説明

プロピレンをベースとするコポリマー、この繊維を製造する方法およびこの繊維から製造される物品

良好な弾性あるいは延伸性と靭性、および低モジュラスを呈する繊維がプロピレンをベースとするコポリマーから製造される。このプロピレンをベースとするコポリマーは、少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約8重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位、例えばエチレンを含んでなる。特に好ましいプロピレンコポリマーは、約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピークを有することを特徴とする。本発明の一つの態様においては、延伸時にこの繊維を引っ張り伸びにかけることにより、繊維は応力誘起結晶化を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、引用により全体で本明細書に組み込まれている、Joy F.Jordan et.,al, (Attorney Docket Number 20094)の名前で「EXTENSBLE AND ELASTIC CONJUGATE FIBERS AND WEBS HAVING A NONTACKY FEEL」と題する関連出願と同時に出願されている。
【0002】
本発明はプロピレンをベースとするコポリマーから製造される繊維に関する。一つの態様においては、本発明は、プロピレンをベースとするエラストマーおよびプラストマーから製造される繊維に関し、もう一つの態様においては、本発明は、これから製造される弾性あるいは延伸性の繊維に関する。他の態様においては、本発明は、プロピレンをベースとするエラストマーおよびプラストマーから製造される弾性繊維、およびこのような繊維から製造される物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロピレンをベースとするポリマー、特にホモ−ポリプロピレン(hPP)は当技術分野においてよく知られ、そして繊維の製造で長く使用されてきた。hPPから製造される布、特に不織布は高モジュラスであるが、劣った弾性を呈する。これらの布は、普通、多部材の物品、例えばおむつ、創傷包帯、女性用衛生製品などの中に組み込まれる。ポリエチレンベースのエラストマーと、これらのポリマーから製造される繊維および布は、低モジュラスと良好な弾性を呈するが、商業用途には許容し得ないと一般に考えられる靭性、粘着性および手触りの感触も呈する。
【0004】
多部材物品の製造は、通常、多段階(例えば、ロール巻き取り/ロール巻き出し、切断、接着など)を伴うために、靭性は重要である。高引っ張り強さの繊維は少数のライン中断しか起こさない(したがって、高生産性)ので、低引っ張り強さの繊維よりも有利である。更には、この最終使用は、通常、この部材の機能に特有のレベルの引っ張り強さを必要とする。最適化された布は、繊維、部材(例えば、不織布)および物品の製造および最終使用に最小の必要とされる引っ張り強さを得るために最少の材料消費(坪量)を有する。
【0005】
低モジュラスは手触りの感触の一つの態様である。低モジュラスの繊維から製造される布は、高モジュラスの繊維から製造される布よりも「柔らかい」か、さもなければ同等に感じる。低モジュラス繊維からなる布は、良好なドレープ適性および良好なフィット性につながる低曲げ剛性も呈する。対照的に、高モジュラス繊維、例えばhPPから製造される布は粗く(硬く)感じ、そしてドレープ性が劣る(例えば、劣ったフィット性を有する)。ポリエチレンベースのエラストマーから製造される布は肌に極めてくっつき、じとじとした感じがする。
【0006】
繊維弾性は、この繊維から製造される物品が体形に合い、良好で快適なフィット性につながるために重要である。弾性部材付きのおむつは、体の大きさおよび形状および動きが変わる時の一般に垂れ下がりが少ない。フィット性の改善によって、快適さが改善され、漏れが低減され、そしてこの物品が木綿の下着に更に類似するために、使用者の全般的な生活の質は改善される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、繊維の形にある場合良好な弾性および靭性と低モジュラスを呈するポリマーと、このような繊維から製造される物品に高い関心がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態によれば、弾性あるいは延伸性の繊維は、少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含むプロピレンコポリマーを含んでなる繊維であって、X線回折により測定して約40%未満の結晶性インデックスを有することを特徴とするプロピレンコポリマーを含んでなる。約20%と約40%の間の結晶性インデックスのこのようなコポリマーは延伸性繊維を形成し、約20%未満の結晶性インデックスのコポリマーは弾性繊維を形成する。このコモノマーは、通常、1またはそれ以上のエチレン(好ましいコモノマー)、C4-20α−オレフィン、C4-20ジエン、スチレン系化合物などである。
【0009】
本発明のもう一つの実施形態においては、この繊維は、
(i)約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピーク;または
(ii)本質的に同一のままに留まるTmeと、このコポリマー中のコモノマー、すなわちエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位の量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つDSC曲線;または
(iii)このコポリマーがチーグラー・ナッタ(Z−N)触媒により製造される同程度のコポリマーよりも多くのガンマ形結晶を示すX線回折パターンの性質の少なくとも一つを有することを更に特徴とするプロピレンコポリマーを含んでなる。通常、この実施形態のコポリマーは、これらの性質の少なくとも2つ、好ましくは3つ全部により特徴付けられる。本発明の他の実施形態においては、これらのコポリマーは、(iv)約−1.20よりも大きいスキューネスインデックス、Sixを有するとしても更に特徴付けられる。
【0010】
本発明のもう一つの実施形態においては、この繊維は、少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含むプロピレンコポリマーを含んでなるプロピレンコポリマーを含んでなる延伸性で、高靭性の繊維であって、30%未満の結晶性インデックス、約20g/デニール未満の、あるいはそれに等しいモジュラス、50%1−サイクル試験により測定して、5%以上の30%伸び時の保持荷重、50%1−サイクル試験により測定して、約30%未満の、あるいはそれに等しい直後残留歪(immediate set)を有することを特徴とするものである。この繊維は、元の寸法の少なくとも100%(すなわち、2×)まで延伸可能でなければならない。
【0011】
本発明のもう一つの実施形態においては、この繊維は、少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含むプロピレンコポリマーを含んでなる弾性繊維であって、約25%未満の、あるいはそれに等しい結晶性インデックス、約2.5g/デニール未満の、あるいはそれに等しい靭性、約5g/デニール未満の、あるいはそれに等しいモジュラス、50%1−サイクル試験により測定して、15%以上の、あるいはそれに等しい30%伸び時の保持荷重、50%1−サイクル試験により測定して、約15%未満の、あるいはそれに等しい直後残留歪を有することを特徴とするものである。この繊維は元の寸法の少なくとも50%(すなわち、1.5×)まで延伸可能でなければならない。
【0012】
もう一つの実施形態においては、本発明は、少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含んでなるプロピレンコポリマーを含んでなる繊維を形成する方法であって、(i)コポリマーのメルトを形成し、(ii)このメルトコポリマーをダイから押し出し、そして(iii)押し出されたコポリマーを約200よりも大きい引き落し率にかける段階を含んでなるものである。この繊維は、延伸操作時にこの繊維を引っ張り伸びにかけることにより配向される。この実施形態の一つの態様においては、この引っ張り伸びは、延伸操作の急冷域ですなわち紡糸口金とゴデットの間で付与される。
【0013】
次の理論により拘束されるのではないが、これらの本発明の繊維を製造するための配向は応力誘起結晶化(stress-induced crystallization)を生じると考えられる。この結晶化は、翻って、繊維のブロッキング(すなわち、粘着)を最少とし、手触りの感触を改善する。
【0014】
本発明の繊維は、プロピレンをベースとするコポリマー単独から製造可能であり、あるいはプロピレンをベースとするコポリマーと1またはそれ以上の他のポリマー、および/または添加物および/または核形成剤のブレンドから製造可能である。この繊維は、例えばモノフィラメント、二成分などのいかなる形もとることができ、後形成処理、例えばアニールの有無に拘わらず使用可能である。本発明の繊維のあるものは、300%までの伸びの前の実質的な破断、他のものは200%までの伸びの前に実質的な破断、そして更に他のものは100%までの伸びの前の実質的な破断を特徴とする。
【0015】
本発明の繊維は、種々の製造物品、例えば布(織布および不織布)を製造するのに使用され、これは、翻って、多部材物品、例えばおむつ、創傷包帯、女性用衛生製品などの中に組み込み可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「ポリマー」は、同一のあるいは異なるタイプのモノマーの重合により製造される高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマー等を含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマーまたはコモノマーの重合により製造されるポリマーを意味する。これは、限定ではないが、コポリマー(3つ以上の異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを指すのに「インターポリマー」としばしば互換的に使用されるが、2つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)、ターポリマー(3つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)、テトラポリマー(4つの異なるタイプのモノマーあるいはコモノマーから製造されるポリマーを通常指す)などを含む。用語「モノマー」または「コモノマー」は互換的に使用され、そしてポリマーを製造するために反応器に添加される重合性部分の付いたいかなる化合物も指す。ポリマーが1またはそれ以上のモノマーを含んでなるとして記述される場合には、例えばプロピレンとエチレンを含んでなるポリマーの場合には、このポリマーは、勿論、モノマーから誘導される単位、モノマーそれ自身、例えばCH2=CH2でなく、例えば−CH2−CH2−を含んでなる。
【0017】
「P/E*コポリマー」および類似の用語は、この明細書で使用されるように、(i)約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピーク、(ii)本質的に同一のままに留まるTmeと、コポリマー中のコモノマー、すなわちエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位の量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つ示差走査熱分析(DSC)曲線および(iii)チーグラー・ナッタ(Z−N)触媒により製造される同程度のコポリマーよりも多くのガンマ形結晶を示すX線回折パターンの性質の少なくとも一つを有することを特徴とする、プロピレン/不飽和コモノマーコポリマー(通常および好ましくはエチレン)を意味する。通常、この実施形態のコポリマーはこれらの性質の少なくとも2つ、好ましくは3つ全部を特徴とする。本発明の他の実施形態においては、これらのコポリマーは、(iv)約−1.20以上のスキューネスインデックス、Sixを有するとしても更に特徴付けられる。
【0018】
上記の下位段落(iii)のX線の性質に関して、「同程度の」コポリマーは10%内で同一のコモノマー組成と10%内で同一のMwを有するものである。例えば、本発明のプロピレン/エチレン/1−ヘキセンコポリマーが9重量%のエチレンと1重量%の1−ヘキセンであり、そして250,000のMwを有する場合には、同程度のポリマーは8.1〜9.9重量%のエチレン、0.9〜1.1重量%の1−ヘキセン、および225,000と275,000の間のMwを有し、チーグラー・ナッタ触媒により製造されるものである。
【0019】
P/E*コポリマーはP/Eコポリマーの固有の下位組である。P/EコポリマーはP/E*コポリマーだけでなくプロピレンおよび不飽和コモノマーのすべてのコポリマーを含む。P/E*コポリマー以外のP/Eコポリマーは、メタロセンで触媒されたコポリマー、拘束幾何触媒で触媒されたコポリマー、およびZ−Nで触媒されたコポリマーを含む。本発明の目的には、P/Eコポリマーは50重量パーセント以上のプロピレンを含んでなり、EP(エチレン−プロピレン)コポリマーは51重量パーセント以上のエチレンを含んでなる。この明細書で使用されるように、「...プロピレンを含んでなる」、「...エチレンを含んでなる」および類似の用語は、このポリマーが化合物それ自身でなくプロピレン、エチレンなどから誘導される単位を含んでなるということを意味する。
【0020】
「メタロセンで得られるポリマー」または類似の用語は、メタロセン触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。「拘束幾何触媒で触媒されたポリマー」、「CGC触媒で触媒されたポリマー」または類似の用語は、拘束幾何触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。「チーグラー・ナッタで触媒されたポリマー」、「Z−Nで触媒されたポリマー」、または類似の用語は、チーグラー・ナッタ触媒の存在下で製造されるいかなるポリマーも意味する。「メタロセン」は、金属に結合した少なくとも1つの置換あるいは非置換のシクロペンタジエニル基を有する金属含有化合物を意味する。「拘束幾何触媒」または「CGC」は、この明細書で使用されるように、この用語は、米国特許第5,272,236号および第5,278,272号で規定され、述べられているのと同一の意味を有する。
【0021】
「ランダムコポリマー」は、モノマーがポリマー鎖にわたってランダムに分布しているコポリマーを意味する。「プロピレンホモポリマー」および類似の用語は、全て、あるいは本質的に全てプロピレンから誘導される単位からなるポリマーを意味する。「ポリプロピレンコポリマー」および類似の用語は、プロピレンとエチレンおよび/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーから誘導される単位を含んでなるポリマーを意味する。用語「コポリマー」はターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
【0022】
本発明の実施において使用される不飽和コモノマーは、C4-20α−オレフィン、特にC4-12α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4-20ジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8-40ビニル芳香族化合物;およびハロゲン置換C8-40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンを含む。エチレンとC4-12α−オレフィンが本発明の実施において使用される好ましいコモノマーであり、そしてエチレンが特に好ましいコモノマーである。
【0023】
本発明の反応器グレードプロピレンコポリマーは、このコポリマーの重量基準で少なくとも約50の、好ましくは少なくとも約60の、そして更に好ましくは少なくとも約70重量%のプロピレンから誘導される単位を含んでなる。溶融紡糸時のポリプロピレン(PP)の応力誘起結晶化挙動のメリットならびに押し出し時の架橋に対する鎖切断のポリプロピレンの傾向の明確な利点を確実にするのに充分なプロピレンから誘導される単位がこのコポリマー中に存在する。延伸時に生じる応力誘起結晶性は紡糸を容易にし、繊維破断を低減し、そしてロープ化を低減させる。
【0024】
用語「反応器グレード」は米国特許第6,010,588号で定義されている通りであり、一般に分子量分布(MWD)または多分散性が重合後に実質的に変えられていないポリオレフィン樹脂を指すということが意図されている。
【0025】
充分なレベルのプロピレン以外のコモノマーは、結晶化を制御して、弾性性能が維持される。このプロピレンコポリマーの残存単位は少なくとも1つのコモノマー、例えばエチレン、C4-20α−オレフィン、C4-20ジエン、スチレン系化合物などから誘導されるが、好ましくはこのコモノマーは、エチレンおよびC4-12α−オレフィン、例えば1−ヘキセンまたは1−オクテンの少なくとも1つである。好ましくは、このコポリマーの残存単位はエチレンのみから誘導される。
【0026】
このコポリマー中のエチレン以外のコモノマーの量は、少なくとも一部、このコポリマーのコモノマーおよび所望の結晶性の関数である。このコポリマーの所望の結晶性インデックスは約40%を超えず、そして弾性繊維用には約20%を超えない。このコモノマーがエチレンである場合には、このコモノマーから誘導される単位は、通常、このコポリマーの約16以下、好ましくは約15以下、そして更に好ましくは約12重量%以下を占める。最少量のエチレンから誘導される単位は、通常、このコポリマーの重量基準で少なくとも約5、好ましくは少なくとも約6、そして更に好ましくは少なくとも約8重量%を占める。
【0027】
本発明のプロピレンコポリマーはいかなる方法によっても製造可能であり、チーグラー・ナッタ、CGC、メタロセン、および非メタロセン、金属を中心とするヘテロアリール配位子触媒により製造されるコポリマーを含む。これらのコポリマーは、好ましくはランダム立体配置のものであるが、ランダム、ブロックおよびグラフトコポリマーを含む。例示のプロピレンコポリマーは、Exxon−Mobil VISTAMAXX(商標)、Mitsui TAFMER(商標)およびThe Dow Chemical Companyからのプロピレン/エチレンプラストマーあるいはエラストマーを含む。
【0028】
本発明のコポリマーの密度は、通常、1立方センチメートル当たり、少なくとも約0.850、好ましくは少なくとも約0.860および更に好ましくは少なくとも約0.865グラム(g/cm3)である。通常、このプロピレンコポリマーの最大密度は約0.915であり、好ましくは最大密度は約0.900、そして更に好ましくは最大密度は約0.890g/cm3である。
【0029】
本発明のコポリマーの重量平均分子量(Mw)は広く変わることができるが、通常約10,000と1,000,000の間にある(最小あるいは最大のMwに対する唯一の限界は実際的な考慮により設定されるものであると理解して)。メルトブロー繊維の製造で使用されるコポリマーに対しては、好ましくは最小のMwは約20,000、更に好ましくは約25,000である。
【0030】
本発明のコポリマーの多分散性は、通常、約2と約4の間にある。「狭い多分散性」、「狭い分子量分布」、「狭いMWD」および類似の用語は、約3.5未満の、好ましくは約3.0未満の、更に好ましくは約2.8未満の、更に好ましくは約2.5未満の、そして最も好ましくは約2.3未満の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を意味する。繊維用途で使用するためのポリマーは、通常、狭い多分散性を有する。本発明のコポリマーの2つ以上を含んでなるブレンド、または本発明の少なくとも1つのコポリマーと少なくとも1つの他のポリマーを含んでなるブレンドは、4よりも大きい多分散性を有し得るが、紡糸の考慮に対しては、このようなブレンドの多分散性はなお好ましくは約2と約4の間にある。
【0031】
本発明の一つの好ましい実施形態においては、このプロピレンコポリマーは、(i)約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピーク、(ii)本質的に同一のままに留まるTmeと、コポリマー中のコモノマー、すなわちエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つ示差走査熱分析(DSC)曲線および(iii)チーグラー・ナッタ(Z−N)触媒により製造される同程度のコポリマーよりも多くのガンマ形結晶を示すX線回折パターンの性質の少なくとも一つを有することを更に特徴とする。通常、この実施形態のコポリマーはこれらの性質の少なくとも2つ、好ましくは3つ全部を特徴とする。この発明の他の実施形態においては、これらのコポリマーは、(iv)約−1.20以上のスキューネスインデックス、Sixを有するとしても更に特徴付けられる。これらの性質の各々およびこれらのそれぞれの測定は、引用により本明細書に組み込まれている、2002年5月5日出願のUSSN10/139,786(WO2003/040442)で詳細に述べられている。
【0032】
スキューネスインデックスは昇温溶離分別(TREF)から得られるデータから計算される。このデータは溶離温度の関数としての重量分率の正規化されたプロットとして表現される。この分離機構はエチレンコポリマーのそれに類似であり、結晶化可能な成分(エチレン)のモル含量が溶離温度を決定する主因子である。プロピレンコポリマーの場合には、溶離温度を主として決定するのはアイソタクチックポリプロピレンのモル含量である。
【0033】
このメタロセン曲線の形状はコモノマーの固有なランダム組み込みから生じる。この曲線の形状の目立った特徴は、高溶離温度における曲線の鋭さまたは急峻さと比較しての低溶離温度におけるテーリングである。この曲線の形状の主要な特徴は高溶離温度におけるこの曲線の鋭さまたは急峻さに比較される低溶離温度でのテーリングである。このタイプの非対称性を反映する統計はスキューネスである。式1はこの非対称性の尺度としてのスキューネスインデックスSixを数学的に表す。
【数1】

【0034】
値Tmaxは、TREF曲線において50と90℃の間で溶離する最大重量分率の温度として定義される。TiおよびwiはそれぞれTREF分布における任意のi番目の区分の溶離温度および重量分率である。この分布は30℃以上で溶離する曲線の全面積に関して正規化(wiの和は100%に等しい)されたものである。このように、このインデックスは結晶化されたポリマーの形状のみを反映する。いかなる非結晶化ポリマー(30℃以下でなお溶液中にあるポリマー)も式1に示す計算から除外される。
【0035】
示差熱分析法(DSC)は、半結晶性ポリマーの融解および結晶化の試験に使用可能な通常の方法である。DSC測定の一般的な原理と半結晶性ポリマーの研究へのDSCの適用は、標準的な教科書(例えば、E.A.Turi、ed.,Thermal Characterization of Polymeric Materials,Academic Press,1981)で述べられている。本発明のコポリマーのあるものは、本質的に同一のままに留まるTmeと、このコポリマー中の不飽和コモノマーの量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つDSC曲線を特徴とする。Tmeは融解が終了する温度を意味する。Tmaxはピーク融解温度を意味する。
【0036】
本発明のプロピレンコポリマーは、通常、少なくとも約0.01の、好ましくは少なくとも約0.05の、更に好ましくは少なくとも約1の、そして最も好ましくは少なくとも約10のMFRを有する。最大のMFRは、通常、約2,000を超えず、好ましくは約1000を超えず、更に好ましくは約500を超えず、なお更に好ましくは約80を超えず、そして最も好ましくは約50を超えない。プロピレンとエチレンおよび/または1またはそれ以上のC4−C20α−オレフィンのコポリマーのMFRはASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)により測定される。
【0037】
一つの好ましい類の本発明のプロピレンコポリマーは、非メタロセン、金属を中心とするヘテロアリール配位子触媒により製造される。ある実施形態においては、この金属は1またはそれ以上のハフニウムとジルコニウムである。
【0038】
特に、この触媒のある実施形態においては、ハフニウム金属の使用は、ヘテロアリール配位子触媒に対するジルコニウム金属と比較して好ましいことが判明した。広い範囲の補助的な配位子置換基が増強された触媒性能を提供し得る。ある実施形態における触媒は配位子と金属前駆体を含んでなる組成物であり、そして場合によっては活性化剤、活性化剤の組み合わせ物または活性化剤パッケージを加えて含み得る。
【0039】
本発明の実施において使用される触媒は、補助的な配位子−ハフニウム錯体、補助的な配位子−ジルコニウム錯体および場合によっては特にオレフィン、ジオレフィンまたは他の不飽和化合物であるモノマーとの重合および共重合反応を触媒する活性化剤を含んでなる触媒を更に含む。ジルコニウム錯体、ハフニウム錯体、この開示された配位子を用いる組成物または化合物は、本発明の実施において有用な触媒の範囲内である。この金属−配位子錯体は中性あるいは帯電状態であり得る。金属に対する配位子の比も変わり得、この厳密な比は配位子と金属−配位子錯体の性状に依存する。この金属−配位子錯体は異なる形をとり得、例えば単量体形、二量体形あるいは更に高次のものであり得る。
【0040】
例えば、本発明の実施において有用な好適な配位子は、一般式
【化1】

により広く特徴付けされ得る。式中、
1は置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から一般的に選択される、この環中に4〜8個の原子を有する環であって、例えばR1は一般式
【化2】

により特徴付けされ得る。式中、Q1およびQ5は原子E以外の環上の置換基であり、Eは炭素および窒素からなる群から選択され、Q1またはQ5の少なくとも1つはかさ高(少なくとも2個の原子を有するとして規定される)である。Q’’qはこの環上の更なる可能な置換基を表し、qは1、2、3、4または5であり、そしてQ’’は水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシル、アリールオキシル、シリル、ボリル、ホスフィノ、アミノ、チオ、セレノ、ハライド、ニトロ、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される。Tは−CR23−および−SiR23−からなる群から選択される橋架け基であり、R2およびR3は水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシル、アリールオキシル、シリル、ボリル、ホスフィノ、アミノ、チオ、セレノ、ハライド、ニトロ、およびこれらの組み合わせ物からなる群から独立に選択される。J’’はヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールからなる群から一般に選択され、特定の反応に対する特定の実施形態が本明細書中で述べられている。
【0041】
また例えば、いくつかの実施形態においては、本発明の好ましいプロピレンコポリマーの製造に使用される触媒の配位子は、一般式Hf(L)nを特徴とする金属前駆体化合物と合体され得る。式中、Lはハライド(F、Cl、Br、I)、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ボリル、シリル、アミノ、アミン、ヒドリド、アリル、ジエン、セレノ、ホスフィノ、ホスフィン、カルボキシレート、チオ、1,3−ジオネート、オキサレート、カーボネート、ナイトレート、サルフェート、およびこれらの組み合わせ物からなる群から独立に選択され、nは1、2、3、4、5、または6である。
【0042】
この金属へのしかるべき配位子錯体は、本発明のプロピレンコポリマーの触媒作用において有用な錯体を生じる。一つの態様においては、この3,2金属−配位子錯体は式
【化3】

により一般に特徴付け可能である。式中、
Mはジルコニウムまたはハフニウムであり;
1およびTは上記に規定の通りであり;
J’’’は金属Mに結合した2個の原子の付いた置換ヘテロアリールからなる群から選択され、これらの原子の少なくとも1つはヘテロ原子であり、そしてJ’’’の一方の原子が配位結合によりMに結合し、他方が共有結合によりMに結合し;そして
【0043】
1およびL2は、ハライド、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ボリル、シリル、アミノ、アミン、ヒドリド、アリル、ジエン、セレノ、ホスフィノ、ホスフィン、カルボキシレート、チオ、1,3−ジオネート、オキサレート、カーボネート、ナイトレート、サルフェート、およびこれらの基(radicals)の組み合わせ物からなる群から独立に選択される。
【0044】
これらの触媒および本発明の好ましいプロピレンコポリマーの製造のための使用は、2002年5月5日出願のUSSN10/139,786に更に述べられている。
【0045】
本発明の繊維の製造に使用されるプロピレンコポリマーは多数の有用な用途を有する。代表的な例は、モノ−およびマルチフィラメント繊維、一成分および二成分繊維、ステープル繊維、バインダー繊維、スパンボンドおよびメルトブロー繊維(例えば、米国特許第4,430,563号、第4,663,220号、第4,668,566号または第4,322,027号で開示されているシステムを用いて)、織布および不織布、ストラップ、テープ、連続フィラメント(例えば、アパレル、室内装飾用品において使用するための)およびこのような繊維(例えば、これらの繊維と他の繊維、例えばPETまたは木綿とのブレンドを含む)から製造される構造物を含む。ステープルおよびフィラメント繊維は更なる延伸をせずに最終の繊維直径に直接に溶融紡糸可能であるか、あるいは大きい直径に溶融紡糸し、慣用の繊維延伸法を用いて引き続き所望の直径に熱延伸あるいは冷延伸可能である。用語「紡糸」または「スパン」は市販の装置および紡糸速度を示唆するということが理解されるべきである。
【0046】
本発明の実施で使用されるしかるべきコポリマー、特に20%未満の結晶性インデックスを持つコポリマーは優れた弾性を呈する。予備延伸が望ましいかどうかは用途に依存する。例えば、本発明のエラストマー性プロピレンコポリマーは、米国特許第6,323,389号の延伸結合積層法におけるフィラメント層として熱可塑性トリブロックエラストマーを置き換えることができる。このフィラメント層は、2つのスパンボンド層の間に挟む前に好ましくは一度だけ延伸される。代替的な例においては、本発明のエラストマー性ポリマーは、米国特許第5,910,224号のネック結合積層法における弾性層を置き換えることができる。このプロピレンポリマーの若干の予備延伸が好ましいことがあり得る。
【0047】
本発明のポリマーは、単独であれあるいは1またはそれ以上の他のポリマー(本発明のポリマーまたは本発明でないポリマーのいずれか)との組み合わせであれ、所望あるいは必要な場合には種々の添加物、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、核形成剤、潤滑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、着色剤、無機あるいは有機充填剤などとブレンドされ得る。これらの添加物は慣用の方法で、そして慣用の量で使用される。
【0048】
本発明の繊維は、本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマーと1またはそれ以上の他のポリマーとのブレンドを含んでなることができ、そしてこのポリマーブレンド比は広く、そして都合によって変わることができる一方で、本発明の一つの実施形態においては、この繊維は、少なくとも約50重量パーセントの、好ましくは少なくとも約60重量パーセントの、より好ましくは少なくとも約70重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマー(好ましくはエチレンまたはC4-12α−オレフィン)から誘導される単位を含み、X線回折により測定して約40%未満の結晶性インデックスを有することを特徴とするプロピレンコポリマーの少なくとも約98、好ましくは少なくとも約99そして更に好ましくは本質的に100重量パーセントを占める。本発明のもう一つの実施形態においては、このプロピレンコポリマーは1またはそれ以上のP/E*コポリマーを含んでなる。前記したように、これらのポリマーまたはポリマーブレンドからできた繊維は、多数の異なる形および立体配置のいずれか一つをとることができる。
【0049】
ポリオレフィンを含んでなる弾性繊維は、例えば米国特許第5,272,236号、第5,278,272号、第5,322,728号、第5,380,810号、第5,472,775号、第5,645,542号、第6,140,442号および第6,225,243号で既知である。本発明の実施において使用されるポリマーは、弾性繊維の製造および使用について既知のポリオレフィンと本質的に同一の方法で使用可能である。この点で、本発明の実施において使用されるポリマーは、官能基、例えばカルボニル、スルフィド、シラン基(radicals)などを含むことができ、そして架橋あるいは非架橋であることができる。架橋される場合には、このポリマーは既知の方法と材料を用いて架橋可能であるが、すべての架橋方法と材料がすべてのポリオレフィンに対して有効とは限らず、ペルオキシド、アゾおよび電磁放射線(例えば、電子線、UV、IRおよび可視光線)法はすべてポリエチレンと少なくとも限定された範囲で有効であり、これらの一部、例えば電子線のみがポリプロピレンと有効であり、ポリエチレンと必ずしも同一の程度で有効ではないということを理解すべきである。前記のように、添加物、促進剤などの使用は、所望するように使用可能である。
【0050】
「繊維」は直径対長さの比が通常約10よりも大きい材料を意味する。繊維直径は種々の方法で測定および報告可能である。一般に、繊維直径はフィラメント当たりのデニールで測定される。デニールはテキスタイル用語であり、繊維の長さ9000メートル当たりの繊維のグラム数として規定される。モノフィラメントは、一般に、15よりも大きい、通常30よりも大きいフィラメント当たりのデニールを有する押し出されたストランドを指す。ファインデニール繊維は、一般に、約15以下のデニールを有する繊維を指す。マイクロデニール(マイクロ繊維としても知られる)は、一般に、PPに対しては1デニールよりも小さいか、あるいは12ミクロン未満の直径を有する繊維を指す。
【0051】
「フィラメント繊維またはモノフィラメント繊維」は、無限(すなわち、予め決められたものでない)長さの材料の連続ストランドを意味し、これは有限な長さ(すなわち、予め決められた長さの断片に切断されたか、あるいは他の方法で分断されたストランド)の材料の不連続ストランドである「ステープル繊維」と対比される。
【0052】
「弾性」は、繊維が下記の測定方法で述べる50%1−サイクル試験により測定して15%未満の直後残留歪を有するということを意味する。弾性は繊維の「永久歪(permanent set)」によっても記述可能である。永久歪は弾性の逆である。繊維はある点まで延伸され、引き続いて延伸の前に元の位置まで緩和され、次に再度延伸される。この繊維が荷重を引っ張り始める点はパーセント永久歪と表記される。「弾性材料」は当技術分野では「エラストマー」および「エラストマー的」とも呼ばれる。弾性材料(時には、弾性物品と呼ばれる)は、ポリマーそれ自身ならびに、限定ではないが、繊維、フィルム、細片、テープ、リボン、シート、被膜、成形物などの形のポリマーを含む。好ましい弾性材料は繊維である。この弾性材料は硬化あるいは非硬化、照射あるいは非照射、および/または架橋あるいは非架橋であることができる。
【0053】
「非弾性材料」は上記に規定したように弾性的でない材料、例えば繊維を意味する。
【0054】
「ホモフィラメント繊維」、「モノリシック繊維」、「単一成分繊維」および類似の用語は、単一のポリマー領域あるいはドメインを有する、そしていかなる他の別のポリマー領域(二成分繊維と対照的に)を持たない繊維を意味する。
【0055】
「二成分繊維」は2つ以上の別のポリマー領域あるいはドメインを有する繊維を意味する。二成分繊維はコンジュゲート繊維(conjugated fiber)または多成分繊維としても知られている。2つ以上の成分が同一のポリマーを含んでなり得ても、このポリマーは、通常、相互に異なる。このポリマーは、この二成分繊維の断面にわたって実質的に別の域中に配列され、そして通常この二成分繊維の長さに沿って連続的に延びる。この二成分繊維の立体配置は、例えばシース/コア配置(一方のポリマーが他方のポリマーにより取り囲まれている)、サイドバイサイド配置、パイ配置または「アイランド・イン・シー」配置であることができる。二成分繊維は、米国特許第6,225,243号、第6,140,442号、第5,382,400号、第5,336,552号および第5,108,820号で更に述べられている。
【0056】
「メルトブロー繊維」は、溶融した糸またはフィラメントとして糸またはフィラメントを減少した直径に細くするように機能する収束性の高速の高温ガス流(例えば空気)の中に溶融した熱可塑性ポリマー組成物を複数の、通常円形の、ダイキャピラリーから押し出すことにより形成される繊維である。このフィラメントまたは糸は高速の高温ガス流により搬送され、そして捕捉面上に堆積されて、一般に10ミクロンよりも小さい平均直径のランダムに分散した繊維のウエブを形成する
【0057】
「メルトスパン繊維」は、少なくとも1つのポリマーを融解し、次にメルト中の繊維をダイの直径(または他の断面形状)未満の直径(または他の断面形状)まで延伸することにより形成される繊維である。
【0058】
「スパンボンド繊維」は、溶融した熱可塑性ポリマー組成物をフィラメントとして紡糸口金の複数の、通常円形の、ダイキャピラリーから押し出すことにより形成される繊維である。この押し出されたフィラメントの直径は急速に減少し、次に捕捉面上に堆積されて、一般に約7および約30ミクロンの間の平均直径のランダムに分散した繊維のウエブを形成する。
【0059】
「不織物」は、ランダムに配置されているが、編んだ布の場合のように識別可能な方法では配置されていない個別の繊維または糸の構造を有するウエブまたは布を意味する。本発明の弾性繊維を使用して、不織構造物ならびに非弾性材料と組み合わせた弾性不織布の複合構造物を製造することができる。
【0060】
「延伸」は引き落とし(draw down)を意味し、これはV繊維/Vキャヒ゜ラリー(メルトから繊維への結晶性の変化を無視すればD2キャヒ゜ラリー/D2繊維にほぼ等しい)である。V繊維は巻き取り機での繊維の速度を意味し、Vキャヒ゜ラリーは紡糸口金を出る時の繊維の速度を意味する。Dキャヒ゜ラリーはキャピラリーの断面の直径を意味し、そしてD繊維は測定点での断面の直径を意味する。一定のフィラメント当たりデニール(dpf)においては、引き落としは製造速度に拘わらず与えられた毛細管直径で固定される。
【0061】
「粘着点」は、通常、繊維を固定された速度(例えば、1000、2000、3000m/分)で吊り上げ、次に急冷キャビネットの底部においてガラスロッドを繊維束の前面に押し付けることにより測定される。このガラスロッドは、繊維がガラスロッドに粘着するまで引き上げられる。これを各速度において3回繰り返し、そして粘着点を平均する。粘着点を紡糸口金面からの距離としてセンチメートルで測定する。通常、与えられた樹脂に対しては、紡糸速度が増加するに従って、紡糸応力が増加し、そして繊維が狭くなる(熱伝導が改善される)ために粘着点は減少する(結晶化速度が増加する)。マスバランスによって、初期直径(紡糸口金ホールサイズ)に無関係にこの繊維は同一の最終直径(一定の引き取り速度で)になるようにさせられるので、紡糸応力は引き落としを増加させること、すなわち、大きいホールダイを使用することによっても増加可能である。紡糸応力を増加させることにより、この繊維は速く結晶し、そして粘着点はダイに向かって上方に移動する。
【0062】
この明細書で使用されるように、不織物に対しては、用語「延伸性」は少なくとも150%まで延伸可能である材料を含む。「弾性」は、ウエブ試料が上記の試験手順において述べた50%1−サイクル試験により測定して15%未満の直後残留歪を有するということを意味する。弾性はウエブの「第1サイクルの残留歪(first cycle set)」としても記述可能である。「残留歪(set)」は試験手順で定義した通りである。
【0063】
良好な形成の布を定量化するために、2cm長さ当たりのフィラメント集結体の数が測定される。各フィラメント集結体は繊維幅の少なくとも10倍の長さである。2cm長さに加熱および圧力結合点を含まないように注意を払った。ランダムな方向での2cm長さにわたって、フィラメント集結体のリニアラインカウントをとった。「フィラメント集結体」は一緒に融着した平行な配向の多数本のフィラメントからなる。フィラメントはこの繊維の幅の10倍以上融着されている。フィラメント集結体は加熱あるいは圧力結合点から分離している。良好なウエブ形成に対しては、フィラメント集結体の数は30/2cmよりも少なく、優先的には20/2cmよりも少ない。
【0064】
本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマー、特にP/E*コポリマーは、上記のように他のポリマーとブレンドされて、本発明の繊維を形成することができる。これらのプロピレンコポリマーとのブレンドに好適なポリマーは、種々の供給者から市販されていて、限定ではないが、他のポリオレフィン、例えばエチレンポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ULDPE、中密度ポリエチレン(MDPE)、LLDPE、HDPE、均質に分岐した直鎖エチレンポリマー、実質的に直鎖のエチレンポリマー、グラフト変成されたエチレンポリマー、エチレン−スチレンインターポリマー(ESI)、エチレンビニルアセテートインターポリマー、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレンエチルアセテートインターポリマー、エチレンメタクリル酸インターポリマー、エチレンメタクリル酸イオノマーなど)、ポリカーボネート、ポリスチレン、慣用のポリプロピレン(例えば、ホモポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ランダムブロックポリプロピレンインターポリマーなど)、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリ乳酸インターポリマー、熱可塑性ブロックポリマー(例えば、スチレンブタジエンコポリマー、スチレンブタジエンスチレントリブロックコポリマー、スチレンエチレン−ブチレンスチレントリブロックコポリマーなど)、ポリエーテルブロックコポリマー(例えば、PEBAX)、コポリエステルポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックポリマー(例えば、HYTEL)、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)、コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素(EAACO)ターポリマー、エチレン/メタクリル酸/一酸化炭素(EMAACO)ターポリマー、エチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素(EVACO)ターポリマーおよびスチレン/一酸化炭素(SCO))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩素化ポリエチレンなど、およびこれらの混合物を含む。言い換えれば、本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマーは、2つ以上のポリオレフィンとブレンド可能であるか、あるいは1またはそれ以上のポリオレフィンと、および/またはポリオレフィン以外の1またはそれ以上のポリマーとブレンドされる。本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマー、またはこのようなコポリマーのブレンドがプロピレンコポリマー以外の1またはそれ以上のポリマーとブレンドされる場合には、このポリプロピレンコポリマーは、このブレンドの全重量の好ましくは少なくとも約50、更に好ましくは少なくとも約70、そして更に好ましくは少なくとも約90重量%を占める。上記したように、本発明の一つの実施形態においては、この繊維はプロピレンコポリマー、好ましくはP/E*コポリマーの少なくとも98重量%を占める。ある用途に対しては、特にウエブ均一性が関心事である場合には、この繊維は著しい量(例えばこの混紡の全重量の10〜40重量%)の高結晶性材料、例えばホモポリマーポリプロピレンを含んでなり得る。この混紡中の種々の成分の量は最適化されて、延伸性/弾性を他の性質、例えばウエブ均一性とバランスさせることができる。
【0065】
一つの実施形態においては、本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマーは2つ以上のプロピレンコポリマーのブレンドである。ランダムプロピレンエチレンポリマーを含む本発明で使用するための好適なプロピレンコポリマーは、多数の製造者、例えばThe Dow Chemical Company、Basell PolyolefinsおよびExxon Chemical Companyから入手し得る。Exxonからの好適な慣用のメタロセンポリプロピレンポリマーは、商品名ESCORENEおよびACHIEVEにより供給される。本発明の実施において使用されるプロピレンコポリマーはホモポリマーポリプロピレン(h−PP)ともブレンド可能である。
【0066】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとして有用な好適なグラフト変成されたポリマーは当技術分野でよく知られ、そしてマレイン酸無水物および/または別のカルボニル含有のエチレン型不飽和有機基を担持する種々のエチレンポリマーを含む。代表的なグラフト変成されたポリマーは米国特許第5,883,188号で述べられていて、例えば均質に分岐したエチレンポリマーグラフト変成されたマレイン酸無水物である。
【0067】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なポリ乳酸(PLA)ポリマーは、文献(例えば、D.M.Bigg et al.,「Effect of Copolymer Ratio on the Crystallinity and Properties of Polylactic Acid Copolymers」,ANTEC'96,pp.2028-2039;WO90/01521;EP0515203AおよびEP0748846A2を参照のこと)でよく知られている。好適なポリ乳酸ポリマーは商品名EcoPLAによりCargill Dowにより商業的に供給される。
【0068】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適な熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリマーは、BASFおよびThe Dow Chemical Companyから市販されている(後者は商品名PELLETHANEにより市販している)。
【0069】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なポリオレフィン一酸化炭素インターポリマーは、よく知られた高圧フリーラジカル重合法を用いて製造可能である。しかしながら、これらは、在来のチーグラー・ナッタ触媒を用いるか、あるいはいわゆる均質触媒系、例えば上述し、参考としたものなどを使用することによっても製造され得る。
【0070】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なフリーラジカル開始による高圧カルボニル含有エチレンポリマー、例えばエチレンアクリル酸インターポリマーは、ThomsonおよびWaplesへの米国特許第3,520,861号、第4,988,781号、第4,599,392号および第5,384,373号により教示されている方法を含む当技術分野で既知のいかなる方法によっても製造可能である。
【0071】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なエチレンビニルアセテートインターポリマーは、The Dow Chemical Company、Exxon Chemical CompanyおよびDu Pont Chemical Companyを含む種々の供給者から市販されている。
【0072】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なエチレン/アルキルアクリレートインターポリマーは種々の供給者から市販されている。本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なエチレン/アクリル酸インターポリマーはThe Dow Chemical Companyから商品名PRIMACORにより市販されている。本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適なエチレン/メタクリル酸インターポリマーはDu Pont Chemical Companyから商品名NUCRELにより市販されている。
【0073】
本発明の実施におけるブレンドポリマーとして使用するための塩素化ポリエチレン(CPE)、特に塩素化された実質的に直鎖のエチレンポリマーは、ポリエチレンをよく知られた方法により塩素化することにより製造可能である。好ましくは、塩素化ポリエチレンは30重量パーセントに等しいか、あるいはそれより多い塩素を含んでなる。本発明の実施におけるブレンドポリマーとしての使用に好適な塩素化ポリエチレンは、The Dow Chemical Companyにより商品名TYRINにより商品として供給されている。
【0074】
二成分繊維は本発明のプロピレンP/E*コポリマーからも製造可能である。このような二成分繊維はこの繊維の少なくとも一つの部分に本発明のポリプロピレンポリマーを有する。例えば、シース/コア二成分繊維(すなわち、シースがコアを取り囲むもの)においては、このポリプロピレンはシースまたはコアのいずれかの中にあることができる。本発明の異なるポリプロピレンポリマーも、好ましくは両方の成分が弾性的であり、特にシース成分がコア成分よりも高融点を有する場合には同一の繊維中でシースとコアとして独立に使用可能である。他のタイプの二成分繊維も本発明の範囲内であり、そしてサイドバイサイド型コンジュゲート繊維(例えば、本発明のポリオレフィンがこの繊維の少なくとも一つの領域を占めるポリマーの分離した領域を有する繊維)などの構造物を含む。
【0075】
この繊維の形状は限定されていない。例えば、通常の繊維は円形の断面形状を有するが、時には繊維は異なる形状、例えば三葉型形状、または平坦(すなわち、「リボン」様)形状を有する。本発明の繊維実施形態はこの繊維の形状により限定されない。
【0076】
本発明の繊維は、メルトブロー、メルトスパンおよびスパンボンドを含むいかなる慣用の方法によっても製造可能である。メルトスパン繊維に対しては、メルト温度、スループット、繊維速度および引き落としが広く変わることができる。通常のメルト温度は190と245℃の間の範囲にあり、特に例えば25以上の比較的高いMFRのポリマーのメルトに対しては高い温度は高いスループットと繊維速度を支持する。スループットは、グラム/ホール/分(ghm)で測定されるが、通常、0.1と1.0の間、好ましくは0.2と0.7ghmの間の範囲にある。繊維速度は、通常、1000未満ないし3000以上の範囲であるが、好ましくは1分当たり1000と3000メートル(m/分)の間の範囲である。引き落としは500未満ないし2500以上で変わる。一般に、大きな引き落としは更に非弾性な繊維を生成する。
【0077】
本発明の繊維は、他の繊維、例えばPET、ナイロン、木綿、Kevlar(商標)などから製造されるものと共に使用されて、弾性および非弾性の布を製造することが可能である。
【0078】
本発明の弾性繊維から製造される布は織布、不織布および編布を含む。不織布は、種々の方法により、例えば、米国特許第3,485,706号および第4,939,016号で開示されているように布をスパンレース(あるいは水流交絡)すること、ステープル繊維をカーディングおよび加熱結合すること;一度の連続操作で連続繊維をスパンボンドすること;あるいは繊維を布にメルトブローし、引き続いて得られるウエブをカレンダー掛けするか、あるいは加熱結合することにより製造可能である。これらの種々の不織布の製造方法は当業者にはよく知られ、そしてこの開示はいかなる特別な方法にも限定されない。例えば、これらの新規な繊維と他の繊維(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)または木綿)のブレンドを含む、このような繊維から製造される他の構造物も本発明の範囲内に含まれる。
【0079】
本発明の繊維および布を用いて製造可能な加工されたあるいは多成分の物品は、弾性部分を有する複合物品(例えば、おむつ)を含む。例えば、弾性部分は、通常、おむつが落下しないようにおむつ腰帯部分に組み立てられ、そしてもれを防止するために脚帯部分に組み立てられる(米国特許第4,381,781号で示されているように)。しばしば、この弾性部分は、快適性と信頼性の良好な組み合わせを得るために更に良好な形状フィッティングおよび/または締め付けシステムを促進する。本発明の繊維および布は、弾性を通気性と合体させた構造物も生成させることができる。例えば、本発明の繊維、布および/またはフィルムは、米国特許第6,176,952号で開示されている構造物の中に組み込み得る。
【0080】
プロピレンコポリマーとこのコポリマーから製造される繊維は、両方とも後反応/形成処理、例えば架橋、アニールなどにかけられ得る。アニールのメリットおよび方法は米国特許第6,342,565号で述べられている。これらの後処理は慣用の方法で適用される。
【実施例】
【0081】
次の実施例は本発明の種々の実施形態を例示するのに示される。これらは、本発明をこの明細書中で別に説明し、特許請求されているように限定するようには意図していない。すべての数値は近似的なものである。数値範囲が示されている場合には、特記しない場合にはこの範囲外の実施形態がなお本発明の範囲内にあるということが理解されるべきである。次の実施例においては、種々のポリマーを多数の方法によりキャラクタリゼーションした。これらのポリマーの性能データも得た。この方法または試験の大部分を適用可能ならばASTM標準または既知の手順に従って行った。特記しない限り、すべての部およびパーセントは重量によるものである。
【0082】
25−38MFRのポリマーについて紡糸条件の影響を試験した。スループットと引き取り速度を制御することにより得られる伸び応力は、この繊維中の応力誘起結晶性の量と、したがって得られる機械的性質を決定する。1000よりも大きい引き落としで得られる更に高い伸び応力は、更に高い結晶性と、したがって更に剛直な繊維を生成した。低い結晶性または1000未満の引き落としにおいて更なる弾性を保持した。更に弾性の繊維に対しては、極めて低い結晶性または500未満の引き落としが好ましかった。弾性が維持されているということを確認するために、引っ張りヒステリシス挙動を測定した。
【0083】
測定方法
密度
ASTM D4703−00にしたがってクーポン試料(1インチ×1インチ×0.125インチ)を190℃で圧縮成形し、そして手順Bを用いて冷却した。試料を40〜50℃まで冷却したならば、取り出した。試料が23℃に達したならば、Ohaus AP210はかり(Ohaus Corporation(Pine,Brook NJ))を用いて、乾燥重量およびイソプロパノール中の重量を測定した。ASTM D792手順Bにより規定されているように、密度を計算した。
【0084】
DSC
示差熱分析法(DSC)は半結晶性ポリマーの融解および結晶化の試験に使用可能な普通の方法である。DSC測定の一般的な原理と半結晶性ポリマーの研究へのDSCの適用は、標準的な教科書(例えば、E.A.Turi、ed.,Thermal Characterization of Polymeric Materials,Academic Press,1981)で述べられている。本発明の実施で使用されるコポリマーのしかるべきものは、本質的に同一のままに留まるTmeと、このコポリマー中の不飽和コモノマーの量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つDSC曲線を特徴とする。Tmeは融解が終了する温度を意味する。Tmaxはピーク融解温度を意味する。
【0085】
TA Instruments,Inc.からのモデルQ1000DSCを用いて、示差熱分析法(DSC)分析を行う。DSCの較正を次のように行う。最初に、アルミニウムDSCパン中に試料を入れずにDSCを−90℃から290℃まで走らせることにより、ベースラインを得る。次に、この試料を180℃まで加熱し、この試料を10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いてこの試料を140℃で1分間等温的に保持し、続いてこの試料を140℃から180℃に10℃/分の加熱速度で加熱することにより、7ミリグラムの新しいインジウム試料を分析する。このインジウム試料の融解熱および融解の開始を求めて、融解の開始に対しては0.5℃から156.6℃内であり、そして融解熱に対しては0.5J/gから28.71J/g内であることをチェックする。次に、DSCパン中の新しい試料の小滴を25℃から−30℃まで10℃/分の冷却速度で冷却することにより、脱イオン水を分析する。この試料を−30℃で2分間等温的に保持し、そして30℃まで10℃/分の加熱速度で加熱する。融解の開始を求めて、0.5℃から0℃内であることをチェックする。
【0086】
このポリプロピレン試料を190℃の温度で薄いフィルムにプレスする。約5〜8mgの試料を秤り取り、そしてDSCパン中に入れる。蓋をパン上に圧着して、密閉した雰囲気を確保する。この試料パンをDSCセル中に入れ、そして約100℃/分の高速で融解温度の約60℃以上の温度まで加熱する。この試料をこの温度で約3分間保つ。次に、この試料を10℃/分の速度で−40℃まで冷却し、そしてこの温度で3分間等温的に保持する。結果として、この試料を完全に融解するまで10℃/分の速度で加熱するピーク融解温度、開始およびピークの結晶化温度、融解熱および結晶化熱Tme、ならびに関心のある任意の他のDSC分析について、得られたエンタルピー曲線を分析する。
【0087】
X線実験
マルチワイヤ二次元HiStar検出器の付いたBruker−AXSからのGADDSシステムを用いて、試料を透過モードで簡便に分析した。試料をレーザーポインターおよびビデオ顕微鏡と位置合わせした。銅Kα線(1.54オングストロームの波長)を6cmの試料−検出器(SDD)距離で用いて、データを収集した。このX線ビームを0.3mmまで収束した。透過モードでの2D面積検出器に対しては、中心からの径方向の距離rは、SDDx(tan2θ)に等しく、2θは入射X線ビームと回折ビームの間の角度に等しい。CuKα線および6cmのSDDに対しては、実際に測定される2θの範囲は約0°〜35°であった。方位角φは0°〜360°の範囲であった。
【0088】
データ解析
慣用的には、結晶相からの回折面積の下に存在する無定形セグメントからの散乱面積(または強度)を、適当なソフトウエアパッケージ(例えば、Materials Data,IncからのJadeソフトウエアをここでは使用)を用いて回折プロフィールのプロフィールフィッティングにより求める。次に、絶対的な結晶性Xc-Absをこれらの2つの面積値の比を基準として下記に示すように計算する。
【数2】

式中、IAmはバックグラウンドを差し引いた後の無定形散乱に対する積分強度であり、そしてITotalは測定される全強度であり、そして両方のポリマー相の散乱および回折を組み込んでいる(再度、バックグラウンドを差し引いた後の)。ITotalを求める方法を後で更に詳しく述べる。
【0089】
しかしながら、このような分析は、著しい優先配向(結晶性および無定形相の両方)が存在しない場合においてのみ、そして結晶性が比較的高く、ピークが強く、はっきりしている試料に対してのみ最も正確である。この研究の高配向で低結晶性の繊維の場合には、360°全方位範囲に対するデータを用いる慣用のプロフィールフィッティングによっては、無定形散乱曲線IAmの形状の高再現性および高信頼性の評価は得られず、そして下記のITotalの測定の考察に続いて議論されるように、この値を定量化する異なる方法を案出しなれなければならない。
【0090】
結晶性または配向が低いものであれ、あるいは高いものであれ、この研究におけるすべての試料に対しては、結晶相回折と無定形相散乱の両方による全積分強度すなわちITotalを次のように得た。最初に、2Dスクリーンを厚さΔrの小さな帯(同心円)に分割した。検出器の中心からスクリーンの縁までの各r+Δr距離において、強度を360°(すなわち、φ=0°から360°まで)にわたって平均して、IAVG(r)を得、次にr=0からr=rmax(または0°から35°の2θ)まで積分して、ITotalを得る。
【0091】
他方、この無定形散乱をこのような全角度プロフィールから求めなかった。代わりに、繊維方向(φ=0°)に沿い、そして2)繊維方向にほぼ垂直な「赤道近傍」方向(赤道方向から12度はずれた、あるいはφ=78°)に沿ったφの2つの極限の、あるいは特別な方向においてのみ(すなわち、2つの特別な方位角のみを用いて)無定形散乱の強度を求めた。これらの2つの方向における結晶ピーク回折が極めて弱いか、あるいは存在せず、そして無定形ピークの真の形状の信頼性のある測定が得られるので、これらの2つの方向に沿った0°から35°2θの強度は本質的にすべて無定形散乱によるものである。
【0092】
次に、IAm(φ=0°)およびIAm(φ=78°)から、φの0〜360度全体に対する無定形散乱面積IAmの平均を
【数3】

として評価した。式中、Iam(φ=0°)は0°から35°2θまでの繊維軸に沿っての無定形散乱の積分強度であり、そしてIam(φ=78°)は赤道(垂直)軸から12°はずれた角度で得られるものと同一である。次に、結晶性インデックスXcを式2と同様に
【数4】

のように求める。式中、XC-Absは、結晶相の優先配向の存在によりXcが試料中の結晶性の量のインデックスであり、絶対的な結晶性レベルでないということを示すためにXcと変えられたものである。しかしながら、式4を使用することにより、計算された結晶性インデックスは、数パーセントから約40%までの広い範囲の結晶性の試料に対して高信頼性および高再現性であることが判明した。
【0093】
赤道方向の無定形散乱強度に対する繊維方向の無定形散乱強度の比により、あるいは
【数5】

により無定形配向を得、配向繊維に対しては、IAm(φ=78°)はIAm(φ=0°)よりも大きいということを認めた。この定義に基づいて、0の値は完全な無定形配向を表し、そして1はランダム配向を表す。これらのデータも配向および結晶性の広い範囲にわたって高再現性および高信頼性であることが判明した。
【0094】
結晶配向に対しては、Wilchinskyの方法(J.Appl.Physics,30,792(1959))を用いて慣用のHermansの配向関数、fcを求めた。計算されたfcは繊維方向に沿っての結晶配向度を表す。1の値は完全な配向を表し、0はランダム配向を表し、そして−0.5は完全に垂直な配向を表す。
【0095】
引っ張り試験
2インチの間隔をあけた2つの空気圧で作動する線接触グリップの間に144フィラメントのトウ(tow)を取り付けた。これをゲージ長とする。平らなグリップ面をゴムで被覆する。圧力を調整して、スリップを防止する(通常50〜100psi)。試料が破壊するまで、1分当たり10インチでクロスヘッドを増加させる。クロスヘッド変位を2インチで割り、100を掛けることにより、歪を計算する。還元荷重(g/デニール)は[荷重(グラム力)/フィラメント数/フィラメント当たりのデニール]に等しい。伸びを式6
【数6】

により定義した。L0は2インチの初期長さであり、そしてL破断は破断時の長さである。靭性は式7
【数7】

により定義する。F破断はグラム力で測定した破断時の力であり、dはフィラメント当たりのデニールであり、そしてfは試験対象のトウ中のフィラメント数である。
【0096】
50%1−サイクル試験
試料を取り付け、そしてグリップ間隔を引っ張り試験におけるように設定した。クロスヘッド速度を1分当たり10インチに設定した。50%の歪が印加されるまで、クロスヘッドを引き上げ、次にクロスヘッドを同一のクロスヘッド速度で0%歪まで戻した。0%歪まで戻した後、クロスヘッドを1分当たり10インチで伸展した。荷重の開始を直後残留歪とした。30%歪時のこの試料の第1の伸展および第1の収縮時の還元荷重を測定した。収縮時の30%歪時の還元荷重を伸展時の30%歪時の還元荷重で割り、100を掛けたものとして保持荷重を計算した。
【0097】
不織布の測定
3インチ幅×8インチ細片をウエブからマシン方向(MD)および交差方向(CD)で切断することにより、不織布測定用の試料を得た。分析用はかりにより測定した重量を面積で割ることにより、g/m2での坪量(basis weight)を各試料について求めた。次に、初期には3インチ離れた、空気圧で作動する線接触グリップをはめたSintechの中に試料を取り付け、12インチ/分で破断するまで引っ張った。ピーク荷重およびピーク歪を各引っ張り測定について記録した。
【0098】
80%歪までの1−サイクルヒステリシス試験を用いて、弾性を測定した。この試験においては、初期には4インチ離れた、空気圧で作動する線接触グリップをはめたSintechの中に試料を取り付けた。次に、この試料を500mm/分で80%まで引っ張り、同一の速度で0%歪まで戻した。収縮時の10g荷重時の歪を%残留歪とした。ヒステリシス損失を歪と収縮サイクルの間のエネルギー差として定義する。下降荷重は50%歪時の収縮力であった。すべての場合に、試料をグリーン(green)あるいは非老化(unaged)で測定した。
【0099】
フィラメント集結体
良好な形成の布を定量化するために、次の方法を使用した。Nikon SNZ−10双眼顕微鏡を10×の倍率で入射光により使用して、所定の長さにわたったフィラメント集結体の数を数えた。2cmの線を交差するフィラメント集結体のみを数えた。各フィラメント集結体は繊維幅の少なくとも10倍の長さである。2cm長さに加熱および圧力結合点を含まないように注意を払った。ランダムな方向での2cm長さにわたって、フィラメント集結体のリニアラインカウントをとった。「フィラメント集結体」は一緒に融着した平行な配向の多数本のフィラメントからなる。融着の長さがこの繊維の幅の10倍以上持続する場合には、フィラメントは融着していると考えられる。フィラメント集結体は加熱あるいは圧力結合点から分離している。
【0100】
走査電子顕微鏡法
走査電子顕微鏡法用の試料をカーボンブラック充填テープおよび銅テープによりアルミニウム試料ステージ上に載せた。次に、アルゴンガス供給と真空ポンプを備えたStructure Probe Incorporated(West Chester,Massachusetts))からのSPI−モジュールスパッタコーター(モデル番号11430)を用いて、この載せた試料を100−200Åの金により被覆した。
【0101】
次に、電界効果電子銃を備え、そしてHitachi America,Ltd(Shaumberg,Illinois)により供給されるHitachi S4100走査電子顕微鏡によりこの金を被覆した試料を検査した。3〜5kVの加速電圧を用いて測定し、そしてデジタル画像捕捉システムを用いて捕集される二次電子画像形成モードを用いて試料を検査した。
【0102】
実験データ
使用した異なる樹脂を表1に示す。この表において、「X線結晶性インデックス」は、急冷した圧縮成形フィルム試料の結晶性インデックスを指し、それゆえ以降の表で繊維試料について報告される結晶性インデックスと直接に比較し得ない。
【0103】
約9〜16重量%のエチレンを含んでなるプロピレン−エチレンコポリマーを次の実施例で使用した。比較のために、エチレン−オクテンコポリマーとポリプロピレンホモポリマーも使用した。各ポリマーのメルトフロー比(MFR)は20〜40(または約10〜20メルトインデックス(MI)等価)であった。
【表1】

この表および次の表中、Ex1〜Ex4は本発明の実施例であり、そしてC1〜C4は比較例である。
【0104】
繊維を種々の条件下で紡糸した。主要な変数はスループット(グラム/ホール/分またはghm)であり、これはポンプ速度、押し出し設計、およびダイパラメーターにより制御される。紡糸口金は、各々が0.65mmの直径および3.85の長さ/直径比(L/D)を有する144個のホールを有するものであった。急冷空気温度は12℃であり、そして3つのゾーンにわたって分配した。熱線風速計を用いて、このゾーンの各々の空気速度を0.20、0.28および0.44m/秒と測定した。メルト温度を190から245℃まで変えた。紡糸速度とポンプ速度の組み合わせにより引き落としを制御した。
【0105】
プロピレンコポリマーEx1を用いて、6回の紡糸ランを行った。各ランのメルト温度は220℃であり、スループットはランEx1/1〜3に対しては0.6ghmおよびランEx1/4〜6に対しては0.3ghmであり、そして紡糸速度(メートル/分またはm/分)はランEx1/1およびEx1/4に対しては1000m/分およびランEx1/2およびEx1/5に対しては2000m/分、およびランEx1/3およびEx1/6に対しては3000m/分であった。このデータを表2に示す。
【表2】

【0106】
プロピレンコポリマーEx2を用いて、6回の紡糸ランを行った。各ランのメルト温度は220℃であり、スループットはランEx2/1〜3に対しては0.6ghmおよびランEx2/4〜6に対しては0.3ghmであり、そして紡糸速度(メートル/分またはm/分)はランEx2/1およびEx2/4に対しては1000m/分、ラン2/2および2/5に対しては2000m/分、およびランEx2/3およびEx2/6に対しては3000m/分であった。このデータを表3に示す。
【表3】

【0107】
プロピレンコポリマーEx3を用いて、6回の紡糸ランを行った。各ランのメルト温度は220℃であり、スループットはラン3/1〜3に対しては0.6ghmおよびラン3/4−6に対しては0.3ghmであり、そして紡糸速度(メートル/分またはm/分)はラン3/1および3/4に対しては1000m/分、ラン3/2および3/5に対しては2000m/分、およびラン3/3および3/6に対しては3000m/分であった。このデータを表4に示す。
【表4】

【0108】
Ex1〜Ex3の紡糸を表5で比較する。メルト温度は220℃であり、引き落としは1261であり、そしてスループットは各ランに対して0.4ghmであった。紡糸速度は各ランに対して2000m/分であった。
【表5】

【0109】
比較例C1〜C3を表2、3および4に示したのと同一の条件下で行った。この結果をそれぞれ表6、7および8に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

【0110】
前述したように、配向PPに対する最も普通の結晶形はα単斜晶形である。しかしながら、低配向(低紡糸応力)の急冷された試料については、パラクリスタルまたはスメクチックと呼ばれる低配向の結晶形も存在する。この結晶構造においては、この鎖は完全な三次元格子中になく、一般的な二次元配列を有する。このスメクチック結晶形は、このメルトを70℃以下の温度まで急速に急冷することにより得られる。70℃以上の温度をスメクチック結晶相のポリマーに加えると、この結晶は中間安定的なアルファ形に変形する。
【0111】
表5の紡糸条件下では、Ex2〜Ex4により製造される本発明の繊維はすべてアルファ結晶形を有するということは驚くべきことである。比較の樹脂繊維ランを見ると、C1〜C3樹脂(Z/Nh−PP、Z/Nエチレン(Et)ランダムコポリマーおよびメタロセンh−PP)、低い引き落とし(引き落とし=421)および比較的遅い繊維速度(1000m/分)(表6、7、および8中のランC1/1およびC2/1およびC3/1を参照のこと)で紡糸された樹脂については、スメクチック構造が見出された(図1(a)および1(b)中のC1/1およびC3/1X線回折パターンを参照のこと)ことが判る。
【0112】
すべての本発明の繊維および比較の繊維についての繊維の性質を表9に示す。
【表9】

【0113】
先行する表(図2)で述べた繊維の直後残留歪およびモジュラスをプロットすると、本発明の繊維と比較例の明白な差異が存在する。本発明の繊維は、比較例に対照して低直後残留歪(約22%未満)および低モジュラス(約22g/デニール未満)の領域を示す。機能的に、この挙動は、延伸の容易な(低モジュラス)繊維および変形時に大きな回復を有する(低直後残留歪)繊維に移行する。
【0114】
図3は、本発明の繊維の低直後残留歪が約30%未満、あるいはこれに等しい結晶性インデックス領域に対応するということを示す。更には、驚くべきほど低い直後残留歪を有する比較例C1と明白な差異が存在する。
【0115】
図4は、約30%未満、あるいはこれに等しい結晶性インデックス領域に対応するモジュラスを示す。結晶性インデックスは繊維モジュラスとして測定される繊維剛性に相関し、これは翻って不織布のドレープ性および手触りに相関する。本発明のポリマーの繊維剛性は、低直後残留歪の他のプロピレンポリマーに対するよりも著しく低く、それゆえ差異を付与された繊維ならびに布を生成する。
【0116】
図5は、50%1−サイクル試験において結晶性インデックス領域に対応する30%未満あるいはこれに等しい30%歪時の保持荷重を示す。保持荷重は与えられた延伸力に対する収縮力の尺度であり、弾性の態様である。大きな保持荷重は大きな「保持力」を有する繊維に移行する。多数の弾性用途においては、一つの物体を他の物体に固定する機械的能力が大きいために、高保持力が望ましい。
【0117】
図6は破断まで引っ張った場合の本発明の繊維の対応する靭性を示す。再度となるが、結晶性は靭性におけるキーとなる要素であることが示される。驚くべきことには、低結晶性プロピレン−エチレンコポリマー繊維は多数の高結晶性プロピレン繊維(表9)の靭性に匹敵するか、あるいは超えることが可能である。
【0118】
種々の条件下で溶融紡糸されたプロピレン−エチレン繊維を検討することによって、コモノマー(エチレン)含量、紡糸速度および急冷条件が上記に示したように、結晶性インデックス、そして翻って引っ張りおよび弾性性質に影響を及ぼす主要決定要因であるということが明らかになった。結晶性インデックスは紡糸速度の増加およびスループットの低下と共に増加することが判る。この効果は応力誘起結晶化に典型的であり、驚くべきことにはこの効果はエチレン含量の増加と共に減少する。
【0119】
性質のバランスを考慮することによって、本発明の実施例の更なる差別化が可能となる。30%歪時の保持荷重に対する直後残留歪をプロット(図8)することによって、30%歪時の保持荷重による約15%以上の極めて低い歪への移り変わりが示される。これらは約20%よりも低い結晶性インデックスを有する繊維と一致する(図5)。結果として、約20%未満の結晶性インデックスの繊維は、大きな回復(低直後残留歪)および高収縮力(高保持荷重)を特徴とする弾性性能を示す。10%未満の結晶性インデックスの下位組の本発明の繊維は弾性繊維と分類可能である。
【0120】
述べた発見に基づいて、本発明の繊維に対する好ましい範囲の次の表を示す(表10)。
【表10】

【0121】
紡糸パック1インチ当たり25ホール(hpi)を用い、紡糸パックと繊維延伸ユニットの間の距離が48インチである14’’パイロットライン上で34g/m2(1平方ヤード当たり1オンス(osy))のスパンボンド不織布をEx2およびEx3樹脂から製造した。このポリマーを390゜F(199℃)のメルト温度で0.6ghmで走らせた。急冷空気流れ(100フィート/分)と温度(70゜F)を25インチの距離にわたって加えた。繊維延伸ユニット中の延伸圧力は4psiであった。この繊維をベルト上で捕集した後、130°F(55℃)の平均のパターンロール/アンビルロール温度を用いて、この不織布を結合した。これらのウエブの平均の繊維サイズは約30ミクロンであった。この不織布の性質を実施例4/1および4/2として表11に示す。直線2cm当たりのフィラメント集結体の数が少ないことにより実証されるように、本発明の布のウエブ均質性は優れている。
【0122】
実施例4/3については、紡糸パック1インチ当たり50ホール(hpi)を用い、紡糸パックと繊維延伸ユニットの間の距離が50インチである14’’パイロットライン上で34g/m2のスパンボンド不織布をEx2ポリマーから製造した。このポリマーを490゜F(255℃)のメルト温度で0.7ghmで走らせた。100フィート/分の急冷空気流れと77゜Fの温度を25インチの距離にわたって加えた。繊維延伸ユニット中の延伸圧力は6psiであった。この繊維をベルト上で捕集した後、130°F(55℃)の平均のパターンロール/アンビルロール温度を用いて、この不織布を結合した。この不織布の性質も表11に示す。フィラメント集結体の数が許容し得ないほど多いことにより証明されるように、この不織布のウエブ均質性は許容し得ないものである。
【0123】
比較例C4/1は市販の15g/m2(0.45osy)のhPPベースの不織布である。
【表11】

【0124】
このデータは本発明のポリマーおよびこれらから製造されるウエブの両方が弾性的であることを示す。不織ウエブ中の繊維で測定した結合点の間の結晶性インデックスXcは20%以下である。本発明の不織布は異方性の性状である(このポリマーの性状によるのでなく、最適化されていない加工条件により)。
【0125】
実施例4/1、4/2、および4/3の間の比較から分かるように、この加工条件も満足な不織布の製造で役割を演じる。与えられた紡糸パック密度と急冷空気温度に対しては、この繊維のスループットと紡糸パックと繊維延伸単位の間の滞留時間、メルト温度および急冷空気流れ速度のある組み合わせのみが更に均質なウエブ形成を生じる。
【0126】
Ex4/2の不織布は主として個別のよってない(unmarried)フィラメントからできている。しかしながら、このようなフィラメントは図9の顕微鏡写真により証明されるように、自己結合性である。この結合点は繊維−繊維接触において起こり、そして約5〜50μmの長さである。慣用の機械的に作られた結合点、例えばパターン付きのカレンダーロールにより得られるものは更に大きなサイズ(100−1000ミクロン)であり、結果として自己結合点の密度に整合させることができない。更には、大きな膜様結合点と布剛性およびドレープ性の増加は手触りの感触を劣化させる。このように、自己結合性は、製造の簡単さ、良好な布ドレープ性および良好な手触りの感触の少なくとも3つの点で機械的結合にまさる利点を有する。
【0127】
本発明を先行する実施例によりかなり詳細に述べたが、この詳細は例示の目的のみで提供されたものであり、特許請求の範囲で述べられている本発明に対する限定と解釈されるべきでない。上記に引用されたすべての米国特許と許可された米国特許出願は引用により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1(a)、1(b)、1(c)は、ポリプロピレンホモポリマー(1(a)および1(b))のスメクチック相と、12重量パーセントのエチレン(1(c))を含んでなるプロピレン−エチレンコポリマーのアルファ相を実証するX線フィルムの写真である。
【図2】図2はプロピレンホモ−およびコポリマーの直後残留歪およびモジュラスの挙動を図示するグラフである。
【図3】図3はプロピレンホモ−およびコポリマーの直後残留歪と結晶性インデックスとの相関を図示するグラフである。
【図4】図4は本発明のプロピレンコポリマー繊維の繊維モジュラスと結晶性インデックスとの相関を図示するグラフである。
【図5】図5は本発明のプロピレンコポリマー繊維の30%歪時の保持荷重と結晶性インデックスとの相関を図示するグラフである。
【図6】図6は本発明のプロピレンコポリマー繊維の靭性と結晶性インデックスとの相関を図示するグラフである。
【図7】図7は本発明のプロピレンコポリマー繊維の伸びと結晶性インデックスとの相関を図示するグラフである。
【図8】図8は本発明のプロピレンコポリマー繊維の直後残留歪と30%歪時の保持荷重の相関を図示するグラフである。
【図9】図9は12重量%のエチレンを含有するプロピレン−エチレンコポリマーから製造される本発明の繊維の自己結合能を示す不織布の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.5未満のMWDを有する、80重量パーセント以上の反応器グレードのプロピレンコポリマーを含んでなる繊維であって、前記コポリマーが少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含んでなる繊維。
【請求項2】
この繊維がX線回折により測定して約30%未満の結晶性インデックスを有することを特徴とする、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含むプロピレンコポリマーを含んでなる繊維であって、X線回折により測定して約30%未満の結晶性インデックスを有することを特徴とする繊維。
【請求項4】
このコポリマーが少なくとも約84重量パーセントのプロピレンから誘導される単位を含んでなり、そしてプロピレン以外のコモノマーがエチレンである請求項1から3のいずれかに記載の繊維。
【請求項5】
この繊維の結晶性インデックスが27%未満である請求項1から4のいずれかに記載の繊維。
【請求項6】
この繊維の結晶性インデックスが約20%未満である請求項1から4のいずれかに記載の繊維。
【請求項7】
このコポリマーが約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピークを有することを更に特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の繊維。
【請求項8】
このコポリマーが本質的に同一のままに留まるTmeと、このコポリマー中のコモノマーの量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つDSC曲線を有することを更に特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の繊維。
【請求項9】
このコポリマーがチーグラー・ナッタ触媒により製造されることを除いて、重量平均分子量で同程度のプロピレンコポリマーよりも多くのガンマ形結晶を示すX線回折パターンを有することを更に特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の繊維。
【請求項10】
このコポリマーがこの繊維の少なくとも約98重量パーセントを占める請求項1から10のいずれかに記載の繊維。
【請求項11】
核形成剤を更に含んでなる先行請求項のいずれかに記載の繊維。
【請求項12】
モノフィラメントの形の先行請求項のいずれかに記載の繊維。
【請求項13】
二成分繊維の形の先行請求項のいずれかに記載の繊維。
【請求項14】
この繊維がシース/コア構造を有する請求項13に記載の繊維。
【請求項15】
このコポリマーがこのシースを含んでなる請求項14に記載の繊維。
【請求項16】
このコポリマーがこのコアを含んでなる請求項14に記載の繊維。
【請求項17】
少なくとも約50重量パーセントのプロピレンから誘導される単位と、少なくとも約5重量パーセントのプロピレン以外のコモノマーから誘導される単位を含むプロピレンコポリマーを含んでなる延伸性繊維であって、30%未満の結晶性インデックス、約22g/デニール未満の、あるいはそれに等しいモジュラス、50%1−サイクル試験により測定して、約2.5%以上の、あるいはそれに等しい30%伸び時の保持荷重、50%1−サイクル試験により測定して、約22%未満の、あるいはそれに等しい直後残留歪を有することを特徴とする延伸性繊維。
【請求項18】
この結晶性インデックスが20%未満であり、このモジュラスが約10g/デニール未満であるか、あるいはそれに等しく、50%1−サイクル試験により測定した30%伸び時の保持荷重が約15%以上であるか、あるいはそれに等しく、そして50%1−サイクル試験により測定した直後残留歪が約10%未満であるか、あるいはそれに等しい請求項17に記載の延伸性繊維。
【請求項19】
このコポリマーが少なくとも約84重量パーセントのプロピレンから誘導される単位を含んでなり、そしてプロピレン以外のコモノマーがエチレンである請求項17あるいは18に記載の繊維。
【請求項20】
このプロピレンコポリマーが
(i)約14.6および約15.7ppmにおけるレギオエラーに対応する、ほぼ等しい強度の13CNMRピーク;または
(ii)本質的に同一のままに留まるTmeと、このコポリマー中のコモノマーの量が増加するのにしたがって減少するTmaxを持つDSC曲線;または
(iii)このコポリマーがチーグラー・ナッタ触媒により製造されることを除いて、重量平均分子量において同程度のプロピレンコポリマーよりも多くのガンマ形結晶を示すX線回折パターン
の特性の少なくとも一つを有することを更に特徴とする請求項17あるいは18に記載の繊維。
【請求項21】
この繊維がアニールされていない先行請求項のいずれかに記載の繊維。
【請求項22】
300%未満であるか、あるいはそれに等しい破断伸びを呈する請求項20に記載の繊維。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載の繊維を含んでなる延伸性不織布。
【請求項24】
この繊維が溶融押し出しされ、空気圧により延伸されることを更に特徴とする請求項23に記載の延伸性不織布。
【請求項25】
この布がスパンボンド不織布およびメルトブロー不織布からなる群から選択される請求項24に記載の延伸性不織布。
【請求項26】
80%歪時に約40%未満の第1サイクルの残留歪を有する請求項25に記載の不織布。
【請求項27】
80%歪時に約15%未満の第1サイクルの残留歪を有する請求項25に記載の不織布。
【請求項28】
請求項25に記載の不織布を含んでなる延伸性積層物。
【請求項29】
請求項25に記載の不織布を含んでなるパーソナルケア製品。
【請求項30】
請求項28に記載の延伸性積層物を含んでなるパーソナルケア製品。
【請求項31】
請求項1から22のいずれかに記載の繊維を含んでなる物品。
【請求項32】
この物品が不織物に加工され、そして使い捨ておむつのようなパーソナルケア製品、水泳パンツ、失禁衣、女性用衛生製品、獣医用製品、包帯、ヘルスケア品、例えば手術着、外科用ドレープ、滅菌ラップなど、および室内装備品、例えば寝具、雑巾などからなる群から選択される請求項31に記載の物品。
【請求項33】
この不織物が複合物の一部である請求項32に記載の物品。
【請求項34】
この繊維がホモフィラメント繊維であり、そしてこの不織物が2cm当たり20フィラメント未満の集結体を有する請求項1から25の繊維のいずれかからなる延伸性不織物。
【請求項35】
弾性的である請求項34に記載の不織物。
【請求項36】
この繊維が溶融押し出しされ、空気圧により延伸され、そしてこの布がスパンボンド不織布およびメルトブロー不織布からなる群から選択されることを更に特徴とする請求項34あるいは35に記載の延伸性不織布。
【請求項37】
80%歪時に約40%未満の第1サイクルの残留歪を有する請求項36に記載の不織布。
【請求項38】
80%歪時に約15%未満の第1サイクルの残留歪を有する請求項37に記載の不織布。
【請求項39】
請求項36に記載の不織布を含んでなる延伸性積層物。
【請求項40】
請求項36に記載の不織布を含んでなるパーソナルケア製品。
【請求項41】
この不織物がスパンボンドであり、そしてこの繊維の少なくとも一部分がいかなる更なる結合方法も使用することなく最も太い繊維の直径の10倍未満である距離にわたって他の繊維に結合している請求項23〜27および34〜38のいずれか一項に記載の不織物。
【請求項42】
この繊維がスメクチック領域を含んでなる請求項1から22のいずれか一項に記載の繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−529650(P2007−529650A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504155(P2007−504155)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/009145
【国際公開番号】WO2005/090655
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】