説明

プロピレンオキシドおよび二酸化炭素の共重合ならびにプロピレンオキシドの単独重合

【課題】プロピレンオキシドおよび二酸化炭素の共重合ならびにプロピレンオキシドの単独重合の提供。
【解決手段】ポリプロピレンオキシドおよび二酸化炭素のコポリマー、ならびにプロピレンオキシドの単独ポリマーは、式Co[M(CN)]またはその水和もしくは部分的脱水形態を有する二次元二元金属シアニド錯体を使用して作製される。共重合の副生成物にはプロピレンカーボネートはない。本発明は、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと、二酸化炭素とを非交互共重合させる方法を提供し、この方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと二酸化炭素とを共重合するステップを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NSFの助成金番号CHE−0243605およびDMR−0079992の下、少なくとも部分的に米国政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2006年8月24日に出願された、米国仮特許出願第60/839,682号の優先権を主張し、この仮出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
技術分野
本発明は、二元金属シアニド触媒を用いたプロピレンオキシドの単独重合(homopolymerization)ならびにプロピレンオキシドおよび二酸化炭素の共重合を対象とする。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
亜鉛ヘキサシアノメタレートは、エポキシド/二酸化炭素共重合に使用されてきた。これらの触媒に対する障害は、望ましくない副産物であるプロピレンカーボネート(精製が必要)が、触媒活性を著しく低下させるような低温を利用しなければ形成されるということである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
テトラシアノメタレート含有二元金属シアニド錯体は、プロピレンカーボネートを形成すること無しに、プロピレンオキシドおよび二酸化炭素の共重合を容易に触媒したことが本発明で判明した。これらの錯体は、プロピレンオキシドの単独重合を触媒するためにも機能する。
【0006】
本明細書における本発明の、第1の実施形態と称する一つの実施形態では、本発明は、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと二酸化炭素とを非交互共重合させて以下
【0007】
【化1】

を生成する方法を対象とし、上記式中、xは、1.0〜0.46の範囲であり、Mは、500g/mol〜500,000g/mol、例えば10,000g/mol〜500,000g/molの範囲である。この方法は、テトラシアノメタレート部分、例えば、式中MがNi、PdおよびPtならびにその組合わせ、またはその水和もしくは部分的脱水形態から成る群から選択される、無水Co[M(CN)]を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと二酸化炭素とを共重合するステップを包含する。
【0008】
本明細書における本発明の、第2の実施形態と称する別の実施形態では、本発明は、テトラシアノメタレート部分、例えば、式中MがNi、Pd、およびPtならびにその組合わせから成る群なら選択される無水Co[M(CN)]を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドを重合させて、500〜250,000g/molの範囲であるMを有するポリ(プロピレンオキシド)を生成するステップを包含する、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドの単独重合法を対象とする。
【0009】
本発明の、第3の実施形態と称する別の実施形態では、本発明は、コバルト塩、好ましくはCo(SO)およびK[M(CN)]を反応させて、水和Co[M(CN)]を形成し、この水和Co[M(CN)]を脱水して、式中MがNi、Pt、ならびにPdから成る群から選択される無水Co[M(CN)]を生成することを包含するCo[M(CN)]を調製する方法を対象とする。
【0010】
本明細書における、第4の実施形態と称する別の実施形態では、本発明は、微結晶性Co(HO)[M(CN)]・4HOを脱水するステップを包含する、無水Co[M(CN)]を調製する方法を対象とし、式中MはNi、Pt、およびPdから成る群から選択される。本明細書で使用する場合、微結晶性という用語は、できる限り寸法幅を狭くとると1.0mm未満の結晶サイズを有することを意味する。
【0011】
本明細書における、第5の実施形態と称する別の実施形態では、本発明は、Co[Pt(CN)]を対象とする。
【0012】
本明細書における、第6の実施形態と称するさらに別の実施形態では、本発明は、Co[Pd(CN)]を対象とする。
【0013】
第7の実施形態と称するさらに別の実施形態では、本発明は、式(I):
【0014】
【化2】

(式(I)中のRは、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C20ハロゲン化物(例えば、F、I、Cl、Br)含有アルキル、およびC〜C20酸素含有アルキルから成る群から選択される)と、二酸化炭素(II)との非交互共重合法を対象とし、
この方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で(I)および(II)を共重合させて下式(III)
【0015】
【化3】

(式中、xは、1.0〜0.46の範囲であり、(III)のMは500g/mol〜500,000g/mol、例えば、10,000g/mol〜500,000g/molの範囲である)
を有するポリエーテルポリカーボネートを生成するステップを包含する。
【0016】
本明細書における、第8の実施形態と称する別の実施形態では、本発明は、下式(I)
【0017】
【化4】

の単独重合法を対象とし、
上記式(I)中のRは、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C20ハロゲン化物(例えば、F、I、Cl、Br)含有アルキル、およびC〜C20酸素含有アルキルから成る群から選択され、
この方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する二元金属シアニド錯体の存在下で、(I)を重合させて下式(IV)
【0018】
【化5】

を有するポリ(置換エチレンオキシド(I))を生成するステップを包含し、上記式中、Rは、上記の定義通りであり、Mは500g/mol〜250,000g/molの範囲である。
【0019】
「テトラシアノメタレート部分」という用語は、本明細書では、4つのシアニドに囲まれ、結合している金属を指すのに用いられ、その場合、金属はシアニド配位子の炭素原子に結合している。
【0020】
「鏡像異性体濃縮プロピレンオキシド」という用語は、本明細書では、鏡像異性体の比が50:50でないプロピレンオキシドを意味するのに用いられる。
【0021】
交互重合は、式中Aがプロピレンオキシド単位(PO単位)を表わし、Bが二酸化炭素単位を表わす、すなわち隣接したプロピレンオキシド単位がないA−B−A−B−A−B−A−Bなどを提供する。非交互重合では、生成物は、隣接したプロピレンオキシド単位を含有する。
【0022】
多くの場合では、PO単位を超えるPC単位がある。約15%カーボネート単位を有するPO/COコポリマーは、明らかに界面活性剤の機能性のために超臨界COに溶解すると考えられている。(Sarbu,J.ら、Nature405号、165〜168頁、(2000年))。
【0023】
本明細書で使用する場合、M、MおよびM/M(PDI)は、40℃でテトラヒドロフラン中のポリスチレン標準で検量されたゲル浸透クロマトグラフィ−により決定される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと、二酸化炭素とを非交互共重合させて、以下の
【化6】


を生成する方法であって、
上記式中、xは、1.0〜0.46の範囲であり、Mは、500g/mol〜500,000g/molの範囲であり、
該方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドと二酸化炭素とを共重合するステップを包含する、方法。
(項目2)
二元金属シアニド錯体は無水Co[M(CN)]であり、ここで、MがNi、PdおよびPtならびにその組合わせから成る群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
共重合が、周囲圧〜1500psigの範囲の二酸化炭素圧で行われる、項目2に記載の方法。
(項目4)
プロピレンオキシド:コバルト(触媒中)のモル比が、100:1〜100,000:1の範囲である、項目3に記載の方法。
(項目5)
反応温度が、10℃〜150℃の範囲である、項目4に記載の方法。
(項目6)
共重合が、鎖移動剤を含有する反応混合物中で行われ、Mが500〜25,000の範囲である、項目2に記載の方法。
(項目7)
racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドの単独重合法であって、テトラシアノメタレート部分を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で、racプロピレンオキシドまたは鏡像異性体濃縮プロピレンオキシドを重合するステップを包含する、方法。
(項目8)
二元金属シアニド錯体が無水Co[M(CN)]であり、ここで、MがNi、PtおよびPdならびにその組合わせから成る群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目9)
プロピレンオキシド:コバルトのモル比が、100:1〜100,000:1の範囲である、項目8に記載の方法。
(項目10)
反応温度が、10℃〜150℃の範囲である、項目9に記載の方法。
(項目11)
単独重合が、鎖移動剤を含有する反応混合物中で行われ、Mが500g/mol〜250,000g/molの範囲である、項目8に記載の方法。
(項目12)
Co[M(CN)]を調製する方法であって、Co(SO)とK[M(CN)]とを反応させて水和Co[M(CN)]を形成し、無水Co[M(CN)]を生成することを包含し、ここで、MがNi、PtおよびPdから成る群から選択される、方法。
(項目13)
無水Co[Ni(CN)]を調製する方法であって、微結晶性Co(HO)[Ni(CN)]・4HOを脱水するステップを包含する、方法。
(項目14)
Co[Pt(CN)]。
(項目15)
Co[Pd(CN)]。
(項目16)
式(I)
【化7】


(式(I)中のRは、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C20ハロゲン化物含有アルキル、およびC〜C20酸素含有アルキルから成る群から選択される)
と、
二酸化炭素(II)と
の非交互共重合法であって、
該方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する触媒有効量の二元金属シアニド錯体の存在下で(I)および(II)を共重合させて、下式(III)
【化8】


を有するポリエーテルポリカーボネートを生成するステップを包含し、上記式中、xは、1.0〜0.46の範囲であり、式(III)のMが500g/mol〜500,000g/molの範囲である、方法。
(項目17)
式(I)
【化9】


の重合法であって、
上記式(I)中のRは、水素、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C20ハロゲン化物含有アルキル、およびC〜C20酸素含有アルキルから成る群から選択され、
該方法は、テトラシアノメタレート部分を含有する二元金属シアニド錯体の存在下で(I)を重合させて下式(IV)
【化10】


を有するポリ(置換エチレンオキシド(I))を生成するステップを包含し、
上記式中、Rは上記に定義され、Mは500g/mol〜250,000g/molの範囲である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明の要素および実施例は、Robertson,N.J.ら、Dalton Trans.、2006年、5390〜5395頁およびElectronic Supplementary Information、S1〜S10頁で見出され、両文献の全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0025】
本発明者らは、初めに触媒を説明する。
【0026】
第1の実施形態のための触媒は、式中Mが、Ni、PtおよびPdならびにその組合わせから成る群から選択される式Co[M(CN)]を有する。第1の実施形態については、触媒は、水和形態、例えば、Co(HO)[M(CN)]・4HO、部分的な脱水形態、例えば、Co(HO)[M(CN)]、または無水形態、すなわち、Co[M(CN)]であってもよい。
【0027】
第2の実施形態のための触媒は、式中Mが、Ni、PdおよびPtおよびその組合わせである式Co[M(CN)]を有し、無水形態で、すなわち、単独重合は、水和形態または部分的な脱水形態ではなくて無水形態で得られた。
【0028】
その触媒は、Niu,T.,Crisci,G.,Lu,T.およびJacobson,A.J.、Acta Cryst.、Sect.C、54巻、565〜567頁(1998年)に記載された修正手順を用いた水和形態を形成することにより調製され、この文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれている。K[M(CN)]水溶液は、CoII系塩水溶液と反応してCo(HO)[M(CN)]・4HOを生成する。Co(SO)は、Jacobsonにより使用されたCo(SCN)の代わりに使用された。この合成にCo(SO)を使用すると、作製時の形態すなわち、徹底的な洗浄をせずにより高い活性を有する、すなわち他のコバルト源を利用して作製された場合より活性の高いCo[M(CN)]錯体が生じることが判明した。例えば、Co(SCN)を使用すると、作製時に徹底的な洗浄をしないCo(SO)と同じ活性を得るためには徹底的な洗浄が必要とされ、CoClを使用すると、活性触媒の塩素被毒を防止するために徹底的な洗浄が必要とされる。反応生成物を真空濾過すると水和触媒が生ずる。真空内で時間の延長、例えば、一晩中の乾燥は、無水触媒を与える。真空内で短時間、例えば、1時間の乾燥は、部分的な脱水触媒を与える。
【0029】
開始物質であるK[Ni(CN)]、K[Pt(CN)]およびK[Pd(CN)]は、すべて市販されている。
【0030】
後述の実施例Iは、Co(HO)[Ni(CN)]・4HOおよびCo[Ni(CN)]の調製を対象とする。後述の実施例IIは、Co[Pt(CN)]およびCo[Pd(CN)]の合成を対象とする。
【0031】
本発明者らは、触媒の説明のほかに第1の実施形態のための反応条件を以下に説明する。
【0032】
仕込みプロピレンオキシドの仕込み触媒に対するモル比、PO:Coモル比ベースは、例えば、100:1〜100,000:1、例えば、100:1〜5000:1、例えば、500:1〜2000:1の範囲であってもよい。
【0033】
二酸化炭素圧は、例えば、周囲圧(例えば、1気圧)〜1500psigの範囲であってもよい。二酸化炭素圧が1気圧を超える、例えば、800psigであると、この圧は二酸化炭素の量を規定する。二酸化炭素圧が周囲圧である場合、二酸化炭素の量は、反応器のヘッドスペース、例えば、200mL〜1000mLより供給される。この圧が増加すると、カーボネート単位の量は増加するが触媒活性は減少する。
【0034】
共重合は、希釈せずに(他の溶媒無しに、すなわち、液体プロピレンオキシドは反応媒体として機能する)または炭化水素溶媒、例えば、トルエンまたはキシレン中で行うことができる。
【0035】
行われた試験では、共重合は、希釈せずにおよびトルエン中で行われた。
【0036】
共重合が行われる温度は、例えば、10℃〜150℃、例えば、25℃〜135℃の範囲であってもよい。触媒活性は、温度の上昇とともに増加する。反応時間が長い程、より低温で適応できる。
【0037】
反応時間は、例えば、15分間〜5日間、例えば、30分間〜30時間の範囲である。
【0038】
代表的な共重合手順は以下の通りである。機械攪拌機を備えた100mLのParrオートクレーブを、真空下で、80℃、2時間、乾燥し、次いでドライボックスに移し、22℃に冷却する。Co[Ni(CN)](10.0mg、0.0450mmol)を、オートクレーブ中のガラススリーブに入れる。トルエン(8.0mL)およびPO(8.0mL、0.11mol)を、窒素下で注入ポートを通して添加した。オートクレーブを、34.0atmに加圧し、次いで20分かけて90℃に加熱した。この時間中、圧は、所望の54.4atmに増加する。加熱完了後、CO圧が所望したより低いのであれば、追加のCOを、所望の圧力に達するために加える。初期加圧からの全反応時間は、1時間である。オートクレーブを冷却し、ガス抜きをすると大きなポリマー塊が生じ、同じ塊が均一であることを保証するためにそれをCHClに溶解し、その後HNMR用に一定分量を採取した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、生成するポリマーを、真空内、50℃で一定重量に乾燥し、ポリマー収率(4.77g、60%)を測定した。生成するポリマーを、トルエンに溶解し、10%NHOH(20mL)水溶液で処理して触媒を除去し、次いで真空内で一定の塊に乾燥した。
【0039】
共重合の実施例は、後述の実施例III〜XVIに与えられている。
【0040】
すべての場合で、形成されるコポリマーは、13C{H}NMR分光分析法により測定した場合、位置規則性であってアタクチックであり、また非晶質である。
【0041】
は、例えば、500g/mol〜500,000g/mol、例えば、10,000g/mol〜500,000g/molまたは15,000〜250,000g/molの範囲であってもよく、M/M(PDI)に関しては、例えば、1.9〜5.8、通常は約2.0〜4.0の範囲であってもよい。Mは、鎖移動剤(CTA)、例えば、アルコール、例えば、メタノール、グリセロールまたはPG425ポリオール(425g/molの分子量のポリプロピレングリコールであり、もしくはカルボン酸、例えば、酢酸を、反応混合物中に、例えば、CTA対Co(Ni(CN)]の1当量〜500当量で入れる)などのポリヒドロキシ化合物を添加するにより、1桁だけ、例えば、500〜25,000g/molまたは5,000g/molに減少できる。プロピレンカーボネートの形成は、行われたいずれの試験においてもHNMR分光分析法で観察されなかった。
【0042】
本発明者らは、第2の実施形態を以下に説明する。
【0043】
触媒およびそれの調製は、上述である。
【0044】
仕込みプロピレンオキシドの仕込み触媒に対するモル比は、例えば、100:1〜5000:1の範囲であってもよい。実施例は、PO:Coモル比、2530:1で行われた。
【0045】
重合は、周囲圧で容易に行われる。
【0046】
反応は、希釈せずに(すなわち、他の溶媒無しに、液体プロピレンオキシドは反応媒体として機能する)または第1の実施形態のために記載された溶媒中で行うことができる。
【0047】
単独重合を行うことができる温度は、例えば、10℃〜150℃、例えば、50〜100℃の範囲である。
【0048】
単独重合を行うことができる時間は、例えば、15分間〜5日間、例えば、30分間〜24時間の範囲である。
【0049】
実施例XVIIは、単独重合反応を対象とする。
【0050】
形成される単独ポリマーは、500g/mol〜500,000g/mol、例えば、10,000g/mol〜500,000g/molまたは例えば、約40,000g/mol〜200,000g/molの範囲であるMを有し、PDIに関しては1.5〜5、例えば、1.9g〜2.5gの範囲である。Mは、鎖移動剤、例えば、CTAとして上述のものを、例えば、CTA対Co[Ni(CN)]の1〜500の当量で、反応混合物中に添加することにより、1桁だけ、例えば、500g/mol〜25,000または5,000g/mol減少できる。
【0051】
形成される単独ポリマーは、位置規則性、アタクチック、非晶質である。
【0052】
本明細書で作製されるコポリマーおよび単独ポリマーは、ポリウレタン合成に有用であり、ポリウレタンは、発泡クッション形成用物質として有用である。
【0053】
本発明者らは、第3の実施形態を以下に説明する。
【0054】
上に指摘したように、コバルト塩としてCo(SO)を使用すると、他のコバルト塩、例えば、CoClまたはCo(SCN)を使用する場合をはるかに超える高い活性を有する触媒が作製される。他の塩で作製される触媒は、同じ活性を得るために、徹底的な洗浄、例えば、ろ紙上の錯体の水による多数回洗浄を必要とする。より高い活性は、所与の時間量で触媒量当たりに形成されるポリマー量がより多いことにより明示される。
【0055】
本発明者らは、第4の実施形態を以下に説明する。
【0056】
微結晶性水和触媒は、より大きな結晶性の水和触媒を超える表面積を有しているので、脱水のための開始化合物としてより良好である。
【0057】
本発明者らは、第5の実施形態を以下に説明する。
【0058】
Co[Pt(CN)]は、市販されているK[Pt(CN)]から始めることにより上記のように調製できる。
【0059】
本発明者らは、第6の実施形態を以下に説明する。
【0060】
Co[Pd(CN)]は、市販されているK[Pd(CN)]から始めることにより上記のように調製できる。それは、Co[Ni(CN)]が同条件で行うことを超えるCO取込みを触媒する。
【0061】
本発明者らは、第7の実施形態を以下に説明する。これの化学種は、第1の実施形態の方法である。
【0062】
本発明者らは、第8の実施形態を以下に説明する。これの化学種は、第2の実施形態の方法である。
【0063】
第7および第8の実施形態のための触媒として使用される錯体は、好ましくは、例えば、式中MがNiであるCo[M(CN)]である。
【0064】
本発明は、以下の実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0065】
(実施例I)
Co[Ni(CN)]の調製
錯体Co(HO)[Ni(CN)]・4HOを、前掲の、CoSOをCo(SCN)の代わりに使う、Niuらの修正手順を用いて調製した。10mlの0.23MのK[Ni(CN)]水溶液および10mlの0.23MのCoSO水溶液を、強く攪拌しながら混合した。桃色の沈殿物が、すぐに形成され、追加の10mLの蒸留水を、懸濁液の粘度を下げるために添加した。混合物を、1時間、強く攪拌し、次いで真空濾過をして桃色の微結晶性物質を得た。この錯体の粉末X線データは、Co(HO)Ni(CN)・4HOの計算データと一致した。この錯体を、真空内で、60℃、10時間乾燥して暗紫色の固体Co[Ni(CN)](0.42g、83%)を得た後、臼と杵で粉末にすりつぶし、次いで重合に使用した。熱重量および元素分析は、>97%の層間水分子が除去されたことを示した。
【0066】
(実施例II)
MがPdまたはPtであるCo[M(CN)]の調製
類似の錯体Co[Pd(CN)]およびCo[Pt(CN)]を、Co[Ni(CN)]のための実施例Iで使用した同じ手順用いて調製した。それぞれの場合にも、10mLの0.23MのK[M(CN)]水溶液および10mLの0.23MのCoSO水溶液を強く攪拌しながら混合し、桃色の沈殿物がすぐに形成された。それぞれの場合にも、追加の10mLの蒸留水を添加し、その後、1時間、強く攪拌し、真空濾過をして生成物を回収した。単離収率は、それぞれ、89%および84%であった。X線分析用Co(HO)[Pd(CN)]・4HOの薄い桃橙色板状晶は、CoCl・6HOのエタノール溶液をK[Pd(CN)]・3HOの水溶液上に注いで層状にし、密閉した試験管内に入れて22℃、2週間保存することにより得られた。
【0067】
(実施例III)
Co[Ni(CN)]を使用した共重合
上記の代表的な共重合手順は、次の条件を提供するために必要に応じて変更した。この触媒は、無水Co[Ni(CN)]であった。共重合を、トルエン中7.1MのracPOを16mL用いて1時間行い、[PO]/[Co]は2530であった。初期CO圧は、34atmであった。オートクレーブを、130℃に加熱した。CO圧は、54.4atmに増加した。真空で50℃、8時間乾燥した時のコポリマー収量は、5.57gであった。非重水素化溶媒シフト(H、CHCl3、δ7.25)fco2を基準としてHNMR分光分析法(CDCl、300MHz)で決定したカーボネート分率は、0.20であった。プロピレンオキシド変換率(ポリマー質量/(0.114molPO)[102xfco2+(58x(1−fco2)]に等しいは、73%であった。ターンオーバー頻度、すなわちTOFは、TOFが(molePO)・(moleCo)−1・h−1に等しい場合、1860であった。Mは、74,300g/molであった。M/Mは、3.1であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0068】
(実施例IV)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が110℃であったことを別にすれば実施例IIIで使用された手順に従った。コポリマー収量は、5.39gであった。fco2は、0.22であった。PO変換率は、70%であった。TOFは、1770であった。Mは、84,100g/molであった。M/Mは、2.9であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0069】
(実施例V)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が90℃であったことを別にすれば実施例IIIで使用された手順に従った。コポリマー収量は、4.77gであった。fco2は、0.27であった。PO変換率は、60%であった。TOFは、1510であった。Mは、86,000g/molであった。M/Mは、2.8であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0070】
別の場合でも、反応は、8.0mLの純racPOで行われ、反応時間が2時間であったことを別にすれば反応は上記のように行われた。コポリマー収量は、2.95gであった。fco2は、0.25であった。PO変換率は、37%であった。TOFは、470であった。Mは、3,000g/molであった。M/Mは、7.1であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0071】
(実施例VI)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃であったことを別にすれば実施例IIIで使用された手順に従った。コポリマー収量は、3.79gであった。fco2は、0.3であった。PO変換率は、46%であった。TOFは、1170であった。Mは、152,000g/molであった。M/Mは、3.7であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0072】
(実施例VII)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が50℃であったことを別にすれば実施例IIIで使用された手順に従った。コポリマー収量は、1.29gであった。fco2は、0.36であった。PO変換率は、15%であった。TOFは、390であった。Mは、163,000g/molであった。M/Mは、5.8であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0073】
(実施例VIII)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が30℃で、反応時間が5日間であったことを別にすれば実施例IIIで使用された手順に従った。コポリマー収量は、7.19gであった。fco2は、0.56であった。プロピレンオキシド変換率は、76%であった。TOFは、16であった。Mは、148,000g/molであった。M/Mは、5.1であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0074】
(実施例IX)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃で、加熱後のCO圧が81.6atmであったことを別にすれば実施例IIIで使用した手順に従った。コポリマー収量は、1.81gであった。fco2は、0.38gであった。プロピレンオキシド変換率は、21%であった。TOFは、540であった。Mは、152,000g/molであった。M/Mは、4.3であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0075】
(実施例X)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃で、加熱後のCO圧が68.0atmであつたことを別にすれば実施例IIIに使用した手順に従った。コポリマー収量は、2.57gであった。fco2は、0.35であった。ポリプロピレンオキシド変換率は、31%であった。TOFは、780であった。Mは、233,000g/molであった。M/Mは、4.8であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0076】
(実施例XI)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃で、加熱後のCO圧が40.8atmであったことを別にすれば実施例IIIに使用した手順に従った。コポリマー収量は、3.92gであった。fco2は、0.27であった。プロピレンオキシド変換率は、44%であった。TOFは、1250であった。Mは、116,000g/molであった。M/Mは、3.5であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0077】
(実施例XII)
Co[Ni(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃で、加熱後のCO圧が27.2atmであったことを別にすれば実施例IIIで使用した手順に従った。コポリマー収量は、3.74gであった。fco2は、0.23であった。プロピレンオキシド変換率は、48%であった。TOFは、1220であった。Mは、111,000g/molであった。Mw/は、2.6であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0078】
(実施例XIII)
Co[NI(CN)]使用の共重合
反応温度が70℃で、加熱後のCO圧が13.6atmであったことを別にすれば実施例IIIで使用した手順に従った。コポリマー収量は、3.82gであった。fco2は、0.16であった。プロピレンオキシド変換率は、51%であった。TOFは、1300であった。Mは、222,000g/molであった。M/Mは、3.8であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0079】
(実施例XIV)
Co[Pd(CN)]使用の共重合
触媒が無水Co[Pd(CN)]で、反応温度が90℃で、反応時間が24時間であったことを別にすれば実施例IIIで使用した手順に従った。加熱後のCO圧は、54.4atmであった。コポリマー収量は、1.47gであった。fco2は、0.43であった。プロピレンオキシド変換率は、17%であった。TOFは、18であった。Mは、25,600g/molであった。M/Mは、3.6であった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0080】
(実施例XV)
Co[Pt(CN)]使用の共重合
触媒が無水Co[Pt(CN)]で、反応温度が90℃で、反応時間が24時間であったことを別にすれば実施例IIIで使用した手順に従った。加熱後のCO圧は、54.4atmであった。コポリマー収量は、1.11gであった。fco2は、0.44であった。プロピレンオキシド変換率は、13%であった。TOFは、13であった。Mは、27,900g/molであった。M/Mは、3.7だった。プロピレンカーボネートは、観察されなかった。
【0081】
(実施例XVI)
種々のコバルト塩で作製されたCo[Ni(CN)]使用の共重合
Co(NO、Co(BF、CoClおよび(CoSCN)が、CoSOの代わりに使用されたことを別にして、錯体を実施例Iのように調製した。調製した錯体を、実施例VIの条件を用いて選別した。得られたポリマー質量は、Co(NOのコポリマーの場合に0.126g、Co(BF)のコポリマーの場合に0.765g、CoClのコポリマーの場合に0.563gおよびCo(SCN)のコポリマーの場合に0.305gであった。これらの選別に基づいて、最も高い活性を有するCo[Ni(CN)]を調製する方法は、CoSOを用いて調製した触媒のための方法であった。
【0082】
(実施例XVII)
Co[Ni(CN)]使用の単独重合
COが導入されず、反応温度が70℃であったことを別にすれば実施例IIIに使用した手順に従った。加熱後のCO圧は、0atomであった。ポリマー収量は、5.19gであった。fco2は、0であった。プロピレンオキシド変換率は、78%であった。TOFは、1990であった。Mは、188,000g/molであった。M/Mは、3.6であった。
【0083】
(実施例XVIII)
Co[Ni(CN)]使用の単独重合
機械攪拌機を備えた100mLのParrオートクレーブを、真空下で、80℃、2時間乾燥し、次いでドライボックスに移し、22℃に冷却する。Co[Ni(CN)
(10mg、0.045mmol)をオートクレーブ中のグラススリーブに入れる。トルエン(8mL)およびPO(8mL、0.1mol)を、窒素下で、注入ポートを通して添加する。オートクレーブを、次いで20分をかけて90℃に加熱する。初期加熱後の全反応時間は、1時間である。オートクレーブを冷却し、ガス抜きをして大きなポリマー塊を得、この同じ塊が均一であることを保証するためにそれをCHClに溶解し、その後HNMR分析用に一定分量を採取する。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、生成するポリマーを、真空内、50℃で一定重量に乾燥し、ポリマー収率(6.0g、91%)を測定する。生成するポリマーをトルエンに溶解し、10%NHOH(20mL)水溶液で処理して触媒を除去し、次いで真空内で一定の塊に乾燥する。Mは、80,000g/molを超える。M/Mは、2を超える。
【0084】
(実施例XIX)
エピクロルヒドリンおよび二酸化炭素の共重合
機械攪拌機を備えた100mLのParrオートクレーブを、真空下で、80℃、2時間乾燥し、次いでドライボックスに移して22℃に冷却する。Co[Ni(CN)](10mg、0.045mmol)を、オートクレーブ中のグラススリーブに入れる。トルエン(8mL)およびエピクロルヒドリン(式(I)中のRは、−CHClである)(8mL、0.10mol)を、窒素下で注入ポートを通じて添加する。オートクレーブを、34.0atmに加圧し、次いで20分かけて90℃に加熱する。この時間中、圧は、所望の54.4atomに増加する。初期加圧後の全反応時間は、24時間である。オートクレーブを、冷却し、ガス抜きをしてポリマー塊を得、同じポリマー塊が均一であったことを保証するためにそれをCHClに溶解し、その後、HNMR分析用に一定分量を採取する。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、生成するポリマーを真空内、50℃で一定重量に乾燥してポリマー収率(1.1g、10%)を測定する。生成するポリマーを、トルエンに溶解し、10%NHOH水溶液(20mL)で処理して溶媒を除去し、次いで真空内で一定の塊に乾燥する。Mは、800g/molを超える。M/Mは、2を超える。
【0085】
(実施例XX)
エピクロルヒドリンの単独重合
機械攪拌機を備えた100mLのParrオートクレーブを、真空下で80℃、2時間乾燥し、次いでドライボックスに移して22℃に冷却する。Co[Ni(CN)](10mg、0.045mmol)を、オートクレーブ中のグラススリーブに入れる。トルエン(8mL)およびエピクロルヒドリン(式(I)中のRは、−CHClである)(8mL、0.10mol)を、窒素下で注入ポートを通じて添加する。オートクレーブを、次いで、20分をかけて90℃に加熱する。初期加熱後の全反応時間は、24時間である。オートクレーブを、冷却し、ガス抜きをしてポリマー塊を得、同じ塊が均一であることを保証するためにそれをCHClに溶解し、その後HNMR分析用に一定分量を採取した。溶媒を、ロータリーエバポレーションにより除去し、生成するポリマーを、真空内、50℃で一定重量に乾燥し、ポリマー収率(1.8g、19%)を測定する。生成するポリマーを、トルエンに溶解し、10%NHOH水溶液(20mL)で処理して触媒を除去し、次いで真空内で一定の塊に乾燥する。Mは、800g/molを超える。M/Mは、2を超える。
【0086】
変更
本発明の前述の説明は、ある種の実施可能で好ましい実施形態を述べてきた。本発明の趣旨および範囲内に入る変更ならびに改変が当業者に明らかになるので本発明は、限定すべきでないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−67815(P2013−67815A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−8144(P2013−8144)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−525609(P2009−525609)の分割
【原出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(508057896)コーネル・ユニバーシティー (12)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
【Fターム(参考)】