説明

プロピレン−エチレンポリマー及び製造法

【課題】実質的にジエンが存在しない、コポリマー鎖間のタクチシティー及びコモノマーのマーカーの均一な分布をし、さらに、タクチシティーの統計的に、わずかの分子内差しか示さない、メタロセン触媒の存在下で製造されるエチレンプロピレンのコポリマーの提供。
【解決手段】a)立体特異的ポリプロピレン重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程並びに、b)75重量%以上プロピレン単位、及び5乃至25重量%エチレン単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及びMw>6.10*P*e(3370/T)(式中、Mw=重量平均分子量、T=ケルビン度での重合反応温度、P=リットル当りモルでの、重合反応域における定常状態プロピレン濃度)の重量平均分子量を有する、工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、ジエンの実質的な不存在下での、エチレンとプロピレンのコポリマーを包含する。より特定すると、本コポリマーは、定常状態において、単一の反応器を用いる方法において製造される。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒を用いて製造されたエチレンプロピレンコポリマーは知られている。多くのそのようなコポリマーは、タクティシティー、組成(重量%コモノマー)又は両方に関して分子間で不均質である。さらに、そのようなポリマーは、又、又はその代わりに、ポリマー鎖内で組成的に不均質であり得る。そのような特徴は、常にではないが、複数の反応器法又はポリマーの逐次的添加の結果であり得る。
【0003】
凝集体において考えられる場合、そのようなコポリマーの弾性度、曲げ弾性率及び引張強さは、商業的なエラストマー操作における使用のために満足できるレベルには達し得ない。
【0004】
米国特許第5,747,621号は、30乃至90重量%の135℃におけるキシレン中で可溶性の沸騰するn―ヘプタン画分を有する、プロピレンの重合反応から直接得られる分別できる反応器ブレンドポリプロピレンを提示している。この文献の表2において、各々の溶媒がその沸点において存在するようである唯一の分別が開示されている。さらに、この表では、ジエチル−エーテル画分は融点を有しないことを示している(非晶質)。
【0005】
雑誌論文、Sience、267巻、217−219頁(1995年);Macromolecules、31巻、6908−6916頁(1998年);及びMacromolecules、32巻、8283−8290頁、3334−3340頁及び8100−8106頁において、先に記載した米国特許第5,747,621号に開示されたポリマーと同様の特徴を有するプロピレンポリマーが製造され、分別されている。それらのポリマーは、ビス(アリールインデニル)又はビスインデニルメタロセン触媒を用いて製造される。それらの雑誌論文において、それらのポリマーは、沸騰するエーテル及びヘプタン中で分別され、ポリマーの一部は、どちらかにおいて不溶性である。それらのポリプロピレンは、タクティシティー及び分子量に関して組成的に不均質であると記載されている。
【0006】
米国特許第5,504,172号では、プロピレンエラストマーであり、
(a)前記エラストマーが50乃至95モル%の量のプロピレン単位及び5乃至50モル%の量のエチレン単位を含有し、
(b)13C NMRにより測定したときに、頭−尾結合から成る3つのプロピレン単位鎖の三つ組(triad)タクティシティーが90.0%以上であり、及び
(c)13C NMRにより決定されるときに、すべてのプロピレン挿入において、プロピレンモノマーの2,1挿入に基く逆に挿入されたプロピレン単位の割合が0.5%以上であり、13C NMRにより決定されるときに、プロピレンモノマーの1,3挿入に基く逆に挿入されたプロピレン単位の割合が0.05%以下であるプロピレンエラストマーが提示されている。
【0007】
米国特許第5,391,629号では、エチレンのα−オレフィンとのブロック及びテーパー状コポリマーが提示されている。そのコポリマーは、活性化シクロペンタジエニル触媒系の存在下でエチレンをα−オレフィンと逐次的に接触させる方法により製造されている。
【0008】
欧州特許(EP)第0374695号では、エチレン−プロピレンコポリマー及びそれらを製造する方法が提示されている。そのコポリマーは、0.5乃至1.5の反応性比生成物r及び0%より大きいアイソタクチック指数を有する。そのコポリマーは、均質なキラル触媒及びアルモキサン助触媒の存在下で製造される。
【0009】
従って、融点、並びに弾性度、曲げ弾性率及び引張強さの優れたバランスを示すエチレンプロピレンコポリマーに対する需要がある。そのようなポリマーが、より高い重合温度において製造され得るなら、さらに望ましいであろう。
【0010】
α−オレフィン、特にプロピレンの立体規則重合に関する重合に温度が影響を与えることは知られている。同様な重合条件での、重合温度における上昇は、鎖に沿ったα−オレフィン残基のタクティシティーにおける損失と同様に分子量における減少をもたらす。この効果は、1−オレフィンのエチレン又は他のα−オレフィンとの共重合と同様に1−オレフィンの単独重合の両方に存する。ポリマーの特徴におけるそれらの変化は、ポリオレフィンのある最終用途に対して不利である。しかし、重合温度を上昇させることは重合反応器の処理量を改良するので、重合温度を上昇させることに商業的な奨励がなされる。このことは、タクティシティー及び分子量のようなポリマー生成物の物理的属性が、より低い温度において現在得られている性質に合うか又はそれを超えることができるなら、それらのポリマーの製造に対してより良好な経済をもたらす。
【発明の概要】
【0011】
本願発明者らは、単一の定常状態の反応器中で、メタロセン触媒及び活性剤の存在下で製造されるときに、エチレン−プロピレンコポリマーが、曲げ弾性率、引張強さ及び弾性度の驚くべき予測しないバランスを示すことを見出した。さらに、それらのコポリマーのそれらの及び他の性質は、アイソタクチックポリプロピレン及びエチレン−プロピレンコポリマーのブレンドのような従来のポリマーブレンドとは驚くべき違いを示す。
【0012】
1つの態様において、本コポリマーは、5重量%又は6重量%又は8重量%又は10重量%の下限から、20重量%又は25重量%の上限までの、エチレンから誘導された単位及び75重量%又は80重量%の下限から、95重量%又は94重量%又は92重量%又は90重量%の上限までの、プロピレンから誘導された単位(前記重量%はプロピレンから誘導された単位及びエチレンから誘導された単位の総重量に基く)を含有する。本コポリマーは、ジエンから誘導された単位が実質的に存在しない。
【0013】
種々の態様において、本コポリマーの特徴は、いずれかの記載された上限からいずれかの記載された下限の範囲が意図される、下記の特徴のいくつか又は全てを含む:
(i)110℃未満又は90℃未満又は80℃未満又は70℃未満の上限から25℃より高い又は35℃より高い又は40℃より高い又は45℃より高い下限までの範囲の融点、;
(ii)弾性度≦0.935M+12又は
弾性度≦0.935M+6又は
弾性度≦0.935M
[弾性度は%においてであり、Mはメガパスカル(MPa)における500%引張弾性率である]
のような、500%引張弾性率に対する弾性度の関係;
(iii)曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+30又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+10又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+2
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
のような、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係;
(iv)グラム当り1.0ジュール(J/g)より大きい、又は1.5J/gより大きい、又は4.0J/gより大きい、又は6.0J/gより大きい、又は7.0J/gより大きい下限から、125J/g未満の、又は100J/g未満の、又は75J/g未満の、又は60J/g未満の、又は50J/g未満の、又は40J/g未満の、又は30J/g未満の、上限までの範囲の融解熱;
(v)炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)により決定されるときに、75%より大きい、又は80%より大きい、又は85%より大きい、又は90%より大きい三つ組タクティシティー;
(vi)4又は6の下限から8又は10又は12の上限までのタクティシティー指数m/r;
(vii)13C NMRにより決定されるときに、すべてのプロピレン挿入におけるプロピレンモノマーの2,1挿入に基いて0.5%より大きい、又は0.6%より大きい、逆に挿入されたプロピレン単位の割合;
(viii)13C NMRにより決定されるときに、すべてのプロピレン挿入におけるプロピレンモノマーの1,3挿入に基いて0.05%より大きい、又は0.06%より大きい、又は0.07%より大きい、又は0.08%より大きい、又は0.085%より大きい、逆に挿入されたプロピレン単位の割合;
(ix)コポリマーの少なくともX重量%(Xは75又は80又は85又は90又は95又は97又は99)が、8℃のインクリメントにおける、ヘキサン中で行われる熱分別の2つの隣接する温度画分において可溶性であるような分子間タクティシティー;
(x)1.5未満の、又は1.3未満の、又は1.0未満の、又は0.8未満の、反応性比生成物r
(xi)1.5又は1.8の下限から、40又は20又は10又は5又は3の上限までの範囲の分子量分布Mw/Mn;
(xii)15,000−5,000,000の分子量;
(xiii)18ミリ秒(ms)未満の、又は16ms未満の、又は14ms未満の、又は12ms未満の、又は10ms未満の、固体状態プロトン核磁気共鳴(H NMR)緩和時間;
(xiv)30%未満の、又は20%未満の、又は10%未満の、又は8%未満の、又は5%未満の、本明細書で定義された弾性度;及び
(xv)0.5MPaより大きい、又は0.8MPaより大きい、又は1.0MPaより大きい、又は2.0MPaより大きい、500%引張弾性率。
【0014】
本コポリマーは、単一の定常状態の反応器において、架橋されたメタロセン触媒の存在下で製造され得る。従って、他の面において、本発明は、反応性条件下で、架橋されたメタロセン触媒の存在下で定常状態反応器においてエチレンとプロピレンを反応させることにより、上記のいくつか又はすべての特徴を有するエチレン−プロピレンコポリマーを製造する方法に関する。
【0015】
他の態様において、本発明は、以前の触媒と活性剤の組み合わせを用いて、より低い温度において行われた重合法と比較したときに、より高い温度における重合から同様な分子量及び結晶化度又はより高い分子量及び/又は結晶化度をもたらす特定の触媒及び活性剤の組み合わせを用いることにより、先に記載された半結晶質のエチレン−プロピレンコポリマーを製造する溶液重合法を含む。本態様は、先に記載されたポリマーを製造することができる単一部位のメタロセン触媒と組み合わされた嵩高の非配位活性剤の使用に関する。又、他の面において、本態様は又、重合中に重合反応器内に存在するモノマーの、より高い濃度を用いて操作することができる。本発明のそれらの2つの成分の組み合わせは、より高い分子量及びプロピレン残基のタクティシティーのより高い程度の両方を有するコポリマーをもたらす。このように、より小さいアニオンを用いて行われた重合と比較して、同様の分子量及びアイソタクチックプロピレン結晶質を有するコポリマーを製造しながら、それらの嵩高の活性剤系及びより高いモノマー濃度が、より高い温度におけるそれらのコポリマーの重合のために用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のそれらの及び他の特徴、面及び利点は、以上の記載、特許請求の範囲及び図面を参照することにより、より理解されるであろう。
【図1】図1は、ミリ秒における時間に対する結晶質結合性(H NMRによる)の自然対数のプロットであり、この記載において示されているT1ρは、ラインの勾配である。
【図2】図2は、MPaにおける500%引張弾性率に対するMPaにおける曲げ弾性率のプロットである。
【図3】図3は、MPaにおける500%引張弾性率に対する%における弾性度のプロットである。
【図4】図4は、本発明のコポリマー(三角形の印)のエチレン%、及びアイソタクチックポリプロピレンと本発明のコポリマーのブレンド(菱形の印)のエチレン%に対する、DSCにより決定される、℃における融点(Tm)のプロットである。
【図5】図5は、本発明の方法を用いて製造された試料と比較試料についての、エチレン含量及び重合温度の関数としてのJ/gでの融解熱のプロットである。
【図6】本発明のコポリマーと比較試料についての、重量%でのヘキサン溶媒中のプロピレン含量及び重合温度の関数としてのムーニー粘度(ML127℃)のプロットである。
【0017】
説明
多量のプロピレン及び少量のエチレンから構成される熱可塑性ポリマー組成物が企図される。それらのポリマー組成物には、線状の単一の均質な高分子コポリマー構造が含まれる。それらのポリマーは、隣接のアイソタクチックプロピレン単位による制限された結晶化度を有し、下記のような融点を有する。それらは、一般的に、タクティシティー及びコモノマー組成における実質的な分子間不均質性が全くなく、実質的にジエンを含有しない。それらは、又、分子内組成分布における実質的な不均質性が全くない。又、それらの熱可塑性ポリマー組成物は、予測しないことに軟質で弾性である。
【0018】
コポリマー
コポリマーにおけるモノマー
本発明の態様によって、コポリマーは、5重量%又は6重量%又は8重量%又は10重量%の下限から、20重量%又は25重量%の上限までの、エチレンから誘導された単位を含有する。それらの態様は、又、75重量%又は80重量%の下限から、95重量%又は94重量%又は92重量%又は90重量%の上限までの範囲における、コポリマー中に存在するプロピレンから誘導された単位を含有する。重量によるパーセンテージは、プロピレンから誘導された単位とエチレンから誘導された単位の総重量に基いて、すなわち、100%である、重量%のプロピレンから誘導された単位と重量%のエチレンから誘導された単位の合計に基いて、いる。それらの範囲内で、それらのコポリマーは、実質的な引張強さ及び弾性度をなお維持しながら、示差走査熱量法(DSC)により測定されたときに、ゆるやかに結晶質であり、非常に軟質である。後に詳細に定義される弾性度は、それらのコポリマーについての伸びからの寸法回復である。コポリマーについての上記限度より低いエチレン組成において、そのようなポリマーは、結晶質のアイソタクチックポリプロピレンと同様な、一般的に結晶質であり、優れた引張強さを有するが、有利な軟度及び弾性度を有しない。コポリマー成分についの上記の限定よりも高いエチレン組成においては、そのコポリマーは、実質的に非晶質である。より高いエチレン組成のそのような物質は、軟質であり得るが、それらの組成物は、引張強さにおいて弱く、弾性度において乏しい。概略すると、本発明の態様のそのようなコポリマーは、加硫されずに、加硫されたゴムの軟性度、引張強さ及び弾性度特徴を示す。
【0019】
本発明の態様において、本願発明者らは、本コポリマーに、実質的にジエンから誘導された単位が存在しないことを意図している。ジエン類は、化学的架橋反応を容易にするためにポリマー中に組み込まれ得る非共役ジオレフィン類である。「実質的にジエンが存在しない」とは、1%未満のジエン、0.5%未満のジエン、0.1%未満のジエン又は0.05%未満のジエン又は0%のジエンであることと定義される。それらのパーセンテージのすべては、コポリマーにおける重量による。ジエンの存在又は不存在は、当業者によく知られている赤外技術により従来から決定され得る。
【0020】
ジエンの供給源には、エチレン及びプロピレンの重合に添加されるジエンモノマー又は触媒におけるジエンの使用が含まれる。そのようなジエンの供給源が何であっても、コポリマー中のそれらの含有における先に概説された限度が意図される。オレフィンのコポリマーの生成のために共役ジエン含有メタロセン触媒が提示されてきた。しかし、そのような触媒により製造されたポリマーは、重合における他のモノマーの組み込みと一致する、触媒からのジエンを組み込む。
【0021】
分子量及び多分散性指数
分子量分布(MWD)は、所定のポリマー試料内の分子量の範囲の尺度である。MWDの幅は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比、Mw/Mn、又は重量平均分子量に対するZ平均分子量の比、Mz/Mwのような種々の分子量平均の比により特徴付けられる。
【0022】
Mz、Mw及びMnは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られるゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定され得る。その技術は、異なるサイズのポリマー分子を分離するために、多孔質ビーズが充填されたカラム、溶離溶媒、及び検出器を有する器具を用いる。典型的な測定において、用いられるGPC器具は、145℃において操作されるウルトラスチロゲルカラムを装備したWatersクロマトグラフである。用いられる溶離溶媒はトリクロロベンゼンである。カラムは、詳細に知られた分子量の16のポリスチレン標準物質を用いて較正される。試験されたポリマーの保持容量に対する、標準物質から得られるポリスチレン保持容量の相互関係により、ポリマー分子量が与えられる。
【0023】
平均分子量Mは、式、
【数1】

(式中、Nは、分子量Mを有する分子の数である。)
から計算される。n=0の場合、Mは数平均分子量Mnである。n=1の場合、Mは重量平均分子量Mwである。n=2の場合、MはZ平均分子量Mzである。望ましいMWD関数(例えば、Mw/Mn又はMz/Mw)は、相当するM値の比である。M及びMWDの測定は、本技術分野でよく知られており、例えば、Slade,P.E.編のPolymer Molecular Weights Part II、Marcel Dekker, Inc.、ニューヨーク(1975年)、287−368頁;Rodriguez, F.によるPrinciples of Polymer Systems、3版、Hemisphere Pub. Corp.ニューヨーク(1989年)、155−160頁;米国特許第4,540,753号;VerstrateらによるMacromolecules、21巻(1988年)、3360頁及びそれらに引用された文献により詳細に記載されている。
【0024】
本発明の態様において、15,000乃至5,000,000又は20,000乃至1,000,000の重量平均分子量(Mw)及び1.5又は1.8の下限から、40又は20又は10又は5又は3の上限までの範囲を有する分子量分布Mw/Mn[ときには「多分散性指数」(PDI)という]を有するコポリマーが含まれる。
【0025】
本発明の態様のポリマーに帰する性質の測定において、ブレンドを形成するための第二の又は第三の、1つの又は複数のポリマーの実質的な不存在がある。「実質的な不存在」とは、10重量%未満又は5重量%未満又は2.5重量%未満又は1重量%未満又は0重量%を意味する。
【0026】
他の態様において、本発明のコポリマーは、下記の式、
Mw>6.10(3370/T)
(式中、Mw=重量平均分子量、
T=ケルビン度での重合反応温度、
P=リットル当りモルでの、重合反応域における定常状態プロピレン濃度)
の適用により計算されることができる重量平均分子量を有する。
【0027】
融点及び結晶化度
本発明の態様によるコポリマーは、単一の融点を有する。本コポリマーは、110℃より低い、又は90℃より低い、又は80℃より低い又は70℃より低い上限から、25℃より高い、又は35℃より高い、又は40℃より高い、又は45℃より高い下限までの範囲の、示差走査熱量法(DSC)による融点(Tm)を有する、エチレンとプロピレンのランダムコポリマーであることができる。図4は、エチレン重量%、すなわち、エチレンから誘導された単位の重量%の関数としての本発明のプロピレン−エチレンコポリマーの融点を示す(三角形の印)。比較のために、図4における菱形の印は、重量%エチレンの関数としての、アイソタクチックポリプロピレンと本発明のコポリマーのブレンドの融点を示す。図4は、本発明のコポリマーは、同じ重量%のエチレンを有するプロピレン−エチレンコポリマー/アイソタクチックポリプロピレンブレンドよりも低い融点を有することを明らかに示している。
【0028】
本発明の態様には、1.0J/gより大きい、又は1.5J/gより大きい、又は4.0J/gより大きい、又は6.0J/gより大きい、又は7.0J/gより大きい下限から、125J/g未満、又は100J/g未満、又は75J/g未満、又は60J/g未満、又は50J/g未満、又は40J/g未満、又は30J/g未満までの範囲の、DSCにより決定される融解熱を有するコポリマーが含まれる。理論により縛られることを望まないが、本発明の態様のコポリマーは、一般的にアイソタクチックの結晶可能なプロピレン配列を有し、上記の融解熱は、それらの結晶質セグメントの融解によるものであると考えられる。
【0029】
他の態様において、本発明のコポリマーは、下記の式、
Hf>311(E−18.5)/T
(式中、Hf=下記のように測定された融解熱、
E=下記のように測定された、コポリマーのエチレン含量(エチレンから誘導された単位を意味する)
T=ケルビン度での重合反応温度)
の適用により計算されることができる融解熱を有する。
【0030】
タクティシティー指数
本明細書において「m/r」として表わされるタクティシティー指数は、13C核磁気共鳴(NMR)により決定される。タクティシティー指数m/rは、H.N.Cheng、Macromolecules、17巻、1950頁(1984年)に定義されているように計算される。「m」又は「r」の表示は、一対の隣接するプロピレン基の立体化学、メソを表わす「m」及びラセミを表わす「r」を記載する。1.0のm/r比は、一般的にシンジオタクチックポリマーを記載し、2.0のm/r比は、アタクチック物質を記載する。アイソタクチック物質は、理論的に無限大にほぼ等しい比を有し、多くの副生物のアタクチックポリマーは、50より大きい比をもたらすのに十分なアイソタクチック含量を有する。本発明の態様のコポリマーは、4又は6の下限から8又は10又は12の上限までの範囲のタクティシティー指数m/rを有し得る。
【0031】
三つ組(triad)タクティシティー
本発明の態様のプロピレン単位のタクティシティーの記載についての補助操作は、三つ組タクティシティーの使用である。ポリマーの三つ組タクティシティーは、m及びr序列の二つの組み合わせとして表わされる、3つの隣接するプロピレン単位の序列、頭−尾結合から成る鎖の相対的なタクティシティーである。それは、本発明のコポリマーについて、通常、コポリマーにおけるプロピレン三つ組のすべてに対する特定のタクティシティーの単位の数の比として表わされる。
【0032】
プロピレンコポリマーの三つ組タクティシティー(mm画分)は、プロピレンコポリマー
13C NMRスペクトルにより、又、下記の式、
【数2】

[式中、PPP(mm)、PPP(mr)及びPPP(rr)は、頭−尾結合から成る下記の3つのプロピレン単位鎖における二番目の単位のメチル基から由来するピーク面積を表わす。]
により決定され得る。
【0033】
【化1】

【0034】
プロピレンコポリマーの13C NMRスペクトルは、米国特許第5,504,172号に記載されているように測定される。メチル炭素領域[1,000,000当り19−23部(ppm)]に関するスペクトルは、第一領域(21.2−21.9ppm)、第二領域(20.3−21.0ppm)及び第三領域(19.5−20.3ppm)に分けられ得る。そのスペクトルにおける各ピークは、雑誌Polymer、30巻(1989年)、1350頁における論文を参照して与えられた。
【0035】
第一領域において、PPP(mm)により表わされる3つのプロピレン単位鎖における二番目の単位のメチル基は共鳴する。
【0036】
第二領域において、PPP(mr)により表わされる3つのプロピレン単位鎖における二番目の単位のメチル基は共鳴し、その隣接の単位がプロピレン単位とエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(PPE−メチル基)は共鳴する(20.7ppmの付近に)。
【0037】
第三領域において、PPP(rr)により表わされる3つのプロピレン単位鎖における二番目の単位のメチル基は共鳴し、その隣接の単位がエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(EPE−メチル基)は共鳴する(19.8ppmの付近に)。
【0038】
三つ組タクティシティーの計算及びプロピレン挿入における誤差
三つ組タクティシティーの計算は、米国特許第5,504,172号に示されている技術において略述される。第二領域と第三領域の総ピーク面積からのピーク面積からプロピレン挿入(2,1及び1,3の両方)における誤差についてのピーク面積の引き算により、頭−尾結合から成る3つのプロピレン単位鎖[PPP(mr)及びPPP(rr)]に基くピーク面積が得られる。従って、PPP(mm)、PPP(mr)及びPPP(rr)のピーク面積が評価され得て、従って、頭−尾結合から成るプロピレン単位鎖の三つ組タクティシティーが決定されることができる。
【0039】
本発明の態様のプロピレンコポリマーは、13C NMRにより測定されるときに、75%より多い、又は80%より多い、又は82%より多い、又は85%より多い、又は90%より多い3つのプロピレン単位の三つ組タクティシティーを有する。
【0040】
プロピレンの挿入:2,1挿入及び1,3挿入における立体誤差及び位置誤差
プロピレンの挿入は、2,1挿入(尾−尾)又は1,3挿入(末端−末端)により少程度生じ得る。2,1挿入の例は、下記の構造1及び2において示される。
【0041】
構造(1):
【化2】

【0042】
構造(2):
【化3】

(式中、nは2以上である。)
炭素Aのピーク及び炭素A’のピークは、第二の領域に現れる。先に記載したように、炭素Bのピーク及び炭素B’のピークは、第三の領域に現れる。第一の乃至第三の領域に現れるピークのうち、頭−尾結合から成る3つのプロピレン単位鎖に基かないピークは、PPE−メチル基、EPE−メチル基、炭素A、炭素A’、炭素B及び炭素B’に基くピークである。
【0043】
PPE−メチル基に基くピーク面積は、PPE−メチン基(30.8ppmの付近における共鳴)のピーク面積により評価され得て、EPE−メチル基に基くピーク面積は、EPE−メチン基(33.1ppmの付近における共鳴)のピーク面積により評価され得る。炭素Aに基くピーク面積は、炭素Bのメチル基が直接結合するメチン炭素(33.9ppmの付近における共鳴)のピーク面積の2倍により評価され得て、炭素A’に基くピーク面積は、炭素B’のメチル基の隣接するメチン炭素(33.6ppmの付近における共鳴)のピーク面積により評価され得る。炭素Bに基くピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.9ppmの付近における共鳴)のピーク面積により評価され得て、炭素B’に基くピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.6ppmの付近における共鳴)により評価され得る。
【0044】
これらのピーク面積を第二の領域及び第三の領域の総ピーク面積から引くことにより、頭−尾結合から成る3つのプロピレン単位鎖[PPP(mr)及びPPP(rr)]に基くピーク面積が得られる。このように、PPP(mm)、PPP(mr)及びPPP(rr)のピーク面積が評価され得て、頭−尾結合から成るプロピレン単位鎖の三つ組タクティシティーが決定され得る。
【0045】
プロピレンエラストマーにおけるプロピレン挿入のすべてに対する2,1−挿入の割合は、雑誌、Polymer、30巻(1989年)、1350頁における論文における下記の式、
2,1−挿入に基く逆に挿入された単位の割合(%)=
【数3】

により計算された。
【0046】
上記式におけるピークの名称付けは、Carmanらによる、雑誌、Rubber Chemistry and Technology、44巻(1971年)、781頁における方法によりなされ、Iαδは、αδ第二炭素ピークのピーク面積を示す。ピークがオーバーラップするために、Iαδ[構造(ii)]からIαδ[構造(i)]のピーク面積を分離することは困難である。その代わりに、相当する面積を有する炭素ピークは、置換され得る。
【0047】
1,3−挿入の測定には、βγピークの測定が必要である。2つの構造は、βγピークに寄与する:(1)プロピレンモノマーの1,3挿入及び(2)プロピレンモノマーの、続いての2つのエチレンモノマーの2,1−挿入から。このピークは、1,3−挿入ピークとして記載されており、このβγピークを記載する米国特許第5,504,172号に記載された操作が用られ、それが4つのメチレン単位の配列を表わすと理解される。これらの誤差の量の割合(%)は、βγピーク(27.4ppmの付近における共鳴)の面積を、すべてのメチル基ピークと、βγピークの面積の1/2の合計により割り、次に、得た値に100を掛けることにより決定された。3つ以上の炭素原子のα−オレフィンが、オレフィン重合触媒を用いて重合される場合、いくつかの逆に挿入されたモノマー単位が、得られるオレフィンポリマーの分子中に存在する。キラルメタロセン触媒の存在下で3つ以上の炭素原子のα−オレフィンの重合により製造されるポリオレフィンにおいて、2,1−挿入又は1,3−挿入が、通常の1,2−挿入の他に生じ、オレフィンポリマー分子中に、2,1−挿入又は1,3−挿入のような逆に挿入された単位が生成される[K.Soga、T.Shiono、S.Takemura及びW.KaminskiによるMacromolecular Chemistry Rapid Communication、8巻、305頁(1987頁)を参照]。
【0048】
すべてのプロピレン挿入におけるプロピレンモノマーの2,1−挿入に基く本発明の態様の逆に挿入されたプロピレン単位の割合は、13C NMRにより測定されたときに、0.5%より多く、又は0.6%より多い。プロピレンモノマーの1,3−挿入に基く、本発明の態様の逆に挿入されたプロピレン単位の割合は、13C NMRにより測定されたときに、0.05%より多く、又は0.06%より多く、又は0.07%より多く、又は0.08%より多く、又は0.085より大きい。
【0049】
分子構造
均質分布
均質分布は、コポリマーの組成の分子間の差及び重合されたプロピレンのタクティシティーの分子間の差の両方が統計的にほとんどないことと定義される。コポリマーにとって均質分布を有することは、2つの独立した試験:(i)タクティシティーの分子間分布及び(ii)組成の分子間分布(それらは後に記載される)、の要件に合致しなくてはならない。それらの試験は、重合されたプロピレンのタクティシティー及びコポリマーの組成の各々の統計的にほとんどない分子間差の尺度である。
【0050】
タクティシティーの分子間分布
本発明の態様のコポリマーは、異なる鎖間(分子間で)の重合されたプロピレンのタクティシティーの分子間の差が統計的にほとんどない。このことは、一般的には単一の溶媒中での、一連のゆっくりと上昇させる温度における制御された溶解による熱分別により決定される。典型的な溶媒は、ヘキサン又はヘプタンのような飽和された炭化水素である。Macromolecules、26巻、2064頁(1993年)における論文に示されているように、それらの制御された溶解操作は、アイソタクチックプロピレン配列における差により、異なる結晶化度の、類似のポリマーを分離するために用いられる。プロピレン単位のタクティシティーが結晶化度の程度を決める本発明の態様のコポリマーについて、この分別操作は、組み込まれたプロピレンのタクティシティーにより分子を分離することが予測された。この操作を後に記載する。
【0051】
本発明の態様において、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも99重量%のコポリマーが、単一の温度画分において、又は2つの隣接する温度画分において可溶性であり、残りのコポリマーは、すぐ前の又はすぐ後の温度画分において可溶性である。それらのパーセンテージは、例えば、ヘキサン中、23℃で開始される画分であり、次の画分は、23℃より約8℃高いインクリメントである。そのような分別要件に合致するとは、ポリマーが、重合されたプロピレンのタクティシティーのわずかな統計的な分子間の差しか有しないことを意味する。
【0052】
分別のために、沸騰ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びジエチルエーテルさえも用いられる分別が行われた。そのような沸騰溶媒分別において、本発明の態様のポリマーは、各々の溶媒において全体的に可溶性であり、分析用情報を与えない。この理由のために、先に記載したそして本明細書中に詳細に記載される分別を行うことを選び、本発明のポリマーをより完全に記載するためにそれらの伝統的な分別内での点、及び重合されたプロピレンのタクティシティーの予測しない、ほとんどない分子間差を見出した。
【0053】
組成の分子間分布
本発明の態様のコポリマーは、異なる鎖間(分子間で)のエチレンに対するプロピレンの比である組成の分子間の差が統計的にほとんどない。この組成の分析は、先に記載した制御された熱溶解操作により得られるポリマーの画分の赤外分析法による。
【0054】
組成の統計的にほとんどない分子間差の尺度とは、それらの画分の各々が、全体のコポリマーの平均重量%エチレン含量の1.5重量%未満(絶対)、又は1.0重量%未満(絶対)、又は0.8重量%未満(絶対)の差しか有しない組成(重量%エチレン含量)を有することである。そのような分別要件に合致するとは、ポリマーが、エチレンに対するプロピレンの比である組成の統計的にわずかな分子間の差しか有しないことを意味する。
【0055】
均一性
均一性とは、コポリマーの組成及び重合されたプロピレンのタクティシティーの両方の統計的にほとんどない分子内差であると定義される。コポリマーが均一であるためには、2つの独立した試験:(i)タクティシティーの分子内分布及び(ii)組成の分子内分布(それらは後に記載される)、の要件に合致しなくてはならない。それらの試験は、重合されたプロピレンのタクティシティー及びコポリマーの組成の各々の統計的にほとんどない分子内の差の尺度である。
【0056】
組成の分子内分布
本発明の態様のコポリマーは、同じ鎖(分子内)のセグメントに沿った、エチレンに対するプロピレンの比である、組成の分子内の差が統計的にほとんどない。この組成の分析は、15,000−5,000,000又は20,000−1,000,000の範囲の分子量については、それらのコポリマーの合成のために用いられる方法、及びコポリマーの配列分布分析の結果から推断される。
【0057】
方法
重合法は、よく混合された連続的供給重合反応器において行われる単一の段階の定常状態の重合である。本重合は、単一段階重合及び連続的供給反応器の要件を満たす、気相重合又はスラリー重合のような他の重合操作も企図されるが、溶液中で行われ得る。
【0058】
本方法は、その定常状態操作において、単位時間当り反応容器から取り出されるポリマーの量に実質的に等しい単位時間当りに製造されるポリマーの量の除去により例示される、連続式であり、回分式でない方法として記載され得る。「実質的に等しい」ことにより、単位時間当り製造されるポリマーの量及び単位時間当りポリマー取り出されるポリマーの量が、0.9:1、又は0.95:1、又は0.97:1、又は1:1の一方対他方の比であることを意図する。そのような反応器において、実質的に均質なモノマー分布が存在する。同時に、複数段階又は複数の反応器(2つ以上)とは異なり、重合は、実質的に単一の工程又は段階において、又は単一の反応器において行われる。それらの条件は、重合が製造される実質的にすべての時間の間、存在する。
【0059】
モノマー配列分布
エチレン−プロピレンコポリマーの分子特徴を記載するための1つの方法は、モノマー配列分布である。公知の平均組成を有するポリマーから開始して、モノマー配列分布は、分光分析を用いて決定され得る。炭素13核磁気共鳴分光法(13C NMR)が、この目的のために用いられ、スペクトルピークの統合により二つ組及び三つ組分布を確立するために用いられ得る。(13C NMRが、この分析のために用いられない場合、実質的により低いr生成物が通常得られる。)その反応性比の生成物は、F.W.Billmeyer,Jr.によるTextbook of Polymer Chemistry、Interscience Publishers、ニューヨーク、221頁以降(1957年)においてより完全に記載されている。
【0060】
がエチレンの反応性であり、rがプロピレンの反応性である反応性比生成物rは、下記の式:
=4(EE)(PP)/(EP)
=K11/K12=[2(EE)(EP)]X
=K22/K21=[2(PP)(EP)]X
P=(PP)+(EP/2)
E=(EE)+(EP/2)
(式中、モル%E=[(E)/(E+P)]100、X=反応器におけるE/P、K11及びK12は、エチレンについての動挿入定数であり、K21及びK22は、プロピレンについての動挿入定数である。)
の適用により測定された二つ組分布(この命名法にいて、PP、EE、EP及びPE)から計算され得る。
【0061】
当業者に公知であるように、0の反応性比生成物rは、「交互」共重合体を定義し得て、1の反応性比生成物は、「統計的なランダムな」共重合体を定義するといわれている。換言すると、0.6乃至1.5の反応性比生成物rを有するコポリマーは、一般的に、ランダムであるといわれる(厳格な理論的用語において、一般的に、1.5より大きい反応性比生成物rを有するコポリマーのみが、比較的長いホモポリマー配列を有し、「ブロック状」であるといわれる)。本発明のコポリマーは、1.5未満の、又は1.3未満の、又は1.0未満の、又は0.8未満の反応性比生成物rを有する。本発明の態様のポリマー鎖内のコモノマーの実質的に均一な分布は、一般的に、本明細書に開示された分子量(重量平均)のためのポリマー鎖内のかなりの量のプロピレン単位又は配列の可能性を排除する。
【0062】
タクティシティーの分子内分布
本発明の態様のコポリマーは、同じ鎖(分子内で)のセグメントに沿ったプロピレン単位のアイソタクチック配向により、タクティシティーの分子内差が統計的にほとんどない。この組成分析は、示差走査熱量法、電子鏡検法及び緩和測定(T1ρ)の詳細な分析から推論される。タクティシティーにおけるかなりの分子内差の存在において、「互いに」隣接しているアイソタクチックプロピレン残基の数が、統計的値より、ずっと大きい「立体的ブロック」構造が形成される。さらに、よりブロック性のポリマーは、より高い融点及び室温溶媒中での低下した溶解性を有するはずなので、それらのポリマーの融点は、結晶化度に依存する。
【0063】
1ρ:固体状態H NMR T1ρ緩和時間
固体状態プロトンNMR緩和時間(H NMR T1ρ)の原理及びそのポリマー形態学との関係は、Macromolecules 32(1999年)、1611頁に記載されている。本発明の態様及びポリプロピレン(PP)ホモポリマー(対照試料)の実験のT1ρ緩和データーが図1に示されており、図1では、時間に対する結晶質強さの自然logをプロットしており、それらのデーターを集めるための実験的操作を後に示す。そのデーターを単一の指数関数に適合させるために、線形回帰を、tデーターに対するIn(I)(Iは結晶質シグナルの強さである)において行った。適合の質、R、を計算する。完全な線状相互関係についてのRは1.0である。ポリプロピレン(対照)及び本発明のコポリマー(図1に示された)についてのRは、それぞれ0.9945及び0.9967である。従って、ポリプロピレンホモポリマー及び本発明のコポリマーの両方についてのT1ρ緩和は単一指数関数により良好に適合され得る。その適合から、ポリプロピレンホモポリマー試料及び本発明のコポリマーについてのT1ρは、それぞれ25ミリ秒(ms)及び8.7msと計算される。T1ρにおける大きな差は、形態学におけるそれらの差を反映する。
【0064】
仮定的ポリプロピレン様領域は、ポリプロピレンホモポリマーにおけるT1ρ緩和と同様のT1ρ緩和を有する。結果として、本発明の態様において、そのような領域が存在する場合、T1ρ緩和は、ポリプロピレンホモポリマーのT1ρ緩和時間特徴を有する成分を含有する(すなわち、T1ρ=25ms)。図1においてわかるように、本発明のT1ρ緩和のみが、単一指数関数により、よく適合され得る。T1ρが25msである成分の組み込みは、その適合を低下させる。このことは、本発明のポリマーが、長い連続的なアイソタクチックプロピレン単位を含有しないことを示している。本発明の態様において、T1ρ、緩和時間は、18ms未満、又は16ms未満、又は14ms未満、又は12ms未満、又は10ms未満であることができる。
【0065】
1ρ測定
本実験は、500.13MHzのH周波数及び125.75MHzの13C周波数でのBruker DSX−500核磁気共鳴(NMR)分光計で行う。パルス序列は、90°(H)パルス、続いてスピンロック及び交差分極(“CP”、時間=0.1ms)であった。γB=2π60kHzのスピンロック場の強さを用いる。スピンロックの後に、磁化が、CPにより13Cに移され、次にシグナルが検知される。26.7ppmにおける結晶質メチンシグナルを記録し、正規化し、図1において、その自然対数(Ln)をスピンロック時間に対してプロットする。ポリプロピレンホモポリマー試料において、及び「試料4」と標識を付けた、後の実施例において記載されている本発明のポリマーにおいて測定を行った。表1はそのデーターを表わす。
【0066】
【表1】

【0067】
コポリマー製造のための触媒及び活性剤
触媒
典型的なアイソタクチック重合法は、ビス(シクロペンタジエニル)金属化合物及び(1)非配位適合性アニオン活性剤又は(2)アルモキサン活性剤を含有する触媒の存在下での重合から成る。本発明の1つの態様によると、本方法は、エチレンとプロピレンを、適する重合稀釈剤中で触媒と接触させる工程を含み、その触媒は、1つの態様では、キラルメタロセン化合物、例えば、米国特許第5,198,401号に記載されたようなビス(シクロペンタジエニル)金属化合物、及び活性剤を含有する。米国特許第5,391,629号にも、本発明のコポリマーを製造するのに有用な触媒が記載されている。
【0068】
本発明の態様のコポリマーを製造するのに有用な以下に説明する触媒系は、非配位アニオン(NCA)活性剤と、任意に掃去化合物とともに、メタロセンである。重合は溶液、スラリー又は気相において行われる。重合は単一反応器法で行われ得る。スラリー又は溶液重合法は、減圧または過圧と、−25℃〜110℃の範囲における温度を用いることができる。スラリー重合では、固体の粒状ポリマーの懸濁液が液体重合媒体中に形成され、そこへエチレン、プロピレン、水素及び触媒が添加される。溶液重合では、液体媒体がポリマーのための溶媒の役割を果たす。重合媒体として用いられる液体は、ブタン、ペンタン、ヘキサンもしくはシクロヘキサンのようなアルカンもしくはシクロアルカン、又はトルエン、エチルベンゼンもしくはキシレンのような芳香族炭化水素であることができる。スラリー重合でも液体モノマーを使用することができる。使用する媒体は重合条件下では液体であり、比較的不活性でなければならない。溶液重合ではヘキサン又はトルエンが用いられ得る。気相重合法は、例えば、米国特許第4,543,399号、第4,588,790号及び第5,028,670号に記載されている。ポリマー支持体又は無機酸化物、例えばシリカ、アルミナ又はその両方のような適する粒状物質又は多孔質担体上に触媒を担持することができる。メタロセン触媒を担持する方法は米国特許第4,808,561号、第4,897,455号、第4,937,301号、第4,937,217号、第4,912,075号、第5,008,228号、第5,086,025号、第5,147,949号および第5,238,892号に記載されている。
【0069】
プロピレンとエチレンは、本発明の態様のコポリマーを製造するのに用いられ得るモノマーであるが、任意に、そのようなポリマーにおいて、エチレンを、例えば、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン又は1−オクテンのようなC4乃至C20のα−オレフィンと入れ替えたり、それらのα−オレフィンに添加することができる。
【0070】
メタロセン
「メタロセン」及び「メタロセン触媒前駆体」という用語は、本技術分野において、置換され得る1つ又は複数のシクロペンタジエニル(Cp)配位子、少なくとも1つの非シクロペンタジエニル由来の配位子X、及び0又は1つのヘテロ原子含有配位子Yとともに4、5、又は6族遷移金属Mを有する化合物を意味することが知られている用語であって、配位子はMに配位し、数においてMの原子価数に相当する。メタロセン触媒前駆体は、活性メタロセン触媒、すなわち、オレフィンを配位し、挿入し、重合することができる、空の配位部位を有する有機金属錯体を生成するために、一般的には、適する助触媒(ときには活性剤とも呼ばれる)による活性化を必要とする。
【0071】
好ましいメタロセンは、配位子として2個のCp環系を有するシクロペンタジエニル(Cp)錯体である。Cp配位子が金属とともに曲がったサンドイッチ錯体を形成し、架橋基で硬い形状に固定されていることが好ましい。これらのシクロペンタジエニル錯体は以下の一般式:
(Cp)R(Cp)MX
(式中、Cp及びCpは同じであることが好ましく、R及びRのそれぞれは独立してハロゲン又は20までの炭素原子を含むヒドロカルビル、ハロカルビル、ヒドロカルビル置換有機メタロイド又はハロカルビル置換有機メタロイド基であり、mは好ましくは1乃至5であり、pは好ましくは1乃至5であり、それらと会合したシクロペンタジエニル環の隣り合った炭素原子上の2つのR及び/又はR置換基は結合して4乃至20の炭素原子を含む環を形成することが好ましく、Rは架橋基であり、nは2個の配位子間の直接の鎖における原子の数であって、好ましくは1乃至8、最も好ましくは1乃至3であり、Mは、3乃至6の原子価を有する、好ましくは元素周期表で4、5又は6族からの遷移金属であり、好ましくは最高の酸化状態にあり、各Xは非シクロペンタジエニル配位子であり、独立して、20炭素原子までを含むヒドロカルビル、オキシヒドロカルビル、ハロカルビル、ヒドロカルビル置換有機メタロイド、オキシヒドロカルビル置換有機メタロイド、又はハロカルビル置換有機メタロイド基であり、qはMの原子価マイナス2に等しい)を有する。
【0072】
本発明の上記ビスシクロペンタジエニルメタロセンの様々な例は、米国特許第 5,324,800号、第5,198,401号、第5,278,119号、第5,387,568号、第5,120,867号、第5,017,714号、第4,871,705号、第4,542,199号、第4,752,597号、第5,132,262号、第5,391,629号、第5,243,001号、第5,278,264号、第5,296,434号及び第5,304,614号に開示されている。
【0073】
上記のタイプの好ましいビスシクロペンタジエニルメタロセンの例示のしかし非限定的な例は、:
μ-(CH)Si(インデニル)M(Cl)
μ-(CH)Si(インデニル)M(CH)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)MCl
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)M(CH)
μ-(CH)Si(インデニル)M(CHCH)2及び
μ-(C)C(インデニル)M(CH)
(式中、MはZr、Hf又はTiである)。
【0074】
のラセミ異性体である。
【0075】
非配位アニオン
先に記載したように、メタロセン又は前駆体は非配位アニオンで活性化される。「非配位アニオン」という用語は、前記遷移金属カチオンに配位しないか、又は前記遷移金属カチオンに弱くしか配位せず、そのために中性ルイス塩基で置換され得るのに十分に不安定なままであるアニオンを意味する。「適合性」非配位アニオンとは、最初に生成した錯体が分解した場合、中性まで分解されないものをいう。さらに、そのアニオンは、中性の4配位メタロセン化合物、及びアニオンからの中性副生成物を形成するように、アニオン性置換基又は断片をカチオンに移動しない。本発明により有用な非配位アニオンは適合性であり、メタロセンカチオンのイオン電荷を釣り合わせるという意味でメタロセンカチオンを安定化するが、十分な不安定さを維持し、重合中にエチレン性又はアセチレン性不飽和モノマーによって置換され得る。さらに、本発明において有用なアニオンは十分な分子サイズという意味で大きく又は嵩高であり得て、重合プロセスにおいて存在し得る重合性モノマー以外のルイス塩基によってメタロセンカチオンが中和されることを大きく阻害するか阻止する。典型的にはアニオンは4オングストローム以上の分子サイズを有する。
【0076】
非配位アニオンで活性化されるメタロセンカチオンを含む配位重合用イオン性触媒の記載は欧州特許出願公開第0 277 003号、欧州特許出願公開第0 277 004号、米国特許第5,198,401号及び第5,278,119号、並びにPCT出願公開WO92/00333における初期の文献に見られる。これらの文献には、メタロセン(ビスCp及びモノCp)がアニオン性前駆体でプロトン化され、アルキル/ヒドリド基が遷移金属から引き抜かれ、非配位アニオンによってカチオン性で電荷が釣り合う様になる、製造方法が提示されている。活性プロトンを含まないが、活性メタロセンカチオンと非配位アニオンの両方を生成し得るイオン化イオン性化合物の使用も知られている。欧州特許出願公開第0 426 637号、欧州特許出願公開第0 573 403号及び米国特許第5,387,568号を参照。メタロセン化合物をイオン化し得る、ブレンステッド酸以外の反応性カチオンには、フェロセニウム、トリフェニルカルボニウム及びトリエチルシリリウムカチオンが含まれる。水(又は他のブレンステッド酸又はルイス酸)による分解に耐性のある配位錯体を形成し得るいずれかの金属又はメタロイドも用いられ得るか、又は第2の活性剤化合物のアニオン中に含有させることができる。適する金属には、アルミニウム、金、プラチナ等が含まれるが、それらに限定されない。適するメタロイドには、硼素、燐、珪素等が含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
イオン性触媒を製造する別の方法では、最初は中性ルイス酸であるが、メタロセン化合物とのイオン化反応時にカチオン及びアニオンを生成するイオン化アニオン性前駆体が用いられる。例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素は、アルキル、ヒドリド又はシリル配位子を引き抜き、メタロセンカチオン及び安定化非配位アニオンを生成する。欧州特許出願公開第0 427 697号及び欧州特許出願公開第0 520 732号を参照。付加重合用イオン性触媒は又、アニオン基とともに金属酸化基を含有するアニオン性前駆体による遷移金属化合物の金属中心の酸化によっても製造され得る。欧州特許出願公開第0 495 375を参照。
【0078】
例示のためであり、それらに限定されない、本発明のメタロセン化合物をイオン性カチオン化し、続いて、得られた非配位アニオンにより安定化し得る適する活性化剤の例には、
トリエチルアンモニウムテトラフェニルボーレート、
トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボーレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボーレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボーレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボーレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トリプロピルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボーレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(m,m-ジメチルフェニル)ボーレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(p−トリフルオロメチルフェニル)ボーレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボーレート
等のようなトリアルキル置換アンモニウム塩;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、=A1
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボーレート、=A2
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロ-4-ビフェニル)ボーレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボーレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボーレート、
N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボーレート
等のようなN,N−ジアルキルアニリニウム塩;
ジ-(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボーレート
等のようなジアルキルアンモニウム塩;及び
トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボーレート、
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボーレート、
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボーレート
等のようなトリアリールホスホニウム塩。
【0079】
適するアニオン性前駆体の別な例には、安定なカルボニウムイオン、及び適合性非配位アニオンを含む化合物が含まれる。それらには
トロピリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トロピリウムフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トリフェニルメチリウムフェニル(トリスペンタフルオロフェニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート、
トロピリリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボーレート、
トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボーレート、
トロピリウムテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボーレート、
トロピリウムテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミネート、
トリフェニルメチリウムテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミネート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミネート、
トロピリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボーレート、
トリフェニルメチリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボーレート、
トロピリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボーレート、
トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボーレート、
ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボーレート
等が含まれる。
【0080】
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレートの助触媒とともにμ−(CH)Si(インデニル)Hf(CH)の触媒系が用いられ得る。
【0081】
好ましい態様において、活性化助触媒である前駆体イオン性化合物は、特定された先行技術に例示された置換されたテトラフェニル硼素化合物よりも典型的に、より嵩高の4つのハロゲン化芳香族配位子を有するアニオン性13族元素錯体を含有する。それらの本発明の芳香族配位子は、2つ以上の環(又は縮合環系)が直接、互いに又は一緒に結合している、多環式芳香族炭化水素及び芳香族環集合体から成る。それらの配位子は、同じか又は異なり、直接、金属/メタロイド中央に共有結合されている。好ましい態様において、前記のハロゲン化テトラアリール13族元素アニオン性錯体のアリール基は、少なくとも1つの縮合された多環式芳香族炭化水素又はぶら下がった芳香族環を有する。インデニル、ナフチル、アントラシル、ヘプタレニル及びビフェニル配位子が例である。縮合された芳香族環の数は、環の接続点そして特に、13族元素中央への接続点として選ばれる原子が本質的に四面体構造を可能にする限り、重要でない。従って、例えば、適する配位子には、後に例示された配位子が含まれ、開放された結合は、13属原子になされる。又、追加の配位子の選択には文献、例えば、Nomenclature of Organic Compounds、4−5章(ACS、1974)における多環式化合物の例を参照。
【0082】
【化4】


【0083】
配位子の接続点の選択は、特に重要である。配位子接続点に対してオルトの置換基又は環結合は、本質的に四面体幾何の採用が大きく排除されるように立体的嵩高さを与える。望ましくない接合点の例を下記に示す。
【化5】


【0084】
適する混合された配位子13族錯体は、それらの配位子の数が2つ以下である限り、オルト置換基又は環接続点を有する縮合環もしくは環集合体を含み得る。従って、3つ又は2つの非ヒンダード配位子を有する1つ又は2つのヒンダード縮合環芳香族化合物を有する13族アニオンであり、ヒンダード芳香族化合物が、オルト置換基又はオルト環接合点(実例II)を有する化合物であり、非ヒンダード芳香族化合物は、それらがない(実例I)化合物である13族アニオンが典型的に適している。トリス(ペルフルオロフェニル)(ペルフルオロアントラシル)ボーレートは例示的な錯体である。この錯体において、アントラシル配位子は、オルト置換基を有するヒンダード縮合環であるが、3つの非ヒンダードフェニル配位子を有するその使用は、その錯体に四面体構造を採用させる。従って、本発明により有用な、一般的にいえば、本発明により有用な13族錯体は典型的には、下記の式、
[M(A)4−n(B)]
(式中、Mは13族元素であり、Aは、先に記載したような非ヒンダード配位子であり、Bは、先に記載したようなヒンダード配位子であり、nは1又は2である)
に従う。
【0085】
縮合された芳香族環及び芳香族環集合体の両方では、ハロゲン化は、触媒活性化において形成される強度にルイス酸性のメタロセンカチオンによる配位子引き抜きの可能性を低減させる独立した特徴として立体的嵩高さとともに寄与する増大する電化分散をさせるために非常に好ましい。又、ハロゲン化は、ハフニウムカチオンの、芳香族環の残存する炭素−水素結合との反応を阻止し、過ハロゲン化は、そのような潜在的な望ましくない反応を排除する。従って、アリール配位子の炭素原子における水素原子の少なくとも3分の1がハロゲン原子により置換されることが好ましく、より好ましく、アリール配位子は、過ハロゲン化されることがより好ましい。弗素は、最も好ましいハロゲンである。
【0086】
ハフニウム化合物の触媒的に活性なカチオン及び適する非配位アニオンを含有するイオン性触媒系を製造する手段は、従来から知られており、例えば、米国特許第5,198,401号、PCT出願公開WO92/00333及びWO97/22639を参照。典型的には、その方法は、市販の供給先から得るか、又は引き抜き可能な配位子、例えばヒドリド、アルキル又はシリル基を有する選択された遷移金属化合物を合成し、それらと非配位アニオン源又は前駆体化合物を適する溶媒中で接触させることを含む。そのアニオン前駆体化合物は、好ましいハフニウムメタロセン化合物の原子価要件を完成させる一価のヒドリド、アルキル又はシリル配位子を引き抜く。その引き抜きは、ハフノセンを、本発明による安定な、適合性の嵩高の非配位アニオンにより平衡するカチオン状態にしておく。
【0087】
非配位アニオンは、好ましくは、非シクロペンタジエニル配位子の引き抜き時に副生物として非配位アニオン部分を残す遷移金属化合物の非シクロペンタジエニル不安定配位子を引き抜く本質的にカチオン性の錯体を有するイオン性化合物として触媒製造工程に導入される。公知の現場でのアルキル化法は、本発明の好ましい方法態様により、高温条件下で全体の重合効率を干渉する傾向を有する競合反応及び相互作用をもたらし得るので、金属中央における不安定なヒドリド、アルキル又はシリル配位子を有するハフニウム化合物は、本発明のイオン性触媒系には、非常に好ましい。
【0088】
本発明の助触媒の非配位アニオンを与えることができる前駆体化合物に適するカチオンは、本技術分野で公知のものを含む。そのようなカチオンには、米国特許第5,198,401号に記載のカチオンのような窒素含有カチオン類、米国特許第5,387,568号のカルベニウム、オキソニウム、又はスルホニウムカチオン、PCT出願公開WO96/08519の金属カチオン類、例えば、Ag、シリリウムカチオン類及びWO97/22635の1族又は2族金属カチオン類の水和塩類が含まれる。この段落中に記載の文献は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0089】
本発明のメタロセン化合物のイオン性カチオン化、結果として、得られる非配位アニオンでの安定化ができる非配位アニオンの好ましい前駆体の例には、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリ(n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素等のようなトリアルキル置換アンモニウム塩;N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素等のようなN,N−ジアルキルアニリニウム塩;ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素等のようなジアルキルアンモニウム塩;トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼素等のようなトリアリールホスホニウム塩が含まれる。
【0090】
適するアニオン性の前駆体のさらなる例には、安定なカルベニウムイオン及び適合性の非配位アニオンを含有する化合物である。それらには、テトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼酸トロピリウム、テトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼酸トリフェニルメチリウム、テトラキス(ペルフルオロナフチル)又はテトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)硼酸ベンゼン(ジアゾニウム)が含まれる。構造的に本質的に同等な硼酸シリリウム又はアルミン酸シリリウムは同様に適している。
【0091】
さらに他の態様において、NCA(非配位アニオン)部分は、アセチレン基を含み、ときには、「アセチルアリール」部分と称される。本発明のNCA類の区別される特徴は、13族原子に結合されたアセチレン性官能基の存在である。13族原子は又、少なくとも1つの弗素化(一弗素化から過弗素化まで)された環部分に結合している。第一の環部分の他に、13族原子は、第一の環部分と同様の又は異なる環部分でもあり得て、一弗素化から過弗素化までされ得る2つの他の配位子を有する。弗素化の目的は、引き抜くことができる水素の数を低減させることである。残存する引き抜き可能な水素の量が商業的な重合に干渉しないほど十分に少ないように、十分な水素が弗素置換されている場合、配位子は実質的に弗素化されているという。
【0092】
本発明の例示的なNCAは、
【化6】

と示される。
【0093】
この開示では、Trは、トリエルを表わし、B及びAlを包含する。Tr=Bの場合、このNCAは、トリ(2’,3,3’,4,4’,5,5’,6,6’−ノナフルオロビフェン−2−イル)(2−ペルフルオロフェニルエチン−2−イル)硼酸塩と称される。
【0094】
本態様による活性剤のカチオン性部分は、好ましくはRPnH(式中、Rは、アルキル又はアリール部分を表わし、Pnはピニクチド、N、P又はAsを表わし、Hは水素である)の形態を有する。適するRは後に示す。このリストは、本発明の範囲を限定するものではなく、カチオン性部分に記載された機能をさせるいずれのRも、本発明の範囲内である。Rには、メチル、フェニル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、3−エチルノニル、イソプロピル、n−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−プロピルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルエチルヘキシルシリル、ジエチルノニルシリル、トリエチルシリルプロピル、2,2−ジメチルオクチル、トリエチルシリルエチル、トリ−n−プロピルシリルヘキシル、トリイソプロピルシリルオクチル及びメチルジエチルシリルオクチルが含まれるが、それらに限定されない。
【0095】
コポリマーの特性及び分析
伸び及び引張強さ
伸び及び引張強さを以下のように測定した。本発明のコポリマーは、1,000%より大きい、又は1,200%より大きい、又は1,500%より大きい伸びを有する。
【0096】
本発明のコポリマーは、300psi(2.1MPa)より大きい、又は500psi(3.5MPa)より大きい、又は1,000psi(6.9MPa)より大きい、引張強さを有する。
【0097】
引張及び伸び特性は、ASTM D790に記載された操作に従って20インチ/分(51cm/分)において測定される。そのデーターを、引張伸びによる試験片における横収縮のための応力に対して補正をせずに、工学単位で報告する。本発明の態様の引張及び伸び特性は、ダンベル形試料を用いて評価する。試料を180℃乃至200℃において15t(133kN)の力で15分間圧縮成形し、6インチ×6インチ(15cm×15cm)の寸法のプラックにする。冷却したプラックを取り出し、試験片をダイとともに取り出す。試料の伸び評価を、マサチュセッツ州、カントン、100 Royal StreetのInstron Corporationにより製造されたInstron 4465で行う。ディジタルデーターを、Instron Corporationから入手可能なSeries IX Material Testing Systemにより回収されたファイルにおいて回収し、ワシントン州のレドモンドのMicrosoft Corporationから入手可能なスプレッドシートプログラムであるExcel 5を用いて分析する。
【0098】
弾性度
本発明の態様は、引張変形の後に弾性である。試料の長さにおけるわずかな増加により表わされ、試料の長さの%として表わされる弾性度は、一般的操作ASTM D790により測定される。引張伸び中に、コポリマー試料が延伸され、ポリマーは、その延伸力が取り去られたときに元の寸法を回復しようとする。この回復は、完全でなく、緩和された試料の最終的な長さは、もとの試料の長さよりもわずかに長い。弾性度は、試料の長さにおけるわずかな増加により表わされ、延伸されていないもとの試料の長さのパーセントとして表わされる。
【0099】
試料の弾性度を測定するためのプロトコールは、伸び及び引張強さの測定について先に記載した操作により行われる、試験片の狭い部分である、ダンベルの変形できる区域をそのもとの長さの200%まで予備延伸し、その試料を予備延伸することから成る。これは、分当り10インチ(25cm)の変形速度において行われる。その試料を、同じ速度で緩和させ、もとの試料の予備延伸された試験片である分析用の試験片を形成する。それは、わずかに延伸された又は予備延伸された試料を48時間室温で緩和させ、その後に弾性度の測定をする。試料における変形区域の長さを測定し、dとする。48時間後、試料の変形区域の200%の伸びのために分当り10インチにおいて再び変形させ、同じ速度で緩和させる。その試料を取り出し、10分間の緩和の後に、試料を測定し、dの新しい長さの変形区域を有するとする。%として試料の弾性度を100×(d−d)/dとして決定する。
【0100】
本発明の態様は、先に記載した操作により測定されたときに30%未満、又は20%未満、又は10%未満、又は8%未満、又は5%未満の弾性度を有する。
【0101】
コポリマーの組成の範囲に亘る弾性度のそれらの値は、500%引張弾性率により測定されたときに試料の引張強さとともに変化する。コポリマーのこの種類の弾性度は、このように、2つの基準:(a)測定可能な弾性率とともに500%伸びまでの伸長性(500%引張弾性率)及び(b)先に記載したように、わずかに延伸された試料におけるある伸びから200%伸びまでの弾性度、により表わされる。第一に、本発明の態様のコポリマーは、500%伸び(500%引張弾性率としても知られる)における0.5MPaより大きい、又は0.75MPaより大きい、又は1.0MPaより大きい、又は2.0MPaより大きい測定可能な引張強さを有しなくてはならなく、第二に、本コポリマーは、先に記載した弾性度を有しなくてはならない。
【0102】
代替として、500%引張弾性率に対する弾性度の関係が記載され得る。図3に言及すると、本発明のコポリマーについての弾性度がMPaにおける500%引張弾性率に対してプロットされる。そのプロットされたデーターは、本明細書の実施例の表6における試料5乃至14に相当する。そのデーターの線形回帰適合は、
弾性度(%)=0.9348M−1.0625
(式中、Mは、MPaにおける500%引張弾性率である)
の関係を与える。本発明の態様において、MPaにおける500%引張弾性率の関数として弾性度は、
弾性度(%)≦0.935M+12又は
弾性度(%)≦0.935M+6又は
弾性度(%)≦0.935M
により定義される。
【0103】
曲げ弾性率
本発明のコポリマーの軟度は、曲げ弾性率によって測定され得る。曲げ弾性率は、Type IVのドッグボーン(dogbone)を用いて0.05インチ/分(1.3mm/分)のクロスヘッド速度においてASTM D790により測定される。コポリマーの組成の範囲に亘る曲げ弾性率の値は、500%引張弾性率により測定される試料の引張強さとともに変る。この族のコポリマーの曲げ弾性率は、このように2つの基準:(a)測定可能な弾性率を有する500%伸びまでの伸び率(500%引張弾性率)及び(b)曲げ弾性率、によって表わされる。
【0104】
図2に言及すると、本発明のコポリマーについてのMPaにおける曲げ弾性率がMPaにおける500%引張弾性率に対してプロットされる。そのプロットされたデーターは、本明細書における実施例の表7における試料15乃至19に相当する。そのデーターの単一の指数関数的適合は、
曲げ弾性率(MPa)=4.1864e0.269M
(式中、Mは、MPaにおける500%引張弾性率である)
の関係を与える。本発明の態様において、MPaにおける500%引張弾性率の関数としてのMPaにおける曲げ弾性率は、
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+30又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+10又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+2
によって定義される。
【0105】
エチレン組成
エチレンプロピレンコポリマーの組成は、下記のように、ASTM D3900によりエチレン重量%として測定される。150℃以上の温度においてプレスされた本コポリマー成分の薄い均質のフィルムをPerkin Elmer PE 1760赤外分光光度計に取り付ける。600cm−1から4,000cm−1までの試料の完全なスペクトルを記録し、そのコポリマー成分のエチレン重量%が、
エチレン重量%=82.585−111.987X+30.045X
(式中、Xは、常により高い、722cm−1又は732cm−1におけるピーク高さに対する1155cm−1におけるピーク高さの比である)
から計算される。
【0106】
分子量及びPDI
分子量(Mn及びMw)及び分子量分布(MWD)を決定するための技術は、米国特許第4,540,753号及びMacromolecules、1988年、21巻、3360頁(Verstrateら)に見出される。
【0107】
融点及び融解熱
融点及び融解熱は、示差走査熱量法(DSC)により以下のように測定される。約200℃乃至230℃においてプレスされたポリマーの約6乃至10mgのシートをパンチダイとともに取り出す。これを室温で24時間アニールする。この時間の終わりに、試料を示差走査熱量計(Perkin Elmer 7 Series Thermal Analysis System)に入れ、約−50℃乃至約−70℃に冷却する。その試料を20℃/分において加熱し、約200℃乃至約220℃の最終温度を得る。その熱生成量を、典型的には約30℃乃至約175℃において最高点まで上げられ、約0℃乃至約200℃の温度において生じる試料の融解ピーク下での面積として記録し、融解熱の尺度としてジュールとして測定する。融点は、試料の融解範囲内の最大の熱吸収の温度として記録される。
【0108】
分子間組成及びタクティシティー分布測定
本コポリマーの分子間組成分布を下記のように測定する。呼称30gのコポリマーを約1/8インチ(3mm)面を有する小さい立方体に切断する。これを、Chiba−Geigy Corporationから市販されている抗酸化剤であるIrganox 1076 50mgとともに、ねじ蓋クロージャーを有する厚肉ガラス瓶に入れる。次に、425mlのヘキサン(ノルマル及びイソ異性体の主混合物)をその瓶に入れ、密封した瓶を23℃において24時間維持する。この時間の終わりに、溶液をデカンテーションし、残渣を追加のヘキサンでさらに24時間処理する。この時間の終わりに、2つのヘキサン溶液を合わせて、蒸発させ、23℃において可溶性のポリマーの残渣を得る。その残渣に、容量を425mlにするのに十分なヘキサンを添加し、その瓶を、覆った循環する水浴中に31℃において24時間維持する。可溶性のポリマーをデカンテーションし、追加量のヘキサンを31℃においてさらに24時間添加し、その後にデカンテーションする。このように、段階間での約8℃の温度増加において、40℃、48℃、55℃及び62℃において可溶性のコポリマーの画分を得る。約60℃より高いすべての温度のための溶媒として、ヘキサンの代わりに、ヘプタンが用いられる場合、95℃までの温度における上昇が使われる。その可溶性のポリマーを乾燥し、重量を量り、先に記載したIR技術により、重量%エチレン含量として組成について分析する。隣接する温度画分において得られた可溶性の画分は、先の指定における隣接画分である。
【0109】
実施例
実施例1:エチレン/プロピレン共重合
溶媒としてヘキサンを用いて9リットル容の連続流通攪拌槽反応器においてポリマーの連続的重合を行った。液体を満たした反応器は、9分間の滞留時間を有し、圧力を700kPaに維持した。ヘキサン、エチレン及びプロピレンの混合された供給原料を約−30℃に予備冷却し、反応器に入れる前に、重合熱を除去した。トルエン中の触媒/活性剤溶液及びヘキサン中の掃去剤溶液を別々にそして連続的に反応器に入れ、重合を開始させた。目的の分子量によって、反応器温度を35℃乃至50℃に維持した。供給温度を、重合速度によって変化させ、一定の反応器温度に維持した。重合速度を約0.5kg/時間から約4kg/時間まで変化させた。30kg/時間におけるヘキサンを717g/時間におけるエチレン及び5.14kg/時間におけるプロピレンと混合し、反応器に供給した。重合触媒である、1.1モル比のN’,N’−ジメチルアニリニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレートで活性化されたジメチルシリル架橋ビスインデニルハフニウムジメチルを0.0135g/時間における速度で導入した。トリイソブチルアルミニウムの希溶液を触媒停止剤の掃去剤として反応器に導入した。この重合には、触媒モル当り約111モルの掃去剤の割合が適していた。重合が定常状態に達した後に、この重合において製造されたポリマーの代表的な試料を回収し、次に水蒸気蒸留し、ポリマーを単離した。重合速度は、3.7kg/時間と測定された。この重合において製造されたポリマーは、14%のエチレン含量、13.1のML(1+4)125℃(ムーニー粘度)を有し、アイソタクチックプロピレン配列を有した。
【0110】
本ポリマーの組成は、主に、プロピレンに対するエチレンの比を変えることにより得られた。本ポリマーの分子量は、反応器温度を変えることにより又は重合速度に対する総モノマー供給速度の比を変えることにより変化した。
【0111】
実施例1に記載したように、本発明のポリマーが合成された。それらを以下の表に記載する。表2は、ポリマーのGPC分析、組成分析及びDSC分析の結果を記載する。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
表4は、表3において得られたコポリマーの画分の組成を記載する。4%より多くのポリマーの総質量を有する画分のみを組成のために分析した。
【表4】

【0115】
エチレン含量の測定における実験誤差は、約0.4重量%の絶対誤差であると考えられる。
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
実施例2:エチレン/プロピレン共重合
溶媒としてヘキサンを用いて1リットルの内部容量の連続流通攪拌槽反応器においてポリマーの連続的重合を行った。液体を満たした反応器は、約9分間乃至15分間の、変化させた滞留時間(後の表に記載されたように)を有し、圧力を700kPaに維持した。ヘキサン、エチレン及びプロピレンの混合された供給原料を約−30℃に予備冷却し、反応器に入る前に、重合熱を除去した。示された溶液重合温度を維持するために、予備冷却する温度を調整した。トルエン中の触媒/活性剤溶液及びヘキサン中の掃去剤溶液を別々にそして連続的に反応器に入れ、重合を開始させた。表8乃至13に示したように、反応器温度を50℃乃至95℃に維持し、重合速度を0.1kg/時間から0.5kg/時間で変え得た。
【0119】
ヘキサン、エチレン及びプロピレンを表8乃至12に示された速度で反応器に供給した。重合触媒、ジメチルシリル架橋ビスインデニルハフニウムジメチルを、下記の表において示されたNCAで、1.1モル比で試験管内で活性化させ、0.0135g/時間の速度で重合反応器に導入した。2つのNCA、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボーレート(A1)及びN,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロ−1−ナフチル)ボーレート(A2)を用いた。トリイソブチルアルミニウムの希溶液を触媒停止剤の掃去剤として反応器に導入した。この重合には、触媒モル当り約1.11モルの掃去剤の割合が適していた。5つの滞留時間の定常重合の後に、この重合において製造されたポリマーの代表的な試料を回収した。そのポリマーの溶液を上部から取り出し、次に水蒸気蒸留し、ポリマーを単離した。重合速度を、以下の表に示されたように測定した。この重合において製造されたポリマーを、FT−IRによりエチレン含量について、GPCにより分子量平均について分析した。結晶化度をDSCにより測定し、ポリマー鎖中のプロピレン残基のmm三つ組の量を13C NMRにより決定した。先に記載したように、ポリマーの結晶化度は、アイソタクチックプロピレン残基のみによって依存するので、結晶化度及びmm三つ組決定は、重複する測定である。
【0120】
以下の表におけるデーターは、2つの異なる組成において製造されるプロピレン/エチレンコポリマーにおける重合条件(温度、NCA及び残存するモノマー濃度)における変化の影響を示す。最初の組成物は、約7重量%のエチレンを含有し、二番目の組成物は、約14%のエチレンを含有する。そのデーターは、それらのプロピレン−エチレンポリマーについての組成範囲で、本発明の利点が得られることを示している。
【0121】
本実施例は、50℃乃至95℃の温度範囲において行われる、A1及びA2の重合における違いを示す。各重合条件温度では、本質的に同じ組成のポリマーを製造するために、同じ重合モノマー、溶媒及び触媒供給が用いられる。いずれの活性剤でも、重合温度における増大は、ポリマーの結晶化度及び分子量を低減させるが、A1のA2による置換は、結晶化度及び分子量の両方を増大させる。
【0122】
【表8】

【0123】
試料20C乃至23C(比較例)並びに試料24乃至27
本実施例は、95℃の温度において行われる、A1及びA2の重合における違いを例示する。重合の各シリーズの間、ポリマーの組成を本質的に一定に維持するが、モノマーの残存する濃度を徐々に増大させた。A1及びA2で活性化された重合の両方で、残存するモノマーの濃度における増大は、ポリマーにおけるプロピレン残基の結晶化度を増大させた。
【0124】
【表9】

【0125】
試料28C乃至31C(比較例)並びに試料32乃至36
本実施例は、95℃の温度において行われる、A1及びA2の重合における違いを例示する。重合の各シリーズの間、ポリマーの組成を本質的に一定に維持するが、モノマーの残存する濃度を徐々に増大させた。A1及びA2で活性化された重合の両方で、残存するモノマーの濃度における増大は、ポリマーにおけるプロピレン残基の結晶化度を増大させた。本実施例は、より高いエチレン含量を有するプロピレン−エチレンコポリマーが製造されたことにおいて、すぐ前の実施例におけるデーターとは異なっている。組み合わせたこれらのデーターは、A1の、A2による置換の影響は、ポリマーのエチレン含量によって制限されないことを示している。
【0126】
【表10】

【0127】
試料37C乃至41C(比較例)並びに試料42乃至46
本実施例は、50℃乃至95℃の上昇する温度の範囲において行われる、A1及びA2の重合における違いを示す。各重合条件温度では、本質的に同じ組成のポリマーを製造するために、同じ重合モノマー、溶媒及び触媒供給が用いられる。いずれの活性剤でも、重合温度における増大は、ポリマーの結晶化度及び分子量を低減させるが、A1の、A2による置換は、結晶化度及び分子量の両方を増大させる。本実施例は、より高いエチレン含量を有するプロピレン−エチレンコポリマーが製造されたことにおいて、実施例1乃至8におけるデーターとは異なっている。組み合わせたこれらのデーターは、A1の、A2による置換の影響は、ポリマーのエチレン含量によって制限されないことを示している。
【0128】
【表11】

【0129】
試料47C乃至50C(比較試料)並びに試料51乃至54
本実施例において、先に記載したプロピレン濃度よりも高い定常状態プロピレン濃度で重合が行われた、アイソタクチックプロピレン結晶化度を有するプロピレン−エチレンポリマーについて同様のデーターが示されている。比較例69C乃至76Cは、A1を用いて製造された同様の組成のポリマーについてのデーターを有する。
【0130】
試料55乃至68並びに69C乃至76C(比較例)
実施例55乃至68のポリマーについての融解熱データー並びに比較例69C乃至76Cについての融解熱データーを図5にプロットした。図5は、本発明の活性剤は、比較例よりも高い結晶化度のポリマーを製造する能力を有することを示している。
【0131】
試料77C乃至80C(比較例)
比較例77C乃至80Cは、実施例55乃至68におけるデーターと比較するための、A1を用いて製造されたポリマーの、ムーニー粘度[ASTM D−1646によるムーニー単位において127℃におけるML(1+4)として測定されたムーニー粘度]の比較を示す。本コポリマーのムーニー粘度は、定常状態のモノマー濃度に非常に依存しているので、そのデーターをモノマー濃度及び重合温度の関数としてプロットする。そのデーターは、A1を用いて製造されたコポリマーは、同様の又はより高い重合温度においてA2を用いて製造されたコポリマーよりも低いムーニー粘度を有することを示している。これは、図6に示されている。
【0132】
【表12】

【0133】
【表13】

【0134】
【表14】

【0135】
本発明を、特定の面及びそれらの態様に関して、かなり詳細に記載してきたが、他の面及び態様も可能である。例えば、エチレンプロピレンコポリマーが例示されているが、他のコポリマーも意図される。従って、特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれている種の記載に限定されるべきではない。
【0136】
本発明の特定の特徴が、一連の数値的上限及び一連の数値的下限で記載されている。他に示されていなければ、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲が、本発明の範囲内であることを認識すべきである。
【0137】
本明細書中で引用されたすべての特許、試験操作及び他の文献は、そのような開示が本明細書と矛盾しない程度までそしてそのような組み込みが許されるすべての国のために引用により完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び
Mw>6.10(3370/T)
(式中、Mw=重量平均分子量、
T=ケルビン度での重合反応温度、
P=リットル当りモルでの、重合反応域における定常状態プロピレン濃度)
の重量平均分子量を有する、工程
を含む方法。
【請求項2】
プロピレンコポリマーが、80乃至90重量%の量の、プロピレンから誘導される単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロピレンコポリマーが、10乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
均質な重合条件が連続的重合方法において断熱的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
均質な重合条件が連続的方法において少なくとも500バールの圧力で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が、60℃乃至200℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プロピレンコポリマーが、90℃未満から40℃より高いまでの融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プロピレンコポリマーが、1.0J/gより大きく、75J/g未満までの融解熱を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロピレンコポリマーが、4.0J/gより大きく、30J/g未満までの融解熱を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の有機金属の4族遷移金属化合物が、置換されたもしくは未置換の炭素原子又は置換されたもしくは未置換の珪素原子によって共有架橋された2つのシクロペンタジエニル配位子を含有し、前記4族遷移金属化合物がキラルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記4族金属がハフニウムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
架橋原子が少なくとも1つのメチル基で置換されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
シクロペンタジエニル配位子がインデニルである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び85%より大きい三つ組タクティシティーを有する、工程
を含む方法。
【請求項15】
プロピレンコポリマーが、80乃至90重量%の量の、プロピレンから誘導される単位を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プロピレンコポリマーが、10乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
均質な重合条件が連続的重合方法において断熱的に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
均質な重合条件が連続的方法において少なくとも500バールの圧力で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
反応温度が、60℃乃至200℃の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
プロピレンコポリマーが、90℃未満から40℃より高いまでの融点を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
プロピレンコポリマーが、1.0J/gより大きく、75J/g未満までの融解熱を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
プロピレンコポリマーが、4.0J/gより大きく、30J/g未満までの融解熱を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
プロピレンコポリマーが、90%より大きい三つ組タクティシティーを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記の有機金属の4族遷移金属化合物が、置換されたもしくは未置換の炭素原子又は置換されたもしくは未置換の珪素原子によって共有架橋された2つのシクロペンタジエニル配位子を含有し、前記4族遷移金属化合物がキラルである、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記4族金属がハフニウムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
架橋原子が少なくとも1つのメチル基で置換されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
シクロペンタジエニル配位子がインデニルである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)各々のアリール置換基が少なくとも2つの環式芳香族環を有する、ハロゲン化されたテトラ−アリール置換された13族アニオンを含有する前駆体イオン性化合物である活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び
Mw>6.10(3370/T)
(式中、Mw=重量平均分子量、
T=ケルビン度での重合反応温度、
P=リットル当りモルでの、重合反応域における定常状態プロピレン濃度)
の重量平均分子量を有する、工程
を含む方法。
【請求項29】
プロピレンコポリマーが、80乃至90重量%の量の、プロピレンから誘導される単位を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
プロピレンコポリマーが、10乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
均質な重合条件が連続的重合方法において断熱的に行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
均質な重合条件が連続的方法において少なくとも500バールの圧力において行う、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
反応温度が、60℃乃至200℃の範囲である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
プロピレンコポリマーが、90℃未満から40℃より高いまでの融点を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
プロピレンコポリマーが、1.0J/gより大きく、75J/g未満の融解熱を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
プロピレンコポリマーが、4.0J/gより大きく、30J/g未満の融解熱を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記の有機金属の4族遷移金属化合物が、置換されたもしくは未置換の炭素原子又は置換されたもしくは未置換の珪素原子によって共有架橋された2つのシクロペンタジエニル配位子を含有し、前記4族遷移金属化合物がキラルである、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記4族金属がハフニウムである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
架橋原子が少なくとも1つのメチル基で置換されている、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
シクロペンタジエニル配位子がインデニルである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
有機金属の4族遷移金属化合物が、
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(Cl)
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)Hf(Cl)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(CHCH)2及び
μ-(C)C(インデニル)Hf(CH)
から選ばれる、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
前記のハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、少なくとも1つの縮合された多環式芳香族環を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
前記のハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、フェニル配位子に対する4位において少なくとも1つのぶら下がった芳香族環を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項44】
前記のハロゲン化されたテトラアリール置換13族アニオンが[テトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)ボーレート]である、請求項28に記載の方法。
【請求項45】
前記の助触媒前駆体化合物が、アニリニウム、アンモニウム、カルベニウム又はシリリウムカチオン性錯体から選ばれる本質的にカチオン性の錯体を含有する、請求項28に記載の方法。
【請求項46】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)各々のアリール置換基が少なくとも2つの環式芳香族環を有する、ハロゲン化されたテトラ−アリール置換された13族アニオンを含有する前駆体イオン性化合物である活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び85%より大きい三つ組タクティシティーを有する、工程
を含む方法。
【請求項47】
プロピレンコポリマーが、80乃至90重量%の量の、プロピレンから誘導される単位を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
プロピレンコポリマーが、10乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
均質な重合条件が連続的重合方法において断熱的に行われる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
均質な重合条件が連続的方法において少なくとも500バールの圧力で行なわれる、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
反応温度が、60℃乃至200℃の範囲である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
プロピレンコポリマーが、90℃未満から40℃より高いまでの融点を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
プロピレンコポリマーが、1.0J/gより大きく、75J/g未満の融解熱を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
プロピレンコポリマーが、4.0J/gより大きく、30J/g未満の融解熱を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
プロピレンコポリマーが90%より大きい三つ組タクティシティーを有する、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記の有機金属の4族遷移金属化合物が、置換されたもしくは未置換の炭素原子又は置換されたもしくは未置換の珪素原子によって共有架橋された2つのシクロペンタジエニル配位子を含有し、前記4族遷移金属化合物がキラルである、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記4族金属がハフニウムである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
架橋原子が少なくとも1つのメチル基で置換されている、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
シクロペンタジエニル配位子がインデニルである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
有機金属の4族遷移金属化合物が、
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(Cl)
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)HfCl
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(インデニル)(CHCH)2及び
μ-(C)C(インデニル)Hf(CH)
から選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、少なくとも1つの縮合された多環式芳香族環を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、フェニル配位子に対して4位において少なくとも1つのぶら下がった芳香族環を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンが[テトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)ボーレート]である、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記の助触媒前駆体化合物が、アニリニウム、アンモニウム、カルベニウム又はシリリウムカチオン性錯体から選ばれる本質的にカチオン性の錯体を含有する、請求項46に記載の方法。
【請求項65】
a)5乃至25重量%の、エチレンから由来する単位、及び95乃至75重量%の、プロピレンから由来する単位を有するコポリマーであり、
(i)90℃より低い融点、
(ii)弾性度≦0.935M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係及び
(iii)曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係
を有するコポリマー並びに
b)電荷保持硼素核又は電荷保持アルミニウム核の単一の配位錯体を含有するアニオンであり、前記核が、テトラ−アリール置換され、各々のアリール置換基が少なくとも2つの環式芳香族環を有する、アニオン
を含有する、オレフィン重合により製造されたポリマー生成物。
【請求項66】
a)5乃至25重量%の、エチレンから由来する単位、及び95乃至75重量%の、プロピレンから由来する単位を有するコポリマーであり、
(i)90℃より低い融点、
(ii)弾性度≦0.935M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係及び
(iii)曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係
を有するコポリマー並びに
b)電荷保持硼素核又は電荷保持アルミニウム核の単一の配位錯体を含有するアニオンであり、前記核が、3つのハロゲン化されたアリール配位子を有し、各々のアリール置換基が、少なくとも2つの環式芳香族環及び1つのアセチル−アリール部分配位子を有する、アニオン
を含有する、オレフィン重合により製造されたポリマー生成物。
【請求項67】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び
Mw>6.10(3370/T)
(式中、Mw=重量平均分子量、
T=ケルビン度での重合反応温度、
P=リットル当りモルでの、重合反応域における定常状態プロピレン濃度)
の重量平均分子量を有する、工程
を含む方法。
【請求項68】
a)i)有機金属の4族遷移金属化合物及び
ii)活性化助触媒
を含有する重合触媒錯体を用いて、溶液法において60℃以上の反応温度でプロピレン及びエチレンコモノマーを重合する工程であって、前記触媒錯体が立体特異的ポリプロピレンを製造することができる工程、並びに
b)75重量%以上の量の、プロピレンから誘導される単位、及び5乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有するプロピレンコポリマーを回収する工程であって、前記コポリマーが、35℃より高く、110℃より低い融点及び85%より大きい三つ組タクティシティーを有する、工程
を含む方法。
【請求項69】
活性化助触媒が、各々のアリール置換基が少なくとも2つの環式芳香族環を有する、ハロゲン化されたテトラ−アリール置換された13族アニオンを含有する、請求項67又は請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記の有機金属の4族遷移金属化合物が、置換されたもしくは未置換の炭素原子又は置換されたもしくは未置換の珪素原子によって共有架橋された2つのシクロペンタジエニル配位子を含有し、前記4族遷移金属化合物がキラルである、請求項67乃至69のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項71】
前記4族金属がハフニウムである、請求項67乃至70のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項72】
架橋原子が少なくとも1つのメチル基で置換されている、請求項70又は請求項71に記載の方法。
【請求項73】
シクロペンタジエニル配位子がインデニルである、請求項70乃至72のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項74】
有機金属の4族遷移金属化合物が、
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(Cl)
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)Hf(Cl)
μ-(CH)Si(テトラヒドロインデニル)Hf(CH)
μ-(CH)Si(インデニル)Hf(CHCH)2及び
μ-(C)C(インデニル)Hf(CH)
から選ばれる、請求項67乃至73のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項75】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、少なくとも1つの縮合された多環式芳香族環を有する、請求項69乃至74のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項76】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンのアリール基が、フェニル配位子に対する4位において少なくとも1つのぶら下がった芳香族環を有する、請求項69乃至75のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項77】
ハロゲン化されたテトラアリール13族アニオンが[テトラキス(ペルフルオロ−4−ビフェニル)ボーレート]である、請求項69乃至76のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項78】
前記の助触媒が、アニリニウム、アンモニウム、カルベニウム又はシリリウムカチオン性錯体から選ばれる本質的にカチオン性の錯体を含有する、請求項67乃至77のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項79】
プロピレンコポリマーが、80乃至90重量%の量の、プロピレンから誘導される単位を有する、請求項67乃至78のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項80】
プロピレンコポリマーが、10乃至25重量%の量の、エチレンから誘導される単位を有する、請求項67乃至79のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項81】
均質な重合条件が連続的重合方法において断熱的に行われる、請求項67乃至80のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項82】
均質な重合条件が連続的方法において少なくとも500バールの圧力で行われる、請求項67乃至81のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項83】
反応温度が、60℃乃至200℃の範囲である、請求項67乃至82のいずれか1に記載の方法。
【請求項84】
プロピレンコポリマーが、90℃未満から40℃より高いまでの融点を有する、請求項67乃至83のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項85】
プロピレンコポリマーが、1.0J/gより大きく、75J/g未満までの融解熱を有する、請求項67乃至84のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項86】
プロピレンコポリマーが、4.0J/gより大きく、30J/g未満までの融解熱を有する、請求項67乃至85のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項87】
プロピレンコポリマーが、90%より大きい三つ組タクティシティーを有する、請求項67乃至86のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項88】
a)5乃至25重量%の、エチレンから由来する単位、及び95乃至75重量%の、プロピレンから由来する単位を有するコポリマーであり、
(i)90℃より低い融点、
(ii)弾性度≦0.935M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係及び
(iii)曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係
を有するコポリマー並びに
b)電荷保持硼素核又は電荷保持アルミニウム核の単一の配位錯体を含有するアニオンであり、前記核が、テトラ−アリール置換され、各々のアリール置換基が少なくとも2つの環式芳香族環を有する、アニオン
を含有する、オレフィン重合により製造されたポリマー生成物。
【請求項89】
a)5乃至25重量%の、エチレンから由来する単位、及び95乃至75重量%の、プロピレンから由来する単位を有するコポリマーであり、
(i)90℃より低い融点、
(ii)弾性度≦0.935M+12
(式中、弾性度は%においてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する弾性度の関係及び
(iii)曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50
(式中、曲げ弾性率はMPaにおいてであり、MはMPaにおける500%引張弾性率である)
の、500%引張弾性率に対する曲げ弾性率の関係
を有するコポリマー並びに
b)電荷保持硼素核又は電荷保持アルミニウム核の単一の配位錯体を含有するアニオンであり、前記核が、3つのハロゲン化されたアリール配位子を有し、各々のアリール置換基が、少なくとも2つの環式芳香族環及び1つのアセチル−アリール部分配位子を有する、アニオン
を含有する、オレフィン重合により製造されたポリマー生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49863(P2013−49863A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237938(P2012−237938)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2002−582103(P2002−582103)の分割
【原出願日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】