説明

プロバイオティック製剤

本発明は、腸管や膣部のようなヒト体腔の自然微生物叢に属する生きたバクテリア、特に乳酸菌株またはビフィズス菌株、および生理的pH範囲全般において該組成物のバクテリアの増殖を阻害することなしに病原体の増殖が阻害されるレベルに鉄濃度を低下させることができる低分子量非タンパク性鉄キレーターを含むプロバイオティック組成物およびそのキットに関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してプロバイオティックな治療製剤に関連し、より具体的には、乳酸菌またはビフィズス菌および低分子量非タンパク性鉄キレーターを含み、ヒト体腔における感染の治療に有用な組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
ヒト体腔、例えば女性生殖管および腸管における感染は広く蔓延する病態であり、人口の大半を、時には再発性に冒すことが知られている。抗生物質は、長期間にわたる使用により抗生物質耐性病原菌株が出現することがあるにも関わらず、これらの病態の治療にしばしば用いられる。かかる耐性菌の出現は人類に対する深刻な危険性をもたらし得るため、体腔における感染の抗生物質に基づかない、故に抗生物質耐性を引き起こさない治療方法の開発が非常に望ましい。
【0003】
体腔、例えば膣部、男性尿道、腸管および口腔にはプロバイオティックなバクテリア、例えば乳酸菌やビフィズス菌が生来コロニー形成していることが知られている。膣および消化管における微生物叢は、嫌気性、好気性を問わないが、通性微好気性嫌気性属の乳酸菌が多数を占める広範囲の多種に渡る菌属および菌種を含む(引用文献1、2、8)。これらの菌種は、病原性微生物、例えば毒素産生性バクテリアおよび酵母菌によるコロニー形成から粘膜表面を保護することが知られている。この点において、健康維持および治療のための所謂プロバイオティックアプローチの本質は、本来の細菌環境を養成または再構成するために、プロバイオティックバクテリアを共生細菌が生息する健常者の体腔に送達することにある。これに関して、共生微生物は病原性微生物と競合することが知られているため、共生微生物は予防効果、または場合によっては治療効果をも有し得る。
【0004】
多くの共生微生物に関して研究が進んでおり、種々の乳酸菌種またはビフィズス菌種、さらにはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)SF68および酵母菌サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)は特に注目されてきた。この内、特に有望であるのが乳酸菌類およびビフィズス菌類である。乳酸菌およびビフィズス菌の自然宿主は腸管および膣であり、これらの菌は粘膜および組織に接着することにより、体腔に浸潤し得る病原性微生物から該組織を保護している。健康な乳児から単離されたラクトバチルス・パラカゼイ株CNCM I-1390およびCNCM I-1391、およびラクトバチルス・アシドフィルス株CNCM I-1447は、数多くの口腔および腸管上皮細胞に結合することが示されており(引用文献29)、故に病原性微生物も接着し得る粘膜細胞にこれらの菌株も接着することが証明されている。かくして、体腔内で病原性微生物と健常乳酸菌が結合部位において競合することが示された(引用文献30および37)。
【0005】
加えて、いくつかの乳酸菌は病原体の増殖を阻害することも示されている。これらの内、例えば、ラクトバチルス・パラカゼイ株CNCM I-1390およびCNCM I-1391、およびラクトバチルス・アシドフィルス株CNCM I-1447はインビトロにおいて、腸管毒素原性大腸菌ATCC 35401またはサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)IMM 2の増殖を阻害し得る。さらに、これらの乳酸菌株の混合物は、わずかではあるが、特にエルトールコレラ菌(Vibrio cholerae El Tor)の増殖の阻害においても効果的である(引用文献31)。
【0006】
乳酸菌またはビフィズス菌を含み、病理学的感染の予防または治療に用いられる上記の全ての医薬組成物は技術的に公知であり、既に文献に報告済みである。これらの内、例として、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)株を含む膣用カプセル;抗生物質療法後の尿道感染の再発を予防するための乳酸菌を含む膣用坐薬(引用文献3);好ましくはラクトバチルス・クリスパータスCTV-05を主成分とした種々の病原体に対して有効な膣用薬物(引用文献4)が挙げられる。
【0007】
別の種々の製造物はまた、技術的に公知の乳酸菌またはビフィズス菌を含み、経口投与、好ましくは例えば下痢症の治療を意図される。これらの製造物は、医薬的製剤または発酵乳製品のどちらでもよい。しかしながら、共生乳酸菌またはビフィズス菌を用いた疾病の予防および/または治療はある程度有効であることは示されているが(引用文献5から12)、広く流通した一般的治療方法に至るに足る証拠は未だない。これはおそらく、少なくとも理論的基礎において、それらが期待ほど有効ではないからであると考えられる。
【0008】
鉄は基本的に全ての細胞および微生物において必須成長因子であることが知られている。かくして、共生微生物を含む前述の製造物の治療効果が不十分であることの原因として、遊離鉄イオン(III)の濃度が上昇しすぎたために病原体の増殖が促進される一方、乳酸菌の多くは鉄を嫌うということが挙げられる。ラクトフェリン(The Merck Index, XIII Ed., 2001, No. 9647参照)は、体内において好中球により産生される糖タンパク質であり、分泌液、例えば唾液、胃液および胆汁の主成分であることが知られているが、ヒト母乳静菌システムにおける非常に重要な因子でもある。ラクトフェリンは鉄キレート能を有するため、単独または別の有機成分との組み合わせでラクトフェリンを含有することは技術分野、特に健康補助食品の分野において周知である(引用文献14)。故に、ラクトフェリンカプセルは、例えば最大純度95%、最大で480mgのラクトフェリンを含む。
【0009】
しかしながら、ごく少人数の患者で実施した予備的な治験において、ラクトフェリンを基にした製造物の抗バクテリア効果(引用文献15)および抗ウイルス効果(引用文献16)に関する示唆はごくわずかしか得られず、結果はこのアプローチのさらなる研究の発展には不十分であった。乳酸菌をラクトフェリンを組み合わせたいくつかの製造物もまた、市販されている(例えば、コロストラム ラクトフェリン チューワブル錠、Peak Nutrition Inc., Syracuse NY)。しかしながら、この製品の生存バクテリア数(≦3.4x10CFU)は腸管における効果的なコロニー形成に必要とされる下限量を下回る。さらに、我々の知る限りにおいて、乳酸菌単独よりも乳酸菌とラクトフェリンの組み合わせの方が効果的であることを示した動物実験もしくは臨床研究は存在しない。ラクトフェリンはまた、多様な生物学的役割、例えば、鉄吸収の促進、免疫応答の調節、胚形成の調節および細胞増殖に対する影響などを有することが示唆されている。さらに、ラクトフェリンは腫瘍壊死因子αおよびインターロイキン6の放出の制御に関与することが示されている(引用文献17)。故に、ラクトフェリンの経口投与は、鉄イオン封鎖以外にも多くの異なる効果を持つ可能性がある。
【0010】
注目すべきことに、いくつかの病原体はラクトフェリンを鉄供給源として利用することが示されており(引用文献18)、故に鉄イオンをバクテリアから枯渇させる目的が妨げられることがある。このため、ラクトフェリンをプロバイオティックバクテリアと組み合わせる目的が鉄イオンのキレート化または封鎖のみである場合、ラクトフェリンの治療における使用は非常に疑問の残る選択である。鉄の低分子量天然キレーター、すなわちデフェロキサミン(The Merck Index, XIII Ed., 2001, No. 2879参照)はバクテリアにおける鉄イオンの輸送メカニズムの研究に用いられ、マウス生殖器における共生乳酸菌と病原体淋菌(Neisseria gonorrhoeae)との競合に関与することが示されている(引用文献19)。「寒天培地がデフェロキサミンを含んでいても含んでいなくても乳酸菌の増殖度合いは同様であった」ことが観察され、それ故、「詳細なメカニズムは不明であるが、共生乳酸菌はメスのマウスの感染中、淋菌の鉄利用能を上昇させる可能性がある」と結論された。さらに、いくつかのビフィズス菌は、特に鉄キレーター存在下において寒天培地で増殖させた際に、親鉄剤の産生能を有することが知られている(引用文献38)。にもかかわらず、治療的またはプロバイオティック製造物におけるキレーターの使用の可能性に関する示唆は一切存在しない。いずれの場合においても、いくつかのバクテリアは実際にデフェロキサミン受容体を有することが知られている(引用文献20)。かくして、デフェロキサミンはストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pylosus)由来の天然親鉄剤、すなわち鉄取り込みのモジュレーターであるため、いくつかの病原性バクテリア、例えばエンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)および偽結核エルシニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)においても親鉄剤として機能し得(引用文献21)、それ故、鉄供与体としての望ましからぬ効果を発揮し得る。
【0011】
低分子量非タンパク性鉄キレーターは、鉄要求性菌種に対して抗菌活性を有することが示されている。特に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(CDTA)およびトリエチレン−テトラアミン六酢酸(TTHA)は表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の増殖を阻害することが示されている(引用文献22)。数多くのキレーター、例えばR,S−エチレンジアミン二コハク酸(R,S−EDDS)はコリネバクテリウム・ゼローシス(Corynebacterium xerosis)ATCC 7711の増殖を阻害することが示されている(引用文献23)。
【0012】
低分子量非タンパク性鉄キレーターはまた、口内殺菌剤の添加剤(引用文献24)、局所的デオドラント製剤の添加剤(引用文献22、23および25)、腸管使用を目的とした殺菌組成物の成分(引用文献26)、およびおそらくは局所使用を目的とした殺菌組成物の成分(引用文献27)として提案されている。キレーターを含んだ生理用タンポンもまた提案された(引用文献25)。
【0013】
第一遷移系列元素(鉄を含む)選択的キレーターをいくつかの生物医学的適用、例えばバクテリアおよび真菌の複製に用いることは、技術的に周知である(引用文献28)。しかしながら、上記の先行技術文献に殺菌または滅菌にも用いられるキレーターを含む組成物が開示されるように、かかる組成物はヒトの体腔における感染の予防および/または治療には使用できず、それはこれらの組成物の効果が健常人の微生物叢に存在する乳酸菌およびビフィズス菌に対しても有害である可能性があるからである。我々の知る限り、先行技術分野において、乳酸菌またはビフィズス菌を低分子量非タンパク性鉄キレーターと組み合わせた製造物の文献による報告は存在せず、理論的に示唆されたことすらない。
【発明の概要】
【0014】
今や我々は、選択された鉄キレーターを生きた乳酸菌およびビフィズス菌を含む医薬的またはプロバイオティック組成物に組み込むことにより、予期せぬことに、プロバイオティックバクテリアの増殖は阻害することなしに病原性バクテリアの増殖を阻害できることを見出した。かくして、本発明は以下を組み合わせた製造物に依る:
(a)体腔の自然微生物叢に属すると考えられる生きたバクテリア、好ましくは乳酸菌種またはビフィズス菌種株、より好ましくは粘膜表面に接着する可能性、および/または病原体と共凝集する可能性が高いことから選択される株、および
(b)生理的pH範囲において、該組成物中のバクテリアの増殖を阻害することなしに病原体の増殖を阻害するレベルにまで鉄濃度を低下させることができる低分子量非タンパク性鉄キレーター。
【0015】
(発明の詳細な説明)
かくして、本発明の最初の態様として、以下を含む医薬的またはプロバイオティック組成物が挙げられる:
(a)少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株、または少なくとも1つのビフィズス菌種およびビフィズス菌株、またはそれらの混合物;および
(b)少なくとも1つの低分子量非タンパク性鉄キレーター。
本発明の組成物は、ヒト体腔における感染による病理または病理状態の予防および/または治療に用いられ得るという点で特に効果的である。
【0016】
本明細書中では、特に断らない限り、用語「乳酸菌種」、「乳酸菌株」、「ビフィズス菌種」および「ビフィズス菌株」は、人体における優れた許容性およびヒトの粘膜に対する高い親和性を有する菌種および菌株を意図するものとする。
【0017】
好ましくは、乳酸菌株は、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、およびラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Lactis)から選択される。より好ましくは、乳酸菌株は、ラクトバチルス・ジョンソニLa1 NCC 2461(= CNCM I−2116)、ラクトバチルス・ロイテリ株4000および4020(BioGaia Biologics Inc., Raleigh, NCより購入)、ラクトバチルス・パラカゼイ株CNCM I−1390、CNCM I−1391、CNCM I−1392、ラクトバチルス・カゼイ株Shirota、ラクトバチルス・アシドフィルス株CNCM I−1447、ラクトバチルス・アシドフィルスLat 11/83、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2463(=CNCM I−2623)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC 53103)、ラクトバチルス・ラムノサス271(DSMZ 6594)およびラクトバチルス・ラムノサスVTT E−800からなる群より選択される。
【0018】
ビフィズス菌株に関しては、好ましくはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、およびビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)から選択される菌種に属する。より好ましくは、ビフィズス菌株は、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥムNCC 189(=CNCM I−2333)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティスNCC 251(=CNCM I−2168)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(ATCC 27536)、ビフィドバクテリウム・ブレーベCNCM I−1226、ビフィドバクテリウム・インファンティスCNCM I−1227、およびビフィドバクテリウム・ロングムCNCM I−1228からなる群より選択される。
【0019】
上記の全ての乳酸菌およびビフィズス菌は当業者に周知であり、周知の方法により単離しても、場合によっては引用したバクテリアコレクションから直接得てもよい。
【0020】
特に断らない限り、本発明の医薬的またはプロバイオティック組成物は、上記の乳酸菌およびビフィズス菌から選択される1つまたはそれ以上の乳酸菌種および乳酸菌株、1つまたはそれ以上のビフィズス菌種およびビフィズス菌株、またはそれらいずれの混合物を含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、該組成物は少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株または少なくとも1つのビフィズス菌種およびビフィズス菌株を含む。より好ましくは、本発明の医薬的またはプロバイオティック組成物は少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株を含む。
【0021】
本明細書中では、特に断りがない限り、用語「キレーター」は、遷移金属または別の金属実体と1つ以上の配位結合による複合体形成能を有する官能基の存在を特徴とする化学成分、試薬、化合物または分子自体、または医薬的に許容されるその塩を意図する。特別な場合、本発明の該キレーター(または、キレート化剤として知られる)は、鉄封鎖剤として働くことにより鉄配位複合体を形成することができる、生理的に許容される誘導体である。ほとんどの好ましい鉄キレーターは、pHが4.6から8.2の範囲において、少なくとも1015L/mol、好ましくは1017L/mol以上の鉄イオン(III)の条件生成定数を有する。用語「生理的に許容される」は、上記の乳酸菌および/またはビフィズス菌との組み合わせの、いずれの投与経路によるヒトの治療を目的とした投与に適したいずれのキレーターを意図する。用語「非タンパク性キレーター」または「非タンパク性キレート化剤」は、当業者に周知のタンパク質の定義であるタンパク質構造の特徴を有しないいずれのキレーターを意図する。典型的には、本発明の非タンパク性キレーターにおいて、平均分子量(MW)は10kDa以下であり、より好ましくは5kDa以下であり、さらに好ましくは1kDa以下であり、タンパク質構造の平均MW(例えば、ラクトフェリンMW=80kDa)を大きく下回る。
【0022】
適切なキレート化剤は、ピリジノン誘導体、例えばデフェリプロン(The Merck Index, XIII Ed. 2001, No. 2878参照)、ヒドロキサメート類、例えばデスフェロキサミンBまたはアセトヒドロキサム酸;カテコール類、例えば1,8−ジヒドロナフタレン−3,6−スルホン酸、MECAMS、4−LICAMS、3,4−LICAMS、8−ヒドロキシキノリンまたはジスルホカテコール;ポリアミノポリカルボン酸およびその誘導体、特にエチレンジアミン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)−エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HBED)、N,N’−エチレンビス−2−(O−ヒドロキシフェニル)グリシン(EHPG)、トリエチレン−テトラアミン六酢酸(TTHA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DTPA−ビスメチルアミド、ベンゾDTPA、ジベンゾDTPA、フェニルDTPA、ジフェニルDTPA、ベンジルDTPA、ジベンジル−DTPA、N,N−ビス[2−[(カルボキシメチル)[(メチルカルバモイル)メチル]エチル]−グリシン(DTPA−BMA)、N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−3−(4−エトキシフェニル)プロピル)]−N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]グリシン(EOB−DTPA)、4−カルボキシ−5,8,11−トリス(カルボキシメチル)−1−フェニル−2−オキサ−5,8,11−トリアザトリデカン−13−オイックアシッド(BOPTA)、N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]L−グルタミン酸(DTPA−GLU)およびDTPA−Lys;エチレンジアミノ四酢酸(EDTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン;N,N,N’,N’−四酢酸(CDTA)、NTA、PDTA、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,−三酢酸(DO3A)およびその誘導体、例えば[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,−三酢酸(HPDO3A)および対応する[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)−N,N,N,N10,O,O,O,O10]カルシネート(1−),カルシウム(2:1)(より一般的にはカルテリドールまたはCa(HPDO3A)として知られる)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−三酢酸(NOTA)、6−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]テトラヒドロ−6−メチル−1H−1,4−ジアゼピン−1,4(5H)−二酢酸(AAZTA)およびその誘導体、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)およびその誘導体、例えば、特にベンゾ−DOTA、ジベンゾ−DOTA、(α,α’,α’’,α’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロ−テトラデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA)、および1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA)、または1つまたはそれ以上のカルボキシル基がホスホン酸および/またはホスフィン酸により置換されたこれらに対応する化合物、例えば、N,N’−ビス−(ピリドキサル−5−ホスフェート)−エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(DPDP)、エチレンジニトロテトラキス(メチルホスホン)酸(EDTP)、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン)酸(DOTP);およびテキサフィリン類、ポルフィリン類およびフタロシアニン類からなる群より選択される。
【0023】
本発明の好ましいキレート化剤は、例えばデフェリプロン、HPDO3Aおよびその誘導体、例えば特に、カルテリドール、DTPAおよび、例えばDTPA−GluおよびDTPA−Lysを含むその誘導体;DOTAおよびその誘導体;BOPTA;AAZTAおよびその誘導体;EDTAおよびその誘導体;TETAおよびその誘導体である。
【0024】
上記のキレート化剤は当業者に周知であり、周知の方法により製造されてもよい。さらに、それらの大部分は、既にヒトに対して使用された経験を有する。
【0025】
鉄キレーターの一般的な参考文献として、例えば、Zu D. Liu, Robert C. Hider; Design of iron chelators with therapeutic application; Coordination Chemistry Reviews Volume 232, Issues 1-2, October 2002, Pages 151-171が挙げられる。
【0026】
例として、鉄キレーターDTPA(DTPA CaNa、ペンテート酸カルシウムトリナトリウム)(Ditripentat(登録商標)、Heyl & Co.、ベルリン、ドイツ)は、デフェロキサミンにより高音域難聴が引き起こされるサラセミア患者の治療に、1日当たり0.5から1gの投与量で週に5日、皮下投与により用いられる(引用文献32)。さらに、塩化ガドリニウムとの複合体としてではあるが、ガドペンテト酸ジメグルミン(Magnevist(登録商標)、Schering AG、ベルリン、ドイツ)は磁気共鳴画像法の造影剤として用いられる。その経腸製剤は、服用可能な飲料中にペンテート酸トリナトリウムを賦形剤として455mg/Lが含有する。ペンテート酸ナトリウムの推奨される最大服用量(1L中、経口服用量として455mg(0.99mmol))は、少なくとも単回投与においては、既に使用されており、安全であることが証明されている。マウスにおけるDTPAの急性経口半致死量(LD50)3500mg/kgである。故に、DTPAは安全な経口薬剤であり、本発明の組成物における好ましい鉄キレーターの代表的なものである。
【0027】
同様に、化合物4−カルボキシ−5,8,11−トリス(カルボキシメチル)−1−フェニル−2−オキサ−5,8,11−トリアザトリデカン−13−オイックアシッド(BOPTA)のマウスにおける急性経口LD50は8.4mmol/kgであることが分かっている。故に、該化合物は本発明の組成物における、さらに好ましい鉄キレーターである。
【0028】
医薬的使用の目的で、これらのキレーターはまた、医薬的に許容される塩の形の複合体、例えば特に、カルシウム複合体などの中性塩として製剤化されてもよい。これに関して、実際、カルシウム結合親和性は弱く、対象の医薬組成物と鉄との結合は実質的には阻害されない。この点において、別のもう1つの好ましいカルシウム複合体の形の鉄キレーターとして、カルテリドール(別名Ca(HPDO3A))および対応する[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)−N,N,N,N10,O,O,O,O10]カルシネート(1−),カルシウム(2:1)(ガドテリドール(The Merck Index, XIII Ed., 2001, No. 4353参照)の静脈内造影製剤に用いられる)が挙げられる。
【0029】
本発明の好ましい治療的またはプロバイオティック組成物は、目的の投与経路に依存して、製薬分野で採用される製造方法に基づき、様々な方法で製剤化され得る。好ましくは、本発明の組成物は、以下に詳しく述べるように、経口または局所的に投与されてもよい。例えば、該組成物はその成分の混合物として、または1つのキット中の別々の医薬的製剤(例えば同時または時間差で経口または膣投与される)として等しく提供されてもよい。かくして、本発明の別の態様として、第1のパーツが少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株、または少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株、またはそれらの混合物を含み、第2のパーツが少なくとも1つの低分子量非タンパク性鉄キレーターを含むパーツのキットが挙げられる。
【0030】
本発明の特に好ましいその例を以下に記載するが、これらに限定はしない。
【0031】
腸管に使用する組成物
本発明の最初の態様として、好ましくは飲料、カプセル、幼児用製剤または乳製品として投与される、一般的に胃腸使用を目的とした組成物が挙げられる。この組成物においては、選択されるバクテリアは、対象に投与されるバクテリア量が1日あたり約10から約1014CFU、好ましくは約10から約1012CFU、より好ましくは約10から約1012CFUになるよう適切に用いられる。対応する鉄キレーターの量は、約10−3から約10−9モルであり、好ましくは10−4から約10−7モルである。
【0032】
本発明の組成物が経口製剤の剤形を意図された場合、それらはいずれの適切な剤形、例えば特に、乳飲料、ヨーグルト様乳製品、チーズ、アイスクリーム、発酵穀物を主原料とする食品、粉ミルク、幼児用製剤、錠剤、カプセル、懸濁液、内服用乾燥粉粒体または粉末、内服用湿潤ペーストまたはゼリー、乾式栄養管用の粉粒体もしくは粉末または湿式栄養管用の液体として提供され得る。
【0033】
もしくは、飲料は活性成分を含む溶解性カプセルから服用前に調製されてもよい。好ましくは、飲料は、凍結乾燥したバクテリアおよび鉄キレーターを含む粉末、または凍結乾燥したバクテリアを含む粉末を既にキレーターを含む生理的溶液と一緒に服用前に再構成して調製してもよい。
【0034】
乾燥粉末は好ましくは固形物としての安定性が長期間維持されるような方法、例えば気密、遮光された小袋に、空気または窒素下において、希ガスまたは減圧下において、包装される。カプセルに関しては、標準的な方法により適切に製造されてもよい。
【0035】
上記の全てについて、例えば組成物自体を安定化させる目的、容易に分散させる目的、または好ましい味覚にする目的で、本発明の組成物が医薬的製剤に一般的に用いられるいずれの別の賦形剤をさらに含有し得ることは、当業者に自明である。これらの賦形剤の内、イヌリン、果糖、澱粉、キシロオリゴ糖、二酸化ケイ素、緩衝剤および香料は適切な例である。
【0036】
さらに、任意の活性成分、例えばビタミン類、アミノ酸、ポリペプチドなどもまた、本発明の組成物に含まれていてもよい。任意の活性成分の例としてグルタミンを挙げることができるが(引用文献33)、グルタミンは腸管細胞が病原性生物によるストレス下において自身を保護することを補助する可能性がある(引用文献34および35)。アラニル−グルタミン(引用文献36)および種々のビタミンもまた、該組成物の別の成分となり得る。
【0037】
自然に存在する鉄イオンの、キレーターとの結合および/またはキレーターによる封鎖を阻害させないために、遷移金属が存在することは避けるべきである。しかしながら、本発明の好ましいキレーターが別の生理的に存在する遷移金属イオン(例えば亜鉛または銅)に比べて非常に強く鉄イオンと結合することを考慮すると、これら後者が存在しても該組成物の効果が実質的に影響されることはない。
【0038】
膣に使用する製剤
別の態様によると、本発明はまた、膣使用を目的とした組成物、例えば膣用圧縮坐薬または挿入物、好ましくはタンポンまたは圧注器のような即溶解型のものを提供する。膣用坐薬およびカプセルは周知の医薬的製剤である。しかしながら、これらの製造過程においては、既知の方法(引用文献4)によりバクテリアの生存可能温度において作業が行われることに特に注意が払われるべきである。膣用挿入物はまた周知のものであり、例えば、本発明の組成物を含むマルトデキストリンビーズを粉末圧縮することにより製造されてもよい(引用文献4)。標準的な生理用タンポンおよびその製造方法は、その表面に本発明の該成分を含有させた膣用タンポンを得ることで適応可能である;完成したタンポンは湿気からの保護に適した方法で包装されていることが好ましい。膣用ビデは市販のものがよく知られており、一般的に適切な塗布器で局所的に適用される製造物からなるため、本発明の組成物の膣内送達に適している。
【0039】
特に断らない限り、膣使用を目的とした組成物もまた、周知の別の賦形剤(例えば、緩衝剤)および/またはこのタイプの製剤に用いられることが知られている活性成分を含有し得ることは明らかである。
【0040】
本発明の組成物は胃腸管または膣部におけるコロニー形成に特に有効であったため、特に過去に抗生物質を使用した場合に、微生物叢の機能回復が可能である。該組成物が健常な粘膜表面に接着したプロバイオティックバクテリアの維持またはヒト体腔、例えば膣部、男性尿道、腸管および口腔における感染の治療における広い範囲の適用を有し得ることは当業者に自明である。本発明の組成物を効果的に使用することができる膣部感染の例として、限定しないが、細菌性膣炎、症候性イースト菌膣炎、淋病、クラミジア、トリコモナス症、ヒト免疫不全ウイルス感染、尿路感染症または骨盤内炎症性疾患が挙げられる。さらに、胃腸管の病理症状の内、幼児または成人の急性下痢症、ロタウィルス関連の下痢症、旅行者の下痢症もしくは抗生物質関連の下痢症、および反復性クロストジリウム難治性大腸炎の治療に本発明の組成物が用いられてもよい。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、限定はしない。
実施例1
飲料製剤
飲料製造に適した乳酸菌および少なくとも1つの低分子量非タンパク性鉄キレーターを含む粉末を以下の組成になるように製剤化した:
【表1】

この粉末の一部(7g)を低湿度条件下で小袋に満たし、密封した。1回に服用する飲料は、グラス1杯の水に小袋の中身を懸濁したものとした。
【0042】
実施例2
飲料製剤
実施例1と同様にして、選択された乳酸菌株および低分子量非タンパク性鉄キレーターを含む粉末を製剤化した。ここで、キレーターはカルテリドール([10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)−N,N,N,N10,O,O,O,O10]カルシネート(1−),カルシウム(2:1)、略してCa(HP−DO3A))であり、実施例1と同量が含まれる。
【0043】
実施例3
飲料製剤
選択された乳酸菌株および少なくとも1つの飲料製造に適した低分子量非タンパク性鉄キレーターを含む粉末を以下の組成になるよう製剤化した:
【表2】

この粉末の一部(7g)を低湿度条件下で小袋に満たし、密封した。1回に服用する飲料は、グラス1杯の水に小袋の中身を懸濁したものとした。
【0044】
実施例4
乳幼児治療用製剤
0.5%から5%、好ましくは2%のポリペプチド;0.2%から10%、好ましくは4%の脂肪;1%から25%、好ましくは8%の非レバン炭水化物(乳糖65%、マルトデキストリン20%およびデンプン15%);適当量の鉄キレーターおよび少なくとも10CFU/mLの以下の菌株:ラクトバチルス・アシドフィルスCNCM I−1447、1日の必要量を満たす量のビタミンとの組み合わせる;0.01%から2%、好ましくは0.3%のミネラル、および50%から75%の水を混合することにより、乳幼児治療用製剤を得た。
【0045】
実施例5
治療用乳製品
ヨーグルト様乳製品を以下の方法で製造した。2.8%の脂肪分を含み2%のスキムミルク粉末および6%ショ糖を添加した乳製品1リットルを製造した。その後、公知の方法によりその乳製品を96℃で30分間低温殺菌した。次いで、適当量のカルテリドールを添加した。
ラクトバチルス・パラカゼイの前培養物を、10%還元粉ミルク、0.1%酵母エキス(市販)および1%ショ糖を含む培地で再活性化した。再活性化した前培養物(1%)を低温殺菌した乳製品に播種し、この乳製品をpHが4.5になるまで発酵させた。得られた治療用ヨーグルト様乳製品は4℃で保存した。
【0046】
実施例6
膣用坐薬
滅菌したブレンダー中、窒素下で、細粒化した0.12kgのカルテリドールを1.33kgのポリエチレングリコール1000(PEG1000)と混合した。この間にポリエチレングリコールは溶解した。継続して緩やかに混合し、半固形状の固さになるまでカルテリドール−PEG1000混合物を冷却した。
激しい機械的混合および冷却容器内での減圧により、以下の成分を混和した:
【表3】

得られた混合物は、冷却圧縮成形技術により5gの坐薬に製剤化された。
【0047】
実施例7
膣用カプセル
工程の大部分は引用文献4の実施例3によるが、異なる点として、まずカルテリドールナトリウム水溶液をマルトデキストリンビーズに噴霧し、流動層乾燥機により乾燥し、その後、菌体マトリックスの懸濁液を噴霧した点が挙げられる。
マトリックスの保存法を以下に示す:
2部ゼラチン(例えば、試薬水500mLあたり137.5g)および4部スキムミルク(例えば、試薬水250mLあたり15g)を約121℃で約15分間オートクレーブした。4部キシリトール(例えば、試薬水250mLあたり59g)および4部D−グルコース(試薬水250mLあたり25g)を混合し、pHを7.2−7.4に調整し、0.22μmフィルターにより滅菌した。滅菌した成分を合わせて単一の溶液(ゼラチン基剤)にし、2−8℃で保存した。アスコルビン酸を5%(w/w)の溶液に調製し、0.22μmフィルターにより濾過滅菌し、−20℃で保存した。膣用製剤の製造に際し、ゼラチン基剤を溶かし約35℃に加温した。その後、5%(w/w)アスコルビン酸を1:10の比率でゼラチン基剤に加え、保存用マトリックス溶液を得た。カルテリドール溶液(462mg/mL試薬水)を調製し、121℃で20分間滅菌した。
【0048】
ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I−1390を引用文献30の記載により細胞密度5x109細胞/mLに増殖させ、1400−1600rpmで5分間遠心して細胞ペレットを得た。細胞ペレットをリン酸緩衝食塩水に再懸濁し、遠心して再びペレットにした。その際オブペレットを1部リン酸緩衝食塩水および10部保存用マトリックス溶液により再懸濁した。得られた細胞マトリックス懸濁液を緩やかに懸濁し、35℃で混合しながら維持した。
【0049】
完成した膣用製剤を得るため、滅菌した成分が入った流動層乾燥機を組み立てた。マルトデキストリンビーズ(Maltrin(登録商標)QD M510, Grain Processing Corporation, Muscatine, Iowa)を流動層乾燥機内に入れ、33℃で十分に乾燥した。その後、空気圧を14psiに設定し、蠕動ポンプを用いてカルテリドールナトリウム[Ca(HP−DO3A)]溶液(50mL/kgマルトデキストリンビーズ)をビーズに噴霧した。ビーズを約38℃で30分間乾燥した。温度が33℃に下がると、細胞マトリックス懸濁液(50mL/kgマルトデキストリンビーズ)を蠕動ポンプを用いてビーズに噴霧した。50%の細胞マトリックス懸濁液をビーズに噴霧後、温度は38℃に上昇した。全ての細胞マトリックス懸濁液をビーズに噴霧後、コーティングしたビーズを約38℃で約30分間乾燥した。念のため、コーティングしたマルトデキストリンビーズを冷凍し、粉末として保存してもよい。粉末をゼラチンカプセル(タイプ00)に1カプセルあたり500mgずつ充填した。1つのカプセルには約5x10CFUの乳酸菌が含まれる。カプセルは、適宜窒素下または減圧下で、予備的な気密性包装物としてもよい。
【0050】
実施例8
膣用カプセル
本工程の大部分は上記の実施例7によるが、異なる点として、細胞マトリックス懸濁液の調製時に用いられたリン酸緩衝食塩水を、10mM低分子量非タンパク性鉄キレーター、好ましくはカルテリドールナトリウム[Ca(HP−DO3A)]を含み、塩化ナトリウム濃度を等張、すなわち290mOsmol/kgに低下させたものに変更した点が挙げられる。
【0051】
実施例9
膣用カプセル
ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I−1390の代わりに引用文献4記載のラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacullus crispatus)CTV−05を用いた点を除き、膣用カプセルは原則として実施例8の記載により製造された。
【0052】
実施例10
膣用挿入物
ラクトバチルス・パラカゼイCNCM I−1390でコートしたマルトデキストリンビーズを実施例14の記載により製造した。これらを圧縮することにより膣用挿入物を製造した。
【0053】
実施例11
膣用タンポン
乳酸菌、該キレーターおよび賦形剤を含む凍結乾燥粉末を製造した。
圧縮した吸収剤、薄いパルプの円柱状の芯および短いレーヨン繊維からなる膣用タンポンを製造した。芯を高減圧下で一晩置き、作業を低湿環境において行うことにより、芯を最大限乾燥させた。後尾側の3分の1をプラスチックで仮包装し、先端側の3分の2を平面ガラス上で手で回しながら擦ることにより上記の粉末でコートした。不織カバーで芯を覆い、取り出し用の糸をその末端で芯の周りに結んだ。完成したタンポンを乾燥窒素下で遮光、気密された医薬的小袋に包装した。
【0054】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株、または少なくとも1つのビフィズス菌種およびビフィズス菌株、またはそれらの混合物;および
(b)少なくとも1つの低分子量非タンパク性鉄キレーター
を含む医薬的またはプロバイオティック組成物。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、およびラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Lactis)の菌種に属する請求項1の組成物。
【請求項3】
乳酸菌株が、ラクトバチルス・ジョンソニLa1 NCC 2461(=CNCM I−2116)、ラクトバチルス・ロイテリ株4000および4020(BioGaia Biologics Inc., Raleigh, NCより購入)、ラクトバチルス・パラカゼイ株CNCM I−1390、CNCM I−1391、CNCM I−1392、ラクトバチルス・カゼイ株Shirota、ラクトバチルス・アシドフィルス株CNCM I−1447、ラクトバチルス・アシドフィルスLat 11/83、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2463(=CNCM I−2623)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC # 53103)、ラクトバチルス・ラムノサス271(DSMZ 6594)、ラクトバチルス・ラムノサスVTT E−800からなる群より選択される請求項2の組成物。
【請求項4】
ビフィズス菌が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、およびビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)の菌種に属する請求項1の組成物。
【請求項5】
ビフィズス菌株が、ビフィズス・ビフィドゥムNCC 189(=CNCM I−2333)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティスNCC 251(=CNCM I−2168)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(ATCC 27536)、ビフィドバクテリウム・ブレーベCNCM I−1226、ビフィドバクテリウム・インファンティスCNCM I−1227、およびビフィドバクテリウム・ロングムCNCM I−1228からなる群より選択される請求項4の組成物。
【請求項6】
鉄キレーターが、pH範囲4.6から8.2において、少なくとも1015L/molの鉄(III)イオンの条件生成定数を有する請求項1の組成物。
【請求項7】
鉄キレーターが、デフェリプロン、デスフェロキサミンB、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−スルホン酸、MECAMS、4−LICAMS、3,4−LICAMS、8−ヒドロキシキノリン、ジスルホカテコール、エチレンジアミン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)−エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HBED)、N,N’−エチレンビス−2−(O−ヒドロキシフェニル)グリシン(EHPG)、トリエチレン−テトラアミン六酢酸(TTHA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DTPA−ビスメチルアミド、ベンゾDTPA、ジベンゾDTPA、フェニルDTPA、ジフェニルDTPA、ベンジルDTPA、ジベンジル−DTPA、N,N−ビス[2−[(カルボキシメチル)[(メチルカルバモイル)メチル]エチル]−グリシン(DTPA−BMA)、N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−3−(4−エトキシフェニル)プロピル)]−N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]グリシン(EOB−DTPA)、4−カルボキシ−5,8,11−トリス(カルボキシメチル)−1−フェニル−2−オキサ−5,8,11−トリアザトリデカン−13−オイックアシッド(BOPTA)、N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]L−グルタミン酸(DTPA−Glu)およびDTPA−Lys;エチレンジアミノ四酢酸(EDTA);トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン;N,N,N’,N’−四酢酸(CDTA);NTA;PDTA;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,−三酢酸(DO3A)、および[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,−三酢酸(HPDO3A)、[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザドデカン−1,4,7−トリアセテート(3−)−N,N,N,N10,O,O,O,O10]カルシネート(1−),カルシウム(2:1)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−三酢酸(NOTA)、6−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]テトラヒドロ−6−メチル−1H−1,4−ジアゼピン−1,4(5H)−二酢酸(AAZTA)およびその誘導体;1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)およびその誘導体、ベンゾ−DOTA、ジベンゾ−DOTA、(α,α’,α’’,α’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロ−テトラデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA);および1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA);またはその誘導体(ここで、誘導体では1つまたはそれ以上のカルボキシル基がホスホン酸および/またはホスフィン酸基により置換される)、N,N’−ビス-(ピリドキサル−5−ホスフェート)−エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(DPDP);エチレンジニトリロテトラキス(メチルホスホン)酸(EDTP)、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン)酸(DOTP);テキサフィリン類、ポルフィリン類、およびフタロシアニン類からなる群より選択される請求項1の組成物。
【請求項8】
鉄キレーターが、デフェリプロン、HPDO3A、カルテリドール、DTPA、DTPA−GluおよびDTPA−Lys、DOTA、BOPTA、AAZTA、EDTA、およびTETAから選択される請求項7の組成物。
【請求項9】
鉄キレーターが、デフェリプロン、カルテリドール、BOPTAおよびDTPAから選択される請求項8の組成物。
【請求項10】
ミルク飲料、ヨーグルト様ミルク飲料、チーズ、アイスクリーム、発酵穀物を主原料とする食品、粉ミルク、幼児用製剤、錠剤、カプセル、懸濁液、内服用乾燥粉粒体または粉末、内服用湿潤ペーストまたはゼリー、乾式栄養管用の粉粒体または粉末および湿式栄養管用の液体から選択される剤形の腸管使用のための請求項1の組成物。
【請求項11】
膣用圧縮坐薬、挿入物、タンポンまたは圧注器の剤形の膣使用のための請求項1の組成物。
【請求項12】
1日あたり10から1014CFUのバクテリア量を提供する請求項10または11の組成物。
【請求項13】
膣部、男性尿道、腸管および口腔のようなヒトの体腔における感染の予防または治療に使用するための請求項1から12のいずれかの組成物。
【請求項14】
細菌性腟炎、症候性イースト菌膣炎、淋病、クラミジア、トリコモナス症、ヒト免疫不全ウイルス感染、尿路感染症または骨盤内炎症性疾患、幼児または成人の急性下痢症、ロタウィルス関連の下痢症、旅行者の下痢症もしくは抗生物質関連の下痢症、および反復性クロストジリウム難治性大腸炎の治療に使用される請求項1から13のいずれかの組成物。
【請求項15】
第1のパーツが少なくとも1つの乳酸菌種および乳酸菌株、少なくとも1つのビフィズス菌種およびビフィズス菌株、またはそれらの混合物を含み、第2のパーツが少なくとも1つの低分子量非タンパク性鉄キレーターを含む、2つのパーツを含むキット。
【請求項16】
膣部、男性尿道、腸管および口腔のようなヒトの体腔における感染の予防または治療に使用するための請求項15のキット。

【公表番号】特表2012−512828(P2012−512828A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541378(P2011−541378)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067078
【国際公開番号】WO2010/069920
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】