説明

プロピレンとヘキセン−1とのコポリマー及びそれから得られるブローンフィルム

5〜9重量%のヘキセン−1から誘導される繰り返し単位を含み、125℃〜140℃の融点、及び0.1〜3g/10分のメルトフローレート(ASTM−D1238、230℃/2.16kg)を有する、プロピレンとヘキセン−1とのコポリマーを用いて、有益な機械特性及び光学特性を有するブローンフィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にブローンフィルムを製造するのに適しているプロピレンとヘキセン−1とのコポリマー、並びにかかるコポリマーを含むブローンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブローンフィルム部門は、工業包装、消費者包装、バッグ及び袋、積層フィルム、バリヤーフィルム、医療品の包装材、農業用フィルム、衛生製品、及び製品包装材のような種々の用途区分において重要性が益々増加している分野を構成する。
【0003】
これに関する理由の1つは、ブロー成形によって得られるフィルムはチューブ状の形状であり、チューブ状の構造体は袋の形成に必要な溶融接合の数を平坦なフィルムを使用する場合と比較して減少させ、その結果プロセスを簡単にすることができるので、このためにこれらは、広範囲の用途(都市ゴミ用の袋、工業材料の保存に用いる袋、冷凍食品用の袋、買物袋等)のための袋の製造において特に有利である。更に、ブローンフィルム技術の汎用性により、単に空気吹き込みパラメーターを変化させることによって種々の寸法のチューブ状フィルムを得ることが可能であり、したがって平坦なヘッドを通す押出技術において必要なようにフィルムを適当な寸法に切断する必要性が回避される。
【0004】
機械特性に関する重要なパラメーターであるブローンフィルム配向は、ブローアップ比、ドローダウン比、空冷の強度及び分布、並びに押出速度のような処理パラメーターを適切に選択することによって、フィルムの押出方向とフィルムの横方向との間でバランスをとることができる。これを低い流動性の材料を用いることと組み合わせると、キャストフィルムプロセスと比較して優れたフィルムの機械的性能が与えられる。実際、キャストフィルムは、高い流動性で低い分子量の熱可塑性樹脂をベースとしており、通常は機械方向に強く配向されており、これが押出方向における容易な引裂伝播のような機械的脆弱性の理由である。
【0005】
更に、ブローンフィルムは、平坦なダイを通すフィルム押出から生起する溶融分布及び温度の変動のためにその機械的性能がウエブの幅にわたって一定でないキャストフィルムと比較して横方向において均一な機械特性を有する。
【0006】
横方向におけるブローンフィルムの厚さ変動は逆転牽引装置を用いて容易に分布及び均質化され、これにより「ピストンリング」を発生させることなく完全に円筒状のリールを製造することが可能になる。他方、キャストフィルムプロセスの場合においては、例えば平坦なダイを用いるフィルム押出から生起する直線状のフィルムの動きのために、厚さ変動は幅方向には分布させることができず、巻き取り装置の小さな横方向の振動によって左右に僅かにシフトするのみであり、これにより不完全な形状を有するフィルムのリールが形成される可能性がある。
【0007】
またキャストフィルムの場合においては、横方向における良好なリールの品質及び許容し得るフィルム特性は、平坦なフィルムから端面ビーズを切断することによってのみ達成することができ、端面の切断材料は廃棄するか又は再循環する(これはコストがかかる)か、或いは押出プロセス中に再供給し、これによりキャストフィルムプロセスに複雑性が加えられ、また、熱可塑性樹脂が押出機を複数回通過するために品質の問題が発生する可能性もある。更に、端面切断材料を再供給することは、多層フィルムの場合においては、端面切断材料を加えなければならないフィルム層の選択のためにより複雑である。ポリアミド、EVOH、又は所謂結合層材料のような1種類以上の非ポリオレフィン系樹脂を含む多層バリヤーフィルムの場合においては、端面切断材料は、品質の考慮のために再供給又は再循環できないので通常は廃棄され、これはキャストフィルムプロセスに関する更なるコスト負担である。他方において、ブローンフィルムは横方向において一定の特性及びフィルム厚さを示し、したがって端面切断を必要としないので、コスト、材料が節約され、端面切断材料の再供給のような技術的複雑さ及び関連する品質の問題が回避される。
【0008】
ブローンフィルムの製造において用いる最も一般的な熱可塑性樹脂は、LDPE、LLDPE、MDPE、又はHDPE、或いはこれらの混合物のようなポリエチレン類の製品に属する。これは、これらのポリエチレン樹脂は、溶融状態において、バブルの安定性を損なうことなくフィルムを高いレベルの製造効率及び非常に広範囲の厚さで得ることを可能にする特性を有するからである。しかしながら、ポリエチレン材料を用いることにより、高い剛性、高い透明性、良好な機械特性、及び高い耐熱性の完全に満足できるバランスを達成することは未だ可能ではない。したがって、かかるバランスをより高いレベルに与えることのできるポリマー材料から構成されるか又はこれを含むブローンフィルムを製造することが望ましいであろう。特に、ポリプロピレンは、室温より高い温度においても改良された剛性及び降伏強さを与えることが知られているので、理想的な候補物質であろう。
【0009】
他方、ブローンフィルムにおいてポリプロピレンベースのポリマーを用いることは、バブルの頻繁な引裂を引き起こし、プロセス処理量の低減を必要とし、或いはいずれの場合においてもフィルムの過剰な配向を引き起こし、それを使用不可にするほど低い機械方向における耐衝撃性及び引裂伝播に対する抵抗を与えるポリプロピレンの劣った処理性を考えると特に困難である。有用な解決法が、複雑なブレンドから製造されるブローンフィルムが開示されているWO−9720888及びWO−97020889において提案されている。
【0010】
しかしながら、かかる文献において開示されているフィルムは、ブローンフィルムライン上で達成できる処理量が未だポリエチレン樹脂を用いて得ることができるレベルではないので、未だ完全に満足できるものではない。更に、比較的良好な機械的性能は、高レベルの軟質変性剤樹脂を導入することによって達成されるが、これにより川下での応用及び使用における厚さの減少及び材料の節約に必要なフィルムの剛性が低下し、また、非変性ポリプロピレンベースのフィルムと比較してフィルム熱安定性が低下する。また、複雑なブレンド操作を行うことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第97/20888号
【特許文献2】国際公開第97/20889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、高い処理量条件下でのブローンフィルム製造ライン上での良好な作業性を同時に有し、且つ良好な剛性及び耐熱性と共に有益な機械特性を有するフィルムを与えることができるポリオレフィン材料に対する必要性が存在することが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで、驚くべきことに、プロピレンとヘキセン−1との新規な特定のコポリマーから製造されるブローンフィルムにおいて、機械特性、特に耐衝撃性(例えばダートドロップ衝撃強さ)及び引裂伝播に対する抵抗性の良好なバランスを得ることができることが見出された。ヘキセン−1の比較的低い量のために、かかるコポリマーは、プロピレンポリマーに特有の熱変形に対する抵抗性も保持する。更に、かかるフィルムは良好な光学特性、特に曇り度及び光沢を示し、既存のブローンフィルムラインにおいて本発明のコポリマーを処理することによって容易に得ることができる。
【0014】
したがって、本発明は、5〜9重量%、好ましくは5.5〜9重量%、より好ましくは6〜9重量%、特に6.5〜9重量%のヘキセン−1から誘導される繰り返し単位を含み、125℃〜140℃、好ましくは128℃〜139℃の融点、及び0.1〜3g/10分のメルトフローレート(ASTM−D1238、230℃/2.16kgにしたがって、則ち230℃において、2.16kgの負荷を用いて測定されるMFR)を有する、プロピレンとヘキセン−1とのコポリマーを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ヘキセン−1単位のかかる量はコポリマーの全重量に対するものである。
かかる融点の値は、ISO−11357−3にしたがって、20℃/分の加熱速度を用いて示差走査熱量測定によって測定される。
【0016】
コポリマーの最終特性を実質的に悪化させないならば、特にエチレン及びCH=CHRのα−オレフィン(ここでRはC〜Cアルキル基であり、ヘキセン−1は除外される)から選択される他のコモノマーから誘導される繰り返し単位を存在させることができる。かかるCH=CHRのα−オレフィンの例は、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテン、オクテン−1である。かかる他のコモノマーの中ではエチレンが好ましい。
【0017】
直接的には、本発明のコポリマー中のプロピレン及びヘキセン−1と異なる1種類又は複数のコモノマーから誘導される繰り返し単位の全量は、コポリマーの全重量に対して0.5〜2重量%である。
【0018】
上記の定義から、「コポリマー」という用語はターポリマーのような1つより多い種類のコモノマーを含むポリマーを包含することは明らかである。
更に、本発明のコポリマーは、結晶性の融点を有し、通常はアイソタクチックタイプの立体規則性を有するので、半結晶性である。
【0019】
好ましくは、かかるコポリマーは以下の特性の少なくとも1つを示す:
・25重量%以下、好ましくは20重量%以下の室温(則ち約25℃)におけるキシレン中の溶解度;
13C−NMRを用いてmダイアド/全ダイアドとして測定して97%以上のアイソタクチシティーインデックス;
・GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によって測定して4〜7のMw/Mnの比によって表される分子量分布。
【0020】
本発明のコポリマーの特徴であるメルトフローレートと融点との上記の組み合わせは、マグネシウム二ハロゲン化物上に担持されている立体特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行う重合プロセスによって得ることができることが見出された。分子量調整剤(好ましくは水素)を適当に配合することにより、ヘキセン−1から誘導される繰り返し単位の量が5〜9重量%の上記の範囲内である場合に、メルトフローレート値と対応する融点値とのかかる組み合わせが達成される。
【0021】
重合プロセスは、連続又はバッチであってよく、公知の技術にしたがって、液相中で操作して、不活性希釈剤の存在下又は不存在下において、或いは気相中において、或いは混合液−気法によって行う。気相中で重合を行うことが好ましい。
【0022】
重合の反応時間、圧力、及び温度は重要ではないが、温度が20〜100℃であると最良である。圧力は大気圧又はそれ以上であってよい。
上記で言及したように、分子量の調整は、公知の調整剤、特に水素を用いることによって行う。
【0023】
かかる立体特異性重合触媒は、
(1)マグネシウム二ハロゲン化物(好ましくは塩化物)上に担持されているチタン化合物及び電子ドナー化合物(内部ドナー)を含む固体成分;
(2)アルミニウムアルキル化合物(共触媒);及び場合によっては
(3)電子ドナー化合物(外部ドナー);
の間の反応の生成物を含む。
【0024】
かかる触媒は、好ましくは、90%より高いアイソタクチックインデックス(室温においてキシレン中に不溶のフラクションの重量として測定)を有するプロピレンのホモポリマーを製造することができる。
【0025】
固体触媒成分(1)は、電子ドナーとして、一般にエーテル、ケトン、ラクトン、N、P、及び/又はS原子を含む化合物、並びにモノ及びジカルボン酸エステルの中から選択される化合物を含む。
【0026】
上記で言及した特徴を有する触媒は特許文献において周知であり、米国特許4,399,054及びヨーロッパ特許45977に記載されている触媒が特に有利である。
かかる電子ドナー化合物の中で、フタル酸エステル及びコハク酸エステルが特に適している。
【0027】
好適なコハク酸エステルは、式(I):
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、基R及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基R〜Rは、互いに同一か又は異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;同じ炭素原子に結合している基R〜Rは一緒に結合して環を形成してもよい)
によって表される。
【0030】
及びRは、好ましくは、C〜Cのアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。R及びRが、第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR及びR基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
【0031】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R〜Rが水素であり、Rが、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基であるものである。式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R〜Rからの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。更に、水素とは異なる少なくとも2つの基、則ちR及びR、又はR及びRが異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。
【0032】
特に適した他の電子ドナーは、公開ヨーロッパ特許出願EP−A−361493及び728769に示されているような1,3−ジエーテルである。
共触媒(2)としては、Al−トリエチル、Al−トリイソブチル、及びAl−トリ−n−ブチルのようなトリアルキルアルミニウム化合物が好ましく用いられる。
【0033】
外部電子ドナーとして(Al−アルキル化合物に加えて)用いることのできる電子ドナー化合物(3)は、芳香族酸エステル(例えばアルキルベンゾエート)、複素環式化合物(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び2,6−ジイソプロピルピペリジン)、並びに特に少なくとも1つのSi−OR結合(ここで、Rは炭化水素基である)を含むケイ素化合物を含む。かかるケイ素化合物の例は、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、1〜18個の炭素原子を有し、場合によってはヘテロ原子を含むアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のものである。
【0034】
テキシルトリメトキシシラン(2,3−ジメチル−2−トリメトキシシリル−ブタン)が特に好ましい。
上述の1,3−ジエーテルも外部ドナーとして用いるのに好適である。内部ドナーがかかる1,3−ジエーテルの1つである場合には、外部ドナーを省くことができる。
【0035】
触媒は、少量のオレフィンと予備接触させ(予備重合)、触媒を炭化水素溶媒中に懸濁状態で保持し、室温〜60℃の温度で重合し、これにより触媒の重量の0.5〜3倍の量のポリマーを製造することができる。
【0036】
また、運転は液体モノマー中で行うこともでき、この場合には触媒の重量の1000倍以下の量のポリマーが製造される。
本発明のコポリマーにはまた、例えば成核剤、及び透明化剤、並びに加工助剤などのオレフィンポリマーのために通常用いられる添加剤を含ませることもできる。
【0037】
好適な透明化剤としては、ソルビトール及びキシリトールのアセタール並びにリン酸エステル塩が挙げられる。多くのかかる透明化剤は米国特許5,310,950に開示されている。ソルビトールのアセタールの具体例としては、ジベンジリデンソルビトール、或いはメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール、又はジメチルジベンジリデンソルビトールのようなそのC〜Cアルキル置換誘導体が挙げられる。好適な商業的に入手できるソルビトール−アセタール透明化剤の例は、Millad 3940及びMillad 3988(いずれもMilliken Chemicalから入手できる)と呼ばれるものである。リン酸エステル塩の具体例としては、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートのナトリウム又はリチウム塩が挙げられる。透明化剤として用いるための商業的に入手できるリン酸エステル塩の例としては、ADK安定剤NA-71及びADK安定剤NA-21(いずれもAmfine Chemical Corp.から入手できる)が挙げられる。特に好ましい透明化剤は、3,4−ジメチルジベンジリデンソルビトール;アルミニウムヒドロキシビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート];ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート;並びにソルビトール及びリン酸エステル塩とは異なる他の透明化剤、例えばN,N’,N”−トリスイソペンチル−1,3,5−ベンゼントリカルボキソアミド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸ジナトリウム又はカルシウム塩(1R,2R,3R,4S)、又は商業的な成核剤のNJ Star PCIである。上記の任意のものの組み合わせを用いることもできる。
【0038】
透明化剤は、公知の方法によって、例えば通常の押出機内において剪断条件下で透明化剤とコポリマーとを溶融ブレンドすることによって本発明のコポリマーに加えることができる。
【0039】
本発明のコポリマーに加えることができる透明化剤の好ましい量は、(コポリマー及び透明化剤の合計重量に対して)2500重量ppm以下、より好ましくは100〜2000重量ppmである。
【0040】
加工助剤の特定の例は、3Mによって販売されているDynamar FX5911のようなフルオロポリマー、及び当該技術において公知の他の同等のポリマー材料である。
上述したように、本発明は、5〜9重量%のヘキセン−1から誘導される繰り返し単位を含み、125℃〜140℃、好ましくは128℃〜139℃の融点、及び0.1〜3g/10分のメルトフローレート(ASTM−D1238、230℃/2.16kg)を有する、プロピレンとヘキセン−1とのかかるコポリマーを含むブローンフィルムも提供する。
【0041】
ブローンフィルムは、本方法によって、ブローンフィルム技術において一般的に用いられる関連装置を用いて製造することができる。
ブローンフィルム(チューブ状フィルムとも呼ばれる)押出の技術は、薄いプラスチックフィルムの製造のために周知である。このプロセスは、溶融した熱可塑性樹脂を環状ダイに通して押出し、次に溶融ウエブの「バブル状」の膨張を行わせることを含む。
【0042】
標準的な手順においては、熱可塑性樹脂を溶融し、溶融ポリマーを均一に溶融してダイヘッドに移送するために、25〜200mmのバレル直径を有する単軸押出機が好ましく用いられる。通常は、平滑か又は溝付きのいずれかの2つの異なるタイプの供給区域が用いられる。
【0043】
時には平滑な供給部を有する通常の押出機がブローンフィルムラインにおいて見られるが、スクリュー速度及び産出量に関して狭い運転範囲を有する。通常は、与えられた流動抵抗のダイによって達成される産出量は、スクリュー速度の増加に比例しては増加しない。一定のスクリュー速度を用いると、ダイ抵抗が増加するにつれて産出量は減少する。溶融温度は、圧力及びスクリュー速度が増加するにつれて不均衡に高くなる。バレル加熱器は、バレル壁温度が流れの方向において上昇するように設定する。可塑化に必要なエネルギーの大部分は、剪断力によって、則ち機械的駆動エネルギーを熱に変換することによって溶融体に与えられる。通常の押出機の移送性は押出機バレルの温度によって定まる。この温度は押出機内の摩擦条件を左右するからである。溶融体を移送するためには、プラスチックとバレルとの間の摩擦がプラスチックとスクリューとの間のものよりも大きくなければならない。スクリューの移送能力は、スクリュー先端が面する箇所の圧力によって大きく左右される。次に、この圧力は、流束、ダイ抵抗、押出温度、及び溶融体の流動特性によって定まる。この理由のために、ダイの形状はスクリューのものと合致させなければならない。
【0044】
殆どの部分に関し、ブローンフィルムラインは溝付きの供給区域を用いて形成される。摩擦は主としてバレル壁の形状によって左右される。高い移送速度を保持するためには、溝付きの区域は強く冷却しなければならない。押出機バレルのデザインは、冷却された溝付きの区域と加熱されたバレルとの間の良好な断熱を確保するものでなければならない。移送速度を決定する原材料の特性は、密度、摩擦係数、及びペレットの形状である。
【0045】
溝付きの供給区域及び平滑な供給区域を有する押出機における異なる移送メカニズムのために、異なるスクリュー形状が必要である。例えば、平滑な供給区域を有する押出機の供給区域におけるフライト深さは、溝付きの供給区域を有する押出機におけるものよりも相当に大きくなければならない。いずれのシステムにおいても、スクリューは一般にバリヤー領域を有する。
【0046】
溝付きの供給区域を有する押出機に関する実質的に全てのスクリュー形状について、剪断及び混合区域を用いることが推奨される。剪断区域によって特にさらなる可塑化が確保される。狭い溶融体流路内における高い剪断応力の結果、これらは充填剤の凝集体及び着色顔料の破壊にも寄与する。螺旋状剪断区域及びMaddock剪断区域が最も広く知られている。
【0047】
剪断区域と対照的に、混合区域の主たる機能は溶融体の分散である。これらの均質化効果は溶融体の強い混合から誘導される。確立されたピンタイプは別として、溝付きディスク及び横方向ボア混合区域、押出機バレルの内壁中及びスクリュー中に空孔を機械加工した混合区域も、熱可塑性樹脂の処理のために好適である。
【0048】
押出機によって5〜1500kg/時の間のブローンフィルムライン産出量が可能である。今日の殆ど全ての機械製造者は、単軸押出機に関する標準としてスクリュー直径の30倍(30D)のスクリュー長さを有する装置を提供している。溶融体フィルターによって、不純物がプラスチックペレットと共に押出機中に導入されるのが阻止され、ダイが閉塞するか又は損傷を受けるようになるのが阻止される。したがって、溶融体フィルターは、再粉砕された未使用でない材料を処理する際には特に重要である。スクリーン交換装置を設置することが推奨される。手動又は半自動の交換装置で一般に十分である。
【0049】
溶融体フィルター中のスクリーンパックによって、スクリュー先端が面する箇所の圧力を操作することができる。多くの場合において、選択的に圧力を適合させることによってスクリューの均質化効果を向上させることができる。ステンレススチール製のスクリーンのみを用いるべきである。真鍮又は銅のスクリーンは、触媒作用を生起して、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂の架橋を引き起こす可能性がある。
【0050】
ブローンフィルムラインは、ダイアセンブリに供給する少なくとも1台で9台以下の異なる押出機を備える。多層フィルムを製造するための共押出システムでは、共通のダイアセンブリに供給する少なくとも2つの押出機を用いる。押出機の数は、共押出フィルムを構成する異なる材料の数によって定まる。有利には、それぞれの異なる材料に関して異なる押出機を用いる。したがって、5層共押出は5つ以下の押出機を必要とする可能性があるが、2以上の層が同じ材料で構成される場合にはこれより少ない数を用いることができる。ここで「共押出」という用語は、押出物が好ましくは冷却又はクエンチの前に積層構造体中に一緒に混合されるように配置されている2以上のオリフィスを有する単一のダイを通して2種類以上の材料を押出すプロセスを指す。
【0051】
ブローンフィルムプロセスにおいては、ダイアセンブリに供給される溶融ポリマーは環状ダイを通して押出される。ダイの中心の孔を通して空気を導入してチューブを風船のように膨らませる。形成されるバブルをダイの出口速度よりも速い速度で牽引する。これを空気流によって強く冷却して、フロストラインにおける温度が微結晶の融点より低くなるようにする。ここでバブルの寸法が固定される。次に、バブルを破壊し、必要ならば切断し、好適な巻取システムを用いて巻き取る。
【0052】
現在のチューブ状フィルムプラントにおいては、通常の押出方向は垂直方向に上向きである。より小さなフィルム形態物を製造する場合には、その後も機械を用いてフィルムバブルを下向きに押出す。これらのプロセスによって製造されるフィルムは8〜250μmの範囲の厚さを有する。垂直方向の螺旋構造を有する螺旋マンドレルダイは、殆ど専ら単層ブローンフィルムの製造のために用いられる。このダイは、一般に50〜2000mmの間の環直径を有する。ダイのギャップ幅は、通常は0.8〜2.5mmの間である。ギャップ幅の選択は、主として押出す熱可塑性樹脂によって定まる。流動学的に適切なダイのデザインは、フィルム厚さの均一性に関する主たる決定要因である。
【0053】
長年にわたって、多層ブローンフィルムの製造は、垂直方向の螺旋の流路を有し、これがその後ダイの出口のすぐ直前で結合している同心状に配列された螺旋状ダイに個々の溶融体流を通すダイを用いてしか可能でなかった。
【0054】
現在では、それぞれが螺旋状の流路を含む複数の積層プレート(それぞれの溶融体流のためのもの)から構成される「積層」ダイを用いることがより一般的である。個々の溶融体流は相次いで一緒に合流する。一部の積層ダイによってそれぞれのプレートの別々の温度制御が可能である。合流した溶融体流の長い流路は幾つかの場合において不利であることが示される可能性がある。
【0055】
今日の殆どの機械製造者は、積層ダイと多層ダイの両方を提供している。多層ダイは、一般に3つ以下の層を有するフィルムのために用いられる。積層ダイは、5つ以上の層を有するフィルムのためにより通常的に用いられる。
【0056】
フィルムバブルの外周の周りを均一に冷却することは、バブルが最小の直径及び厚さの変動を有することを確保する重要な前提条件である。バブル中に形成される結晶化ラインの下側のダイから排出される溶融バブルを冷却するのに、1以上の空冷リングを用いる。ファンによって発生させた空気流を、冷却リングによってバブルの外表面に沿って規定の速度で導く。冷却空気の体積、速度、及び温度によって、バブル膨張区域におけるフィルムバブルの形状が決定される。
【0057】
増加した処理量での均一なフィルムの製造は、一定の温度を有する冷却空気を必要とする。この理由のために、雰囲気空気は冷却のためには推奨されない。他方、冷却された空気によって均一で一定の製造条件が可能になる。更に、これにより冷却能力、及びしたがってブローンフィルムラインの産出量が増大する。しかしながら、10℃より低い空気温度は、空気中の湿分を冷却リングの表面上に凝縮させる可能性がある。これは製造プロセスに不利益をもたらす。
【0058】
最も効率的な単一の冷却リングは二重リップ型である。このタイプの冷却リングを用いると、空気が2つの出口ギャップを介してフィルムバブルに到達する。これにより、特に低い溶融粘度を有する熱可塑性樹脂の処理中のバブルの安定性が向上し、したがって二重リップ冷却リングを用いることによって比較的高い産出量で処理することができる。
【0059】
また、冷却空気リングは、ダイリップと結晶化ラインとの間の異なる位置においてブローンフィルムバブルを冷却することと組み合わせて用いることもできる。現在の構成においては、2つの空気リングを組み合わせて用いる。通常は下方の空気リングをダイに固定し、一方、上方の冷却リングは上下に動かしてラインの始動運転を容易にし、且つバブル外表面に到達する空気流の位置及び強さの正確な調節を容易にすることができる。
【0060】
現在の殆ど全てのブローンフィルム押出ラインによって、フィルムバブルの内側の空気を交換することができる。この所謂内部バブル冷却(IBC)によって、冷却能力が増大し、フィルムバブルの安定化、したがってブローンフィルムプロセスの処理能力の向上に寄与する。フィルムバブルの内側の空気をよく制御して交換することを確保するために、超音波センサー又は機械的検出装置を用いてバブル直径を連続的に監視する。
【0061】
冷却設備のデザインは、フィルムバブルの形状に大きな影響を与える。通常は、ダイとフィルムのブローンチューブとの間の膨張比は、ダイ直径の1.5〜5倍である。溶融体壁厚と冷却フィルム厚との間のドローダウンは、放射方向及び縦方向の両方において起こり、これはバブルの内側の空気の体積を変化させ、牽引速度を変化させることによって容易に制御される。これにより、伝統的なキャストフィルム又は押出方向のみに沿ってドローダウンした押出フィルムよりも良好な特性のバランスがブローンフィルムに与えられる。
【0062】
次にフィルムのチューブを、ニップロールを通してチューブを平坦化してフィルムの「レイフラット」チューブとして知られているものが形成されるまで、上に向かって連続的に冷却し続ける。
【0063】
フロストラインと崩壊フレームとの間において、膨張したフィルムバブルを調整バスケットに通して、フィルムバブルを安定化させ、冷却空気流における乱流を引き起こし、これによって冷却空気とフィルム表面との間の熱交換を向上させる。調整バスケットの高さ及び直径は、一般にバブルの寸法及び安定性の要求にしたがって変化させることができる。バスケットの調整可能なガイドアームに小さなPTFEローラーを取り付けることが通常的である。
【0064】
厚さの許容範囲は別として、平坦性はブローンフィルムに関する最も重要な品質基準の1つである。この理由のために、ブローンフィルム押出ラインには、好適な崩壊及び牽引装置を装備しなければならない。木製のスラット板を有する崩壊装置が通常的であるが、現在の装置については、崩壊板に、自己回転ブラシシステム、アルミニウム又はカーボン繊維ローラーを装備する。バブル崩壊角度及び横三角板の位置をモーターによって制御することが非常に通常的である。この技術によって、機械の操作者が崩壊装置を遠隔制御パネルから寸法変化において迅速に調節することが可能になる。これらの調節によってドラッグ及び側部のしわを回避することができる。
【0065】
崩壊板は、崩壊したバブルを平坦な管材中に押し込む2つの機械駆動回転カレンダーで構成される主牽引システムの直前に配置する。ラバーで被覆された絞りロールがフィルムの牽引のために有効であることが分かっている。多くの場合においては、2つの牽引ロールの1つのみをラバーで被覆する。第2のロールは冷却ロールとして働き、フィルムラインの産出量を増加させるのを助ける。このレイフラット又は崩壊チューブは、次に更なるローラーによって押出塔に戻される。
【0066】
現在の機械工学によっても、フィルムバブルが横方向において厚さの僅かな変動を示すことを阻止することはできない。厚い領域及び薄い領域が巻取中にフィルムロール内に形成され、「ピストンリング」の形成が引き起こされるのを阻止するために、機械製造者は、現在は、フィルム厚さにおける差を巻取中に前後方向にシフトさせて、変形を起こさずに円筒状のフィルムリールが形成されるのを可能にする装置を開発している。
【0067】
逆転牽引装置においては、逆転バーを水平方向又は垂直方向に配列することができる。垂直システムの利点は、比較的簡単な構造及び価格である。水平システムは、特に非常に幅広く非常に薄いフィルムを与える技術的利点を与えるが、より高価である。ところで、逆転バーシステムは、フィルムダイ又は押出機プラットホームの全体を回転させる多かれ少なかれ完全に取って代わられたシステムを有する。
【0068】
レイフラットフィルムは、次にそのまま保持するか、或いはレイフラットの端部を切除して2枚の平坦なフィルムシートを形成してリール上に巻き取る。レイフラットとして保持する場合には、フィルムの幅に沿って封止し切断して、それぞれ袋、ライナー、又はカバーを形成することによって、フィルムのチューブを、袋、ライナー、又はカバーに形成することができる。これは、ブローンフィルムプロセスとインラインか或いは後段のいずれかにおいて行う。
【0069】
フィルムの寸法への最終的な切断は、巻取機の前方で直接行う。切断ユニットは、交換可能な工業用ブレード又は溝付きロールと協働する環状ブレード(剪断切断)としての形態をとることができる。一般に、調節可能な横方向の延伸ロールが切断ユニットの入口区域内に設置されて、しわの無い運転が確保される。ブローンフィルムの場合には、損失なく且つ端部の切除を行うことなく内部延伸及び切断装置を用いて平坦なチューブを2枚のフィルムウエブに切断するために、切断用ナイフがしばしば用いられる。
【0070】
フィルムを巻取る際には、巻取特性を、摩擦挙動、剛性等のようなフィルムの特定の特性に適合させなければならない。
所望のような比較的硬いリールを製造するためには、リール直径が増加する際に巻取張力(則ちフィルムにおける張力)を一定に保持しなければならない。したがって、駆動トルクは巻取直径に伴って増加させなければならない。
【0071】
それらの基本的なデザインによって、3つの巻取機のタイプ、則ち接触巻取機、中央巻取機、及びギャップ巻取機の間で相違する。接触巻取機の場合には、独立駆動加圧ロールをリール表面に押し付けて、これによって巻取リールを回転状態にセットする。巻取機シャフト自体は通常は駆動しない。加圧ロールのトルク及び速度は全巻取プロセス中において一定に保持する。中央巻取機法の場合には、巻取機のシャフトを駆動する。その結果、巻取プロセス中においてトルク及び速度を変化させて、巻取張力及び牽引速度を一定に保持しなければならない。ギャップ巻取機は接触巻取機と中央巻取機の組み合わせであり、加圧ロール及びリールを互いに接触させない一方で、ロールとリールとの間のギャップを巻取プロセス中において一定に保持し、加圧ロール及び巻取機シャフトを別々に駆動する。1つの巻取機において全ての方法を組み合わることも可能である。
【0072】
現在の高性能巻取機は、これらの3種類の巻取方法の任意のものをセットできるようにデザインされている。張力及び特性制御を有する専用のDCモーターによってそれぞれの巻取点を駆動する。更に、かかる巻取機に、フィルムウエブの切断及び積層も含む、完全に自動のリール交換システムを装備する。巻取シャフトの回転方向を逆転させることによって、2つのフィルム側面の位置を(例えば表面予備処理の場合に)反転させることができる。それらのモジュールデザインのために、巻取機は、平坦なチューブのための単ステーション巻取機、或いは切断された平坦なフィルムのためのタンデム巻取機のいずれかとして用いることができる。
【0073】
ブローンフィルムプロセスによってフィルムを製造する主たる利点としては、単一の操作でチューブ(平坦状及びガセット付の両方)を製造する能力、バブル内の空気の体積、押出機の産出量、及び牽引速度を制御することによってフィルムの幅及び厚さを調節する能力、平坦なダイフィルム押出から生起する可能性のある端面ビーズの切断及び不均一な温度のような末端効果を排除する能力、二軸配向を得る(機械特性の均一性が可能になる)能力、並びに食品包装のような高いバリヤー用途のための共押出多層フィルムを製造する能力が挙げられる。
【0074】
したがって、本発明は、本発明のプロピレンとヘキセン−1とのコポリマーを用いて少なくとも1つのフィルム層を形成するブローンフィルムプロセスも提供する。
かかるプロセスにおいては、以下の主要な設定及び条件にしたがって運転することが好ましい。
【0075】
押出は、好ましくは溝付き供給部ボア押出機、及び二重フライトバリヤ部材を有する最新のスクリューを用いて行う。更により好ましくは、押出スクリューに少なくとも1つの更なる混合部材を装備する。
【0076】
スクリュー長さは、好ましくはスクリュー直径の20〜40倍、より好ましくはスクリュー直径の25〜35倍である。最も好ましくは、スクリュー長さはスクリュー直径の27〜33倍である。
【0077】
バレル及びダイの温度は一般に160〜270℃である。
特に、押出機バレル温度の設定値は、好ましくは160〜270℃、より好ましくは180〜260℃、特に200〜250℃である。
【0078】
これらの温度設定を用いて得られる溶融体温度は好ましくは210〜260℃であり、剪断応力条件下での溶融ポリマーの自己加熱の可能性のために温度設定値を超える可能性がある。
【0079】
ダイ温度は、好ましくは200〜270℃、より好ましくは210〜250℃、特に220〜240℃である。
フィルム押出は、好ましくは垂直方向に上向きの方向に行う。
【0080】
ブローアップ比は、好ましくは2.2〜4、より好ましくは2.4〜3.6である。
ダイ直径は、30mm〜2m又はそれ以上の任意の商業的なダイの寸法であってよく、好ましくは、ダイ直径は100mm〜1m、より好ましくは150mm〜650mmである。
【0081】
フィルムの冷却は、液体又は気体状態のいずれであってもよい冷却流体を用いて行う。液体冷却媒体を用いる冷却の場合には、水が好ましい冷却媒体であり、押出方向は好ましくは垂直方向に下向きである。気体状冷却媒体を用いる冷却の場合には、空気が好ましい冷却媒体であるが、窒素のような他の気体を用いることもでき、押出方向は好ましくは垂直方向に上向きである。
【0082】
気体によるフィルムクエンチの場合においては、冷却は好ましくは少なくとも1つの二重リップ冷却リングを用いて行うが、単リップ冷却リングを用いることもできる。更に好ましくは、内部バブル冷却(IBC)を用いる。冷却媒体の温度は、好ましくは5〜20℃、より好ましくは10〜20℃、最も好ましくは8〜15℃である。
【0083】
場合によっては、空冷は2つの冷却空気リングを用いて行い、ここでは、下部空気リング(垂直方向に上向きのフィルム押出の場合)は垂直方向において移動不可であり、単一の空気リング冷却システムと比較して更なる処理量の増加を可能にするために上部空気リングの位置は垂直方向において移動させることができる。
【0084】
ダイリングのギャップ(環状ダイギャップ)は、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.8mm以下、特に0.6〜3又は0.6〜1.8mm、最も好ましくは0.8〜1.8mmである。
【0085】
通常のブローンフィルムの用途としては、工業包装(例えば、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、ストレッチフード、バッグフィルム、又は容器ライナー)、消費者包装(例えば、冷凍製品用の包装フィルム、輸送包装用のシュリンクフィルム、食品ラッピングフィルム、包装用袋、又は成形包装、充填包装、及び封止包装用フィルム)、積層フィルム(例えば、牛乳又はコーヒーを包装するために用いるアルミニウム又は紙の積層)、バリヤーフィルム(例えば、食品、例えば冷肉及びチーズを包装するために用いる香気又は酸素のバリヤーとして作用するポリアミド及びEVOHのような原材料から製造されるフィルム)、医療品の包装用のフィルム、農業用フィルム(例えば、温室用フィルム、農作物促成用フィルム、貯蔵用フィルム、貯蔵用ストレッチフィルム)が挙げられる。
【0086】
本発明のフィルムの厚さは、一般に250μmより小さく、好ましくは150μmより小さい。これは単層又は多層フィルムであってよい。
多層フィルムにおいては、少なくとも1つの層が本発明のコポリマーを含む。少なくとも基層(「支持層」とも呼ばれる)が本発明のコポリマーを含むことが好ましい。他の1つ又は複数の層には、他の種類のポリマーを含ませることができる。
【0087】
他の層のために用いることができるオレフィンポリマーの例は、CH=CHR(ここで、Rは、水素原子又はC〜Cアルキル基である)のオレフィンのポリマー又はコポリマー並びにこれらの混合物である。
【0088】
以下のポリマーが特に好ましい:
(a)アイソタクチック又は主としてアイソタクチックのプロピレンホモポリマー、並びにHDPE、LDPE、LLDPEなどのエチレンのホモポリマー又はコポリマー;
(b)プロピレンと、エチレン、及び/又は、例えばブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、オクテン−1のようなC〜C10のα−オレフィンとの半結晶性コポリマー(ここで、全コモノマー含量はコポリマーの重量に対して0.05重量%〜20重量%の範囲である)、或いはかかるコポリマーと、アイソタクチック又は主としてアイソタクチックのプロピレンホモポリマーとの混合物;
(c)場合によっては少量(特に1重量%〜10重量%)の、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、エチリデン−1−ノルボルネンのようなジエンを含む、エチレンとプロピレン及び/又はC〜C10のα−オレフィンとのエラストマーコポリマー;
(d)プロピレンホモポリマー及び/又は項目(b)のコポリマーの1つ、並びに項目(c)のコポリマーの1以上を含むエラストマーフラクションを含むヘテロ相コポリマー(これらは通常は、公知の方法にしたがって、溶融状態の成分を混合するか、又は逐次重合によって製造され、一般に5重量%〜90重量%の量の該エラストマーフラクションを含む);
(e)ブテン−1のホモポリマー又はエチレン及び/又は他のα−オレフィンとのコポリマー。
【0089】
他の層のために用いることのできるポリオレフィンとは異なるポリマーの例は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネート、エチレンとビニルアルコールとのコポリマー(EVOH)、並びに「結合層」樹脂である。
【0090】
最後に、本発明のフィルムは、
表面を加熱し、それをエンボス加工ローラーに押し付けることによる表面エンボス加工;
酸化(例えば炎処理)によって表面をインクに対して感受性にするか又はイオン化処理(例えばコロナ放電処理)を行った後の印刷;
表面の加熱及び加圧による特にポリプロピレンの布帛又はフィルムとの結合;
他のポリマー又は金属材料(例えばアルミニウムフィルム)との共押出;
メッキ処理(例えば真空下での蒸発によるアルミニウム層の堆積);
フィルムの2つの面の1つの上へ接着剤層を適用して接着性フィルムを製造すること;
のような一連のその後の操作にかけることができる。
【0091】
フィルムの具体的な種類及び最終処理によって、本発明のフィルムは多くの用途を見出すことができ、その中で商品及び食品の包装が最も重要である。
【実施例】
【0092】
目的を制限することなく本発明を例示するために以下の実施例を与える。
実施例のポリマー材料及びフィルムに関するデータは、以下に報告する方法を用いて測定した。
【0093】
融点(ISO−11357−3):
示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。6±1mgの秤量した試料を、窒素流中において、20℃/分の速度で200±1℃に加熱して200±1℃に2分間保持し、その後20℃/分の速度で40±2℃に冷却し、この温度に2分間保持して試料を結晶化させた。次に、試料を200±1℃まで20℃/分の温度上昇速度において再び溶融させた。溶融スキャンを記録し、温度記録を得て、これからピークに対応する温度を読み取った。第2の溶融中に記録された最も強度の大きい溶融ピークに対応する温度を融点とした。
【0094】
メルトフローレート(MFR):
ASTM−D1238にしたがい、230℃において2.16kgの負荷を用いて測定した。
【0095】
キシレン中の溶解度:
冷却器及び磁気スターラーを取り付けたガラスフラスコ内に、2.5gのポリマー及び250mLのキシレンを導入した。温度を、30分で溶媒の沸点まで昇温した。かくして得られた明澄な溶液を、次に還流下に保持し、更に30分間撹拌した。次にフラスコを閉止し、氷水浴中に30分間保持し、更に25℃の温度制御水浴中に30分間保持した。かくして形成された固体を迅速濾紙上で濾過した。100mLの濾液を予め秤量したアルミニウム容器内に注ぎ入れ、窒素流下において加熱プレート上で加熱して、蒸発によって溶媒を除去した。次に、容器を、一定重量が得られるまで、真空下、80℃のオーブン内に保持した。次に、室温においてキシレン中に可溶のポリマーの重量%を算出した。
【0096】
固有粘度(IV):
テトラヒドロナフタレン中135℃において測定した。
1−ヘキセン含量及びアイソタクチシティー:
13C−NMR分光法によって測定した。
【0097】
13C−NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで120℃において150.91MHzで運転するBruker DPX-600分光計上で獲得した。
試料を120℃において1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2中に8%wt/vの濃度で溶解した。90°のパルス、H−13Cカップリングを除去するためのパルスとCPD(WALTZ16)との遅延15秒でそれぞれのスペクトルを獲得した。6000Hzのスペクトルウインドウを用いて約1500の過渡スペクトルを32Kのデータ点で保存した。
【0098】
プロピレンCHのピークを28.83ppmの内部参照として用いた。
以下の等式:
PP=100 Sαα(PP)/Σ;
PH=100 Sαα(PH)/Σ;
HH=100 Sαα(HH)/Σ;
ここで、Σ=Σααであり、
[P]=PP+0.5PH;
[H]=HH+0.5PH;
を用いてSααからダイアド分布及び組成の計算値を得た。
【0099】
及びM
好ましくは1,2,4−トリクロロベンゼン中で行うゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。詳しくは、試料を50mLの安定化1,2,4−トリクロロベンゼンあたり70mgの濃度(250μg/mL−BHT(CAS登録番号128−37−0))で調製した;次に試料を170℃に2.5時間加熱して可溶化した;測定は、Waters GPCV2000上で、145℃において、1.0mL/分の流速において、同じ安定化溶媒を用いて行った。3つのPolymer Labカラム(Plgel、20μmの混合ALS、300×7.5mm)を直列で用いた。
【0100】
エルメンドルフ引裂強さ:
ASTM−D1922にしたがって、機械方向(MD)及び横方向(TD)の両方において測定した。
【0101】
穿刺抵抗及び変形:
プランジャー(50mm、4mmの直径)を用い、20mm/分の速度を用いてフィルムを穿刺するのに必要なエネルギーから求め、その後に変形を測定した。
【0102】
曇り度:
ASTM法D1003にしたがって測定した。
透明度:
ASTM−D1746にしたがって測定した。
【0103】
45°における光沢:
ASTM−D2457にしたがって測定した。
ダート試験:
ASTM法D1709Aにしたがって測定した。
【0104】
引張弾性率:
ASTM−D882にしたがって、機械方向(MD)及び横方向(TD)の両方において測定した。
【0105】
降伏点及び破断点における応力及び伸び:
ASTM−D882にしたがって、機械方向(MD)及び横方向(TD)の両方において測定した。
【0106】
プロピレンとヘキセン−1とのコポリマーの製造:
以下のようにしてコポリマーを調製した。
重合において用いた固体触媒成分は、WO−03/054035に記載されている触媒成分Aを製造するための方法と同様の方法によって製造した、約2.2重量%のチタン及び内部ドナーとしてジイソブチルフタレートを含む、塩化マグネシウム上に担持されている高立体特異性チーグラー・ナッタ触媒成分であった。
【0107】
触媒系及び予備重合処理:
それを重合反応器中に導入する前に、上記記載の固体触媒成分を、15℃においてアルミニウムトリエチル(TEAL)及びテキシルトリメトキシシラン(2,3−ジメチル−2−トリメトキシシリル−ブタン)と、約7に等しいTEAL/テキシルトリメトキシシランの重量比で、且つTEAL/固体触媒成分の重量比が約6に等しくなるような量で、約6分間接触させた。
【0108】
次に、それを重合反応器中に導入する前に、それを20℃において液体プロピレン中に約20分間懸濁状態で保持することによって触媒系を予備重合にかけた。
重合:
予備重合触媒系、水素(分子量調整剤として用いた)、気体状態のプロピレン及びヘキセン−1を連続の一定流で供給することによって、気相重合反応器内で重合を行った。
【0109】
主要な重合条件は、
・温度:75℃;
・圧力:1.6MPa;
・H/C3−のモル比:0.0005;
・C6−/(C6− + C3−)のモル比:0.0453;
・滞留時間:96分間。
【0110】
ここで、C3−=プロピレン;C6−=ヘキセン−1;である。
固体触媒成分1gあたりポリマー8400gのポリマー収量が得られた。
反応器から排出されるポリマー粒子を蒸気処理にかけて反応性モノマー及び揮発性物質を除去した後、乾燥した。
【0111】
得られたプロピレンコポリマーは7.3重量%のヘキセン−1を含んでいた。更に、かかるプロピレンコポリマーは以下の特性を有していた。
・MFR:0.3g/10分;
・キシレン中に可溶のフラクションの量:18.1重量%;
・融点:132.3℃。
【0112】
それを用いてフィルムを製造する前に、プロピレンとヘキセン−1とのかかるコポリマーを添加剤と共に押出して、それによってコポリマー材料COPO−1及びCOPO−2を得た。
【0113】
COPO−1は、かかるコポリマーを500重量ppmのDynamar FX5911と共に押出すことによって得た。
COPO−2は、かかるコポリマーを500重量ppmのDynamar FX5911及び1800重量ppmのMillad 3988と共に押出すことによって得た。
【0114】
Dynamar FX5911は、3Mによって販売されている、加工助剤として用いるためのフルオロポリマーである。
Millad 3988は、ビス(3,4−ジメチルジベンジリデン)ソルビトールをベースとする透明化剤である。
【0115】
実施例1及び2並びに比較例1〜4:
Collinの3層共押出ライン上で3層フィルムを製造した。実施例1のフィルムは、3つの層全てに関してCOPO−1を用いることによって製造した。実施例2のフィルムは、3つの層全てに関してCOPO−2を用いることによって製造した。
【0116】
比較例1においては、3つの層全てに関して用いたポリマー材料は、予め500重量ppmのDynamar FX5911と共に押出した、15重量%のブテン−1を含み、0.8g/10分のMFR値を有するプロピレンとブテン−1とのコポリマーであった。
【0117】
比較例2においては、3つの層全てに関して比較例1と同じプロピレンとブテン−1とのコポリマーを用いたが、予め500重量ppmのDynamar FX5911及び1800重量ppmのMillad 3988と共に押出した。
【0118】
比較例3においては、3つの層全てに関して用いたポリマー材料は、予め1800重量ppmのMillad 3988と共に押出した、5重量%のエチレンを含み、2g/10分のMFR値を有するプロピレンとエチレンとのコポリマーであった。
【0119】
比較例4においては、3つの層全てに関して用いたポリマー材料は、予め500重量ppmのDynamar 5911及び1800重量ppmのMillad 3988と共に押出した、6.5重量%のエチレンを含み、2.3g/10分のMFR値を有するプロピレンとエチレンとのコポリマーであった。
【0120】
Dynamar FX5911及びMillad 3988を用いる押出は全て、共回転二軸3ロブ異形押出機(Coperion Werner & Pfleidererによって製造されているZSK53タイプ、長さ/直径比=20)内において、窒素雰囲気下、以下の条件で行った。
【0121】
・回転速度:220rpm;
・押出機産出量:80kg/時
・溶融温度:250〜260℃。
【0122】
かかるCollin共押出ラインにおいて、スクリュー長さ/スクリュー直径の比は、押出機A及びCに関しては30mm/30×Dであり、一方、Bに関しては45mm/30×Dであった。IBCSシステム(内部バブル冷却システム)は用いなかった。押出試験中においては、100mmの直径及び非常に狭いギャップ(それぞれの試験に関して0.8mm)を有する環状ダイを通して溶融体を押出した。ダイからの出口において、溶融体チューブを強い空冷にかけ、直ちにダイの直径の約3倍に膨張させ、流れ方向に延伸した。
【0123】
実施例1及び2の主要な運転条件は、
・バレル温度:200−240−220−220−220℃;
・アダプター温度:220℃;
・ダイ温度:230−250−230−225−230℃;
・スクリュー速度:3台の押出機全てに関して30rpm;
・ブローアップ比:3.1;
・ライン速度:5.3m/分;
であった。
【0124】
比較例1及び2においては、以下のものを除いて実施例1及び2と同じ条件を用いた。
・スクリュー速度:3台の押出機全てに関して50rpm;
・ブローアップ比:3;
・ライン速度:10m/分。
【0125】
比較例3及び4においては、以下のものを除いて実施例1及び2と同じ条件を用いた。
・バレル温度:200−240−220−210−210℃;
・アダプター温度:210℃;
・ダイ温度:比較例3においては240−250−240−250−250℃;比較例4においては230−245−230−230−230℃;
・ブローアップ比:比較例3においては2.8;比較例4においては2.9;
・ライン速度:7m/分。
【0126】
フィルムの最終フィルム厚さは約50ミクロンであり、20/60/20の厚さ分布(パーセント)を有していた。
かくして得られたフィルムの特性を表1に報告する。
【0127】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜9重量%のヘキセン−1から誘導される繰り返し単位を含み、125℃〜140℃の融点、及び0.1〜3g/10分のメルトフローレート(ASTM−D1238、230℃/2.16kg)を有する、プロピレンとヘキセン−1とのコポリマー。
【請求項2】
25重量%以下の室温におけるキシレン中の溶解度を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
透明化剤を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
塩化マグネシウム上に担持されているチタン化合物及び電子ドナー化合物を含む固体成分、アルミニウムアルキル化合物、及び外部電子ドナー化合物を含む立体特異性チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行う、請求項1に記載のポリマーを製造するための重合方法。
【請求項5】
外部電子ドナー化合物が、少なくとも1つのSi−OR結合(ここでRは炭化水素基である)を含むケイ素化合物から選択される、請求項4に記載の重合方法。
【請求項6】
外部電子ドナー化合物がテキシルトリメトキシシランである、請求項4に記載の重合方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプロピレンとヘキセン−1とのコポリマーを含むブローンフィルム。
【請求項8】
250μmより小さい厚さを有する、請求項7に記載のブローンフィルム。
【請求項9】
請求項7に記載のブローンフィルムを含む商品及び食品の包装材。
【請求項10】
請求項1に記載のプロピレンとヘキセン−1とのコポリマーを用いて少なくとも1つのフィルム層を形成する、ブローンフィルムの製造方法。
【請求項11】
・スクリュー直径の20〜40倍のスクリュー長さ;
・160〜270℃のバレル及びダイ温度;
・3mm以下の環状ダイギャップ;
・2.2〜4のブローアップ比;
・5〜20℃の冷却媒体温度;
の条件下で行う、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2011−506715(P2011−506715A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538529(P2010−538529)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065907
【国際公開番号】WO2009/077287
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】