プロバソプレシン発現癌細胞の同定および治療のための組成物およびその利用
本願発明は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体、ならびにその組成物、組織サンプルの表現型タイピングの方法、癌の治療の方法、ならびに検査用生検サンプルおよび体液の乳癌、小細胞肺癌、非浸潤性乳管癌、および非定型導管過形成についての表現多々タイピングのためのキットを開示する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願明細書は、その内容全体を引用をもって本願明細書に援用するものとする、2002年7月16日に提出された米国特許仮出願第60/396,121号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本願発明は、バソプレシン遺伝子関連表面抗原、および任意でアンギオテンシンII 2型受容体を発現する癌細胞を同定および標的とする新規組成物および方法に関連する。より詳しくは、本願発明は、細胞表面抗原としてのプロバソプレシン前駆タンパク質に構造的に関連するタンパク質を提示する癌細胞への選択性の高い、新規モノクローナル抗体およびタンパク質断片に関連する。より詳しくは、本願発明は、スクリーニングの方法、表現型のタイピングの方法、治療の方法、およびキットに関連する。
【0003】
連邦政府補助金
本願発明の開発にいたる研究のための補助金の一部は、以下の連邦政府研究助成、国防総省規約第DAM D17-94-J-4288号、国立ガン研究所規約第CA 19613号および第DK 07508号、ならびに国防総省乳癌研究プログラムフェローシップ第BC011026号にしたがって供給されたものもある。
【0004】
発明の背景
肺癌は、世界における癌に関連する死因の首位を占めており、SCLCは米国における全肺癌ケースの約16%を占めている(Travis et
al.(1995) Cancer 75:191-202)。最近、SCLCは形態学的および組織学的な総データをもとに診断されるため、この疾患は進行期に達した後に同定されることが非常に多い(Junker et
al.(2000) J.Cancer Res.Clin.Oncol.126:361-368)。放射線療法を併用した、または併用しない高用量化学療法からなる現在の治療法に対する応答率は高いが、疾患の再発は頻回で、腫瘍がこのアプローチに対して抵抗性を示すようになるため、2年生存率はわずか6乃至12%である(Johnson et al.(1998) J.Natl
Cancer Inst.(Bethesda) 90:1335-1345)。この療法には、かなりの毒性も伴う。
【0005】
バソプレシン遺伝子の発現は、視床下部ニューロンに大きく限定されており、これは17kDaまでのタンパク質産生物をコードしており、そこに4kDaまでのNグリコシド側鎖が付加すると20kDaまでのプロバソプレシン(pro-VP)前駆体が得られる。このタンパク質は通常、分泌小胞の中に詰め込まれており、そこでこのタンパク質は酵素分解されて、バソプレシン(VP)、VP-NP、およびVAGが生成される(North, W.G. In:D.Gash
and G.Boer (eds.), Vasopressin:Principles and Properties, pp.175-209.
New York:Plenum Press, 1987)。これらの成分は、その後、循環に分泌される。SCLC腫瘍および培養細胞もVP遺伝子を発現するが、無傷のプロバソプレシンタンパク質は細胞表面血漿膜に局在化することができる(Friedmann et
al.(1994) B.J.Cancer 69:260-263;North et al.(1993) Ann.NY Acad.Sci.689:107-121)。VP-NPに対して産生されたポリクローナル抗体は、培養SCLC細胞の表面に特異的に結合しており、それは免疫蛍光分析によって判定されている(Friedmann et
al.(1995) Neuropeptides 28:183-189;North et al.(1983) Prog.Brain Res.60:217-225;North
and Yu (1993) Regulatory Peptides 45:209-216)。そこで、これらの抗体の標的は、ニューロフィシン関連細胞表面抗原(NRSA)と命名されている(North et
al.(1993) Peptides 14:303-307)。ウエスタン分析法によって、ポリクローナル抗VP-NP抗体はSCLC培養細胞からの総タンパク質抽出物中の、20kDaまで、および約40kDaのタンパク質を認識する。約20kDaのタンパク質はプロバソプレシンタンパク質の大きさに相当し、約40kDaのタンパク質は関連する形状であると考えられる(Camier et al. (1979) FEBS
Lett., 108: 369-373; Lauber et al. (1979) FEBS Lett., 97: 343-347;
Lauber et al. (1981) Proc. Natl. Acad Sci. USA, 78: 6086-6090; Moore and
Rosenior. (1983) Prog. Brain Res., 60: 253-256; Nicolas et al. (1980) Proc.
Natl Acad Sci. USA, 77 2587-2591; Rosenior et al. (1981) Endocrinology,
109: 1067-1072)。プロVPタンパク質のバソプレシン、VP-NP、またはVAG領域に対して産生されたポリクローナル抗体はSCLC腫瘍切片に特異的染色を示すが、一方で、検査した非神経内分泌腫瘍に対する免疫応答の発生率は非常に低い(Friedmann et al.
(1994) B. J. Cancer 69: 260-263; Friedmann et al. (1993) Cancer
Letters 75: 79-85)。
【0006】
乳癌は、世界中で、女性の死因の首位を占めており、米国では毎年約50,000人の女性が死亡している(American Cancer
Society. Cancer Facts and Figures, Atlanta, GA: American Cancer Society, 1993)。この疾患を有効な治療には、最近、多くの進歩があったが(Silverstein,
M.J. et al., The Breast Journal (2002) 8:70-76)、介入の成功は、主にマンモグラフィによる早期発見と癌組織の外科的切除に依存している。小細胞肺癌(SCLC)の場合、バソプレシン(VP)遺伝子産生物は乳癌/非浸潤性乳管癌(DCIS)の万能腫瘍マーカーシステムを提示しているようだ。このシステムによって、早期の発癌後組織変化の高度な警告、腫瘍負荷における変化の同定および評価の正確な方法、および患者に長期生存を提供するために効果的な治療の新しい非外科的方法を提供することができる(North
et al. Br. Can. Res. Treat. (1995) 34:229-235; and North Exper.Physiol.(2000)
85S:27-40)。または、正常な乳組織かまたは非定型ハイパージスプラジアを含む各種の線維嚢胞性の症状による発現の証拠は、まだ発見されていない。乳癌におけるVP遺伝子の発現によって、GRSAと命名された表面マーカーが生じる(North Exper.
Physiol. (2000) 85S:27-40)。これらのマーカーはプロバソプレシンを認識するポリクローナル抗体と相互作用し、分子量は40および20kDaあるようだ。前記の抗体がプロバソプレシンのグリコペプチド部分と相互作用することが初めて発見されてから、この抗原はGRSA(すなわちグリコペプチド関連細胞表面抗原)と呼ばれている。
【0007】
発明の概要
本願発明は、腫瘍細胞に関連する疾患のための、効果的な治療方法、組成物、診断方法、キット、および薬学的なパッケージを提供する。
【0008】
本願発明に従った組成物は、ペプチド、抗体、抗原結合部分、および細胞内のさまざまな領域もしくはプロバソプレシン(たとえばバソプレシン(VP)、ニューロフィシン(NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)など)、またはそれ自体がニューロフィシン関連/グリコペプチド関連表面抗原(NRSA/GRSA)として提示されるものに対して免疫応答性であるペプチド模倣体を含む。本願発明の抗体は、プロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である、モノクローナル抗体であってよい。本願発明のある実施態様は、モノクローナル抗体MAG-1である。また、本願発明には、SEQ ID NO: 26に記載の重鎖可変領域配列および/またはSEQ ID NO: 27に記載の軽鎖可変領域配列を含む、抗原結合部位が含まれる抗体であって、当該抗体がプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である抗体も包含される。本願発明には、前記抗体の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、および軽鎖がヒト化抗体として包含される。本願発明の抗体、抗原結合断片およびペプチドは、侵襲性乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌において発現するプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である。
【0009】
本願発明のある実施態様には、乳癌または非浸潤性乳管癌に感受性のある患者を同定する方法であって、当該方法が、患者から検査用サンプルを採取するステップと、前記検査用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをペプチド、抗体、または抗原結合断片と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞を対照組織と比較してプロバソプレシンを過剰に発現しているかどうかを調べるステップを含む、方法であって、当該方法において、前記検査用サンプルがプロバソプレシンを過剰発現している場合、乳癌または非浸潤性乳管癌に感受性のある患者を同定することができる方法が含まれる。前記検査用サンプルは、さらに、アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と反応させてもよい。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記検査用サンプルは侵襲性乳癌であると診断される。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記検査用サンプルは非浸潤性乳管癌であると診断される。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陽性である場合、前記検査用サンプルは非定型導管過形成であると診断される。
【0010】
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドの調製、およびアンギオテンシン型2受容体に対して免疫応答性の抗体の調製を含む、乳癌、非浸潤性乳管癌、および非定型導管過形成の生検用組織サンプルの表現型タイピングに有用なキットである。前記抗体/ペプチドの調製は、任意の免疫アッセイに使用することができる。
【0011】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記生検用サンプルの表現型は乳癌の侵襲型であるとタイピングされる。
【0012】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非浸潤性乳管癌であるとタイピングされる。
【0013】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非定型導管過形成であると分類される。
【0014】
プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記の抗体の調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。前記キットの抗体調製物は、ATCC番号_____を有するハイブリドーマによって産生されたC末端プロバソプレシンのVAGドメインに結合するmAbなどのモノクローナル抗体であってよい。さらに詳しくは、前記モノクローナル抗体はMAG-1であってよい。
【0015】
前記のアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記の抗体の調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。より詳しくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体調製物は、ポリクローナルAT2抗体(カリフォルニア州サンタクルス、サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
本願発明のキットのペプチドは、プロバソプレシン部分を含み、プロバソプレシンに対して免疫応答性である。好ましくは、本願発明のペプチドは、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)のうちの、任意の1つである。
【0016】
本願発明のある実施態様には、患者から検査用サンプルを採取するステップと、前記生検用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドまたは抗体と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞をアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体と接触させるステップと、前記細胞がプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体のいずれかを発現しているかどうかを調べるステップを含む、線維嚢胞性および癌性病変を区別するために、患者から採取した乳組織サンプルの表現型をタイピングする方法が含まれる。
【0017】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記生検用サンプルの表現型は乳癌の侵襲型であるとタイピングされる。
【0018】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非浸潤性乳管癌であると分類される。
【0019】
前記生検用サンプルがプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色で染色されない場合、前記生検用サンプルの表現型は線維嚢胞性(たとえばADH)である。
【0020】
本願発明の抗体調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。好ましくは、本願発明の方法の抗体は、ATCC_____番を有するハイブリドーマによって産生されたC末端プロバソプレシンのVAGドメインに結合する抗体のような、モノクローナル抗体であってよい。さらに詳しくは、前記モノクローナル抗体はMAG-1であってよい。好ましくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体は、ポリクローナルAT2抗体(サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
【0021】
本願発明のペプチドは、プロバソプレシン部分を含み、プロバソプレシンに対して免疫応答性である。好ましくは、本願発明のペプチドは、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ ID NO: 20)、and LWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)のうちの任意の1つである。
【0022】
発明の詳細な開示
概要
効果的なスクリーニングと無毒性の治療の必要性が差し迫る中、乳癌およびSCLCの場合に記述されている各種分子および遺伝子異常を利用した、乳癌および小細胞肺癌(SCLC)と闘うための新規のアプローチの探索が始まった(Junker
et al. (2000)
J. Cancer Res. Clin. Oncol. 126: 361-368; Wistuba et al. (2001) Semin.
Oncol.28: 3-13 2001; Zangemeister-Wittke and Stahel (1999) Cell. Mol.
Life Sci. 55:1585-1598; and Popescu NC and Zimonjic DB (Oct. 30, 2002) Am.
J Med. Genet. 115(3): 142-149)。細胞表面腫瘍特異的抗原に対する抗体の可能性は、SCLCの分別的な診断への利用だけでなく、最小限の副作用を誘導する可能性があることから腫瘍の局在化および根絶への利用にも魅力的である(Weiner,
L.M. (1999) Semin. Oncol. 26: 41-50)。この戦略は、欠損または調節されていない腫瘍特異的抗原に対する場合に最も有効で、バソプレシン遺伝子の産生物はこのような抗原のために提供されてよい。
【0023】
本願発明は、プロVPタンパク質のVAG領域のC末端タンパク質である合成ペプチドを用いて産生された、mAbに向けられたMAG-1を用いた培養SCLC細胞およびヒトSCLC腫瘍組織中のNRSAの検出を開示する。MAG-1は、ウエスタン分析法で培養SCLC細胞溶解物中で約20kDa、および40kDaのNRSAタンパク質を認識するが、その一方で免疫蛍光サイトメトリー法および顕微鏡分析法では、MAG-1はこれらの細胞の表面に結合することを示唆している。より重要な点は、約20kDa、および40kDaのNRSAタンパク質は、MAG-1を用いたウエスタン分析法によってヒトSCLC腫瘍生検サンプルの溶解物中で検出された。免疫組織学的分析法では、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを明らかにした。NRSAは一般に正常細胞の表面には認められないため、SCLCの診断および治療において、腫瘍局在化のMAG-1アプローチにおいて優れた標的として働くことができると考えられる。
【0024】
現在、乳癌のスクリーニングには、直接的な免疫組織学、および数種類の腫瘍マーカーに対する一組の抗体が必要であるが、これらの腫瘍における個々の発生率は50%未満である。
【0025】
病理学者にとって、非定型導管過形成を乳癌および非浸潤性乳管癌と区別することは非常に困難で、これを実現する方法は、不必要な外科手術を受けなければならない女性を救うため、早急に必要とされている。前者の診断には一般に外科手術を必要とするが、後者は介入を必要としない。
【0026】
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンタンパク質(VAG)のグリコペプチド成分のC末端領域に対するモノクローナル抗体(MAG-1)を包含し、およびNRSAの2種類の主要な免疫応答性形状を、培養SCLC細胞から採取したタンパク質抽出物とともにヒトSCLC腫瘍から採取したタンパク質抽出物中のMAG-1を用いて検出する、ということを包含する。しかし、これらのタンパク質は、MAG-1を用いたウエスタン分析法による非腫瘍ヒト肺組織からのタンパク質抽出物においては検出されなかった。SCLCを含む一部の癌は、バソプレシン遺伝子を発現することが知られているが、すべての前駆タンパク質が酵素処理され視床下部などの循環に分泌されるわけではないらしい。ポリクローナル抗VP-NP抗体はSCLC培養細胞抽出物中の、約20kDa、および約40kDaのタンパク質を認識することが明らかになっている(North et al., (1993) Peptides
14:303-307)。正常VPメッセージのグリコシル化プロVPタンパク質産生物の予測される大きさは約20kDaで、これは無細胞翻訳アッセイを用いて証明されている(Giudice et al. (1979) J.
Biol. Chem. 254: 11767-11770; Lin et al. (1979) Biochem. Biophys. Res.
Commun. 89: 943-950; Schmale et al. (1979) FEBS Lett. 108:311-316)。過去の研究では、約40kDaのタンパク質であると考えられる伸長されたVPメッセージが同定された(North et al.,
(1993) Peptides 14:303-307; Rosenbaum et al. (1990) PNAS 87: 9928-9932)。しかし、この研究で使用されたSCLC細胞株および主要組織においてRT-PCRによって検出された、予測されたサイズの正常VPメッセージは、1種類のみで、これはヒト視床下部で検出されたもののサイズと一致した。
【0027】
ポリクローナル抗体調製物は、ヒトSCLCおよび視床下部組織切片を特異的に染色し、MAG-1を用いて観察されたものと同様に培養SCLC細胞の原形質膜に結合することが示された。本願発明者らは、約20kDaおよび約40kDaのNRSAタンパク質が、腫瘍特異的抗体として働き、抗体の標的にすることができるVP遺伝子関連産生物であることを明らかにしている(North
and Yu (1993) Regulatory Peptides 45:209-216; North et al.(1993) Peptides
14:303-307; North, W.G., et al.(1995) Breast cancer Research and Treatment
34:229-235; Friedmann et al.(1994) Br.J.Cancer 69:260-263; Friedmann et
al.(1993) Cancer Lett.75:79-85; North et al.(1989) Nuc.Med.Commun.10:643-652)。
【0028】
SCLC細胞のさまざまなタイプによるNRSA発現量は測定されていないが、本願発明者らは、MAG-1が、古典的および変異種のサブタイプ両方のSCLCに由来する培養細胞株の表面上にあるNRSAを認識できることを証明した。蛍光顕微鏡観察により、さまざまなレベルの免疫応答で調べた各SCLC 細胞タイプで、MAG-1染色が観測されるということを明らかにした。
さらに、本願発明者らは免疫組織化学的分析法によってSCLC腫瘍のMAG-1の特異性を実証した。MAG-1は、ヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しなかった。染色は腫瘍切片のSCLC細胞の表面および原形質に局在化しているようだった。MAG-1はヒト視床下部組織とも反応し、染色は原形質に局在化しているようだった。これらの結果は、MAG-1はSCLC腫瘍上のNRSAを効率的に狙うために用いることができる、ということを示唆している。MAG-1は免疫組織化学的スクリーニングで用いられた組織中にある正常肺上皮細胞とは反応しなかったが、染色は肺神経上皮小体において認められた。図中では明らかではないが、RT-PCR反応に用いられた非腫瘍肺サンプルに、VPメッセージが検出された(図1)。
【0029】
VPメッセージの発現は、使用された肺組織サンプル中の肺神経内分泌細胞の存在を表している可能性がある(Reynolds et
al.(2000) Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.278:L1256-L1263)が、プロホルモンは酵素的に処理され、視床下部と同様、その産生物は分泌される可能性がある。この理論は、図5に表される免疫組織化学的知見によって支持されている。
【0030】
MAG-1 mAbへの利用の可能性は、SCLCの局在化および治療用の腫瘍標的物質としてだけでなく、肺癌のその他の形態からSCLCを区別し、その早期診断を助けるために、重要である(Friedmann et
al.(1994) Br.J.Cancer 69:260-263; Friedmann et al.(1993) Cancer Lett.75:79-85;
North et al.(1989) Nuc.Med.Commun.10:643-652)。MAG-1 Fab断片が合成抗原とともにSCLC腫瘍および培養細胞からのタンパク質抽出物中のNRSAを認識する能力も評価された。それは、抗体断片がいくつかのin vivo用途により適している可能性があるためだ。Fabがウエスタン分析法でNRSAを認識できた一方で、合成抗原への結合親和性が低かったことは、驚くべきことではない。しかし、抗体分子の腫瘍組織への局在化、および充実性腫瘍を透過する能力は、大きさ、親和性、クリアランス速度、および抗原密度を含む数多くの因子に依存する(Adams
et al. (2001)
Cancer Res. 61: 4750-4755; Todorovska et al. (2001) J. Immunol.
Methods 248: 47-66)。
【0031】
この抗体の可変領域断片(Fv)は、画像撮影およ微量法における使用にもさらなる利点を提供することがある(Kortt et
al.(2001) Biomol.Eng.18:95-201)。
【0032】
NRSAは典型的には正常細胞の表面には認められず、古典的および変種のSCLCの間で調節されることもなく、非神経内分泌肺癌による発現の頻度は低い(Friedmann et
al.(1993) Cancer Letters 75:79-85)。したがって、NRSAは、MAG-1
mAbおよびその断片を用いた診断および療法においてSCLC腫瘍の局在化への優れた標的として働くはずである。
【0033】
本願発明は、抗体、抗体断片、その誘導体(たとえば単一特異的または二重特異的scFv断片またはFd断片など)または結合ペプチドで狙うことができる新規腫瘍特異的マーカーとしてのプロバソプレシン前駆タンパク質の発見に関連する。これまで、本願発明者らは、小細胞肺癌(SCLC)のヒト組織切片70片、乳癌ヒト組織切片62片、非浸潤性乳管癌のヒト組織切片(DCIS)55片について、各種抗体を用いてプロバソプレシンについてスクリーニングし、それらはすべて陽性染色を呈している。ADH切片を含む正常肺および乳組織切片は、これらの抗体を用いても染色を呈しない。前記プロバソプレシン前駆タンパク質を特異的腫瘍抗原として用いることができるという発見が、新規知見を構成する。研究、早期検出、診断、療法、および予防の目的のプロバソプレシン前駆タンパク質を発現する癌を狙う上で使用するための抗体、抗体断片、その誘導体、または結合ペプチドを開発するという概念が、その知見の直接的な用途である。
【0034】
正常な生理条件下では、バソプレシン遺伝子は大半が視床下部ニューロンによって発現され、ここで得られたプロバソプレシン前駆タンパク質は酵素によってせつだんされて、ペプチドホルモン成分になる。このペプチドホルモン成分には、ニューロペプチドバソプレシン(VP)、バソプレシン関連ニューロフィシン(VP-NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)が含まれる。小細胞肺癌(SCLC)、および乳癌を含む特定の癌は、バソプレシン遺伝子も発現し、腫瘍によるバソプレシン産生物は、1970年代初頭ごろから文献に記述されており、その記述では、SCLC患者の血中に高レベルのバソプレシンを検出した、と報告されている。しかし、North et al. は、1983年、プロバソプレシン前駆タンパク質は癌細胞の表面に局在化し、腫瘍抗原として働いているかもしれないという可能性を、最初に記述している。ニューロフィシンおよびグリコペプチド関連細胞表面抗原(NRSAおよびGRSA)という用語は、腫瘍を狙うために有用な抗原として提示されている状態のプロバソプレシン前駆タンパク質を意味するために用いられた。この専門用語の差違は、前記プロバソプレシンタンパク質の2つの異なる領域に対する抗体を使用しているために生じた。
【0035】
抗体は腫瘍上のプロバソプレシン(NRSA/GRSA)を狙うために用いることができる。過去の研究は、プロバソプレシンのニューロフィシン部分に対する放射標識された抗体を用いて、ヒトにおいてSCLC腫瘍を局在化させ、そして画像撮影を行うことができることを示している。後続の研究は、前記プロバソプレシンタンパク質のさまざまな領域に対するポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、および抗体Fab断片が、培養SCLCおよび乳癌細胞、ならびにヒト腫瘍切片に特異的に結合するが、腫瘍が存在しない組織には結合しない、ということを示している。本願発明者らは、NRSA/GRSAに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体、およびそれらのFab断片誘導体を開発し、それらが培養ヒト癌細胞およびヒト癌細胞に結合することができるということを実証した。NRSA/GRSAは一般に正常細胞には認められないため、バソプレシン遺伝子を発現する癌の早期検出、診断、および治療において、腫瘍の局在化のための優れた標的として働くことができると考えられる。NRSA/GRSAはまた、前記バソプレシン遺伝子を発現する癌の予防のための、ワクチン開発戦略に用いるための魅力的な候補物質を提供する。
【0036】
一本鎖抗体断片および小さい結合ペプチドは腫瘍上のプロバソプレシン(NRSA/GRSA)を狙うために用いることができる。本願発明者らは、抗体およびNRSA/GRSAに結合するペプチドの一本鎖可変領域断片(scFv)を産生した。このような小分子を使用することによって、in vivo腫瘍ターゲティングのさらなる利点(腫瘍の浸透、製造の簡易化)を提供するだろう。さまざまな腫瘍によるバソプレシンの発現はかねてから知られていたが、抗体および抗体断片で前駆タンパク質を狙うというやり方は新規の概念である。
【0037】
プロバソプレシン遺伝子発現のメカニズムは、腫瘍療法を標的とすることができる。さらに、バソプレシンは腫瘍生存の自己分泌調節に関与しており、予備研究の結果から、mRNAメッセージが、腫瘍成長を害のための、アンチセンスに基づく方法のための、実行可能な標的であるということが実証されている。
【0038】
「免疫ベースの」という用語は、抗体、抗体断片、その誘導体または結合ペプチドの使用を意味する。
【0039】
1) 早期検出
a) 特定の腫瘍を表示するプロバソプレシン成分の血中濃度測定プロバソプレシン前駆タンパク質の各種部分に対する抗体は、特定の腫瘍を有することが疑われる患者、または過去にこれらの腫瘍を有したことのある患者の血液中の濃度を測定する臨床スクリーニングアッセイに有用であろう。これは、より侵襲性の大きい検査/生検の正当性を証明し、疾患の再発の監視を助けるための、有用な非侵襲性または侵襲性の小さい検査であろう。
【0040】
b) 免疫ベースの画像撮影NRSA/GRSAの各種部分に対する抗体を使用すると、マンモグラフィのような既存の画像撮影技術が非常に向上し、SCLC/乳癌などの疾患の新規画像撮影プロトコルが開発され、臨床用に効果的に導入することが可能になる。この種の技術は特に転移性疾患の検出に有用であろう。
【0041】
2) 診断
a) 生検の免疫ベースの病理学的スクリーニング現在、SCLCは、生検用組織から得られた形態学的および組織学的な総データをもとに診断され、この疾患は進行期に達した後に同定されることが非常に多い。さらに、DCISは、生検用組織切片上では、一般に良性疾患と考えられている非定型導管過形成(ADH)と区別することが難しい場合が多い。これら生検用組織サンプルを、NRSA/GRSAの各種組織に対する抗体を用いて染色することができる。これにより、後続の治療法および転帰に影響しうる決定的な差違化診断を可能にする。
【0042】
b) In situにおける免疫ベースの画像撮影上述の1.aに概説されたように、NRSA/GRSAの各種部分に対する抗体の使用をマンモグラフィ画像撮影技術と組み合わせて使用し、乳疾患と過形成症状を区別するための非侵襲的または侵襲性の小さい診断を可能にすることができる。
【0043】
本願発明の組成物は、免疫ベースの腫瘍ターゲティングおよび化学毒性的/放射線学的物質の送達に使用することができる。上述の通り、SCLC腫瘍は、プロバソプレシンタンパク質のニューロフィシン領域に対する抗体を用いて、局在化および画像化することができる。したがって、抗体、抗体断片、その誘導体、または結合ペプチドは放射標識するか、化学毒性物質と複合体化もしくは併用するか、またはNRSA/GRSA発現腫瘍を死滅させるための内因性免疫系細胞の誘因物質として働かせることができる。すべてのSCLC、乳癌、およびDCIS細胞がNRSA/GRSAを発現するようなので、この抗原を標的とする治療は、これらの疾患のために現在利用可能な戦略よりも、著しくより強力な療法を提供するだろう。
【0044】
腫瘍成長を抑制するための、バソプレシン遺伝子転写および/またはバソプレシンmRNAメッセージ翻訳の阻害を狙う。バソプレシンはバソプレシン遺伝子を発現する癌細胞中に自己分泌成長刺激を提供するため、その産生の阻害によって腫瘍の生存を阻害できるだろう。遺伝子転写翻訳を阻害するアンチセンス分子を用いることによって、強力で非侵襲的な治療用のツールを開発することができる。
【0045】
癌ワクチンは、NRSAおよびGRSAなどの腫瘍抗原に基づく。特定の癌に固有に発現するために、これらの疾患の初期予防および/または再発を可能にする、抗抗体などのNRSA/GRSAに基づく、またはNRSA/GRSA上の抗原モチーフを用いたワクチン戦略が開発できる。
【0046】
a) 乳癌の存在を確認するための新鮮で固定された生検物質のスクリーニング、b) 患者における乳癌の非侵襲性診断画像撮影、およびc) 患者における乳癌の治療の対象化のための、バソプレシンとニューロフィシン部分を架橋するプロバソプレシンにある領域(ここではMAPとよぶ)およびこれらMAPSの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン(ここではMAVとよぶ)およびこれらMAVの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではMAGとよぶ)およびMAGの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(ここではMATとよぶ)およびこれらMATSの修飾型に対するモノクローナル抗体の使用。
【0047】
MAPSは、ウンデカンペプチドPRGGKRAMSDL (SEQ
ID NO :1)抗原に対して作製されるが、主に、トリペプチド架橋構造GKR、およびこの構造の周辺に位置するアミノ酸残基を認識する。MAGはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではVAG)のC末端半分である18残基ポリペプチドに対して作製される。MAVs、MAPS、MAG、およびMATSは、GRSAと呼ばれる乳癌上にある万能プロバソプレシン関連細胞方面抗原として本願発明者らが提唱するものを認識するようにデザインされる。
【0048】
本願発明では、バソプレシンおよびニューロフィシン部分を架橋するプロバソプレシンの領域(MAPS)およびこれらMAPSの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン(MAV)およびこれらMAVの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(MAG)およびこれらMAGの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(MATS)およびこれらMATSの修飾型を、乳癌のスクリーニング、in vivo診断、および治療に用いる。バソプレシンに対するポリクローナル抗体、およびヒトバソプレシン関連グリコペプチド(ヒトコペプチンとも呼ばれる)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学的研究から、本願発明者らは、すべての乳癌はこれらポリクローナル抗体に反応性であるという可能性があることを明らかにした。
【0049】
モノクローナル抗体はバソプレシン(MAV)に対してだけでなく、ヒトVAG、およびヒトプロバソプレシンの架橋構造に対して開発されてきた。MAGおよびMAVはすべての乳癌の免疫染色を陽性にし、その結果、新鮮で固定された生検組織の中の乳癌についての単一療法スクリーニングテストにおいて、それらを理想的な状態にする。モデリング研究は、乳癌細胞の原形質膜中のGRSAタンパク質では、前記バソプレシン部分を前記細胞外に曝露させることができるだけでなく、MAGが作製されるグリコペプチド領域、およびMAPSが作製されるプロバソプレシン架橋構造も曝露させることができることを示している。したがって、MAGs、MAPs、MAVs、およびMATも、培養液中の生細胞上のGRASタンパク質を同定し、結合することができる。したがって、それらは患者の生腫瘍細胞に結合することができ、患者の腫瘍(特に転移性および/または再発性疾患)の位置を特定するために使用して、標的免疫療法に効果的に用いることができる。有効なin vivoツールにするために必要なMAGまたはMAPSまたはMAVまたはMATの修飾には、FabおよびF(ab')2型への転換が含まれる。患者の腫瘍の位置の診断には、テクネチウム99、ヨウ素131、インジウム111、および/または鉄含有標識されたMAG、MAP、MAVs、またはMATの使用が含まれる(が、それらに限定されない)。
【0050】
本願発明は、1) 乳癌の早期検出、および2) 患者における乳癌、特に転移性および/または再発性疾患の同定および位置の特定、のための、非常に必要とされる迅速、低価格、高感度、および特異的な方法を提供する。さらに、原発性疾患および再発性薬剤耐性疾患の療法に有効な、すべての乳癌患者に適用できる、新規の免疫標的治療を開発する、有用なツールも提供する。この点については、乳癌患者の検査および治療を行うすべての病院および医師に有用であるに違いない。検出キットはいずれの地方病院の研究室にも設置できるほど十分に単純であり、MAG、MAV、MAP、および/またはMAT、ならびにそれらの修飾型は、乳癌患者を治療するすべての病院が容易に利用できるようになっていてよい。
【0051】
バソプレシンV2受容体の異常型に対する抗体は、(a) DCISをADHから区別する、および(b) 乳癌の検出および標的化、のために使用してもよい。
【0052】
本願発明者らは、乳癌細胞はバソプレシンV2受容体の腫瘍特異的異常型をつくっていることを発見し、この異常なタンパク質に対する抗体が乳癌だけではなくDCISの早期免疫組織化学的検出に使用することができることを予測する。それらはまた、患者の乳癌の診断、特に転移性疾患の検出および位置の決定のための乳癌の診断、および乳癌の標的化治療において有用であることも予測されている。
【0053】
本願発明者らは、乳癌細胞において、バソプレシンV2受容体mRNAの2つの型を発見した。このうちの1つは、配列が正常ヒト組織の受容体と同一であり、もう1つは拡大化した形状で、イントロン2の106塩基全体に加えてV2受容体mRNAの配列を含有していることが認められた。乳癌細胞はバソプレシンV2受容体のこれらの形状の療法を産生する。イントロン2が含まれているために、リーディングフレームにストップコロンが導入されており、そのため、異常なバソプレシンV2受容体mRNAが7番目の膜貫通セグメントおよび正常受容体のカルボキシル末端を欠損したC末端切断タンパク質が生じている。本願発明者らはこれと、その他のバソプレシン受容体mRNAは癌細胞によってタンパク質に翻訳されていることを、特異的抗体を用いたウエスタン分析法によって実証した。正常タンパク質の抗体は、固有のカルボキシル末端領域に対して作製される。
【0054】
細胞株NCI-H82、NCI-H146、NCI-H345、およびDMS-57を用いたところ、SCLCに同一の異常なレセプタが認められた。構造の決定は、RT-PCR、クローニング、およびシーケンシングによって行われた。タンパク質産生物は、特定の抗体を用いたウエスタン分析法によって確認された。
【0055】
乳癌はバソプレシン遺伝子を発現し、バソプレシン受容体の発現が疑われる場合には常にバソプレシン遺伝子癌細胞が付随する。前記バソプレシン遺伝子は、DCISによって発現されるが、ADHを含む各種の線維嚢胞性乳症状によっては発現しない。本願発明者らは、異常なバソプレシンV2受容体は乳癌のようにDCISによって発現するだろうと考えているため、この異常な受容体に対する抗体を免疫組織化学的方法などの方法に用いれば、生検をうまく評価し、DCISおよび乳癌とADHとを区別することができると推測する。
【0056】
転移および局在化した乳癌は前述の未知の異常バソプレシンV2受容体を発現すると考えられるため、この受容体に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の好適な標識型または修飾型は、注射またはさまざまな検出手段によって、患者における転移および/または早期再発性疾患を検出および局在化させる必要とされる非常に高感度で特異的な手法を提供するのに有用である。本願明細書で特許請求するこれらの抗体およびその修飾型は、患者のさまざまな腫瘍を効果的に標的とする重要で新しいツールである。これは、再発性で一般にエストロゲン耐性型の乳癌の治療に特に有用である可能性がある。
【0057】
開示された本願発明は、以下の用途に用いられてよい。
1) ADHなどの過形成症状からDCISおよび乳癌を区別するための非常に必要とされる迅速、低価格、高感度、および特異的な方法の提供。この点については、乳癌患者の検査および治療を行うすべての病院および医師に有用であって、このような診断をうけるすべての女性に利益をもたらすはずである。
2) すべての乳癌患者における再発性疾患および転移性疾患を非侵襲的に検出および局在化する、非常に必要とされる高感度で特異的な方法の提供。改良を加えることによって、本方法は、乳癌から回復したすべての患者の、癌の再発の検出をするための定期スクリーニングを実施するために特に有用であろう。
3) エストロゲン感受性の乳癌を含むすべての乳癌の、新規の効果的な治療を目標とする効果的な手段の提供。修飾された抗体は、抗エストロゲンおよび化学療法に用いる治療物質の添加物、または効果的な代替物のいずれかとして用いることができる。有害な放射化学性または化学性毒物を有するか、またはこの免疫細胞と複合体を形成している形などの抗体の修飾型は、すべての腫瘍を治療するのに有効である可能性があるはずである。
【0058】
本願発明にはまた、VPに対する抗体、またはVP関連グリコペプチド(VAG)もしくはコペプチンに対する抗体を用いて、生検物質および保存組織ブロックの固定物質から得られたRNA上のVP mRNAについてRT-PCRを実施することによって、DCISをADHから区別する方法も包含する。
【0059】
すべての乳癌がVP遺伝子を発現している可能性が高い。バソプレシン遺伝子は、検査したすべてのDCISによって発現されるが、一般に侵襲性乳癌の前駆体として認識されている。前記遺伝子は、ADHを含む各種の線維嚢胞性乳症状によっては発現しない。本願発明者は、前記VP遺伝子の発現は、胸部の細胞の発癌転換のプロセスの一部であると考えている。バソプレシン遺伝子の発現によって、約20,000および40,000ダルトンのバソプレシンおよびバソプレシン遺伝子関連タンパク質が産生される。VPおよびVP関連グリコペプチドに対する抗体は、免疫組織化学などの方法のこれらバソプレシン遺伝子産生物と反応し、この陽性反応(染色)を新しい方法に用いることによって、生検をうまく自動的に評価し、DCISおよび乳癌を良性ADHから区別することができる。バソプレシンに対するモノクローナル抗体(MAV)およびバソプレシン関連グリコペプチドに対するモノクローナル抗体(MAG)は、この目的のために開発された。代替的には、新鮮および固定された組織の両方を用いた、発現された遺伝子であるVP mRNAのためののRT-PCRの方法を用いて、DCISを同定することができる。
【0060】
前記バソプレシン遺伝子は大半が視床下部ニューロンによって発現され、ここで得られたプロバソプレシン前駆タンパク質は酵素によって切断されてペプチドホルモン成分になる。このペプチドホルモン成分には、ニューロペプチドバソプレシン(VP)、バソプレシン関連ニューロフィシン(VP-NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)が含まれる。小細胞肺癌(SCLC)腫瘍はまた、前記バソプレシン遺伝子を発現するが、前記腫瘍プロバソプレシンタンパク質は無傷のままで、前記細胞表面膜に局在化することができる。
【0061】
本願発明はMAG-1と命名されたモノクローナル抗体(mAb)であって、ヒトプロバソプレシンのVAGドメインのC末端配列を表す合成ペプチドを用いて作製したモノクローナル抗体を開示する。前記MAG-1 mAbは、ウエスタン分析法によってSCLC細胞および組織溶解物中でNRSAを認識するが、免疫蛍光サイトメトリック法と顕微鏡分析法ではMAG-1は、古典的サブタイプおよび変種サブタイプの両方のSCLC生細胞の表面上でNRSAと特異的に反応することが示唆されている。免疫組織学的分析法を実施し、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを実証した。さらに、NRSAを認識することもできるMAG-1 Fab断片を作製した。これは、前記プロバソプレシンタンパク質のVAG領域に対するモノクローナル抗体に、血漿膜に組み込まれたNRSAを標的とするin vivo診断および治療ツールに開発することができる可能性があることの実証の開示である。
【0062】
本願発明のさらなる発見は、線維性病変と癌病変を区別する能力である。本願発明者らは、検査用サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、患者は侵襲性乳癌に感受性であるということを発見した。前記検査用サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII 2型受容体にも陽性である場合、患者は非浸潤性乳管癌に感受性である。検査用サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII型2受容体にも陰性である場合、前記患者は過形成組織などの線維性病変を有している可能性が高い。したがって、本願発明者らは、医療提供者らが、癌を有することが疑われる患者の検査用サンプル中の非侵襲性線維性組織を癌性病変と決定的に区別することができる強力なツールを発見した。
【0063】
本願発明のさらなる発見は、化学療法剤の混合剤を、プロバソプレシンに免疫反応性の抗体、抗原、結合断片またはペプチドの薬学的組成物の併用療法が必要な患者に投与することができ、当該併用療法が腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効だということである。
【0064】
II 定義
本願明細書に記載の「種」または「動物」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物を意味する。同様に、本願発明の方法で治療される「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味してよい。
【0065】
本願明細書に記載の「免疫応答性の」は、腫瘍標的細胞抗原に特異的であるが、他のタンパク質と交差反応する場合は、ヒトの使用のための投与用に調製される場合の濃度では毒性がない、結合剤、抗体またはその断片を意味する。「特異的な結合」は、前記結合剤が、無関係の抗原への結合よりも大きな親和性を有する標的細胞上の抗原に結合することを意味する。好ましくは、このような親和性は、無関係の抗原への結合剤の親和性よりも、少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、および最も好ましくは少なくとも1000倍である。「免疫応答性の」および「特異的な結合」という用語は、本願明細書では同義的に用いられる。
【0066】
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本願明細書では、たとえば、コード配列によってコードされている可能性がある遺伝子産生物を意味する場合には、同義的に用いられる。本願発明のペプチドは、プロバソプレシンアミノ酸配列の部分を広く意味する。好ましくは、前記ペプチドはプロバソプレシンのVAG領域の部分である。さらに好ましくは、前記ペプチドは、長さが5乃至50アミノ酸残基、5乃至30アミノ酸残基、5乃至20アミノ酸残基、または10乃至15アミノ酸残基である。本願発明のペプチドは、プロバソプレシン、またはその部分に免疫応答性である。
【0067】
本願明細書に記載の「抗体」という用語は、他に指示のない限り、抗体分子およびさまざまな抗体由来分子の両方を広く意味するために用いられる。そのような抗体由来分子は、少なくとも1つの可変領域(重鎖または軽鎖の可変領域のいずれか)、ならびに個別の抗体軽鎖、個別の抗体重鎖、および抗体鎖とその他の分子のキメラ融合体などを含む。本願発明に従った機能的な免疫グロブリン断片は、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fab、およびF(ab')2であってもよい。本願発明の抗体またはその断片は、検出可能なラベルで標識されたときの標的細胞の画像撮影に用いることができる。
【0068】
「抗体」という用語にはまた、ポリクローナル抗体(pAb)、モノクローナル抗体(MAbまたはmAb)、好ましくはIgG1抗体、キメラモノクローナル抗体(C-MAb)、ヒト化抗体、遺伝子操作されたモノクローナル抗体(G-MAb)が包含される。
【0069】
好ましくは、前記抗体は前記モノクローナル抗体MAG-1であって、プロバソプレシンのVAG領域の18C末端アミノ酸残基を認識するモノクローナル抗体である。抗体のヒト化は当業に公知の技術であって、当該技術において、フレームワーク領域の部分をヒト患者に投与される場合に有害反応を生じないように修飾する技術である。当業者は、前記抗体がヒト化されるように突然変異したMAG-1の部分を容易に認識するだろう。
【0070】
本願発明の抗体およびペプチドは、標識されていてもよい。本願明細書に記載の「ラベル(標識)」は、標的タンパク質または受容体に対する抗体の結合を可視化するために用いられる検出可能なラベル(標識)を意味するために用いられる。代替的には、本願発明の抗体およびペプチドは、放射性標識、鉄関連化合物、または結合すると前記細胞を死滅させる毒素で標識することもできる。放射性標識および毒素は当業に公知であって、例えば、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Bi、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが含まれる。鉄関連化合物には、たとえばFe2O3およびFe3O4が含まれる。
【0071】
「腫瘍細胞特異的抗体」および「腫瘍細胞特異的ペプチド」は、本願明細書では、前記標的細胞抗原に特異的に結合する抗体またはペプチドの能力として定義される。本願明細書に記載の抗体またはペプチドの腫瘍細胞抗原への特異性は測定が可能であり、前記腫瘍細胞抗原に対する抗体/ペプチドの親和性は前記腫瘍に関連しないその他の細胞への親和性よりも大きい。標的細胞抗原に特異的に結合する同一の機能を有する抗原結合断片およびペプチド模倣体も、本願発明に意図される。
【0072】
本願発明の「免疫アッセイ」には、標的細胞抗原の存在を決定するために用いることができる任意のアッセイが含まれる。当業者に知られる免疫アッセイの例には、免疫組織化学法、ELISA、およびウエスタンブロット法が、それらに限定されずに含まれる。
【0073】
本願発明の「検査用サンプル」は、侵襲的または非侵襲的な方法で患者から採取することができる。非侵襲的な検査用サンプルには、たとえば尿が含まれる。侵襲的な検査用サンプルには、例えば、血液または血液産生物、リンパ組織またはリンパ液、乳液または組織が含まれる。1つの用語が本願発明の中で用いられる場合、その他の用語は同義的な意味を持つ。
【0074】
本願明細書において、「投与」は前記患者の体内に前記組成物が入るような方法で前記患者に前記組成物を提供する手段として定義される。とのような投与は、皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、および筋肉内をそれらに限定されずに含む任意の経路によってよい。
【0075】
当業の医師または獣医師は、「有効量」(ED50)の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0076】
本願発明の各実施態様は、薬学的に許容な担体または賦形剤と併用した場合の組成物として用いることができる。「担体」および「賦形剤」という用語は、本願明細書では同義的に用いられる。
【0077】
「薬学的に許容な」という文言は、本願明細書では、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症のない、妥当なベネフィット/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触に用いるのに好適な、化合物、物質、組成物および/または投与剤形を意味するために用いられる。
【0078】
「薬学的に許容な担体」は本願明細書では、投与された患者に生理学的に許容であって、前記抗体の治療特性を保持する担体として定義される。薬学的に許容な担体およびその製剤は公知であって、一般に、たとえばRemington's
pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack
Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載されている。ある例示的な薬学的に許容な担体は生理食塩水である。 本願明細書に用いられる「薬学的に許容な担体」という文言は、当該抗体をある臓器または体の部分の投与部位から別の臓器または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または物質を封入している物質などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味において「許容」でなければならない。また、薬学的に許容な担体は前記抗体の特異的な活性を変化させてはならない。薬学的に許容な担体として用いることができる物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)粉末状トラガカント、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター、および座剤用ロウなどの賦形剤、(9)ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝溶液、および(21)薬学的製剤に用いられるその他の無毒性適合性物質、が含まれる。
【0079】
本願明細書に記載の「癌」は、患者の体内の細胞が異常で制御されていない増殖を被る症状を意味するために使用される。癌の例には、乳癌、小細胞肺癌、および非浸潤性乳管癌が、それらに限定されずに含まれる。
【0080】
本願明細書に記載の「線維性」という用語は、非定型導管過形成などの非癌性の組織を意味するために使用される。
【0081】
本願明細書に記載の「形質転換した細胞」は、自然発生的に成長が抑制されない状態転換した、すなわち培養液中で分裂を不定回繰り返して成長する能力を獲得した細胞を意味する。形質転換した細胞は、成長制御の喪失に関して、新生物、未分化、および/または過形成という用語などによって特徴づけられることがある。本願発明の目的のために、「悪性哺乳動物細胞の形質転換表現型」および「形質転換表現型」という用語は、哺乳類細胞の細胞性形質転換に関連した、以下の任意の表現型形質に、限定されることなく包含されることが意図される。その表現型形質とは、不死化、形態学的もしくは成長形質転換、および細胞培養液中の長期成長、半固体状培地中の成長、または免疫機能不全もしくは同系動物における腫瘍原性成長で検出された腫瘍原性である。
【0082】
癌を罹患する患者を「治療する」ことによって、前記患者の症状が本願発明にしたがった治療の後に部分的または完全に治癒するか、または小康状態を維持することを意味する。治療された患者は、症状および/または腫瘍負荷の部分的または完全な治癒を示す可能性がある。 「治療」という用語は、予防、療法、および治療を包含することを意図する。
【0083】
「治療上有効な量」とは、本願明細書では、患者の腫瘍細胞の腫瘍特異的な死滅を誘導することによっていくらかの望ましい治療上の効果を生じ、その結果、任意の医学的な治療に適用できる合理的なベネフィット/リスク比において、治療された細胞においてその経路の生物学的なつながりを阻害し、前記腫瘍細胞を消滅させる、または増殖を阻害する、組成物の有効量と定義する。
【0084】
「サンプル」という用語は、本願明細書では、血液、血液産生物、生検組織、血漿、および患者から抽出されうる任意のその他のタイプの液体または組織と定義される。
【0085】
「アポトーシス」または「プログラムされた細胞死」という用語は、発育中およびその他の正常な生物学的プロセス中に、望ましくないまたは無用の細胞が除去される、生理学的なプロセスを意味する。アポトーシスは、正常な生理学的条件下において生じる細胞死の1様式であって、前記細胞は、それ自体の消滅に関して積極的に関与している(「細胞死」)。この現象が最もよく認められるのは、正常細胞のターンオーバー、組織のホメオスタシス、胚形成、免疫耐性の誘発および維持、神経系の発達、および内分泌依存組織萎縮においてである。アポトーシス中の細胞は、特有な形態学的および生化学的な特性を示す。これらの特性には、クロマチン凝集、核および細胞質凝縮、原形質および核の膜結合小胞(アポトーシス体)であって、リボソーム、形態学的に無傷のミトコンドリアおよび核物質を含む小胞への分割が含まれる。In vivoにおいては、これらのアポトーシス体は、マクロファージ、樹状細胞、または近隣の上皮細胞のいずれかに迅速に認識され貪食される。In vivoにおけるアポトーシス細胞の除去メカニズムはこのように効率的であることから、炎症性応答は誘発されない。In vitroにおいては、前記アポトーシス体および残りの細胞断片は、最終的には膨潤し、最後に溶解する。この、in vitro細胞死の最終期は「第二の壊死」と呼ばれている。アポトーシスは、DNA断片化、アネキシンVの曝露、カスパーゼの活性化、シトクロムcの放出などの当業者に知られる方法によって測定することができる。死滅するように誘導された腫瘍細胞を、本願明細書では「アポトーシス腫瘍細胞」と呼ぶ。
【0086】
本願明細書に記載の「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)および適宜、リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを意味する。この用語はまた、ヌクレオチド類似体から作製されたRNAまたはDNAのいずれかの等価物、誘導体、変異体および類似体、ならびに本願明細書に記載の実施態様に適用されるとおり、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドが含まれることも理解されるべきである。
【0087】
動作可能に結合した、という文言は、前記ヌクレオチド配列の発現が可能になるように、前記ヌクレオチド配列を制御配列に結合させることを意味することを意図する。制御配列は当業に認識されており、対象となるペプチドの発現を方向付けるように選択される。したがって、転写制御配列という用語には、プロモータ、エンハンサ、およびその他の発現制御要素が含まれる。そのような制御配列は、Goeddel;
Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic
Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0088】
「遺伝子作製物」という用語は、コード配列を含み、細胞、好ましくは哺乳動物細胞をトランスフェクトすることができ、前記作製物をトランスフェクトした細胞の抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の発現を生じることができる、ベクター、プラスミド、またはウイルスゲノムなどを意味する。
【0089】
細胞の「成長状態」は、前記細胞の増殖速度、および/または前記細胞の分化状態を意味する。「変化した成長状態」は、たとえば正常細胞と比較して増加または減少した増殖速度を示す細胞など、異常な成長速度によって特徴づけられる成長状態である。
【0090】
本願明細書に記載の「増殖する」および「増殖」は、細胞が細胞分裂することを意味する。
【0091】
「アミノ酸残基」という用語は当業に知られている。一般に、本願明細書に用いられる、アミノ酸および保護基の命名に用いられる略称は、IUPAC-IUB
Commission on Biochemical Nomenclature (Biochemistry (1972) 11:1726-1732参照)の推奨に基づく。ある実施態様では、本願発明の適用に用いられるアミノ酸は、タンパク質に認められる天然に存在するアミノ酸、またはアミノ基およびカルボキシル基を含むそのようなアミノ酸の同化もしくは異化産生物である。特に好適なアミノ酸側鎖には、以下のアミノ酸である、グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンのものから選択された側鎖が含まれる。
【0092】
「アミノ酸残基」という用語にはさらに、本願明細書に記載の任意のアミノ酸の類似体、誘導体、および同属種、ならびにC末端またはN末端保護アミノ酸(たとえばN末端またはC末端保護基で修飾された)誘導体が含まれる。たとえば、本願発明は、側鎖が伸長または短縮されている一方で、カルボキシ基、アミノ基、または環化のためのその他の反応性前駆官能基を提供しているアミノ酸類似体、および適切な官能基を有する変異側鎖を有するアミノ酸類似体の使用を意図する。たとえば、当該化合物には、たとえばカナバニン、ジエンコル酸、ノルロイシン、3ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5ヒドロキシトリプトファン、1メチルヒスチジン、3メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、またはジアミノブチル酸が含まれてよい。本願明細書において好適な側鎖を有するその他の天然に存在するアミノ酸代謝物または前駆体は、当業に認識されるであろうし、本願発明に含まれる。
【0093】
さらに、アミノ酸の構造が立体異性型を認める場合、そのようなアミノ酸の(D)および(L)立体異性体が含まれる。本願明細書のアミノ酸およびアミノ酸残基の立体配置は、その立体構造が、アミノ酸または残基が立体配置(d)、(l)または(dl)を有することができると指定していない場合、適切な記号(d)、(l)または(dl)によって指定される。本願発明の化合物の一部の構造には非対称炭素原子が含まれるという点には留意すべきだろう。そのような非対称性から生じる異性体が本願発明の範囲内に含まれることは、適宜に理解される。そのような異性体は、実質的には、従来の分離技術、および立体的に制御された合成によって純粋な形で得ることができる。この用途の目的のために、他に明らかに記載のない限り、命名済みのアミノ酸は(d) または(l)の両方を含むよう解釈されるべきである。D-およびL-αアミノ酸は、以下のフィッシャー投影法およびくさびと点線によって描かれた図によって表される。大半の場合、D-およびL-アミノ酸は、それぞれR-およびS-絶対立体配置を有する。
【0094】
ペプチド模倣体はペプチドおよびタンパク質に基づいた、または誘導された化合物である。本願発明のペプチド模倣体は、典型的に、非天然アミノ酸、立体的な制約、および等比体積置換などを用いた、既知のペプチド配列の構造修飾によって得ることができる。当該ペプチド模倣体は、ペプチドおよび非ペプチド合成構造体の間の構造的空間の連続で構成されており、したがって、ペプチド模倣体は、活性基を描き、ペプチドを親ペプチドの活性を有する非ペプチド化合物に変形させることを支援するのに有用かもしれない。
【0095】
さらに、本願開示から明らかなように、当該抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体のミメトープも提供することができる。そのようなペプチド模倣体は、非加水分解性(たとえばプロテアーゼ、または対応するペプチドを分解するその他の生理学的条件に対する高い安定性)の、高い特異性および/または有効性、および前記ペプチド模倣体の細胞内局在性のための高い細胞透過性などの特質を有してよい。具体化の目的のために、本願発明のペプチド類似体は、たとえば、ベンゾジアゼピン(たとえば Freidinger et
al. in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:
Leiden, Netherlands, 1988参照)、置換ガンマラクタム環(Garvey et al. in
Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:
Leiden, Netherlands, 1988, p123)、C-7模倣体(Huffman
et al. in Peptides: Chemistry and Biologyy, G.R. Marshall ed., ESCOM
Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p.105)、ケトメチレン擬ペプチド(Ewenson et al. (1986) J Med Chem 29:
295; and Ewenson et al. in Peptides: Structure and Function (Proceedings
of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、βターンジペプチド核(Nagai et al.
(1985) Tetrahedron Lett 26: 647; and Sato et al. (1986) J Chem Soc
Perkin Trans 1: 1231)、βアミノアルコール(Gordon et al.(1985) Biochem Biophys Res Commun126:419; and Dann
et al.(1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71), diaminoketones
(Natarajan et al.(1984) Biochem Biophys Res Commun 124:141)、およびメチレンアミノ修飾(Roark et al. in Peptides:Chemistry
and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988,
p134)を用いて生成することができる。また、一般的にはPeptides:
Chemistry and Biology, G.R.Marshall ed., ESCOM Publisher:Leiden,
Netherlands, 1988)の中の例示的実施態様の分析および合成方法を参照。
【0096】
例示的実施態様
A. 化合物および組成物
1. プロバソプレシンに免疫応答性の抗体および抗原結合断片
抗体は、細胞内のヒトプロバソプレシン(たとえばバソプレシン(VP)、ニューロフィシン(NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)など)、またはそれ自体がニューロフィシン関連/グリコペプチド関連表面抗原(NRSA/GRSA)として提示されるさまざまな領域に対して免疫応答性である。
【0097】
本願発明の抗体はプロバソプレシンに免疫応答性である。好ましい実施態様では、前記抗体はヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端部分に免疫応答性である。好ましい実施態様では、前記抗体は、SEQ ID NO:44によって特徴づけられる、ヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端18アミノ酸部分に免疫応答性である。より好ましい実施態様では、前記抗体MAG-1は、ATCC番号 ____を有するハイブリドーマが産生する。
【0098】
本願発明のモノクローナル抗体には、たとえば、バソプレシンとニューロフィシン部分を架橋するヒトプロバソプレシンの領域(ここではMAPとよぶ)およびこれらMAPSの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体、またはバソプレシン(ここではMAVとよぶ)およびこれらMAVの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではMAGとよぶ)およびMAGの修飾型、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(ここではMATとよぶ)およびこれらMATSの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体が含まれる。
【0099】
MAPSは、ウンデカンペプチドPRGGKRAMSDL (SEQ
ID NO :1)抗原に対して作製されるが、主に、トリペプチド架橋構造GKR、および周辺のアミノ酸残基を認識する。MAGはヒトバソプレシン関連グリコペプチド(ここではVAG)のC末端半分である18残基ポリペプチドに対して作製される。MAVs、MAPS、MAG、およびMATSは、乳癌すなわちGRSA、およびSCLCすなわちNRSA上にある万能プロバソプレシン関連細胞方面抗原を認識するようにデザインされる。
【0100】
本願発明はMAG-1と命名されたモノクローナル抗体(mAb)であって、ヒトプロバソプレシンのVAGドメインのC末端配列を表す合成ペプチドを用いて作製したモノクローナル抗体を開示する。前記MAG-1 mAbは、ウエスタン分析法によってSCLC細胞および組織溶解物中でNRSAを認識するが、免疫蛍光サイトメトリック法と顕微鏡分析法ではMAG-1は、古典的サブタイプおよび変種サブタイプの両方のSCLC生細胞の表面上でNRSAと特異的に反応することが示唆されている。免疫組織学的分析法を実施し、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを実証した。さらに、NRSAを認識することもできるMAG-1 Fab断片を作製した。これは、前記プロバソプレシンタンパク質のVAG領域に対するモノクローナル抗体に、血漿膜に組み込まれたNRSAを標的とするin vivo診断および治療ツールに開発することができる可能性があることの実証の開示である。
【0101】
本願発明の抗体はまた、一本鎖可変領域断片(scFv)、Fab断片、およびF(ab’)2断片も包含する。より好ましくは、一本鎖可変領域断片(scFv)は、SEQ ID
NO:3の核酸配列によってコードされているSEQ ID
NO:2のアミノ酸配列を含む。
【0102】
ある好ましい実施態様では、前記抗体断片は、SEQ ID NO:26の可変重鎖アミノ酸配列を有する。 ある好ましい実施態様では、前記抗体断片は、SEQ ID NO:27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0103】
モノクローナル抗体MAG-1を産生するハイブリドーマ細胞株は、2003年7月15日にアメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション(10801 University
Blvd., Manassas, VA 20110-2209)に預託し、ATCC受付番号第_____を与えられた。MAG-1はブタペスト条約の条件下で維持されるだろう。預託された物質への公的アクセスにかけられるすべての制限は、本出願の特許が付与された上で決定的に除去されるだろう。
【0104】
本願発明の抗体は組換えによって作製することができる。前記抗体の柔軟性を上げるために、リンカーに重鎖および軽鎖の核酸配列を加えてもよい。scFvの場合、前記リンカーはVhおよびVl鎖を連結するために加えられ、前記のさまざまな組成物は、可溶性、タンパク質分解安定性、柔軟性、および畳込みに作用する。 ある好ましい実施態様では、本願発明のリンカーはSEQ ID NO:22のアミノ酸配列GSTSGを有する。 ある好ましい実施態様では、本願発明のリンカーはSEQ ID NO:28のアミノ酸配列GGSSRSSを有する。リンカーは当業に公知で、生物学的活性を許容するために、得られた組換えタンパク質に必要な柔軟性に応じて各種アミノ酸残基を含むことができる。
【0105】
2. アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体
本願発明の抗体はアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性である。前記アンギオテンシンII 2型受容体に対するポリクローナル抗体は、サンタクルスバイオテクノロジー社(ポリクローナルAT2抗体、カリフォルニア州サンタクルス)から市販されている。アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性のモノクローナル抗体、ヒト化抗体、および抗原結合断片も、本願発明により意図される。
【0106】
3. ペプチドおよびペプチド模倣体
本願発明のある実施態様は、腫瘍細胞発現ニューロフィシン、VP、プロVP、またはVAGを同定するスクリーニングアッセイに用いることもできるペプチドおよびその組成物である。本願発明のペプチドは5乃至50アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは5乃至30アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは5乃至20アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは10乃至15アミノ酸残基を含んでよい。
【0107】
好ましくは、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO: 21)という配列を有する。
【0108】
本願発明の別の局面は、たとえば1つ以上の骨格結合が置換されているか、または天然に存在するアミノ酸の1つ以上の側鎖が立体的におよび/または電子的に類似の官能基で置換されている、ペプチドまたはペプチド模倣体を提供する。
【0109】
ある実施態様では、前記ペプチドまたはペプチド模倣体は薬学的に許容な賦形剤の中に調合されている。
【0110】
4. 組成物
本願発明の各実施態様は、薬学的に許容な担体または賦形剤と併用した場合の組成物として用いることができる。 薬学的に許容な担体は、投与された患者に生理学的に許容であって、前記抗体またはペプチドの投与された際の治療特性を保持するものである。薬学的に許容な担体およびその製剤は公知であって、一般に、たとえばRemington's
pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack
Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載されている。ある例示的な薬学的に許容な担体は生理食塩水である。 本願明細書に用いられる「薬学的に許容な担体」という文言は、当該抗体またはペプチドをある臓器または体の部分の投与部位から別の臓器または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または物質を封入している物質などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味において「許容」でなければならない。また、薬学的に許容な担体は前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドの特異的な活性を変化させてはならない。
【0111】
B 標識(ラベル)
【0112】
本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、癌細胞に送達された場合に有毒な毒素、放射性核種、鉄関連化合物、または化学療法剤を併用してもよい。
【0113】
本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、癌細胞に送達された場合に有毒な毒素、放射性核種、鉄関連化合物、または標的抗原の免疫検出用の蛍光物質検出用標識として併用してもよい。
【0114】
プロバソプレシンのVAG領域と免疫応答性の本願発明の抗体およびペプチドは、放射性標識、毒素、または蛍光標識などの検出可能な標識で標識することができる。
放射性標識の例には、例えば、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biが、これらに限定されずに含まれる。
【0115】
毒素の例には、たとえばリシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが、それらに限定されずに含まれる。
【0116】
蛍光標識の例には、たとえば、FITC、テキサス赤色フィコエリスリン(PE)、およびシトクロームcが、それらに限定されずに含まれる。
【0117】
鉄関連化合物の例には、たとえば、磁気酸化鉄粒子、第2鉄または第1鉄粒子、Fe2O3およびFe3O4が、それらに限定されずに含まれる。抗体およびポリペプチドを標識する鉄関連化合物および方法は、たとえば、すべてが引用をもってその内容全体を本出願に援用するものとする米国特許第4,101,435号、および第4,452,773号、ならびに公告済みの米国特許出願第20020064502号および第20020136693号に見つけることができる。
【0118】
さらに、ビオチンおよびその後のストレプタビジン-アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などその他の標識も、本願発明に意図される。
【0119】
抗体、抗原結合断片、およびペプチドなどのタンパク質の標識の方法論は、当業に公知である。本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドが放射標識または毒素で標識される場合、前記抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、高濃度のプロバソプレシンを呈する患者の治療に有用な薬学的組成物であって、当該薬学的組成物が前記患者に有効な量投与される、薬学的組成物として調製することができる。
【0120】
C. 化学療法剤
本願発明に意図される化学療法剤には、市販で入手できる化学療法薬が含まれる。
【0121】
単なる具体例だが、前記化学療法剤は、クロマチン機能の阻害物質、トポイソメラーゼ阻害物質、微小管阻害薬、DNA損傷物質、抗代謝物質(葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害物質、DNA相互作用物質(たとえば挿入物質など)、および/またはDNA修復阻害物質であってよい。
【0122】
化学療法剤は、その作用機序によって、たとえば以下のグループに分類することもできる。それは、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスフリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストならびに関連する阻害物質(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝/抗癌物質、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然産生物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキシル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンなどの微小管かく乱物質、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷物質(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラシクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプタチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド、およびエトポシド(VP16))を含む抗増殖/抗細胞分裂物質、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラシクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびミトマイシンなどの抗生物質、酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自己のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪うL-アスパラギナーゼ)、抗血小板物質、窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホン酸-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖/抗細胞分裂アルキル化物質、葉酸類似体(メトトレキセート)などの抗増殖/抗細胞分裂抗代謝物質、プラチナ配座錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害物質(レトロゾール、アナストロゾール)、抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびその他のトロンビンの阻害物質)、線維素溶解物質(組織プラスミノーゲン活性化物質、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、抗遊走性物質、抗分泌物質(ブレベルジン)、免疫抑制物質(シクロスポリン、タクロリマス(FK-506)、シロリマス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、抗血管形成化合物(TNP-470、ゲニステイン)および成長因子阻害物質(血管内皮成長因子(VEGF)阻害物質、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害物質)、アンギオテンシン受容体遮断物質、一酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ)、細胞サイクル阻害物質および分化誘導物質(トレチノイン)、mTOR阻害物質、トポイソメラーゼ阻害物質(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニソロン、プレドニゾン、およびプレニソロン)、成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害物質、ミトコンドリア機能不全誘導物質、コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、百日咳菌アデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素、およびカスパーゼ活性化物質、ならびにクロマチンかく乱物質である。前記化学療法剤の好ましい投与量は、現在処方されている投与量と一致する。
【0123】
D. 変異種/突然変異種
本願発明のある実施態様は、MAG-1、またはその抗原結合断片からなる単離されたポリペプチドであって、当該ポリペプチドが適切な3次元配向にたたみ込まれた場合に結合部位として機能する、ポリペプチドを説明する。ある実施態様では、SEQ ID
NO: 2、26、もしくは27、またはSEQ ID
NO: 2、26、もしくは27で表されるアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%相同である配列からなる、単離されたポリペプチドである。
【0124】
本願発明のある実施態様は、MAG-1のアミノ酸配列の変異種も含む。本願発明の変異種は、SEQ ID NO: 2、26、または27に開示されるアミノ酸配列とは1つ以上のアミノ酸が置換されているために異なるアミノ酸配列を有する。アミノ酸の欠損および/または付加を含む実施態様も意図される。前記変異種は、保存的変化(アミノ酸類似性)であって、当該保存的変化において置換されたアミノ酸が、たとえばロイシンのイソロイシンによる置換など、類似の構造または化学的特性を有する、保存的変化を有する。生物学的なまたは提案した薬理学的な活性を消滅させずに、どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入、または欠失させればよいかを決定するための指針は、この開示を見ることによって合理的に推測することができ、さらに、たとえばDNAStar(登録商標)ソフトウエアなど、当業に公知のコンピュータプログラムを用いて見いだすことができるだろう。
【0125】
アミノ酸置換は、たとえば、前記残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいて、元の分子の生物学的および/または薬理学的活性が保持される範囲内で行われる。
【0126】
陰性に荷電したアミノ酸には、アスパルギン酸およびグルタミン酸が含まれ、陽性に荷電したアミノ酸には、リシンおよびアルギニンが含まれ、類似の疎水性値を有する荷電していない極性基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシンおよびバリンが含まれ、脂肪族基を有するアミノ酸には、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリンが含まれ、芳香族側鎖を有するアミノ酸にはトリプトファン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。
【0127】
置換の例を以下の表1に記載する。
【0128】
【表1】
【0129】
「相同性」は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度である。前記相同性を特徴づけるために、ギャップを導入した後、必要であれば最高の相同性パーセントになるように、最高の相同性の割合を得られる(マッチする)ように対象の配列を並べる。相同性に影響を与えるようなN-またはC-末端伸長は意図されるべきではない。「同一性」それ自体は当業に公知の意味を有し、公表されている技術を用いて計算することができる。2つの配列の相同性を決定するためのコンピュータプログラムの方法には、たとえば、DNAStar(登録商標)ソフトウェア(DNAStar社、ウイスコンシン州マジソン)、GCG(登録商標)プログラムパッケージ(Devereux, J., et
al.Nucleic Acids Research (1984) 12(1):387)、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S.F.et al., J.Molec Biol
(1990) 215:403)が含まれる。本願明細書に定義された相同性(同一性)は、従来から用いられている有名なコンピュータプログラムBESTFIT(登録商標) (Wisconsin
Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group,
University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI, 53711)を用いて決定される。ある配列が、たとえば参照配列に約90%相同かどうかを本願発明にしたがって決定するために、BESTFIT(登録商標)またはその他の配列アラインメントプログラム(たとえばMegAlignソフトウエア(DNAStar(登録商標))のClustalアルゴリズムなど)を用いる場合、同一性の割合を参照ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の全長について計算し、参照配列のヌクレオチドの総数の最高約90%の相同性におけるギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
【0130】
したがって、たとえば、同一性の割合がSEQ ID NO:2、26、または27などの参照配列の全長について計算できるように設定したパラメータを用いたBESTFIT(登録商標)プログラムを用いて、90%の相同性を決定し、その場合、参照配列のアミノ酸の最高10%が別のアミノ酸で置換されている可能性がある。同一性の割合は、たとえば本願明細書に添付の特許請求の範囲内であって、SEQ ID NO: 2、26、または27に約70%乃至100%の相同性の範囲内にある、好ましい種、およびその結合部位を同定するために、同様に決定される。上述のように、相同性に影響を与えるようなN-またはC-末端伸長は意図されるべきではない。したがって、2つの配列を比較する場合、前記の参照配列は一般に2つの配列のうちの短い方である。これは、たとえばもし長さが50ヌクレオチドで、100ヌクレオチドポリヌクレオチドの範囲内の50ヌクレオチド領域に正確に同一である配列を比較する場合、50%しか相同性がないのではなく、100%の相同性があることを意味する。
【0131】
SEQ ID NO: 2、26、または27の天然ポリペプチドおよび各種ポリペプチドが90%の相同性しか有していなくても、実際は、保存的変化である異なるコドンの数によって、より高度な類似性を有している可能性が高い。タンパク質の保存的なアミノ酸置換は、前記タンパク質の立体構造または機能のいずれも変化させることなく、実施できる場合が多い。2つの配列の類似性には、直接的な一致とともに、たとえば表1に記載のような類似の変化など、類似する構造または化学的特性を有する保存されたアミノ酸置換が含まれる。
【0132】
2つのポリペプチドの類似性(保存的置換)の割合は、類似性を決定するためのデフォルト設定を用い、BESTFITプログラムを含む当業に公知のプログラムを使用して、2つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって、スコアすることも可能である。
【0133】
本願発明のさらなる実施態様は、MAG-1の重鎖または軽鎖であって、当該重鎖または軽鎖においてアミノ酸配列がSEQ ID NOS:2、26、または27で表される、重鎖または軽鎖である。本願発明のさらなる実施態様は、MAG-1の重鎖もしくは軽鎖、またはその断片であって、当該重鎖もしくは軽鎖またはその断片において、アミノ酸配列がSEQ ID
NO: 2、 26、または27で表されるアミノ酸配列に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である、MAG-1の重鎖もしくは軽鎖、またはその断片である。
【0134】
E. リンカー
場合によっては、本願発明の標識と抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の部分との間に、構造化されていないポリペプチドリンカー領域を導入する必要がある場合もある。前記リンカーは、任意の2断片の間に、高い柔軟性を促進する、および/または立体的な障害を軽減することができる。前記リンカーはまた、各断片の適切な畳込みを容易にする。このリンカーは、タンパク質の2領域の間のランダムコイルに存在することが明らかになっている配列など、天然に由来するものであってよい。例示的なリンカー配列は、RNAポリメラーゼaサブユニットのC末端およびN末端領域間に認められるリンカーである。その他の天然に存在するリンカーの例には、lcIおよびLexAタンパク質に認められるリンカーが含まれる。
【0135】
前記リンカーの中で、前記アミノ酸配列は、実験的に決定されたか、またはモデリングによって明らかになったとおりのリンカーの好ましい特性に基づいて変化していてもよい。たとえば、望ましい長さに加えて、モデリング研究によって、特定のアミノ酸の側鎖が、タンパク質のたとえばDNA結合または転写活性などの生物学的活性を妨げることが明らかになるかもしれない。リンカーの選択の際に考慮することには、前記リンカーの柔軟性、前記リンカーの電荷、および天然のサブユニットのリンカーにおけるいくつかのアミノ酸の存在が含まれる。前記リンカーは、リンカーの残基がDNAと接触して、結合親和性または特異性に影響するか、またはその他のタンパク質と相互作用するようにデザインされてもよい。たとえば、リンカーは、キメラタンパク質の活性が切断によって調節できるように、プロテアーゼによって認識できるようなアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合、特にサブユニット間が長い距離になる必要がある場合、または前記ドメインが特定の立体配置に維持されなければならない場合、前記リンカーは任意にもう1つのたたみ込まれたドメインを含んでもよい。
【0136】
ある実施態様では、リンカーのデザインが、比較的短い距離、好ましくは約10オングストローム(Å)未満の距離を架橋しているリンカーを必要とする領域の配列が関与すことが好ましい。しかし、ある実施態様では、たとえば選択された領域および立体配置によって、前記リンカーは最高約50Åの距離を架橋してよい。
【0137】
F. 毒素および撮像試薬
ある実施態様では、本願発明の対象となる抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、その物質の腫瘍細胞までの送達を局在化するために、細胞毒素およびその他の細胞増殖阻害化合物に共有結合または非共有結合してよい。例えば、前記物質はアルカリ化物質、酵素阻害物質、増殖阻害物質、融解物質、DNAまたはRNA合成阻害物質、膜透過性修飾物質、DNA干渉物質、代謝物質、ジクロロエチルスルフィド誘導体、タンパク質産生物阻害物質、リボソーム阻害物質、アポトーシス誘導物質、および神経毒素からなるグループから選択されてよい。
【0138】
本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に結合した場合、腫瘍原性細胞に特異的に送達される活性化基として有用な化学療法剤は、典型的に化学合成によって産生された小さい化学物質である。化学療法剤には、細胞毒および細胞毒性薬が含まれる。化学治療剤は、形質転換期から分化期への逆転など、細胞に与えるその他の作用を有するもの、または細胞複製を阻害するものが含まれる。本願発明において有用な既知の細胞毒性物質の例は、たとえば、Goodman et al.,
“The Pharmacological Basis of Therapeutics,” Sixth Edition, A. G. Gilman et al,
eds./Macmillan Publishing Co. New York, 1980に列挙されている。これらには、パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール)、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードおよびクロラムブシルなどの窒素マスタード、チオテパなどのエチレンイミン誘導体、ブスルファンなどのスルホン酸アルキル、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンなどのニトロソウレア、ダカルバジンなどのトリアゼン、メトトレキセートなどの葉酸類似体、フルオロウラシル、シタラビン、およびアザリビンなどのピリミジン類似体、メルカプトプリンおよびチオグアニンなどのプリン類似体、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびミトマイシンなどの抗生物質、L-アスパラギナーゼなどの酵素、シスプラチンなどのプラチナ配位錯体、ヒドロキシウレアなどの置換ウレア、プロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体、ミトタンなどの副腎皮質性抑制物質、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(タモキシフェン)およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)などのホルモンおよびアンタゴニストが含まれる。
細胞内タンパク質合成を妨害する薬物も用いることが可能で、そのような薬物は当業者に知られており、プロマイシン、シクロヘキシミド、およびリボヌクレアーゼが含まれる。
【0139】
現在、癌治療に用いられている大半の前記化学療法剤は、本願発明の物質のアミンまたはカルボキシル基に、直接化学的に架橋することが実現可能な官能基を有する。たとえば、遊離アミノ基は、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シトシナラビノシド、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビン、およびクラドリビン上で得られ、遊離カルボン酸基はメトトレキセート、メルファラン、およびクロラムブシル上で得られる。これらの官能基、すなわち遊離アミノおよびカルボン酸は、これらの薬物を抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の遊離アミノ基に直接架橋することができる、各種のホモ二官能性およびヘテロ二官能性化学架橋物質の標的である。
【0140】
ペプチドおよびポリペプチド毒素は活性化部分としても有用であり、本願発明は、特に、本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体が毒素に結合している場合の実施態様を意図する。ある好ましい実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体、ならびに毒素は両方ともポリペプチドで、融合タンパク質の形状で提供される。毒素は一般に、細菌、植物などを含む各種生物の複合的な毒性産生物である。 毒素の例には、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが、それらに限定されずに含まれる。
【0141】
本願発明はさらに、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体がポリマーまたは官能化されたポリマー(たとえば別の分子に結合したポリマー)に結合している実施態様を意図する。好ましい例には、たとえばパクリタキセルまたはドセタキセルを含む化学療法剤または抗血管新生剤などの薬物に結合したポリグルタミン酸またはポリアスパラギン酸などの水溶性ポリマーが含まれる。
【0142】
ある好ましい実施態様、特に細胞毒性部分が前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体部分に架橋結合されている場合の実施態様では、その結合は、たとえば架橋部分のアミドまたはエステル基の使用によって提供されるとおり、加水分解性である。
【0143】
ある実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、腫瘍の画像化に有用な物質に結合していてよい。そのような物質には、金属、金属キレート剤、ランタニド元素、ランタニドキレート剤、放射性金属、放射性金属キレート剤、陽電子放出核、超微粒気泡(超音波用)、リポソーム、リポソームまたはナノスフェアに封入された分子、単結晶酸化鉄ナノ化合物、磁気共鳴撮像法造影剤、光吸収、反射および/または散乱剤、コロイド粒子、近赤外フルオロフォアなどのフルオロフォアが含まれる。多くの実施態様では、そのような第二の官能性は比較的大きく、たとえば大きさが少なくとも25amuであって、多くの場合、大きさが少なくとも50、100または250amuであってよい。
【0144】
ある好ましい実施態様では、前記の第2の官能性は、たとえば放射性金属などの金属または常磁性イオンをキレートするキレート部分である。好ましい実施態様では、それは放射線療法または画像撮影法に有用な放射性核種用のキレート剤である。
【0145】
本願発明に含まれ有用な放射性核種には、治療用用途に好ましいベータまたはアルファ放射体を伴った、ガンマ放射体、陽電子放射体、オージェ電子放射体、X線放射体、および蛍光放出体が含まれる。放射線療法の毒素として有用な、放射性標識の例には、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biが含まれる。好ましい治療用放射性核種には、188Re, 186Re,
203Pb, 212Pb, 212Bi, 109Pd, 64Cu,
67Cu, 90Y, 125I, 131I, 77Br,
211At, 97Ru, 105Rh, 198Auおよび199Ag, 166Hoまたは177Luが含まれる。キレート剤が金属に配意する条件は、たとえばGansow et al., 米国特許第 4,831,175,
4,454,106号および第4,472,509号に記述されている。本願発明の範囲内では、「放射性核種」および「放射標識」は交換可能である。
【0146】
99mTcは、診断用途には特に魅力的な放射性同位体である。なぜなら、すべての核医療部門で容易に入手でき、安価で、患者への放射線量が最低限であり、理想的な核撮像特性を有するためである。その半減期は6時間であり、これは、テクネチウム標識された抗体を迅速に狙うことが望ましいことを意味している。したがって、ある好ましい実施態様では、前記の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体には、テクネチウムのためのキレート剤が含まれる。
【0147】
さらにその他の実施態様では、前記の第2の官能性は、たとえば細胞の放射線への感受性を増加させる部分などの放射線増感剤であってよい。放射線増感剤の例には、ニトロイミダゾール、メトロニダゾール、およびミソニダゾールが含まれる(引用により本願明細書に援用されるDeVita, V.T.Jr.in
Harrison’s Principles of Internal Medicine, p.68, McGraw-Hill Book Co.,
N.Y.1983)。活性部分として放射線増感剤を含む、修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体を、標的細胞に投与および局在化する。放射線を個体に曝露すると、前記放射線増感剤は「励起」されて細胞死を引き起こす。
【0148】
キレートとして働くことができ、本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に誘導体化することができる広範囲の分子部分が存在する。たとえば、前記キレート剤は1,4,7,10テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、および1-p-イソチオシアナト-ベンジル-ジエチレントリアミンペプタン酢酸(ITC-MX)の誘導体であってよい。これらのキレート剤は、一般に、前記キレート剤が対象の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体への結合に用いることができる、側鎖上にある化学基を有する。そのような化学基には、たとえば、DOTA、DTPAまたはEDTAをアミン基などに結合させることができる、ベンジルイソチオシアナートなどが含まれる。
【0149】
ある実施態様では、前記キレート部分は「NxSy」キレート部分である。本願明細書に定義されるとおり、「NxSyキレート」という用語には、金属または放射性金属を配位結合させることができ、好ましくはN2S2
or N3S核を有する二官能性キレート剤が含まれる。例示的なNxSyキレート剤は、たとえば、Fritzberg et
al.(1988) PNAS 85:4024-29; and Weber et al.(1990) Bioconjugate Chem.1:431-37、および本願明細書に記載の参考文献に記述されている。
【0150】
Jacobsen et al. のPCT出願第WO 98/12156号は、金属原子に結合する化合物を同定するための方法および組成物、すなわち合成ライブラリを提供する。前記公告済み出願に記載のアプローチは、本願発明の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体を誘導するための抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に付加することができる結合部分を同定するために用いることができる。
【0151】
結合したタンパク質を放射性治療用途および放射性診断用途に使用する時に遭遇することが多い問題は、放射標識部分断片の腎臓への、危険性もある蓄積である。前記複合体を酸または塩基に不安定なリンカーを用いて形成する場合、放射性キレートを前記タンパク質から遊離に切断することができる。大半の前記の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体がそうであると考えているとおり、前記キレートが比較的低分子量であれば、腎臓には保持されず、尿中に排泄されて腎臓の放射線への曝露は軽減される。しかし、ある特定の場合には、標識されたタンパク質に用いられているのと同じ理由から、前記リガンド中の酸または塩基に不安定なリンカーを使用することは有益であるかもしれない。
【0152】
したがって、前記の標識/修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、当業に知られる標準の方法によって合成され、たとえば前記リガンドのカルボニル基などとともに酸に不安定な結合を形成することができる反応性官能基を提供することができる。好適な酸に不安定な結合には、ヒドラゾンおよびチオセミカルバゾン官能基が含まれる。これらは、酸化された糖をヒドラジド、チオセミカルバジド、およびチオカルバジド官能基をそれぞれ有するキレートと反応させることによって形成する。
【0153】
代替的には、腎臓からの放射性標識の高いクリアランスのために用いられている塩基切断リンカーを用いることができる。たとえば、Weber et al.1990 Bioconjug.
Chem. 1:431を参照。ヒドラジド結合を介した抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体への二官能性キレートの結合は、リンカースペーサアームの塩基感受性エステル部分を含んでよい。そのようなエステル含有リンカー単位は、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)(EGS、ピアスケミカル社、イリノイ州ロックフォードから入手)に例示される。エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)は、それぞれが2つのアルカリエステルによって単一のエチレングリコール部分に連結されている、2つの1,4ジブチル酸単位の2つのNヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル誘導体末端を有する。片方のNHSエステルは、公的なアミン含有BFC(たとえば2アミノベンジルDTPA)で置換してもよく、その一方で、もう片方のNHSエステルは、限定された量のヒドラジンと反応させる。その結果得られたヒドラジドを用いて、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に結合し、2つのアルカリエステル官能基を含有するリガンドBFC結合を形成する。そのような複合体は、生理学的pHが安定だが、塩基性pHで容易に切断できる。
【0154】
キレート化によって標識された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、放射線誘導によって前記キレート剤が切断され、前記配位錯体の解離によって放射性同位体を喪失する。ある場合には、前記錯体から解離された金属を再び錯体化することができ、それによって、非特異的局在化同位体をより迅速に排出し、その結果非標的組織への毒性を小さくすることができる。たとえば、EDTAまたはDTPAなどのキレート剤化合物を患者に注入することで、放出された放射性金属を結合するキレート剤の供給源を提供し、尿中の遊離放射性同位体の排出を容易にすることができる。
【0155】
さらに他の実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、カルボランなどのホウ素添加物に結合させる。たとえば、カルボランは、当業に公知の通り、つり下がっている側鎖上のカルボキシル官能基で調製することができる。そのようなカルボランを、たとえば前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体上に提供されていてもよいアミン官能性に結合させるには、前記カルボランのカルボキシル基を活性化させ、アミン基を濃縮して複合体を生成することによって実現することができる。このような修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、中性子捕獲療法に用いることができる。
【0156】
本願発明はまた、対象のペプチドを、たとえば光動力学療法に有用であって、適切な非イオン化放射線と併用する色素によって修飾することも意図する。本願発明の方法に光およびポルフィリンを使用することも意図され、癌療法におけるそれらの使用は、引用によりその全体を本願明細書に引用するvan den Bergh,
Chemistry in Britain, 22:430-437 (1986)で概説されている。
【0157】
本願発明のある実施態様には、蛍光標識で標識された抗体、その抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体が含まれる。一般的な蛍光標識には、たとえばFITC、PE、テキサスレッド、シトクロームcなどが含まれる。ポリペプチドおよびタンパク質の標識の技術は当業に公知である。
【0158】
本願発明のある実施態様には、MRI撮像および/または治療に用いることができる鉄などの金属化合物で標識された抗体、その抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体が含まれる。鉄含有化合物には、酸化第二鉄などの第一鉄および第二鉄含有化合物の両方が含まれる。特異的な例には、Fe2O3
and Fe3O4が含まれる。鉄含有化合物および鉄に結合した抗体およびその断片の作製方法は、すべてが引用をもってその内容全体を本出願に援用するものとする米国特許第4,101,435号、および第4,452,773号、ならびに公告済みの米国特許出願第20020064502号および第20020136693号に記述されている。
【0159】
G. 診断アッセイ
1. 乳房および肺サンプルの表現型分類の方法
本願発明のある実施態様は、(i)患者から検査用サンプルを採取するステップと、(ii)前記生検用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、(iii)プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、(iv)そのようなステップを経たサンプルの細胞が対象組織と比較してプロバソプレシンを過剰発現しているかどうかを決定するステップを含む、乳癌、DCIS、またはSCLCを有することが疑われている患者から採取した乳房組織サンプルの表現型を分類する方法を含む。
【0160】
本願発明のある実施態様では、プロバソプレシンが生検組織細胞中に過剰発現している場合、前記患者は侵襲性の乳癌、DCIS、または小細胞肺癌を有している可能性が高い。
【0161】
さらなる実施態様では、前記方法は、さらに、前記のステップを経たサンプルをアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と接触させるステップを含んでもよい。
【0162】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、侵襲性乳癌に感受性である患者が同定されている。
【0163】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、非浸潤性乳管癌に感受性である患者が同定されている。
【0164】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、非定型導管過形成に感受性である患者が同定されている。
【0165】
2. 線維嚢胞性病変と癌性病変を区別するための患者から採取した乳房組織サンプルの表現型分類の方法
本願発明のある実施態様は、乳房生検サンプルの線維嚢胞性組織を癌性病変から区別することができる診断アッセイを含む。 前記方法は、患者から1つ以上の検査用生検サンプルを採取するステップと、前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドまたは抗体と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞をアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体と接触させるステップと、前記細胞がプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体のいずれかを発現しているかどうかを調べるステップを含む。
【0166】
本願発明のある実施態様では、前記アッセイにかけたサンプルの細胞がプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体の一方または両方を発現するかどうかの判断を前記抗体および/またはペプチドを検出可能な標識で標識することによって実現する。本願発明の抗体が標識されていない場合、第2の抗体を検出可能な標識で標識した、当該第2の抗体を前記のステップを経たサンプルに加えることができる。前記検出可能な標識の可視化は、本願明細書の実施例に記載の通りの免疫組織化学的方法論を用いて実現することができる。
【0167】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、侵襲性乳癌またはSCLCなどの癌性病変に感受性である患者が同定されている。
【0168】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、非浸潤性乳管癌などの癌性病変に感受性である患者が同定されている。
【0169】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、線維嚢胞性、非侵襲性の非定型導管過形成に感受性である患者が同定されている。
【0170】
スクリーニングアッセイの抗体
前記方法のある実施態様は、ヒトプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体または抗体結合断片を含む。好ましい実施態様では、ヒトプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。さらに好ましい実施態様では、前記抗体はヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端18アミノ酸残基に免疫応答性のモノクローナル抗体である。さらに好ましい実施態様では、前記モノクローナル抗体はMAG-1である。
【0171】
好ましい実施態様は、前記抗原結合断片は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖である。さらに好ましい実施態様では、一本鎖可変領域断片(scFv)のアミノ酸配列は、前記断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされている、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列によって特徴づけられる。ある実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 26の可変重鎖アミノ酸配列を有する重鎖である。 ある好ましい実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する軽鎖である。
【0172】
ある実施態様では、アンギオテンシンII 2型に対して免疫応答性の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。より好ましくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体は、ポリクローナルAT2抗体(サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
【0173】
本願発明の抗体は、標識されていなくてもよく、または上述の通り検出可能な標識で標識されていてもよい。本願発明の抗体が未標識である場合、前記抗体に特異的な第2の抗体を検出可能な標識で標識する方法に加えてもよい。
【0174】
表現型分類アッセイのペプチド
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに免疫応答性のペプチドである。好ましい実施態様では、ヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端に免疫応答性のペプチドである。より好ましい実施態様では、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO:5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO:6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO:7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO:8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO:9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO:10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO:11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO:12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO:13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO:14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO:15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO:16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO:17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO:18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO:19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO:20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO:21)というアミノ酸配列の1つを有する。
【0175】
プロバソプレシンへの前記ペプチドの結合は、前記ペプチドが検出可能な標識で標識されている様子を画像化することができる。許容可能な標識は上述されており、当業に公知である。
【0176】
H. 乳癌、非浸潤性乳管癌、または非定型導管過形成の生検組織サンプルを表現型分類するためのキット
1. 乳癌/小細胞肺癌
本願発明のある実施態様には、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体を含む、侵襲性乳癌または小細胞肺癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が癌原性、侵襲性乳癌または小細胞肺癌組織の存在を示す、キットが含まれる。前記生検組織サンプルがプロバソプレシンに陽性である場合、乳癌または小細胞肺癌などの侵襲性の形態の癌が同定されている。
【0177】
前記キットはさらに、アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体、またはその抗原結合断片の調製を含んでよい。前記生検組織サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII 2型受容体にも陰性である場合、サンプルは侵襲性乳癌であると確認されている。
【0178】
2. 非浸潤性乳管癌(DCIS)
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体の調製、およびアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体の調製を含む、非浸潤性乳管癌についての生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットが含まれる。
【0179】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、前記生検組織サンプルは癌原性非浸潤性乳管癌細胞を含む。
【0180】
3. 非定型導管過形成(ADH)
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体の調製、およびアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体の調製を含む、非定型導管過形成についての生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットが含まれる。
【0181】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、前記生検組織サンプルは過形成細胞を含む。
【0182】
前記キットの抗体調製
前記キットのある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体または抗体結合断片の調製を含む。抗体および抗原結合断片は、凍結乾燥するか、または溶液に入れることができる。さらに、前記調製物は、たとえばウシ血清アルブミン(BSA)などの、キットの有効期間をのばすための安定物質を含有することができる。前記抗体および抗原結合断片を凍結乾燥する場合、前記キットは前記調製物を再構築するための溶液の調製物をさらに含有することができる。許容される溶液は、例えばPBSなど、当業者に公知である。
【0183】
ある実施態様では、前記抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。好ましい実施態様では、前記抗体またはその断片は、プロバソプレシンのVAG領域のC末端18アミノ酸残基に対して免疫応答性である。 好ましい実施態様では、前記抗体またはその断片は、アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性である。
【0184】
さらにより好ましい実施態様では、前記抗体はプロバソプレシンのVAG領域のC末端18アミノ酸残基に免疫応答性のモノクローナル抗体である。さらに好ましい実施態様では、前記モノクローナル抗体はMAG-1である。 好ましい実施態様は、前記抗原結合断片は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖である。さらに好ましい実施態様では、一本鎖可変領域断片(scFv)のアミノ酸配列は、前記断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされている、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列によって特徴づけられる。 ある実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 26の可変重鎖アミノ酸配列を有する重鎖である。ある好ましい実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する軽鎖である。
【0185】
前記キットのペプチド調製
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンのVAG領域のC末端領域に対して免疫応答性のペプチドである。 好ましい実施態様では、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO: 21)というアミノ酸配列の1つを有する。
【0186】
プロバソプレシンへの前記ペプチドの結合は、前記ペプチドが検出可能な標識で標識されている様子を画像化することができる。許容可能な標識は上述されており、当業に公知である。
【0187】
ペプチド調製物は凍結乾燥するか、溶液に入れることができる。さらに、前記調製物は、たとえばウシ血清アルブミン(BSA)などの、キットの有効期間を増やすための安定物質を含有することができる。前記ペプチドを凍結乾燥する場合、前記キットは前記調製物を再構築するための溶液の調製物をさらに含有することができる。許容される溶液は、例えばPBSなど、当業者に公知である。
【0188】
包装
本願発明のキットには、体液中の腫瘍マーカーとしてのプロバソプレシンおよびその断片を測定するためのELISAアッセイ用の構成要素が含まれる。この用途においてテストされるサンプルには、たとえば、血漿、尿、リンパ、乳管分泌物、およびそれらの産生物が含まれる。
【0189】
代替的には、前記キットの調製物は、患者の組織生検切片を検査するための、免疫組織化学法などの免疫アッセイに用いられる。
【0190】
単位
本願発明のキットの組成物は、単一の検査、または複数の検査のための単一または複数単位に調製されてよい。
【0191】
好ましい実施態様では、前記キットの調製物は、発熱物質を含まない。
【0192】
使用説明書
本願発明のキットには、免疫アッセイの組成物の使用のための使用説明書が含まれる。
【0193】
I. 処理方法
ある好ましい実施態様では、本願発明の薬学的組成物は、たとえば皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、または筋肉内注射を含む、任意の便利な経路によって患者に投与することができる。
【0194】
当業の医師または獣医師は、有効量(ED50)の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0195】
本願発明の薬学的組成物は、患者の腫瘍細胞の腫瘍特異的な死滅を誘導することによっていくらかの望ましい治療上の効果を生じ、その結果、任意の医学的な治療に適用できる合理的なベネフィット/リスク比において、治療された細胞においてその経路の生物学的なつながりを遮断し、前記腫瘍細胞を消滅させる、または増殖を阻害する、組成物の有効量を投与する。本願発明の薬学的組成物のヒト患者への投与のために、本願発明の薬学的組成物は、発熱物質を含まないように、当業者に知られる方法論によって調製することができる。
【0196】
本願発明の有効な免疫応答は、患者が疾患の徴候もしくは症状の部分的もしくは完全な軽減または低減を経験する場合に実現し、特に、生存期間の延長が、それに限定されずに含まれる。前記患者の症状は小康状態であって、腫瘍の負荷が増加しない。
【0197】
1. 1. プロバソプレシンに免疫応答性の抗体、抗原結合断片およびペプチド
本願発明のある実施態様は、乳癌およびDCISに感受性の患者を上述の抗体、抗原結合断片、およびペプチドの薬学的組成物で治療する方法である。好ましい実施態様では、治療を受ける患者はヒト患者である。抗体、抗原結合断片、およびペプチドの薬学的組成物は、必要とする患者に注射によって投与することができる。好ましい実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドは、前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドがプロバソプレシンに結合することによって標的細胞を死滅させる放射性標識または毒素で標識する。
【0198】
本願発明の方法のある実施態様では、前記毒素は、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、またはボルケンシンのうちの任意の1つである。
【0199】
本願発明の方法のある実施態様では、放射性標識の例には、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biの放射性核種のうちの任意の1つである。好ましい治療用放射性核種には、188Re, 186Re,
203Pb, 212Pb, 212Bi, 109Pd, 64Cu,
67Cu, 90Y, 125I, 131I, 77Br,
211At, 97Ru, 105Rh, 198Auおよび199Ag, 166Hoまたは177Luが含まれる。
【0200】
2. 併用療法
本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、化学療法剤を併用する併用療法に用いることもできる。本願発明の新規の局面は、化学療法剤の混合剤をMAG-1抗体と併用すると、有効量投与する場合、癌細胞の増殖を有効に阻害する。
【0201】
したがって、本願発明の癌治療のある方法は、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびに化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物を、それを必要とする患者に投与するステップに関与する。代替的には、それを必要とする前記対象に、プロバソプレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびに化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物を投与してもよい。前記薬学的組成物は、非経口または別々にまたは同時に投与することもできる。本願発明のある局面では、前記薬学的組成物は単一の製剤として投与する。本願発明のある局面では、前記薬学的組成物は別々の製剤として投与する。
【0202】
本願発明のある実施態様には、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびにデキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む本願発明の癌を治療する方法が含まれる。代替的には、前記方法は、プロバソブレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびにデキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物を投与するステップを含む。
【0203】
本願発明のある実施態様には、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびにIBMX、およびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む本願発明の癌を治療する方法が含まれる。代替的には、前記方法は、プロバソブレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびにIBMX、およびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物を投与するステップを含む。
【0204】
当業者は、本願発明の癌を治療するために、MAG-1調製物とともに投与するための、上述の任意の化学療法剤の製剤を調製しすることができる。
【0205】
プロバソプレシンに免疫応答性の抗体、抗原結合断片およびペプチドは上述の通りである。
【0206】
J. 薬物
本願発明によって意図される薬学的組成物は上述の通りである。本願発明のある実施態様では、前記薬学的組成物は、ヒト患者に投与することができるように発熱物質を含まないように調製する。薬学的組成物に発熱物質が入っているかどうかをテストするステップと、発熱物質を含有しない薬学的組成物を調製するステップは、当業者に公知である。
【0207】
本願発明のある実施態様は、本願発明の癌を治療するための薬物をつくるために、本願発明の任意の薬学的組成物を使用することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的な特徴に基づいて調製することができ、癌組織の状態の基づく単一または複数の製剤に調製することができる。本願発明の薬物は、病院および医院に配給するための適切なラベルであって、当該ラベルは対象の乳癌、非浸潤性乳管癌、または小細胞肺癌の治療の指示のためのラベルを有する好適な薬学的パッケージに包装することができる。薬物は単一または複数の単位に包装することができる。本願発明の薬学的組成物の調剤および投与の説明書は、前記薬学的パッケージに含むことができる。
【0208】
IV.等価物
当業者であれば、ごく普通の実験を用いるのみで、ここに説明した本願発明の特定の実施態様の等価物を数多く認識し、または確認できることであろう。このような等価物は、添付の請求の範囲の包含するところである。
本願明細書に引用されるすべての特許および公報は、その全体を引用により本願明細書に援用する。
【0209】
V.実施例
本願発明は、以下の実施例によって具体化されるが、それらはどのようにも本願発明を制限するものと解釈されてはならない。本願明細書全体に引用されているすべての参考文献(本願明細書全体に引用される文献、発行済み特許、および公開済み特許出願明細書)は、引用により本願明細書に明白に援用される。
【0210】
本願発明の実施には、他に指示のない限り、当業の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、および組換えDNAの従来の技術を用いるだろう。そのような技術は文献中に完全に説明されている。たとえば、Molecular
Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis
(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989)、 DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed.,
1985)、 Oligonucleotide
Synthesis (M. J. Gait ed., 1984)、 Mullis et al. U. S. Patent No:4,683,195、Nucleic Acid Hybridization
(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984)、 Transcription And Translation (B. D. Hames & S.
J. Higgins eds. 1984)、およびCurrent Protocols in Immunology, Molecular Biology, Cell Biology, Human
Genetics, Protein Science, and Nucleic Acid Chemistry (John Wiley & Sons,
Inc., Edison, NJ)を参照。
【0211】
材料および方法
培養細胞株およびヒト組織
培養細胞株は37°C および5% C02に維持された。NCI-H82 変異型 SCLC細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(バージニア州バナサス)から入手し、10% FBS(ハイクローン社、ユタ州ローガン)を含有するRPMI 1640(メディアテック社、ペンシルバニア州ハーンドン)中で培養した。J-J. Legros博士(ベルギー、リエージュ)から寄贈されたNCI-H345古典型SCLC細胞株を10% FBS、10-8
M β-エストラジオール、10-8
M ヒドロコルチゾン、5 μg/ml
インスリン、5 μg/ml
トランスフェリン、および5 ng/ml
亜セレン酸ナトリウム (ITS, シグマ社、ミズーリ州セントルイス)、および0.01 M
HEPESを添加したRPMI
1640中で維持した。J.Coulson 博士(英国リバプール)から寄贈されたLu-165古典型SCLC細胞株(Terasaki et al. (1994) Jpn.J.Cancer
Res. 85: 718-722)は、10%
FBSを含有するRPMI 1640中で維持した。E. Dmitrovsky 博士(ダートマス医学校)の研究室に所属するI. Pitha-Roweから寄贈されたBeas-2B形質転換ヒト気管支上皮細胞株は、エピネフリンを含有するLHC-8培地中で維持した。マウス骨肉腫脾ハイブリッド細胞株Sp2/0-Ag14は、ATCCから入手し、10% FBSを含有するDMEM(メディアテック社)中で維持した。ヒトSCLC腫瘍および非腫瘍肺組織サンプルは、協同ヒト組織ネットワーク(Cooperative
Human Tissue Network)(アラバマ大学、バーミンガム)、またはダートマス医学校病理学部のいずれかから入手した。非腫瘍およびSCLC腫瘍サンプルの両方は、気腫患者から肺葉切除によって除去された肺組織から採取した。ヒト視床下部組織は、C. Harker Rhodes博士(ダートマス医学校)の助力を受け死体解剖で入手した。
【0212】
モノクローナル抗体およびFab断片
動物が関与するすべての手順は、米国実験動物管理認定協会(AAALAC)が認証したダートマスカレッジおよびダートマスヒッチコック医学センター所内動物実験委員会(IACUC)の認可を得て行われた。MAG-1 mAbは、グルタラルデヒドを用いたウシサイログロブリンに結合したプロ-VPタンパク質(VAGcl8:
VQLAGAPEPFEPAQPDAY; SEQ ID NO: 23)のCOOH末端VAG領域である合成18アミノ酸ペプチドに対して作製された。この複合体は、同体積の完全フロインドアジュバント(CFA)で超音波分解した、1mg/mlの0.05 Mリン酸ナトリウム(pH 7.0)溶液(ペプチド当量濃度)として用い、BALB/cマウスを免疫した。21日後に、抗原と不完全フロインドアジュバント(IFA)の混合物を用いて追加免疫を行い、さらに5日後に脾細胞を収集した。前記脾細胞をSp2/0-Ag14細胞とハイブリダイズし、10% FBSを含有しヒドロキサンチンアミノプテリンチミジン(HAT)(シグマ社)を添加したDMEMを用いて生存可能なハイブリドーマを選択した。置換RIA(North et al. (1978) Endocrinology,
103: 1976-1984)により、125I-VAGcl8ペプチドを用いて、抗体の産生についてクローンをスクリーニングした。MAG-1産生クローンを分離し、BALB/cマウスの腹水を産生するために用い、臭化シアン活性化セファロース4B(シグマ社)に結合させたVAGcl8からなるカラムを用いた免疫アフィニティクロマトグラフィによってmAbを精製した。MAG-1は、クロノタイピングシステムキット(サザンバイオテクノロジーアソシエーツ、アラバマ州バーミンガム)を用いて、イソタイプIgG1であると決定された。イムノピュアIgG1
Fab・F(ab)2調製キット(ピアス社、イリノイ州ロックフィールド)を用いて、製造者の取扱説明書にしたがってMAG-1のFab断片を作製し、ウエスタン分析法によってフィシンによるIgG分子の完全切断を確認した。
【0213】
プロVPタンパク質の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)
総RNAをトリゾール(ライフテクノロジーズ社、メリーランド州ロックビル)を用いて培養細胞またはヒト組織から単離し、1μgを、オリゴ(dT)プライマおよびRNase H逆転写酵素(ライフテクノロジーズ社)とともに、製造者の使用説明書にしたがって標準の逆転写反応に用いた。AVPfwd
(5'-aggatgcctgacaccatgctg-3'; SEQ ID NO: 24)およびAVPrev (5'-attggcggaggtttattgtc-3'; SEQ ID NO: 25)を、MasterTaq酵素、TagMaster PCRエンハンサバッファ、およびマスターサイクラーグラディエントサーモサイクラー(エッペンドーフ社、ニューヨーク州ウェストベリー)を用いた反応に用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。これらのプライマは、VP遺伝子の2イントロン全体にわたり、プロVPタンパク質のコード配列全体を増幅できるようにデザインされた。サイクルの条件は以下の通りだった。1サイクル(95℃で5分間)、4サイクル(95℃で1分間、62℃で1分間、1サイクルごとに1℃低下、72℃で1分間)、30サイクル(95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0214】
抗体断片の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)
総RNAをトリゾール(ライフテクノロジーズ社、メリーランド州ロックビル)を用いて培養細胞またはヒト組織から単離し、1μgを、オリゴ(dT)プライマおよびRNase H逆転写酵素(ライフテクノロジーズ社)とともに、製造者の使用説明書にしたがって標準の逆転写反応に用いた。
【0215】
Vh fwd:
(5’-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG-3’; SEQ ID NO: 37)、Vh rev:
(5’-CCAGGGGCCAGTGGATAGACAAGCTTGGGTGTCGTTTT-3’; SEQ ID NO: 38)、Vl fwd:
(5’-GGTGATATCWTGMTGACCCAAWCTCCACTCTC-3’; SEQ ID NO: 39)、およびVl rev:
(5’-GGGAAGATGGATCCAGTTGGTGCAGCATCAGC-3’; SEQ ID NO: 40)を、MasterTaq酵素、TagMaster PCRエンハンサバッファ、およびマスターサイクラーグラディエントサーモサイクラー(エッペンドーフ社、ニューヨーク州ウェストベリー)を用いた反応に用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。これらのプライマは、IgG抗体Fv-DNA全体にわたり、IgG抗体Fv-DNAのコード配列全体を増幅できるようにデザインされた。サイクル条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(94℃で1分間、52℃で2分間、72℃で2分間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0216】
pComb3Xベクター(スクリップス研究所、カリフォルニア州ラホーヤ)への挿入のためのSfi1制限部位を有するMAG-1配列に基づいて、プライマーを作製した。Vh-Vl配向のためのPCR反応に用いるプライマは、Vh-fwd:
(5’-GGGCCCAGGCGGCCGAGGTCAAGCTGCAGGAGTCA-3’、SEQ ID NO: 29)、Vl-rev: (5’-CCTGGCCGGCCTGGCCTTTKATTTCCAGYTTGGTCCC-3’、SEQ ID NO: 30)、Vh rev:
(5’-ACCGGAAGTAGAGCCGGAGACTGTGAGAGTGGAGCC-3’、SEQ ID NO: 31)、およびVl fwd: (5’-GGCTCTACTTCCGGTGATATCGTTATGACCCCAACT-3’、SEQ ID NO: 32)である。PCR条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(90℃で30秒間、52℃で30秒間、72℃で90秒間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0217】
Vh-Vl配向のためのPCR反応に用いるプライマは、Vl-fwd:
(5’-GGGCCCAGGCGGCCGAGCTCGAYATCCAGCTGACTCAGCC-3’、SEQ ID NO: 33)、Vh-rev: (5’-
CCTGGCCGGCCTGGCCACTAGTGACAGATGGGGSTGTYGTTTTGG-3’、SEQ ID NO: 34)、Vl-rev:
(5’-GGAAGATCTAGAGGAACCACCTTTKATTTCCAGYTTGGTCCC-3’、SEQ ID NO: 35)、およびVh-fwd:
(5’-GGTGGTTCCTCTAGATCTTCCCTCGAGGTRMAGCTTCAGGAGTC-3’、SEQ ID NO: 36)である。PCR条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(90℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で90秒間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0218】
上述のプライマでは、変性プライマは以下の通りである。K = G または T、R = A または G、Y = C または T、S = G または C、M = A または C、and W = A または T。
【0219】
ウエスタン分析法
総タンパク質ライセートを、細胞および肺組織サンプルから0.1% ツイーン20を含有する0.1 M
HClに抽出することによって調製し、タンパク質濃度を215nmおよび225nmで測定したディファレンシャル吸収測定を用いて決定した(Waddell,
W. J. (1956) J. Lab. Clin. Med. 48:311-314)。ライセート(40μg)を、トリス/グリセリン/SDSバッファ(25 mM
Tris、192 mM グリセリン、0.1%
SDS、pH 8.3)を用いたSDS-PAGEによって14%ゲル上で分離し、前記タンパク質を、ミニプロティーン3システム(バイオラド社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて、20%メタノールを加えたトリス/グリセリン/SDSバッファ中で、イモビロン-Pポリビニルイデンジフルオライド(PVDF)膜(ミリポア社、マサチューセッツ州ベッドフォード)に移した。前記膜を遮断するために、前記膜をモデル583ゲルドライヤー(ライフテクノロジーズ社)を用いて乾燥させ、NRSA/GRSAをMAG-1および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合タンパク質L(ピアース社)を用いた連続インキュベーションによって検出した。VP-NPの検出のために、本研究室で作製したウサギポリクローナル抗体を用いた(North
et al.(1993) Peptides 14:303-307)。VP、VAG、またはプロVPの検出のために、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を用いた。その後、HRP標識ヤギ抗ウサギ抗体(ギブコBRL社)を用いた。シグナルの生成にはルミ-ライトウェスタンブロッティング基質(ロシュ社、イリノイ州インディアナポリス)を用い、前記膜をオートラジオグラフィフィルムに曝露した。
【0220】
免疫蛍光サイトメトリック分析法および顕微鏡分析法
約106個の培養SCLC細胞を0.1% BSAおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBSでさまざまな濃度に希釈したMAG-1 mAbまたはFabでインキュベートしてから、蛍光イソチオシアネート(FITC)結合Fab特異的ヤギ抗マウス抗体(シグマ社)でインキュベートした。各ステップを4℃で行い、その間、当該細胞を洗浄した。その後、当該細胞を4℃で1%パラフォルムアルデヒドに固定し、洗浄し、FACStarフローサイトメーター(ベクトンディキンソン社、カリフォルニア州マウンテンビュー)で蛍光を測定した。当該細胞の一部を取り出してスローフェードライト(モレキュラープローブス社、オレゴン州ユージーン)に再懸濁させ、バイオラド社製MRC 1024に連結した、Plan NeoFluar オプティクスを備えたAxioskop顕微鏡(ツァイス社、ニューヨーク州ソーンウッド)に取り付けて可視化した。IgG1同位体対照(ハイブリドーマライブラリ、ダートマス医学校)を用いて非特異的結合を評価した。
【0221】
免疫組織科学
ヒトSCLC、正常肺組織、または視床下部組織のホルマリン固定またはアセトン固定パラフィン埋包標本のそれぞれから切り出した4乃至6μm切片を、MAG-1 mAbを有するNRSAについて染色した。乳癌、DCIS、線維嚢胞性疾患、または正常乳房組織の固定標本をMAG-1を有するGRSAについて染色した。すべてのステップは、他に記載のない限り、外界温度で行った。前記切片を加熱(60℃で2時間)脱パラフィン処理し、キシレンで洗浄(10分間を2回)し、組織をエタノールの濃度を徐々に落としながら(100%乃至70%)洗浄(10分間)して再水和させた。内因性過酸化活性を、水素ペルオキシダーゼの0.6%メタノール溶液中で10分間インキュベーションしてブロックした。PBSで洗浄後(3分間を2回)、前記組織をトリプシン溶液(バイオジェネックス社、カリフォルニア州サンラモン)で、37℃で10分間タンパク分解することによって抗原回復させ、95%エタノール中で1分間洗浄してから、PBSで10分間洗浄した。スライドをパワーブロックユニバーサルブロッキング試薬(バイオジェネックス社)で20分間ブロックし、0.1% BSAを含有するPBS中でMAG-1 mAb(0.25μg/ml)でインキュベートした。PBSで洗浄後(3分間を2回)、前記スライドをマルチリンク・ビオチン化ヤギ抗免疫グロブリン溶液(バイオジェネックス社)で、20分間インキュベートし、PBSで洗浄 (3分間を2回)し、ラベルペルオキシダーゼ結合ストレプタビジン溶液(バイオジェネックス社)で20分間洗浄した。洗浄後、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)基質溶液(バイオジェネックス社)を用いて2乃至5分間染色した。その後、組織をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールの濃度を徐々に上げながら脱水して、キシレンで洗浄し、スーパーマウント封入剤(バイオジェネックス社)を用いてカバースリップした。
【0222】
代替的には、ヒトSCLC、正常肺組織、または視床下部組織のホルマリン固定パラフィン埋包標本のそれぞれから切り出した4乃至6μm切片を、MAG-1 mAbを有するNRSAについて染色した。すべてのステップは、他に記載のない限り、外界温度で行った。前記切片を加熱(60℃で10分間)して脱パラフィン処理して、キシレンで洗浄(5分間を2回)し、組織をエタノールの濃度を徐々に落としながら(100%、95%、および70%)洗浄(5分間を2回)して再水和させた。PBSで洗浄後(5分間を2回)、前記組織を0.01Mクエン酸ナトリウム(pH8.5)によって30分間80℃、抗原回復させた。スライドをPBSで洗浄し(5分間で2回)てから、パワーブロックユニバーサルブロッキング試薬(バイオジェネックス社)で5分間インキュベートし、0.1% BSAおよび0.02%ツイーン20を含有するPBS中でMAG-1 mAb(1μg/ml)でインキュベートし、組織断片と1時間反応させた。PBSで洗浄後(5分間を3回)、前記スライドをMultiLinkビオチン化ヤギ抗免疫グロブリン溶液(バイオジェネックス社)で、30分間インキュベートし、PBSで洗浄 (5分間を3回)し、ラベルペルオキシダーゼ結合ストレプタビジン溶液(バイオジェネックス社)で30分間洗浄した。PBSで洗浄(5分間を3回)後、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)基質溶液(バイオジェネックス社)を用いて3分間染色した。その後、組織をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールの濃度を徐々に上げながら脱水して、キシレンで洗浄し、スーパーマウント封入剤(バイオジェネックス社)を用いてカバースリップした。
【0223】
例I
SCLC腫瘍組織および培養細胞におけるNRSAの検出
総RNAをヒト肺SCLC腫瘍および非腫瘍組織サンプルから抽出し、RT-PCRによってバソプレシンメッセージの存在を分析した。PCR反応を、バソプレシン遺伝子の2つのイントロンにまたがる配列特異的プライマを用いて行った。
【0224】
SCLC腫瘍、SCLC培養細胞、およびヒト視床下部組織から抽出したRNAを用いた反応において、産生物が1種類だけ検出された(図1)。このバンドは、この特定の増幅プライマを用いたVPメッセージについて予測された大きさ(570 bp)と一致する。Beas-2B細胞からの総RNA抽出物にはVPメッセージは検出されなかったが、非腫瘍肺組織抽出物中には約570bpのバンドがわずかに検出された。これは、前記肺組織サンプル中に埋め込まれていた小さい未検出のSCLC腫瘍細胞によるVP発現か、または肺神経内分泌細胞によるVP発現である可能性がある(Reynolds
(2000) Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 278:L1256-L1263)。しかし、MAG-1 mAbおよびFab断片を用いてSDS-PAGEおよびウエスタン分析法を行った場合、NRSAが培養SCLC細胞および腫瘍細胞からのタンパク質抽出物中に検出されたが、非腫瘍肺組織からのタンパク質抽出物中には検出されなかった。培養SCLC細胞タンパク質抽出物をVP-NP (North,
(1993) Peptides 14:303-307)に対するポリクローナル抗体を用いて調べたところ、MAG-1 mAbを用いた場合と同一のバンドパターンが認められた(図2B)。MAG-1 mAbおよびFab、ならびにポリクローナル抗VP-NP抗体は、分子量が約20kDaおよび約40kDaのタンパク質とともにプロVPタンパク質の分解産生物および/または脱グリコシル化物と見られるものを認識した。前記約20kDaタンパク質はプロVPタンパク質について予測された大きさと一致した。
【0225】
例II
培養SCLC細胞の表面におけるNRSAの検出
NCI-H82細胞をMAG-1 mAbまたはFabと反応させてから、FITC標識ヤギ抗マウスFab特異抗体と反応させ、FACStar装置で蛍光を測定した(図3)。1μg/mlの濃度のMAG-1 mAbまたはFabを用いたところ、認められた染色の程度は同程度だったが、測定された平均蛍光は濃度100μg/mlのFabを用いても約2倍にしかならなかったのに対し、同濃度のmAbを用いた場合、約10倍になった。血漿膜からタンパク質への内部移行を阻害するために、反応は4℃でアジ化ナトリウムの存在下で行われたため、これらの結果は、培養SCLC細胞の表面上のNRSAへの結合能力はMAG-1 mAbの方がMAG-1 Fabよりも高いことを示唆している。前記mAbはまた、Lu-165およびNCI-H345培養SCLC細胞の表面上のNRSAを検出するために用いられた。イソタイプ対照マウスmAbで染色した後に測定した蛍光強度は、染色していない細胞で測定したものと同等だった。培養SCLC細胞の表面上のNRSAへのMAG-1 mAbの結合も、蛍光顕微鏡によって評価した。すべての場合において、SCLC細胞上で認められた前記細胞表面の染色パターンは均一ではなかったが、前記イソタイプ対照抗体が用いられた場合には染色はほとんど認められなかった。対照としてNCI-H82細胞を用い、その細胞をMAG-1、FITC結合抗マウス抗体、および固定パラホルムアルデヒドでインキュベートした後で、その細胞の核をヨウ化プロピジウムで染色した。NCI-H345およびLu-165細胞を共焦点顕微鏡で見たところ、断続的な血漿膜染色が認められた(図4Bおよび4C)。MAG-1に対して免疫応答性だということが明らかになった細胞の割合に関しては定量的な評価は行わなかったが、各細胞タイプの集団内の個々の細胞の標識の程度はさまざまだったということは明らかである。
【0226】
例III
ヒトSCLC組織断片上におけるNRSAの検出
ヒト組織切片を、MAG-1を用いて免疫組織化学的分析法で調べ、小細胞肺癌(SCLC)腫瘍組織には染色が認められたが(図5A)、正常肺組織肺胞(図5B)または気管支(図5C)には認められなかった。表面および細胞内染色はともにSCLC腫瘍切片において明らかである。ヒト視床下部は陽性対照として用いたが、その視床下部組織切片では細胞内染色しか認められなかった(データは非表示)。
【0227】
例IV
非浸潤性乳管癌および再生不良性導管過形成組織切片の免疫組織化学
ヒト組織切片を、MAG-1を用いて免疫組織化学的分析法で調べ、非浸潤性乳管癌(DCIS)腫瘍組織には染色が認められたが(図7)、再生不良性乳管過形成(図8)には認められなかった。
【0228】
本願発明において、本願発明の範囲または精神から逸脱しなければ、さまざまな改変および変更が可能であるということは、当業者には明らかであろう。本願明細書で開示した本願発明の明細および実施を考慮した本願発明の他の実施態様は、当業者には明らかであろう。明細および実施例は、添付の特許請求の範囲により示される本願発明の真実の範囲および精神を有する例示としてしか考慮されないことを意図する。
【0229】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】RT-PCR分析法による培養SCLC細胞およびヒトSCLC組織中のNRSAの検出を示す。RT-PCRは表示の細胞株またはヒト組織からの総RNA抽出物について行われた。産生物の分離は1.5%アガロースゲルで行われ、臭化エチジウムで可視化した。PCRプライマは、2イントロンにまたがるプロVPタンパク質の全コード領域を増幅するためにデザインされた。予測される増幅サイズは570 bpである。Lu-165およびNCI-H345、SCLC細胞株、Beas-2B、形質転換正常ヒト上皮細胞株、肺および視床下部、ヒト組織抽出物をテストした。
【図2】ウエスタン分析法による培養SCLC細胞およびヒトSCLC組織中のNRSAの検出を示す。図2AはMAG-1 mAbまたはMAG-1 Fabによる染色を示す。図2BはMAG-1 mAbまたはVP-NPに対するウサギポリクローナル抗体による染色を示す。およその分子量を各数値の左側に示す。細胞または組織タンパク質の総抽出物(40μg)をSDS-PAGEで分離し、二フッ化ポリビニルイデン(PDVF)膜にブロットし、(A) MAG-1 mAbまたはMAG-1 Fab、および(B) MAG-1 mAbまたはVP-NP二対するウサギポリクローナル抗体と反応させた。
【図3】培養SCLC細胞の表面に結合するMAG-1のフローサイトメトリ分析を示す。図3Aは、対照IgG1抗体と比較した、2種類の異なる濃度でのNCI-H82細胞のMAG-1 Fab 染色を示す。図3Bは、対照IgG1抗体と比較した、NCI-H345細胞のMAG-1 Fab 染色を示す。図3Cは、対照IgG1抗体と比較した、2種類の異なる濃度でのNCI-H82細胞のMAG-1 mAb 染色を示す。図3Dは、対照IgG1抗体と比較した、Lu165細胞のMAG-1 mAb 染色を示す。フローサイトメトリ前の抗体染色手順を、血漿膜内部移行を最小化する条件を用いて行った。記載のない限り、MAG-1 mAbおよびMAG-1 Fabを濃度100μg/mlで用いた。
【図4】培養SCLC細胞の表面に結合するMAG-1の共焦点分析を示す。SCLC細胞をMAG-1またはイソタイプ対照mAbと反応させてから、FITC標識二次抗体と反応させた。図4Aは、対象倍率40倍、および拡大倍率5.8倍の設定で見たNCI-H82細胞の赤色蛍光および緑色蛍光光チャンネルイメージを合成した微分干渉コントラスト(DIC)を示す。前記細胞を、比較用に前記核を染色(灰色)するために、ヨウ化プロピジウムでインキュベートした。図4BNCI-H345は、共焦点顕微鏡で画像化したもので、上図は対象倍率20倍(0.5 NA)で観察した対象IgG1を示し、下図は対象倍率40倍(1.3 NA)で観察したMAG-1染色細胞を示す。図4Cは、共焦点顕微鏡で対象倍率40倍で画像化したLu-165細胞を示す。図4Bおよび4Cについて、左図は透過光線チャンネル画像を示し、中央の図は緑色蛍光チャンネル画像を示し、右図は2つの合成画像を示す。
【図5】MAG-1 mAbを用いたヒト組織切片の免疫組織化学分析を示す。図5AはヒトSCLC腫瘍細胞に対するMAG-1の免疫応答を示す(褐色の染色)。図5Bは肺の肺胞の対照正常上皮細胞を示す。図5Cは肺の気管支の対照正常上皮細胞を示す。
【図6】VAGのC末端18アミノ酸残基に対して免疫応答性の一本鎖可変断片のアミノ酸配列および核酸配列を示す。図6Aはアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)を示す。図6Bは核酸酸配列(SEQ ID NO: 3)を示す。
【図7】MAG-lを用いた免疫組織化学分析法で調べた、ヒト非浸潤性乳管癌(DCIS)腫瘍組織切片の染色を示す。
【図8】MAG-lを用いた免疫組織化学分析法で調べた、ヒト再生不良性乳管過形成腫瘍組織切片の染色の欠損を示す。
【配列表】
【0001】
本願明細書は、その内容全体を引用をもって本願明細書に援用するものとする、2002年7月16日に提出された米国特許仮出願第60/396,121号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本願発明は、バソプレシン遺伝子関連表面抗原、および任意でアンギオテンシンII 2型受容体を発現する癌細胞を同定および標的とする新規組成物および方法に関連する。より詳しくは、本願発明は、細胞表面抗原としてのプロバソプレシン前駆タンパク質に構造的に関連するタンパク質を提示する癌細胞への選択性の高い、新規モノクローナル抗体およびタンパク質断片に関連する。より詳しくは、本願発明は、スクリーニングの方法、表現型のタイピングの方法、治療の方法、およびキットに関連する。
【0003】
連邦政府補助金
本願発明の開発にいたる研究のための補助金の一部は、以下の連邦政府研究助成、国防総省規約第DAM D17-94-J-4288号、国立ガン研究所規約第CA 19613号および第DK 07508号、ならびに国防総省乳癌研究プログラムフェローシップ第BC011026号にしたがって供給されたものもある。
【0004】
発明の背景
肺癌は、世界における癌に関連する死因の首位を占めており、SCLCは米国における全肺癌ケースの約16%を占めている(Travis et
al.(1995) Cancer 75:191-202)。最近、SCLCは形態学的および組織学的な総データをもとに診断されるため、この疾患は進行期に達した後に同定されることが非常に多い(Junker et
al.(2000) J.Cancer Res.Clin.Oncol.126:361-368)。放射線療法を併用した、または併用しない高用量化学療法からなる現在の治療法に対する応答率は高いが、疾患の再発は頻回で、腫瘍がこのアプローチに対して抵抗性を示すようになるため、2年生存率はわずか6乃至12%である(Johnson et al.(1998) J.Natl
Cancer Inst.(Bethesda) 90:1335-1345)。この療法には、かなりの毒性も伴う。
【0005】
バソプレシン遺伝子の発現は、視床下部ニューロンに大きく限定されており、これは17kDaまでのタンパク質産生物をコードしており、そこに4kDaまでのNグリコシド側鎖が付加すると20kDaまでのプロバソプレシン(pro-VP)前駆体が得られる。このタンパク質は通常、分泌小胞の中に詰め込まれており、そこでこのタンパク質は酵素分解されて、バソプレシン(VP)、VP-NP、およびVAGが生成される(North, W.G. In:D.Gash
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al.(1994) B.J.Cancer 69:260-263;North et al.(1993) Ann.NY Acad.Sci.689:107-121)。VP-NPに対して産生されたポリクローナル抗体は、培養SCLC細胞の表面に特異的に結合しており、それは免疫蛍光分析によって判定されている(Friedmann et
al.(1995) Neuropeptides 28:183-189;North et al.(1983) Prog.Brain Res.60:217-225;North
and Yu (1993) Regulatory Peptides 45:209-216)。そこで、これらの抗体の標的は、ニューロフィシン関連細胞表面抗原(NRSA)と命名されている(North et
al.(1993) Peptides 14:303-307)。ウエスタン分析法によって、ポリクローナル抗VP-NP抗体はSCLC培養細胞からの総タンパク質抽出物中の、20kDaまで、および約40kDaのタンパク質を認識する。約20kDaのタンパク質はプロバソプレシンタンパク質の大きさに相当し、約40kDaのタンパク質は関連する形状であると考えられる(Camier et al. (1979) FEBS
Lett., 108: 369-373; Lauber et al. (1979) FEBS Lett., 97: 343-347;
Lauber et al. (1981) Proc. Natl. Acad Sci. USA, 78: 6086-6090; Moore and
Rosenior. (1983) Prog. Brain Res., 60: 253-256; Nicolas et al. (1980) Proc.
Natl Acad Sci. USA, 77 2587-2591; Rosenior et al. (1981) Endocrinology,
109: 1067-1072)。プロVPタンパク質のバソプレシン、VP-NP、またはVAG領域に対して産生されたポリクローナル抗体はSCLC腫瘍切片に特異的染色を示すが、一方で、検査した非神経内分泌腫瘍に対する免疫応答の発生率は非常に低い(Friedmann et al.
(1994) B. J. Cancer 69: 260-263; Friedmann et al. (1993) Cancer
Letters 75: 79-85)。
【0006】
乳癌は、世界中で、女性の死因の首位を占めており、米国では毎年約50,000人の女性が死亡している(American Cancer
Society. Cancer Facts and Figures, Atlanta, GA: American Cancer Society, 1993)。この疾患を有効な治療には、最近、多くの進歩があったが(Silverstein,
M.J. et al., The Breast Journal (2002) 8:70-76)、介入の成功は、主にマンモグラフィによる早期発見と癌組織の外科的切除に依存している。小細胞肺癌(SCLC)の場合、バソプレシン(VP)遺伝子産生物は乳癌/非浸潤性乳管癌(DCIS)の万能腫瘍マーカーシステムを提示しているようだ。このシステムによって、早期の発癌後組織変化の高度な警告、腫瘍負荷における変化の同定および評価の正確な方法、および患者に長期生存を提供するために効果的な治療の新しい非外科的方法を提供することができる(North
et al. Br. Can. Res. Treat. (1995) 34:229-235; and North Exper.Physiol.(2000)
85S:27-40)。または、正常な乳組織かまたは非定型ハイパージスプラジアを含む各種の線維嚢胞性の症状による発現の証拠は、まだ発見されていない。乳癌におけるVP遺伝子の発現によって、GRSAと命名された表面マーカーが生じる(North Exper.
Physiol. (2000) 85S:27-40)。これらのマーカーはプロバソプレシンを認識するポリクローナル抗体と相互作用し、分子量は40および20kDaあるようだ。前記の抗体がプロバソプレシンのグリコペプチド部分と相互作用することが初めて発見されてから、この抗原はGRSA(すなわちグリコペプチド関連細胞表面抗原)と呼ばれている。
【0007】
発明の概要
本願発明は、腫瘍細胞に関連する疾患のための、効果的な治療方法、組成物、診断方法、キット、および薬学的なパッケージを提供する。
【0008】
本願発明に従った組成物は、ペプチド、抗体、抗原結合部分、および細胞内のさまざまな領域もしくはプロバソプレシン(たとえばバソプレシン(VP)、ニューロフィシン(NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)など)、またはそれ自体がニューロフィシン関連/グリコペプチド関連表面抗原(NRSA/GRSA)として提示されるものに対して免疫応答性であるペプチド模倣体を含む。本願発明の抗体は、プロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である、モノクローナル抗体であってよい。本願発明のある実施態様は、モノクローナル抗体MAG-1である。また、本願発明には、SEQ ID NO: 26に記載の重鎖可変領域配列および/またはSEQ ID NO: 27に記載の軽鎖可変領域配列を含む、抗原結合部位が含まれる抗体であって、当該抗体がプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である抗体も包含される。本願発明には、前記抗体の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、および軽鎖がヒト化抗体として包含される。本願発明の抗体、抗原結合断片およびペプチドは、侵襲性乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌において発現するプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに対して免疫応答性である。
【0009】
本願発明のある実施態様には、乳癌または非浸潤性乳管癌に感受性のある患者を同定する方法であって、当該方法が、患者から検査用サンプルを採取するステップと、前記検査用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをペプチド、抗体、または抗原結合断片と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞を対照組織と比較してプロバソプレシンを過剰に発現しているかどうかを調べるステップを含む、方法であって、当該方法において、前記検査用サンプルがプロバソプレシンを過剰発現している場合、乳癌または非浸潤性乳管癌に感受性のある患者を同定することができる方法が含まれる。前記検査用サンプルは、さらに、アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と反応させてもよい。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記検査用サンプルは侵襲性乳癌であると診断される。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記検査用サンプルは非浸潤性乳管癌であると診断される。前記検査用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陽性である場合、前記検査用サンプルは非定型導管過形成であると診断される。
【0010】
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドの調製、およびアンギオテンシン型2受容体に対して免疫応答性の抗体の調製を含む、乳癌、非浸潤性乳管癌、および非定型導管過形成の生検用組織サンプルの表現型タイピングに有用なキットである。前記抗体/ペプチドの調製は、任意の免疫アッセイに使用することができる。
【0011】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記生検用サンプルの表現型は乳癌の侵襲型であるとタイピングされる。
【0012】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非浸潤性乳管癌であるとタイピングされる。
【0013】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非定型導管過形成であると分類される。
【0014】
プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記の抗体の調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。前記キットの抗体調製物は、ATCC番号_____を有するハイブリドーマによって産生されたC末端プロバソプレシンのVAGドメインに結合するmAbなどのモノクローナル抗体であってよい。さらに詳しくは、前記モノクローナル抗体はMAG-1であってよい。
【0015】
前記のアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記の抗体の調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。より詳しくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体調製物は、ポリクローナルAT2抗体(カリフォルニア州サンタクルス、サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
本願発明のキットのペプチドは、プロバソプレシン部分を含み、プロバソプレシンに対して免疫応答性である。好ましくは、本願発明のペプチドは、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)のうちの、任意の1つである。
【0016】
本願発明のある実施態様には、患者から検査用サンプルを採取するステップと、前記生検用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドまたは抗体と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞をアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体と接触させるステップと、前記細胞がプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体のいずれかを発現しているかどうかを調べるステップを含む、線維嚢胞性および癌性病変を区別するために、患者から採取した乳組織サンプルの表現型をタイピングする方法が含まれる。
【0017】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色に陰性である場合、前記生検用サンプルの表現型は乳癌の侵襲型であるとタイピングされる。
【0018】
前記生検用サンプルがプロバソプレシン検出のための染色に陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色にも陽性である場合、前記生検用サンプルの表現型は非浸潤性乳管癌であると分類される。
【0019】
前記生検用サンプルがプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体検出のための染色で染色されない場合、前記生検用サンプルの表現型は線維嚢胞性(たとえばADH)である。
【0020】
本願発明の抗体調製物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗原結合断片であってよい。好ましくは、本願発明の方法の抗体は、ATCC_____番を有するハイブリドーマによって産生されたC末端プロバソプレシンのVAGドメインに結合する抗体のような、モノクローナル抗体であってよい。さらに詳しくは、前記モノクローナル抗体はMAG-1であってよい。好ましくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体は、ポリクローナルAT2抗体(サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
【0021】
本願発明のペプチドは、プロバソプレシン部分を含み、プロバソプレシンに対して免疫応答性である。好ましくは、本願発明のペプチドは、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ ID NO: 20)、and LWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)のうちの任意の1つである。
【0022】
発明の詳細な開示
概要
効果的なスクリーニングと無毒性の治療の必要性が差し迫る中、乳癌およびSCLCの場合に記述されている各種分子および遺伝子異常を利用した、乳癌および小細胞肺癌(SCLC)と闘うための新規のアプローチの探索が始まった(Junker
et al. (2000)
J. Cancer Res. Clin. Oncol. 126: 361-368; Wistuba et al. (2001) Semin.
Oncol.28: 3-13 2001; Zangemeister-Wittke and Stahel (1999) Cell. Mol.
Life Sci. 55:1585-1598; and Popescu NC and Zimonjic DB (Oct. 30, 2002) Am.
J Med. Genet. 115(3): 142-149)。細胞表面腫瘍特異的抗原に対する抗体の可能性は、SCLCの分別的な診断への利用だけでなく、最小限の副作用を誘導する可能性があることから腫瘍の局在化および根絶への利用にも魅力的である(Weiner,
L.M. (1999) Semin. Oncol. 26: 41-50)。この戦略は、欠損または調節されていない腫瘍特異的抗原に対する場合に最も有効で、バソプレシン遺伝子の産生物はこのような抗原のために提供されてよい。
【0023】
本願発明は、プロVPタンパク質のVAG領域のC末端タンパク質である合成ペプチドを用いて産生された、mAbに向けられたMAG-1を用いた培養SCLC細胞およびヒトSCLC腫瘍組織中のNRSAの検出を開示する。MAG-1は、ウエスタン分析法で培養SCLC細胞溶解物中で約20kDa、および40kDaのNRSAタンパク質を認識するが、その一方で免疫蛍光サイトメトリー法および顕微鏡分析法では、MAG-1はこれらの細胞の表面に結合することを示唆している。より重要な点は、約20kDa、および40kDaのNRSAタンパク質は、MAG-1を用いたウエスタン分析法によってヒトSCLC腫瘍生検サンプルの溶解物中で検出された。免疫組織学的分析法では、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを明らかにした。NRSAは一般に正常細胞の表面には認められないため、SCLCの診断および治療において、腫瘍局在化のMAG-1アプローチにおいて優れた標的として働くことができると考えられる。
【0024】
現在、乳癌のスクリーニングには、直接的な免疫組織学、および数種類の腫瘍マーカーに対する一組の抗体が必要であるが、これらの腫瘍における個々の発生率は50%未満である。
【0025】
病理学者にとって、非定型導管過形成を乳癌および非浸潤性乳管癌と区別することは非常に困難で、これを実現する方法は、不必要な外科手術を受けなければならない女性を救うため、早急に必要とされている。前者の診断には一般に外科手術を必要とするが、後者は介入を必要としない。
【0026】
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンタンパク質(VAG)のグリコペプチド成分のC末端領域に対するモノクローナル抗体(MAG-1)を包含し、およびNRSAの2種類の主要な免疫応答性形状を、培養SCLC細胞から採取したタンパク質抽出物とともにヒトSCLC腫瘍から採取したタンパク質抽出物中のMAG-1を用いて検出する、ということを包含する。しかし、これらのタンパク質は、MAG-1を用いたウエスタン分析法による非腫瘍ヒト肺組織からのタンパク質抽出物においては検出されなかった。SCLCを含む一部の癌は、バソプレシン遺伝子を発現することが知られているが、すべての前駆タンパク質が酵素処理され視床下部などの循環に分泌されるわけではないらしい。ポリクローナル抗VP-NP抗体はSCLC培養細胞抽出物中の、約20kDa、および約40kDaのタンパク質を認識することが明らかになっている(North et al., (1993) Peptides
14:303-307)。正常VPメッセージのグリコシル化プロVPタンパク質産生物の予測される大きさは約20kDaで、これは無細胞翻訳アッセイを用いて証明されている(Giudice et al. (1979) J.
Biol. Chem. 254: 11767-11770; Lin et al. (1979) Biochem. Biophys. Res.
Commun. 89: 943-950; Schmale et al. (1979) FEBS Lett. 108:311-316)。過去の研究では、約40kDaのタンパク質であると考えられる伸長されたVPメッセージが同定された(North et al.,
(1993) Peptides 14:303-307; Rosenbaum et al. (1990) PNAS 87: 9928-9932)。しかし、この研究で使用されたSCLC細胞株および主要組織においてRT-PCRによって検出された、予測されたサイズの正常VPメッセージは、1種類のみで、これはヒト視床下部で検出されたもののサイズと一致した。
【0027】
ポリクローナル抗体調製物は、ヒトSCLCおよび視床下部組織切片を特異的に染色し、MAG-1を用いて観察されたものと同様に培養SCLC細胞の原形質膜に結合することが示された。本願発明者らは、約20kDaおよび約40kDaのNRSAタンパク質が、腫瘍特異的抗体として働き、抗体の標的にすることができるVP遺伝子関連産生物であることを明らかにしている(North
and Yu (1993) Regulatory Peptides 45:209-216; North et al.(1993) Peptides
14:303-307; North, W.G., et al.(1995) Breast cancer Research and Treatment
34:229-235; Friedmann et al.(1994) Br.J.Cancer 69:260-263; Friedmann et
al.(1993) Cancer Lett.75:79-85; North et al.(1989) Nuc.Med.Commun.10:643-652)。
【0028】
SCLC細胞のさまざまなタイプによるNRSA発現量は測定されていないが、本願発明者らは、MAG-1が、古典的および変異種のサブタイプ両方のSCLCに由来する培養細胞株の表面上にあるNRSAを認識できることを証明した。蛍光顕微鏡観察により、さまざまなレベルの免疫応答で調べた各SCLC 細胞タイプで、MAG-1染色が観測されるということを明らかにした。
さらに、本願発明者らは免疫組織化学的分析法によってSCLC腫瘍のMAG-1の特異性を実証した。MAG-1は、ヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しなかった。染色は腫瘍切片のSCLC細胞の表面および原形質に局在化しているようだった。MAG-1はヒト視床下部組織とも反応し、染色は原形質に局在化しているようだった。これらの結果は、MAG-1はSCLC腫瘍上のNRSAを効率的に狙うために用いることができる、ということを示唆している。MAG-1は免疫組織化学的スクリーニングで用いられた組織中にある正常肺上皮細胞とは反応しなかったが、染色は肺神経上皮小体において認められた。図中では明らかではないが、RT-PCR反応に用いられた非腫瘍肺サンプルに、VPメッセージが検出された(図1)。
【0029】
VPメッセージの発現は、使用された肺組織サンプル中の肺神経内分泌細胞の存在を表している可能性がある(Reynolds et
al.(2000) Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.278:L1256-L1263)が、プロホルモンは酵素的に処理され、視床下部と同様、その産生物は分泌される可能性がある。この理論は、図5に表される免疫組織化学的知見によって支持されている。
【0030】
MAG-1 mAbへの利用の可能性は、SCLCの局在化および治療用の腫瘍標的物質としてだけでなく、肺癌のその他の形態からSCLCを区別し、その早期診断を助けるために、重要である(Friedmann et
al.(1994) Br.J.Cancer 69:260-263; Friedmann et al.(1993) Cancer Lett.75:79-85;
North et al.(1989) Nuc.Med.Commun.10:643-652)。MAG-1 Fab断片が合成抗原とともにSCLC腫瘍および培養細胞からのタンパク質抽出物中のNRSAを認識する能力も評価された。それは、抗体断片がいくつかのin vivo用途により適している可能性があるためだ。Fabがウエスタン分析法でNRSAを認識できた一方で、合成抗原への結合親和性が低かったことは、驚くべきことではない。しかし、抗体分子の腫瘍組織への局在化、および充実性腫瘍を透過する能力は、大きさ、親和性、クリアランス速度、および抗原密度を含む数多くの因子に依存する(Adams
et al. (2001)
Cancer Res. 61: 4750-4755; Todorovska et al. (2001) J. Immunol.
Methods 248: 47-66)。
【0031】
この抗体の可変領域断片(Fv)は、画像撮影およ微量法における使用にもさらなる利点を提供することがある(Kortt et
al.(2001) Biomol.Eng.18:95-201)。
【0032】
NRSAは典型的には正常細胞の表面には認められず、古典的および変種のSCLCの間で調節されることもなく、非神経内分泌肺癌による発現の頻度は低い(Friedmann et
al.(1993) Cancer Letters 75:79-85)。したがって、NRSAは、MAG-1
mAbおよびその断片を用いた診断および療法においてSCLC腫瘍の局在化への優れた標的として働くはずである。
【0033】
本願発明は、抗体、抗体断片、その誘導体(たとえば単一特異的または二重特異的scFv断片またはFd断片など)または結合ペプチドで狙うことができる新規腫瘍特異的マーカーとしてのプロバソプレシン前駆タンパク質の発見に関連する。これまで、本願発明者らは、小細胞肺癌(SCLC)のヒト組織切片70片、乳癌ヒト組織切片62片、非浸潤性乳管癌のヒト組織切片(DCIS)55片について、各種抗体を用いてプロバソプレシンについてスクリーニングし、それらはすべて陽性染色を呈している。ADH切片を含む正常肺および乳組織切片は、これらの抗体を用いても染色を呈しない。前記プロバソプレシン前駆タンパク質を特異的腫瘍抗原として用いることができるという発見が、新規知見を構成する。研究、早期検出、診断、療法、および予防の目的のプロバソプレシン前駆タンパク質を発現する癌を狙う上で使用するための抗体、抗体断片、その誘導体、または結合ペプチドを開発するという概念が、その知見の直接的な用途である。
【0034】
正常な生理条件下では、バソプレシン遺伝子は大半が視床下部ニューロンによって発現され、ここで得られたプロバソプレシン前駆タンパク質は酵素によってせつだんされて、ペプチドホルモン成分になる。このペプチドホルモン成分には、ニューロペプチドバソプレシン(VP)、バソプレシン関連ニューロフィシン(VP-NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)が含まれる。小細胞肺癌(SCLC)、および乳癌を含む特定の癌は、バソプレシン遺伝子も発現し、腫瘍によるバソプレシン産生物は、1970年代初頭ごろから文献に記述されており、その記述では、SCLC患者の血中に高レベルのバソプレシンを検出した、と報告されている。しかし、North et al. は、1983年、プロバソプレシン前駆タンパク質は癌細胞の表面に局在化し、腫瘍抗原として働いているかもしれないという可能性を、最初に記述している。ニューロフィシンおよびグリコペプチド関連細胞表面抗原(NRSAおよびGRSA)という用語は、腫瘍を狙うために有用な抗原として提示されている状態のプロバソプレシン前駆タンパク質を意味するために用いられた。この専門用語の差違は、前記プロバソプレシンタンパク質の2つの異なる領域に対する抗体を使用しているために生じた。
【0035】
抗体は腫瘍上のプロバソプレシン(NRSA/GRSA)を狙うために用いることができる。過去の研究は、プロバソプレシンのニューロフィシン部分に対する放射標識された抗体を用いて、ヒトにおいてSCLC腫瘍を局在化させ、そして画像撮影を行うことができることを示している。後続の研究は、前記プロバソプレシンタンパク質のさまざまな領域に対するポリクロナール抗体、モノクロナール抗体、および抗体Fab断片が、培養SCLCおよび乳癌細胞、ならびにヒト腫瘍切片に特異的に結合するが、腫瘍が存在しない組織には結合しない、ということを示している。本願発明者らは、NRSA/GRSAに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体、およびそれらのFab断片誘導体を開発し、それらが培養ヒト癌細胞およびヒト癌細胞に結合することができるということを実証した。NRSA/GRSAは一般に正常細胞には認められないため、バソプレシン遺伝子を発現する癌の早期検出、診断、および治療において、腫瘍の局在化のための優れた標的として働くことができると考えられる。NRSA/GRSAはまた、前記バソプレシン遺伝子を発現する癌の予防のための、ワクチン開発戦略に用いるための魅力的な候補物質を提供する。
【0036】
一本鎖抗体断片および小さい結合ペプチドは腫瘍上のプロバソプレシン(NRSA/GRSA)を狙うために用いることができる。本願発明者らは、抗体およびNRSA/GRSAに結合するペプチドの一本鎖可変領域断片(scFv)を産生した。このような小分子を使用することによって、in vivo腫瘍ターゲティングのさらなる利点(腫瘍の浸透、製造の簡易化)を提供するだろう。さまざまな腫瘍によるバソプレシンの発現はかねてから知られていたが、抗体および抗体断片で前駆タンパク質を狙うというやり方は新規の概念である。
【0037】
プロバソプレシン遺伝子発現のメカニズムは、腫瘍療法を標的とすることができる。さらに、バソプレシンは腫瘍生存の自己分泌調節に関与しており、予備研究の結果から、mRNAメッセージが、腫瘍成長を害のための、アンチセンスに基づく方法のための、実行可能な標的であるということが実証されている。
【0038】
「免疫ベースの」という用語は、抗体、抗体断片、その誘導体または結合ペプチドの使用を意味する。
【0039】
1) 早期検出
a) 特定の腫瘍を表示するプロバソプレシン成分の血中濃度測定プロバソプレシン前駆タンパク質の各種部分に対する抗体は、特定の腫瘍を有することが疑われる患者、または過去にこれらの腫瘍を有したことのある患者の血液中の濃度を測定する臨床スクリーニングアッセイに有用であろう。これは、より侵襲性の大きい検査/生検の正当性を証明し、疾患の再発の監視を助けるための、有用な非侵襲性または侵襲性の小さい検査であろう。
【0040】
b) 免疫ベースの画像撮影NRSA/GRSAの各種部分に対する抗体を使用すると、マンモグラフィのような既存の画像撮影技術が非常に向上し、SCLC/乳癌などの疾患の新規画像撮影プロトコルが開発され、臨床用に効果的に導入することが可能になる。この種の技術は特に転移性疾患の検出に有用であろう。
【0041】
2) 診断
a) 生検の免疫ベースの病理学的スクリーニング現在、SCLCは、生検用組織から得られた形態学的および組織学的な総データをもとに診断され、この疾患は進行期に達した後に同定されることが非常に多い。さらに、DCISは、生検用組織切片上では、一般に良性疾患と考えられている非定型導管過形成(ADH)と区別することが難しい場合が多い。これら生検用組織サンプルを、NRSA/GRSAの各種組織に対する抗体を用いて染色することができる。これにより、後続の治療法および転帰に影響しうる決定的な差違化診断を可能にする。
【0042】
b) In situにおける免疫ベースの画像撮影上述の1.aに概説されたように、NRSA/GRSAの各種部分に対する抗体の使用をマンモグラフィ画像撮影技術と組み合わせて使用し、乳疾患と過形成症状を区別するための非侵襲的または侵襲性の小さい診断を可能にすることができる。
【0043】
本願発明の組成物は、免疫ベースの腫瘍ターゲティングおよび化学毒性的/放射線学的物質の送達に使用することができる。上述の通り、SCLC腫瘍は、プロバソプレシンタンパク質のニューロフィシン領域に対する抗体を用いて、局在化および画像化することができる。したがって、抗体、抗体断片、その誘導体、または結合ペプチドは放射標識するか、化学毒性物質と複合体化もしくは併用するか、またはNRSA/GRSA発現腫瘍を死滅させるための内因性免疫系細胞の誘因物質として働かせることができる。すべてのSCLC、乳癌、およびDCIS細胞がNRSA/GRSAを発現するようなので、この抗原を標的とする治療は、これらの疾患のために現在利用可能な戦略よりも、著しくより強力な療法を提供するだろう。
【0044】
腫瘍成長を抑制するための、バソプレシン遺伝子転写および/またはバソプレシンmRNAメッセージ翻訳の阻害を狙う。バソプレシンはバソプレシン遺伝子を発現する癌細胞中に自己分泌成長刺激を提供するため、その産生の阻害によって腫瘍の生存を阻害できるだろう。遺伝子転写翻訳を阻害するアンチセンス分子を用いることによって、強力で非侵襲的な治療用のツールを開発することができる。
【0045】
癌ワクチンは、NRSAおよびGRSAなどの腫瘍抗原に基づく。特定の癌に固有に発現するために、これらの疾患の初期予防および/または再発を可能にする、抗抗体などのNRSA/GRSAに基づく、またはNRSA/GRSA上の抗原モチーフを用いたワクチン戦略が開発できる。
【0046】
a) 乳癌の存在を確認するための新鮮で固定された生検物質のスクリーニング、b) 患者における乳癌の非侵襲性診断画像撮影、およびc) 患者における乳癌の治療の対象化のための、バソプレシンとニューロフィシン部分を架橋するプロバソプレシンにある領域(ここではMAPとよぶ)およびこれらMAPSの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン(ここではMAVとよぶ)およびこれらMAVの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではMAGとよぶ)およびMAGの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(ここではMATとよぶ)およびこれらMATSの修飾型に対するモノクローナル抗体の使用。
【0047】
MAPSは、ウンデカンペプチドPRGGKRAMSDL (SEQ
ID NO :1)抗原に対して作製されるが、主に、トリペプチド架橋構造GKR、およびこの構造の周辺に位置するアミノ酸残基を認識する。MAGはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではVAG)のC末端半分である18残基ポリペプチドに対して作製される。MAVs、MAPS、MAG、およびMATSは、GRSAと呼ばれる乳癌上にある万能プロバソプレシン関連細胞方面抗原として本願発明者らが提唱するものを認識するようにデザインされる。
【0048】
本願発明では、バソプレシンおよびニューロフィシン部分を架橋するプロバソプレシンの領域(MAPS)およびこれらMAPSの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン(MAV)およびこれらMAVの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(MAG)およびこれらMAGの修飾型に対するモノクローナル抗体、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(MATS)およびこれらMATSの修飾型を、乳癌のスクリーニング、in vivo診断、および治療に用いる。バソプレシンに対するポリクローナル抗体、およびヒトバソプレシン関連グリコペプチド(ヒトコペプチンとも呼ばれる)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学的研究から、本願発明者らは、すべての乳癌はこれらポリクローナル抗体に反応性であるという可能性があることを明らかにした。
【0049】
モノクローナル抗体はバソプレシン(MAV)に対してだけでなく、ヒトVAG、およびヒトプロバソプレシンの架橋構造に対して開発されてきた。MAGおよびMAVはすべての乳癌の免疫染色を陽性にし、その結果、新鮮で固定された生検組織の中の乳癌についての単一療法スクリーニングテストにおいて、それらを理想的な状態にする。モデリング研究は、乳癌細胞の原形質膜中のGRSAタンパク質では、前記バソプレシン部分を前記細胞外に曝露させることができるだけでなく、MAGが作製されるグリコペプチド領域、およびMAPSが作製されるプロバソプレシン架橋構造も曝露させることができることを示している。したがって、MAGs、MAPs、MAVs、およびMATも、培養液中の生細胞上のGRASタンパク質を同定し、結合することができる。したがって、それらは患者の生腫瘍細胞に結合することができ、患者の腫瘍(特に転移性および/または再発性疾患)の位置を特定するために使用して、標的免疫療法に効果的に用いることができる。有効なin vivoツールにするために必要なMAGまたはMAPSまたはMAVまたはMATの修飾には、FabおよびF(ab')2型への転換が含まれる。患者の腫瘍の位置の診断には、テクネチウム99、ヨウ素131、インジウム111、および/または鉄含有標識されたMAG、MAP、MAVs、またはMATの使用が含まれる(が、それらに限定されない)。
【0050】
本願発明は、1) 乳癌の早期検出、および2) 患者における乳癌、特に転移性および/または再発性疾患の同定および位置の特定、のための、非常に必要とされる迅速、低価格、高感度、および特異的な方法を提供する。さらに、原発性疾患および再発性薬剤耐性疾患の療法に有効な、すべての乳癌患者に適用できる、新規の免疫標的治療を開発する、有用なツールも提供する。この点については、乳癌患者の検査および治療を行うすべての病院および医師に有用であるに違いない。検出キットはいずれの地方病院の研究室にも設置できるほど十分に単純であり、MAG、MAV、MAP、および/またはMAT、ならびにそれらの修飾型は、乳癌患者を治療するすべての病院が容易に利用できるようになっていてよい。
【0051】
バソプレシンV2受容体の異常型に対する抗体は、(a) DCISをADHから区別する、および(b) 乳癌の検出および標的化、のために使用してもよい。
【0052】
本願発明者らは、乳癌細胞はバソプレシンV2受容体の腫瘍特異的異常型をつくっていることを発見し、この異常なタンパク質に対する抗体が乳癌だけではなくDCISの早期免疫組織化学的検出に使用することができることを予測する。それらはまた、患者の乳癌の診断、特に転移性疾患の検出および位置の決定のための乳癌の診断、および乳癌の標的化治療において有用であることも予測されている。
【0053】
本願発明者らは、乳癌細胞において、バソプレシンV2受容体mRNAの2つの型を発見した。このうちの1つは、配列が正常ヒト組織の受容体と同一であり、もう1つは拡大化した形状で、イントロン2の106塩基全体に加えてV2受容体mRNAの配列を含有していることが認められた。乳癌細胞はバソプレシンV2受容体のこれらの形状の療法を産生する。イントロン2が含まれているために、リーディングフレームにストップコロンが導入されており、そのため、異常なバソプレシンV2受容体mRNAが7番目の膜貫通セグメントおよび正常受容体のカルボキシル末端を欠損したC末端切断タンパク質が生じている。本願発明者らはこれと、その他のバソプレシン受容体mRNAは癌細胞によってタンパク質に翻訳されていることを、特異的抗体を用いたウエスタン分析法によって実証した。正常タンパク質の抗体は、固有のカルボキシル末端領域に対して作製される。
【0054】
細胞株NCI-H82、NCI-H146、NCI-H345、およびDMS-57を用いたところ、SCLCに同一の異常なレセプタが認められた。構造の決定は、RT-PCR、クローニング、およびシーケンシングによって行われた。タンパク質産生物は、特定の抗体を用いたウエスタン分析法によって確認された。
【0055】
乳癌はバソプレシン遺伝子を発現し、バソプレシン受容体の発現が疑われる場合には常にバソプレシン遺伝子癌細胞が付随する。前記バソプレシン遺伝子は、DCISによって発現されるが、ADHを含む各種の線維嚢胞性乳症状によっては発現しない。本願発明者らは、異常なバソプレシンV2受容体は乳癌のようにDCISによって発現するだろうと考えているため、この異常な受容体に対する抗体を免疫組織化学的方法などの方法に用いれば、生検をうまく評価し、DCISおよび乳癌とADHとを区別することができると推測する。
【0056】
転移および局在化した乳癌は前述の未知の異常バソプレシンV2受容体を発現すると考えられるため、この受容体に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の好適な標識型または修飾型は、注射またはさまざまな検出手段によって、患者における転移および/または早期再発性疾患を検出および局在化させる必要とされる非常に高感度で特異的な手法を提供するのに有用である。本願明細書で特許請求するこれらの抗体およびその修飾型は、患者のさまざまな腫瘍を効果的に標的とする重要で新しいツールである。これは、再発性で一般にエストロゲン耐性型の乳癌の治療に特に有用である可能性がある。
【0057】
開示された本願発明は、以下の用途に用いられてよい。
1) ADHなどの過形成症状からDCISおよび乳癌を区別するための非常に必要とされる迅速、低価格、高感度、および特異的な方法の提供。この点については、乳癌患者の検査および治療を行うすべての病院および医師に有用であって、このような診断をうけるすべての女性に利益をもたらすはずである。
2) すべての乳癌患者における再発性疾患および転移性疾患を非侵襲的に検出および局在化する、非常に必要とされる高感度で特異的な方法の提供。改良を加えることによって、本方法は、乳癌から回復したすべての患者の、癌の再発の検出をするための定期スクリーニングを実施するために特に有用であろう。
3) エストロゲン感受性の乳癌を含むすべての乳癌の、新規の効果的な治療を目標とする効果的な手段の提供。修飾された抗体は、抗エストロゲンおよび化学療法に用いる治療物質の添加物、または効果的な代替物のいずれかとして用いることができる。有害な放射化学性または化学性毒物を有するか、またはこの免疫細胞と複合体を形成している形などの抗体の修飾型は、すべての腫瘍を治療するのに有効である可能性があるはずである。
【0058】
本願発明にはまた、VPに対する抗体、またはVP関連グリコペプチド(VAG)もしくはコペプチンに対する抗体を用いて、生検物質および保存組織ブロックの固定物質から得られたRNA上のVP mRNAについてRT-PCRを実施することによって、DCISをADHから区別する方法も包含する。
【0059】
すべての乳癌がVP遺伝子を発現している可能性が高い。バソプレシン遺伝子は、検査したすべてのDCISによって発現されるが、一般に侵襲性乳癌の前駆体として認識されている。前記遺伝子は、ADHを含む各種の線維嚢胞性乳症状によっては発現しない。本願発明者は、前記VP遺伝子の発現は、胸部の細胞の発癌転換のプロセスの一部であると考えている。バソプレシン遺伝子の発現によって、約20,000および40,000ダルトンのバソプレシンおよびバソプレシン遺伝子関連タンパク質が産生される。VPおよびVP関連グリコペプチドに対する抗体は、免疫組織化学などの方法のこれらバソプレシン遺伝子産生物と反応し、この陽性反応(染色)を新しい方法に用いることによって、生検をうまく自動的に評価し、DCISおよび乳癌を良性ADHから区別することができる。バソプレシンに対するモノクローナル抗体(MAV)およびバソプレシン関連グリコペプチドに対するモノクローナル抗体(MAG)は、この目的のために開発された。代替的には、新鮮および固定された組織の両方を用いた、発現された遺伝子であるVP mRNAのためののRT-PCRの方法を用いて、DCISを同定することができる。
【0060】
前記バソプレシン遺伝子は大半が視床下部ニューロンによって発現され、ここで得られたプロバソプレシン前駆タンパク質は酵素によって切断されてペプチドホルモン成分になる。このペプチドホルモン成分には、ニューロペプチドバソプレシン(VP)、バソプレシン関連ニューロフィシン(VP-NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)が含まれる。小細胞肺癌(SCLC)腫瘍はまた、前記バソプレシン遺伝子を発現するが、前記腫瘍プロバソプレシンタンパク質は無傷のままで、前記細胞表面膜に局在化することができる。
【0061】
本願発明はMAG-1と命名されたモノクローナル抗体(mAb)であって、ヒトプロバソプレシンのVAGドメインのC末端配列を表す合成ペプチドを用いて作製したモノクローナル抗体を開示する。前記MAG-1 mAbは、ウエスタン分析法によってSCLC細胞および組織溶解物中でNRSAを認識するが、免疫蛍光サイトメトリック法と顕微鏡分析法ではMAG-1は、古典的サブタイプおよび変種サブタイプの両方のSCLC生細胞の表面上でNRSAと特異的に反応することが示唆されている。免疫組織学的分析法を実施し、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを実証した。さらに、NRSAを認識することもできるMAG-1 Fab断片を作製した。これは、前記プロバソプレシンタンパク質のVAG領域に対するモノクローナル抗体に、血漿膜に組み込まれたNRSAを標的とするin vivo診断および治療ツールに開発することができる可能性があることの実証の開示である。
【0062】
本願発明のさらなる発見は、線維性病変と癌病変を区別する能力である。本願発明者らは、検査用サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、患者は侵襲性乳癌に感受性であるということを発見した。前記検査用サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII 2型受容体にも陽性である場合、患者は非浸潤性乳管癌に感受性である。検査用サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII型2受容体にも陰性である場合、前記患者は過形成組織などの線維性病変を有している可能性が高い。したがって、本願発明者らは、医療提供者らが、癌を有することが疑われる患者の検査用サンプル中の非侵襲性線維性組織を癌性病変と決定的に区別することができる強力なツールを発見した。
【0063】
本願発明のさらなる発見は、化学療法剤の混合剤を、プロバソプレシンに免疫反応性の抗体、抗原、結合断片またはペプチドの薬学的組成物の併用療法が必要な患者に投与することができ、当該併用療法が腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効だということである。
【0064】
II 定義
本願明細書に記載の「種」または「動物」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物を意味する。同様に、本願発明の方法で治療される「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味してよい。
【0065】
本願明細書に記載の「免疫応答性の」は、腫瘍標的細胞抗原に特異的であるが、他のタンパク質と交差反応する場合は、ヒトの使用のための投与用に調製される場合の濃度では毒性がない、結合剤、抗体またはその断片を意味する。「特異的な結合」は、前記結合剤が、無関係の抗原への結合よりも大きな親和性を有する標的細胞上の抗原に結合することを意味する。好ましくは、このような親和性は、無関係の抗原への結合剤の親和性よりも、少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、および最も好ましくは少なくとも1000倍である。「免疫応答性の」および「特異的な結合」という用語は、本願明細書では同義的に用いられる。
【0066】
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本願明細書では、たとえば、コード配列によってコードされている可能性がある遺伝子産生物を意味する場合には、同義的に用いられる。本願発明のペプチドは、プロバソプレシンアミノ酸配列の部分を広く意味する。好ましくは、前記ペプチドはプロバソプレシンのVAG領域の部分である。さらに好ましくは、前記ペプチドは、長さが5乃至50アミノ酸残基、5乃至30アミノ酸残基、5乃至20アミノ酸残基、または10乃至15アミノ酸残基である。本願発明のペプチドは、プロバソプレシン、またはその部分に免疫応答性である。
【0067】
本願明細書に記載の「抗体」という用語は、他に指示のない限り、抗体分子およびさまざまな抗体由来分子の両方を広く意味するために用いられる。そのような抗体由来分子は、少なくとも1つの可変領域(重鎖または軽鎖の可変領域のいずれか)、ならびに個別の抗体軽鎖、個別の抗体重鎖、および抗体鎖とその他の分子のキメラ融合体などを含む。本願発明に従った機能的な免疫グロブリン断片は、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fab、およびF(ab')2であってもよい。本願発明の抗体またはその断片は、検出可能なラベルで標識されたときの標的細胞の画像撮影に用いることができる。
【0068】
「抗体」という用語にはまた、ポリクローナル抗体(pAb)、モノクローナル抗体(MAbまたはmAb)、好ましくはIgG1抗体、キメラモノクローナル抗体(C-MAb)、ヒト化抗体、遺伝子操作されたモノクローナル抗体(G-MAb)が包含される。
【0069】
好ましくは、前記抗体は前記モノクローナル抗体MAG-1であって、プロバソプレシンのVAG領域の18C末端アミノ酸残基を認識するモノクローナル抗体である。抗体のヒト化は当業に公知の技術であって、当該技術において、フレームワーク領域の部分をヒト患者に投与される場合に有害反応を生じないように修飾する技術である。当業者は、前記抗体がヒト化されるように突然変異したMAG-1の部分を容易に認識するだろう。
【0070】
本願発明の抗体およびペプチドは、標識されていてもよい。本願明細書に記載の「ラベル(標識)」は、標的タンパク質または受容体に対する抗体の結合を可視化するために用いられる検出可能なラベル(標識)を意味するために用いられる。代替的には、本願発明の抗体およびペプチドは、放射性標識、鉄関連化合物、または結合すると前記細胞を死滅させる毒素で標識することもできる。放射性標識および毒素は当業に公知であって、例えば、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Bi、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが含まれる。鉄関連化合物には、たとえばFe2O3およびFe3O4が含まれる。
【0071】
「腫瘍細胞特異的抗体」および「腫瘍細胞特異的ペプチド」は、本願明細書では、前記標的細胞抗原に特異的に結合する抗体またはペプチドの能力として定義される。本願明細書に記載の抗体またはペプチドの腫瘍細胞抗原への特異性は測定が可能であり、前記腫瘍細胞抗原に対する抗体/ペプチドの親和性は前記腫瘍に関連しないその他の細胞への親和性よりも大きい。標的細胞抗原に特異的に結合する同一の機能を有する抗原結合断片およびペプチド模倣体も、本願発明に意図される。
【0072】
本願発明の「免疫アッセイ」には、標的細胞抗原の存在を決定するために用いることができる任意のアッセイが含まれる。当業者に知られる免疫アッセイの例には、免疫組織化学法、ELISA、およびウエスタンブロット法が、それらに限定されずに含まれる。
【0073】
本願発明の「検査用サンプル」は、侵襲的または非侵襲的な方法で患者から採取することができる。非侵襲的な検査用サンプルには、たとえば尿が含まれる。侵襲的な検査用サンプルには、例えば、血液または血液産生物、リンパ組織またはリンパ液、乳液または組織が含まれる。1つの用語が本願発明の中で用いられる場合、その他の用語は同義的な意味を持つ。
【0074】
本願明細書において、「投与」は前記患者の体内に前記組成物が入るような方法で前記患者に前記組成物を提供する手段として定義される。とのような投与は、皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、および筋肉内をそれらに限定されずに含む任意の経路によってよい。
【0075】
当業の医師または獣医師は、「有効量」(ED50)の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0076】
本願発明の各実施態様は、薬学的に許容な担体または賦形剤と併用した場合の組成物として用いることができる。「担体」および「賦形剤」という用語は、本願明細書では同義的に用いられる。
【0077】
「薬学的に許容な」という文言は、本願明細書では、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症のない、妥当なベネフィット/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触に用いるのに好適な、化合物、物質、組成物および/または投与剤形を意味するために用いられる。
【0078】
「薬学的に許容な担体」は本願明細書では、投与された患者に生理学的に許容であって、前記抗体の治療特性を保持する担体として定義される。薬学的に許容な担体およびその製剤は公知であって、一般に、たとえばRemington's
pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack
Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載されている。ある例示的な薬学的に許容な担体は生理食塩水である。 本願明細書に用いられる「薬学的に許容な担体」という文言は、当該抗体をある臓器または体の部分の投与部位から別の臓器または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または物質を封入している物質などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味において「許容」でなければならない。また、薬学的に許容な担体は前記抗体の特異的な活性を変化させてはならない。薬学的に許容な担体として用いることができる物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)粉末状トラガカント、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター、および座剤用ロウなどの賦形剤、(9)ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝溶液、および(21)薬学的製剤に用いられるその他の無毒性適合性物質、が含まれる。
【0079】
本願明細書に記載の「癌」は、患者の体内の細胞が異常で制御されていない増殖を被る症状を意味するために使用される。癌の例には、乳癌、小細胞肺癌、および非浸潤性乳管癌が、それらに限定されずに含まれる。
【0080】
本願明細書に記載の「線維性」という用語は、非定型導管過形成などの非癌性の組織を意味するために使用される。
【0081】
本願明細書に記載の「形質転換した細胞」は、自然発生的に成長が抑制されない状態転換した、すなわち培養液中で分裂を不定回繰り返して成長する能力を獲得した細胞を意味する。形質転換した細胞は、成長制御の喪失に関して、新生物、未分化、および/または過形成という用語などによって特徴づけられることがある。本願発明の目的のために、「悪性哺乳動物細胞の形質転換表現型」および「形質転換表現型」という用語は、哺乳類細胞の細胞性形質転換に関連した、以下の任意の表現型形質に、限定されることなく包含されることが意図される。その表現型形質とは、不死化、形態学的もしくは成長形質転換、および細胞培養液中の長期成長、半固体状培地中の成長、または免疫機能不全もしくは同系動物における腫瘍原性成長で検出された腫瘍原性である。
【0082】
癌を罹患する患者を「治療する」ことによって、前記患者の症状が本願発明にしたがった治療の後に部分的または完全に治癒するか、または小康状態を維持することを意味する。治療された患者は、症状および/または腫瘍負荷の部分的または完全な治癒を示す可能性がある。 「治療」という用語は、予防、療法、および治療を包含することを意図する。
【0083】
「治療上有効な量」とは、本願明細書では、患者の腫瘍細胞の腫瘍特異的な死滅を誘導することによっていくらかの望ましい治療上の効果を生じ、その結果、任意の医学的な治療に適用できる合理的なベネフィット/リスク比において、治療された細胞においてその経路の生物学的なつながりを阻害し、前記腫瘍細胞を消滅させる、または増殖を阻害する、組成物の有効量と定義する。
【0084】
「サンプル」という用語は、本願明細書では、血液、血液産生物、生検組織、血漿、および患者から抽出されうる任意のその他のタイプの液体または組織と定義される。
【0085】
「アポトーシス」または「プログラムされた細胞死」という用語は、発育中およびその他の正常な生物学的プロセス中に、望ましくないまたは無用の細胞が除去される、生理学的なプロセスを意味する。アポトーシスは、正常な生理学的条件下において生じる細胞死の1様式であって、前記細胞は、それ自体の消滅に関して積極的に関与している(「細胞死」)。この現象が最もよく認められるのは、正常細胞のターンオーバー、組織のホメオスタシス、胚形成、免疫耐性の誘発および維持、神経系の発達、および内分泌依存組織萎縮においてである。アポトーシス中の細胞は、特有な形態学的および生化学的な特性を示す。これらの特性には、クロマチン凝集、核および細胞質凝縮、原形質および核の膜結合小胞(アポトーシス体)であって、リボソーム、形態学的に無傷のミトコンドリアおよび核物質を含む小胞への分割が含まれる。In vivoにおいては、これらのアポトーシス体は、マクロファージ、樹状細胞、または近隣の上皮細胞のいずれかに迅速に認識され貪食される。In vivoにおけるアポトーシス細胞の除去メカニズムはこのように効率的であることから、炎症性応答は誘発されない。In vitroにおいては、前記アポトーシス体および残りの細胞断片は、最終的には膨潤し、最後に溶解する。この、in vitro細胞死の最終期は「第二の壊死」と呼ばれている。アポトーシスは、DNA断片化、アネキシンVの曝露、カスパーゼの活性化、シトクロムcの放出などの当業者に知られる方法によって測定することができる。死滅するように誘導された腫瘍細胞を、本願明細書では「アポトーシス腫瘍細胞」と呼ぶ。
【0086】
本願明細書に記載の「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)および適宜、リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを意味する。この用語はまた、ヌクレオチド類似体から作製されたRNAまたはDNAのいずれかの等価物、誘導体、変異体および類似体、ならびに本願明細書に記載の実施態様に適用されるとおり、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドが含まれることも理解されるべきである。
【0087】
動作可能に結合した、という文言は、前記ヌクレオチド配列の発現が可能になるように、前記ヌクレオチド配列を制御配列に結合させることを意味することを意図する。制御配列は当業に認識されており、対象となるペプチドの発現を方向付けるように選択される。したがって、転写制御配列という用語には、プロモータ、エンハンサ、およびその他の発現制御要素が含まれる。そのような制御配列は、Goeddel;
Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic
Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0088】
「遺伝子作製物」という用語は、コード配列を含み、細胞、好ましくは哺乳動物細胞をトランスフェクトすることができ、前記作製物をトランスフェクトした細胞の抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の発現を生じることができる、ベクター、プラスミド、またはウイルスゲノムなどを意味する。
【0089】
細胞の「成長状態」は、前記細胞の増殖速度、および/または前記細胞の分化状態を意味する。「変化した成長状態」は、たとえば正常細胞と比較して増加または減少した増殖速度を示す細胞など、異常な成長速度によって特徴づけられる成長状態である。
【0090】
本願明細書に記載の「増殖する」および「増殖」は、細胞が細胞分裂することを意味する。
【0091】
「アミノ酸残基」という用語は当業に知られている。一般に、本願明細書に用いられる、アミノ酸および保護基の命名に用いられる略称は、IUPAC-IUB
Commission on Biochemical Nomenclature (Biochemistry (1972) 11:1726-1732参照)の推奨に基づく。ある実施態様では、本願発明の適用に用いられるアミノ酸は、タンパク質に認められる天然に存在するアミノ酸、またはアミノ基およびカルボキシル基を含むそのようなアミノ酸の同化もしくは異化産生物である。特に好適なアミノ酸側鎖には、以下のアミノ酸である、グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンのものから選択された側鎖が含まれる。
【0092】
「アミノ酸残基」という用語にはさらに、本願明細書に記載の任意のアミノ酸の類似体、誘導体、および同属種、ならびにC末端またはN末端保護アミノ酸(たとえばN末端またはC末端保護基で修飾された)誘導体が含まれる。たとえば、本願発明は、側鎖が伸長または短縮されている一方で、カルボキシ基、アミノ基、または環化のためのその他の反応性前駆官能基を提供しているアミノ酸類似体、および適切な官能基を有する変異側鎖を有するアミノ酸類似体の使用を意図する。たとえば、当該化合物には、たとえばカナバニン、ジエンコル酸、ノルロイシン、3ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5ヒドロキシトリプトファン、1メチルヒスチジン、3メチルヒスチジン、ジアミノピメリン酸、オルニチン、またはジアミノブチル酸が含まれてよい。本願明細書において好適な側鎖を有するその他の天然に存在するアミノ酸代謝物または前駆体は、当業に認識されるであろうし、本願発明に含まれる。
【0093】
さらに、アミノ酸の構造が立体異性型を認める場合、そのようなアミノ酸の(D)および(L)立体異性体が含まれる。本願明細書のアミノ酸およびアミノ酸残基の立体配置は、その立体構造が、アミノ酸または残基が立体配置(d)、(l)または(dl)を有することができると指定していない場合、適切な記号(d)、(l)または(dl)によって指定される。本願発明の化合物の一部の構造には非対称炭素原子が含まれるという点には留意すべきだろう。そのような非対称性から生じる異性体が本願発明の範囲内に含まれることは、適宜に理解される。そのような異性体は、実質的には、従来の分離技術、および立体的に制御された合成によって純粋な形で得ることができる。この用途の目的のために、他に明らかに記載のない限り、命名済みのアミノ酸は(d) または(l)の両方を含むよう解釈されるべきである。D-およびL-αアミノ酸は、以下のフィッシャー投影法およびくさびと点線によって描かれた図によって表される。大半の場合、D-およびL-アミノ酸は、それぞれR-およびS-絶対立体配置を有する。
【0094】
ペプチド模倣体はペプチドおよびタンパク質に基づいた、または誘導された化合物である。本願発明のペプチド模倣体は、典型的に、非天然アミノ酸、立体的な制約、および等比体積置換などを用いた、既知のペプチド配列の構造修飾によって得ることができる。当該ペプチド模倣体は、ペプチドおよび非ペプチド合成構造体の間の構造的空間の連続で構成されており、したがって、ペプチド模倣体は、活性基を描き、ペプチドを親ペプチドの活性を有する非ペプチド化合物に変形させることを支援するのに有用かもしれない。
【0095】
さらに、本願開示から明らかなように、当該抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体のミメトープも提供することができる。そのようなペプチド模倣体は、非加水分解性(たとえばプロテアーゼ、または対応するペプチドを分解するその他の生理学的条件に対する高い安定性)の、高い特異性および/または有効性、および前記ペプチド模倣体の細胞内局在性のための高い細胞透過性などの特質を有してよい。具体化の目的のために、本願発明のペプチド類似体は、たとえば、ベンゾジアゼピン(たとえば Freidinger et
al. in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:
Leiden, Netherlands, 1988参照)、置換ガンマラクタム環(Garvey et al. in
Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher:
Leiden, Netherlands, 1988, p123)、C-7模倣体(Huffman
et al. in Peptides: Chemistry and Biologyy, G.R. Marshall ed., ESCOM
Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p.105)、ケトメチレン擬ペプチド(Ewenson et al. (1986) J Med Chem 29:
295; and Ewenson et al. in Peptides: Structure and Function (Proceedings
of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、βターンジペプチド核(Nagai et al.
(1985) Tetrahedron Lett 26: 647; and Sato et al. (1986) J Chem Soc
Perkin Trans 1: 1231)、βアミノアルコール(Gordon et al.(1985) Biochem Biophys Res Commun126:419; and Dann
et al.(1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71), diaminoketones
(Natarajan et al.(1984) Biochem Biophys Res Commun 124:141)、およびメチレンアミノ修飾(Roark et al. in Peptides:Chemistry
and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988,
p134)を用いて生成することができる。また、一般的にはPeptides:
Chemistry and Biology, G.R.Marshall ed., ESCOM Publisher:Leiden,
Netherlands, 1988)の中の例示的実施態様の分析および合成方法を参照。
【0096】
例示的実施態様
A. 化合物および組成物
1. プロバソプレシンに免疫応答性の抗体および抗原結合断片
抗体は、細胞内のヒトプロバソプレシン(たとえばバソプレシン(VP)、ニューロフィシン(NP)、およびバソプレシン関連グリコペプチド(VAG)など)、またはそれ自体がニューロフィシン関連/グリコペプチド関連表面抗原(NRSA/GRSA)として提示されるさまざまな領域に対して免疫応答性である。
【0097】
本願発明の抗体はプロバソプレシンに免疫応答性である。好ましい実施態様では、前記抗体はヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端部分に免疫応答性である。好ましい実施態様では、前記抗体は、SEQ ID NO:44によって特徴づけられる、ヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端18アミノ酸部分に免疫応答性である。より好ましい実施態様では、前記抗体MAG-1は、ATCC番号 ____を有するハイブリドーマが産生する。
【0098】
本願発明のモノクローナル抗体には、たとえば、バソプレシンとニューロフィシン部分を架橋するヒトプロバソプレシンの領域(ここではMAPとよぶ)およびこれらMAPSの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体、またはバソプレシン(ここではMAVとよぶ)およびこれらMAVの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体、またはバソプレシン関連グリコペプチド(ここではMAGとよぶ)およびMAGの修飾型、またはGRSAタンパク質の腫瘍特異的領域(ここではMATとよぶ)およびこれらMATSの修飾型に対して免疫応答性のモノクローナル抗体が含まれる。
【0099】
MAPSは、ウンデカンペプチドPRGGKRAMSDL (SEQ
ID NO :1)抗原に対して作製されるが、主に、トリペプチド架橋構造GKR、および周辺のアミノ酸残基を認識する。MAGはヒトバソプレシン関連グリコペプチド(ここではVAG)のC末端半分である18残基ポリペプチドに対して作製される。MAVs、MAPS、MAG、およびMATSは、乳癌すなわちGRSA、およびSCLCすなわちNRSA上にある万能プロバソプレシン関連細胞方面抗原を認識するようにデザインされる。
【0100】
本願発明はMAG-1と命名されたモノクローナル抗体(mAb)であって、ヒトプロバソプレシンのVAGドメインのC末端配列を表す合成ペプチドを用いて作製したモノクローナル抗体を開示する。前記MAG-1 mAbは、ウエスタン分析法によってSCLC細胞および組織溶解物中でNRSAを認識するが、免疫蛍光サイトメトリック法と顕微鏡分析法ではMAG-1は、古典的サブタイプおよび変種サブタイプの両方のSCLC生細胞の表面上でNRSAと特異的に反応することが示唆されている。免疫組織学的分析法を実施し、MAG-1はヒトSCLC腫瘍と反応するが、正常な肺組織とは反応しないことを実証した。さらに、NRSAを認識することもできるMAG-1 Fab断片を作製した。これは、前記プロバソプレシンタンパク質のVAG領域に対するモノクローナル抗体に、血漿膜に組み込まれたNRSAを標的とするin vivo診断および治療ツールに開発することができる可能性があることの実証の開示である。
【0101】
本願発明の抗体はまた、一本鎖可変領域断片(scFv)、Fab断片、およびF(ab’)2断片も包含する。より好ましくは、一本鎖可変領域断片(scFv)は、SEQ ID
NO:3の核酸配列によってコードされているSEQ ID
NO:2のアミノ酸配列を含む。
【0102】
ある好ましい実施態様では、前記抗体断片は、SEQ ID NO:26の可変重鎖アミノ酸配列を有する。 ある好ましい実施態様では、前記抗体断片は、SEQ ID NO:27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0103】
モノクローナル抗体MAG-1を産生するハイブリドーマ細胞株は、2003年7月15日にアメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション(10801 University
Blvd., Manassas, VA 20110-2209)に預託し、ATCC受付番号第_____を与えられた。MAG-1はブタペスト条約の条件下で維持されるだろう。預託された物質への公的アクセスにかけられるすべての制限は、本出願の特許が付与された上で決定的に除去されるだろう。
【0104】
本願発明の抗体は組換えによって作製することができる。前記抗体の柔軟性を上げるために、リンカーに重鎖および軽鎖の核酸配列を加えてもよい。scFvの場合、前記リンカーはVhおよびVl鎖を連結するために加えられ、前記のさまざまな組成物は、可溶性、タンパク質分解安定性、柔軟性、および畳込みに作用する。 ある好ましい実施態様では、本願発明のリンカーはSEQ ID NO:22のアミノ酸配列GSTSGを有する。 ある好ましい実施態様では、本願発明のリンカーはSEQ ID NO:28のアミノ酸配列GGSSRSSを有する。リンカーは当業に公知で、生物学的活性を許容するために、得られた組換えタンパク質に必要な柔軟性に応じて各種アミノ酸残基を含むことができる。
【0105】
2. アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体
本願発明の抗体はアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性である。前記アンギオテンシンII 2型受容体に対するポリクローナル抗体は、サンタクルスバイオテクノロジー社(ポリクローナルAT2抗体、カリフォルニア州サンタクルス)から市販されている。アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性のモノクローナル抗体、ヒト化抗体、および抗原結合断片も、本願発明により意図される。
【0106】
3. ペプチドおよびペプチド模倣体
本願発明のある実施態様は、腫瘍細胞発現ニューロフィシン、VP、プロVP、またはVAGを同定するスクリーニングアッセイに用いることもできるペプチドおよびその組成物である。本願発明のペプチドは5乃至50アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは5乃至30アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは5乃至20アミノ酸残基を含んでよい。より好ましくは、本願発明のペプチドは10乃至15アミノ酸残基を含んでよい。
【0107】
好ましくは、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO: 4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO: 21)という配列を有する。
【0108】
本願発明の別の局面は、たとえば1つ以上の骨格結合が置換されているか、または天然に存在するアミノ酸の1つ以上の側鎖が立体的におよび/または電子的に類似の官能基で置換されている、ペプチドまたはペプチド模倣体を提供する。
【0109】
ある実施態様では、前記ペプチドまたはペプチド模倣体は薬学的に許容な賦形剤の中に調合されている。
【0110】
4. 組成物
本願発明の各実施態様は、薬学的に許容な担体または賦形剤と併用した場合の組成物として用いることができる。 薬学的に許容な担体は、投与された患者に生理学的に許容であって、前記抗体またはペプチドの投与された際の治療特性を保持するものである。薬学的に許容な担体およびその製剤は公知であって、一般に、たとえばRemington's
pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack
Publishing Co., Easton, PA, 1990)に記載されている。ある例示的な薬学的に許容な担体は生理食塩水である。 本願明細書に用いられる「薬学的に許容な担体」という文言は、当該抗体またはペプチドをある臓器または体の部分の投与部位から別の臓器または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または物質を封入している物質などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味において「許容」でなければならない。また、薬学的に許容な担体は前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドの特異的な活性を変化させてはならない。
【0111】
B 標識(ラベル)
【0112】
本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、癌細胞に送達された場合に有毒な毒素、放射性核種、鉄関連化合物、または化学療法剤を併用してもよい。
【0113】
本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、癌細胞に送達された場合に有毒な毒素、放射性核種、鉄関連化合物、または標的抗原の免疫検出用の蛍光物質検出用標識として併用してもよい。
【0114】
プロバソプレシンのVAG領域と免疫応答性の本願発明の抗体およびペプチドは、放射性標識、毒素、または蛍光標識などの検出可能な標識で標識することができる。
放射性標識の例には、例えば、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biが、これらに限定されずに含まれる。
【0115】
毒素の例には、たとえばリシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが、それらに限定されずに含まれる。
【0116】
蛍光標識の例には、たとえば、FITC、テキサス赤色フィコエリスリン(PE)、およびシトクロームcが、それらに限定されずに含まれる。
【0117】
鉄関連化合物の例には、たとえば、磁気酸化鉄粒子、第2鉄または第1鉄粒子、Fe2O3およびFe3O4が、それらに限定されずに含まれる。抗体およびポリペプチドを標識する鉄関連化合物および方法は、たとえば、すべてが引用をもってその内容全体を本出願に援用するものとする米国特許第4,101,435号、および第4,452,773号、ならびに公告済みの米国特許出願第20020064502号および第20020136693号に見つけることができる。
【0118】
さらに、ビオチンおよびその後のストレプタビジン-アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などその他の標識も、本願発明に意図される。
【0119】
抗体、抗原結合断片、およびペプチドなどのタンパク質の標識の方法論は、当業に公知である。本願発明の抗体、抗原結合断片、およびペプチドが放射標識または毒素で標識される場合、前記抗体、抗原結合断片、およびペプチドは、高濃度のプロバソプレシンを呈する患者の治療に有用な薬学的組成物であって、当該薬学的組成物が前記患者に有効な量投与される、薬学的組成物として調製することができる。
【0120】
C. 化学療法剤
本願発明に意図される化学療法剤には、市販で入手できる化学療法薬が含まれる。
【0121】
単なる具体例だが、前記化学療法剤は、クロマチン機能の阻害物質、トポイソメラーゼ阻害物質、微小管阻害薬、DNA損傷物質、抗代謝物質(葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害物質、DNA相互作用物質(たとえば挿入物質など)、および/またはDNA修復阻害物質であってよい。
【0122】
化学療法剤は、その作用機序によって、たとえば以下のグループに分類することもできる。それは、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスフリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストならびに関連する阻害物質(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝/抗癌物質、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然産生物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキシル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンなどの微小管かく乱物質、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷物質(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラシクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプタチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド、およびエトポシド(VP16))を含む抗増殖/抗細胞分裂物質、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラシクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびミトマイシンなどの抗生物質、酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自己のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪うL-アスパラギナーゼ)、抗血小板物質、窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホン酸-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖/抗細胞分裂アルキル化物質、葉酸類似体(メトトレキセート)などの抗増殖/抗細胞分裂抗代謝物質、プラチナ配座錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害物質(レトロゾール、アナストロゾール)、抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびその他のトロンビンの阻害物質)、線維素溶解物質(組織プラスミノーゲン活性化物質、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、抗遊走性物質、抗分泌物質(ブレベルジン)、免疫抑制物質(シクロスポリン、タクロリマス(FK-506)、シロリマス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、抗血管形成化合物(TNP-470、ゲニステイン)および成長因子阻害物質(血管内皮成長因子(VEGF)阻害物質、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害物質)、アンギオテンシン受容体遮断物質、一酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ)、細胞サイクル阻害物質および分化誘導物質(トレチノイン)、mTOR阻害物質、トポイソメラーゼ阻害物質(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニソロン、プレドニゾン、およびプレニソロン)、成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害物質、ミトコンドリア機能不全誘導物質、コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、百日咳菌アデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素、およびカスパーゼ活性化物質、ならびにクロマチンかく乱物質である。前記化学療法剤の好ましい投与量は、現在処方されている投与量と一致する。
【0123】
D. 変異種/突然変異種
本願発明のある実施態様は、MAG-1、またはその抗原結合断片からなる単離されたポリペプチドであって、当該ポリペプチドが適切な3次元配向にたたみ込まれた場合に結合部位として機能する、ポリペプチドを説明する。ある実施態様では、SEQ ID
NO: 2、26、もしくは27、またはSEQ ID
NO: 2、26、もしくは27で表されるアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%相同である配列からなる、単離されたポリペプチドである。
【0124】
本願発明のある実施態様は、MAG-1のアミノ酸配列の変異種も含む。本願発明の変異種は、SEQ ID NO: 2、26、または27に開示されるアミノ酸配列とは1つ以上のアミノ酸が置換されているために異なるアミノ酸配列を有する。アミノ酸の欠損および/または付加を含む実施態様も意図される。前記変異種は、保存的変化(アミノ酸類似性)であって、当該保存的変化において置換されたアミノ酸が、たとえばロイシンのイソロイシンによる置換など、類似の構造または化学的特性を有する、保存的変化を有する。生物学的なまたは提案した薬理学的な活性を消滅させずに、どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入、または欠失させればよいかを決定するための指針は、この開示を見ることによって合理的に推測することができ、さらに、たとえばDNAStar(登録商標)ソフトウエアなど、当業に公知のコンピュータプログラムを用いて見いだすことができるだろう。
【0125】
アミノ酸置換は、たとえば、前記残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいて、元の分子の生物学的および/または薬理学的活性が保持される範囲内で行われる。
【0126】
陰性に荷電したアミノ酸には、アスパルギン酸およびグルタミン酸が含まれ、陽性に荷電したアミノ酸には、リシンおよびアルギニンが含まれ、類似の疎水性値を有する荷電していない極性基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシンおよびバリンが含まれ、脂肪族基を有するアミノ酸には、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリンが含まれ、芳香族側鎖を有するアミノ酸にはトリプトファン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。
【0127】
置換の例を以下の表1に記載する。
【0128】
【表1】
【0129】
「相同性」は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度である。前記相同性を特徴づけるために、ギャップを導入した後、必要であれば最高の相同性パーセントになるように、最高の相同性の割合を得られる(マッチする)ように対象の配列を並べる。相同性に影響を与えるようなN-またはC-末端伸長は意図されるべきではない。「同一性」それ自体は当業に公知の意味を有し、公表されている技術を用いて計算することができる。2つの配列の相同性を決定するためのコンピュータプログラムの方法には、たとえば、DNAStar(登録商標)ソフトウェア(DNAStar社、ウイスコンシン州マジソン)、GCG(登録商標)プログラムパッケージ(Devereux, J., et
al.Nucleic Acids Research (1984) 12(1):387)、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S.F.et al., J.Molec Biol
(1990) 215:403)が含まれる。本願明細書に定義された相同性(同一性)は、従来から用いられている有名なコンピュータプログラムBESTFIT(登録商標) (Wisconsin
Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group,
University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI, 53711)を用いて決定される。ある配列が、たとえば参照配列に約90%相同かどうかを本願発明にしたがって決定するために、BESTFIT(登録商標)またはその他の配列アラインメントプログラム(たとえばMegAlignソフトウエア(DNAStar(登録商標))のClustalアルゴリズムなど)を用いる場合、同一性の割合を参照ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の全長について計算し、参照配列のヌクレオチドの総数の最高約90%の相同性におけるギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
【0130】
したがって、たとえば、同一性の割合がSEQ ID NO:2、26、または27などの参照配列の全長について計算できるように設定したパラメータを用いたBESTFIT(登録商標)プログラムを用いて、90%の相同性を決定し、その場合、参照配列のアミノ酸の最高10%が別のアミノ酸で置換されている可能性がある。同一性の割合は、たとえば本願明細書に添付の特許請求の範囲内であって、SEQ ID NO: 2、26、または27に約70%乃至100%の相同性の範囲内にある、好ましい種、およびその結合部位を同定するために、同様に決定される。上述のように、相同性に影響を与えるようなN-またはC-末端伸長は意図されるべきではない。したがって、2つの配列を比較する場合、前記の参照配列は一般に2つの配列のうちの短い方である。これは、たとえばもし長さが50ヌクレオチドで、100ヌクレオチドポリヌクレオチドの範囲内の50ヌクレオチド領域に正確に同一である配列を比較する場合、50%しか相同性がないのではなく、100%の相同性があることを意味する。
【0131】
SEQ ID NO: 2、26、または27の天然ポリペプチドおよび各種ポリペプチドが90%の相同性しか有していなくても、実際は、保存的変化である異なるコドンの数によって、より高度な類似性を有している可能性が高い。タンパク質の保存的なアミノ酸置換は、前記タンパク質の立体構造または機能のいずれも変化させることなく、実施できる場合が多い。2つの配列の類似性には、直接的な一致とともに、たとえば表1に記載のような類似の変化など、類似する構造または化学的特性を有する保存されたアミノ酸置換が含まれる。
【0132】
2つのポリペプチドの類似性(保存的置換)の割合は、類似性を決定するためのデフォルト設定を用い、BESTFITプログラムを含む当業に公知のプログラムを使用して、2つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって、スコアすることも可能である。
【0133】
本願発明のさらなる実施態様は、MAG-1の重鎖または軽鎖であって、当該重鎖または軽鎖においてアミノ酸配列がSEQ ID NOS:2、26、または27で表される、重鎖または軽鎖である。本願発明のさらなる実施態様は、MAG-1の重鎖もしくは軽鎖、またはその断片であって、当該重鎖もしくは軽鎖またはその断片において、アミノ酸配列がSEQ ID
NO: 2、 26、または27で表されるアミノ酸配列に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である、MAG-1の重鎖もしくは軽鎖、またはその断片である。
【0134】
E. リンカー
場合によっては、本願発明の標識と抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の部分との間に、構造化されていないポリペプチドリンカー領域を導入する必要がある場合もある。前記リンカーは、任意の2断片の間に、高い柔軟性を促進する、および/または立体的な障害を軽減することができる。前記リンカーはまた、各断片の適切な畳込みを容易にする。このリンカーは、タンパク質の2領域の間のランダムコイルに存在することが明らかになっている配列など、天然に由来するものであってよい。例示的なリンカー配列は、RNAポリメラーゼaサブユニットのC末端およびN末端領域間に認められるリンカーである。その他の天然に存在するリンカーの例には、lcIおよびLexAタンパク質に認められるリンカーが含まれる。
【0135】
前記リンカーの中で、前記アミノ酸配列は、実験的に決定されたか、またはモデリングによって明らかになったとおりのリンカーの好ましい特性に基づいて変化していてもよい。たとえば、望ましい長さに加えて、モデリング研究によって、特定のアミノ酸の側鎖が、タンパク質のたとえばDNA結合または転写活性などの生物学的活性を妨げることが明らかになるかもしれない。リンカーの選択の際に考慮することには、前記リンカーの柔軟性、前記リンカーの電荷、および天然のサブユニットのリンカーにおけるいくつかのアミノ酸の存在が含まれる。前記リンカーは、リンカーの残基がDNAと接触して、結合親和性または特異性に影響するか、またはその他のタンパク質と相互作用するようにデザインされてもよい。たとえば、リンカーは、キメラタンパク質の活性が切断によって調節できるように、プロテアーゼによって認識できるようなアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合、特にサブユニット間が長い距離になる必要がある場合、または前記ドメインが特定の立体配置に維持されなければならない場合、前記リンカーは任意にもう1つのたたみ込まれたドメインを含んでもよい。
【0136】
ある実施態様では、リンカーのデザインが、比較的短い距離、好ましくは約10オングストローム(Å)未満の距離を架橋しているリンカーを必要とする領域の配列が関与すことが好ましい。しかし、ある実施態様では、たとえば選択された領域および立体配置によって、前記リンカーは最高約50Åの距離を架橋してよい。
【0137】
F. 毒素および撮像試薬
ある実施態様では、本願発明の対象となる抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、その物質の腫瘍細胞までの送達を局在化するために、細胞毒素およびその他の細胞増殖阻害化合物に共有結合または非共有結合してよい。例えば、前記物質はアルカリ化物質、酵素阻害物質、増殖阻害物質、融解物質、DNAまたはRNA合成阻害物質、膜透過性修飾物質、DNA干渉物質、代謝物質、ジクロロエチルスルフィド誘導体、タンパク質産生物阻害物質、リボソーム阻害物質、アポトーシス誘導物質、および神経毒素からなるグループから選択されてよい。
【0138】
本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に結合した場合、腫瘍原性細胞に特異的に送達される活性化基として有用な化学療法剤は、典型的に化学合成によって産生された小さい化学物質である。化学療法剤には、細胞毒および細胞毒性薬が含まれる。化学治療剤は、形質転換期から分化期への逆転など、細胞に与えるその他の作用を有するもの、または細胞複製を阻害するものが含まれる。本願発明において有用な既知の細胞毒性物質の例は、たとえば、Goodman et al.,
“The Pharmacological Basis of Therapeutics,” Sixth Edition, A. G. Gilman et al,
eds./Macmillan Publishing Co. New York, 1980に列挙されている。これらには、パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテール)、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードおよびクロラムブシルなどの窒素マスタード、チオテパなどのエチレンイミン誘導体、ブスルファンなどのスルホン酸アルキル、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンなどのニトロソウレア、ダカルバジンなどのトリアゼン、メトトレキセートなどの葉酸類似体、フルオロウラシル、シタラビン、およびアザリビンなどのピリミジン類似体、メルカプトプリンおよびチオグアニンなどのプリン類似体、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびミトマイシンなどの抗生物質、L-アスパラギナーゼなどの酵素、シスプラチンなどのプラチナ配位錯体、ヒドロキシウレアなどの置換ウレア、プロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体、ミトタンなどの副腎皮質性抑制物質、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(タモキシフェン)およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)などのホルモンおよびアンタゴニストが含まれる。
細胞内タンパク質合成を妨害する薬物も用いることが可能で、そのような薬物は当業者に知られており、プロマイシン、シクロヘキシミド、およびリボヌクレアーゼが含まれる。
【0139】
現在、癌治療に用いられている大半の前記化学療法剤は、本願発明の物質のアミンまたはカルボキシル基に、直接化学的に架橋することが実現可能な官能基を有する。たとえば、遊離アミノ基は、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シトシナラビノシド、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビン、およびクラドリビン上で得られ、遊離カルボン酸基はメトトレキセート、メルファラン、およびクロラムブシル上で得られる。これらの官能基、すなわち遊離アミノおよびカルボン酸は、これらの薬物を抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体の遊離アミノ基に直接架橋することができる、各種のホモ二官能性およびヘテロ二官能性化学架橋物質の標的である。
【0140】
ペプチドおよびポリペプチド毒素は活性化部分としても有用であり、本願発明は、特に、本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体が毒素に結合している場合の実施態様を意図する。ある好ましい実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体、ならびに毒素は両方ともポリペプチドで、融合タンパク質の形状で提供される。毒素は一般に、細菌、植物などを含む各種生物の複合的な毒性産生物である。 毒素の例には、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(BPR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンが、それらに限定されずに含まれる。
【0141】
本願発明はさらに、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体がポリマーまたは官能化されたポリマー(たとえば別の分子に結合したポリマー)に結合している実施態様を意図する。好ましい例には、たとえばパクリタキセルまたはドセタキセルを含む化学療法剤または抗血管新生剤などの薬物に結合したポリグルタミン酸またはポリアスパラギン酸などの水溶性ポリマーが含まれる。
【0142】
ある好ましい実施態様、特に細胞毒性部分が前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体部分に架橋結合されている場合の実施態様では、その結合は、たとえば架橋部分のアミドまたはエステル基の使用によって提供されるとおり、加水分解性である。
【0143】
ある実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、腫瘍の画像化に有用な物質に結合していてよい。そのような物質には、金属、金属キレート剤、ランタニド元素、ランタニドキレート剤、放射性金属、放射性金属キレート剤、陽電子放出核、超微粒気泡(超音波用)、リポソーム、リポソームまたはナノスフェアに封入された分子、単結晶酸化鉄ナノ化合物、磁気共鳴撮像法造影剤、光吸収、反射および/または散乱剤、コロイド粒子、近赤外フルオロフォアなどのフルオロフォアが含まれる。多くの実施態様では、そのような第二の官能性は比較的大きく、たとえば大きさが少なくとも25amuであって、多くの場合、大きさが少なくとも50、100または250amuであってよい。
【0144】
ある好ましい実施態様では、前記の第2の官能性は、たとえば放射性金属などの金属または常磁性イオンをキレートするキレート部分である。好ましい実施態様では、それは放射線療法または画像撮影法に有用な放射性核種用のキレート剤である。
【0145】
本願発明に含まれ有用な放射性核種には、治療用用途に好ましいベータまたはアルファ放射体を伴った、ガンマ放射体、陽電子放射体、オージェ電子放射体、X線放射体、および蛍光放出体が含まれる。放射線療法の毒素として有用な、放射性標識の例には、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biが含まれる。好ましい治療用放射性核種には、188Re, 186Re,
203Pb, 212Pb, 212Bi, 109Pd, 64Cu,
67Cu, 90Y, 125I, 131I, 77Br,
211At, 97Ru, 105Rh, 198Auおよび199Ag, 166Hoまたは177Luが含まれる。キレート剤が金属に配意する条件は、たとえばGansow et al., 米国特許第 4,831,175,
4,454,106号および第4,472,509号に記述されている。本願発明の範囲内では、「放射性核種」および「放射標識」は交換可能である。
【0146】
99mTcは、診断用途には特に魅力的な放射性同位体である。なぜなら、すべての核医療部門で容易に入手でき、安価で、患者への放射線量が最低限であり、理想的な核撮像特性を有するためである。その半減期は6時間であり、これは、テクネチウム標識された抗体を迅速に狙うことが望ましいことを意味している。したがって、ある好ましい実施態様では、前記の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体には、テクネチウムのためのキレート剤が含まれる。
【0147】
さらにその他の実施態様では、前記の第2の官能性は、たとえば細胞の放射線への感受性を増加させる部分などの放射線増感剤であってよい。放射線増感剤の例には、ニトロイミダゾール、メトロニダゾール、およびミソニダゾールが含まれる(引用により本願明細書に援用されるDeVita, V.T.Jr.in
Harrison’s Principles of Internal Medicine, p.68, McGraw-Hill Book Co.,
N.Y.1983)。活性部分として放射線増感剤を含む、修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体を、標的細胞に投与および局在化する。放射線を個体に曝露すると、前記放射線増感剤は「励起」されて細胞死を引き起こす。
【0148】
キレートとして働くことができ、本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に誘導体化することができる広範囲の分子部分が存在する。たとえば、前記キレート剤は1,4,7,10テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、および1-p-イソチオシアナト-ベンジル-ジエチレントリアミンペプタン酢酸(ITC-MX)の誘導体であってよい。これらのキレート剤は、一般に、前記キレート剤が対象の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体への結合に用いることができる、側鎖上にある化学基を有する。そのような化学基には、たとえば、DOTA、DTPAまたはEDTAをアミン基などに結合させることができる、ベンジルイソチオシアナートなどが含まれる。
【0149】
ある実施態様では、前記キレート部分は「NxSy」キレート部分である。本願明細書に定義されるとおり、「NxSyキレート」という用語には、金属または放射性金属を配位結合させることができ、好ましくはN2S2
or N3S核を有する二官能性キレート剤が含まれる。例示的なNxSyキレート剤は、たとえば、Fritzberg et
al.(1988) PNAS 85:4024-29; and Weber et al.(1990) Bioconjugate Chem.1:431-37、および本願明細書に記載の参考文献に記述されている。
【0150】
Jacobsen et al. のPCT出願第WO 98/12156号は、金属原子に結合する化合物を同定するための方法および組成物、すなわち合成ライブラリを提供する。前記公告済み出願に記載のアプローチは、本願発明の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体を誘導するための抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に付加することができる結合部分を同定するために用いることができる。
【0151】
結合したタンパク質を放射性治療用途および放射性診断用途に使用する時に遭遇することが多い問題は、放射標識部分断片の腎臓への、危険性もある蓄積である。前記複合体を酸または塩基に不安定なリンカーを用いて形成する場合、放射性キレートを前記タンパク質から遊離に切断することができる。大半の前記の修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体がそうであると考えているとおり、前記キレートが比較的低分子量であれば、腎臓には保持されず、尿中に排泄されて腎臓の放射線への曝露は軽減される。しかし、ある特定の場合には、標識されたタンパク質に用いられているのと同じ理由から、前記リガンド中の酸または塩基に不安定なリンカーを使用することは有益であるかもしれない。
【0152】
したがって、前記の標識/修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、当業に知られる標準の方法によって合成され、たとえば前記リガンドのカルボニル基などとともに酸に不安定な結合を形成することができる反応性官能基を提供することができる。好適な酸に不安定な結合には、ヒドラゾンおよびチオセミカルバゾン官能基が含まれる。これらは、酸化された糖をヒドラジド、チオセミカルバジド、およびチオカルバジド官能基をそれぞれ有するキレートと反応させることによって形成する。
【0153】
代替的には、腎臓からの放射性標識の高いクリアランスのために用いられている塩基切断リンカーを用いることができる。たとえば、Weber et al.1990 Bioconjug.
Chem. 1:431を参照。ヒドラジド結合を介した抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体への二官能性キレートの結合は、リンカースペーサアームの塩基感受性エステル部分を含んでよい。そのようなエステル含有リンカー単位は、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)(EGS、ピアスケミカル社、イリノイ州ロックフォードから入手)に例示される。エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)は、それぞれが2つのアルカリエステルによって単一のエチレングリコール部分に連結されている、2つの1,4ジブチル酸単位の2つのNヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル誘導体末端を有する。片方のNHSエステルは、公的なアミン含有BFC(たとえば2アミノベンジルDTPA)で置換してもよく、その一方で、もう片方のNHSエステルは、限定された量のヒドラジンと反応させる。その結果得られたヒドラジドを用いて、前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体に結合し、2つのアルカリエステル官能基を含有するリガンドBFC結合を形成する。そのような複合体は、生理学的pHが安定だが、塩基性pHで容易に切断できる。
【0154】
キレート化によって標識された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、放射線誘導によって前記キレート剤が切断され、前記配位錯体の解離によって放射性同位体を喪失する。ある場合には、前記錯体から解離された金属を再び錯体化することができ、それによって、非特異的局在化同位体をより迅速に排出し、その結果非標的組織への毒性を小さくすることができる。たとえば、EDTAまたはDTPAなどのキレート剤化合物を患者に注入することで、放出された放射性金属を結合するキレート剤の供給源を提供し、尿中の遊離放射性同位体の排出を容易にすることができる。
【0155】
さらに他の実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、ペプチド、およびペプチド模倣体は、カルボランなどのホウ素添加物に結合させる。たとえば、カルボランは、当業に公知の通り、つり下がっている側鎖上のカルボキシル官能基で調製することができる。そのようなカルボランを、たとえば前記抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体上に提供されていてもよいアミン官能性に結合させるには、前記カルボランのカルボキシル基を活性化させ、アミン基を濃縮して複合体を生成することによって実現することができる。このような修飾された抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、中性子捕獲療法に用いることができる。
【0156】
本願発明はまた、対象のペプチドを、たとえば光動力学療法に有用であって、適切な非イオン化放射線と併用する色素によって修飾することも意図する。本願発明の方法に光およびポルフィリンを使用することも意図され、癌療法におけるそれらの使用は、引用によりその全体を本願明細書に引用するvan den Bergh,
Chemistry in Britain, 22:430-437 (1986)で概説されている。
【0157】
本願発明のある実施態様には、蛍光標識で標識された抗体、その抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体が含まれる。一般的な蛍光標識には、たとえばFITC、PE、テキサスレッド、シトクロームcなどが含まれる。ポリペプチドおよびタンパク質の標識の技術は当業に公知である。
【0158】
本願発明のある実施態様には、MRI撮像および/または治療に用いることができる鉄などの金属化合物で標識された抗体、その抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体が含まれる。鉄含有化合物には、酸化第二鉄などの第一鉄および第二鉄含有化合物の両方が含まれる。特異的な例には、Fe2O3
and Fe3O4が含まれる。鉄含有化合物および鉄に結合した抗体およびその断片の作製方法は、すべてが引用をもってその内容全体を本出願に援用するものとする米国特許第4,101,435号、および第4,452,773号、ならびに公告済みの米国特許出願第20020064502号および第20020136693号に記述されている。
【0159】
G. 診断アッセイ
1. 乳房および肺サンプルの表現型分類の方法
本願発明のある実施態様は、(i)患者から検査用サンプルを採取するステップと、(ii)前記生検用サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、(iii)プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、(iv)そのようなステップを経たサンプルの細胞が対象組織と比較してプロバソプレシンを過剰発現しているかどうかを決定するステップを含む、乳癌、DCIS、またはSCLCを有することが疑われている患者から採取した乳房組織サンプルの表現型を分類する方法を含む。
【0160】
本願発明のある実施態様では、プロバソプレシンが生検組織細胞中に過剰発現している場合、前記患者は侵襲性の乳癌、DCIS、または小細胞肺癌を有している可能性が高い。
【0161】
さらなる実施態様では、前記方法は、さらに、前記のステップを経たサンプルをアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と接触させるステップを含んでもよい。
【0162】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、侵襲性乳癌に感受性である患者が同定されている。
【0163】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、非浸潤性乳管癌に感受性である患者が同定されている。
【0164】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、非定型導管過形成に感受性である患者が同定されている。
【0165】
2. 線維嚢胞性病変と癌性病変を区別するための患者から採取した乳房組織サンプルの表現型分類の方法
本願発明のある実施態様は、乳房生検サンプルの線維嚢胞性組織を癌性病変から区別することができる診断アッセイを含む。 前記方法は、患者から1つ以上の検査用生検サンプルを採取するステップと、前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、プロバソプレシンに結合させることができる条件下で前記のアッセイにかけたサンプルをプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドまたは抗体と接触させるステップと、前記のアッセイにかけたサンプルの細胞をアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体と接触させるステップと、前記細胞がプロバソプレシンまたはアンギオテンシンII 2型受容体のいずれかを発現しているかどうかを調べるステップを含む。
【0166】
本願発明のある実施態様では、前記アッセイにかけたサンプルの細胞がプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体の一方または両方を発現するかどうかの判断を前記抗体および/またはペプチドを検出可能な標識で標識することによって実現する。本願発明の抗体が標識されていない場合、第2の抗体を検出可能な標識で標識した、当該第2の抗体を前記のステップを経たサンプルに加えることができる。前記検出可能な標識の可視化は、本願明細書の実施例に記載の通りの免疫組織化学的方法論を用いて実現することができる。
【0167】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、侵襲性乳癌またはSCLCなどの癌性病変に感受性である患者が同定されている。
【0168】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、非浸潤性乳管癌などの癌性病変に感受性である患者が同定されている。
【0169】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陽性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陰性である場合、線維嚢胞性、非侵襲性の非定型導管過形成に感受性である患者が同定されている。
【0170】
スクリーニングアッセイの抗体
前記方法のある実施態様は、ヒトプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体または抗体結合断片を含む。好ましい実施態様では、ヒトプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。さらに好ましい実施態様では、前記抗体はヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端18アミノ酸残基に免疫応答性のモノクローナル抗体である。さらに好ましい実施態様では、前記モノクローナル抗体はMAG-1である。
【0171】
好ましい実施態様は、前記抗原結合断片は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖である。さらに好ましい実施態様では、一本鎖可変領域断片(scFv)のアミノ酸配列は、前記断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされている、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列によって特徴づけられる。ある実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 26の可変重鎖アミノ酸配列を有する重鎖である。 ある好ましい実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する軽鎖である。
【0172】
ある実施態様では、アンギオテンシンII 2型に対して免疫応答性の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。より好ましくは、前記アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の前記抗体は、ポリクローナルAT2抗体(サンタクルスバイオテクノロジー社)である。
【0173】
本願発明の抗体は、標識されていなくてもよく、または上述の通り検出可能な標識で標識されていてもよい。本願発明の抗体が未標識である場合、前記抗体に特異的な第2の抗体を検出可能な標識で標識する方法に加えてもよい。
【0174】
表現型分類アッセイのペプチド
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに免疫応答性のペプチドである。好ましい実施態様では、ヒトプロバソプレシンのVAG領域C末端に免疫応答性のペプチドである。より好ましい実施態様では、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO:5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO:6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO:7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO:8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO:9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO:10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO:11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO:12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO:13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO:14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO:15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO:16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO:17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO:18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO:19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO:20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO:21)というアミノ酸配列の1つを有する。
【0175】
プロバソプレシンへの前記ペプチドの結合は、前記ペプチドが検出可能な標識で標識されている様子を画像化することができる。許容可能な標識は上述されており、当業に公知である。
【0176】
H. 乳癌、非浸潤性乳管癌、または非定型導管過形成の生検組織サンプルを表現型分類するためのキット
1. 乳癌/小細胞肺癌
本願発明のある実施態様には、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチド、またはペプチド模倣体を含む、侵襲性乳癌または小細胞肺癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が癌原性、侵襲性乳癌または小細胞肺癌組織の存在を示す、キットが含まれる。前記生検組織サンプルがプロバソプレシンに陽性である場合、乳癌または小細胞肺癌などの侵襲性の形態の癌が同定されている。
【0177】
前記キットはさらに、アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体、またはその抗原結合断片の調製を含んでよい。前記生検組織サンプルがプロバソプレシンにもアンギオテンシンII 2型受容体にも陰性である場合、サンプルは侵襲性乳癌であると確認されている。
【0178】
2. 非浸潤性乳管癌(DCIS)
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体の調製、およびアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体の調製を含む、非浸潤性乳管癌についての生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットが含まれる。
【0179】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、前記生検組織サンプルは癌原性非浸潤性乳管癌細胞を含む。
【0180】
3. 非定型導管過形成(ADH)
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体の調製、およびアンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体の調製を含む、非定型導管過形成についての生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットが含まれる。
【0181】
本願発明では、前記組織生検サンプルがプロバソプレシンに陰性で、アンギオテンシンII 2型受容体に陽性である場合、前記生検組織サンプルは過形成細胞を含む。
【0182】
前記キットの抗体調製
前記キットのある実施態様は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体または抗体結合断片の調製を含む。抗体および抗原結合断片は、凍結乾燥するか、または溶液に入れることができる。さらに、前記調製物は、たとえばウシ血清アルブミン(BSA)などの、キットの有効期間をのばすための安定物質を含有することができる。前記抗体および抗原結合断片を凍結乾燥する場合、前記キットは前記調製物を再構築するための溶液の調製物をさらに含有することができる。許容される溶液は、例えばPBSなど、当業者に公知である。
【0183】
ある実施態様では、前記抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの断片である。好ましい実施態様では、前記抗体またはその断片は、プロバソプレシンのVAG領域のC末端18アミノ酸残基に対して免疫応答性である。 好ましい実施態様では、前記抗体またはその断片は、アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性である。
【0184】
さらにより好ましい実施態様では、前記抗体はプロバソプレシンのVAG領域のC末端18アミノ酸残基に免疫応答性のモノクローナル抗体である。さらに好ましい実施態様では、前記モノクローナル抗体はMAG-1である。 好ましい実施態様は、前記抗原結合断片は、プロバソプレシンに対して免疫応答性の一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖である。さらに好ましい実施態様では、一本鎖可変領域断片(scFv)のアミノ酸配列は、前記断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされている、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列によって特徴づけられる。 ある実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 26の可変重鎖アミノ酸配列を有する重鎖である。ある好ましい実施態様では、前記抗原結合断片は、SEQ ID NO: 27の可変軽鎖アミノ酸配列を有する軽鎖である。
【0185】
前記キットのペプチド調製
本願発明のある実施態様は、プロバソプレシンのVAG領域のC末端領域に対して免疫応答性のペプチドである。 好ましい実施態様では、前記ペプチドはTSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ
ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM (SEQ
ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ
ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL (SEQ
ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ
ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT (SEQ
ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ
ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR (SEQ
ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ
ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS (SEQ
ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ
ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS (SEQ
ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ
ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW (SEQ
ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ
ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW (SEQ
ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ
ID NO: 21)というアミノ酸配列の1つを有する。
【0186】
プロバソプレシンへの前記ペプチドの結合は、前記ペプチドが検出可能な標識で標識されている様子を画像化することができる。許容可能な標識は上述されており、当業に公知である。
【0187】
ペプチド調製物は凍結乾燥するか、溶液に入れることができる。さらに、前記調製物は、たとえばウシ血清アルブミン(BSA)などの、キットの有効期間を増やすための安定物質を含有することができる。前記ペプチドを凍結乾燥する場合、前記キットは前記調製物を再構築するための溶液の調製物をさらに含有することができる。許容される溶液は、例えばPBSなど、当業者に公知である。
【0188】
包装
本願発明のキットには、体液中の腫瘍マーカーとしてのプロバソプレシンおよびその断片を測定するためのELISAアッセイ用の構成要素が含まれる。この用途においてテストされるサンプルには、たとえば、血漿、尿、リンパ、乳管分泌物、およびそれらの産生物が含まれる。
【0189】
代替的には、前記キットの調製物は、患者の組織生検切片を検査するための、免疫組織化学法などの免疫アッセイに用いられる。
【0190】
単位
本願発明のキットの組成物は、単一の検査、または複数の検査のための単一または複数単位に調製されてよい。
【0191】
好ましい実施態様では、前記キットの調製物は、発熱物質を含まない。
【0192】
使用説明書
本願発明のキットには、免疫アッセイの組成物の使用のための使用説明書が含まれる。
【0193】
I. 処理方法
ある好ましい実施態様では、本願発明の薬学的組成物は、たとえば皮下、皮内、静脈内、動脈内、腹腔内、または筋肉内注射を含む、任意の便利な経路によって患者に投与することができる。
【0194】
当業の医師または獣医師は、有効量(ED50)の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0195】
本願発明の薬学的組成物は、患者の腫瘍細胞の腫瘍特異的な死滅を誘導することによっていくらかの望ましい治療上の効果を生じ、その結果、任意の医学的な治療に適用できる合理的なベネフィット/リスク比において、治療された細胞においてその経路の生物学的なつながりを遮断し、前記腫瘍細胞を消滅させる、または増殖を阻害する、組成物の有効量を投与する。本願発明の薬学的組成物のヒト患者への投与のために、本願発明の薬学的組成物は、発熱物質を含まないように、当業者に知られる方法論によって調製することができる。
【0196】
本願発明の有効な免疫応答は、患者が疾患の徴候もしくは症状の部分的もしくは完全な軽減または低減を経験する場合に実現し、特に、生存期間の延長が、それに限定されずに含まれる。前記患者の症状は小康状態であって、腫瘍の負荷が増加しない。
【0197】
1. 1. プロバソプレシンに免疫応答性の抗体、抗原結合断片およびペプチド
本願発明のある実施態様は、乳癌およびDCISに感受性の患者を上述の抗体、抗原結合断片、およびペプチドの薬学的組成物で治療する方法である。好ましい実施態様では、治療を受ける患者はヒト患者である。抗体、抗原結合断片、およびペプチドの薬学的組成物は、必要とする患者に注射によって投与することができる。好ましい実施態様では、前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドは、前記抗体、抗原結合断片、またはペプチドがプロバソプレシンに結合することによって標的細胞を死滅させる放射性標識または毒素で標識する。
【0198】
本願発明の方法のある実施態様では、前記毒素は、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、またはボルケンシンのうちの任意の1つである。
【0199】
本願発明の方法のある実施態様では、放射性標識の例には、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biの放射性核種のうちの任意の1つである。好ましい治療用放射性核種には、188Re, 186Re,
203Pb, 212Pb, 212Bi, 109Pd, 64Cu,
67Cu, 90Y, 125I, 131I, 77Br,
211At, 97Ru, 105Rh, 198Auおよび199Ag, 166Hoまたは177Luが含まれる。
【0200】
2. 併用療法
本願発明の抗体、抗原結合断片、ペプチドおよびペプチド模倣体は、化学療法剤を併用する併用療法に用いることもできる。本願発明の新規の局面は、化学療法剤の混合剤をMAG-1抗体と併用すると、有効量投与する場合、癌細胞の増殖を有効に阻害する。
【0201】
したがって、本願発明の癌治療のある方法は、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびに化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物を、それを必要とする患者に投与するステップに関与する。代替的には、それを必要とする前記対象に、プロバソプレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびに化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物を投与してもよい。前記薬学的組成物は、非経口または別々にまたは同時に投与することもできる。本願発明のある局面では、前記薬学的組成物は単一の製剤として投与する。本願発明のある局面では、前記薬学的組成物は別々の製剤として投与する。
【0202】
本願発明のある実施態様には、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびにデキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む本願発明の癌を治療する方法が含まれる。代替的には、前記方法は、プロバソブレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびにデキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物を投与するステップを含む。
【0203】
本願発明のある実施態様には、プロバソブレシンに免疫応答性の抗体を含む薬学的組成物、ならびにIBMX、およびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む本願発明の癌を治療する方法が含まれる。代替的には、前記方法は、プロバソブレシンに免疫応答性のペプチドを含む薬学的組成物、ならびにIBMX、およびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物を投与するステップを含む。
【0204】
当業者は、本願発明の癌を治療するために、MAG-1調製物とともに投与するための、上述の任意の化学療法剤の製剤を調製しすることができる。
【0205】
プロバソプレシンに免疫応答性の抗体、抗原結合断片およびペプチドは上述の通りである。
【0206】
J. 薬物
本願発明によって意図される薬学的組成物は上述の通りである。本願発明のある実施態様では、前記薬学的組成物は、ヒト患者に投与することができるように発熱物質を含まないように調製する。薬学的組成物に発熱物質が入っているかどうかをテストするステップと、発熱物質を含有しない薬学的組成物を調製するステップは、当業者に公知である。
【0207】
本願発明のある実施態様は、本願発明の癌を治療するための薬物をつくるために、本願発明の任意の薬学的組成物を使用することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的な特徴に基づいて調製することができ、癌組織の状態の基づく単一または複数の製剤に調製することができる。本願発明の薬物は、病院および医院に配給するための適切なラベルであって、当該ラベルは対象の乳癌、非浸潤性乳管癌、または小細胞肺癌の治療の指示のためのラベルを有する好適な薬学的パッケージに包装することができる。薬物は単一または複数の単位に包装することができる。本願発明の薬学的組成物の調剤および投与の説明書は、前記薬学的パッケージに含むことができる。
【0208】
IV.等価物
当業者であれば、ごく普通の実験を用いるのみで、ここに説明した本願発明の特定の実施態様の等価物を数多く認識し、または確認できることであろう。このような等価物は、添付の請求の範囲の包含するところである。
本願明細書に引用されるすべての特許および公報は、その全体を引用により本願明細書に援用する。
【0209】
V.実施例
本願発明は、以下の実施例によって具体化されるが、それらはどのようにも本願発明を制限するものと解釈されてはならない。本願明細書全体に引用されているすべての参考文献(本願明細書全体に引用される文献、発行済み特許、および公開済み特許出願明細書)は、引用により本願明細書に明白に援用される。
【0210】
本願発明の実施には、他に指示のない限り、当業の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、および組換えDNAの従来の技術を用いるだろう。そのような技術は文献中に完全に説明されている。たとえば、Molecular
Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis
(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989)、 DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed.,
1985)、 Oligonucleotide
Synthesis (M. J. Gait ed., 1984)、 Mullis et al. U. S. Patent No:4,683,195、Nucleic Acid Hybridization
(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984)、 Transcription And Translation (B. D. Hames & S.
J. Higgins eds. 1984)、およびCurrent Protocols in Immunology, Molecular Biology, Cell Biology, Human
Genetics, Protein Science, and Nucleic Acid Chemistry (John Wiley & Sons,
Inc., Edison, NJ)を参照。
【0211】
材料および方法
培養細胞株およびヒト組織
培養細胞株は37°C および5% C02に維持された。NCI-H82 変異型 SCLC細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(バージニア州バナサス)から入手し、10% FBS(ハイクローン社、ユタ州ローガン)を含有するRPMI 1640(メディアテック社、ペンシルバニア州ハーンドン)中で培養した。J-J. Legros博士(ベルギー、リエージュ)から寄贈されたNCI-H345古典型SCLC細胞株を10% FBS、10-8
M β-エストラジオール、10-8
M ヒドロコルチゾン、5 μg/ml
インスリン、5 μg/ml
トランスフェリン、および5 ng/ml
亜セレン酸ナトリウム (ITS, シグマ社、ミズーリ州セントルイス)、および0.01 M
HEPESを添加したRPMI
1640中で維持した。J.Coulson 博士(英国リバプール)から寄贈されたLu-165古典型SCLC細胞株(Terasaki et al. (1994) Jpn.J.Cancer
Res. 85: 718-722)は、10%
FBSを含有するRPMI 1640中で維持した。E. Dmitrovsky 博士(ダートマス医学校)の研究室に所属するI. Pitha-Roweから寄贈されたBeas-2B形質転換ヒト気管支上皮細胞株は、エピネフリンを含有するLHC-8培地中で維持した。マウス骨肉腫脾ハイブリッド細胞株Sp2/0-Ag14は、ATCCから入手し、10% FBSを含有するDMEM(メディアテック社)中で維持した。ヒトSCLC腫瘍および非腫瘍肺組織サンプルは、協同ヒト組織ネットワーク(Cooperative
Human Tissue Network)(アラバマ大学、バーミンガム)、またはダートマス医学校病理学部のいずれかから入手した。非腫瘍およびSCLC腫瘍サンプルの両方は、気腫患者から肺葉切除によって除去された肺組織から採取した。ヒト視床下部組織は、C. Harker Rhodes博士(ダートマス医学校)の助力を受け死体解剖で入手した。
【0212】
モノクローナル抗体およびFab断片
動物が関与するすべての手順は、米国実験動物管理認定協会(AAALAC)が認証したダートマスカレッジおよびダートマスヒッチコック医学センター所内動物実験委員会(IACUC)の認可を得て行われた。MAG-1 mAbは、グルタラルデヒドを用いたウシサイログロブリンに結合したプロ-VPタンパク質(VAGcl8:
VQLAGAPEPFEPAQPDAY; SEQ ID NO: 23)のCOOH末端VAG領域である合成18アミノ酸ペプチドに対して作製された。この複合体は、同体積の完全フロインドアジュバント(CFA)で超音波分解した、1mg/mlの0.05 Mリン酸ナトリウム(pH 7.0)溶液(ペプチド当量濃度)として用い、BALB/cマウスを免疫した。21日後に、抗原と不完全フロインドアジュバント(IFA)の混合物を用いて追加免疫を行い、さらに5日後に脾細胞を収集した。前記脾細胞をSp2/0-Ag14細胞とハイブリダイズし、10% FBSを含有しヒドロキサンチンアミノプテリンチミジン(HAT)(シグマ社)を添加したDMEMを用いて生存可能なハイブリドーマを選択した。置換RIA(North et al. (1978) Endocrinology,
103: 1976-1984)により、125I-VAGcl8ペプチドを用いて、抗体の産生についてクローンをスクリーニングした。MAG-1産生クローンを分離し、BALB/cマウスの腹水を産生するために用い、臭化シアン活性化セファロース4B(シグマ社)に結合させたVAGcl8からなるカラムを用いた免疫アフィニティクロマトグラフィによってmAbを精製した。MAG-1は、クロノタイピングシステムキット(サザンバイオテクノロジーアソシエーツ、アラバマ州バーミンガム)を用いて、イソタイプIgG1であると決定された。イムノピュアIgG1
Fab・F(ab)2調製キット(ピアス社、イリノイ州ロックフィールド)を用いて、製造者の取扱説明書にしたがってMAG-1のFab断片を作製し、ウエスタン分析法によってフィシンによるIgG分子の完全切断を確認した。
【0213】
プロVPタンパク質の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)
総RNAをトリゾール(ライフテクノロジーズ社、メリーランド州ロックビル)を用いて培養細胞またはヒト組織から単離し、1μgを、オリゴ(dT)プライマおよびRNase H逆転写酵素(ライフテクノロジーズ社)とともに、製造者の使用説明書にしたがって標準の逆転写反応に用いた。AVPfwd
(5'-aggatgcctgacaccatgctg-3'; SEQ ID NO: 24)およびAVPrev (5'-attggcggaggtttattgtc-3'; SEQ ID NO: 25)を、MasterTaq酵素、TagMaster PCRエンハンサバッファ、およびマスターサイクラーグラディエントサーモサイクラー(エッペンドーフ社、ニューヨーク州ウェストベリー)を用いた反応に用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。これらのプライマは、VP遺伝子の2イントロン全体にわたり、プロVPタンパク質のコード配列全体を増幅できるようにデザインされた。サイクルの条件は以下の通りだった。1サイクル(95℃で5分間)、4サイクル(95℃で1分間、62℃で1分間、1サイクルごとに1℃低下、72℃で1分間)、30サイクル(95℃で1分間、57℃で1分間、72℃で1分間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0214】
抗体断片の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)
総RNAをトリゾール(ライフテクノロジーズ社、メリーランド州ロックビル)を用いて培養細胞またはヒト組織から単離し、1μgを、オリゴ(dT)プライマおよびRNase H逆転写酵素(ライフテクノロジーズ社)とともに、製造者の使用説明書にしたがって標準の逆転写反応に用いた。
【0215】
Vh fwd:
(5’-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG-3’; SEQ ID NO: 37)、Vh rev:
(5’-CCAGGGGCCAGTGGATAGACAAGCTTGGGTGTCGTTTT-3’; SEQ ID NO: 38)、Vl fwd:
(5’-GGTGATATCWTGMTGACCCAAWCTCCACTCTC-3’; SEQ ID NO: 39)、およびVl rev:
(5’-GGGAAGATGGATCCAGTTGGTGCAGCATCAGC-3’; SEQ ID NO: 40)を、MasterTaq酵素、TagMaster PCRエンハンサバッファ、およびマスターサイクラーグラディエントサーモサイクラー(エッペンドーフ社、ニューヨーク州ウェストベリー)を用いた反応に用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。これらのプライマは、IgG抗体Fv-DNA全体にわたり、IgG抗体Fv-DNAのコード配列全体を増幅できるようにデザインされた。サイクル条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(94℃で1分間、52℃で2分間、72℃で2分間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0216】
pComb3Xベクター(スクリップス研究所、カリフォルニア州ラホーヤ)への挿入のためのSfi1制限部位を有するMAG-1配列に基づいて、プライマーを作製した。Vh-Vl配向のためのPCR反応に用いるプライマは、Vh-fwd:
(5’-GGGCCCAGGCGGCCGAGGTCAAGCTGCAGGAGTCA-3’、SEQ ID NO: 29)、Vl-rev: (5’-CCTGGCCGGCCTGGCCTTTKATTTCCAGYTTGGTCCC-3’、SEQ ID NO: 30)、Vh rev:
(5’-ACCGGAAGTAGAGCCGGAGACTGTGAGAGTGGAGCC-3’、SEQ ID NO: 31)、およびVl fwd: (5’-GGCTCTACTTCCGGTGATATCGTTATGACCCCAACT-3’、SEQ ID NO: 32)である。PCR条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(90℃で30秒間、52℃で30秒間、72℃で90秒間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0217】
Vh-Vl配向のためのPCR反応に用いるプライマは、Vl-fwd:
(5’-GGGCCCAGGCGGCCGAGCTCGAYATCCAGCTGACTCAGCC-3’、SEQ ID NO: 33)、Vh-rev: (5’-
CCTGGCCGGCCTGGCCACTAGTGACAGATGGGGSTGTYGTTTTGG-3’、SEQ ID NO: 34)、Vl-rev:
(5’-GGAAGATCTAGAGGAACCACCTTTKATTTCCAGYTTGGTCCC-3’、SEQ ID NO: 35)、およびVh-fwd:
(5’-GGTGGTTCCTCTAGATCTTCCCTCGAGGTRMAGCTTCAGGAGTC-3’、SEQ ID NO: 36)である。PCR条件は以下の通りだった。初回の変性94℃で5分間、35サイクル(90℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で90秒間)、最終の伸長は72℃で10分間。
【0218】
上述のプライマでは、変性プライマは以下の通りである。K = G または T、R = A または G、Y = C または T、S = G または C、M = A または C、and W = A または T。
【0219】
ウエスタン分析法
総タンパク質ライセートを、細胞および肺組織サンプルから0.1% ツイーン20を含有する0.1 M
HClに抽出することによって調製し、タンパク質濃度を215nmおよび225nmで測定したディファレンシャル吸収測定を用いて決定した(Waddell,
W. J. (1956) J. Lab. Clin. Med. 48:311-314)。ライセート(40μg)を、トリス/グリセリン/SDSバッファ(25 mM
Tris、192 mM グリセリン、0.1%
SDS、pH 8.3)を用いたSDS-PAGEによって14%ゲル上で分離し、前記タンパク質を、ミニプロティーン3システム(バイオラド社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて、20%メタノールを加えたトリス/グリセリン/SDSバッファ中で、イモビロン-Pポリビニルイデンジフルオライド(PVDF)膜(ミリポア社、マサチューセッツ州ベッドフォード)に移した。前記膜を遮断するために、前記膜をモデル583ゲルドライヤー(ライフテクノロジーズ社)を用いて乾燥させ、NRSA/GRSAをMAG-1および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合タンパク質L(ピアース社)を用いた連続インキュベーションによって検出した。VP-NPの検出のために、本研究室で作製したウサギポリクローナル抗体を用いた(North
et al.(1993) Peptides 14:303-307)。VP、VAG、またはプロVPの検出のために、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を用いた。その後、HRP標識ヤギ抗ウサギ抗体(ギブコBRL社)を用いた。シグナルの生成にはルミ-ライトウェスタンブロッティング基質(ロシュ社、イリノイ州インディアナポリス)を用い、前記膜をオートラジオグラフィフィルムに曝露した。
【0220】
免疫蛍光サイトメトリック分析法および顕微鏡分析法
約106個の培養SCLC細胞を0.1% BSAおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBSでさまざまな濃度に希釈したMAG-1 mAbまたはFabでインキュベートしてから、蛍光イソチオシアネート(FITC)結合Fab特異的ヤギ抗マウス抗体(シグマ社)でインキュベートした。各ステップを4℃で行い、その間、当該細胞を洗浄した。その後、当該細胞を4℃で1%パラフォルムアルデヒドに固定し、洗浄し、FACStarフローサイトメーター(ベクトンディキンソン社、カリフォルニア州マウンテンビュー)で蛍光を測定した。当該細胞の一部を取り出してスローフェードライト(モレキュラープローブス社、オレゴン州ユージーン)に再懸濁させ、バイオラド社製MRC 1024に連結した、Plan NeoFluar オプティクスを備えたAxioskop顕微鏡(ツァイス社、ニューヨーク州ソーンウッド)に取り付けて可視化した。IgG1同位体対照(ハイブリドーマライブラリ、ダートマス医学校)を用いて非特異的結合を評価した。
【0221】
免疫組織科学
ヒトSCLC、正常肺組織、または視床下部組織のホルマリン固定またはアセトン固定パラフィン埋包標本のそれぞれから切り出した4乃至6μm切片を、MAG-1 mAbを有するNRSAについて染色した。乳癌、DCIS、線維嚢胞性疾患、または正常乳房組織の固定標本をMAG-1を有するGRSAについて染色した。すべてのステップは、他に記載のない限り、外界温度で行った。前記切片を加熱(60℃で2時間)脱パラフィン処理し、キシレンで洗浄(10分間を2回)し、組織をエタノールの濃度を徐々に落としながら(100%乃至70%)洗浄(10分間)して再水和させた。内因性過酸化活性を、水素ペルオキシダーゼの0.6%メタノール溶液中で10分間インキュベーションしてブロックした。PBSで洗浄後(3分間を2回)、前記組織をトリプシン溶液(バイオジェネックス社、カリフォルニア州サンラモン)で、37℃で10分間タンパク分解することによって抗原回復させ、95%エタノール中で1分間洗浄してから、PBSで10分間洗浄した。スライドをパワーブロックユニバーサルブロッキング試薬(バイオジェネックス社)で20分間ブロックし、0.1% BSAを含有するPBS中でMAG-1 mAb(0.25μg/ml)でインキュベートした。PBSで洗浄後(3分間を2回)、前記スライドをマルチリンク・ビオチン化ヤギ抗免疫グロブリン溶液(バイオジェネックス社)で、20分間インキュベートし、PBSで洗浄 (3分間を2回)し、ラベルペルオキシダーゼ結合ストレプタビジン溶液(バイオジェネックス社)で20分間洗浄した。洗浄後、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)基質溶液(バイオジェネックス社)を用いて2乃至5分間染色した。その後、組織をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールの濃度を徐々に上げながら脱水して、キシレンで洗浄し、スーパーマウント封入剤(バイオジェネックス社)を用いてカバースリップした。
【0222】
代替的には、ヒトSCLC、正常肺組織、または視床下部組織のホルマリン固定パラフィン埋包標本のそれぞれから切り出した4乃至6μm切片を、MAG-1 mAbを有するNRSAについて染色した。すべてのステップは、他に記載のない限り、外界温度で行った。前記切片を加熱(60℃で10分間)して脱パラフィン処理して、キシレンで洗浄(5分間を2回)し、組織をエタノールの濃度を徐々に落としながら(100%、95%、および70%)洗浄(5分間を2回)して再水和させた。PBSで洗浄後(5分間を2回)、前記組織を0.01Mクエン酸ナトリウム(pH8.5)によって30分間80℃、抗原回復させた。スライドをPBSで洗浄し(5分間で2回)てから、パワーブロックユニバーサルブロッキング試薬(バイオジェネックス社)で5分間インキュベートし、0.1% BSAおよび0.02%ツイーン20を含有するPBS中でMAG-1 mAb(1μg/ml)でインキュベートし、組織断片と1時間反応させた。PBSで洗浄後(5分間を3回)、前記スライドをMultiLinkビオチン化ヤギ抗免疫グロブリン溶液(バイオジェネックス社)で、30分間インキュベートし、PBSで洗浄 (5分間を3回)し、ラベルペルオキシダーゼ結合ストレプタビジン溶液(バイオジェネックス社)で30分間洗浄した。PBSで洗浄(5分間を3回)後、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)基質溶液(バイオジェネックス社)を用いて3分間染色した。その後、組織をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールの濃度を徐々に上げながら脱水して、キシレンで洗浄し、スーパーマウント封入剤(バイオジェネックス社)を用いてカバースリップした。
【0223】
例I
SCLC腫瘍組織および培養細胞におけるNRSAの検出
総RNAをヒト肺SCLC腫瘍および非腫瘍組織サンプルから抽出し、RT-PCRによってバソプレシンメッセージの存在を分析した。PCR反応を、バソプレシン遺伝子の2つのイントロンにまたがる配列特異的プライマを用いて行った。
【0224】
SCLC腫瘍、SCLC培養細胞、およびヒト視床下部組織から抽出したRNAを用いた反応において、産生物が1種類だけ検出された(図1)。このバンドは、この特定の増幅プライマを用いたVPメッセージについて予測された大きさ(570 bp)と一致する。Beas-2B細胞からの総RNA抽出物にはVPメッセージは検出されなかったが、非腫瘍肺組織抽出物中には約570bpのバンドがわずかに検出された。これは、前記肺組織サンプル中に埋め込まれていた小さい未検出のSCLC腫瘍細胞によるVP発現か、または肺神経内分泌細胞によるVP発現である可能性がある(Reynolds
(2000) Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol. 278:L1256-L1263)。しかし、MAG-1 mAbおよびFab断片を用いてSDS-PAGEおよびウエスタン分析法を行った場合、NRSAが培養SCLC細胞および腫瘍細胞からのタンパク質抽出物中に検出されたが、非腫瘍肺組織からのタンパク質抽出物中には検出されなかった。培養SCLC細胞タンパク質抽出物をVP-NP (North,
(1993) Peptides 14:303-307)に対するポリクローナル抗体を用いて調べたところ、MAG-1 mAbを用いた場合と同一のバンドパターンが認められた(図2B)。MAG-1 mAbおよびFab、ならびにポリクローナル抗VP-NP抗体は、分子量が約20kDaおよび約40kDaのタンパク質とともにプロVPタンパク質の分解産生物および/または脱グリコシル化物と見られるものを認識した。前記約20kDaタンパク質はプロVPタンパク質について予測された大きさと一致した。
【0225】
例II
培養SCLC細胞の表面におけるNRSAの検出
NCI-H82細胞をMAG-1 mAbまたはFabと反応させてから、FITC標識ヤギ抗マウスFab特異抗体と反応させ、FACStar装置で蛍光を測定した(図3)。1μg/mlの濃度のMAG-1 mAbまたはFabを用いたところ、認められた染色の程度は同程度だったが、測定された平均蛍光は濃度100μg/mlのFabを用いても約2倍にしかならなかったのに対し、同濃度のmAbを用いた場合、約10倍になった。血漿膜からタンパク質への内部移行を阻害するために、反応は4℃でアジ化ナトリウムの存在下で行われたため、これらの結果は、培養SCLC細胞の表面上のNRSAへの結合能力はMAG-1 mAbの方がMAG-1 Fabよりも高いことを示唆している。前記mAbはまた、Lu-165およびNCI-H345培養SCLC細胞の表面上のNRSAを検出するために用いられた。イソタイプ対照マウスmAbで染色した後に測定した蛍光強度は、染色していない細胞で測定したものと同等だった。培養SCLC細胞の表面上のNRSAへのMAG-1 mAbの結合も、蛍光顕微鏡によって評価した。すべての場合において、SCLC細胞上で認められた前記細胞表面の染色パターンは均一ではなかったが、前記イソタイプ対照抗体が用いられた場合には染色はほとんど認められなかった。対照としてNCI-H82細胞を用い、その細胞をMAG-1、FITC結合抗マウス抗体、および固定パラホルムアルデヒドでインキュベートした後で、その細胞の核をヨウ化プロピジウムで染色した。NCI-H345およびLu-165細胞を共焦点顕微鏡で見たところ、断続的な血漿膜染色が認められた(図4Bおよび4C)。MAG-1に対して免疫応答性だということが明らかになった細胞の割合に関しては定量的な評価は行わなかったが、各細胞タイプの集団内の個々の細胞の標識の程度はさまざまだったということは明らかである。
【0226】
例III
ヒトSCLC組織断片上におけるNRSAの検出
ヒト組織切片を、MAG-1を用いて免疫組織化学的分析法で調べ、小細胞肺癌(SCLC)腫瘍組織には染色が認められたが(図5A)、正常肺組織肺胞(図5B)または気管支(図5C)には認められなかった。表面および細胞内染色はともにSCLC腫瘍切片において明らかである。ヒト視床下部は陽性対照として用いたが、その視床下部組織切片では細胞内染色しか認められなかった(データは非表示)。
【0227】
例IV
非浸潤性乳管癌および再生不良性導管過形成組織切片の免疫組織化学
ヒト組織切片を、MAG-1を用いて免疫組織化学的分析法で調べ、非浸潤性乳管癌(DCIS)腫瘍組織には染色が認められたが(図7)、再生不良性乳管過形成(図8)には認められなかった。
【0228】
本願発明において、本願発明の範囲または精神から逸脱しなければ、さまざまな改変および変更が可能であるということは、当業者には明らかであろう。本願明細書で開示した本願発明の明細および実施を考慮した本願発明の他の実施態様は、当業者には明らかであろう。明細および実施例は、添付の特許請求の範囲により示される本願発明の真実の範囲および精神を有する例示としてしか考慮されないことを意図する。
【0229】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】RT-PCR分析法による培養SCLC細胞およびヒトSCLC組織中のNRSAの検出を示す。RT-PCRは表示の細胞株またはヒト組織からの総RNA抽出物について行われた。産生物の分離は1.5%アガロースゲルで行われ、臭化エチジウムで可視化した。PCRプライマは、2イントロンにまたがるプロVPタンパク質の全コード領域を増幅するためにデザインされた。予測される増幅サイズは570 bpである。Lu-165およびNCI-H345、SCLC細胞株、Beas-2B、形質転換正常ヒト上皮細胞株、肺および視床下部、ヒト組織抽出物をテストした。
【図2】ウエスタン分析法による培養SCLC細胞およびヒトSCLC組織中のNRSAの検出を示す。図2AはMAG-1 mAbまたはMAG-1 Fabによる染色を示す。図2BはMAG-1 mAbまたはVP-NPに対するウサギポリクローナル抗体による染色を示す。およその分子量を各数値の左側に示す。細胞または組織タンパク質の総抽出物(40μg)をSDS-PAGEで分離し、二フッ化ポリビニルイデン(PDVF)膜にブロットし、(A) MAG-1 mAbまたはMAG-1 Fab、および(B) MAG-1 mAbまたはVP-NP二対するウサギポリクローナル抗体と反応させた。
【図3】培養SCLC細胞の表面に結合するMAG-1のフローサイトメトリ分析を示す。図3Aは、対照IgG1抗体と比較した、2種類の異なる濃度でのNCI-H82細胞のMAG-1 Fab 染色を示す。図3Bは、対照IgG1抗体と比較した、NCI-H345細胞のMAG-1 Fab 染色を示す。図3Cは、対照IgG1抗体と比較した、2種類の異なる濃度でのNCI-H82細胞のMAG-1 mAb 染色を示す。図3Dは、対照IgG1抗体と比較した、Lu165細胞のMAG-1 mAb 染色を示す。フローサイトメトリ前の抗体染色手順を、血漿膜内部移行を最小化する条件を用いて行った。記載のない限り、MAG-1 mAbおよびMAG-1 Fabを濃度100μg/mlで用いた。
【図4】培養SCLC細胞の表面に結合するMAG-1の共焦点分析を示す。SCLC細胞をMAG-1またはイソタイプ対照mAbと反応させてから、FITC標識二次抗体と反応させた。図4Aは、対象倍率40倍、および拡大倍率5.8倍の設定で見たNCI-H82細胞の赤色蛍光および緑色蛍光光チャンネルイメージを合成した微分干渉コントラスト(DIC)を示す。前記細胞を、比較用に前記核を染色(灰色)するために、ヨウ化プロピジウムでインキュベートした。図4BNCI-H345は、共焦点顕微鏡で画像化したもので、上図は対象倍率20倍(0.5 NA)で観察した対象IgG1を示し、下図は対象倍率40倍(1.3 NA)で観察したMAG-1染色細胞を示す。図4Cは、共焦点顕微鏡で対象倍率40倍で画像化したLu-165細胞を示す。図4Bおよび4Cについて、左図は透過光線チャンネル画像を示し、中央の図は緑色蛍光チャンネル画像を示し、右図は2つの合成画像を示す。
【図5】MAG-1 mAbを用いたヒト組織切片の免疫組織化学分析を示す。図5AはヒトSCLC腫瘍細胞に対するMAG-1の免疫応答を示す(褐色の染色)。図5Bは肺の肺胞の対照正常上皮細胞を示す。図5Cは肺の気管支の対照正常上皮細胞を示す。
【図6】VAGのC末端18アミノ酸残基に対して免疫応答性の一本鎖可変断片のアミノ酸配列および核酸配列を示す。図6Aはアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)を示す。図6Bは核酸酸配列(SEQ ID NO: 3)を示す。
【図7】MAG-lを用いた免疫組織化学分析法で調べた、ヒト非浸潤性乳管癌(DCIS)腫瘍組織切片の染色を示す。
【図8】MAG-lを用いた免疫組織化学分析法で調べた、ヒト再生不良性乳管過形成腫瘍組織切片の染色の欠損を示す。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACTT番号____を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体であって、当該モノクローナル抗体がMAG-1である、モノクローナル抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO: 26の重鎖可変領域配列および/またはSEQ ID NO: 27の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部位を含む抗体。
【請求項3】
SEQ ID NO: 23によって特徴づけられるプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープと免疫反応性の、請求項1に記載のモノクローナル抗体もしくは請求項2に記載の抗体、またはそれらの抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1乃至3の任意の1つに記載のモノクローナル抗体であって、当該モノクローナル抗体がプロバソプレシンのVAG領域のC末端エピトープを認識するモノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項2に記載の抗原結合断片であって、当該断片が一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖からなるグループから洗濯される抗原結合断片。
【請求項6】
プロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに免疫応答性の一本鎖可変断片であって、当該断片がSEQ ID NO: 2によって特徴づけられる、一本鎖可変断片。
【請求項7】
請求項6に記載の一本鎖可変領域断片であって、当該断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされる、一本鎖可変領域断片。
【請求項8】
MAG-1の相補的決定領域および一フレームワーク領域を含む、ヒト化抗体。
【請求項9】
請求項1乃至8の任意の1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項10】
請求項1乃至8の任意の1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物。
【請求項11】
さらに標識を含む、請求項1乃至10の任意の1つに記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項12】
請求項11に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記標識が蛍光標識、放射性標識、毒素、金属化合物およびビオチンからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項13】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記標蛍光識がテキサスレッド、フィコエリトリン(PE)、シトクロームc、および蛍光イソチオシアント(FITC)からなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項14】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において、前記放射性標識が、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項15】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項16】
プロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチド。
【請求項17】
請求項16に記載のペプチドであって、当該ペプチドが、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM
(SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL
(SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT
(SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR
(SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS
(SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS
(SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW
(SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW
(SEQ ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)からなるグループから選択されるアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項18】
請求項16または17に記載のペプチドであって、当該ペプチドが標識されている、ペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記標識が蛍光標識、放射標識、毒素、金属化合物およびビオチンからなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項20】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記標蛍光識がテキサスレッド、フィコエリトリン(PE)、シトクロームc、および蛍光イソチオシアント(FITC)からなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項21】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて放射性標識が32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biから選択される、ペプチド。
【請求項22】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項23】
請求項16乃至22の任意の1つに記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項24】
請求項16乃至22の任意の1つに記載のペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項25】
プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体の調製を含む、乳癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が癌原性乳癌組織の存在を示す、キット。
【請求項26】
請求項25に記載のキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、キット。
【請求項27】
プロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドの調製を含む、乳癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドが癌原性乳癌組織または小細胞肺癌の存在を示す、キット。
【請求項28】
請求項27に記載のキットであって、当該キットにおいて前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項29】
乳癌または小細胞肺癌を有すると疑われる患者から採取した乳房組織サンプルを表現型タイピングする方法であって、当該方法が、
a. 患者から検査用生検サンプルを入手するステップと、
b. 前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、
c 前記サンプルを、プロバソプレシンに結合させることができる条件下でプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、
d. 前記サンプルの細胞が対照組織と比較してプロバソプレシンを過剰発現しているかどうかを決定するステップと、を含み、
当該方法において、前記検査用組織がプロバソプレシンを過剰発現している場合、前記検査用生検サンプルが癌細胞を有する可能性が高いと同定される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、当該方法において、乳房組織サンプルが、乳癌、非浸潤性乳管癌、または小細胞肺癌を有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項33】
線維嚢胞性病変と癌性病変を区別するための、患者から採取した乳房組織サンプルの表現型タイピングの方法であって、当該方法が
a. 患者から検査用生検サンプルを入手するステップと、
b. 前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、
c 前記サンプルを、プロバソプレシンに結合させることができる条件下でプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、
d 前記サンプルを、さらに、アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と接触させるステップと、
e 前記サンプルの細胞がプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型の1つまたは両方を発現するかどうかを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、当該方法においてアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片からなるグループから選択される、方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、当該方法において、病変が乳癌、非浸潤性乳管癌、小細胞肺癌、または非定型導管過形成を有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項38】
生検組織サンプルの表現型タイピング用のキットであって、当該キットにおいて、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体およびペプチドと、
b. アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体と、
を含むキット。
【請求項39】
請求項38に記載のキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、キット。
【請求項40】
請求項38に記載のキットであって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項41】
請求項38に記載のキットであって、当該方法においてアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片からなるグループから選択される、キット。
【請求項42】
請求項38に記載のキットであって、当該方法において、前記生検組織サンプルが乳癌、非浸潤性乳管癌、および非定型導管過形成からなるグループから選択される症状をを有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項43】
請求項10に記載の薬学的組成物であって、当該薬学的組成物において前記抗体またはその抗原結合断片は毒素または放射性標識で標識されている、薬学的組成物。
【請求項44】
請求項43に記載の薬学的組成物であって、当該ペプチドにおいて前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、薬学的組成物。
【請求項45】
請求項43に記載の薬学的組成物であって、当該ペプチドにおいて放射性標識が32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biから選択される、薬学的組成物。
【請求項46】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される症状を治療する方法であって、請求項43に記載の薬学的組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項47】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される症状を治療する方法であって、請求項24に記載の薬学的組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項48】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. 化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項50】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項51】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を同時に投与する、方法。
【請求項52】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を単一製剤として投与する、方法。
【請求項53】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を別々の製剤として投与する、方法。
【請求項54】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. デキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項57】
乳癌、または非浸潤性乳管癌の治療方法であって、当該方法においてそれを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. IBMXおよびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項59】
請求項57に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項60】
請求項10または24に記載の薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【請求項61】
請求項10または24に記載の薬学的組成物と合わせた、IBMXおよびフォルスコリンを含む薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【請求項62】
請求項10または24に記載の薬学的組成物と合わせた、デキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)を含む薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【請求項1】
ACTT番号____を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体であって、当該モノクローナル抗体がMAG-1である、モノクローナル抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO: 26の重鎖可変領域配列および/またはSEQ ID NO: 27の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部位を含む抗体。
【請求項3】
SEQ ID NO: 23によって特徴づけられるプロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープと免疫反応性の、請求項1に記載のモノクローナル抗体もしくは請求項2に記載の抗体、またはそれらの抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1乃至3の任意の1つに記載のモノクローナル抗体であって、当該モノクローナル抗体がプロバソプレシンのVAG領域のC末端エピトープを認識するモノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項2に記載の抗原結合断片であって、当該断片が一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、F(ab’)2断片、重鎖、または軽鎖からなるグループから洗濯される抗原結合断片。
【請求項6】
プロバソプレシンのVAGドメインのC末端エピトープに免疫応答性の一本鎖可変断片であって、当該断片がSEQ ID NO: 2によって特徴づけられる、一本鎖可変断片。
【請求項7】
請求項6に記載の一本鎖可変領域断片であって、当該断片がSEQ ID NO: 3の核酸配列によってコードされる、一本鎖可変領域断片。
【請求項8】
MAG-1の相補的決定領域および一フレームワーク領域を含む、ヒト化抗体。
【請求項9】
請求項1乃至8の任意の1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項10】
請求項1乃至8の任意の1つに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的組成物。
【請求項11】
さらに標識を含む、請求項1乃至10の任意の1つに記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項12】
請求項11に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記標識が蛍光標識、放射性標識、毒素、金属化合物およびビオチンからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項13】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記標蛍光識がテキサスレッド、フィコエリトリン(PE)、シトクロームc、および蛍光イソチオシアント(FITC)からなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項14】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において、前記放射性標識が、32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項15】
請求項12に記載の抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片であって、当該抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片において前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、抗体、その抗原結合断片、または一本鎖可変断片。
【請求項16】
プロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチド。
【請求項17】
請求項16に記載のペプチドであって、当該ペプチドが、TSLSMQYGPLDS (SEQ
ID NO:4)、FPFPVRPSPLAM (SEQ ID NO: 5)、ILPNTRPSNYLM
(SEQ ID NO: 6)、HHHRPTPLLQVT (SEQ ID NO: 7)、KLKLHDGTPYNL
(SEQ ID NO: 8)、WQQKGHTPTPMP (SEQ ID NO: 9)、QGWPQSSKLGLT
(SEQ ID NO: 10)、NNQSPHLRPTGS (SEQ ID NO: 11)、TITDMSPHWGLR
(SEQ ID NO: 12)、TYQSNLGLSSPR (SEQ ID NO: 13)、YPYWSNAMSMAS
(SEQ ID NO: 14)、FPNHALSKRWGI (SEQ ID NO: 15)、HQNHLHVPVSWS
(SEQ ID NO: 16)、TMDPFRSVWPRL (SEQ ID NO: 17)、MNYTSTPGPRSW
(SEQ ID NO: 18)、LLDPYHPRKLSR (SEQ ID NO: 19)、IIRGAQVDHSTW
(SEQ ID NO: 20)、およびLWAHSYNFRLLS (SEQ ID NO: 21)からなるグループから選択されるアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項18】
請求項16または17に記載のペプチドであって、当該ペプチドが標識されている、ペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記標識が蛍光標識、放射標識、毒素、金属化合物およびビオチンからなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項20】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記標蛍光識がテキサスレッド、フィコエリトリン(PE)、シトクロームc、および蛍光イソチオシアント(FITC)からなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項21】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて放射性標識が32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biから選択される、ペプチド。
【請求項22】
請求項19に記載のペプチドであって、当該ペプチドにおいて前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、ペプチド。
【請求項23】
請求項16乃至22の任意の1つに記載のペプチドを含む、組成物。
【請求項24】
請求項16乃至22の任意の1つに記載のペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項25】
プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体の調製を含む、乳癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が癌原性乳癌組織の存在を示す、キット。
【請求項26】
請求項25に記載のキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、キット。
【請求項27】
プロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドの調製を含む、乳癌の生検組織サンプルのスクリーニングに有用なキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性のペプチドが癌原性乳癌組織または小細胞肺癌の存在を示す、キット。
【請求項28】
請求項27に記載のキットであって、当該キットにおいて前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項29】
乳癌または小細胞肺癌を有すると疑われる患者から採取した乳房組織サンプルを表現型タイピングする方法であって、当該方法が、
a. 患者から検査用生検サンプルを入手するステップと、
b. 前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、
c 前記サンプルを、プロバソプレシンに結合させることができる条件下でプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、
d. 前記サンプルの細胞が対照組織と比較してプロバソプレシンを過剰発現しているかどうかを決定するステップと、を含み、
当該方法において、前記検査用組織がプロバソプレシンを過剰発現している場合、前記検査用生検サンプルが癌細胞を有する可能性が高いと同定される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、当該方法において、乳房組織サンプルが、乳癌、非浸潤性乳管癌、または小細胞肺癌を有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項33】
線維嚢胞性病変と癌性病変を区別するための、患者から採取した乳房組織サンプルの表現型タイピングの方法であって、当該方法が
a. 患者から検査用生検サンプルを入手するステップと、
b. 前記検査用生検サンプルを免疫アッセイにかけるステップと、
c 前記サンプルを、プロバソプレシンに結合させることができる条件下でプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドと接触させるステップと、
d 前記サンプルを、さらに、アンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性である抗体と接触させるステップと、
e 前記サンプルの細胞がプロバソプレシンおよびアンギオテンシンII 2型の1つまたは両方を発現するかどうかを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、当該方法においてアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片からなるグループから選択される、方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、当該方法において、病変が乳癌、非浸潤性乳管癌、小細胞肺癌、または非定型導管過形成を有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項38】
生検組織サンプルの表現型タイピング用のキットであって、当該キットにおいて、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体およびペプチドと、
b. アンギオテンシンII 2型受容体に免疫応答性の抗体と、
を含むキット。
【請求項39】
請求項38に記載のキットであって、当該キットにおいて前記のプロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体が請求項1乃至9の任意の1つの抗体である、キット。
【請求項40】
請求項38に記載のキットであって、当該キットにおいてプロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項16乃至23の任意の1つのペプチドである、キット。
【請求項41】
請求項38に記載のキットであって、当該方法においてアンギオテンシンII 2型受容体に対して免疫応答性の抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖可変断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片からなるグループから選択される、キット。
【請求項42】
請求項38に記載のキットであって、当該方法において、前記生検組織サンプルが乳癌、非浸潤性乳管癌、および非定型導管過形成からなるグループから選択される症状をを有すると疑われる患者からのものである、方法。
【請求項43】
請求項10に記載の薬学的組成物であって、当該薬学的組成物において前記抗体またはその抗原結合断片は毒素または放射性標識で標識されている、薬学的組成物。
【請求項44】
請求項43に記載の薬学的組成物であって、当該ペプチドにおいて前記毒素が、リシン、リシンA鎖(リシン毒素)、シュードモナス外毒素(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ウェルシュ菌ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵リボヌクレアーゼ(PBR)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、アブリンA鎖(アブリン毒素)、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、モデシン、ビスクミン、およびボルケンシンからなるグループから選択される、薬学的組成物。
【請求項45】
請求項43に記載の薬学的組成物であって、当該ペプチドにおいて放射性標識が32P、33P、43K、47Sc、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biから選択される、薬学的組成物。
【請求項46】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される症状を治療する方法であって、請求項43に記載の薬学的組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項47】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される症状を治療する方法であって、請求項24に記載の薬学的組成物を有効量、対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項48】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. 化学療法剤およびエピネフリンを含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項50】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項51】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を同時に投与する、方法。
【請求項52】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を単一製剤として投与する、方法。
【請求項53】
請求項48に記載の方法であって、当該方法において前記薬学的組成物を別々の製剤として投与する、方法。
【請求項54】
乳癌、非浸潤性乳管癌、および小細胞肺癌からなるグループから選択される癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. デキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)の混合物を含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項57】
乳癌、または非浸潤性乳管癌の治療方法であって、当該方法においてそれを必要とする対象に、
a. プロバソプレシンに対して免疫応答性の抗体またはペプチドを含む薬学的組成物と、
b. IBMXおよびフォルスコリンの混合物を含む薬学的組成物と、
を投与するステップを含む、方法。
【請求項58】
請求項57に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記抗体が請求項10の抗体である、方法。
【請求項59】
請求項57に記載の方法であって、当該方法において、プロバソプレシンに対して免疫応答性の前記ペプチドが請求項24に記載のペプチドである、方法。
【請求項60】
請求項10または24に記載の薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【請求項61】
請求項10または24に記載の薬学的組成物と合わせた、IBMXおよびフォルスコリンを含む薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【請求項62】
請求項10または24に記載の薬学的組成物と合わせた、デキサメタゾン、IBMX、および8-ブロモアデノシン3’,5’-環状一リン酸塩(8br-cAMP)を含む薬学的組成物の、乳癌および非浸潤性乳管癌からなるグループから選択される癌の治療用の医薬品の調合への使用。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−505510(P2006−505510A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−521917(P2004−521917)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/022264
【国際公開番号】WO2004/006860
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(505018094)ウーメラ セラピューティックス, インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】WOOMERA THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】34 Low Road, Hanover, NH 03755(US)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/022264
【国際公開番号】WO2004/006860
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(505018094)ウーメラ セラピューティックス, インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】WOOMERA THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】34 Low Road, Hanover, NH 03755(US)
【Fターム(参考)】
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