児にビフィドバクテリウムが十分なコロニーを形成するように特殊調整粉乳に添加されており、ヨーグルト培養物に含まれる唯一のビフィドバクテリウム菌種である。
【0012】
B.ビフィダムは、例えば二価鉄イオンなど、多くの有害な細菌種が増殖に必要とする栄養素を消費することにより、有害な菌種であるサルモネラ菌、リステリア菌、赤痢菌、大腸菌およびウェルシュ菌の増殖を阻害する。B.ビフィダムはまた、いくつかのビタミンを合成し、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛などの無機質の吸収を助ける。
【0013】
B.インファンティスは、母親から授乳を受ける新生児の無菌の胃腸管にコロニーを形成する最初のプロバイオティクスである。人工栄養の乳児の場合、このプロバイオティクスは、新生児が適切な腸管内菌叢を有するように栄養補助食品の形態で投与することができる。
【0014】
B.ロンガム次亜種ロンガム(B.ロンガムと呼ぶ)は、腸管からの硝酸塩の除去が可能であることが明らかになっている。
【0015】
S.サーモフィルスは、ラクターゼ活性を起こし、牛乳中のラクトースの消化を促進する。
【0016】
E.フェカリスおよびE.フェシウムは、いずれも大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌、およびクロストリジウムなどの腸管病原体に対して抑制効果を有する乳酸菌である。
【0017】
特許文献1(Gehrmanら)では、室温で安定性を有する乾燥状の生きたラクトバチルス細胞の製造にヒマワリ油を液体懸濁溶媒として使用することについて教示されている。
【0018】
特許文献2(Fordら)では、抗菌剤およびマイクロカプセル化したラクトバチルス菌(これらの菌は、抗菌剤の作用から保護するためにマイクロカプセル化される)の生菌コロニーを含有する腟坐薬について教示されている。
【0019】
特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6(すべてFordら)では、各単位服用量につき10個のマイクロカプセル化した生存ラクトバチルスを有する、哺乳類への経口投与および局所投与のためのマイクロカプセル化したラクトバチルス菌について教示されている。
【0020】
特許文献7(Ranganathanら)では、尿素およびアンモニアをアミノ酸に代謝することが可能な、ラクトバチルスおよびビフィダム菌種などのマイクロカプセル化および/または腸溶コーティングしたプロバイオティクスについて教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,518,696号明細書
【特許文献2】米国特許第5,466,463号明細書
【特許文献3】米国特許第5,614,209号明細書
【特許文献4】米国特許第5,633,012号明細書
【特許文献5】米国特許第5,635,202号明細書
【特許文献6】米国特許第5,733,568号明細書
【特許文献7】米国特許第6,706,287号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Mascoら、INT’L J SYST EVOL BIOL(2004)54:1137−1143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
市販されるプロバイオティクス製剤の多くの欠点は、製剤の貯蔵寿命が短い点であり、従って、例えばラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムなどのプロバイオティクス細菌の生菌コロニーを有するプロバイオティクス製剤の貯蔵寿命を改善することが、当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、保存条件下におけるプロバイオティクスの安定性を最大にする1つ以上の薬剤および/または賦形剤を含むプロバイオティクス組成物を供給することによって、当該技術分野における必要性を克服する。
【0025】
本発明の一実施形態においては、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも2つの糖アルコールを含む担体中に少なくとも1つのプロバイオティクス種を含む組成物が提供される。
【0026】
本発明の別の実施形態においては、プロバイオティクス組成物の安定性を増強する方法であって、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも2つの糖アルコールを含む担体と、少なくとも1つ以上のプロバイオティクス種を組み合わせることを含む、方法が提供される。
【0027】
本発明の組成物および方法において、担体はさらに崩壊剤、流動促進剤(glidant)、および/または滑沢剤も含む場合がある。崩壊剤は、例えばクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジェランガム(gellan gum)、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、およびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される崩壊剤などのいずれかの適切な崩壊剤である場合がある。流動促進剤は、例えば二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、およびタルクからなる群より選択される流動促進剤などのいずれかの適切な流動促進剤である場合がある。滑沢剤は、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、および植物系脂肪酸からなる群より選択される滑沢剤などのいずれかの適切な滑沢剤である場合がある。本発明の組成物および方法において、担体は、組成物中に約30重量/重量%〜約98重量/重量%の範囲で含まれる(この重量パーセンテージは、担体中に存在する全成分を考慮に入れた累積的な重量パーセンテージである)。
【0028】
本発明の組成物および方法において、プロバイオティクスは、例えばラクトバチルス・アシドフィルス、L.ブルガリクス、L.カゼイ、L.パラカゼイ、L.ファーメンタム、L.プランタルム、L.ラムノサス、L.サリバリウス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、B.インファンティス、B.アニマリス亜種ラクティス、B.ロンガム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、エンテロコッカス・フェカリス、およびE.フェシウムからなる群より選択されるプロバイオティクスなどのいずれかのプロバイオティクス種である場合がある。また、プロバイオティクス種の組み合わせは、例えばL.アシドフィルスとB.アニマリス亜種ラクティスの組み合わせなど、本発明の組成物および方法の下で企図される。本発明の組成物および方法の下で企図されるプロバイオティクスの濃度は、各剤形につき約10〜約1010コロニーの範囲内であり、この濃度は、組成物中に存在する各プロバイオティクスの個々の濃度範囲である。
【0029】
本発明の組成物および方法において、組成物はさらに植物性栄養素(phytonutrient)も含む場合があり、例えば、植物性栄養素は、カテキン、ポリフェノール、およびオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)から選択される。植物性栄養素がOPCである場合、これはブドウ種子またはマツ樹皮から得られ、約0.5重量/重量%〜約10重量/重量%の範囲内で組成物中に組み込まれる場合がある。
【0030】
本発明の組成物および方法において、組成物はさらにビタミン、食事性無機質、および/または微量無機質も含む場合がある。ビタミンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(ラミステロール(lamisterol))、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(ジヒドロタキステロール)、ビタミンD(7−デヒドロシトステロール)、ビタミンE(トコフェロール)、およびビタミンK(ナフトキノン)からなる群より選択される場合がある。食事性無機質は、カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、および硫黄からなる群より選択される場合がある。微量無機質は、クロム、コバルト、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、および亜鉛からなる群より選択される場合がある。
【0031】
本発明の組成物は、経口剤形、液体に混合した粉末、またはチューインガムである場合がある。組成物が経口剤形である場合、経口剤形は、錠剤、カプレット剤(caplet)、およびカプセル剤からなる群より選択される場合があり、前記錠剤およびカプレット剤は固形である場合もあれば、咀嚼可能である場合もある。組成物が粉末である場合、粉末は、水、牛乳、ジュース、およびヨーグルトからなる群より選択される液体に混合される場合がある。組成物がチューインガムである場合、ガムはソフトガムである場合もあれば、ハードチューインガム錠剤である場合もある。
【0032】
本発明の発明者等は、プロバイオティクス種と、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールを単独で、またはさらに糖アルコールのラクチトールおよび/またはOPCなどの植物性栄養素とを混合することによって、プロバイオティクス製剤の安定性が種々の保存条件下で驚くほどかつ予想外に増強することを発見した。
【0033】
本発明のさらなる態様、利点および特徴は、一部は以下の説明に記載され、一部は以下の試験により当業者に明らかになるか、または本発明の実施により認識される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例11および12(表32および34)に記載するL.アシドフィルスの安定性試験の結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下は、本発明の例示的実施形態の説明である。以下に記載する定義は、単に例示的実施形態の例示を目的として提示するものであり、本発明の適用範囲を限定することを目的としたものではない。本明細書に記載の実施形態は例示的なものであることから、記載した本発明は、例示的実施形態の機能、目的および/または構造の改変が企図されるものと理解されるべきである。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、別途文脈で明記されない限り、複数の対象を含む。
【0037】
本明細書で使用される「動物」という用語は、ヒト以外の種を指し、「生物」という用語は動物とヒトの両方の種を指す。本明細書で使用される「動物」という用語は、典型的には哺乳類を指すものとして使用されるが、本用語は哺乳類に限定するものではなく、適宜哺乳類と非哺乳類の両方を含む場合がある。
【0038】
「賦形剤」という用語は、典型的には薬物または栄養補助食品用の希釈剤またはビヒクルとして使用される不活性物質を指す。
【0039】
「プロバイオティクス」という用語は、ヒトの胃腸管および膣管などの動物の器官において有益な効果を有する細菌属を指す。プロバイオティクスとして最も多く使用される細菌属は、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムであるが、S.サーモフィルスなどの他の有益な細菌種もまたプロバイオティクスである。一部のプロバイオティクスは、胃と小腸を通り抜けた後も大腸の中で生き残って、一時的に定着し、大腸の発酵能力が良好に改善される。例えば、Roberfroid,AM J CLIN NUTR 71(SUPPL):1682S−1687S(2000)を参照されたい。
【0040】
本発明の組成物で使用される場合があるプロバイオティクス種は、例えばL.アシドフィルス、L.ブルガリクス、L.カゼイ、L.パラカゼイ、L.ファーメンタム、L.プランタルム、L.ラムノサス、L.サリバリウス、B.ビフィダム、B.インファンティス、B.アニマリス亜種ラクティス、B.ロンガム、S.サーモフィルス、E.フェカリス、およびE.フェシウムなどのいずれかの既知のプロバイオティクスである場合がある。上記の一覧は、単に例示のためのものであり、本発明のプロバイオティクス組成物に含まれる場合があるプロバイオティクスを限定的に示すものではないと理解されるべきである。この点においてはまた、例えば他の既知のおよび/または利用可能なラクトバチルスまたはビフィドバクテリウム菌種などの他のいずれのプロバイオティクス種も、本発明の組成物で使用される場合がある。
【0041】
「プレバイオティクス」という用語は、例えばラクトバチルスおよび/またはビフィドバクテリウムなど、大腸内で1つ以上のプロバイオティクス種の増殖および/または活性を選択的に刺激することにより、宿主に有益な影響を与える非消化性食品成分を指す。プレバイオティクスは、消化管を通した消化に耐える化学構造を有するため、完全な分子として大腸に到達し、全身の生理学的機能を誘発し、結腸細菌叢の発酵性基質として作用することができる。プレバイオティクスの例には、フラクトオリゴ糖(例えば、チコリ、アーティチョーク、アスパラガス、タンポポ、ダリア、エンダイブ、ニンニク、リーキ、レタスおよびタマネギから抽出されるイヌリン)、トランス−ガラクトシルオリゴ糖、ガラクトシルラクトース、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクツロース、ラクチトール(糖アルコール)、および部分的に加水分解したグアーガムが含まれる。最も一般的に使用されるプレバイオティクスは、イヌリンである。イヌリンは、バクテロイデスおよびビフィドバクテリウム菌種(B.ビフィダムおよびB.ロンガムは除く)にとって良好な基質であることが明らかになっているものの、他のプロバイオティクスにとっては優れた基質とではない(Roberfroidら、NUTR.REV.51:137−146(1993))。プレバイオティクスをプロバイオティクスと混合する場合、得られる補助食品は「シンバイオティクス」と呼ばれることがある。
【0042】
本発明のプロバイオティクス組成物とともに使用される場合があるプレバイオティクスの例には、糖アルコールのラクチトールがあり、これは低カロリー食品用の代替甘味料として現在商業的に使用されている。ラクチトールは、1グラムに付き2カロリー(9キロジュール)を有し、砂糖の甘味の約40%を有する。米国食品医薬品局(「FDA」)は、ラクチトールを他の糖アルコール(プレバイオティクスである場合もあれば、プレバイオティクスでない場合もある;すなわち、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトール)とともに、「一般に安全と認められる」(「GRAS」)ものとして分類している。
【0043】
上記の通り、特定のプロバイオティクスと混合するプレバイオティクスの選択は、どのプレバイオティクスが特定のプロバイオティクスに最も適切な基質を提供するかによって決定される。特定のプレバイオティクスの使用について検討する際には、1つ以上のプレバイオティクス間の相乗効果、および/または1つ以上のプレバイオティクスと他の成分との間の相乗効果を常に考慮しなければならない。プレバイオティクスのラクチトールと、糖アルコールのマンニトールおよびソルビトールを含むOPCとの間の相乗効果については、実施例10に記載する試験において例示する。
【0044】
実施例10では、参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2003/0118642(A1)号(Normanら)に開示される炭水化物輸送系において記載した糖アルコールのマンニトールとソルビトールを、L.アシドフィルスと混合して、2つのプロバイオティクスのバッチを形成し(表27)、これらの安定性を試験した(表28)。対照として、Normanらの特許出願公開で取り上げた市販の製品であるPHARMABURST(登録商標)製品(SPI Polyols、米国デラウェア州ニューキャッスル)を、L.アシドフィルスプロバイオティクスの調製に担体として使用した。PHARMABURST(登録商標)は、糖アルコールのマンニトールとソルビトールを含む。表28に示す通り、マンニトールとソルビトールは単独では、気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下においてL.アシドフィルスを生存したまま維持することができないのに対し、表30に示す通り、気温25℃/相対湿度60%の穏やかな保存条件下においてはL.アシドフィルスを生存したまま2週間維持することができるものの、生存能力は限られたものであった。対照的に、表31および表32(実施例11)に示す通り、ラクチトールおよび/またはOPCを表29のL.アシドフィルスプロバイオティクス製剤に添加した場合、L.アシドフィルスは、乾燥剤を使用せずに気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下において2週間にわたり高水準の安定性を維持し(表32、バッチEを参照)、これにより糖アルコールのマンニトールおよびソルビトールと、プレバイオティクスのラクチトールおよび/またはOPCとの相乗効果が示された。上述より、少なくとも糖アルコールのマンニトールとソルビトールをラクチトールおよび/またはOPCと組み合わせて含むように配合したL.アシドフィルスプロバイオティクスが、長期の貯蔵寿命を有するプロバイオティクス組成物をもたらすことが示唆される。
【0045】
ラクチトールがL.アシドフィルスの安定性に対して顕著な効果を有するかどうかを判定するため、表33(実施例12)に記載の通り、L.アシドフィルスプロバイオティクス錠剤を3バッチ調製した。これらは、1つ目のバッチがL.アシドフィルスとラクチトールを含み(バッチI)、2つ目がL.アシドフィルスとPHARMABURST(登録商標)を含み(バッチJ)、3つ目がL.アシドフィルスとラクチトールとPHARMABURST(登録商標)を含む(バッチK)。表34(実施例12)の結果は、気温40℃/相対湿度75%という厳しい条件下においてラクチトール単独では、L.アシドフィルスの安定性を維持するのに有効でないのに対し、PHARMABURST(登録商標)単独の場合、および比較的低重量パーセントのPHARMABURST(登録商標)とラクチトールとを組み合わせた混合物の場合では、2週間後にL.アシドフィルスの生菌コロニーが一部確認されたことを示している。バッチE(表32)とバッチI、JおよびK(表34)の安定性試験の結果を比較した対数グラフを図1に示す。グラフに示す通り、気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下に2週間置いたところ、ラクチトール100%の場合はL.アシドフィルスを安定化させることがなく、PHARMABURST(登録商標)100%の場合は、L.アシドフィルスの限定的な生存能力を示した。PHARMABURST(登録商標)10%とラクチトール90%の組み合わせの場合は、L.アシドフィルスの限定的な生存能力を示し、PHARMABURST(登録商標)87%とラクチトール13%の組み合わせの場合は、L.アシドフィルスの顕著な生存能力を示した。図1に示す安定性試験の結果は、最適な比率であれば、PHARMABURST(登録商標)成分とラクチトールとの間に相乗効果が生じることを示唆している。
【0046】
「植物性栄養素」という用語は、植物性栄養素を摂取する生物(すなわち、動物またはヒト)の健康に対して有益な効果を有する植物原料由来の栄養素を指す。植物性栄養素は、生物の通常の代謝に必要とされないという点で栄養素とは異なる。多くの植物性栄養素は、果物や野菜に明るい色にする抗酸化剤である。例えば、ルテインはトウモロコシの黄色を、リコピンはトマトの赤色を、カロチンはニンジンのオレンジを、アントシアニンはブルーベリーの青色を作り出す。植物性栄養素の明るい色と抗酸化特性はいずれも、単結合の炭素と二重結合の炭素を交互に有することによる。本発明のプロバイオティクス製剤に含まれる場合がある植物性栄養素には、お茶に含まれるカテキン、ブドウ皮、リンゴ皮およびオレンジ皮などの果皮に含まれるポリフェノール、ならびに果実、野菜、ナッツ、種子、花および樹皮に含まれるが、一般的にはブドウ種子および/またはマツ樹皮から抽出されるオリゴメリックプロアントシアニジン(「OPC」)が含まれるが、これらに限定されない。OPCの単離については、米国特許第3436407号および第4698360号(いずれもMasquelierら)に記載されている。実施例11の表31および表32(バッチH)は、OPC(ラクチトール無)を上記文献に記載のL.アシドフィルスプロバイオティクス組成物に添加すると、L.アシドフィルスの安定性が、乾燥剤を使用せずに気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下で2週間にわたりきわめて高水準に維持されたことを示している。本発明の状況の範囲内において、OPCは、例えば約0.05重量/重量%〜約25重量/重量%などの広い範囲でプロバイオティクス組成物に添加することができるが、一般的には、約0.5重量/重量%〜約10重量/重量%の範囲が、OPCが効果を示すのに十分なはずである。
【0047】
上記の他にも、本発明はまた、少なくとも1つのプレバイオティクスおよび少なくとも1つのOPCと組み合わせた少なくとも1つのプロバイオティクス種の添加も包含する。実施例7の表18に示す通り、プレバイオティクスのラクチトールと植物性栄養素のOPCとを、上記に記載するL.アシドフィルスとB.アニマリス亜種ラクティスのプロバイオティクス組成物に添加すると、乾燥剤を使用せずに気温25℃/相対湿度60%の保存条件下で6ヵ月目にプロバイオティクス組成物の最も高い安定性の数値を記録した。さらに、実施例11の表31および表32のバッチIは、プレバイオティクスのラクチトールと植物性栄養素のOPCとを、上記に記載するL.アシドフィルスのプロバイオティクス組成物に添加すると、L.アシドフィルスのプロバイオティクス組成物の安定性の数値が、乾燥剤を使用せずに気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下で2週間にわたりきわめて高水準に維持されたことを示している。
【0048】
上述のプロバイオティクスの組み合わせとともに含まれる場合があるさらなる成分には、ビタミン、食事性無機質、微量無機質、および他の植物性栄養素が含まれる。実施例8(表20〜22)を参照されたい。
【0049】
本発明のプロバイオティクス組成物に含まれる場合があるビタミンには、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(ラミステロール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(ジヒドロタキステロール)、ビタミンD(7−デヒドロシトステロール)、ビタミンE(トコフェロール)、およびビタミンK(ナフトキノン)などのビタミンが含まれるが、これらに限定されない。上記の一覧には、例えば酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、および硝酸チアミンなどのビタミン塩が含まれる。
【0050】
本発明のプロバイオティクス組成物に含まれる場合がある食事性無機質には、カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、および硫黄が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明のプロバイオティクス組成物に含まれる場合がある微量無機質には、クロム、コバルト、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、および亜鉛が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明のプロバイオティクス組成物は、例えば、経口剤形(例えば、錠剤、カプレット剤またはカプセル剤)、チューインガム、または液体に溶解させる粉末などの種々の製剤に製造される場合がある。
【0053】
上述の通り、本発明のプロバイオティクス組成物は、錠剤、カプレット剤またはカプセル剤などの経口剤形に配合される場合がある。本発明のプロバイオティクス錠剤およびカプレット剤は、嚥下用または咀嚼用として配合される場合がある。後者の場合、錠剤とカプレット剤は香味料を加えて調製しなければならない。必要に応じて、風味付けしたチュアブル錠およびカプレット剤は甘味料を含む場合があり、甘味料は、人工の甘味料である場合もあれば、天然の甘味料である場合もあり、あるいはその両方である場合もある。本発明のプロバイオティクスカプセル剤は、主に嚥下用として製造される。
【0054】
錠剤、カプレット剤、およびカプセル剤を調製する手順は当業者に既知であり、これには、湿式造粒法、乾式造粒法、および直接圧縮法(錠剤およびカプレット剤用)が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
錠剤、カプレット剤、またはカプセル剤の製造には、湿式および乾式造粒法が使用される。造粒法では、剤形の粉末の製造にチルソネーションが使用される。チルソネーターは、水圧により互いにしっかりと押し付けられた溝付きの回転ローラーを収容する。チルソネーターのホッパーに原料を入れ、水平および垂直スクリュー方式によってローラーに供給する。ローラー内の溝を通過した原料は、きわめて高い圧力下で圧縮され、高密度シートとしてチルソネーターから排出される。これらのシートを、フィッツミルを使用して細かい粒状粉末に粉砕した後、網に通して、均一な流動性の顆粒を生成する。このチルソネーションプロセスにより、完成した粉末は、出発原料よりも2倍〜4倍高密度になり、所望の剤形に原料を作り変えられる特徴を有するようになる。
【0056】
乾式造粒法では、粉末をゼラチンカプセル剤に組み込む場合もあれば、粉末をゼラチンと混合して、錠剤またはカプレット剤を形成する場合もある。湿式造粒法では、粉末を湿らせて大きな原料の「塊」を作った後、これを乾燥させて粉砕し、製造プロセスに所望のサイズの粒子からなる塊に変える。所望のサイズの粒子が得られたら、粒子をゼラチンカプセル剤に組み込むか、ゼラチンと混合して、錠剤またはカプレット剤を形成する。
【0057】
ほとんどの直接圧縮製剤は、最終的な剤形に容積を与える不活性担体と、圧縮プロセスに有用な滑沢剤と、活性成分の3種類の材料で構成される。担体は0.5重量/重量%〜95重量/重量%までの広い範囲で剤形に含まれる場合がある。本発明の状況の範囲内において、本発明のプロバイオティクス組成物を配合するのに使用される担体は、一般的に約30重量/重量%〜約98重量/重量%の範囲である。実施例で使用される担体は、PHARMABURST(登録商標)担体(SPI Polyols、米国デラウェア州ニューキャッスル)である。
【0058】
直接圧縮法では、ツインシェルまたはV型ブレンダーなどのバッチブレンダーで原料を混合して、ビン(通常はポータブルビン)に排出した後、ここから錠剤化プロセスへと続くシュートに供給する。バッチブレンドに代わるものとして、ビン内ブレンドも使用される。ビン内ブレンドでは、混合していない材料をポータブルビン(内部バッフルを備える場合がある)に入れて回転させる。ビン内ブレンドでは、ブレンダーからポータブル容器に材料を移す必要がなくなる。直接圧縮製剤では、幅広い粒子径分布が見られ、活性剤は通常その範囲内の細かい側に当たる。粒子の分離を避けるため、ビンの中は常に確かな流動を維持しなければならない。また、すべての錠剤が最高品質であることを保証するため、製造中に一定の間隔で錠剤の試料を採取し、活性成分の濃度、錠剤の硬度、および溶解速度を評価しなければならない。
【0059】
直接圧縮法は、嚥下用の錠剤およびカプレット剤のほか、チュアブル錠およびカプレット剤を製造する際にも使用される場合がある。後者の場合は、錠剤およびカプレット剤の硬度を下げ、錠剤およびカプレット剤の風味と口当たりが良くなるように錠剤およびカプレット剤の成分を調製する必要がある。チュアブル錠およびカプレット剤の風味は、種々の香味料および甘味料を使用して調整される場合があり、チュアブル錠およびカプレット剤の口当たりは、イヌリン、ラクチトール、マンニトールなどの種々のプレバイオティクスを使用して調整される場合がある。
【0060】
チュアブル錠の口当たりは、錠剤またはカプレット剤の本体を潰した時に、風味付けしたマトリックスに混ざるように調整しなければならず、錠剤本体がもろすぎると、使用者の口内で砕けて、不快な感覚を生じる場合がある。チュアブル錠では、風味が使用者の受容性において重要な場合は、バルク包装を開けた時に、製品が心地よい香りも有さなければならない。チュアブル錠のそれぞれの特徴は、所望の特性が得られるまで賦形剤を調整することにより達成される場合がある。
【0061】
錠剤およびカプレット剤の最終的なサイズおよび特徴(すなわち、サイズ、硬度、脆性、咀しゃくした際の口当たりなど)に応じて、2種類の直接圧縮機が剤形の製造に使用される場合がある。典型的には単発式打錠機が低い圧縮速度を示すのに対して、ロータリー式打錠機が高い圧縮速度を示す。実施例では、単発式打錠機(実施例1および2)とロータリー式打錠機(ロータリー機とも呼ぶ、実施例2〜4および7〜10)の両方の使用について説明する。
【0062】
本発明のプロバイオティクス組成物はまた、チューインガムに組み込む場合もある。チューインガムは、好ましくは風味を含み、ハードチューインガムである場合もあれば、ソフトチューインガムである場合もある。必要に応じて、風味付けしたハードチューインガムまたはソフトチューインガムは甘味料を含む場合があり、甘味料は、人工の甘味料である場合もあれば、天然の甘味料である場合もあり、あるいはその両方である場合もある。ガムを製造する手順は当業者に既知である。
【0063】
従来、ガムは、ガム基礎剤(例えば、マツの木から得られる樹脂)、天然甘味料(例えば、砂糖)または人工甘味料、軟化剤(例えば、グリセリン)、および香味料の4種類の材料を使用して作られる。ガムの原料は、所定の加工時間の間一定の温度を維持しながら、ミキサーで混合する。その後、混合したガム原料をホッパーに送り、ツインスクリューで押し出して、ガムシートを作る。ガムシートの内側と外側には粉を振り、圧延時や包装時に機械に付着しないようにする。押出プロセス時に、ガムシートの厚さはローラーで制御される。押出成形の後、ガムシートに刻み目を入れ、適切なサイズに切断して、冷却トンネルに通し、包装用のトレーの上に積み重ねる。ガムがチューインガム錠剤などのハードチューインガムである場合は、切断手順と冷却手順の間にガムをコーティングする。各手順には特別設計の機械が用意されており、したがって、ガムは、混合機、押出し機、二次成形機、冷却機、およびスタック機を使用して製造することができる。
【0064】
また、ガムは、参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2004/0013767号(Norman and Amin)に記載の直接圧縮法を使用して調製される場合がある。この手順では、ガム基礎剤、造粒剤、加工助剤、および1つ以上の滑沢剤を混合して、従来の錠剤機で直接圧縮を行う。甘味料、着色剤、および香味料を混合物に添加する場合もある。ガム基礎剤中にポリオールおよび/または糖を混合した製品は、PHARMAGUM(登録商標)(SPI Polyols,Inc.、米国デラウェア州ニューキャッスル)として市販されている。直接圧縮法は、特にチューインガム錠剤の調製に有用である。
【0065】
上記の手順のいずれにおいても、プロバイオティクスは、押出成形または直接圧縮よりも前の最初の混合段階の間に添加される。
【0066】
上記の他にも、本発明のプロバイオティクス組成物は、水、牛乳、ジュースおよびヨーグルトなどの液体に溶解することを目的とした粉末として調製される場合もある。個々の液体を適宜一緒に混合する場合もあることが理解される。例えば、プロバイオティクス製剤をフルーツジュースとヨーグルト、または牛乳とヨーグルトと組み合わせて、プロバイオティクスヨーグルトシェイクを作る場合がある。また、プロバイオティクス製剤を牛乳とアイスクリームと組み合わせて、プロバイオティクスミルクセーキを作る場合もある。本発明で企図されるプロバイオティクス液体製剤の香味料は、当業者に既知である。
【0067】
適切な剤形を配合するのに使用される場合がある賦形剤の例には、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、可塑剤、圧縮剤、湿式造粒剤、および甘味料が含まれ、これらはすべて、本発明が関係する当該技術分野の当業者に既知である。以下の例はすべて、例示を目的として提示するものであり、限定を目的として提示するものではない。結合剤は、剤形の成分をさらに合わせるのを助けるために適宜使用される。結合剤の例には、カルボポール、ポビドン、およびキサンタンガムが含まれる。滑沢剤は一般的に、錠剤化またはカプセル化プロセス時に圧縮した粉末塊が装置に付着するのを防止するために、直接圧縮法による剤形の製造で常に使用される。滑沢剤の例には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、および植物系脂肪酸が含まれる。崩壊剤は、圧縮した塊を液体環境に入れた時の分解を助ける。崩壊剤の例には、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、およびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれる。被覆剤は、薬物の溶解性を制御するのに使用される。被覆剤の例には、カラゲナン、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ジェランガム、マルトデキストリン、メタクリル酸塩、メチルセルロース、微結晶性セルロース、およびセラックが含まれる。可塑剤は、剤形からの薬物の放出速度を制御するために使用される。可塑剤の例には、クエン酸エステル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ポリ酢酸ビニル、およびトリアセチンが含まれる。圧縮剤には、炭酸カルシウム、デキストロース、フルクトース、グアーガム、ハチミツ、ラクトース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース、モラセス、ソルビトール、デンプン、およびスクロースが含まれる。湿式造粒剤には、炭酸カルシウム、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、微結晶性セルロース、ポビドン、およびデンプンが含まれる。甘味料には、アスパルテーム、デキストロース、フルクトース、ハチミツ、ラクトース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、モラセス、グリチルリチン酸モノアンモニウム、ソルビトール、スクラロース、およびスクロースが含まれる。チュアブル錠の製造で一般的に使用される賦形剤には、例示として、デキストロース、フルクトース、グアーガム、ラクトース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース、およびソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。上記の一覧から明らかなように、同じ材料の多くが、種々の異なる剤形において種々の異なる目的のために使用される場合がある。
【0068】
上述のプロバイオティクス組成物のそれぞれにおいて、プロバイオティクスは、投与量単位につき約10コロニー〜約1010コロニーの範囲で含まれなければならないが、これよりも高い数値でも許容される。プロバイオティクス組成物が成人のヒト(すなわち、16歳を超えるヒト)に投与される場合、プロバイオティクスは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは1010、またはさらに高い数値の範囲に及ぶ。プロバイオティクス組成物が小児(すなわち、16歳未満のヒト)に投与される場合、プロバイオティクスは、好ましくは約10〜約10の範囲に及ぶ。実施例では、本発明のプロバイオティクス組成物が最も長く持続する条件を判定するための種々の試験について説明する。実施例10に示す通り、また予測通り、保存条件はプロバイオティクス組成物の持続時間において有意差を生じる(気温25℃/相対湿度60%、気温30℃/相対湿度65%、および気温40℃/相対湿度75%におけるプロバイオティクス組成物の安定性を参照(表16〜18、表20〜22、および表24〜26))。さらに、保存包装中に乾燥剤を含めることによっても、特定の保存条件下で差異を生じる場合があるが、必ずしもそうでない場合もある(表12、13、16〜18を参照)。本発明とともに使用することができる乾燥剤の例には、シリカゲル(二酸化ケイ素)、指示シリカゲル(塩化コバルトで洗浄したシリカゲル)、モンモリロナイト粘土、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、活性アルミナビーズ、およびモレキュラーシーブ(例えば、粘土、多孔質ガラス、ミクロ孔炭、または活性炭などのアルミノケイ酸塩物質または合成化合物)が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本発明のプロバイオティクス組成物は、ヒトまたは動物が摂取した際に生存プロバイオティクス種が消化管に住むようにすることによって消化器系を調節する種々の市販される消耗品の製造において、広範囲にわたる有用性を有する。摂取時にプロバイオティクス種が生存していることが不可欠であるため、本発明のプロバイオティクス組成物中におけるプロバイオティクス種の安定性を増強させることによって、プロバイオティクス組成物は、大腸内における病原性菌種の数を減少させる能力を有するようになる。本発明のプロバイオティクス組成物を摂取することによって減少させることができる病原菌の例には、カンピロバクター・ジェジュニ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、ビブリオ・コレラ菌、バクテロイデス菌、クロストリジウム菌、クレブシェラ菌、リステリア菌、プロテウス菌、サルモネラ菌、赤痢菌、およびベイヨネラ菌が含まれるが、これらに限定されない。本発明のプロバイオティクス組成物を摂取することによって減少させることができる病原性酵母菌の例には、C.アルビカンスが含まれるが、これに限定されない。既述の通り、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムなどの有益なプロバイオティクス種は、潜在的な病原体を制御下に維持して、疾患に関連する機能不全を予防する働きを持つ。
【0070】
本明細書において以上および以下に言及する特許文献および非特許文献はすべて、全体が参考として援用される。
【0071】
本発明のプロバイオティクス製剤の利点は、水がなくても消費することができる口当たりのよい製品である点である。さらに、本発明のプロバイオティクス製剤は室温で安定しているため、製品の貯蔵寿命を改善または維持するために特別な条件を必要としない。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明の組成物の製造法および使用法に関する完全な開示と説明を当業者に提供するために示すものである。これらの実施例は、本発明の非限定例として意図される。
【0073】
以下の実施例では、特に記載がない限り、当該技術分野の技術範囲内に含まれる、医薬組成物、医薬品化学などの従来の技法を使用する。このような技法については、文献で詳細に説明されている。種々の医薬組成物の調製法については、例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,20th edition(Lippincott Williams&Wilkins,2000)、およびAnselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,6th Ed.(Media,PA:Williams&Wilkins,1995)に記載されている。
【0074】
以下の実施例では、数値(例えば、量、温度など)に関して正確を期すように努めているが、記載した試験を実施する際には実験誤差や偏差を考慮しなければならない。別途記載がない限り、部は重量部であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。すべての成分は、特に記載がない限り、市販のものから得ている。
【0075】
実施例に記載の安定性試験のそれぞれでは、L.アシドフィルスのみを用いたL.アシドフィルスの安定性試験に一服当たり5錠を試験し、B.アニマリス亜種ラクティスのみを用いたB.アニマリス亜種ラクティスの安定性試験に一服当たり5錠を試験し、組み合わせたアッセイとしてL.アシドフィルスとB.アニマリス亜種ラクティスを試験する際には一服当たり5錠を試験し、L.アシドフィルスとB.アニマリス亜種ラクティスを、組み合わせた製品から個々に検定した試料の場合は一服当たり6錠を試験した。安定性試験においては、1×10未満のアッセイ数の減少を認められるまで、週1回、2週間に1回、または月1回の服用を実施した(本手順における例外は実施例に記載する)。
【0076】
(実施例1)
L.アシドフィルス錠剤の製造
20個のL.アシドフィルスプロバイオティクス錠剤を、表1に記載の材料を使用して製造した。
【0077】
【表1】

L.アシドフィルス錠剤を、3/8インチの標準凹金型を使用した単発式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は、8〜10kp(キロポンド=キログラム/N=1kgの塊が地球の重力において及ぼす力)であった。圧縮錠を60ccの高密度ポリエチレン(「HDPE」)ボトルに入れ、気温25℃/相対湿度60%の制御温度下に置いた。製品を、0時間、1ヵ月、2ヵ月、4.5ヵ月、6ヵ月、および8.5ヵ月の間隔で微生物安定性試験に供した。安定性試験の結果は表2に記載する。
【0078】
【表2】

(実施例2)
着色料、香味料、および甘味料を含むL.アシドフィルス錠剤の製造
L.アシドフィルスプロバイオティクス錠剤を、表3に記載の成分を使用して製造した。錠剤化する前に、L.アシドフィルス原料を試験し、この原料が1.8×1011コロニー/グラムの菌数を有することが明らかになった。
【0079】
【表3】

オレンジ風味およびバブルガム風味の錠剤を、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製し、パイナップル風味の錠剤は、単発式打錠機のカプセル型金型を使用して製造した。すべての錠剤の硬度は7〜9kpの範囲内であり、崩壊時間はすべて約22秒であった。
【0080】
表3の錠剤を、乾燥剤を使用せずに安定性試験の気温25℃/相対湿度60%で保存し、各バッチにつき3錠からなる1組をそれぞれの風味付き剤形の予備試料として別に取っておいた。予備試料は4℃で保存した。表4には、表3の剤形を11ヵ月間にわたり月1回安定性試験を行った結果が記載されており、表5には、13ヵ月目に行った予備試料の安定性試験の結果が記載されている。各安定性試験では、一服当たり5錠を選択した。剤形に含まれるL.アシドフィルスの安定性は、L.アシドフィルスのグラム陽性桿菌の生存数を測定することによって判定した。
【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

表4に示す通り、各風味付けしたバッチにおけるL.アシドフィルスのグラム桿菌の合計数は、10ヵ月の時点で1×10を下回っていたのに対し、4℃で保存した試料は、13ヵ月の時点で細菌数の減少が見られなかった。
【0083】
(実施例3)
B.アニマリス亜種ラクティスBB12錠剤の製造
B.アニマリス亜種ラクティスBB12株(以下「B.アニマリス亜種ラクティス」と呼ぶ)のプロバイオティクス錠剤30個からなるバッチを、表6に記載の成分を使用して製造した。
【0084】
【表6】

B.アニマリス亜種ラクティス錠剤を、7/16インチの標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は、10〜12kpの範囲内であった。圧縮錠を、乾燥剤を使用せずに60ccのHDPEボトルに入れ、気温25℃/相対湿度60%の制御温度に曝露した。一服当たり5錠を、0時間、1ヵ月、2ヵ月、および3ヵ月の間隔で微生物安定性試験に供した。安定性試験の結果は表7に記載する。
【0085】
【表7】

2ヵ月目の服用の時点で安定性試験の結果は1×10を下回っていたが、さらに1ヵ月間試験を継続した。
【0086】
(実施例4)
着色料、香味料および甘味料を含むL.アシドフィルス錠剤の製造
L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスの両方を含むプロバイオティクス錠剤(各風味付けしたバッチにつき2000錠)を、表8に記載の成分を使用して調製した。
【0087】
【表8】

錠剤を、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は8〜10kpの範囲内であった。圧縮錠を、乾燥剤を使用せずに180ccの各HDPEボトルに100錠ずつ詰め、気温25℃/相対湿度60%の制御温度に曝露した。製品を、12ヵ月間、または1×10未満のアッセイ数の減少を認められるまで、月1回の微生物安定性試験に供した。0時間と1ヵ月の時点では、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスの両方について一服当たり6錠の分析を行い、残りの期間では、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスのそれぞれについて一服当たり5錠の試験を行った。安定性試験の結果はそれぞれ表9および表10に記載する。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

表10に示す通り、オレンジ風味の錠剤およびバブルガム風味の錠剤は、8ヵ月後にグラム陽性桿菌の産生が1.0×10/グラムを下回り、パイナップル風味の錠剤は、7ヵ月後にグラム陽性桿菌の産生が1.0×10/グラムを下回った。従って、安定性試験は8ヵ月後の時点で中止した。
【0090】
(実施例5)
乾燥剤不使用の複合材料包装
実施例4の3種類の風味付けしたバッチは、乾燥剤不使用の100錠(各風味につき33錠と、無作為に選択した1錠を加えたもの)からなる複合材料包装を180ccのHDPEボトルに入れ、気温25℃/相対湿度60%の制御温度下に置き、12ヵ月間、または1×10未満のアッセイ数の減少を認められるまで、錠剤を月1回の微生物安定性試験に供することにより、複合材料包装における安定性試験を行った。1ヵ月の時点では、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスの組み合わせの合計数について一服当たり5錠(各風味から無作為に選択)を分析し、残りの期間では、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスのそれぞれについて一服当たり6錠(各風味から無作為に選択)を分析した(この試験では、組み合わせて服用したプロバイオティクスに典型的な一服当たり6錠と、個別に服用したプロバイオティクスに典型的な一服当たり5錠のパターンが逆転した)。安定性試験の結果は、それぞれ表11および表12に記載する。
【0091】
【表11】

【0092】
【表12】

6ヵ月後に安定性試験の結果は1×10を下回っていたが、さらに1ヵ月の間試験を継続した。
【0093】
(実施例6)
乾燥剤を使用した複合材料包装
実施例6の3種類の風味付けしたバッチは、乾燥剤を使用した100錠(各風味につき33錠と、無作為に選択した1錠を加えたもの)からなる複合材料包装を180ccのHDPEボトルに入れ、気温25℃/相対湿度60%の制御温度下に置き、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、および12ヵ月の時点、または1×10未満のアッセイ数の減少を認められるまで、錠剤を月1回の微生物安定性試験に供することにより、複合材料包装における安定性試験を行った。L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスに関して個別に錠剤の分析を行った。安定性試験の結果は表13に記載する。
【0094】
【表13】

6ヵ月後に安定性試験の結果は1×10を下回っていたため、試験は6ヵ月の服用後の時点で中止した。
【0095】
(実施例7)
L.アシドフィルス、B.アニマリス亜種ラクティス、ラクチトール(プレバイオティクス)、およびブドウ種子抽出物由来のOPC(抗酸化剤)を含むプロバイオティクス剤形の製造
オレンジ風味の錠剤のバッチは、PHARMABURST(登録商標)C1、2つのラクチトールプレバイオティクス(すなわち、7.7%のCM50、または39.7%のFINLAC(登録商標)DC(Xyrofin Oy Corp.、フィンランド ヘルシンキ);それに応じてPHARMABURST(登録商標)C1を減量)の内の1つ、およびブドウ種子抽出物由来のOPCを加えて製造した。これらのバッチを使用して、以下のパラメータを試験した:(1)ラクチトールおよびOPC含有製品の官能特性、(2)プロバイオティクスの安定性に対するプレバイオティクスラクチトールの効果、および(3)プロバイオティクスの安定性に対するOPCの効果。各バッチの錠剤の製造において記載した成分を表14に記載する。各バッチの見出しには、使用したラクチトール甘味料と各バッチ当たりの錠剤数を記載する。
【0096】
【表14】

表14の錠剤は、1/2インチの標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は8〜10kpの範囲内であった。各バッチの圧縮錠100錠を180ccのHDPEボトルに詰め、アッセイ数の減少を認められるまで、制御温度下にて安定性試験に供した。表15には、表14に記載のバッチ1〜4の安定性試験のパラメータを示すほか、各試験ロットにおける、使用した制御温度、試験時期、および乾燥剤使用の有無を記載している。また、すべての試料は、表15に記載の時間に加えて、0時間にも試験を行った。
【0097】
【表15】

表15の試験ロットの安定性試験の結果は、表16に記載する。
【0098】
【表16−1】

【0099】
【表16−2】

6週間の時点では、バッチ3の試験ロット6(7.7%ラクチトール、OPC無、乾燥剤無)の安定性測定値が1×10を上回っており、このことから、7.7%のラクチトール(すなわち、CM50)を使用し、乾燥剤を使用しない場合は、同等の剤形を39.7%のラクチトール(すなわち、FINLAC(登録商標))を使用して調製し、および/または乾燥剤を使用して保存した場合に比べて、剤形のプロバイオティクスの安定性に対し良い効果があることが示唆される。6週間の時点では、バッチ3の試験ロット5と、バッチ4の試験ロット5および6のいずれの結果も、1×10を下回っていた。
【0100】
【表17−1】

【0101】
【表17−2】

5ヵ月後の全試験ロットの結果は1×10を下回っていた。バッチ1の試験ロット3(乾燥剤有)および試験ロット4(乾燥剤無)の安定性試験は、6ヵ月の服用後の時点で中止し、残りの試験ロットの安定性試験は、5ヵ月の服用後の時点で中止した。
【0102】
表17の結果は、バッチ1の試験ロット4(7.7%ラクチトール、OPC有、乾燥剤無)が残りの試験期間の間にプロバイオティクスの安定性をわずかに増加させたことを示している。
【0103】
【表18】

表18の結果は、3ヵ月まで全試験ロットを比較的一貫して試験し、バッチ1の試験ロット1および2(7.7%ラクチトール、OPC有、乾燥剤有および無)が最高の計測値であったことを示している。6ヵ月の時点では、バッチ1の試験ロット1(7.7%ラクチトール、OPC有、乾燥剤有)が、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスの両方の生菌コロニー数において最高を記録した。しかし、9ヵ月の時点では、バッチ1の試験ロット1でコロニーの生存が見られなかったのに対し、バッチ3および4の両方の試験ロット3(OPC無、乾燥剤有)では、10ヵ月の時点においても両細菌種の生菌コロニーが見られた。9ヵ月および10ヵ月の時点では、バッチ3の試験ロット3(7.7%のラクチトール、OPC無、乾燥剤有)の方が、バッチ4の試験ロット3(39.7%のラクチトール、OPC無、乾燥剤有)よりも有意に高い生菌数を示した。
【0104】
(実施例8)
L.アシドフィルス、B.アニマリス亜種ラクティス、ビタミンAのパルミチン酸塩、およびカプセル化した酸化亜鉛を含むプロバイオティクス剤形の製造
L.アシドフィルス、B.アニマリス亜種ラクティス、ビタミンA、および酸化亜鉛を含有する、マンゴー風味の組み合わせたプロバイオティクス剤形500錠からなるバッチを、表19に記載の成分を使用して調製した。
【0105】
【表19】

錠剤は、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は8〜12kpの範囲内であった。マンゴー風味の錠剤を、乾燥剤を使用して保存し、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスのそれぞれについて、気温40℃/相対湿度75%(表20)、気温35℃/相対湿度65%(表21)、および気温25℃/相対湿度60%(表22)の3種類の保存条件の下、種々の時点で安定性試験に供した。
【0106】
【表20】

【0107】
【表21】

【0108】
【表22】

表21および表22から、気温30℃/相対湿度65%および気温25℃/相対湿度60%で試験を行った試料は、3ヵ月の時点できわめて高い安定性の計測値が見られ、気温25℃/相対湿度60%で試験を行った試料は、6ヵ月の時点で高い安定性の計測値が見られたことを示すことから、ビタミンAと酸化亜鉛を使用した場合は、3〜6ヵ月の期間に前記条件下においてプロバイオティクス剤形の安定性に対し良い効果が見られる場合があることが示唆される。比較してみると、表21および表22の試料の3ヵ月時点における計測値は、表17および表18の試料の3ヵ月時点における計測値よりも有意に高い。
【0109】
(実施例9)
L.アシドフィルス、B.アニマリス亜種ラクティス、およびマツ樹皮原料由来のOPCを含むプロバイオティクス剤形の製造
L.アシドフィルス、B.アニマリス亜種ラクティス、およびマツ樹皮原料由来のOPCを含有する、オレンジ風味の組み合わせたプロバイオティクス剤形600錠を、表23に記載の成分を使用して調製した。
【0110】
【表23】

錠剤は、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は8〜12kpの範囲内であった。調製した錠剤を、乾燥剤を使用して保存し、表24、25および26に記載の通り、L.アシドフィルスおよびB.アニマリス亜種ラクティスについて安定性試験に供した。
【0111】
【表24】

【0112】
【表25】

【0113】
【表26】

表25は、気温30℃/相対湿度65%にて6ヵ月の時点で両細菌種の生菌コロニーの割合が高いことを示しており、表26は、気温25℃/相対湿度60%にて9ヵ月の時点で両細菌種の生菌コロニーの割合がきわめて高いことを示すことから、おそらくマツ樹皮由来のOPCは、所定の条件下でプロバイオティクスの安定性を増強することが示唆される。比較してみると、表25および表26の試料(マツ樹皮由来のOPC、FINLAC(登録商標)ラクチトール、乾燥剤有)の3ヵ月時点における計測値は、表17および表18のバッチ2の試験ロット2の試料(ブドウ種子由来のOPC、FINLAC(登録商標)ラクチトール、乾燥剤有)の3ヵ月時点における計測値よりも有意に高い。
【0114】
(実施例10)
マンニトールおよび/またはソルビトールを併せたL.アシドフィルスの安定性評価
プロバイオティクス錠剤200錠からなる2つのバッチを、L.アシドフィルスとマンニトール(バッチA)、およびL.アシドフィルスとソルビトール(バッチB)を使用して調製した。表27には、錠剤の調製に使用した成分を記載する。
【0115】
【表27】

錠剤は、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。表27に示す通り、錠剤の硬度は、マンニトールおよびソルビトールの特性により大きく変動した。表28には、気温40℃/相対湿度75%にて乾燥剤を使用せずに3つの時点で行ったL.アシドフィルスの安定性検査の結果を示す。
【0116】
【表28】

表28の結果は、錠剤中のプロバイオティクス培養物が気温40℃/相対湿度75%の保存条件下で生存しなかったことを示しており、このことから、マンニトールおよびソルビトールを単独で使用しても、気温40℃/相対湿度75%におけるL.アシドフィルスの安定性に対し効力を有さないことを示唆している。
【0117】
バッチAおよびBの試験の対照として、担体であるPHARMABURST(登録商標)C1(バッチC;SPI Polyols、米国デラウェア州ニューキャッスル)およびSTARCH 1500(登録商標)(バッチD;Colorcon,Inc.、米国ペンシルバニア州ウェストポイント)を使用したプロバイオティクス製剤を調製した。対照製剤の成分は表29に記載する。
【0118】
【表29】

錠剤は、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は各製剤の特性によって変動した。対照のバッチは、気温40℃/相対湿度75%にて乾燥剤を使用せずに2週間保存し、表30に示す2つの時点にL.アシドフィルスの安定性試験を行った。
【0119】
【表30】

表30の結果は、PHARMABURST(登録商標)を単独で使用した場合に、気温25℃/相対湿度60%にて0時間〜2週間の間に見られるプロバイオティクス剤形の安定性の増加は限られたものであることを示している。
【0120】
(実施例11)
プロバイオティクスの安定性に対するPHARMABURST(登録商標)、ラクチトール、およびOPCの相乗作用の試験
ラクチトールおよびOPCが、表29および表30のPHARMABURST(登録商標)の担体と相乗効果を示し、従ってL.アシドフィルスプロバイオティクスの安定性を増強するかどうかを判定するため、4つの錠剤バッチを調製し、気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下で試験を行った。また、以下の比較製剤も製造した:(1)PHARMABURST(登録商標)C1(表31および表32では「PHRMBRST」と略記する)およびステアリン酸マグネシウム含有ラクチトール(バッチE)、(2)PHARMABURST(登録商標)C1およびステアリン酸カルシウム含有ラクチトール(バッチF)、(3)PHARMABURST(登録商標)C1およびラクチトール含有マツ樹皮OPC(バッチG)、ならびに(4)PHARMABURST(登録商標)C1およびラクチトール非含有マツ樹皮OPC(バッチH)。すべての比較製剤は、表31に記載の製剤に従って加速安定性試験に使用した。
【0121】
【表31】

錠剤は、1/2インチの円形標準凹金型を使用した回転式打錠機で直接圧縮することによって調製した。錠剤の硬度は各製剤の特性によって変動した。すべての試料は、乾燥剤を使用せずに気温40℃/相対湿度75%にて1ヵ月間保存し、表32に記載した時点にL.アシドフィルスの安定性試験を行った。
【0122】
【表32】

(実施例12)
気温40℃/相対湿度75%におけるL.アシドフィルスの安定性に対するラクチトールおよびPHARMABURST(登録商標)の効果
ラクチトールとPHARMABURST(登録商標)の間で相乗効果が生じ、L.アシドフィルスの安定性を増加させるかどうかを試験するため、表33に示す通りに、さらに3種類の錠剤バッチ(バッチI、JおよびK)を配合した。気温40℃/相対湿度75%RHにおける3種類のバッチ錠剤の安定性の結果は、表34に記載する。
【0123】
【表33】

【0124】
【表34】

表34の結果は、ラクチトールを単独で使用しても、気温40℃/相対湿度75%にて2週間にL.アシドフィルスの生菌コロニーが見られなかったのに対して、PHARMABURST(登録商標)を単独で使用した場合と、ラクチトールだけでなく、比較的少ない重量パーセントであってもPHARMABURST(登録商標)を含めて使用した場合とでは、気温40℃/相対湿度75%という厳しい保存条件下にて2週間の時点で生菌コロニーが見られたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも2つの糖アルコールからなる担体中に、少なくとも1つのプロバイオティクス種を含む組成物。
【請求項2】
前記担体がさらに崩壊剤も含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、およびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記担体がさらに流動促進剤も含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記流動促進剤が、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、およびタルクからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記担体がさらに滑沢剤も含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記滑沢剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、および植物系脂肪酸からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体が、約30重量/重量%〜約98重量/重量%の範囲で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2つの糖アルコールが、マンニトールおよびソルビトールからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも2つの糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、およびラクチトールからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ブルガリクス、L.カゼイ、L.パラカゼイ、L.ファーメンタム、L.プランタルム、L.ラムノサス、L.サリバリウス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、B.インファンティス、B.アニマリス亜種ラクティス、B.ロンガム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、エンテロコッカス・フェカリス、およびE.フェシウムからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、L.アシドフィルス、L.サリバリウス、B.アニマリス亜種ラクティス、およびS.サーモフィルスから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、およびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される少なくとも2つのプロバイオティクス種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、投与量単位につき約10〜約1010コロニーの範囲で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
植物性栄養素もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記植物性栄養素が、カテキン、ポリフェノール、およびオリゴマープロアントシアニジン(OPC)から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記植物性栄養素がOPCである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記OPCがブドウ種子またはマツ樹皮から抽出される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記OPCが、約0.5重量/重量%〜約10重量/重量%の範囲で前記組成物中に存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
ビタミンA(レチノール)、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(ラミステロール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(ジヒドロタキステロール)、ビタミンD(7−デヒドロシトステロール)、ビタミンE(トコフェロール)、およびビタミンK(ナフトキノン)からなる群より選択されるビタミンもさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
カルシウム、塩化物、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、および硫黄からなる群より選択される食事性無機質もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
クロム、コバルト、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、および亜鉛からなる群より選択される微量無機質もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が経口剤形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記経口剤形が錠剤、カプレット剤、およびカプセル剤からなる群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記錠剤およびカプレット剤が咀嚼可能である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、液体に混合される粉末である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記液体が、水、牛乳、ジュース、およびヨーグルトからなる群より選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物がチューインガムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
プロバイオティクス組成物の安定性を増強する方法であって、少なくとも1つのプロバイオティクス種を、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される少なくとも2つの糖アルコールからなる担体と組み合わせることを含む、方法。
【請求項30】
前記担体がさらに崩壊剤も含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、およびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記担体がさらに流動促進剤も含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記流動促進剤が、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、およびタルクからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記担体がさらに滑沢剤も含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記滑沢剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、および植物系脂肪酸からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記担体が、約30重量/重量%〜約98重量/重量%の範囲で前記組成物中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも2つの糖アルコールが、マンニトールおよびソルビトールからなる、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも2つの糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール、およびラクチトールからなる、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、ラクトバチルス・アシドフィルス、L.ブルガリクス、L.カゼイ、L.パラカゼイ、L.ファーメンタム、L.プランタルム、L.ラムノサス、L.サリバリウス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、B.インファンティス、B.アニマリス亜種ラクティス、B.ロンガム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、エンテロコッカス・フェカリス、およびE.フェシウムからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、L.アシドフィルス、L.サリバリウス、B.アニマリス亜種ラクティス、およびS.サーモフィルスから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、およびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される少なくとも2つのプロバイオティクス種を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのプロバイオティクス種が、投与量単位につき約10〜約1010コロニーの範囲で前記組成物中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項43】
植物性栄養素もさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項44】
前記植物性栄養素がオリゴマープロアントシアニジン(OPC)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記OPCがブドウ種子またはマツ樹皮から抽出される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記OPCが、約0.5重量/重量%〜約10重量/重量%の範囲で前記組成物中に存在する、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−504981(P2010−504981A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530438(P2009−530438)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/020983
【国際公開番号】WO2008/039531
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509085892)リトル カルメット ホールディングス, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】