説明

プロピレンの製造方法

【課題】アルコールからプロピレンを高選択的で連続的に効率よく製造するプロピレンの製造方法を提供する。
【解決手段】エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒に接触させ、プロピレンを製造させる。規則性メゾポーラス多孔体として、骨格の主成分がシリカで、開口径が1.4nm以上10nm以下のものが好ましい。連続的に比較的に高い収率でプロピレンを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール原料からプロピレンを製造するプロピレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素放出量を抑制するためにバイオマス由来のエチルアルコールを燃料として用いることが注目されている。そして、バイオマス由来のエチルアルコールは燃料として利用するのみならず、石油代替原料として用いることにより、例えば石油コンビナートからバイオマスコンビナートへの転換も可能となり、バイオマスのさらなる有効利用が得られることが考えられる。
そして、エチルアルコールをエチレンあるいは他の炭化水素へ転換するプロセスや触媒が知られている。例えば、H−ZSM−5を代表とするプロトン型ゼオライトを触媒として、エチルアルコールをエチレンやその他のオレフィン、パラフィン、芳香族炭化水素に転化する方法が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1ないし非特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、リン酸カルシウムにアルミニウムあるいはニッケルを担持した触媒上にエチルアルコール蒸気を導入させ、623K〜823Kで、エチレン、アセトアルデヒド、ブタジエン、ブチルアルコール、ジエチルエーテルを生成させるものである。
非特許文献1ないし非特許文献3に記載のものは、H−ZSM−5を代表とするプロトン型ゼオライトである酸触媒上にエチルアルコールを導入させ、573K以上でエチレン、プロピレン、ブテンなどの種々のオレフィンを生成させるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−217343号公報
【非特許文献1】C.W.Ingram,R.J.Lancashire,Catal.Lett.,31,395(1995).
【非特許文献2】A.K.Talukdar,K.G.Bhattacharyya,S.Sivasankar,Appl.Catal.A,148,357(1997).
【非特許文献3】A.T.Aguayo,A.G.Gayubo,A.M.Tarrio,A.Atutxa,J.Bilbao,J.Chem.Tech.Biothech.,77,211(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および非特許文献1ないし非特許文献3に記載のような従来のものでは、例えばエチレンを高選択的に得ようとする場合、極めて短い接触時間で反応させたり、共存水を極力少なくしたりするなど、特殊な条件設定が必要である。また、ゼオライトの強い酸触媒特性によってオリゴメリゼーション、炭素−炭素結合の切断、触媒骨格の異性化などが生じるので、所望する炭化水素を得るにはゼオライトの形状選択性を利用する必要があり、原料や生成物が制約されるという問題点がある。さらには、コーク生成による活性劣化を生じるおそれがある。このように、従来の方法では、各種不都合を生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、アルコールからプロピレンを高選択的で連続的に効率よく製造するプロピレンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に記載のプロピレンの製造方法は、アルコール原料からプロピレンを製造するプロピレンの製造方法であって、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒と、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料とを接触させることを特徴とする。
この発明では、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒と接触させることでプロピレンを製造させる。
このことにより、例えばアルコール原料の流通経路中にアルコール原料が流通可能に触媒を充填した層を設ける簡単な構成で、プロピレンを連続的で比較的に高い収率で製造できる。
【0008】
そして、本発明では、請求項1に記載のプロピレンの製造方法であって、前記規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである構成とすることが好ましい。
このことにより、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅を良好に担持し良好な物性の規則性メゾポーラス多孔体が容易に得られる。
【0009】
また、本発明では、請求項1または請求項2に記載のプロピレンの製造方法であって、前記規則性メゾポーラス多孔体は、開口径が1.4nm以上10nm以下である構成とすることが好ましい。
この発明では、規則性メゾポーラス多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いる。
このことにより、プロピレンをより高い収率で連続的に製造することが容易に得られる。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。一方、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が10nmより大きくなると、細孔の効果すなわち活性成分であるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄あるいは銅の良好な担持が得られ難くなり、高い収率が得られなくなるおそれがある。このため、規則性メゾポーラス多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、前記触媒は、ニッケルを主成分として前記規則性メゾポーラス多孔体に担持させたものである構成とすることが好ましい。
この発明では、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを主成分として担持させた触媒を用いる。
このことにより、プロピレンのより高い収率が得られる。
【0011】
また、本発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、前記アルコール原料は、バイオマス由来のアルコールである構成とすることが好ましい。
この発明では、アルコール原料のエチルアルコールおよびブチルアルコールとして、バイオマス由来のエチルアルコールかブチルアルコールのいずれか1種を用いる。
このことにより、大気中の二酸化炭素を炭素分として固定する植物などの農林産物やバイオマスを原料として利用可能で大気中の二酸化炭素がネットで増大しないバイオアルコールを用いることで、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスなどの有効利用など、環境および資源などの観点で有益である。
【0012】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、前記アルコール原料のエチルアルコールは、バイオマス由来のエチルアルコールである構成とすることが好ましい。
この発明では、アルコール原料のエチルアルコールを用いる。
このことにより、大気中の二酸化炭素を炭素分として固定する植物などの農林産物やバイオマスを原料として利用可能で大量に生産できるため、大気中の二酸化炭素がネットで増大しないバイオエタノールを用いることで、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスなどの有効利用など、環境および資源などの観点で有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のプロピレンの製造方法に係る一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、実質的にエチルアルコールおよびブチルアルコールの混合アルコールをアルコール原料として用いてプロピレンを製造する構成について説明するが、水を混合するもの、さらには他のアルコールが多少混合されたものでもよい。
【0014】
(触媒の構成)
本実施形態におけるプロピレンの製造に用いる触媒としては、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒である。
この規則性メゾポーラス多孔体は、規則性ナノ細孔を有する無機または無機有機複合固体物質である。
【0015】
そして、規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格の主成分としては、シリカが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の合成方法としては、特に制限はないが、例えば炭素数が8以上の高級アルキル基を有する四級アンモニウム塩をテンプレートとして、シリカの前駆体を原料として合成する方法などが例示できる。
そして、シリカ前駆体の種類としては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカなどの非晶質シリカ、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムなどの珪酸アルカリ、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどのアルコキサイドを、単独または混合して用いることができる。また、テンプレートの種類としては、特に制限はないが、一般式CH3(CH2)nN(CH3)3・X(nは7〜21の整数、Xはハロゲンイオンあるいは水酸化イオン)で表記されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤が好ましい。具体的には、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどが例示できる。
なお、規則性ナノ細孔を有する構造が容易に得られ、強度などの物性も良好であるとともに、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅の安定した担持が容易に得られる点で、シリカを用いることが好ましい。
【0016】
また、規則性メゾポーラス多孔体としては、開口径が、例えば1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いることが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、例えば反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。一方、規則性メゾポーラス多孔体の開口径が10nmより大きくなると、例えば細孔の効果すなわち活性成分であるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄あるいは銅の良好な担持が得られ難くなり、高い収率が得られなくなるおそれがある。このことにより、プロピレンの高い収率で製造させる点で、規則性メゾポーラス多孔体の開口径を1.4nm以上10nm以下に設定することが好ましい。
【0017】
そして、触媒としては、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の金属が、規則性メゾポーラス多孔体に担持されたものである。特にニッケルが担持されたものが好ましい。
ここで、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを担持する方法としては、特に制限はなく、例えば含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法などを用いることができる。特に、規則性メゾポーラス多孔体を合成した細孔内に貯蔵されているテンプレートを焼成除去することなく、水溶媒中でニッケルイオンとテンプレートイオンとを交換するテンプレートイオン交換法が製造性の点で好ましい。また、テンプレートイオン交換は、細孔内にテンプレートが吸蔵されている規則性メゾポーラス多孔体をニッケルの無機酸塩または有機酸塩の水溶液と接触させる方法が利用できる。ニッケル源としては、例えば、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケルなどを用いることができる。特に、取扱の簡便性や水への溶解度の大きさなどの点で、特に硝酸ニッケルが好ましい。
【0018】
そして、規則性メゾポーラス多孔体に担持されるニッケルの量は、規則性メゾポーラス多孔体の骨格を構成するシリカを基準として、例えば原子比Si/Niが5以上500以下、特に15以上100以下であることが好ましい。
ここで、原子比Si/Niが5より小さくなると、Niの割合が多くなって触媒活性の低い酸化ニッケル粒子の生成を抑制しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。一方、原子比Si/Niが500より大きくなると、Niの割合が少なくなって高分散化したニッケルの十分な担持が得られなくなり、触媒活性が低下するおそれがある。このことにより、ニッケルの担持量は、原子比Si/Niが5以上500以下、特に15以上100以下に設定することが好ましい。
【0019】
また、テンプレートイオン交換法によりニッケルを担持させた規則性メゾポーラス多孔体は、残存するテンプレートを焼成によって除去するために、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。
ここで、加熱処理の温度は、例えば、200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下である。そして、加熱処理の温度が200℃より低くなると、テンプレートの焼成に時間を要するおそれがある。一方、加熱処理の温度が800℃より高くなると、細孔を構成しているシリカの崩壊が生じ十分な触媒活性が得られなくなるおそれがある。このことにより、ニッケルを担持した規則性メゾポーラス多孔体の加熱処理の温度を200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下に設定することが好ましい。
【0020】
(プロピレンの製造方法)
プロピレンの製造方法は、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料を、上述した触媒と接触、例えば触媒が充填された触媒層に流通させることでプロピレンが製造される。
ここで、プロピレンの製造装置としては、特に限定されないが、例えば、上述した触媒を充填して内部に触媒層を有しアルコール原料が流通可能な反応器である固定床流通反応装置を用いることができる。
アルコール原料としては、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むものであればよく、水が混合されていてもよい。さらには、エチルアルコールおよびブチルアルコールの他、少量であれば他のアルコールが混在していてもよい。そして、アルコール原料は、固定床流通反応装置に直接供給、あるいは窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガスにより適宜希釈して供給させてもよい。
【0021】
そして、反応温度としては、例えば、100℃以上600℃以下、好ましくは350℃以上550℃以下であることが好ましい。ここで、反応温度が100℃より低くなると、触媒活性が十分に得られなくなって反応速度が低下し製造効率が低下するおそれがある。一方、反応速度が600℃より高くなると、例えばコークが生成するなどの触媒活性の劣化を生じおるおそれがある。このことにより、反応温度を100℃以上600℃以下に設定することが好ましい。
なお、反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。なお、製造性や装置構成などの観点から、常圧から1.0MPa程度に設定することが好ましい。
【0022】
そして、原料アルコールガスと触媒との接触時間は、例えば原料アルコールを気相として供給する場合、0.001(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以下であることが好ましい。
ここで、触媒との接触時間が0.001(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)より短くなると、アルコールの転化率およびプロピレンの選択率の向上が望めず、プロピレンを高い収率で製造できなくなるおそれがある。一方、触媒との接触時間が10(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)より長くなると、重合などの副反応が生じて、高い収率でプロピレンが得られなくなるおそれがある。このことにより、原料ガスと触媒との接触時間は、0.001(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以下、特に0.01(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以上10(g−触媒・秒)/(ml−原料アルコールガス)以下に設定することが好ましい。
【0023】
また、原料アルコールに水が含まれる場合、原料アルコール中の水供給量は、50vol%以下であることが好ましい。
ここで、原料アルコール中の水供給量が50vol%より多くなると、アルコールの転化率が低くなり、高い収率でプロピレンを得ることができなくなるおそれがある。このことにより、原料アルコール中の水供給量は、50vol%以下、好ましくは40vol%以下、より好ましくは30vol%に設定することが好ましい。
【0024】
そして、上記各種条件による原料アルコールと触媒との接触により、骨格の主成分がシリカの規則性メゾポーラス多孔体であるシリカメゾ多孔体が特異な固体酸触媒能を有し、テンプレートイオン交換法で調製した金属イオンを担持した触媒は、酸点によるエチルアルコールからエチレンへの脱水反応およびブチルアルコールからのブテンへの脱水反応が生じるとともに、層状珪酸塩類似構造を取るニッケル活性点上でのエチレンとブテンとのメタセシス反応によりプロピレンを生成させる高い触媒活性を示し、このエチルアルコールとブチルアルコールからプロピレンを生成させる反応が連続して進行する。このことにより、プロピレンが高い収率で製造される。
【0025】
(実施形態の作用効果)
上述したように、上記実施形態では、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料を、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒させることでプロピレンを製造させている。
このため、例えばエチルアルコールとブチルアルコールを含む原料アルコールの流通経路中に原料アルコールが流通が可能に触媒を充填した層を設ける簡単な構成で、プロピレンを連続的で比較的に高い収率で製造できる。
【0026】
そして、上記実施形態では、触媒を構成する規則性メゾポーラス多孔体として、骨格の主成分がシリカのものを用いている。
このため、ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、あるいは銅を良好に担持し良好な物性の規則性メゾポーラス多孔体が容易に得られる。
【0027】
また、上記実施形態では、規則性メゾポーラス多孔体として、開口径が1.4nm以上10nm以下で調製したものを用いている。
このため、プロピレンをより高い収率で連続的に製造することが容易に得られる。
【0028】
さらに、上記実施形態では、規則性メゾポーラス多孔体にニッケルを主成分として担持させた触媒を用いる。
このため、ポリプロピレンをより高い収率で製造できる。
【0029】
そして、上記実施形態では、アルコール原料のエチルアルコールおよびブチルアルコールとして、バイオマス由来のエチルアルコールおよびブチルアルコールを用いることが好ましい。
このため、大気中の二酸化炭素を炭素分として固定する植物などの農林産物やバイオマスを原料として利用可能で大気中の二酸化炭素がネットで増大しないバイオアルコールを用いることで、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスなどの有効利用など、環境および資源などの観点で有益である。
【0030】
特に、上記実施形態では、バイオマス由来のアルコール原料としてエチルアルコールを用いることが好ましい。
バイオマス由来のエチルアルコールはバイオアルコールの中でも特に大量に製造することが可能であり、このため、大気中の二酸化炭素を炭素分として固定する植物などの農林産物やバイオマスを原料として利用可能で、大気中の二酸化炭素がネットで増大しないバイオエチルアルコールを用いることで、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスなどの有効利用など、環境および資源などの観点で有益である。
【0031】
〔実施形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0032】
すなわち、本発明のプロピレンの製造方法を実施する製造装置としては、上述した固定床式気相流通反応装置に限られるものではない。例えば、流動床として原料ガスを触媒と接触させるなど、原料アルコールを触媒と接触させるいずれの構成が適用できる。さらには、触媒としては、粉粒体や塊状物、いわゆるハニカム構造物など、各種形態で利用できる。
また、触媒として、シリカメゾ多孔体に限らず、例えば骨格の主成分にアルミナなど、他の無機材料などが含まれるものなど、規則性メゾポーラス多孔体であればいずれの組成物を適用することができる。
そして、ニッケルを担持するものに限らず、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を担持していればよい。
なお、これらニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の担持としては、規則性メゾポーラス多孔体の表面に存在する状態に限らず、例えば規則性メゾポーラス多孔体の骨格の主成分と共存する状態など、担持形態としては、いずれの状態をも含むものである。
【0033】
また、規則性メゾポーラス多孔体の物性、規則性メゾポーラス多孔体に担持させるニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上の担持量などの触媒の物性は、上述した条件に限られるものではなく、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
さらには、アルコール原料としては、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むものであればよく、例えば、エチルアルコールおよびブチルアルコールのみ、あるいは、それ以外の水やアルコールなどを含むものでも適用できる。
また、アルコール原料を気化した原料アルコールガスの触媒との接触条件である反応処理条件についても、上述した条件に限られるものではなく、処理効率や装置構成などにより、適宜設定できる。
【0034】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例1】
【0035】
次に、本発明のプロピレンの製造方法について、実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(触媒の調製)
MCM−41の合成
シリカ源としてコロイダルシリカ(日産化学工業製の商品名スノーテックス20(SiO2:20wt%、粒子径:10〜20nm))、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムブロミド[C1225N(CH3)3Br](東京化成製)を用いた。pHの調整には水酸化ナトリウム(和光純薬製特級試薬)を用いた。
A液;スノーテックス20 306.7g
B液;C1225N(CH3)3Br 225.0g
2O 641.4g
C液;NaOH 11.7g
2O 125.6g
そして、313KにてB液を攪拌しながら、A液とC液をゆっくりと交互に加えた。この混合溶液を313Kで2時間攪拌した。混合溶液の最終pHは11.6であった。攪拌後、静置条件下413Kで48時間水熱処理を行った。得られた白色の生成物を濾過し、2Lのイオン交換水で洗浄後濾過し、353Kで一晩乾燥させ未焼成のMCM-41を得た。
【0037】
Ni−MCM−41の調製
未焼成のMCM−41の10.0gを100mLのイオン交換水に加え攪拌し、縣濁させた。また、硝酸ニッケル6水和物(和光純薬製特級試薬)10.0gを100mLのイオン交換水で溶解させた。
未焼成MCM−41の縣濁液を激しく攪拌しながら、ゆっくりとパスツールを用いてNiイオン水溶液を加え、添加後室温で1時間攪拌した。攪拌後、混合液を353Kの水浴中で20時間静置した。その後濾過し、約1Lのイオン交換水に分散させて5分間攪拌後濾過し、353Kで一晩乾燥させ未焼成Ni−MCM−41を得た。
この未焼成Ni−MCM−41を磁性皿に薄く広げ、773Kまで昇温後、6時間空気中で焼成しNi−MCM−41を得た。このNi−MCM−41のSi/Ni原子比は24であった。
【0038】
(エタノールとブタノール混合物の反応)
上記Ni−MCM−41を触媒としてエタノールと1−ブタノールの等モル混合物の反応を行った。常圧固定床流通反応装置の内径10mmの耐熱ガラス製反応器の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を201mg充填する。反応に先立ち、触媒の前処理として、50ml/minの窒素ガスを673Kで2時間流通させた。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと1−ブタノールの等モル混合物に窒素を加えた混合ガス(アルコール分圧2.3vol%)を193mL/minの速度(GHSV=17100h-1)で供給して反応を行った。
その結果を表1に示す。それぞれのアルコールから脱水反応により生成するオレフィン(エチレン、ブテン)以外のオレフィン生成物はプロピレンのみであった。
【0039】
【表1】

【0040】
この表1で、C2はエチレン、C3はプロピレン、C4はブテン類、AAはアセトアルデヒド、PAはプロピルアルデヒド、DEEはジエチルエーテル、DBEはジブチルエーテルを示す(以下同様)。
【実施例2】
【0041】
実施例1と同様の製造法で製造したSi/Ni原子比が23の触媒201mgを用い、反応条件をエタノールと1−ブタノールの等モル混合物に窒素を加えた混合ガス(アルコール分圧5.6vol%)を20mL/minの速度(GHSV=1960h-1)とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。
その結果を表2に示す。それぞれのアルコールから脱水反応により生成するオレフィン(エチレン、ブテン)以外のオレフィン生成物はプロピレンのみであった。
【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、エチルアルコールおよびブチルアルコールを用いてプロピレンを製造する方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール原料からプロピレンを製造するプロピレンの製造方法であって、
ニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄、および銅の群から選ばれる1種または2種以上を規則性メゾポーラス多孔体に担持させた触媒と、エチルアルコールおよびブチルアルコールを含むアルコール原料とを接触させる
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプロピレンの製造方法であって、
前記規則性メゾポーラス多孔体を構成する骨格は、主成分がシリカである
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロピレンの製造方法であって、
前記規則性メゾポーラス多孔体は、開口径が1.4nm以上10nm以下である
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、
前記触媒は、ニッケルを主成分として前記規則性メゾポーラス多孔体に担持させたものである
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、
前記アルコール原料のエチルアルコールおよびブチルアルコールは、いずれか1種がバイオマス由来のアルコールである
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプロピレンの製造方法であって、
前記アルコール原料のエチルアルコールは、バイオマス由来のエチルアルコールである
ことを特徴とするプロピレンの製造方法。

【公開番号】特開2008−222608(P2008−222608A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60999(P2007−60999)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】