説明

プロバイオティック菌株を含む発酵食品及びその製造方法

本発明は主に、発酵食品グラム当たり約5・10、特に10を超えるビフィズス菌を含む発酵体を含む、棚寿命(シェルフ・ライフタイム)が少なくとも30日間、特に少なくとも35日間の、非固形発酵食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はプロバイオティック菌株を含む発酵食品及びその製造方法に関する。
【0002】
ビフィズス菌は結腸(大腸)における主な嫌気性菌叢に属する。ヒト結腸における主な菌種はビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・エスエスピー・インファンティス(Bifidobacterium longum ssp infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)である。
【0003】
ビフィズス菌は最適なプロバイオティック細菌である。ビフィドバクテリウム属の細菌は最近市販されている多数の製品に利用されており、そして、ヨーグルト中の標準細菌(ストレプトコカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus))を既に含む乳製品にしばしば添加されている。
【0004】
ビフィズス菌の消費は、抗生物質療法を受けた個人の正常なビフィズス菌の集団菌数を再生させる方法において利益があると認識されている。また、この消費は便秘を緩和し、下痢を防止し、乳糖不耐症の症状を減らすことを可能にするようである。
【0005】
プロバイオティックスは生きた細菌である。製品中でのこれら細菌の生存の問題に関連して、これらの生きた細菌を乳製品のような食品の製造に使用することには、特に注意が必要である。
【0006】
ビフィズス菌を含む80%の最近の市販の製品は、それを消費した個人の腸内への通過を有意に改善していることを可能にしているという維持基準を満たしていない。一日当たり少なくとも10〜10の生きた細胞の摂取が、治療効果をもたらすための最低量であると推奨されている(Silva A.M., Barbosa F. H., Duarte R., Vieira L. Q., Arantes R. M., Nicoli J. R., Effect of Bifidobacterium longum ingestion on experimental salmonellosis in mice, J. Appl. Microbiol. 97 (2004) 29-37)。要求される量が、用いたプロバイオティック菌株に依存し変化することはあり得る。
【0007】
ビフィズス菌を含む生物活性を有する製品の製造の場合には、従って、これら細菌の十分量の集団菌数を製品に含み、それを製品の「ライフ(寿命)」の期間中維持するという問題が生じる。
【0008】
発酵乳製品におけるプロバイオティック菌株集団菌数の数量の問題は、既知の問題である(特に、D. Roy, Technological aspects related to the use of bifidobacteria in dairy products, Lait 85 (2005) 39-56, INRA, EDP Sciencesを参照)。
【0009】
貯蔵中での集団菌数の減少、特定のpHから出発した場合のこれら細菌の増殖阻害、ごく単純に、これらビフィズス菌の、特に乳中での低い増殖能力、を始めとするこの問題に関するいくつかの理由が示唆されている。
【0010】
本発明の主な目的は、発酵食品の保存期間中を通してビフィズス菌の大きな集団菌数を含む、非固形(non―firm)の前記発酵食品を提供することであり、すなわち、前記発酵食品の保存期間中、特に製品の使用期限まで、良好な生理的状態のビフィズス菌を含み、有意な生存率を有する非固形の発酵食品を提供することである。
【0011】
本発明のその他の目的は、前記製品の取得を可能にする、実行するのが単純な製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のその他の目的は、ビフィズス菌ヨーグルト中に存在する標準共生の下で、ビフィズス菌の成長を促進させることであり、これらの共生は、一つ以上のストレプトコカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)の菌種による、標準の仕方で構成される。
【0013】
本発明の目的は、本発明者の驚くべき発見のおかげで達成された:その発見とは、非固形の発酵食品の製造方法の標準方法に含まれる特定の数のパラメータの正確な制御により、他の菌種の増殖を必ずしも変化させることなく、集団の発酵の後で製品グラム当たり少なくとも10のビフィズス菌を迅速に取得し、及び製品の使用期限までビフィズス菌の生存率を増加させることを可能にすることである。
【0014】
本発明は、30日間、特に少なくとも35日間の保存期間中、発酵される食品グラム当たり約5・10を超える、特に約10を超えるビフィズス菌を含み、乳酸菌を含む発酵体を含む非固形発酵食品に関する。
【0015】
「非固形発酵食品」とは、その包装前の製造方法の間で凝塊の裁断(cutting of coagulum)及び/又は平滑化(smoothing)の段階を経た発酵食品を意味する。
【0016】
固形発酵食品とは、発酵前に包装され、発酵は包装容器中で進行する製品を意味する。従って、乳製品ではミルクは発酵が進行するポット(つぼ)に播種され直接包装される。播種後に、播種されたミルクはポットに包装される。これらのポットは通常3時間にわたり置かれる。細菌は繁殖し乳糖を消費し、乳糖は次いで部分的に乳酸に変換し、乳酸はタンパク質の構造を変化させ、乳酸ゲルとして知られるものを形成する。次いで、この製品は通風冷却器又は冷却トンネルの中に置かれ、約4℃で保存される。
【0017】
非固形発酵食品の例として、攪拌型ヨーグルト又は飲用ヨーグルトを挙げることができる。
【0018】
「発酵体(ferments)」は細菌のセット、特に発酵を目的とした細菌、及び/又はバイオティック価値を有する細菌のセットを意味する。
【0019】
発酵食品の保存又は貯蔵期間は、発酵食品の調製及びその包装工程の終了直後に続く期間である。この発酵食品の保存期間中は、発酵食品は、通常、約4〜10℃の間の温度で保存される。
【0020】
前記発酵食品は、発酵食品グラム当たり約5・10、特に約10を超えるビフィズス菌を含み、保存期間は少なくとも35日間であり、特に保存期間が少なくとも40日間である。更に、特に前記の発酵食品は、製品の使用期限まで、発酵食品グラム当たり約5・10、特に約10を超えるビフィズス菌を含む。
【0021】
使用期限は直近の登録により規定される法定保存期間に依存し、通常、それは製造日より15〜50日間まで変えることができる。例えば、新鮮な乳製品についての法定保存期間は通常30日間である。
【0022】
4〜10℃の間で保存される製品の使用期限においてビフィズス菌の集団菌数が10CFU/g以上である場合に、それは食品のビフィズス菌の供給に関する医学的推奨が与えられるに十分なビフィズス菌の集団菌数であることができる。
【0023】
本発明は、より詳しくは、前記に定義される発酵食品に関するものであって、ここで、少なくとも30日間の、特に少なくとも35日間の保存期限開始時点での発酵食品に含まれるビフィズス菌数に対する、保存期限終了時点での発酵食品に含まれるビフィズス菌数の割合が、約0.2〜約0.8、特に約0.3〜約0.7、特に約0.4〜約0.5である。
【0024】
換言すれば、保存期間の開始時点(すなわち、調製工程の終了時点)と保存期間の終了時点の間での発酵食品に含まれるビフィズス菌の生存比率が20〜80%の間、特に30〜70%の間、特に40〜50%の間である。
【0025】
前記保存期間は、少なくとも30日間、特に少なくとも35日間、しかし、より詳しくは少なくとも40日間又は発酵食品の使用期限まで延長される。
【0026】
また、本発明は非固形発酵食品に関するもので、それは少なくとも30日間、特に少なくとも35日間の保存期間中、約4〜10℃の温度で保存され、発酵食品グラム当たり約10のビフィズス菌を含む発酵体を含む。
【0027】
より詳しくは、本発明は非固形発酵食品に関するもので、それは少なくとも30日間、特に少なくとも35日間、特に少なくとも40日間の保存期間中、12℃より低い、又は10℃より低い温度で保存され、発酵食品グラム当たり約5・10を超える、特に10を超えるビフィズス菌を含む発酵体を含む。
【0028】
本発明は、より詳しくは、前記に定義される発酵食品に関するもので、それは保存期間開始時点で発酵食品グラム当たり約5・10を超える、特に約10を超えるビフィズス菌を含む。
【0029】
請求項1〜4の一つに記載される発酵食品において、発酵食品に含まれるビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、特にビフィドバクテリウム・アニマリス・アニマリス(Bifidobacterium animalis animalis)、及び/又はビディフォバクテリウム・アニマリス・ラクティス(Bidifobacterium animalis lactis)、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及び/又はビディフォバクテリウム・インファンティス(Bidifobacterium infantis)及び/又はビディフォバクテリウム・ビフィドゥム(Bidifobacterium bifidum)の型である。
【0030】
有利には、前記に定義される発酵食品は、植物ジュース、そして特に果実ジュース、又は野菜ジュース(例えば、大豆ジュース)、又は乳製品(特に、牛乳やヤギ乳)に基づいて調製される。
【0031】
前記発酵食品は羊乳又は、ラクダ乳又は馬乳に基づくことも可能である。
【0032】
植物ジュースとは植物の抽出物、特に大豆、豆乳、オートムギ、小麦、トウモロコシなどから作られたジュースを意味する。
【0033】
野菜ジュースの例としては、トマトジュース、ビートジュース、人参ジュースなどが挙げられる。
【0034】
果実ジュースの例としては、リンゴ、オレンジ、イチゴ、モモ、アンズ、プラム、ラズベリー、ブラックベリー、グースベリー、パイナップル、レモン、柑橘類果実、グレープフルーツ、バナナ、キウイ果実、西洋ナシ、サクランボ、パッションフルーツ、マンゴ、外国産果実ジュース、多種果実ジュースなどが挙げられる。
【0035】
有利な実施態様によると、前記に定義される発酵食品は、発酵体が乳酸菌、特にラクトバチルス種(Lactobacillus spp.)そして特にラクトバチルス・デルブルエッキ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii bulgaricus)及び/又はラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及び/又はラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)及び/又はラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及び/又はラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactobacillus helveticus)及び/又はラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)属の細菌一つ以上、及び/又はラクトコカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)及び/又はストレプトコカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及び/又はラクトコカス・ラクティス(Lactococcus lactis)の細菌、及び/又はロイコノストック(Leuconostoc)属の細菌一つ以上、を含む。
【0036】
有利な実施態様によると、前記に定義される発酵食品は、発酵体はそれら間での共生現象を示すような乳酸菌を含む。
【0037】
「共生現象」とは、相互間補助とその発酵活性を高めることが可能な、異なる型の乳酸菌間の関係を意味する。
【0038】
有利な実施態様によると、前記に定義される発酵食品に含まれる発酵体中のビフィズス菌の割合は、約20〜約80%、特に約30〜約70%、特に約40〜約60%、そして特に約50%である。
【0039】
「発酵体中のビフィズス菌の割合」とは、発酵食品に含まれる総細菌数に対する、すなわち、全てのビフィズス菌及び他の細菌(特に、ラクトコカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ストレプトコカス(Streptococcus)の細菌など)に対する、相対的なビフィズス菌の割合を意味する。
【0040】
調製工程終了時での発酵食品中のビフィズス菌及び他の菌種の間の良好なバランス、及び保存期間を通したこのバランスの実質的な維持は、食品の質の本質的な保証となる。
【0041】
50%のビフィズス菌の割合は、費用(ビフィズス菌は高価である)と適正なビフィズス菌の集団菌数を得るという二つの問題の間での、適切な妥協案である。
【0042】
特別の実施態様によると、本発明の発酵食品は攪拌型発酵食品又は飲用発酵食品又は幼児用発酵食品の形態で提示される。
【0043】
「攪拌型[…]製品」とは、特にミルク中のものであって、播種、発酵、機械的攪拌、次いで包装の処理を受けた製品を意味する。前記製品の発酵はポットの中ではなく、バルク中、タンク中で行われる。ポットに包装する前に、凝乳は攪拌され、次いで冷却され、冷凍保存される。凝乳とは特にミルクの凝集したタンパク質を意味する。
【0044】
「飲用[…]製品」とは、実質的に液状の製品を意味する。飲用製品とは、機械的攪拌段階の後に製品を包装前にタンク中に溶き入れたような製品を意味する。
【0045】
「幼児用[…]製品」とは、タンパク質及び脂肪含量の低い、幼児の需要に適した製品を意味する。
【0046】
前記発酵食品としては、特にヨーグルト、又は固形、又は攪拌型又は飲用ヨーグルト、又は乳製品を含む棒、ケフィア、乳製品入りのビスケット、又はプロバイオティックスを含む水などが可能である。
【0047】
更に、本発明は出発物質からの発酵食品の調製方法に関するものであって、以下の連続する段階:
−出発物質mL当たり約4・10〜約1・10のビフィズス菌を含む播種用の発酵体を植菌することによる、播種された物質を得るための、場合により低温殺菌された出発物質への播種段階、
−発酵開始時の温度が約36〜約38℃で、発酵終了時の温度が約37〜約39℃であり、発酵時間が約8〜約11時間であるような、発酵物質を得るための前記段階で得られる播種された物質の発酵段階、
−中間冷却時間が約1時間30分〜約2時間及び中間冷却温度が約4〜約18℃であるような、予冷物質を得るための、前記段階で得られる発酵物質の中間冷却段階、
−貯蔵時間が約15時間未満のような、貯蔵物質を得るための、前記段階で得られる予冷物質の貯蔵の段階、
−最終冷却の開始時点での温度が約21℃未満、最終冷却の終了時点での温度が約2〜約6℃であるような、発酵食品を得るための、前記段階で得られる貯蔵物質の最終冷却段階、を含む。
【0048】
出発物質の播種に用いられる発酵体は、通常、ビフィズス菌の集団菌数がコンフルエント(いっぱいに広がった状態)に達する場合に、培地mL当たり10〜10のビフィズス菌を含むような条件下で、ビフィズス菌を培地中で増殖させるにより得られる。従って、本発明により出発時点に使用される発酵体の量が、標準の方法で使用されるビフィズス菌の量の約0.1%に相当することに注意されたい。
【0049】
「発酵」とは、微生物の活動下で有機物質のエネルギー放出を含む生化学反応を意味する。それは、微生物による原料の変換方法であり、次いでこの変換によりバイオマス(生物資源)と代謝産物が産生される。特に乳酸発酵は発酵体中の細菌による乳糖の嫌気的消費方法であり、それは乳酸の形成とpHの低下をもたらす。
【0050】
本発明は、時間、温度及び最初のビフィズス菌の集団菌数を前記の範囲内で制御することにより、ビフィズス菌の抵抗力及び生存能力を高めることを可能にするという、本発明者による驚くべき発見に従ったものである。本発明の調製工程終了時点での発酵食品に含まれるビフィズス菌は、発酵食品の保存中に、より多くのビフィズス菌の生存を可能とする前記範囲の外に前記パラメータが設定される場合と比べると、より良好な生理的状態にある。
【0051】
更に、前記範囲内になるように前記パラメータを制御することで、実質的な節約(特に、時間とエネルギーの節約)がもたらされる。
【0052】
本発明に設定される範囲から外れる場合に、保存中のビフィズス菌の生存率は好ましくない変化をする。
【0053】
前記調製方法により非固形発酵食品の取得が可能になる。
【0054】
有利には、発酵体は乳酸菌を含む。
【0055】
特別の実施態様によると、本発明の発酵食品調製の方法は、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、特にビフィドバクテリウム・アニマリス・アニマリス(Bifidobacterium animalis animalis)、及び/又はビディフォバクテリウム・アニマリス・ラクティス(Bidifobacterium animalis lactis)、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及び/又はビディフォバクテリウム・インファンティス(Bidifobacterium infantis)及び/又はビディフォバクテリウム・ビフィドゥム(Bidifobacterium bifidum)の型の細菌からビフィズス菌を選択することである。
【0056】
特定の実施態様によると、本発明の発酵食品調製の方法において、ビフィズス菌はビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)型の細菌から選択される。
【0057】
有利には、本発明の発酵食品調製方法における中間冷却時間は約1時間30分である。
【0058】
有利には、本発明の発酵食品調製方法における貯蔵時間は、約12時間かそれより短く、特に約12時間である。
【0059】
有利には、本発明の発酵食品調製方法における最終冷却の終了時点での温度は、約4℃である。
【0060】
前記に定義される食品調製方法の特定の実施態様によると、播種用発酵体は、乳酸菌、特にラクトバチルス種(Lactobacillus spp.)の属、そして特にラクトバチルス・デルブルエッキ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii bulgaricus)及び/又はラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及び/又はラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)及び/又はラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及び/又はラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactobacillus helveticus)及び/又はラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)属の細菌一つ以上、及び/又はラクトコカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)及び/又はストレプトコカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及び/又はラクトコカス・ラクティス(Lactococcus lactis)の細菌、及び/又は一つ以上のロイコノストック(Leuconostoc)属の細菌一つ以上を含む。
【0061】
有利には、乳酸菌はそれらの間で共生現象を示す。
【0062】
前記に定義される食品の調製方法の特定の実施態様によると、播種用発酵体中のビフィズス菌の割合は、約20〜約75%、特に約30〜約50%、特に約35〜約40%、特に約37.5%である。
【0063】
「播種用発酵体中のビフィズス菌の割合」とは、播種段階で植えられた細菌合計全てに対するビフィズス菌の相対的割合を意味する。
【0064】
出発時点でのビフィズス菌の濃度が高ければ高いほど、発酵体中の他の菌種との相対的増殖性においてよりビフィズス菌が拮抗的になり、ビフィズス菌の最適な濃度により迅速に到達できるという仮定の下で、この割合は費用及びビフィズス菌の最終濃度という点で、最適である。
【0065】
前記に定義される食品の調製方法の特定の実施態様によると、出発物質は、植物ジュース、そして特に果実ジュース又は野菜ジュース(例えば、大豆ジュース)、あるいは乳製品、特に牛乳及び/又は山羊乳からなる乳製品に基づく。
【0066】
また、出発物質は羊乳及び/又は駱駝乳及び/又は馬乳を含むことも可能である。
【0067】
発酵食品が乳製品の場合には、出発物質はミルク、粉ミルク、砂糖、ミルクの混合物、及び植物ジュース、ミルク及び植物ジュースの混合物、ミルク及び果実ジュースの混合物、ミルク及びデンプンの混合物、を含むことが可能である。
【0068】
特別の実施態様にでは、本発明による発酵食品の調製方法は、発酵段階と中間の冷却段階の間に攪拌の追加段階を含み、それにより発酵段階において得られる発酵物質から攪拌された発酵物質を得ることができる。
【0069】
「攪拌」とは、タービン又螺旋状の攪拌器を用いて機械的攪拌を行う方法を意味する。これは、製品、特に乳製品を油状にする段階である。攪拌が激しすぎる場合には、空気の混合と漿液の分離が生じる。もし攪拌が不十分であると、結果として粘重になりすぎるという製品の危険を生じる。
【0070】
特別の実施態様にでは、本発明による発酵食品の調製方法は、播種段階の前に、低温殺菌の段階を含み、それにより出発物質から低温殺菌した出発物質を得ることができる。
【0071】
「低温殺菌」とは、沸騰させずに行う急速な加熱とそれに続く急速な冷却を含む食物保存の分野における通常の方法を意味し、それにより部分的にタンパク質を保存しながら大部分の細菌を殺すことができる。
【0072】
本発明による発酵食品の調製方法の有利な実施態様によると、低温殺菌した出発物質は、ホールドされ、場合により均一化され、冷却され、原料から得られる、場合により低温殺菌された出発物資であり、前記方法は、播種に先立って以下の連続する段階:
−標準化物質を得るための、原料の脂質の標準化を行う段階、
−強化物質を得るための、前記段階で得られる標準化物質を乾燥体により強化する段階、
−出発物質を得るための、前記段階で得られる強化物質を予熱する段階、
−低温殺菌及びホールドされた物質を得るための、前記段階で得られる出発物質の低温殺菌及びホールドの段階、
−低温殺菌され、ホールドされ、場合により均一化した物質を得るための、前記段階で得られる低温殺菌されホールドされた物質の、任意の均一化の段階、
−ホールドされ、場合により均一化され、冷却された、低温殺菌された出発物質を得るための、前記段階で得られる低温殺菌され、ホールドされ、場合により均一化された物質の最初の冷却段階、を含む。
【0073】
「脂質の標準化」とは、出発物質中の脂肪の量を予め決められたレベルまで持ってゆくことを意味する。
【0074】
乾燥物質による強化とは、凝乳の固さを変えるために行うタンパク質や脂質の添加を意味する。
【0075】
「ホールディング(Holding)」とは、ミルクの急速サーミゼーションを意味し、それにより病原性のものを含む増殖性の微生物叢を殺すことを可能にする。その時間は通常、4〜10分、特に5〜8分、そして特に約6分である。
【0076】
「均一化」とは、ミルク型物質中の脂質を分散させて小さい脂肪球にすることを意味する。均一化は、例えば100〜280バール、特に100〜250バール、特に100〜200バール、特に約200バールの圧力下で行われる。この均一化段階は、文字どおり場合により行われる。特にそれは脂質が0%の製品の製造方法には行われない。
【0077】
有利な実施態様では、本発明による発酵食品の調製方法は、最終冷却段階の後に、発酵食品を約4〜約10℃の間の温度にて保存する段階を含む。
【0078】
有利な実施態様では、本発明による発酵食品の調製方法は、播種段階と同時に又は播種段階と発酵段階の中間における、播種された物質から完全な播種された物質を得るための、又は発酵段階の後に発酵物質から完全な発酵物質を得るための、中間調製物の添加段階を含み、前記中間調製物は果実及び/又は穀物及び/又は添加物、例えば香味料及び着色料、の調製物を含む。
【0079】
中間調製物は、特に増粘剤(可溶性及び不溶性繊維、アルギン酸塩、カラゲナン、キサンタンゴム、ペクチン、デンプン、特にゼラチン化したデンプン、セルロース及びその誘導体、グァー及びイナゴマメガム、イヌリン)又は甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、スクラロース、チクロ)又は保存剤を含むことができる。
【0080】
香味料の例としては、リンゴ、オレンジ、イチゴ、キウイ果実、ココア香味料などが挙げられる。
【0081】
着色料の例としては、ベータカロチン、カーミン、コチニールレッドが挙げられる。
【0082】
更に、前記果実の調製は、全体又は断片化した又はジェリー状又はジャム状の果実を含むことができ、それにより例えば果実ヨーグルトを得ることができる。
【0083】
中間調製物は植物抽出物(大豆、米など)も含むことができる。
【0084】
本発明は、前記に定義される方法の一つから得られる発酵食品にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】出発時点でのビフィズス菌量を関数とした発酵温度効果に対応する公差表を示す図である。x−軸:10CFU/mLで植えたビフィズス菌量;y−軸:発酵の摂氏温度。黒:5・10CFU/mL未満のビフィズス菌量;細い斜線:5・10及び10CFU/mLの間に含まれるビフィズス菌量;太い斜線:10CFU/mLを超えるビフィズス菌量。測定は発酵終了時点で行われた。
【図2】20℃に冷却する前の待ち時間を関数とした10℃での最終貯蔵前の製品の冷却温度効果に対応する公差表を示す図である。x−軸:平滑化の待ち時間(時間);y−軸:最終貯蔵(℃)前の冷却時間。細い斜線:5・10及び10CFU/mLの間のビフィズス菌量;太い斜線:10CFU/mLを超えるビフィズス菌量。測定は発酵後35日目で行われた。
【図3】発酵温度を関数とした10℃での最終貯蔵前の製品の冷却温度効果に対応する公差表を示す図である。x−軸:発酵温度(℃);y−軸:最終貯蔵の冷却温度(℃).黒:5・10CFU/mLより少ないビフィズス菌量;細い斜線:5・10及び10CFU/mLの間に含まれるビフィズス菌量;太い斜線:10CFU/mLを超えるビフィズス菌量。測定は発酵後35日目で行われた。
【0086】
《実施例1》
前記に定義される異なるパラメータの範囲が保存中のビフィズス菌の生存に対する最適化と対応することを証明するために、標準攪拌ヨーグルトを個々の因子を独立に変化させて調製した。個々の因子は、低レベル(標識−1)、中レベル(標識0)及び高レベル(標識+1)で試験された。パラメータのリストを下記の表1に示す。
【表1】

異なる実験から、ビフィズス菌の増殖及び生存について、因子は関連づけられまたビフィズス菌の増殖と生存に関する公差表は完成され、それは個々のパラメータから得られるビフィズス菌量の見積もりに対応する:図1〜3参照。
特に図2に示すように、製品が十分急速に冷却されない場合には(発酵タンクでの待ち時間が長すぎると)、ビフィズス菌が損失されることに注意されたい。図3に示すように、製品が正しく4℃〜6℃の間で冷却されない場合には、ビフィズス菌のD+35での損失が有意であることに注意されたい。
【0087】
《実施例2》
産業的試験は3000リットルで行われる。
最初の試験グループ:
コントロール1:発酵温度39℃;貯蔵時間24時間。
コントロール2:発酵温度40℃。
試験1:発酵温度37℃、冷却6℃。
(コントロール1及びコントロール2:ミルク+粉ミルク)
二番目の試験グループ:
コントロール3:発酵温度39℃。
コントロール4:発酵温度40℃。
試験2:全てのパラメータは請求項の範囲より選択された、すなわち:
ビフィズス菌の植菌:1・10CFU/mL;
発酵時間:9時間40分;
発酵温度:37℃;
中間冷却時間:1時間30分;
中間冷却温度:18℃;
平滑化後の緩衝貯蔵時間:12時間;
最終冷却温度:6℃.
(コントロール3及びコントロール4:ミルク+粉ミルク+製造後の果実調製物の添加)
これらの結果は下記の表2及び3に示し、ビフィズス菌集団菌数はCFU/mLで示される。
【表2】

【表3】

これらの表では、Dは発酵の終了に相当し、例えば、D+1は1日間の貯蔵に相当する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌を含む発酵体を含む非固形発酵食品であって、保存期間が少なくとも30日間、特に少なくとも35日間の間、発酵食品グラム当たり約5・10を超える、特に約10を超えるビフィズス菌を含む、前記非固形発酵食品。
【請求項2】
少なくとも30日間、特に少なくとも35日間の保存期間開始時点での発酵食品に含まれるビフィズス菌数に対する、保存期間の終了時点での発酵食品に含まれるビフィズス菌数の比率が、約0.2〜約0.8、特に約0.3〜約0.7、特に約0.4〜約0.5である、請求項1に記載の発酵食品。
【請求項3】
約4〜約10℃の温度で少なくとも30日間、特に少なくとも35日間の保存期間の間保存され、発酵食品グラム当たり約5・10を超える、特に約10を超えるビフィズス菌を含む発酵体を含む、非固形発酵食品。
【請求項4】
保存期間開始時点で発酵食品グラム当たり約5・10を超える、特に約10を超えるビフィズス菌を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項5】
発酵食品に含まれるビフィズス菌が、ビフィドバクテリウム・アニマリス、特にビフィドバクテリウム・アニマリス・アニマリス、及び/又はビディフォバクテリウム・アニマリス・ラクティス(Bidifobacterium animalis lactis)、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ、及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム及び/又はビディフォバクテリウム・インファンティス(Bidifobacterium infantis)及び/又はビディフォバクテリウム・ビフィドゥム(Bidifobacterium bifidum)の型である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項6】
植物ジュース、特に果実ジュース又は野菜ジュース(例えば、大豆ジュース)、あるいは乳製品、そして特に牛乳及び/又はヤギ乳に基づき製造される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項7】
発酵体が乳酸菌、特に属ラクトバチルス種、そして特にラクトバチルス・デルブルエッキ・ブルガリカス及び/又はラクトバチルス・カゼイ及び/又はラクトバチルス・ロイテリ及び/又はラクトバチルス・アシドフィルス及び/又はラクトバチルス・ヘルベチクス及び/又はラクトバチルス・プランタルム属の細菌一つ以上、及び/又はラクトコカス・クレモリス及び/又はストレプトコカス・サーモフィルス、及び/又はラクトコカス・ラクティス型の細菌、及び/又は一つ以上のロイコノストック属の細菌一つ以上を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項8】
発酵体が、それら同士の間で共生現象を示す乳酸菌を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項9】
発酵体におけるビフィズス菌の割合が約20〜約80%、特に約30〜約70%、特に約40〜約60%、そして特に約50%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項10】
攪拌発酵食品、又は飲用発酵食品、又は幼児用発酵食品の形状で提示される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発酵食品。
【請求項11】
出発物質からの発酵食品の製造方法であって、以下の連続する段階、
−出発物質mL当たり約4・10〜約1・10のビフィズス菌を含む播種用の発酵体を植菌することによる、播種された物質を得るための、場合により低温滅菌された出発物質への播種段階、
−発酵開始時点での温度が約36〜約38℃で、発酵終了時点での温度が約37〜約39℃であり、発酵時間が約8〜約11時間であるような、前記段階で得られる播種された物質の、発酵物質を得るための発酵段階、
−中間冷却時間が約1時間30分〜約2時間、及び中間冷却温度が約4〜約18℃であるような、予冷物質を得るための、前記段階で得られる発酵物質の中間冷却段階、
−貯蔵時間が約15時間未満のような、貯蔵物質を得るための、前記段階で得られる予冷物質の貯蔵の段階、
−最終冷却の開始時点での温度が約21℃未満、最終冷却の終了時点での温度が約2〜約6℃であるような、発酵食品を得るための、前記段階で得られる貯蔵物質の最終冷却段階、
を含む前記製造方法。
【請求項12】
ビフィズス菌が、ビフィドバクテリウム・アニマリス、特にビフィドバクテリウム・アニマリス・アニマリス、及び/又はビディフォバクテリウム・アニマリス・ラクティス(Bidifobacterium animalis lactis)、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ、及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム及び/又はビディフォバクテリウム・インファンティス(Bidifobacterium infantis)及び/又はビディフォバクテリウム・ビフィドゥム(Bidifobacterium bifidum)型の細菌より選択される、請求項11に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項13】
ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・アニマリス型の細菌から選択される、請求項11又は12に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項14】
中間冷却時間が約1時間30分である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項15】
貯蔵時間が約12時間以下の、特には約12時間に等しい、請求項11〜14のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項16】
最終冷却の終了時点での温度が約4℃である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
播種用発酵体が乳酸菌、特にラクトバチルス種の属、そして特にラクトバチルス・デルブルエッキ・ブルガリカス及び/又はラクトバチルス・カゼイ及び/又はラクトバチルス・ロイテリ及び/又はラクトバチルス・アシドフィルス及び/又はラクトバチルス・ヘルベチクス及び/又はラクトバチルス・プランタルム属の細菌一つ以上、及び/又はラクトコカス・クレモリス及び/又はストレプトコカス・サーモフィルス及び/又はラクトコカス・ラクティス型の細菌及び/又は一つ以上のロイコノストック属の細菌一つ以上を含む、請求項11〜16のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項18】
播種用発酵体のビフィズス菌の割合が約20〜約75%、特に約30〜約50%、特に約35〜約40%、特に約37.5%である、請求項11〜17のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項19】
出発物質が植物ジュース、そして特に果実ジュース又は野菜ジュース(例えば、大豆ジュース)、あるいは乳製品、特に牛乳及び/又は山羊乳に基づく、請求項11〜18のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項20】
発酵段階と中間冷却段階の間に、発酵段階で得られる発酵物質から攪拌発酵物質を得ることを可能にする、追加の攪拌段階を含む、請求項11〜19のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項21】
播種段階の前に、出発物質から低温殺菌した出発物質を得ることを可能にする、低温殺菌段階を含む、請求項11〜20のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項22】
低温殺菌した出発物質が、ホールドされ、場合により均一化され、冷却され、原料から得られる低温殺菌された出発物資であり、播種の前に以下の連続する段階、
−標準物質を得るための、原料の脂質の標準化を行う段階、
−強化物質を得るための、前記段階で得られる標準物質を乾燥体により強化する段階、
−出発物質を得るための、前記段階で得られる強化物質を予熱する段階、
−低温殺菌及びホールドされた物質を得るための、前記段階で得られる出発物質の低温殺菌及びホールドの段階、
−低温殺菌され、ホールドされ、場合により均一化した物質を得るための、前記段階で得られる低温殺菌されホールドされた物質の、任意の均一化の段階、
−ホールドされ、場合により均一化され、冷却され、低温殺菌された出発物質を得るための、前記段階で得られる低温殺菌され、ホールドされ、場合により均一化された物質の最初の冷却段階、
を含む、請求項11〜21のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項23】
最終冷却段階の後に、約4〜約10℃の間の温度での発酵食品の保存段階を含む、請求項11〜22のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項24】
播種された物質から完全な播種された物質を得るための、播種段階と同時か、又は播種段階と発酵段階の中間における、又は
発酵物質から完全な発酵物質を得るための、発酵段階の後における、
中間調製物の添加の段階を含む、発酵食品の製造方法であって、前記中間調製物は果実及び/又は穀物及び/又は添加物、例えば香味料及び着色料である、請求項11〜23のいずれか一項に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項25】
請求項11〜24のいずれか一項に方法により得られる発酵食品。

【公表番号】特表2009−501016(P2009−501016A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520917(P2008−520917)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001687
【国際公開番号】WO2007/006969
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508013870)コンパニー ジェルヴェ ダノン (2)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】