説明

プロピレングリコールおよびアルカン酸イソプロピルエステルを含む抗ウイルス製剤

【課題】ヘルペスウイルス感染の治療または予防に有用であり、優れた抗ウイルスおよび治療効力ならびに改善された貯蔵寿命を示す局所用製剤を提供する。
【解決手段】約15〜約25重量%のプロピレングリコールおよび約10〜約25重量%のC12−C22アルカン酸イソプロピルエステルを含むことを特徴とする医薬担体中に抗炎症糖質コルチコイドおよびヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を含む局所用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口顔または生殖器適用に適し、抗炎症薬および抗ウイルス薬を含む局所用抗ウイルス製剤に関する。さらに本発明は、このような製剤を用いるヘルペスウイルス疾患の治療または予防およびこのような製剤の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO96/24355には、医薬的に許容しうる担体中に抗ウイルス物質および抗炎症糖質コルチコイドを含む局所適用可能な医薬組成物が記載されている。この出願に開示された担体は、各有効作用剤として慣例の製剤を含む。すなわち、慣例の抗ウイルス製剤が慣例の糖質コルチコイド製剤と組み合わされているのである。このような組合せ製剤は、互いに相互作用して未知の安定性および物理化学的特性がもたらされる可能性をもつ多数の成分を含んでいる。
【0003】
ヨーロッパ特許出願EP44543は、非環式ヌクレオシド抗ウイルス薬アシクロビルの水中油型製剤に関するものであり、有効な局所浸透には、担体が少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%のプロピレングリコールを含むことが必要であるということが記載されている。MAC製剤と称される、この製剤は、最も広範に市販されている局所用アシクロビル製品の基盤を形成する。
【0004】
国際特許出願WO91/11187は、非環式ヌクレオシド抗ウイルス薬ペンシクロビルの水中油型または水性局所用製剤に関する。これらの製剤は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%のプロピレングリコールを含まねばならない。ヨーロッパ特許出願EP416739は、少なくとも30重量%のプロピレングリコールおよびデシルメチルスルホキシド乳化剤を含むペンシクロビルの局所用製剤に関する。国際特許出願WO93/00905は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%のプロピレングリコールおよびセトマクロゴール1000乳化剤を含むペンシクロビルの局所用製剤に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願WO96/24355
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願EP44543
【特許文献3】国際特許出願WO91/11187
【特許文献4】ヨーロッパ特許出願EP416739
【特許文献5】国際特許出願WO93/00905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒドロコルチゾンといったような強く脂肪親和性の成分および非環式ヌクレオシド類縁体といったような中程度に脂肪非親和性の成分を含む組合せ製品の製剤は、慣例の医薬品の場合に困難であるが、標的組織への有効成分の放出速度を考慮しなければならない局所用製剤の場合にさらに困難である。上記2つの段落中の刊行物に記載されているように、これまでは、非環式ヌクレオシドを製剤する場合、抗ウイルス薬を皮膚または真皮粘膜に十分に浸透させるためには、高濃度のプロピレングリコールを利用することが重要であるとみなされている。しかし、我々は、慣例の高濃度のプロピレングリコール担体を用いて、上記WO96/24355の範囲に属する、意図した効能のある抗ウイルス組成物(すなわち、糖質コルチコイドおよび抗ウイルス薬を含む組成物)を製造することができるが、これらの慣例の担体からは、望ましくない貯蔵寿命および最適の抗ウイルスおよび治療能力よりも低い能力をもつ製品しか得られないことを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、担体が、約15〜約25重量%のプロピレングリコールおよび約10〜約25重量%のC12−C22アルカン酸イソプロピルエステルを含むことを特徴とする医薬担体中に抗炎症糖質コルチコイドおよびヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を含む局所用組成物を提供する。
本発明においては、低濃度のプロピレングリコールとアルカン酸イソプロピルエステルを組み合わせることにより、従来の抗ウイルス組成物にみられる不安定性が回避されると同時に、抗ウイルス成分の浸透および放出が良好となる。
【0008】
本発明組成物は、単純ヘルペスウイルス1型(主として、口顔感染)、単純ヘルペスウイルス2型(主として、生殖器肛門感染)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染(水痘)ならびに2次感染(帯状疱疹)、ヒトヘルペスウイルス6型および8型(カポージ肉腫に関与)などのヘルペスウイルス科のメンバーによって引き起こされる疾患の治療または予防に有用である。本発明における予防とは、感染の予防(隣接する健康な組織への蔓延の予防など)および神経組織における潜伏ヘルペスウイルスの再活性化といったような以前のヘルペスウイルス感染の再活性化の予防である。
【0009】
したがって、本発明の別の態様は、医薬品の製造、特にヒトにおけるヘルペスウイルス感染(特に単純ヘルペスウイルス1型および単純ヘルペスウイルス2型)の治療または予防のための局所用薬剤の製造における前記定義した組成物の使用を提供する。本発明のさらに別の態様は、治療または予防を必要とする患者に前記組成物を局所投与することを特徴とするヒトにおけるヘルペスウイルス感染の治療または予防方法を提供する。
本明細書で用いる重量パーセンテージは、組成物の重量に対する成分の重量を意味する。
【0010】
好ましい抗ウイルス薬として、ガンシクロビル、N−7ガンシクロビル、ビス−ヒドロキシメチルシクロプロピルメチルグアニン、ロブコビル、アデフォビル、シドフォビルなどが挙げられる。特に好ましい抗ウイルス薬は、ペンシクロビル、9−[4−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(H2G)であり、アシクロビルが特に好ましい。抗ウイルス薬は、表皮エステラーゼまたはキサンチンオキシダーゼなどによってin situ代謝されて上記に列挙したような抗ウイルス薬を形成するプロドラッグの形態であってもよい。
抗ウイルス薬は、0.5〜15重量%、好ましくは1〜7重量%、さらに好ましくは4〜5重量%といったようなそれぞれのヌクレオシドに対して実質的に慣例で用いられる濃度で製剤中に含まれる。
【0011】
糖質コルチコイドとして、アルクロメタゾン、デソニド、フルプレドニデン、フルメタゾン、ヒドロコルチゾンおよび酪酸ヒドロコルチゾンまたは酢酸ヒドロコルチゾンといったようなそのエステル、クロベタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ブデノシド、デスオキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニドアセトニド、フルオコルトロン、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、モメタゾン、ロフレポニドなどが挙げられる。ノルディッククラスIなどのマイルド糖質コルチコイド類が好ましい。ヒドロコルチゾンおよびそのエステルが特に好ましい。糖質コルチコイドは、糖質コルチコイド業界で公知であり、一般に、0.005〜12重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲に入る、それぞれの糖質コルチコイドに対して実質的に慣例で用いられる濃度で製剤中に含まれる。たとえば、ヒドロコルチゾンなどのマイルド(ノルディッククラスI)糖質コルチコイドを用いる場合、製剤は、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜2重量%さらに好ましくは1重量%のヒドロコルチゾンを含むことができる。
【0012】
糖質コルチコイドおよび抗ウイルス成分は、担体によっては実質的に溶解した形態であってもよいが、慣例的に、粒子の>75%、好ましくは90%以上が定義された粒子径以下である微粉にした原料物質から調製される。たとえば、糖質コルチコイドであるヒドロコルチゾンは、慣例的に、5μm以下の粒子径をもつ原料物質から調製される。抗ウイルス薬であるアシクロビルまたはペンシクロビルは、慣例的に、15μm以下、好ましくは7μm以下の粒子径で存在する。
一般に、本発明組成物は、二相であり、水中油型または油中水型の乳液のいずれかとして、不連続の油相と水相を含む。本発明組成物は、分散した油相と連続した水相を含むのが好ましい。アルカン酸イソプロピルエステルおよび代表的に脂質親和性の糖質コルチコイド成分は、優先的に油相に見出され、抗ウイルス薬であるヌクレオシドは、代表的にはプロピレングリコールとともに、一般に水相に見出されるであろう。
【0013】
油相の成分は、ヨーロッパおよびその他の薬局方にある慣例的な脂質および油ならびにそれらのエステルを含むことができる。油相成分は、べとつかず、染みにならず、耐水洗性であるのが好ましい。慣例の医薬的油相成分として、ワセリン、液体パラフィンなどの鉱物油、ステアリン酸などのアルカン酸およびセトステアリルアルコールなどの脂肪アルコール、アジピン酸ジイソプロピル、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、オレイン酸デシル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルおよび他の2−エチルへキサン酸エステルなどの二塩基アルキルエステルが挙げられる。
好ましいアル換算イソプロピルエステルとして、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸またはベヘン酸エステルが挙げられ、特に、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。本発明組成物は、約10〜約25重量%、好ましくは約12〜約18重量%、さらに好ましくは約15重量%のアルカン酸イソプロピルエステルを含む。プロピレングリコール濃度が、約20重量%である場合に、組成物に外来性の保存剤を必要とすることなく、一般に良好な保存性が達成されるので、慣例的なプロピレングリコール含量は約20重量%である。
【0014】
慣例的に、本発明組成物は、代表的には0.005〜5、好ましくは0.1〜1重量%の乳化剤(界面活性剤)を含む。ヨーロッパ薬局方には、アニオン性、カチオン性および非イオン性乳化剤といったような多数の医薬的に許容しうる乳化剤が記載されている。
非イオン性乳化剤として、セトマクロゴール1000などのセトマクロゴール、モノステアリン酸エチレンまたはジエチエレングリコール、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸などのグリセリルエステル、ラウロマクロゴールなどのラウロス化合物、マクロゴールモノメチルエーテル、モノおよびジグリセリド、ノノキシノール、オクトキシノール、ポロキサマー407などのポロキサマー、ポリオキシルヒマシ油、ポリオキシルステアレート、ポリソルベート、ポリビニルアルコール、プロピレングリコールジアセテート、ソルビタンなどが挙げられる。ポロキサマー188が、好ましい非イオン性界面活性剤である。
アニオン性乳化剤として、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸化ヒマシ油が、ステアリン酸マグネシウム、ペンデカマイン、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。好ましいアニオン性乳化剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
本発明組成物は、表面麻酔剤、日焼け止め剤、風味剤、香料、皮膚軟化薬または皮膚色調着色料およびマスク剤といったような慣例の補助剤を含むこともできる。
【0015】
本発明組成物は、慣例の混和技術によって製造することができる。油相と水性/ポリエチレングリコール相を別々に混和し、均質化し、混合前に共通の温度にするという慣例の二相混和技術によって本発明組成物を製造するのが好ましい。有効成分(すなわち、糖質コルチコイドとヌクレオシド類縁体)は、混和前あるいは後に、各油相および水相に加える。再結晶する傾向を最小化するために、有効成分を二相混和後に加えるのが好ましい。このことは、有効成分を加えるときに、より大きい体積があること、および二相混合物が一般に比較的低めの温度であることを意味する。
【0016】
したがって、本発明の別の態様は、10〜25重量%(予定の製剤の総重量に対して)のアルカン酸イソプロピルエステルを含む油相を特定の温度にし、15〜25重量%(予定の製剤の総重量に対して)のプロピレングリコールを含む水相を特定の温度にし、混和し、必要に応じて二相を均質化し、必要に応じて混和物を比較的定温に冷却し、有効量の抗炎症糖質コルチコイドとヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を加え、次いで、得られる混和物を均質化することを特徴とする抗ウイルス組成物の製造方法を提供する。
【0017】
口唇および/または生殖器の単純ヘルペス損傷あるいは帯状疱疹などの意図するウイルス感染状況は、時折起こる状態である。すべての抗ウイルス治療については、発端の損傷における潜伏中のヘルペス感染の再活性化を感じるかまたは気づいた後、可能な限りすぐに医薬品の適用を開始することが望ましい。たとえば、多くの人々が、ヘルペス損傷の最初の眼に見える徴候が認められる1日または2,3日前の再活性化到来点で、熱感またはヒリヒリ感を体験する。本発明組成物の適用は、この時点で開始するのが好ましい。患者のなかには、スキーをしたときや熱帯の太陽光からの紫外線、激しい感情的ストレスもしくは月経などの刺激に曝されると、特定の位置におけるヘルペス損傷の再活性化が誘発される者もある。本発明組成物は、これらの刺激に曝されるときの予防的使用にも適用することができる。いずれの事態においても、ヘルペス損傷を被りやすい人々にとっては、必要なときにすばやく適用できるように、該組成物が容易に供給されるようにしておくことが好都合である。したがって、医薬品を家庭もしくは職場で保持すること、および/または旅行で携帯することができるように、本発明組成物が冷蔵せずとも長い貯蔵寿命をもつことが望ましい。
本発明化合物は、一般に、初期または確認時点の損傷に対して、症状の発現中、1日2〜12回適用する(3時間毎など)。少なくとも、一般に、症状の発現が予期される最初の感覚から3〜10日間後の硬いカサブタ期まで適用を継続するのが好ましい。
【0018】
本発明組成物は、0.25〜50mlを含むチューブで存在するのが好ましい。該チューブは、1回の口唇または生殖器ヘルペス症状発現に十分な量(1〜5ml)を含むのが便利である。このチューブは、1週間から10日以下にわたって1日数回適用し、その残りを捨てることができ、開口チューブの汚染の可能性および/または同じチューブを共通して用いる個人間の交差感染を最小化することができる。
本発明組成物の前臨床効能は、本発明実施例またはWO96/24355およびWO96/24963に記載された免疫モデルの養子移入においてアッセイすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明組成物またはプラシーボを局所投与されているヘルペス感染モルモットにおける時間に対する損傷スコアのプロットである。
【図2】慣例の担体を含む組成物またはプラシーボを局所投与されているヘルペス感染モルモットにおける時間に対する損傷スコアのプロットである。
【図3】本発明の範囲外の組成物またはプラシーボを局所投与されているヘルペス感染モルモットにおける時間に対する損傷スコアのプロットである。
【図4】慣例の製剤における結晶成長を示す顕微鏡写真である。
【図5】本発明の製剤における結晶成長の欠如を示す顕微鏡写真である。
【図6】本発明組成物またはWO96/24355の実施例3にしたがって調製された組成物を局所投与されているヘルペス感染モルモットにおける時間に対する損傷スコアのプロットである。
【図7】本発明の別の組成物またはWO96/24355に準じて調製された組成物を局所投与されているヘルペス感染モルモットにおける時間に対する損傷スコアのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の種々の具体例を、以下に記載する非制限的実施例および図面を参考例としてのみ用いて詳しく説明する。
【実施例】
【0021】
(詳細な説明)
実施例1
下記の成分から本発明組成物を調製する:
油相
セトステアリルアルコール 6.75g 6.75%
ワセリン 10.00g 10.0%
液体パラフィン 5.65g 5.65%
ミリスチン酸イソプロピル 15.00g 15.0%
水相
プロピレングリコール 20.00g 20.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.80g 0.8%
ポロキサマー188 1.00g 1.0%
精製水 34.8g 34.8%
有効成分
アシクロビル 5.00g 5.0%
ヒドロコルチゾン 1.00g 1.0%

アシクロビル(Recordati 微粉、USP23/BP93/EurPhIII)の粒子径は、10%=2μm、50%=4μm、90%=7μm、100%=15μmであった。ヒドロコルチゾン(ファルマシア&アップジョン 微粉、USP/BEP/BP)の粒子径は、100%<5μm、幾何平均直径2μmであった。精製水は、逆浸透処理をしている。
油相および水相成分をそれぞれ別の混合容器に入れ、激しく攪拌しながら70℃に加熱する。相が同じ温度になったときに、混合物に空気が入るのを避けるために可能な最高速度で3〜5分間激しく攪拌しながら、上記容器から油相を水相に注ぎ入れる。次いで、このようにして乳化した混合物を均質化し、激しく攪拌しながら32〜35℃に冷却する。有効成分を加え、有効成分が湿潤化し、混和されるまで激しく攪拌を続ける。パッケージに入れる前に、混合物をもう一度均質化し、30℃付近でクリームが濃厚化するまで冷却する。
【0022】
実施例2
下記の成分から本発明ペンシクロビル/ヒドロコルチゾン組成物を調製する:
油相
セトステアリルアルコール 6.75g 6.75%
ワセリン 10.00g 10.0%
液体パラフィン 5.65g 5.65%
ミリスチン酸イソプロピル 15.00g 15.0%
水相
プロピレングリコール 20.00g 20.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.80g 0.8%
ポロキサマー188 1.00g 1.0%
精製水 34.8g 34.8%
有効成分
ペンシクロビル 5.00g 5.0%
ヒドロコルチゾン 1.00g 1.0%

ヒドロコルチゾン(ファルマシア&アップジョン 微粉、USP/BEP/BP)の粒子径は、100%<5μm、幾何平均直径2μmであった。精製水は、逆浸透処理をしている。ペンシクロビルは、平均直径5μmまで微粉化した。
油相および水相成分をそれぞれ別の混合容器に入れ、激しく攪拌しながら70℃に加熱する。相が同じ温度になったときに、混合物に空気が入るのを避けるために可能な最高速度で3〜5分間激しく攪拌しながら、上記容器から油相を水相に注ぎ入れる。次いで、このようにして乳化した混合物を均質化し、激しく攪拌しながら32〜35℃に冷却する。有効成分を加え、有効成分が湿潤化し、混和されるまで激しく攪拌を続ける。パッケージに入れる前に、混合物をもう一度均質化し、30℃付近でクリームが濃厚化するまで冷却する。
【0023】
比較例1
下記の成分から、EP44543に記載された先行技術のMAC担体を用いるアシクロビル/ヒドロコルチゾン組成物を調製する:
油相
セトステアリルアルコール 33.75g 6.75%
ワセリン 50.00g 10.0%
液体パラフィン 28.25g 5.65%
水相
プロピレングリコール 200.0g 40.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 4.0g 0.8%
ポロキサマー188 5.0g 1.0%
精製水 148.82g 29.8%
有効成分
アシクロビル 28.19g 5.0%
ヒドロコルチゾン 5.02g 1.0%

実質的に実施例1と同様にして各成分を混和した。
【0024】
比較例2
下記の成分から、低ポリエチレングリコール(PG)濃度(先行文献MAC製剤と比較して)を用いるが、本発明組成物のアルカン酸イソプロピルエステル(IPM)は用いないアシクロビル/ヒドロコルチゾン組成物を調製する:
油相
セトステアリルアルコール 6.75g 6.75%
ワセリン 10.00g 10.0%
液体パラフィン 5.65g 5.65%
水相
プロピレングリコール 25. 0g 25%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.80g 0.8%
ポロキサマー188 1.0 g 1.0%
精製水 44.8g 44.8%
有効成分
アシクロビル 5.00g 5.0%
ヒドロコルチゾン 1.00g 1.0%

実質的に実施例1と同様にして各成分を混和した。
【0025】
生物実施例1
本発明組成物および比較例の組成物の抗ウイルス効力をモルモットモデルでアッセイする(Aleniusら、J.Inf.Dis.145、569−573(1982))。簡単に述べると、該モデルには、モルモットの背面の脱毛領域に単純ヘルペスウイルスの1次感染を起こすことが含まれる。接種の24時間後、テスト組成物およびプラシーボ組成物を初期のヘルペス損傷に塗布する。この局所投与を3〜4日間1日2回繰り返す。損傷の外観について、二重盲検様式にて毎日スコアをつけ、複数の動物からの該スコアを平均する。ここで、
0は、損傷の発達がないことを表す。
1は、2,3個の損傷が散在することを表す。
2は、数個の損傷があり、ある程度融合していることを表す。
3は、融合性の損傷が最大に発達していることを表す。
【0026】
図1は、本発明製剤とウイルス成長が阻害されなかったことを表しているプラシーボ製剤(比較例1に類似しているが、有効成分を含まないMAC製剤)との比較から得られる結果を示す。図2は、実質的先行技術組成物(比較例1−MAC製剤中のアシクロビル&ヒドロコルチゾン)と対応するプラシーボとの比較を示す。図3は、本発明の範囲外の組成物(比較例2、低PG/IPMなし)とプラシーボとの比較を示す。
最初にプラシーボ製剤に言及すると、抗ウイルス薬と糖質コルチコイドを組合せない場合、3日以内に重篤な損傷が現れ、8日以上にわたって治癒しないままであることがわかる。
【0027】
前記WO96/24355に記載の抗ウイルス薬/糖質コルチコイドの組合せを含む組成物(比較例1)を新たに調製し、慣例のMAC製剤に抗ウイルスヌクレオシド類縁体と抗炎症糖質コルチコイドを配合した。この製剤は、重症の損傷の発達を遅延化し、損傷の程度を幾分軽減化する(第6日における最大スコア2)。WO96/24355が示唆するように、このような製剤は、ヘルペス感染の治療および予防において、ある程度有用である。しかし、アッセイ例1に記載するように、このMAC製剤は、組合せ療法のための商業的な情況においては実際的ではない。
図3に示す比較例2については、MAC製剤の種々の態様および適用に関する前記EP44543、WO91/11187、EP416739およびWO93/00905の記載から予測されるように、これらの特許および出願が勧告する“少なくとも30重量%”以下にプロピレングリコール濃度を低下させると、抗ウイルス効力が有意に引き下げられ、プラシーボよりも僅かに良いにすぎない製剤しか得られない。特に、損傷スコアは、損傷を起こす時間や治癒する時間においてほとんど測定不可能な減少しか示さないプラシーボよりも0.5単位少ないだけである。
【0028】
対照的に、図1に示すように、本発明組成物は、プラシーボや図2の実質的先行技術製剤と比べて、有意に改善された効力を示す。特に、損傷スコアは、すべての時点において、1より少なく、第8日において0.5以下である。明らかに、プロピレングリコール濃度の低下とアルカン酸イソプロピルエステルであるミリスチン酸イソプロピルの添加の組合せは、抗ウイルス薬と抗炎症糖質コルチコイドを含む組合せ製剤の抗ウイルス効力と治療効力を有意に促進する。
【0029】
図6は、広くは前述のとおりであるが、本発明組成物(実施例1)とヒドロコルチゾンおよびアシクロビルを含むが、我々の同時継続出願であるWO96/24355の実施例3にしたがって調製された組成物とを比較する実験から、僅かに病原性の強い菌株である単純ヘルペスウイルス1型を用いているモルモットモデルにおける日数の関数としての損傷スコアを示す。両方の組成物が、良好な治癒を提供するが、本発明組成物は、早期感染における損傷の重篤度に関し、改善された能力をもつことがわかる。損傷消滅に対してプロットする場合、本発明組成物の曲線の下部領域は、先行技術製剤の領域よりも約10%少ない。
【0030】
図7は、別の抗ウイルス薬であるペンシクロビルと糖質コルチコイドであるヒドロコルチゾンを含むを含む実施例2のクリームを適用する実験からの図6に関して記載したモルモットモデルにおける日数の関数としての損傷スコアである。比較のために、市販のデナビル(Denavir:登録商標)(ペンシクロビル)(スミスクライン・ビーチャム)クリームとACO1%ヒドロコルチゾンを用いる我々の同時継続出願であるWO96/24335に記載された方法に類似した方法によってクリームを調製した。本発明組成物は、有意に低い重篤な損傷スコアを提供する。対応する有効成分を含まない担体で処置したプラシーボ動物も図7に示す。
【0031】
アッセイ例1
図4および図5は、実質的先行技術製剤(図4、比較例1)を表す組成物および本発明組成物(図5、実施例1)の40倍率の顕微鏡写真である。
まず、25℃で6ヶ月貯蔵後の本発明組成物を示す図5に言及すると、結晶アシクロビルと油相の小球体が、水相中によく分散していることがわかる。6ヶ月貯蔵後のこの製剤の外見は、製剤が新たに製造されたときと事実上同一である。
対照的に、図4は、先行技術、いわゆる約40重量%プロピレングリコールを用いて製剤される、担体中に糖質コルチコイドおよびヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を含む製剤の40倍率の顕微鏡写真である。新たに調製するとき、この製剤は、図5における対応する製剤とは微視的に区別がつかなかった。しかし、25℃にて3ヶ月と3週間貯蔵しただけで、この先行技術製剤には、長い針状結晶が成長した。分析により、これらの針状物が、油相中の溶液から析出した製剤のヒドロコルチゾン成分を含み、有意に最適状態に及ばない局所的にバイオアベイラブルな量の製剤中のこの成分が導かれることがわかる。さらに、油相が、図5の顕微鏡写真よりも明らかに分散の程度が低いこともわかる。
本発明を、抗ウイルス薬であるアシクロビル、アルカン酸イソプロピルエステルIPMといったような特定の目論見的および具体的な例に関して詳細に説明したが、本発明が、この記載に限定されることなく、請求の範囲の内容に拡大されることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体が、約15〜約25重量%(製剤の総重量に対して)のプロピレングリコールおよび約10〜約25重量%(製剤の総重量に対して)のC12−C22アルカン酸イソプロピルエステルを含むことを特徴とする医薬担体中に抗炎症糖質コルチコイドおよびヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を含む局所用組成物。
【請求項2】
担体が、約18〜約22重量%、好ましくは約20重量%のプロピレングリコールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
担体が、約12〜約18重量%、好ましくは約15重量%のアルカン酸イソプロピルエステルを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アルカン酸イソプロピルエステルが、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸またはベヘン酸エステルもしくはその混合物から選ばれる請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アルカン酸イソプロピルエステルが、ミリスチン酸イソプロピルである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ヌクレオシド類縁体が、ガンシクロビル、N−7ガンシクロビル、ビス−ヒドロキシメチルシクロプロピルメチルグアニン、ロブコビル、シドフォビル、アデフォビル、ペンシクロビル、9−[4−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニンおよびアシクロビルまたはその皮膚的に加水分解されるプロドラッグもしくはその混合物から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ヌクレオシド類縁体が、ペンシクロビル、9−[4−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニンまたはアシクロビルである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ヌクレオシド類縁体が、アシクロビルである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ヌクレオシド類縁体が、組成物の1〜15重量%、好ましくは4〜7重量%を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
糖質コルチコイドが、アルクロメタゾン、デソニド、フルプレドニデン、フルメタゾン、ヒドロコルチゾンおよび酪酸ヒドロコルチゾンまたは酢酸ヒドロコルチゾンといったようなそのエステル、クロベタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ブデノシド、デスオキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニドアセトニド、フルオコルトロン、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、モメタゾン、ロフレポニドからなるグループから選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
糖質コルチコイドが、マイルド糖質コルチコイドである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
糖質コルチコイドが、ヒドロコルチゾンまたはそのエステルである請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
糖質コルチコイドが、組成物の0.005〜12重量%、好ましくは0.1〜10重量%を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
糖質コルチコイドが、ヒドロコルチゾンまたはそのエステルであり、抗ウイルス薬が、アシクロビルまたはペンシクロビルもしくはその皮膚的に加水分解されるプロドラッグである請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
アシクロビルが、組成物の4〜7重量%を構成し、ヒドロコルチゾンが、組成物の0.5〜2重量%を構成する請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ペンシクロビルが、組成物の1〜7重量%を構成し、ヒドロコルチゾンが、組成物の0.5〜2重量%を構成する請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
油中水型または好ましくは水中油型の乳液である請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
ヘルペスウイルス感染の治療または予防のための薬剤の製造における請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項19】
治療または予防を必要とする患者に請求項1に記載の組成物を局所投与することを特徴とするヘルペスウイルス感染の治療または予防方法。
【請求項20】
10〜25重量%(予定の製剤の総重量に対して)のC12−C22アルカン酸イソプロピルエステルを含む油相を特定の温度にし、15〜25重量%(予定の製剤の総重量に対して)のプロピレングリコールを含む水相を特定の温度にし、混和し、必要に応じて二相を均質化し、必要に応じて混和物を比較的定温に冷却し、有効量の抗炎症糖質コルチコイドとヌクレオシド類縁体抗ウイルス薬を加え、次いで、得られる混和物を均質化することを特徴とする局所用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157392(P2011−157392A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−87438(P2011−87438)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2000−582073(P2000−582073)の分割
【原出願日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【出願人】(507261423)メディヴィル・アクチエボラーグ (6)
【Fターム(参考)】