説明

プロピレンのマルチモーダルポリマー、それを含む組成物、およびそれを製造するためのプロセス

本発明の目的としているのは、半晶質ポリマーのマトリックスおよび前記マトリックスの中に分散されたゴム(D)を含むプロピレンのマルチモーダルポリマーを提供することであって、そのマルチモーダルポリマーが、85〜99重量%のプロピレンから誘導される単位ならびに1〜15重量%のエチレンまたはC〜C10アルファ−オレフィンから誘導される単位を含む。そのマルチモーダルポリマーは、以下の性質を有している:キシレン可溶性比率XS(温度25℃)が7〜16重量%、メルトフローレートMFRが0.05〜5g/10分、多分散性指数PIが3.5〜30、そして引張弾性率TMとXSとが、TM≧2375−46.2・XSの関係を満たす。
さらに、本発明は、数段の反応ステップまたはゾーンを含むプロセスにおいて、上述のマルチモーダルポリマーを製造することも目的としている。
そのプロピレンのマルチモーダルポリマーを含む組成物は、優れた剛性に組み合わせて、低温における良好な衝撃強度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性とキシレン可溶性ポリマー比率との間で改良されたバランスを有する異相プロピレンコポリマーを提供する。
【0002】
本発明はさらに、剛性とキシレン可溶性ポリマー比率との間で改良されたバランスを有するプロピレンコポリマーを製造するためのプロセスも提供する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、改良された剛性を有するプロピレンポリマーが開示されている。そのポリマーは、β結晶化プロピレンホモポリマーまたは異相コポリマーである。その剛性は、無機充填剤たとえばタルクを少なくとも10重量%の量で添加することによって上昇した。
【0004】
特許文献2には、高い剛性を有するプロピレンコポリマー組成物が開示されている。その実施例には、約10〜13%のキシレン可溶性ポリマー比率を有するポリマーでは、その引張弾性率が1400〜1700MPaであることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、剛性と衝撃強度とのバランスが改良されたプロピレンポリマー組成物が開示されている。その実施例では、XSが6〜7%の場合では、引張弾性率が1930〜1860MPaであったと報告されている。
【0006】
特許文献4には、低いXSと高い剛性を有するプロピレンポリマーが開示されている。それらのポリマーは、多くとも2%のキシレン可溶性ポリマーを含み、0.01〜10g/10分のメルトフローレートを有していたと報告されている。
【0007】
特許文献5には、改良された剛性と、2g/10分を超えるメルトフローレートとを有する、分子量分布の広いプロピレンホモポリマーおよびコポリマーが開示されている。それらのポリマーはさらに、他のポリマーたとえばエラストマーとブレンドすることも可能であった。
【0008】
特許文献6には、高分子量成分および低分子量成分からなる分子量分布の広いマトリックス成分と、弾性成分とを有するプロピレンポリマーが開示されている。
【0009】
特許文献7には、高い引張弾性率と良好な衝撃強度とを有するポリプロピレンから製造した物品が開示されている。その実施例には、1811MPaの引張弾性率および8.3%のXSを有する樹脂が開示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A1364986号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A1724303号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A1632529号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第A2005/0187367号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第A573862号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第A1026184号明細書
【特許文献7】国際公開第A2005/014713号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の公刊物は、プロピレンポリマーおよびプロピレンポリマーを含む組成物を開示してはいるが、ポリマーの耐衝撃性を維持しながらも、剛性をさらに改良する必要性が依然として残っている。特に、任意のキシレン可溶性ポリマー配合量で、さらにより高い剛性(すなわち、より高い引張弾性率)のポリマーが必要とされている。
【0012】
本発明のプロピレンポリマーは、各種の用途、たとえば熱成形、フィルム押出し成形、パイプ押出し成形および各種の成形用途たとえば射出成形およびブロー成形において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一つの態様は、半晶質ポリマーのマトリックスおよび前記マトリックスの中に分散されたゴム(D)を含むプロピレンのマルチモーダルポリマーを提供することであるが、そのマルチモーダルポリマーは、85〜99重量%のプロピレンから誘導される単位ならびに1〜15重量%のエチレンおよび/またはC〜C10アルファ−オレフィンから誘導される単位を含み、そのマルチモーダルポリマーは以下の特性を有している:
キシレン可溶性比率XS(温度25℃)が7〜16重量%;
メルトフローレートMFRが0.05〜5g/10分;
多分散性指数PIが3.5〜30;
引張弾性率TMとXSとが、TM≧2375−46.2・XSの関係を満たす。
【0014】
本発明の別な態様は、プロピレンのマルチモーダルポリマーを製造するためのプロセスを提供するが、前記プロセスには以下のステップを含む:
− 重合触媒を第一の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンをその第一の重合ゾーンにフィードするステップ;
− その第一の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− 未反応プロピレン、ポリプロピレンおよび重合触媒を含む反応混合物の一部を、その第一の反応ゾーンから連続的または断続的に排出するステップ;
− 重合触媒を第二の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンおよび水素をその第二の重合ゾーンにフィードするステップ;
− その第二の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− その第二の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− 重合触媒を第三の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンおよび場合によっては水素をその第三の重合ゾーンにフィードするステップ;
− その第三の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− その第三の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− 重合触媒を第四の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレン、エチレンまたはC〜C10アルファ−オレフィンコモノマー、および場合によっては水素を、その第四の重合ゾーンにフィードするステップ;
− その第四の重合ゾーンを、プロピレンとそのアルファ−オレフィンコモノマーとを前記触媒の存在下で共重合させてプロピレンの弾性コポリマーとする条件に維持するステップ;
− その第四の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− そのポリマーを回収するステップ;
− その回収したポリマーを少なくとも1種の添加剤と混合して、ポリマーと少なくとも1種の添加剤との混合物を製造するステップ;ならびに
− 前記混合物を押出し成形してペレットとするステップ;
ここで、前記第一、第二、第三および第四の反応ゾーンが、カスケードを形成していて、それによって先行のゾーンからのポリマーが、前記ポリマー中に分散された活性触媒と共に後続の反応ゾーンに移行され、そしてそのポリマーの一部が、後続のゾーンから先行のゾーンへと戻されてもよく、そしてここで、前記第一、第二、第三および第四の反応ゾーンは、いかなる順序で配列されてもよく、そしてここで、そのプロピレンのマルチモーダルポリマーが、半晶質ポリマーのマトリックスおよび前記マトリックスの中に分散されたゴム(D)を含み、そのマルチモーダルポリマーは、85〜99重量%のプロピレンから誘導される単位と、1〜15重量%のエチレンまたはC〜C10アルファ−オレフィンから誘導される単位とを含み、そのマルチモーダルポリマーは以下の特性を有している: キシレン可溶性比率XS(温度25℃)が7〜16重量%;
メルトフローレートMFRが0.05〜5g/10分;
多分散性指数PIが3.5〜30;
引張弾性率TMとXSとが、TM≧2375−46.2・XSの関係を満たす。
【0015】
上述の定義において、MFRは、ISO 1133に従って求め、PIは多分散性指数であって、PIは、次式に従って計算し:PI=105Pa/G[式中、G(単位Pa)は、動的レオロジー実験から得られるG’=G”=Gの場合のクロスオーバー弾性率である]、そしてTMは、ISO 527−2に従って求めた引張弾性率であるが、これらについては本明細書において後に説明する。
【0016】
本発明によるポリマーは、衝撃強度と剛性との間、特に低温における衝撃強度と剛性との間での優れたバランスを有している。
【0017】
本発明によるプロセスは、上述のような優れたポリマーを製造するための、低コストで融通のきく方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるプロセスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ポリマー組成物
半晶質ポリマーのマトリックスおよび前記マトリックスの中に分散されたゴム(D)を含むプロピレンのマルチモーダルポリマーであって、そのマルチモーダルポリマーは、85〜99重量%のプロピレンから誘導される単位ならびに1〜15重量%のエチレンおよび/またはC〜C10アルファ−オレフィンから誘導される単位を含み、そのマルチモーダルポリマーは以下の特性を有している:
キシレン可溶性比率(温度25℃)XSが7〜16重量%;
メルトフローレートMFRが0.05〜5g/10分;
多分散性指数PIが3.5〜30(動的レオロジー測定によって、PI=105Pa/Gとして得られるものであり、ここでGはG’=G”=Gとなる場合のクロスオーバー弾性率である);
引張弾性率TMとXSとが、TM≧2375−46.2・XSの関係を満たす。
【0020】
本発明によるポリマー組成物は、一方においては剛性、他方においては衝撃強度の傑出した組合せを与える。それらは、各種用途たとえば射出成形、フィルム押出し成形、パイプ押出し成形などにおいて使用することができる。
【0021】
本発明の目的においては、「マルチモーダルポリマー」という用語は、少なくとも2種の成分、好ましくは少なくとも3種の成分を含み、それぞれの成分が、そのポリマー中の他のどの成分の対応する値とも実質的に異なる、重量平均分子量、またはメルトフローレート、または固有粘度を有しているポリマーを指すのに使用される。本明細書においては、「実質的に異なる(substantially different)」という用語は、その値が、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%は異なっていることを意味している。
【0022】
先に示したように、多分散性指数PIは、3.5〜30である。PIの値は、好ましくは5〜30、より好ましくは7〜25の範囲内である。PIが、少なくとも7、たとえば7〜30の値を有しているのが、特に好ましい。
【0023】
プロピレンのマルチモーダルポリマーが、0.1〜2g/10分のメルトフローレートMFRを有しているのが好ましい。プロピレンのマルチモーダルポリマーのマトリックスが、0.1〜2g/10分のメルトフローレートMFRを有していれば、さらに好ましい。
【0024】
先に示したように、そのポリマーは、7%〜16%のキシレン可溶性ポリマー比率(温度25℃)XSを有している。キシレン可溶性ポリマー比率は、好ましくは7〜14%、より好ましくは8〜14%、たとえば8〜12%である。本明細書で後に説明するように、キシレン可溶性ポリマー比率は、そのポリマーを熱キシレンを溶解させ、次いでその溶液を冷却し、不溶性ポリマーの比率を測定することによって求める。
【0025】
そのマルチモーダルポリマーが、次の関係式を満たす引張弾性率TMおよびXSを有しているのが好ましい:
TM≧2375−46.2・XS(XS<10.3の場合)、またはTM≧1900(XS≧10.3の場合)。
【0026】
そのプロピレンのマルチモーダルポリマーのマトリックスが、プロピレンホモポリマーであるのが好ましい。このことによって、そのマルチモーダルポリマーが高い剛性を達することが可能となる。しかしながら、プロセスストリームには、不純物としてある種の他の重合性化学種を含んでいる可能性があるので、そのホモポリマーには、プロピレン単位とは異なる微量の他の単位が含まれている可能性があることは理解するべきである。そのような他の単位の量は、0.1モル%未満、好ましくは0.05モル%未満である。そのホモポリマーがプロピレン単位のみを含んでいるのが、特に好ましい。
【0027】
本発明のポリマー組成物が、以下の4種の成分を含んでいるのが特に好ましい。
【0028】
第一の成分
好適な組成物の第一の成分は、高分子量プロピレンホモポリマー(A)である。その高分子量プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは0.001〜0.1g/10分のメルトフローレートMFRを有している。それとは別か、または追加の条件として、その高分子量ポリマー(A)の固有粘度が、少なくとも6dL/gであるのが好ましい。その高分子量プロピレンホモポリマー(A)が、組成物中に、成分(A)、(B)および(C)を合計した量を規準にして、5〜50重量%の量で存在しているのが好ましい。ホモポリマー(A)が10〜45%の量で存在していれば、より好ましい。
【0029】
第二の成分
好適な組成物の第二の成分は、低分子量プロピレンホモポリマー(B)である。その低分子量プロピレンホモポリマー(B)は、5〜100g/10分のメルトフローレートMFRを有しているのが好ましい。それとは別か、または追加の条件として、それは、0.5〜3dL/gの固有粘度を有している。その低分子量ホモポリマー(B)が、組成物中に、成分(A)、(B)および(C)を合計した量を規準にして、30〜70重量%の量で存在しているのが好ましい。ポリマー(B)の量が40〜65%であれば、より好ましい。
【0030】
第三の成分
好適な組成物の第三の成分は、中間分子量プロピレンホモポリマー(C)である。その中間分子量プロピレンホモポリマー(C)は、0.1〜5.0g/10分のメルトフローレートMFRを有しているのが好ましい。それとは別か、または追加の条件として、それは、3〜5dL/gの固有粘度を有している。その中間分子量ホモポリマー(C)が、組成物中に、成分(A)、(B)および(C)を合計した量を規準にして、5〜35重量%の量で存在しているのが好ましい。
【0031】
第四の成分
好適な組成物の第四の成分は、プロピレンと、エチレンおよびC〜C10アルファ−オレフィンから選択される少なくとも1種のその他のアルファ−オレフィンコモノマーとの弾性コポリマー(D)である。その弾性コポリマー(D)は、2〜10dL/gの固有粘度を有しているのが好ましい。弾性コポリマー(D)は、弾性コポリマー(D)の全単位数を規準にして、プロピレン以外のコモノマー(1種または複数)から誘導される単位を25〜75モル%、より好ましくは30〜70モル%の量で含有していることが更に好ましい。そのコポリマー(D)の組成物中の存在する量は、全組成物を規準にして7〜16重量%の量であることが更に好ましい。ポリマー(D)の量はより好ましくは8〜14%であり、更に好ましくは8〜12%である。
【0032】
その他の成分
上に列記したポリマー成分に加えて、そのポリマー組成物には他の成分を含んでいてもよい。特に、たとえば抗酸化剤、プロセス安定剤、UV遮断剤もしくは安定剤、成核剤などの当技術分野で公知の添加剤および充填剤を含んでいてもよい。
【0033】
その組成物が、成核剤、特にα−成核剤を含んでいるのが特に好ましい。成核剤はたとえば、剛性を上げたり、透明性を改良したり、結晶化挙動を改良したりするために使用される。それらは、プラスチックの中に組み入れたときに、ポリマー溶融物の中で結晶を成長させるための核を形成する化学物質である。たとえばポリプロピレンの中では、アジピン酸および安息香酸、またはそれらのある種の金属塩のような成核剤を添加することによって、より高い結晶化度およびより均質な結晶構造が得られる。好適な成核剤の例としては、次のものが挙げられる:タルク、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、ナノクレーたとえばモンモリロナイト、安息香酸ナトリウム、4−tert−ブチル安息香酸のナトリウム塩、アジピン酸もしくはジフェニル酢酸のナトリウム塩、コハク酸ナトリウム、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、またはポリ(3−メチル−1−ブテン)。成核剤は当技術分野における公知の量で使用され、たとえば、その成核剤のタイプに応じて0.00001〜3重量%で使用される。
【0034】
重合プロセス
触媒
固体の遷移金属成分には、好ましくは、ハロゲン化マグネシウムおよび遷移金属化合物が含まれる。これらの化合物は、粒子状担体たとえば、シリカもしくはアルミナのような無機酸化物上に担持させてもよいし、あるいは、通常は、ハロゲン化マグネシウムそれ自体に固体担体を形成させてもよい。そのような触媒の例は、とりわけ、以下の特許に開示されている:国際公開第87/07620号パンフレット、国際公開第92/21705号パンフレット、国際公開第93/11165号パンフレット、国際公開第93/11166号パンフレット、国際公開第93/19100号パンフレット、国際公開第97/36939号パンフレット、国際公開第98/12234号パンフレット、国際公開第99/33842号パンフレット、および国際公開第03/000756号パンフレット。たとえばエマルションから触媒を固化させることによって、触媒全体を1ステップで調製することも可能である。そのような触媒は、とりわけ、国際公開第03/000757号パンフレット、国際公開第03/000754号パンフレット、および国際公開第2004/029112号パンフレットに開示されている。
【0035】
ハロゲン化マグネシウムおよび遷移金属化合物に加えて、固体遷移金属成分には通常、電子供与体(内部電子供与体)も含まれる。適切な電子供与体は、とりわけ、カルボン酸のエステルたとえば、フタル酸エステル、シトラコン酸エステル、およびコハク酸エステルである。さらには、酸素含有または窒素含有ケイ素化合物を使用してもよい。適切な化合物の例は、次の特許に示されている:国際公開第92/19659号パンフレット、国際公開第92/19653号パンフレット、国際公開第92/19658号パンフレット、米国特許第4347160号明細書、米国特許第4382019号明細書、米国特許第4435550号明細書、米国特許第4465782号明細書、米国特許第4473660号明細書、米国特許第4530912号明細書、および米国特許第4560671号明細書。
【0036】
有用な固体触媒成分の一つの群は、国際公開第2004/029112号パンフレットに開示されているものである。したがって、本発明の一つの好ましい実施態様においては、その固体触媒成分が、以下のステップを含むプロセスによって調製される:C〜C10芳香族液状反応媒体中で、アルコキシマグネシウム化合物と電子供与体もしくはその前駆体とを反応させることによって、マグネシウム錯体の溶液を調製するステップ;前記マグネシウム錯体を、少なくとも1種の4価の第4族金属の化合物と10℃よりは高くかつ60℃未満の温度で反応させて、第4族金属/Mgのモル比が10/100のオイル分散相の中に、第4族金属/Mgのモル比が0.1/10の、より高密度なTiCl/トルエン−不溶性、オイル分散相のエマルションを製造するステップ;そのエマルションを、場合によってはエマルション安定剤および/または乱れ最小化剤(turbulence minimizing agent)の存在下に撹拌して、前記分散相の液滴を、平均サイズ5〜200μmの中に維持するステップ。加熱によって前記の分散相粒子を固化させると、触媒粒子が得られる。前記プロセスにおいて、式AlR3−n[式中、Rは、炭素原子が1〜20個、好ましくは1〜10個のアルキル基またはアルコキシ基であり、Xはハロゲンであり、そしてnは0、1、2または3である]のアルミニウムアルキル化合物を添加して、撹拌しているエマルションの分散相の液滴と接触させてから、固化させた粒子を回収する。
【0037】
遷移金属化合物と組み合わせて使用する助触媒には、典型的には、アルミニウムアルキル化合物を含む。そのアルミニウムアルキル化合物が、トリアルキルアルミニウムたとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、またはトリ−n−オクチルアルミニウムであるのが好ましい。しかしながら、それがさらに、アルキルアルミニウムハライドたとえば、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、およびエチルアルミニウムセスキクロリドであってもよい。それが、アルモキサンたとえば、メチルアルモキサン(MAO)、テトライソブチルアルモキサン(TIBAO)またはヘキサイソブチルアルモキサン(HIBAO)であってもよい。
【0038】
好適な助触媒は、アルミニウムトリアルキル化合物である。特に好適な助触媒は、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムである。
【0039】
助触媒がさらに、外部電子供与体を含んでいるのが好ましい。当業者には公知の好適な電子供与体としては、エーテル、ケトン、アミン、アルコール、フェノール、ホスフィン、およびシランが挙げられる。それらの化合物の例が、とりわけ、以下の特許に挙げられている:国際公開第95/32994号パンフレット、米国特許第4107414号明細書、米国特許第4186107号明細書、米国特許第4226963号明細書、米国特許第4347160号明細書、米国特許第4382019号明細書、米国特許第4435550号明細書、米国特許第4465782号明細書、米国特許第4472524号明細書、米国特許第4473660号明細書、米国特許第4522930号明細書、米国特許第4530912号明細書、米国特許第4532313号明細書、米国特許第4560671号明細書、および米国特許第4657882号明細書。中央原子としてケイ素を含み、Rが1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルまたはシクロアルキルである、Si−OCOR、Si−OR、またはSi−NR結合を含むオルガノシラン化合物からなる電子供与体は当技術分野においては公知である。そのような化合物は、以下の特許に記載されている:米国特許第4472524号明細書、米国特許第4522930号明細書、米国特許第4560671号明細書、米国特許第4581342号明細書、米国特許第4657882号明細書ならびに欧州特許第45976号明細書および欧州特許第45977号明細書。
【0040】
好ましい外部電子供与体はシラン供与体であって、このものはアルミニウムトリアルキル化合物と共に好適に使用される。特に好ましい外部供与体は、ジシクロペンチルジメトキシシランであって、このものはトリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムと共に好適に使用される。この組合せは、プロピレンのマルチモーダルポリマーに、所望の(引張弾性率の値が高いことからわかるような)高い剛性を与えるのに特に有効であることが見出された。
【0041】
触媒は、たとえばプレポリマー化のように、前処理をして、それが、固体触媒成分1グラムあたり、最高5グラムまでのプレポリマーを含むようにしてもよい。触媒が、固体触媒成分1グラムあたり、約0.01グラムから最高約5グラムまで、たとえば1グラムまたは2グラムのポリ(ビニルシクロヘキサン)を含んでいることが特に好ましい。これによって、結晶化したポリプロピレンを調製することが可能となるが、これについては、欧州特許第607703号明細書、欧州特許第1028984号明細書、欧州特許第1028985号明細書、および欧州特許第1030878号明細書に開示されている。
【0042】
触媒は、当業者には公知の各種の手段によって重合ゾーンの中に送り込んでよい。したがって、触媒を希釈剤の中に懸濁させて、それを均質なスラリーに維持することも可能である。国際公開第A2006/063771号パンフレットに開示されているように、希釈剤として20〜1500mPa・sの粘度を有するオイルを使用するのが、特に好ましい。触媒をグリースとオイルの粘稠な混合物と混合し、得られたペーストを重合ゾーンの中にフィードすることもまた可能である。さらには、たとえば欧州特許出願公開第A428054号明細書に開示されている方法で、触媒を沈降させ、そのようにして得られた触媒の泥状物を重合ゾーンの中に導入することも可能である。
【0043】
プレポリマー化
好ましい実施態様においては、液体プロピレン中でのバルクスラリー重合としてプレポリマー化を連続法で実施する。すなわち、液相は主にプロピレンとその中に溶解している少量のその他の反応成分および場合によっては不活性成分とを含んでなる。プレポリマー化は、連続撹拌槽反応器またはループ反応器の中で実施するのが好ましい。
【0044】
プレポリマー化反応は、典型的には0〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜45℃の温度で実施する。
【0045】
プレポリマー化反応器内の圧力は、さほど厳密ではないが、その反応混合物を液相に維持するに十分な高さがなければならない。したがって、圧力は20〜100bar、たとえば30〜70barとするのがよい。
【0046】
反応条件は、とりわけ、英国特許第1580635号明細書に開示されているように当技術分野では周知である。
【0047】
プレポリマー化ステップにおいては、コモノマーをプレポリマー化ステージの中にフィードすることもまた可能である。適切なコモノマーの例は、エチレンまたは4〜10個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンである。特に好適なコモノマーは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、またはそれらの混合物である。最も好適なコモノマーは、エチレンである。
【0048】
平均的には、触媒上のプレポリマーの量は、好ましくは固体触媒成分1gあたり10〜1000g、より好ましくは固体触媒成分1gあたり50〜500gである。
【0049】
当業者には公知のように、連続撹拌プレポリマー化反応器から回収された触媒粒子がすべて、同じ量のプレポリマーを含んでいる訳ではない。その代わりに、それぞれの粒子は、その粒子のプレポリマー化反応器中での滞留時間に依存して、それ自体に特有の量を有している。いくつかの粒子は反応器の中に比較的長い時間滞留するのに対して、他のいくつかは、比較的短い時間しか滞留しないので、したがって、粒子が異なればプレポリマーの量も異なっており、個々の粒子のいくつかは、上述の限界からは外れた量のプレポリマーを含んでいる可能性がある。しかしながら、触媒上でのプレポリマーの平均量は、先に特定した範囲の内側となっているのが好ましい。プレポリマーの量は、とりわけ英国特許第1580635号明細書からも当技術分野では公知である。
【0050】
触媒成分のすべてを、プレポリマー化ステップに導入するのが好ましい。しかしながら、固体触媒成分と助触媒とを別々にフィードすることが可能であるような場合には、助触媒の一部のみをプレポリマー化ステージに導入し、残りのものをそれに続く重合ステージに導入することも可能である。さらに、そのような場合には、プレポリマー化ステージに、その中で十分な重合反応が得られるのに十分となるような助触媒を導入する必要がある。
【0051】
プレポリマー化ステージに対して、その他の成分を添加することもまた可能である。したがって、当技術分野で周知のように、プレポリマー化ステージに水素を加えて、プレポリマーの分子量を調節してもよい。さらに、国際公開第A00/66640号パンフレットにも開示されているように、帯電防止添加剤を使用して、粒子が相互に付着したり、反応器の壁面に付着したりすることを防止してもよい。
【0052】
スラリー
第一の重合ゾーンにおける重合は、スラリー中で実施してもよい。次いで、重合中に形成されたポリマー粒子を、断片化されてそれら粒子の内部に分散された触媒と共に、流体の炭化水素の中に懸濁させる。そのスラリーを撹拌して、その流体から粒子の内部へと反応成分を移行させる。
【0053】
スラリー重合は、いわゆるバルク重合であるのが好ましい。「バルク重合」という用語は、不活性な希釈剤は実質的に存在させずに、液状のモノマーの中で重合を実施するプロセスを意味している。しかしながら、当業者には公知のことであるが、商業的生産に使用されるモノマーは、決して純粋ではなく、不純物としての脂肪族炭化水素を必ず含んでいる。たとえば、プロピレンモノマーには、不純物として最高5%までのプロパンを含んでいる可能性がある。プロピレンを反応で消費し、その反応流出物から重合反応へとリサイクルさせるにつれて、不活性な成分が蓄積していく傾向があり、その結果、その反応媒体が、モノマー以外の化合物を40重量%までも含むこととなる可能性がある。そのような重合プロセスでもまだ、先に定義された「バルク重合」の意味合いの範疇に入っているということは理解されたい。
【0054】
スラリー重合における温度は、典型的には50〜110℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは65〜95℃である。その圧力は、1〜150bar、好ましくは10〜100barである。いくつかの場合においては、その重合を、その反応相を構成している流体混合物の臨界温度よりも高い温度、および前記流体混合物の臨界圧力よりも高い圧力で実施するのが好ましいこともあり得る。そのような反応条件はしばしば、「超臨界条件」と呼ばれる。「超臨界流体」という用語は、その流体または流体混合物の臨界温度および臨界圧力を超える温度および圧力にある、流体または流体混合物を指すのに使用される。
【0055】
スラリー重合は、スラリー重合のために使用される各種公知の反応器の中で実施すればよい。そのような反応器としては、連続撹拌槽反応器およびループ反応器が挙げられる。ループ反応器の中で重合を実施するのが、特に好ましい。そのような反応器の中では、循環ポンプを使用して、密閉されたパイプの中を、高速でスラリーを循環させる。ループ反応器は一般的には当技術分野では公知であり、たとえば、米国特許第A4582816号明細書、米国特許第A3405109号明細書、米国特許第A3324093号明細書、欧州特許出願公開第A479186号明細書、および米国特許第A5391654号明細書の中に例がある。
【0056】
スラリーは、連続的または断続的いずれかで反応器から抜き出してよい。断続抜き出しをするのに好ましい方法は、セトリングレグ(settling leg)を使用する方法であるが、その場合、その反応器から濃縮されたスラリーのバッチを抜き出すまで、スラリーの固形分濃度を上昇させることが可能となる。セトリングレグの使用については、とりわけ、米国特許第A3374211号明細書、米国特許第A3242150号明細書、および欧州特許出願公開第A1310295号明細書に開示がある。連続抜き出し法は、とりわけ、欧州特許出願公開第A891990号明細書、欧州特許出願公開第A1415999号明細書、欧州特許出願公開第A1591460号明細書、および欧州特許出願公開第A1860125号明細書に開示されている。欧州特許出願公開第A1860125号明細書および欧州特許出願公開第A1591460号明細書に開示されているように、連続抜き出し法を適切な濃縮方法と組み合わせてもよい。
【0057】
当技術分野では公知のことであるが、スラリー重合ステージに他の成分を導入してもよい。したがって、水素を使用してポリマーの分子量を調節することもできる。反応器の中にプロセス添加剤を導入して、そのプロセスが安定して容易に操作できるようにしてもよい。
【0058】
スラリー重合ステージに続けて、ガス相重合ステージを行わせる場合には、それらのステージの間にフラッシュステップを置くことなく、スラリーをガス相重合ゾーンに直接導くのが好ましい。このタイプの直接フィード法は、以下の特許に開示されている:欧州特許出願公開第A887379号明細書、欧州特許出願公開第A887380号明細書、欧州特許出願公開第A887381号明細書、および欧州特許出願公開第A991684号明細書。
【0059】
ガス相
反応ゾーンの一つまたは複数が、ガス相重合ゾーンであってもよい。
【0060】
流動床
流動床ガス相反応器においては、重合触媒の存在下に、上向きに移動しているガスストリーム中で、オレフィンを重合させる。その反応器には、典型的には、流動化グリッドより上に位置する、活性触媒を含む成長中のポリマー粒子からなる流動床が含まれる。
【0061】
ポリマー流動床は、オレフィンモノマー、任意成分のコモノマー(1種または複数)、任意成分の連鎖成長調節剤または連鎖移動剤(たとえば水素)、および任意成分の不活性ガスを含む流動化ガスを用いて流動化させる。流動化ガスは、反応器の底部にある注入チャンバーの中に導入する。注入チャンバーの断面積全体にガスの流れを均等に分散させることを確保するために、当技術分野では公知のように、注入パイプに分流要素を備えるようにしてもよい(たとえば、米国特許第A4933149号明細書および欧州特許出願公開第A684871号明細書)。
【0062】
その注入チャンバーから、ガスの流れが、流動化グリッドを通過して、上方向に流れて流動床に入る。流動化グリッドの目的は、流動床の断面積全体にガスの流れを均等に分散させることである。場合によっては、国際公開第A2005/087361号パンフレットに開示されているようにして、ガスストリームが反応器の壁面に沿って確実に流れるように流動化グリッドを配列してもよい。他のタイプの流動化グリッドも、とりわけ、以下の特許に開示されている:米国特許第A4578879号明細書、欧州特許第600414号明細書、および欧州特許出願公開第A721798号明細書。以下の総説がある:ゲルダートおよびバイエンス(Geldart and Bayens)、「ザ・デザイン・オブ・ディストリビューターズ・フォア・ガス−フルイダイズド・ベッズ(The Design of Distributors for Gas−fluidized Beds)、パウダー・テクノロジー(Powder Technology)、第42巻、1985。
【0063】
流動化ガスは、流動床の中を通過する。流動化ガスの空塔速度は、その流動床の中に含まれている粒子の最小流動化速度よりも高くしなければならないが、そうでないと、流動化が起きないであろう。その一方で、ガスの速度は、空気輸送の開始速度よりも低くするべきであるが、そうでないと、その流動床全体が流動化ガスと共に運び出されてしまうことになるであろう。最小流動化速度および空気輸送の開始速度は、粒子特性がわかっていれば、一般的な工学的手法を用いて計算することができる。とりわけ、次の総説がある:ゲルダート(Geldart)、『ガス・フルイダイゼーション・テクノロジー(Gas Fluidization Technology)』(J.ワイリー・アンド・ソンズ(J.Wiley & Sons)、1986)。
【0064】
流動化ガスが活性触媒を含む流動床と接触すると、そのガスの反応性成分たとえばモノマーおよび連鎖移動剤が触媒の存在下に反応して、ポリマー生成物を生じる。それと同時に、ガスは、反応熱によって加熱される。
【0065】
未反応の流動化ガスは、反応器の上部から抜き出し、熱交換器の中で冷却して、反応熱を除去する。ガスは、床の温度よりも低い温度にまで冷却して、流動床を反応による熱から防御する。ガスを、その一部が凝縮する温度にまで冷却することも可能である。液滴が反応ゾーンに入ると、それらが蒸発する。すると、その蒸発熱が、反応熱の除去に役立つことになる。このタイプの運転は、「凝縮モード(condensed mode)」と呼ばれていて、その変法がとりわけ、以下の特許に開示されている:国際公開第A2007/025640号パンフレット、米国特許第A4543399号明細書、欧州特許出願公開第A699213号明細書、および国際公開第A94/25495号パンフレット。欧州特許出願公開第A696293号明細書に開示されているように、リサイクルガスストリームの中に、凝縮剤を添加することも可能である。その凝縮剤は、非重合性成分たとえば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ブタンまたはイソブタンであり、それらは、冷却器の中で少なくとも部分的に凝縮する。
【0066】
次いでそのガスを圧縮して、反応器の注入チャンバーの中に再循環させる。反応器の中へ入れるより前に、フレッシュな反応成分をその流動化ガスストリームに加えて、反応および反応生成物の抜き出しによって生じた損失を補償する。流動化ガスの組成を分析して、ガス成分を加えて組成を一定に保つことは、一般に知られていることである。実際の組成は、反応生成物に望まれている物性と重合に使用される触媒とによって決まってくる。
【0067】
触媒は、反応器の中に連続的または断続的いずれでも、各種の方法で導入すればよい。とりわけ、国際公開第A01/05845号パンフレットおよび欧州特許出願公開第A499759号明細書に、そのような方法が開示されている。そこでは、ガス相反応器が反応器カスケードの一部を構成しており、触媒は通常、前段の重合ステージからのポリマー粒子の内部に分散されている。欧州特許出願公開第A1415999号明細書および国際公開第A00/26258号パンフレットに開示されているようにして、ポリマー粒子をガス相反応器の中に導入すればよい。特に、先行する反応器がスラリー反応器である場合には、そのスラリーを、ガス相反応器の流動床の中に直接フィードするのが有利であるが、これについては、以下の特許に開示がある:欧州特許出願公開第A887379号明細書、欧州特許出願公開第A887380号明細書、欧州特許出願公開第A887381号明細書、および欧州特許出願公開第A991684号明細書。
【0068】
ポリマー反応生成物は、連続的または断続的いずれかで、ガス相反応器から抜き出せばよい。それらの方法を組み合わせて使用してもよい。連続抜き出し法は、とりわけ、国際公開第A00/29452号パンフレットに開示されている。断続抜き出し法は、とりわけ、以下の特許に開示されている:米国特許第A4621952号明細書、欧州特許出願公開第A188125号明細書、欧州特許出願公開第A250169号明細書、および欧州特許出願公開第A579426号明細書。
【0069】
そのガス相反応器の塔頂部には、いわゆる「離脱ゾーン(disengagement zone)」が含まれていてよい。そのようなゾーンでは、反応器の直径が拡大されていて、ガス速度を低下させ、それによって、流動化ガスに同伴して流動床から運び出された粒子を、沈降させて流動床に戻す。
【0070】
流動床のレベルは、当技術分野では公知の各種の方法によって、観測することができる。たとえば、反応器の底部と流動床の特定の高さとの間の圧力差を、反応器の高さ全体にわたって記録してもよく、流動床のレベルは、その圧力差の値に基づいて計算することができる。そのような計算では、時間で平均したレベルが得られる。超音波センサーまたは放射線センサーを使用することもまた可能である。それらの方法を使用すれば、瞬間瞬間のレベルを観察することが可能であり、言うまでもないことであるが、次いでそれを時間について平均すれば、時間で平均した流動床のレベルも得られる。
【0071】
必要であれば、ガス相反応器に(1種または複数の)帯電防止剤を導入してもよい。適切な帯電防止剤およびその使用方法は、とりわけ、以下の特許に開示されている:米国特許第A5026795号明細書、米国特許第A4803251号明細書、米国特許第A4532311号明細書、米国特許第A4855370号明細書、および欧州特許出願公開第A560035号明細書。通常は、それらは極性の化合物であって、とりわけ、水、ケトン、アルデヒド、およびアルコールが挙げられる。
【0072】
反応器にはさらに、流動床内部での混合をさらに促進させるための機械的撹拌機を導入してもよい。好適な撹拌機のデザインの一例が、欧州特許出願公開第A707513号明細書にある。
【0073】
高速流動床(fast fluidized bed)
高速流動床反応器の中で、重合を実施してもよい。そのような反応器においては、流動化ガスの速度が、空気輸送の開始速度を超えている。したがって、流動床全体が、流動化ガスによって運搬される。ガスがポリマー粒子を分離装置たとえばサイクロンへと輸送し、そこで、ガスをポリマー粒子から分離する。そのポリマーは、後続の反応ゾーンたとえば、沈降床(settled bed)または流動床または別の高速流動床反応器へと輸送される。その一方でガスは、圧縮、冷却して、高速流動床反応器の底部へと再循環する。一つのそのような実施態様においては、ポリマーは、ライザー(高速流動化モードで運転)から、ダウンカマー(沈降床として運転、後ほど説明する)へと輸送され、次いで流動化ガスは、先に説明したように、圧縮および冷却に向かう。高速流動床と沈降床との組合せは、とりわけ、以下の特許に開示されている:国際公開第A97/04015号パンフレット、国際公開第A2006/022736号パンフレット、および国際公開第A2006/120187号パンフレット。
【0074】
沈降床
重合はさらに、沈降床の中で実施してもよい。沈降床においては、ポリマーは、ガス相の中に反応性成分を含む環境の中を、プラグフローの方式で下向きに流れる。ポリマーの粉体が沈降床の中に、塔頂から導入され、そこから重力によって下向きに流れる。
【0075】
反応成分、たとえば水素、モノマー、およびコモノマーは、反応器のどの位置に導入してもよい。しかしながら、そのガスが、上向きに流れるところでは、その速度が、最小流動化速度を超えることがあってはならないが、その理由は、そうでないとすると、粉体の下側方向への流れが起きないからである。反応器の頂上部にガスバッファーを設けて、ポリマー粉体に含まれる、先行する重合ゾーンからの反応ガスを可能な限り除去するのも好ましい。
【0076】
沈降床ゾーンの中に導入される反応成分および/または不活性ガスの温度と比率を調節することによって、沈降床の温度を調節してもよい。
【0077】
沈降床重合ゾーンは、流動床重合ゾーンまたは高速流動床反応ゾーンと組み合わせるのが好ましい。そのためには、流動床ゾーンまたは高速流動床ゾーンから沈降床ゾーンの塔頂にポリマーを導入する。その沈降床重合ゾーンの塔底からポリマーを抜き出して、流動床重合ゾーンまたは高速流動床重合ゾーンの中に再循環させる。
【0078】
沈降床における重合は、とりわけ、以下の特許に開示されている:欧州特許出願公開第A1633466号明細書、欧州特許出願公開第A1484343号明細書、および国際公開第A97/04015号パンフレット。
【0079】
組合せプロセス
それぞれのポリマー成分(A)、(B)、(C)および(D)を別々の反応ゾーンにおいて製造するが、以後それらの反応ゾーンをそれぞれ、第一、第二、第三、および第四の反応ゾーンと呼ぶことにする。それぞれの反応ゾーンは、先に説明したような、各種の反応器またはゾーンであってよい。したがって、それぞれの成分を、別々のスラリー反応器の中、または別々のガス相反応器の中で製造することが可能である。しかしながら、分かれたゾーンを有する2基のガス相反応器、たとえば2基の沈降床反応器と組み合わせた2基の流動床反応器を使用することもまた可能である。この例を図1に示す。たとえば、成分(A)を、スラリー重合ゾーンの中の第一の反応ゾーン(1)の中で製造することができる。その触媒および反応成分を、フィード配管(11)を介して第一の反応ゾーン(1)の中に導入する。反応生成物であるポリマー粉体を、流体相と共に、反応生成物抜取り出し配管(12)を使用して反応ゾーン(1)から抜き出し、後続の第二の反応ゾーン(2)に向かわせ、そこで、流動床重合ゾーンの中で成分(B)を製造する。フィード配管(21)を介して第二の反応ゾーン(2)の中に、さらなる反応成分を導入する。活性触媒と幾分かの随伴ガスとを含むポリマーを、配管(13)を介して第二の反応ゾーン(2)から抜き出すが、この配管は、沈降床重合ゾーンの中の第三の反応ゾーン(3)に接続されていて、そこで成分(C)が製造される。フィード配管(31)を介して第三の反応ゾーンの中に、さらなる反応成分を導入する。第三の反応ゾーン(3)からのポリマーは、幾分かの反応器ガスと共に、配管(14)を使用して抜き出す。配管(14)を介して抜き出されたポリマーの一部は、配管(15)を介して、第二の反応ゾーン(2)に戻されるが、それに対して、残りの部分は、配管(16)を介して第四の反応ゾーン(4)の中に送られ、そこで流動床重合ゾーンの中で成分(D)が製造される。配管(41)を介したさらなる反応成分が、第四の反応ゾーン(4)の中に導入される。その反応生成物を、配管(17)を介して第四の反応ゾーン(4)から抜き出し、さらなる処理ステップに送る。この図は、反応器の間の輸送配管のみを示しているが、当業者ならばいずれにせよ、以下のことを理解するであろう:先行の反応ゾーンの反応生成物を後続の反応ゾーンへ移行させるステップには分離ステージを含んでいて、そこで、たとえばプロピレンおよび場合によっては水素を含む流体相の一部または全部を、後続の反応ゾーンへ向かうポリマーストリームから分離してもよい。
【0080】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、固体触媒成分である、アルミニウムアルキルおよびシラン電子供与体をプロピレンおよび水素と共に、連続運転中のプレポリマー化反応器の中に導入する。その固体触媒成分が、それより前のプレポリマー化ステップでプレポリマー化されていて、固体触媒成分1グラムあたり0.01〜5グラムのポリ(ビニルシクロヘキサン)がそれに含まれているのが好ましい。たとえば10〜30分間のあいだ水素フィードを完全に停止し、次いで5〜10分間のあいだ水素を所望の量で流し続けるといったように、プレポリマー化反応器の中に水素を変動させながらフィードすれば、さらに好ましい。
【0081】
先に説明したように、水素をプレポリマー化反応器の中に、変動させながら導入するのが好ましい。そのようにすると、プレポリマー化反応器へ向かうフィードストリーム中の水素の量が時間の関数として変動し、その結果として、反応器内部の水素の濃度が、同様に周期的に変動する。しかしながら、フィードストリーム中での周期的変動は、反応器の中における変動とは異なっている筈であるが、その理由は、化学系では、入力の変化に追随するにはある程度の時間を必要とするからである。一例として、反応器へフィードする水素の量を、矩形関数の形(すなわち、周期的に水素フィードのオン/オフを繰り返す)で変動させてもよいが、それに対して、反応器内部における水素濃度は、正弦関数の形で変動する可能性がある。一つの好ましい方法は、水素フィードを、所定の時間、たとえば5〜20分間、好ましくは10〜20分間のあいだ完全に停止する。次いで、また別な1〜15分間、好ましくは5〜10分間のあいだ、水素フィードを、所望する平均水素フィードが得られるような値に維持する。スラリー反応器のそのような運転は、欧州特許出願第08166131.6号明細書に記載がある。
【0082】
そのプロセスは、たとえば次のように特徴づけることができる:少なくとも一つの反応ゾーンの水素フィードを変動させて、水素フィードをある時間tのあいだは最大値Fmaxに、そしてある時間tのあいだは最小値Fminに維持するが、ここで、その差が、Fmax−Fmin≧0.5・Favg(ここで、Favgは前記反応ゾーンへの平均水素フィードである)であり、そして2・τ≧t+t≧0.05・τ(ここで、τは、前記反応ゾーンにおけるポリマーの平均滞留時間である)となるようにする。最小値Fmin=0であれば、特に好ましい。
【0083】
第一の反応ゾーンでは、高分子量のプロピレンホモポリマー成分(A)が生成する。その第一の反応ゾーンの中には、プロピレンを、先行する反応ゾーン(これは、プレポリマー化ゾーンであってもよい)から来る触媒と共に導入する。その第一の重合ゾーンの中に、フレッシュな水素を、変動法によるかまたは一定のフィード速度で導入し、それによって、ポリマー成分(A)において所望のメルトフローレートすなわちIVが得られるようにしてもよい。しかしながら、第一の反応ゾーンの中にフレッシュな水素をまったく導入しないということもまた可能である。その場合、ポリマー成分(A)のメルトフローレートを調節するために必要とされる水素は、先行する反応ゾーンから持ち越す。その第一の反応ゾーンは、スラリー重合ゾーンであっても、あるいはガス相重合ゾーンであってもよい。
【0084】
第二の反応ゾーンでは、低分子量のプロピレンホモポリマー成分(B)が生成する。その第二の反応ゾーンには、プロピレンと水素とを導入する。触媒は、先行する反応ゾーン(これもまた、プレポリマー化ゾーンであってもよい)からその第二の反応ゾーンに入ってくる。その第二の反応ゾーンは、スラリー重合ゾーンであっても、あるいはガス相重合ゾーンであってもよいが、好ましくはガス相重合ゾーンである。
【0085】
第三の反応ゾーンでは、中間分子量プロピレンホモポリマー成分(C)が生成する。プロピレンと水素とを、その第三の反応ゾーンに導入する。触媒は、先行する反応ゾーン(これもまた、プレポリマー化ゾーンであってもよい)から入ってくる。その第三の反応ゾーンは、スラリー重合ゾーンであっても、あるいはガス相重合ゾーンであってもよいが、好ましくはガス相重合ゾーンである。
【0086】
第四の反応ゾーンでは、弾性コポリマー成分(D)が生成する。触媒は、先行する反応ゾーンからその第四の反応ゾーンに入る。プロピレン、アルファ−オレフィンコモノマー(これは、好ましくはエチレン、1−ブテンもしくは1−ヘキセンまたはそれらの混合物、より好ましくはエチレンである)、および水素をその第四の反応ゾーンの中に、そのコポリマーが所望のIVおよびコモノマー含量となるような量で導入する。第四の反応ゾーンは、ガス相重合ゾーンであるのが好ましい。
【0087】
一つの好ましい実施態様においては、プレポリマー化ゾーンからのスラリーを、スラリー重合ゾーン、好ましくはループ反応器である第一の反応ゾーンの中に向かわせる。第一の反応ゾーンからのスラリーを、第二の反応ゾーン(これは、流動床重合ゾーンまたは高速流動床重合ゾーンのいずれであってもよい)の中に、フラッシングステップなしで直接導入する。その第二の反応ゾーンから、ポリマー(場合によっては、いくぶんかの随伴ガスを含む)を、沈降床重合ゾーンである第三の反応ゾーンの中に移行させる。第三の反応ゾーンからは、ポリマーの一部を第二の反応ゾーンの中に向かわせ、それに対してポリマーの一部は、流動床重合ゾーンである第四の反応ゾーンの中に移行させる。第四の反応ゾーンからポリマーを回収し、さらなる加工ステップに送る。
【0088】
また別な好ましい実施態様においては、プレポリマー化ゾーンからのスラリーを、第二の反応ゾーン(これは、流動床反応ゾーンかまたは高速流動床反応ゾーンのいずれかである)の中に向かわせる。第二の反応ゾーンからは、ポリマーを、沈降床重合ゾーンである第一の反応ゾーンの中に向かわせる。第一の反応ゾーンからのポリマーの一部は、第二の重合ゾーンの中に再送し、一部は、流動床重合ゾーンである第三の反応ゾーンの中に移行させる。ポリマーを第三の反応ゾーンから第四の反応ゾーン(これは、また別の流動床重合ゾーンである)へ移行させる。第四の反応ゾーンからポリマーを回収し、さらなる加工ステップに送る。
【0089】
上で述べた、流動床重合ゾーンまたは高速流動床重合ゾーンが流動床重合ゾーンであれば、特に好ましい。
【0090】
一つのより好ましい実施態様においては、プレポリマー化ゾーンからのスラリーを、スラリーループ反応器の中で実施される、第一の反応ゾーンの中に向かわせる。第一の反応ゾーンからのスラリーを次いで、流動床重合ゾーンである第二の反応ゾーンの中に、フラッシングステップなしで、直接導入する。その第二の反応ゾーンから、ポリマー(場合によっては、いくぶんかの随伴ガスを含む)を、また別の流動床重合ゾーンである第三の反応ゾーンの中に移行させる。ポリマーは、第三の反応ゾーンから、これまた一つの流動床重合ゾーンである第四の反応ゾーンに移行させる。第四の反応ゾーンからポリマーを回収し、さらなる加工ステップに送る。
【0091】
いずれの実施態様においても、反応ゾーンのいずれの中にも、さらなる触媒成分をフィードすることは可能である。しかしながら、固体触媒成分をプレポリマー化ゾーンのみに導入し、他の全ての反応ゾーンにはフレッシュな触媒をまったく添加しないのが好ましい。したがって、反応ゾーンに入ってくる固体触媒成分は、先行する反応ゾーン(1種または複数)のみから来る。しかしながら、必要であるならば、追加の助触媒および/または電子供与体を、複数の反応ステージの中に導入することもできる。これはたとえば、触媒の活性を向上させたり、あるいはポリマーのアイソタクティシティに影響を与えたりするために実施してもよい。
【0092】
上で説明した実施態様のいずれにおいても、そのポリマーを後続の反応ゾーンに導入するより前に、ポリマーに随伴してくる反応ガスの少なくとも一部を除去するための設備を含んでいてもよい。当業者には公知の各種適切な設備を使用すればよい。たとえば、流動床重合ゾーンから沈降床重合ゾーンへと移行されたポリマーストリームを、沈降床反応ゾーンの中に存在しているガスストリームを用いてフラッシュさせて、その流動床重合ゾーンの中に存在しているガスを除去することも可能である。これによって、反応ゾーンをより独立して調節することが可能となる。
【0093】
押出し成形
典型的には、ポリマーを押出し成形して、ペレット化させる。押出し成形は、一般的に当業者には公知の方法、好ましくは2軸スクリュー押出機の中で実施すればよい。適切な2軸スクリュー押出機の一例は、同方向回転2軸押出機である。それらは、とりわけ、コペリオン(Coperion)または日本製鋼所(Japan Steel Works)によって製造されている。また別な例は、異方向回転2軸スクリュー押出機である。
【0094】
押出機には、典型的には、ポリマーを溶融させる溶融セクションと、ポリマー溶融物を均質化させる混合セクションとが含まれる。溶融と均質化は、ポリマーにエネルギーを注入することによって達成される。ポリマーの中に注入されるエネルギーが大きいほど、より良好な均質化が達成される。しかしながら、エネルギー注入量が大きすぎると、ポリマーの分解を招き、機械的性質が劣化する。比エネルギー入力(SEI)の適切なレベルは、約100〜約450kWh/トン−ポリマー、好ましくは200〜350kWh/トンである。
【0095】
押出機中でのポリマーの典型的な平均滞留時間は、約30秒〜約10分間である。この数字は、押出機のタイプにある程度は依存する。しかしながら、ほとんどのタイプの押出機では、30秒〜5分間、たとえば40秒〜約1.5分間の数値にすると、均質性とポリマーの機械的性質との間で良好な組合せが得られる。
【0096】
適切な押出し成形法は、とりわけ、以下の特許に開示されている:欧州特許出願公開第A1600276号明細書、国際公開第A03/076498号パンフレット、および国際公開第00/01473号パンフレット。
【0097】
押出し成形をする前に、所望の添加剤をポリマーと混合する。そのような添加剤の例としては、とりわけ、抗酸化剤、プロセス安定剤、UV安定剤、顔料、充填剤、帯電防止添加剤、粘着防止剤、成核剤、および酸捕捉剤などが挙げられる。
【0098】
適切な抗酸化剤および安定剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:アルファ−トコフェロール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(2,3−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、オクタデシル−3−3(3’5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、トリス−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジホスファイト、およびテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト。
【0099】
いくつかのヒンダードフェノールが、イルガノックス(Irganox)1076およびイルガノックス(Irganox)1010の商品名で販売されている。市販されている抗酸化剤とプロセス安定剤とのブレンド物もまた入手可能であり、たとえば、チバ−ガイギー(Ciba−Geigy)で商品化されているイルガノックス(Irganox)B215およびイルガノックス(Irganox)B225がある。
【0100】
適切な酸捕捉剤は、たとえば金属のステアリン酸塩、たとえばステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛である。それらは、一般的に当業者には公知の量、典型的には300ppm〜5000ppm、好ましくは300〜1000ppmの量で使用される。
【0101】
その組成物が、本明細書の前の方で説明したような成核剤を含んでいるのが特に好ましい。
【0102】
実施例
メルトインデックス、メルトフローレート(MI、MFR)
メルトインデックス(MI)またはメルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に従って求め、g/10分の単位で表される。MFRは、ポリマーの溶融粘度の指標である。MFRは、PPの場合、230℃で測定する。その下でメルトフローレートを測定する際の荷重が通常、下付き文字として表記され、たとえばMFRは、2.16kgの荷重の下で測定されたものであり、MFR10は10kgの荷重の下で測定されたものである。
【0103】
本発明の目的においては、直接測定することは不可能なブレンド成分のメルトフローレート(MI)は、ブレンド物のメルトフローレート(MI)とその他の成分のメルトフローレート(MI)とから、次式を使用して計算することができる(ここで、それらのメルトインデックスはすべて、同一荷重および同一温度で求めたものである):
【0104】
【数1】

【0105】
[式中、wおよびwはそれぞれ、メルトフローレートMIおよびMIを有する成分の重量比率である。]
【0106】
さらに、メルトフローレートMFRの値が低すぎるために測定できなかったような場合には、本発明の目的においては、MFR=MFR10/16として、MFR10からMFRを計算することができる。
【0107】
多分散性指数(PI)
多分散性指数PIは、次式に従って計算する:
PI=105Pa/G
[式中、G(単位、Pa)は、G’=G”=Gとなったときのクロスオーバー弾性率である。]
【0108】
レオロジー測定は、ISO 6721−1およびISO 6721−10に従って実施した。測定は、200℃で行った。G’およびG”はそれぞれ、貯蔵弾性率および損失弾性率である。測定は、フィジカ(Physica)MCR300レオメーターを使用して行ったが、それはプレート−プレート構成を有していて、プレートの直径が25mm、プレートの間の距離が1.8mmであった。
【0109】
複素粘性率および複素弾性率を、周波数の関数として得た。本発明においては、複素弾性率を下付き文字として表記している。したがって、ηは、複素弾性率Gが5kPaのときの粘度を表している。SHI値は、異なった複素弾性率で測定した二つの粘度の比であって、SHI5/50=η/η50であるが、ここでη50は、複素弾性率が50kPaのときの複素粘性率を表している。
【0110】
シャルピー衝撃強度
シャルピーノッチ付き衝撃強度は、V−ノッチ付きサンプルについて、23℃(シャルピー衝撃強度(23℃))および−20℃(シャルピー衝撃強度(−20℃))で、ISO 179−1:2000に従い、条件1eAに従って求めた。
【0111】
試験片は、EN ISO 1873−2の記載に従って射出成形により調製した(80×10×4mm)。
【0112】
引張強度
引張強度物性は、ISO 527−2に従って求めた。170(全長)×10×4mmの寸法を有する、タイプ1Bの射出成形した試験片を使用したが、その試験片は、ISO 1873−2に従って成形したものである。
【0113】
降伏点歪み:
降伏点歪み(単位、%)は、ISO 527−2に従って求めた。その測定は、温度23℃、引張速度50mm/分で実施した。
【0114】
降伏点応力:
降伏点応力歪(単位、MPa)は、ISO 527−2に従って求めた。その測定は、温度23℃、引張速度50mm/分で実施した。
【0115】
引張弾性率
引張弾性率(単位、MPa)は、ISO 527−2に従って求めた。その測定は、温度23℃、引張速度1mm/分で実施した。
【0116】
引張破断:
引張破断は、ISO 527−2に従って求めた。その測定は、温度23℃、引張速度50mm/分で実施した。
【0117】
PPからのコモノマー含量(FTIR)
プロピレンポリマー中のエチレン含量は、フーリエ変換赤外分光光度法(FTIR)により測定した。サンプルの薄膜(厚み、約250μm)を加熱プレス法により調製した。パーキン・エルマー(Perkin Elmer)FTIR1600分光計を用いて、−CH−吸収ピーク領域(800〜650cm−1)を測定した。その方法の較正は、13C NMRによって測定したエチレン含量データによった。
【0118】
キシレン可溶分
キシレン可溶分比率(XS)の定量
2.0gのポリマーを、撹拌しながら135℃で250mLのp−キシレン中に溶解させた。30分経過してから、その溶液を周囲温度で15分間放冷してから、25℃で30分間放置して、沈降させた。濾紙を用いてその溶液を濾過して、2本の100mLフラスコに入れた。第一の100mL容器からの溶液を、窒素流の中で蒸発させ、残分を真空下90℃で、恒量に達するまで乾燥させた。
XS%=(100・m・V)/(m・v)
[式中、m=最初のポリマー量(g);m=残渣の量(g);V=最初の容積(mL);v=分析したサンプルの容積(mL)]
【0119】
キシレン可溶分中の非晶質ゴム比率の定量(AM)
キシレン可溶分分析の第二の100mLのフラスコからの溶液を、激しく撹拌しながら200mLのアセトンを用いて処理する。沈殿物を濾過し、真空オーブン中90℃で乾燥させる。
AM%=(100×m×v)/(m×v
[式中、
=最初のポリマー量(g)。
=沈殿物の量(g)。
=最初の容積(mL)。
=分析したサンプルの容積(mL)。]
【0120】
固有粘度(IV)
固有粘度は、DIN ISO 1628−1(1999、10月)に従い、テトラリン中135℃で測定した。
【0121】
触媒調製実施例
固体成分の調製
最初に、0.1molのMgCl×3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器中で、250mLのデカンの中に懸濁させた。その溶液を冷却して温度−15℃とし、300mLの冷TiClを添加したが、温度は前記レベルに維持した。次いで、そのスラリーの温度を徐々に上げて、20℃とした。この温度で、0.02molのフタル酸ジオクチル(DOP)をそのスラリーに添加した。フタル酸エステルの添加が終了してから、90分かけて温度を135℃にまで上げ、そのスラリーを60分間静置した。次いで、300mLのさらなるTiClを添加し、120分間その温度を135℃に維持した。その後で、その液状物から触媒を濾過し、80℃で300mLのヘプタンを用いて、6回洗浄した。次いで、その固体触媒成分を濾過し、乾燥させた。
【0122】
ビニルシクロヘキサンを用いたプレポリマー化
固体触媒成分を、ペレンコ(Perenco)製のドラケオール(Drakeol)35オイルに懸濁させて、22.6重量%の固形分を含む触媒スラリーを調製した。
【0123】
次いで、トリエチルアルミニウムおよびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)をそのスラリーに添加して、モル比Al/Tiを1.4mol/mol、トリエチルアルミニウムのDCPDMSに対するモル比を7mol/molとした。次いでそのスラリーに、ビニルシクロヘキサン(VCH)を、ビニルシクロヘキサンの固体触媒成分に対する重郎比が1/1となるような量で添加した。その混合物を撹拌し、その反応混合物中の未反応のビニルシクロヘキサンの含量が約1000ppmとなるまで反応させておいた。次いで、そのようにしてプレポリマー化した触媒を濾過し、フレッシュなドラケオール(Drakeol)35と混合して、触媒濃度が、オイル中の固体遷移金属成分として計算して、22重量%に達するようにした。
【0124】
実施例1
容量45dmの撹拌槽反応器を、温度50℃、圧力53barで、リキッドフィル状態として(as liquid−filled)運転した。その反応器の中に、0.05g/hの水素および2.2g/hのVCH−プレポリマー化重合触媒と合わせて、プロピレンを、反応器中における平均滞留時間が0.29時間となるような量でフィードしたが、そのVCH−プレポリマー化重合触媒は、上述の「触媒調製実施例」に従って調製したものであって、助触媒としてトリエチルアルミニウム(TEA)を、そして外部供与体としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)を用い、TEA/Tiのモル比が約380、TEA/DCPDMSが4であった。水素は、合計して20分間を1周期として、周期的にフィードした。15分間のあいだは、水素フィードを停止してフィードを0とし、5分間のあいだは、そのフィード速度を0.2g/hのレベルに保持した。反応を続けている間、このサイクルを繰り返した。このプレポリマー化反応器からのスラリーを、容積150dmのループ反応器に送ったが、194kg/hのプロピレンが同伴した。フレッシュな水素はいっさい添加せず、水素はすべてプレポリマー化反応器から来たものであった。ループ反応器は、温度85℃、圧力53barで運転した。プロピレンホモポリマーの生成速度は、14kg/h、そのメルトフローレートMFR10は0.42g/10分であった。
【0125】
ループ反応器からのポリマースラリーを、温度95℃、圧力27barで運転されている第一のガス相反応器の中に直接送り込んだ。その反応器の中には、追加のプロピレンおよび水素、さらには不活性ガスとしての窒素をフィードして、プロピレンの含量が73モル%、水素対プロピレンの比率が186mol/kmolとなるようにした。反応器中における生産速度は22kg/hであり、反応器から抜き出したポリマーは、1.25g/10分のメルトフローレートMFRを有していた。
【0126】
第一のガス相反応器からの反応混合物を、追加のプロピレンおよび窒素と共に、温度85℃、圧力30barで運転されている第二のガス相反応器の中に導入した。プロピレンの含量は42モル%、そして水素対プロピレンの比率は0.75mol/kmolであった。反応器中における生産速度は4kg/hであり、反応器から抜き出したポリマーは、1.18g/10分のメルトフローレートMFRを有していた。
【0127】
第二のガス相反応器からの反応混合物を、温度85℃、圧力30barで運転されている第三のガス相反応器の中に導入したが、ここで追加のプロピレン、水素、およびコモノマーとしてのエチレンを導入して、プロピレンの含量が51モル%、水素対エチレンの比率が18mol/kmol、そしてエチレン対プロピレンのモル比が550mol/kmolとなるようにした。反応器中における生産速度は4kg/hであり、反応器から抜き出したポリマーは、0.93g/10分のメルトフローレートMFR、および4.5重量%のエチレン含量を有していた。
【0128】
反応器から抜き出したポリマーを、有効量のイルガフォス(Irgafos)168、イルガノックス(Irganox)1010およびステアリン酸カルシウムと混合した。それに加えて、ポリマーの重量を基準にして9000ppmのタルクをその組成物に添加した。次いで、そのポリマーと添加剤との混合物を、ZSK70押出機(コペリオン(Coperion)製)を使用して押出し加工して、ペレットとした。
【0129】
反応器条件のデータを表1に示す。ペレット化したポリマーのデータを表2に示す。
【0130】
実施例2
実施例1の手順を繰り返したが、ただし、表1に示したように条件を修正し、最大水素フィード量を調節して、プレポリマー化反応器の中への平均水素フィードが0.06g/hとなるようにした。ポリマーの物性を表2に示す。
【0131】
比較例1
実施例1の手順を繰り返したが、ただしプレポリマー化反応器の中への水素フィード量を一定値0.06g/hに保持し、プレポリマー化反応器中の温度を40℃とし、表1に示したように条件を修正し、第三のガス相反応器の温度を83℃とした。ポリマーの物性を表2に示す。
【0132】
比較例2
容量45dmの撹拌槽反応器を、温度40℃、圧力53barで、リキッドフィル状態として運転した。その反応器の中に、0.5g/hの水素および5.2g/hのVCH−プレポリマー化重合触媒と合わせて、プロピレンを、反応器中における平均滞留時間が0.39時間となるような量でフィードしたが、そのVCH−プレポリマー化重合触媒は、上述の「触媒調製実施例」に従って調製したものであって、助触媒としてトリエチルアルミニウムを、そして外部供与体としてジシクロペンチルジメトキシシランを用い、TEA/Tiのモル比が122、TEA/DCPDMSが5であった。このプレポリマー化反応器からのスラリーを、145kg/hのプロピレンおよび0.5g/hの水素と共に、容積150dmのループ反応器に送った。ループ反応器は、温度85℃、圧力53barで運転した。プロピレンホモポリマーの生成速度は、33kg/h、そのメルトフローレートMFR10は0.8g/10分であった。
【0133】
ループ反応器からのポリマースラリーを、温度85℃、圧力25barで運転されている第一のガス相反応器の中に導入した。その反応器の中へは、プロピレンおよび水素、さらには不活性ガスとしての窒素をフィードした。反応器中における生産速度は29kg/hであり、反応器から抜き出したポリマーは、0.3g/10分のメルトフローレートMFRを有していた。
【0134】
第一のガス相反応器からの反応混合物を、温度70℃、圧力20barで運転されている第二のガス相反応器の中に導入したが、ここで追加のプロピレン、水素、およびコモノマーとしてのエチレンを導入して、エチレン対プロピレンのモル比が550mol/kmolとなるようにした。反応器中における生産速度は10kg/hであり、反応器から抜き出したポリマーは、0.25g/10分のメルトフローレートMFR、および5.0重量%のエチレン含量を有していた。
【0135】
反応器から抜き出したポリマーを、有効量のイルガフォス(Irgafos)168、イルガノックス(Irganox)1010およびステアリン酸カルシウムと混合した。それに加えて、ポリマーの重量を基準にして9000ppmのタルクをその組成物に添加した。次いで、そのポリマーと添加剤との混合物を、ZSK70押出機(コペリオン(Coperion)製)を使用して押出し加工して、ペレットとした。
【0136】
反応器条件および生産品質管理サンプルのデータを、表1に示す。ペレット化したポリマーのデータを表2に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
比較例2は、成分(C)が存在しないと、PIの値が低いことからもわかるように分子量分布が狭く、またそのために、低温における剛性と衝撃強度との間で望んでいるようなバランスが得られなかったということを示している。その引張弾性率は、実施例2では1970MPaであるのに比較して、わずか1690MPaであった。比較例1によって示されているように、成分(B)の比率が低すぎても、同じことが起きる。そこでは、成分(B)および(C)がそれぞれ、12%および59%の量で存在していた。その曲げ弾性率は、比較例2の場合の弾性率よりはいくぶんかは高いものの、何にせよ、実施例1および2の弾性率よりは明らかに低かった。
【0140】
したがって、本発明のメリットを達成するためには、十分に広い分子量分布が必要であるということは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半晶質ポリマーのマトリックスおよび前記マトリックスの中に分散されたゴム(D)を含むプロピレンのマルチモーダルポリマーであって、
前記マルチモーダルポリマーが、85〜99重量%のプロピレンから誘導される単位ならびに1〜15重量%のエチレンまたはC〜C10アルファ−オレフィンから誘導される単位を含み、
前記マルチモーダルポリマーが、
キシレン可溶性比率(温度25℃)XSが7〜16重量%;
メルトフローレートMFR(ISO 1133に従い、2.16kgの荷重下、230℃の温度で測定したもの)が0.05〜5g/10分;
多分散性指数PI(動的レオロジー測定によって、PI=105Pa/Gとして得られるものであり、ここでGはG’=G”=Gとなる場合のクロスオーバー弾性率である)が3.5〜30;
引張弾性率TM(単位、MPa)およびXS(単位、重量%)(ここで、引張弾性率TMは、ISO 527−2に従って求め、XSはポリマーのキシレン可溶性比率(温度25℃)(単位、重量%)である)がTM≧2375−46.2・XS、の関係を満足する、
を有していることを特徴とする、マルチモーダルポリマー。
【請求項2】
前記引張弾性率TM(単位、MPa)およびXS(単位、重量%)が、次の関係を満足していることを特徴とする、請求項1に記載のマルチモーダルポリマー。
TM≧2375−46.2・XS(XS<10.3の場合)または
TM≧1900(XS≧10.3の場合)
【請求項3】
前記マルチモーダルポリマーが、5〜30、好ましくは7〜30の多分散性指数PIを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項4】
前記マトリックスがプロピレンホモポリマーであることを特徴とする、8〜14重量%、好ましくは8〜12重量%のXSを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項5】
前記マトリックスが、
(A)0.001〜0.1g/10分のメルトフローレートMFR、または0.1〜1.0g/10分のメルトフローレートMFR10(ISO 1133に従い、10kgの荷重下、230℃の温度で測定したもの)を有する、第一のプロピレンホモポリマー;
(B)10〜100g/10分のメルトフローレートMFRを有する第二のプロピレンホモポリマー;
(C)0.1〜5g/10分のメルトフローレートMFRを有する第三のプロピレンホモポリマー;
を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項6】
前記マルチモーダルポリマーが、7〜16重量%のゴム(D)および84〜93重量%のマトリックスを含むことを特徴とする、請求項5に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項7】
前記マトリックスが、5〜50重量%の(A);30〜70重量%の(B);および5〜35重量%の(C)を含む、請求項6に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項8】
前記第三のプロピレンホモポリマー(C)が、0.1〜1g/10分、好ましくは0.1〜0.5g/10分のメルトフローレートMFRを有することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項9】
前記マトリックスが、0.2〜2.0g/10分のメルトフローレートMFRを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項10】
前記マルチモーダルポリマーが、0.2〜2.0g/10分のメルトフローレートMFRを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のマルチモーダルポリマーを含む、組成物。
【請求項12】
前記組成物が成核剤を含むことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記成核剤が、タルク、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、ナノクレーたとえばモンモリロナイト、安息香酸ナトリウム、4−tert−ブチル安息香酸のナトリウム塩、アジピン酸のナトリウム塩、ジフェニル酢酸のナトリウム塩、コハク酸ナトリウム、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、およびポリ(3−メチル−1−ブテン)からなる群より選択される請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記成核剤が、0.00001〜3重量%の量で存在する、請求項12または請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物を製造するためのプロセスであって、
前記プロセスが、
− 重合触媒を第一の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンを前記第一の重合ゾーンにフィードするステップ;
− 前記第一の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− 未反応プロピレン、ポリプロピレンおよび重合触媒を含む反応混合物の一部を、前記第一の反応ゾーンから連続的または断続的に排出するステップ;
− 重合触媒を第二の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンおよび水素を前記第二の重合ゾーンにフィードするステップ;
− 前記第二の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− 前記第二の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− 重合触媒を第三の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレンおよび場合によっては水素を前記第三の重合ゾーンにフィードするステップ;
− 前記第三の重合ゾーンを、プロピレンを前記触媒の存在下で重合させてポリプロピレンとする条件に維持するステップ;
− 前記第三の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− 重合触媒を第四の重合ゾーンにフィードするステップ;
− プロピレン、アルファ−オレフィンコモノマーおよび場合によっては水素を、前記第四の重合ゾーンにフィードするステップ;
− 前記第四の重合ゾーンを、プロピレンと前記アルファ−オレフィンコモノマーとを前記触媒の存在下で共重合させてプロピレンの弾性コポリマーとする条件に維持するステップ;
− 前記第四の反応ゾーンに含まれる混合物の一部を、連続的または断続的に抜き出すステップ;
− 前記ポリマーを回収するステップ;
− 前記回収したポリマーを少なくとも1種の添加剤と混合して、ポリマーと少なくとも1種の添加剤との混合物を製造するステップ;ならびに
− 前記混合物を押出し成形してペレットとするステップ;
を含み、
前記第一、第二、第三および第四の反応ゾーンが、カスケードを形成していて、それによって先行のゾーンからの前記ポリマーが、前記ポリマー中に分散された前記活性触媒と共に後続の反応ゾーンに移行され、そして前記ポリマーの一部が、後続のゾーンから先行のゾーンへと戻されてもよく、そして前記第一、第二、第三および第四の反応ゾーンが、いかなる順序で配列されてもよい、プロセス。
【請求項16】
少なくとも一つの反応ゾーンが、プロピレンを含むガス相に取り囲まれたポリマー粒子の流動床を含むガス相重合ゾーンであることを特徴とする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
少なくとも二つの反応ゾーンが、上向きに移動しているプロピレンを含むガスストリームの中に浮遊しているポリマー粒子の流動床を含む流動床ゾーンと、プロピレンを含むガスによって取り囲まれた、下向きに移動しているポリマー粒子の流動床を含む沈降床ゾーンとの組合せとして、または、上向きに移動しているプロピレンを含むガスストリームによって輸送されるポリマー粒子の流動床を含む高速流動床ゾーンと、沈降床ゾーンとの組合せとして配列されたガス相反応ゾーンであり、そしてここで、前記流動床ゾーンまたは前記高速流動床ゾーンから抜き出したポリマーの少なくとも一部を、前記沈降床ゾーンの中に移行させ、前記沈降床ゾーンから抜き出したポリマーの少なくとも一部を、前記流動床ゾーンまたは高速流動床ゾーンの中に移行させることを特徴とする、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記流動床ゾーンまたは高速流動床ゾーンが流動床ゾーンである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
少なくとも一つの反応ゾーンが、液相または超臨界流体相である流体相、および前記流体相の中に懸濁されたポリマー粒子を含むスラリー重合ゾーンであることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記スラリー重合ゾーンから抜き出した前記スラリーを、前記流動床ゾーンまたは前記高速流動床ゾーンのポリマー床の中に直接導入するが、前記スラリーを前記ポリマー床の中に導入するより前に、前記液相を前記ポリマー粒子から分離しないことを特徴とする、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記重合触媒が、チタンおよびマグネシウムを含む固体成分を含み、それを、アルミニウムアルキル助触媒および外部電子供与体と共に使用することを特徴とする、請求項15〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記固体成分が、ビニルシクロヘキサンを用いてプレポリマー化されていて、それが、固体触媒成分1グラムあたり0.01〜5グラムのポリ(ビニルシクロヘキサン)を含むようになっている、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
以下の、
− 前記固体触媒成分、アルミニウムアルキル助触媒および外部電子供与体を組み合わせるステップ;
− 前記組み合わせた触媒成分をプロピレンモノマーと共にプレポリマー化ゾーンに導入して、0〜60℃の温度で、スラリー中で前記固体触媒成分の上でプロピレンのプレポリマー化を起こさせるステップ;
− 前記プレポリマー化ゾーンからスラリーを連続的または断続的に抜き出すステップ;および
− 前記プレポリマー化ゾーンから抜き出した前記スラリーを重合ゾーンの中に向かわせるステップ、
を含む、請求項21または請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
少なくとも一つの反応ゾーンの水素フィードを変動させて、前記水素フィードをある時間tのあいだは最大値Fmaxに、そしてある時間tのあいだは最小値Fminに維持するが、ここで、その差が、Fmax−Fmin≧0.5・Favg(ここでFavgは前記反応ゾーンへの平均水素フィードである)であり、そして2・τ≧t+t≧0.05・τ(ここで、τは、前記反応ゾーンにおけるポリマーの平均滞留時間である)となるようにし、そしてここで好ましくはFmin=0であることを特徴とする、請求項15〜23のいずれか1項に記載のプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514088(P2012−514088A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544061(P2011−544061)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052341
【国際公開番号】WO2010/097409
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511114678)
【Fターム(参考)】