説明

プロバイオティクス菌を含む安定化された組成物

少なくとも1×10cfu/gの細菌濃度を有する乾燥細菌濃縮物を10%よりも多く含む安定化された乾燥細菌組成物が提供される。組成物は改善された安定性を有する。包装された細菌組成物、単位用量組成物及び本発明の組成物の製造方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低い水分活性を有する安定化された乾燥細菌組成物に関する。本明細書の組成物は長期間の安定性及びプロバイオティック活性を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロバイオティクス菌及びこれらの物質を含む組成物が、多くの病気を処置するために次第に普及してきている。プロバイオティクス菌は細菌、又はそれらの精製画分であることができ、それらは消費後にその宿主に対して病気の緩和や予防といった利益を提供する。多種多様なプロバイオティクス細菌が存在するが、これらの物質、特に生きたプロバイオティクス細菌細胞を含む組成物は安定性に劣る傾向がある。例えば、プロバイオティクス細菌の乾燥濃縮物は牛乳及び他の水性懸濁液中において哺乳動物に投与されてきた。しかしながら、これらの組成物が冷蔵条件下で貯蔵され及び分配されない限り、以前は、投与される細胞の十分高い割合がその投与の時点で確実に生きたままであるようにするために、その懸濁液を使用の直前に乾燥濃縮物から調整するか、又はその乾燥濃縮物そのものを粉末若しくはカプセルの形態で消費する必要があった。
【0003】
乾燥細菌濃縮物がいくらかの安定性の効果を与えることは認められているものの、これらは全体的に好適な安定性及び使い易さを与えてはいなかった。プロバイオティクス菌含有組成物に関する主な問題は組成物中の利用可能な水の濃度である。乾燥細菌濃縮物を含むプロバイオティクス菌含有組成物中の中程度から高い濃度の水は、乾燥細菌が貯蔵中に代謝を続けることを可能にする。この代謝によって、酸性の代謝産物及び他の分子が生成されるとともにプロバイオティクス細菌そのものの生存性が破壊及び減少されることになり、このことは組成物を「傷ませ」(the composition"off")、又は腐らせ、それにより消費に適さなくし又は効き目を失わせる。プロバイオティクス菌含有組成物中の水を閉じ込める目的で種々の賦形剤、及び同様の懸濁物質が追求されてきたが、すべて成功度合いはさまざまであった。例えば、U.S.4,518,696は動物性プロバイオティック乳酸桿菌の乾燥生菌(viable cells)細胞及び燻蒸シリカの混合物から成る安定化された液体細菌組成物であって、この混合物が0.20未満の水分活性を有し、無水のヒマワリ種子油中に分散されている組成物を開示している。これらの進歩にもかかわらず、乾燥細菌組成物の長期貯蔵安定性は、最も安定な細菌株に対してでさえも、最適なものからは程遠いものであった。幾つかの細菌株はいまだ5℃以下で貯蔵する必要があり、それでもなお、長期の安定性は保証されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された安定性を有し、及び生きたブロバイオティクス細菌の送達が向上された、改善されたプロバイオティクス組成物が必要とされている。特に、以前は室温で長期間貯蔵することが非常に困難であった細菌株を含む安定なプロバイオティクス組成物を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1×10cfu/gを有する乾燥細菌濃縮物を少なくとも10%含む乾燥細菌組成物を提供し、この組成物は0.5未満の水分活性を有する。組成物は混合散剤、カプセル化形態又は他の同様の形態において、5℃及び室温の両方で改善された長期の安定性を有する。本発明はまた、包装された乾燥細菌組成物及び本発明の組成物を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書の全ての重量、測定値及び濃度は、特に指定のない限り、組成物全体に関して25℃で測定される。
【0007】
発明を実施するための最良の形態で引用したすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれ、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する従来技術であることを認めるものと解釈すべきではない。
【0008】
指示がない限り、本明細書で言及される組成物のすべてのパーセンテージは重量%であり、すべての比率は重量比である。
【0009】
指示がない限り、分子量は全て、重量平均分子量である。
【0010】
本明細書で言及される数値は、実際に測定した値の具体例を提示する場合を除いて、「約」という言葉が付与されていると考えるべきである。
【0011】
本明細書で使用する時、略語「cfu/g」は、ヨーロッパ薬局方メソッド、2003年、セクション2.6.12の一部として与えられている方法を用いて測定した場合の「1グラム当たりのコロニー形成単位」を意味する。
【0012】
本明細書で使用する時、「乾燥細菌組成物」は、室温で液体である物質を総組成物の20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満、更により好ましくは6重量%未満含む組成物を包含する。
【0013】
本明細書で使用する時、「結合水」とは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及びアミノ基のような大きな分子中の種々の化学基によってしっかりと保持されている水分子を意味する。
【0014】
本発明は、0.5未満の水分活性(分子から脱着する結合水の能力の尺度)を有する乾燥細菌組成物を提供する。好ましくは、本発明の組成物の水分活性は、0.4未満、より好ましくは0.25未満、更により好ましくは0.15未満である。更により好ましくは、本発明に従う組成物の水分活性は0.1未満である。水分活性は、当業者には既知の方法を用いて決定できる。本明細書では、水分活性は、ノバシーナ(NovaSina)TH200水分活性メーターを用いて25℃で決定される。簡単にいえば、このメーターは較正塩類を用いて較正される。測定すべきサンプルをメーター内で温度平衡状態とし、次いで平衡に達した後の(通常は10〜20分)相対湿度パーセント(RH%)を100で割ったものとして水分活性を決定する。
【0015】
その乾燥細菌組成物の水分活性を低下させることによってそれらの安定性を改善できることが見出された。理論によって制限されるものではないが、驚くべきことに、本発明の組成物の水分活性は低下させることができ、及びしたがって乾燥細菌濃縮物の濃度(生菌の数)、及び他の構成要素に対しての組成物中の乾燥細菌濃縮物の割合(総組成物の重量基準で)を増加させることにより、組成物の安定性を向上させることができることが見出された。再び制限されることなく、低い水分含有量及び低い水分活性を有する安定剤と組み合わせると、本発明の組成物は全体として水分含有量が少なくなり、組成物中に存在する水はその支持分子にしっかりと結合されたものであると考えられる。
【0016】
理論に制限されるものではないが、乾燥細菌濃縮物は、系の安定性に影響するガラス転移温度(T)を有する非晶質固体であるとみなすことができると考えられる。Tは動力学的に安定な固体、ガラス状の相から熱力学的に安定な液体/ゴム状状態への組成物の相転移を決定する。貯蔵安定性のためには、動力学的に安定な相(すなわちガラス相)の方が、液体/ゴム状の相の場合よりも反応速度及び拡散速度がかなり遅いため好ましい。さらに、液体/ゴム状状態においては結合水分子がより容易に脱着されて生化学的代謝に使用されるということが認められた。系の水分活性及び水分含有量はTに悪影響を与え、水分活性又は含有量が高いほど、Tは低くなる。したがって、系の水分活性又は含有量を減少させることによって、Tは高くなり、系そのものの安定性が向上する。したがって、乾燥細菌濃縮物及びあらゆる増量剤物質の全体の水分活性に対する寄与を制御すること、及びそれによって組成物のTを制御することで、組成物の全体としての安定性を改善することができる。驚くべきことに、乾燥細菌自体は低い水分活性を有することが見出された。したがって、高濃度の細菌(少なくとも1×10cfu/g)を有する乾燥細菌濃縮物を高い濃度(すなわち乾燥細菌組成物の少なくとも10重量%)で用いることで、もっと少量の乾燥細菌濃縮物又はもっと少ない細菌数を有する濃縮物のどちらかを含む組成物と比較した場合に、水分含有量及び水分活性を低く保持することにより組成物が安定化されるということが見出された。
【0017】
さらに、乾燥細菌濃縮物を含む乾燥細菌組成物全体は無水であるのが好ましい。本明細書で使用する時、「無水の」とは、その組成物の水分含有量が20%未満であることを意味する。理論に束縛されるものではないが、低い水分活性と共に、20%未満の水分含有量を有する本発明の乾燥細菌組成物は、組成物中の利用可能な水が低い濃度であること、及び組成物中に存在する水がその保持分子へとしっかりと結合されたものであるという事実により、改善された安定性を有するものと考えられる。水分含有量は当業者には既知の方法を用いて決定することができる。本明細書では、水分含有量はTAインストルメンツ(TA Instruments)からのTGA熱重量測定分析器(TGA Thermal Gravimetric Analyser)及び関連のソフトウェアを用いて決定される。分析器の方法は、室温(25℃)で平衡化するように設定され、次に1分当たり20℃で最終温度105℃までの直線傾斜温度上昇が続き、次に105℃で20分間保持される。データは分析器と共に供給される付随の分析プログラムを用いて分析され、サンプルの水分含有量はサンプルの質量の百分率として決定される。より好ましくは、本発明の乾燥細菌組成物は10%未満、更により好ましくは8%未満の水分含有量を有する。
【0018】
理論に束縛されるものではないが、高濃度の乾燥細菌濃縮物を用いることによって、乾燥細菌濃縮物は組成物中で利用可能であるあらゆる水と結合する大きな貯蔵層として作用することができるものと考えられる。そのように作用すると、組成物中に存在するすべての水は大量の乾燥細菌濃縮物全体に渡って分散され、それによって、貯蔵温度においてより不安定な液体/ゴム状状態へと変わるほどには組成物のTを下げることはなく、こうして組成物の安定性は維持される。
【0019】
発明の組成物は総組成物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の乾燥細菌濃縮物を含む。本明細書で使用する時、用語「乾燥細菌濃縮物」は、本発明の組成物に添加することができる多数の細菌細胞を含有する乾燥され濃縮された細菌生成物を産するために当業者には既知の遠心分離、凍結乾燥、スプレー乾燥、又はこれらの組み合わせなどのプロセスによって濃縮された、細菌の発酵培養物を包含する。この乾燥細菌濃縮物は、本発明の組成物に添加される前に細菌を少なくとも1×10cfu/g、好ましくは1×10〜1×1014cfu/g、より好ましくは1×1010〜1×1014cfu/gの濃度で含む。この乾燥細菌濃縮物中に存在する細菌は、細菌の生菌(すなわち「生きた」)培養でも死菌培養であってもよい。好ましくはこの濃縮物中に存在する細菌は生菌である。本明細書で使用する時、用語「生きている(viable)」とは、存在する細菌の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、更により好ましくは少なくとも90%が当業者に既知の標準細菌プレート法を用いてコロニー形成することができることを意味する。
【0020】
乾燥細菌濃縮物の濃度及びその濃縮物中の細菌の濃度を決定するためには、当業者に既知の方法を使用してよい。例えば、乾燥細菌組成物中に存在する乾燥細菌濃縮物の量を決定するために、組成物をホスフェートで緩衝した食塩水のような好適な希釈剤の既知の容量中に混合して溶解し得る。次いで物質の状態を評価するために好適な希釈において初期顕微鏡評価を行うことができる。標準プレートカウント法、フローサイトメトリー及びD−カウント法などの蛍光技術、クリスタル・バイオレットのような着色剤又は位相差顕微鏡法と関連したノイバウエル・カウンター計数(Neubauer counter enumeration)(あるいは血球計算板として知られる)のような、当業者に既知の細菌計数技術を使用してよい。乾燥細菌組成物中に存在する他の物質に対する乾燥細菌濃縮物の相対的割合は、賦形剤、安定剤、又は他の物質の質量を組成物の総乾燥重量から引き算することにより求めてもよい。このような物質(すなわち非乾燥細菌濃縮物)は当業者には既知の種々の技術を用いて分離してよい。例えば、溶解可能な物質は溶解させてから、ろ過又は遠心分離し、続いてその上清を乾燥して乾燥質量を秤量してよい。不溶性の物質は当業者には既知の密度勾配遠心分離によって分離してよい。配合に応じて当業者は、組成物中に存在する乾燥細菌濃縮物の濃度及び濃度の正確な及び精密な決定がもたらされるような方法を選択する。
【0021】
乾燥細菌濃縮物は、栄養素、細菌排出物及び乾燥前の細菌の発酵培養物中に存在する他の溶解性物質などのその他の物質を含んでいてもよい。好ましくは、これらの物質は乾燥細菌濃縮物の20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の濃度で存在する。さらに、乾燥細菌濃縮物中の細菌の濃度を増大させるために、乾燥前の細菌を含有する培養基を遠心分離又はろ過してその培養基から細菌を分離することが好ましい場合もある。乾燥前に液体の大部分を除去することによって、溶解性の栄養素及び物質の大部分は除去されることになり、したがって乾燥細菌濃縮物中には存在しないことになる。このことは、濃縮物中での細菌の相対的割合を増大させるために、またいずれかの細菌毒又は哺乳動物によって消費されるのに好適ではないことのある他のこうした物質による乾燥細菌濃縮物の過剰な汚染を回避するためにも望ましい。
【0022】
細菌は、関連する培養菌(類)の満足な培養を与える液体培地中での、所望の細菌の純粋(単一株)培養物又は混合(複数株)培養物として培養されてもよい。このような培地は、タンパク質又はタンパク質分画、種々の発酵性炭化水素、増殖刺激物質、無機塩、緩衝剤等から構成されてよく、又は培地は、滅菌した全乳、脱脂乳、乳清、若しくは他の天然基材、又はそれらの組み合わせであってもよい。植菌後、培養は概ね最適化された培養時間及び培養温度条件のもとで、展開できるようになされる。その培養されている有機体に応じて、培養時間は4〜48時間の範囲であってよく、温度は15℃から50℃まで変化してよい。またpH及び溶存酸素を制御することも望ましい場合がある。十分な培養が達成された後、その培養基中の培養物を0℃〜15℃に冷却する。
【0023】
一般に、乾燥細菌濃縮物を得るために用いられる方法は、こうした細菌を培養するための公知の手順に従って行われる。好適な培養基中で十分な細菌の数が達成された後、培養液のpHを乾燥製品を調製するために望ましい値よりも低くしてよい。典型的には、最終のpHは4.4〜5.4の範囲となる。発酵培養液を乾燥する前に、pHを細菌の安定化にとって更に好ましいpHへと高い方に調節するために水酸化ナトリウムなどのアルカリ性試薬を添加すると有利である。一般に以前から知られているように、pHを中性(pH7)に向けて高い方へ調節することが望ましく、この調節値は少なくともpH5.8である。あらゆる食品に受け入れ可能なアルカリを使用できる[NaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)、等]。pH約6.0〜6.5まで調節するのが好ましい。具体的な例として、pHは水酸化ナトリウムの添加によりpH約6.2まで上げてよい。培養基中に本発明の安定性増強剤のような、培養基のpHに影響を与える他の添加剤を組み込む場合、pH調節は便宜上最後にすることができる。
【0024】
細菌濃縮物が凍結乾燥により乾燥される場合には、乾燥前にその発酵培養物に凍結保護物質を組み入れるのが望ましい場合がある。好適な既知の凍結保護物質としては、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、スクロース、コーンシロップ、DMSO、デンプン類、及びすべての種類の加工デンプン類、PVP、マルトース、又は他の単糖類及び二糖類が挙げられる。添加の濃度は、その特定の剤に応じて培養物1L当たり1.0〜300gの範囲とすることができる。凍結時の細胞の損傷を最小限に抑えるために効果的な量を使用すべきである。さらに、乾燥細菌濃縮物は、水分含有量を20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは8%未満、更により好ましくは6%未満まで低下させるように十分に乾燥させる必要がある。乾燥細菌濃縮物が低い水分活性、好ましくは0.5未満の水分活性を有するように、凍結保護物質を選択するのが望ましい。熱乾燥手順のような異なる乾燥方法が使用される場合、凍結保護物質は使用されず、及び一般に、細菌又は従属する生物学的物質を粉末へと乾燥するための様々な手順のいずれかを使用することができる。これらには、凍結乾燥、スプレー乾燥、ローラー及び/又は真空パン乾燥が挙げられる。本発明の実施においては、好ましい乾燥手順は凍結乾燥又はスプレー乾燥である。
【0025】
乾燥細菌濃縮物は、経口消費の際に受け入れ動物に有害でないあらゆる細菌科、属、種、又は株、好ましくは、哺乳動物が経口消費した後、より好ましくはヒト又は仲間動物が経口消費した後に有害でない細菌株類、好ましくはプロバイオティクス菌を含んでいてよい。上記に示したように、細菌は毒及び哺乳動物、特にヒトに対して有害である場合のある他の分子を生成する場合がある。あらゆる細菌が本発明の組成物中で安定化されてよいが、組成物は哺乳動物によって消費されるのに好適であるのが好ましい。好ましくは、細菌は乳酸菌を含む。本明細書で使用するのに好適な乳酸菌の非限定例としては、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ブルガリカス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・へルベティカス、ラクトバシラス・ビフィズス、ラクトバシラス・カセイ、ラクトバシラス・ラクチス、ラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・ラムノーサス、ラクトバシラス・デルブリュック(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・サーモフィルス、ラクトバシラス・フェルメンチイ(Lactobacillus fermentii)、ラクトバシラス・サリバリウス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、及びペディオコッカス・セレビシエの菌株類、又はこれらの混合物、好ましくはラクトバシラス・サリバリウス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
非限定例としては、PCT国際公開特許WO00/42168に開示されているような、切除され洗浄されたヒトの胃腸管から単離されたビフィドバクテリウムの菌株類が好ましい。英国工業海洋細菌収集機関(the National Collections of Industrial and Marine Bacteria Ltd)(NCIMB)において1999年1月13日に寄託され、加入番号NCIMB41003が与えられたとして記載されている、UCC35624と指定されたビフィドバクテリウム・インファンティス菌株がより好ましい。
【0027】
別の非限定例としては、PCT国際公開特許WO98/35014に記載されているような、切除され洗浄されたヒトの胃腸管から単離されたラクトバシラス・サリバリウスの菌株類が好ましい。1996年11月27日に英国工業海洋細菌収集機関(the National Collections of Industrial and Marine Bacteria Ltd)(NCIMB)において寄託され、加入番号NCIMB40830及び40829がそれぞれ与えられたとして記載されている、UCC1及びUCC118と指定されたラクトバシラス・サリバリウス菌株類がより好ましい。
【0028】
(任意構成成分)
本発明の乾燥細菌組成物は、安定剤をさらに含んでもよい。好ましくは、乾燥細菌組成物は高濃度の乾燥細菌濃縮物と、低い水分含有量及び低い水分活性の両方を有する安定剤との組み合わせを含み、系全体のTはできるだけ高く維持され、それにより組成物をさらに安定にしている。安定剤は本発明において、安定化増量剤又は充填剤として作用するために有用である一方で、系の安定性を低下させるほどには系の水分活性又は水分含有量を増大させない。好ましくは、本発明の安定剤は、水分含有量が10%であるときに0.5未満の水分活性を有する物質又は物質類を含む。好ましくは、安定剤は0.4未満、より好ましくは0.25未満、更により好ましくは0.15未満の水分活性を有する。好ましくは安定剤の水分含有量は10%未満、より好ましくは8%未満、更により好ましくは6%未満である。組成物がカプセル封入されるべきである場合、安定剤は好ましくは0.4未満、より好ましくは0.15未満の水分活性、及び8%未満、より好ましくは6%未満の水分含有量を有する。理論に束縛されるものではないが、これは、カプセル封入のプロセスが乾燥バルク組成物のみの場合と比較した時に組成物に更に水を導入する場合があり、それ故にカプセル封入前の組成物はできる限り乾燥される必要があるという事実のためであると考えられる。
【0029】
本発明の組成物は好ましくは、組成物の1重量%〜90重量%の安定剤、より好ましくは10重量%〜70重量%の安定剤、更により好ましくは20重量%〜50重量%の安定剤を含む。
【0030】
本発明の安定剤は、上記で規定したような水分含有量及び水分活性を有するあらゆる物質を含んでよい。好ましくは、安定剤は流動可能な固体である。流動可能な固体とは、20%未満、好ましくは15%未満のカール指数(Carr’s index)を有する粒子状固体である物質を意味する。本明細書で使用する時、カール指数(Carr’s index)は、ASTM表示D6393−99「カール指数によるバルク固体特性のための標準試験法(Standard Test Method for Bulk Solids Characterization by Carr Indices)」(2002年)を用いて決定される。好ましくは、少なくとも1つの安定剤は、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、セルロース系物質類、ポリオール類、多価アルコール類、シリカ類、ゼオライト類、粘土類、アルミナ類、デンプン類、糖類、又はこれらの混合物、より好ましくは多糖類、オリゴ糖類、セルロース系物質類、シリカ類、ゼオライト類、粘土類、アルミナ類、デンプン類、糖類、又はそれらの混合物を含む群から選択される。更により好ましくは、少なくとも1つの安定剤は、多糖類、セルロース系物質類、デンプン類、又はこれらの混合物を含む群から選択される。本発明で使用するのに好適な物質の非限定例は表1に記載されている。
【表1】

【0031】
好ましくは、安定剤そのものは、水分含有量10%で−0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度(Tg)を有し、好ましくは15℃(288K)よりも高く、より好ましくは20℃(293K)よりも高い。本明細書で使用する時、ガラス転移温度は、ASTM E1356−98「示差走査熱量計又は示差熱分析によるガラス転移温度の評価のための標準試験法(Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperatures by Differential Scanning Calorimetry or Differential Thermal Analysis)」(2003年)を用いて決定される。
【0032】
図1を参照すると、乾燥細菌濃縮物の出発濃度は室温(25℃)で乾燥組成物の経時的な安定性に大きく影響を与えることが分かる。1×10cfu/g乾燥細菌濃縮物を50%含む組成物の安定性は、1×10又は1×1010のどちらかの乾燥細菌濃縮物を50%含むものと比較した場合に、大きく制限された貯蔵安定性を有する。さらに、安定剤の水分活性及び水分含有量の影響は安定性のデータによって明らかに実証される。マンノゲム(mannogem)EZ(SDM)はネオソルブ(Neosorb)20/60の水分活性及び水分含有量(それぞれ0.39及び2.0%未満)に比べ、0.36の水分活性及び0.5%未満の水分含有量を有する。
【0033】
本発明の組成物は包装された組成物の形態であってよい。安定剤は必要ならば、加工中、包装前のあらゆる時点で組成物に添加してよい。安定剤は乾燥前に発酵培養液に加えてもよく、又は乾燥細菌濃縮物に粉末として混合してもよく、その後で組成物を包装する。安定剤を細菌発酵培養液に添加する場合、発酵中に、乾燥の直前に、又は遠心分離などの濃縮プロセスの後に、あるいは加工中の様々なこれらの段階において添加してよい。好ましくは、安定剤は粉末として乾燥細菌濃縮物と乾式混合される。
【0034】
乾燥細菌組成物が包装された組成物の形態である場合には、組成物は瓶又は袋などの密封容器中に包装された混合散剤の形態であってもよく、又は当業者に既知の方法を用いてカプセル封入されてもよい。組成物をカプセル封入する場合、そのコーティングは好ましくは水分含有量の低い材料を含む。好適なカプセル化材料の非限定例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン類、アルギネート類、又はこれらの混合物が挙げられ、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。カプセル封入の種類及び方法は当業者には周知である。他の方法は、同時係属米国特許出願10/263516に記載されている。
【0035】
本発明の組成物はそれらの性能を高めるために、追加の任意構成成分を独立して含んでもよい。例えば、1以上のビタミン、酵素、可塑剤、着色剤、香味剤、甘味剤、酸化防止剤、緩衝剤、スリップ助剤(slip aid)、その他の賦形剤などを本明細書の組成物中に任意に包含させることができる。任意構成成分の非限定例を以下に示す。
【0036】
本明細書で使用するのに好適な任意成分としてはビタミン類が挙げられる。例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、及びこれらの混合物を使用してもよい。脂肪可溶性ビタミン類、例えば、β−カロチン及び他のビタミンAの供給源は、それらが水分の影響を受け易いことから包含させるのに特に有用である場合がある。ビタミンC、ビタミンE、及びこれらの混合物もまた特に有用である。
【0037】
任意構成成分の別の例としては1以上の酵素類が挙げられる。例えば、タンパク質分解酵素(例えば、パンクレアチン)を使用してもよい。
【0038】
1以上の顔料又は他の好適な着色剤、例えば染料及びレーキを組成物中に組み込んでもよい。米国食品、医薬品及び化粧品用染料(例えば、黄色5号、青色2号、赤色40号、)及び/又は米国食品、医薬品及び化粧品用レーキを使用してよい。本発明に用いられてもよい好ましいレーキには、例えばレーキ赤色40号、黄色6号、青色1号などが挙げられる。更に、米国食品、医薬品及び化粧品用染料及び/又は米国食品、医薬品及び化粧品用レーキの混合物が、その他の従来の食品及び食品着色剤との組み合わせにおいて用いられてもよい。更なる例として、リボフラビン及びβ−カロチンもまた用いられてもよい。更に、例えば、果実、野菜、及び/又はブドウ、黒すぐり、アロニア、ニンジン、ビートの根、赤キャベツ、及びハイビスカスなどの植物抽出物を包含する他の天然着色剤も使用されてもよい。用いられる着色剤の量は、用いられる剤及び最終組成物において所望される特徴又は強度に応じて変わる。当業者は容易にこうした決定をする。
【0039】
組成物の味を良くするために、本発明の組成物中に1以上の香味剤を組み込んでもよい。あらゆる天然又は合成香味剤を本発明に用いることができる。本明細書で使用する時、こうした香味は合成又は天然の香味であってよい。
【0040】
例えば、1以上の植物及び/又は果実の香味を本明細書中で使用してもよい。特に好ましい果実の香味は、例えばパッションフルーツの香味、マンゴの香味、パイナップルの香味、クプアクの香味、グァバの香味、ココアの香味、パパイヤの香味、ピーチの香味、及びアプリコットの香味などの異国風の香味及びラクトン系の香味である。これらの香味の他に、例えばリンゴの香味、柑橘類の香味、ブドウの香味、ラズベリーの香味、クランベリーの香味、チェリーの香味、グレープフルーツの香味などの様々な他の果実の香味を使用することができる。これらの果実の香味は果汁及び香味油などの天然資源から誘導することができ、又は別の方法としては合成的に調製されてもよい。用いられる香味剤の量は、用いられる剤及び最終組成物において所望される特徴又は強度に応じて変わる。当業者は容易にこうした決定をする。
【0041】
例えば炭水化物甘味剤、並びに天然及び/又は人工のカロリー無し/低カロリーの甘味剤を包含する1以上の甘味剤が、本明細書に任意に用いられてもよい。例えば本発明の組成物は、炭水化物甘味剤のいずれか、好ましくは単糖類及び/又は二糖類によって甘味付けすることができる。本発明の組成物中に用いる好ましい糖甘味剤は、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、及びこれらの混合物である。
【0042】
1以上の強度の高い甘味剤を使用してもよい。例えば、次の甘味剤のうちの1つ以上を使用してよい:サッカリン、シクラメート類、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味剤類(例えば、アスパルテーム);L−アスパルチル−D−アラニンアミド類(米国特許第4,411,925号に開示);L−アスパルチル−D−セリンアミド類(米国特許第4,399,163号に開示);L−アスパルチル−L−1−ヒドロキシメチルアルカンアミド甘味剤類(米国特許第4,338,346号に開示);L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチアルカンアミド(hydroxyethyalkaneamide)甘味剤類(米国特許第4,423,029号に開示);L−アスパルチル−D−フェニルグリシンエステル及びアミド甘味剤類(欧州特許出願168,112に開示);N−[N−3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン1−メチルエステル甘味剤類(PCT国際公開特許WO99/30576に開示);タウマチン;ジヒドロカルコン類;シクラメート類;ステビオシド類;グリチルリチン類、合成アルコキシ芳香族化合物類;スクラロース;スオサン(suosan);ミラクリン;モネリン;ソルビトール、キシリトール;タリン(talin);スルファミン酸シクロヘキシル類;置換イミダゾリン類;合成スルファミン酸類、例えば、アセスルファム、アセスルファムK、及びn−置換スルファミン酸類;オキシム類、例えば、ペリラルチン(perilartine);ペプチド類、例えば、マロン酸アスパルチル類及びサッカニリン酸(succanilic acid);ジペプチド類;アミノ酸系甘味剤類、例えば、gem−ジアミノアルカン類、m−アミノ安息香酸、L−アミノジカルボン酸アルカン類、並びに特定のα−アミノジカルボン酸類及びgem−ジアミン類のアミド類;並びに3−ヒドロキシ−4−アルキルオキシフェニル脂肪族カルボキシレート類又は複素環式芳香族カルボキシレート類;エリスリトール;並びにこれらの混合物。アスパルテームは特に好ましい。用いられる甘味剤の量は、用いられる剤及び最終組成物において所望される特徴又は強度に応じて変わる。当業者は容易にこうした決定をする。
【0043】
1以上の酸化防止剤を、本発明の組成物中に使用してもよい。天然起源並びに合成の酸化防止剤を用いてもよい。天然の酸化防止剤の非限定例には、トコフェロール類(例えば、ビタミンE)、アスコルビン酸(例えば、ビタミンC)、ビタミンA(例えば、β−カロチン)、ブドウの種の抽出物、セレン、及び捕酵素Q10が挙げられる。合成酸化防止剤の非限定例には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、及び没食子酸プロピルが挙げられる。
【0044】
本発明の組成物中で有用な任意構成成分のその他の非限定例には、ジクロフェナク、ナプロキセン、アスピリン、インドメタシン、オメプラゾール、強心配糖体類、ナトリウム、カリウム、又はマグネシウム塩による電解質製剤類、並びにカルシウム及び鉄製剤類、ビサコジル製剤類、バルプロ酸、5−ASA、ステロイド類、例えばヒドロコルチゾン、ブデソニド、緩下剤類、オクトレオチド、シサプリド、抗コリン剤類(anticholinergies)、カルシウムチャネル遮断薬類、5HT3拮抗薬類、例えばオンダンセトロン及びインスリンのようなペプチド類が挙げられる。
【0045】
賦形剤の非限定例としては、甘味剤類(以下に記載されるようなもの);香味料及び/又は着色剤類(以下に記載されるようなもの)、ステアリン酸及びステアリン酸マグネシウムなどの固体潤滑剤類;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びカカオ油などの植物油類;トウィーンズ(TWEENS)などの乳化剤類;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤類;結合剤類などの錠剤化剤類、酸化防止剤類;及び防腐剤類が挙げられる。
【0046】
(製造方法)
本発明の組成物が水分濃度及び酸素の影響を受け易いということから、製造プロセス中でこれらの物質の濃度を制御することは好ましい。こうして、本発明の組成物が乾燥、粉砕、混合、及び包装される雰囲気は好ましくは50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは36%未満の相対湿度(RH)でなければならないことが見出された。加えて、組成物は低酸素雰囲気下で調製されるのが好ましい。本明細書で使用する時、「低酸素雰囲気」とは、10%未満の酸素、好ましくは8%未満の酸素を含む雰囲気を包含する。低酸素雰囲気は、窒素などの不活性雰囲気を用いて最終組成物中に存在するすべての酸素を置換するようにして作り出すことができる。組成物中に存在するあらゆる酸素は酸化分解を引き起こし、次には細菌の生存可能性の喪失につながり、そして組成物が腐り又は「傷む(off)」ことになる場合があるので、低酸素雰囲気が望ましい。
【0047】
さらに、市販の安定剤類を細菌と混合する前に、それらの水分含有量を更に減少させるように前調整することが望ましい場合もある。このことを達成し得る方法の非限定例としては、減圧(真空)下でのオーブン乾燥、凍結乾燥、乾燥剤類による水分捕捉、及び流動床乾燥が挙げられる。
【0048】
(使用方法)
本発明の組成物は、動物、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトを冒す病気及び状態を緩和するための予防的、治療的処置又は非治療的処置として使用されるように意図されている。病気の症状の治療的軽減、又は予防による病気の防止のいずれかにおいて利益となる、動物の健康及び生理機能の非限定的な要素としては、炎症疾患、免疫不全、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、癌(特に胃腸及び免疫機構の癌)、下痢性疾患、抗生物質に関連する下痢、虫垂炎、自己免疫の疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、リウマチ様関節炎、真性糖尿病、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、歯周病、泌尿生殖器疾患、外科関連の外傷、手術誘発性(surgical-induced)転移性疾患、敗血症、重量喪失、拒食症、発熱の抑制(fever control)、悪液質、創傷治癒、潰瘍、腸バリア感染症、アレルギー、ぜんそく、呼吸器疾患、循環器疾患、冠状動脈性心疾患、貧血、血液凝固システムの疾患、腎臓の疾患、中枢神経系の疾患、肝臓疾患、虚血、栄養疾患、骨粗鬆症、内分泌腺疾患、及び表皮の疾患が挙げられる。下痢の処置又は防止を包含する胃腸管の処置;免疫機構の調整、好ましくは自己免疫疾患及び炎症の処置又は防止;皮膚の健康の維持又は改善、好ましくは皮膚のアトピー性疾患の処置又は防止;精神的認知及び活動濃度を包含する老化の影響の改善又は減少;及び感染中及び感染後の重量喪失の防止が好ましい。下痢の疾患は胃腸の炎症活動に関連する場合がある。
【0049】
典型的には、本発明の組成物は投与計画の一部として個人に与えられる。投与計画は、その乾燥細菌組成物が組み込まれる使用される投与形式に依存する。単位用量形態についてはカプセル又は袋の形態のどちらかとして上述した。典型的には、その単位用量品は個人に細菌を、投与1回当たり1×10cfu〜投与1回当たり1×1015cfu、好ましくは投与1回当たり1×10cfu〜1×1014cfuの濃度で与える。その単位用量品は、カプセルとして提供される場合、直接飲み込むことができる。乾燥細菌組成物を詰めた袋として提供される場合、その粉末は直接摂取されてもよく、又は牛乳、ヨーグルト、若しくは他の液体キャリア物質と混合されてもよい。典型的には、カプセルの大きさ及びそれに関連する摂取のし易さによりその中に詰めることができる乾燥細菌組成物の量が制限されることになるので、カプセルは袋よりも少ない用量を与えることがある。好ましくは、その単位用量品は個人により、少なくとも1ヶ月に1回、好ましくは少なくとも1週間に1回、より好ましくは少なくとも1日1回摂取される。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態をさらに記載し実証するものである。それらは、例証の目的で与えられており、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。該当する場合、成分はCTFA名で与えられる。
【表2】

【0051】
上記の例は以下の手順に従って調製された乾燥細菌組成物である。すべての操作はRHが30〜36%に維持された湿度調整環境において実行される。適切な量の凍結乾燥細菌(所望のCFU/gまで予め濃縮されたもの)を適切な量の微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのような安定剤と一緒にファーマテックミキサー(Pharmatech mixer)の混合キャビティに加える。細菌及び安定剤は、より効果的な混合を可能にするためにそれらの水分活性及び水分含有量が低くなるように、並びに粒径及び密度が類似するように選択されたものである。混合キャビティ内のヘッドスペースは、元のヘッドスペースの気体が置き換わってしまうように全部で10回又はその混合キャビティ内のRHが20%未満に低下されるまで乾燥窒素ガスで吹き流される。混合キャビティを次に気密な蓋で密閉し、粉末を6.3rad/s(60rpm)の回転スピードで20分間共に混合する。混合が終わってからは、その粉末を高いRH(36%RHより高い)又は水分に富む環境に露出しないようにすることによって粉末ブレンドの安定性を維持することができる。乾燥ブレンド粉末は窒素/低RH環境下でゼラチンカプセル中に包装され、密封容器中で又は袋若しくは容器中の乾燥粉末として保存することができる。結果として得られるカプセル及びその中に収容された粉末は、低温(4℃)及び室温(25℃)の両方において改善された長期安定性を有する。
【0052】
更なる実施形態では、実施例1〜8の乾燥細菌組成物を、窒素/低(<36%)相対湿度(RH)環境下でカプセル又は袋などの単位用量形態中に包装することができる。実施例9〜11はカプセルに詰められ包装された単位用量組成物の非限定例を例示している。このカプセルは丸ごと飲み込む単回投与品として摂取されるように意図されている。実施例12〜14は、カプセルと比較した場合に、投与1回当たりに細菌の数をより多く提供する袋へと包装された単位用量組成物の非限定例である。
【表3】

【0053】
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】マンノゲム(Mannogem)EZ(SDM)又はネオソルブ(Neosorb)20/60(Neo)のいずれかを有する、2×1010、2×10、及び2×10cfu/gの細菌の50/50混合物の1グラム当たりのコロニー形成単位(cfu/g)として測定した、25℃における経時的な貯蔵安定性の出発細菌濃度への依存。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌の濃度が少なくとも1×10cfu/gである乾燥細菌濃縮物を総組成物の少なくとも10重量%含む乾燥細菌組成物であって、その最終の乾燥細菌組成物は0.5未満の水分活性を有する、乾燥細菌組成物。
【請求項2】
0.4未満、好ましくは0.25未満の水分活性を有する、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項3】
前記乾燥細菌濃縮物は、1×10cfu/g〜1×1014cfu/gの細菌濃度を有する、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項4】
前記乾燥細菌濃縮物を少なくとも30%含む、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項5】
前記細菌が、生菌である、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項6】
20%未満の総水分含有量を有する、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項7】
1%〜90%の安定剤を更に含む、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項8】
前記安定剤は、10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有する、請求項7に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項9】
前記安定剤が、10%の水分含有量での−0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有する、請求項7に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項10】
多糖類、オリゴ糖類、二糖類、セルロース系物質類、ポリオール類、多価アルコール類、シリカ類、ゼオライト類、粘土類、アルミナ類、デンプン類、糖類、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの安定剤を含む、請求項7に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項11】
前記乾燥細菌濃縮物が、乳酸菌を含む、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項12】
前記乳酸菌が、連鎖球菌属、乳酸桿菌属、ビフィドバクテリウム属の細菌、及びこれらの混合物を含む、請求項11に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項13】
前記乳酸菌が、ラクトバシラス・サリバリウス種、ビフィドバクテリウム・インファンティス種の細菌、及びこれらの混合物を含む、請求項12に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項14】
前記組成物が、哺乳動物による消費に適している、請求項1に記載の乾燥細菌組成物。
【請求項15】
包装された乾燥細菌組成物であって:
a)請求項1に記載の乾燥細菌組成物;及び
b)前記乾燥細菌組成物を含む包装容器
を含む、包装された乾燥細菌組成物。
【請求項16】
前記包装容器が、袋又はカプセルを含む、請求項13に記載の包装された乾燥細菌組成物。
【請求項17】
前記包装容器が、カプセルを含む、請求項16に記載の包装された乾燥細菌組成物。
【請求項18】
前記カプセルが、ヒドロキシル−プロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、アルギネート類、又はこれらの混合物を含む、請求項17に記載の包装された組成物。
【請求項19】
単位用量組成物であって:
i)請求項1のいずれか一項に記載の乾燥細菌組成物;及び
ii)前記乾燥細菌組成物を含む包装容器;
を含み、
前記単位用量組成物は投与1回当たり1×10cfu〜1×1015cfuの細菌を与える、単位用量組成物。
【請求項20】
最終の乾燥細菌組成物の少なくとも10重量%の濃度において少なくとも1×10cfu/gの細菌濃度を有する乾燥細菌濃縮物を提供する工程を含む乾燥細菌組成物を安定化する方法であって、前記最終の乾燥細菌組成物は0.5未満の水分活性を有する、乾燥細菌組成物を安定化する方法。
【請求項21】
前記乾燥細菌濃縮物を、10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有する安定剤と組み合わせる工程を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、前記組成物を低酸素雰囲気下で製造することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記組成物を50%未満の相対湿度を有する雰囲気下で製造することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥細菌濃縮物は、凍結乾燥されている、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
処置を必要としている哺乳動物を処置する方法であって、請求項19に記載の組成物を、処置を必要としている前記哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が、前記組成物を少なくとも月1回投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−508035(P2007−508035A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535472(P2006−535472)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/037428
【国際公開番号】WO2005/047489
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【出願人】(506128020)アリメンタリー、ヘルス、リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】ALIMENTARY HEALTH LTD
【Fターム(参考)】