説明

プロピレンランダムコポリマー、その調製方法、並びにそれを含んでいる組成物および物品

【課題】食品包装材料として優れた透明性および耐熱性発現のため、ブテンー1が高い分散性を有するプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーの提供。
【解決手段】ブテン−1含有量1〜6モル%であり、NMR測定にて特定されるブテン−1の相対的分散度が、98.5%よりも高いプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー、その調整方法および該コポリマーを含む組成物。該コポリマーの室温におけるキシレン可溶分割合は低い。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、プロピレンランダムコポリマー、その調製方法、並びにそれを含んでいる組成物および物品に関するものであり、上記プロピレンランダムコポリマーは、特にプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーである。
【0002】
[背景技術]
プロピレンランダムコポリマーは一般的に、少量(一般的には15重量%以下)のα−オレフィンモノマー(例えば、一般的にはエチレンまたはブテン−1が用いられる)をポリプロピレン分子鎖にランダムに共重合することによって得られるポリマーをいう。上記コモノマーは、上記分子鎖中における上記プロピレン単位の配列の規則性を壊すため、ポリプロピレン樹脂の融点および結晶度を低下させる。比較的低い融点は、上記ポリプロピレン樹脂が、ヒートシール性フィルム等をより容易に製造するために用いられるようにすることができ、一方、比較的低い結晶度は、結果的に上記材料の透明性を改善する。コモノマーは一般的に、より高い透明性を達成するために、多量に用いて共重合されるが、コモノマーの量を過剰に増加させることは、上記材料の結晶度を過度に低下させ、その結果、上記材料の硬度および耐熱性を低下させる可能性があり、そしてより重要なことに、上記材料中に非結晶性の化合物の含有量(可溶物の含有量)を増加させる可能性がある。その結果、物品の表面上に浮遊物がある傾向があり、このため、その製品を処理することおよび応用することに悪影響を与える。特に、その製品が、油脂性の食品を包装するために用いられる場合、非結晶性成分の部分が、徐々に食品に移動し、その食品の品質を落とす。加えて、また一般的に、融点および結晶度を低下させることは、上記材料の耐熱性を低下させる。そのような材料が食品容器に用いられる場合、低下した耐熱性のために、材料をマイクロ波加熱するには不利である。過度に多量のコモノマーを用いることはまた、重合プロセスを困難にする可能性がある。例えば、特に、コモノマーが、より高い沸点を有するブテン−1またはより多くの炭素原子を有するα−オレフィンの場合、ケトル固着(kettle-sticking)、固化、および残ったモノマーの困難な除去が生じる。
【0003】
先行技術において、得られるプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーが浮遊物(migrants)の比較的低い含有量を有するということを見込んで、ブテン−1およびプロピレンは、ランダム共重合を行うためによく用いられる。しかし、上記ランダムコポリマーは、透明性および耐熱性の両方において、まだ欠点を有する。現在の溶液は、透明性を改善することができる適切な量の核剤と組み合わせる。これは、上記コポリマーの透明性および耐熱性をある程度まで改善することができるが、その結果は、耐熱性および浮遊物の含有量の点においてまだ満足できるものでない。
【0004】
[発明の要旨]
それゆえ、本発明の1つの目的は、優れた透明性を維持し、またはさらに改善する一方で、優れた耐熱性および室温におけるキシレン可溶物の低い含有量を特徴とするプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを供給することである。
【0005】
実験によって、本発明の発明者らは驚くことに、ブテン−1の相対的分散度を増加させることによって、上記材料が、少なくとも同等の透明性を有し、そして優れた耐熱性を達成することができること見出した。
【0006】
コモノマーとしてブテン−1をプロピレンとランダム共重合するプロセスにおいて、ポリプロピレン分子鎖中に、別々に配置されるモノマー単位として、ブテン−1モノマーの割合がより高く挿入され、そして、ポリプロピレン分子鎖中に、連続的に配置されるモノマー単位(例えば、BB二重単位(BB dual units)またはより連続的なモノマー単位)としてブテン−1モノマーの割合が低い場合、理想的なランダム分散率MDrandom(B)に対する、分子鎖中のブテン−1の観測される分散率の割合は、大きくなる。この割合は、ブテン−1の相対的分散度MDrelative(B)として規定され、この相対的分散度MDrelative(B)は、以下の式に従って計算される。
【0007】
【数1】

【0008】
上記式において、[PB]は、分子鎖中における、プロピレンの単量体単位と結合しているブテン−1の単量体単位の数を表す;[B]は、分子鎖中における、ブテン−1の単量体単位の合計数を表す;そして、MDobserved(B)、MDrandom(B)およびMDrelative(B)は、単位%にて計算されたものである。
【0009】
本発明の別の目的は、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを調製するための方法を提供することである。上記方法は、非常に高いブテン−1の相対的分散度および室温にてキシレン可溶物の低い含有量を有するプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを調製することができる。さらに、上記重合プロセスは、操作することが容易であり、そしてケトル固着、固化、および残ったモノマーの困難な除去等の発生を避けることができる。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、ポリプロピレン組成物、特に高い透明性、浮遊物の低い含有量、および高い耐熱性を有するプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、高い透明性、浮遊物の低い含有量、および高い耐熱性を有する食品包装容器を提供することである。
【0012】
さらに、本発明はまた、上述したポリプロピレン組成物および食品包装容器を調製する方法を提供する。
【0013】
本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、ブテン−1の含有量が、1〜6モル%、好ましくは3〜6モル%であり、NMR測定にて確定されるブテン−1の相対的分散度が、98.5%よりも高く、好ましくは99.0%よりも高い。
【0014】
上記プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中におけるブテン−1の含有量は、ポリプロピレンの結晶化度に影響を与える可能性がある。ブテン−1の含有量がより高くなり、ポリプロピレンの結晶化度がより低くなり、そして上記材料の透明性がより優れたものになる。しかし、ブテン−1の含有量が過剰に高い場合、室温におけるキシレン可溶物が過剰となる結果になる可能性があり、一方、ブテン−1の含有量が過剰に低い場合、透明性に影響する結晶化度が過剰に高くなる結果になる可能性がある。多数の実験によって、ブテン−1の含有量は、好ましくは1〜6モル%、より好ましくは3〜6モル%であることが見出された。
【0015】
上述したように、上記プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中のブテン−1の相対的分散度が上昇することによって、上記材料は、同等の透明性を達成しながら、より優れた耐熱性を有することができる。本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーにおける、ブテン−1の相対的分散度を、98.5%よりも高く、好ましくは99.0%よりも高くすることができる。
【0016】
ブテン−1の相対的分散度が非常に高いことによって、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、90℃よりも高い、好ましくは95℃よりも高い加熱たわみ温度を有し得る。
【0017】
プロピレンランダムコポリマー中にコモノマーの量が増加することは、一般的に室温におけるキシレン可溶物の含有量を増加させることになる可能性があり、そしてその結果からまたブテン−1をコモノマーとして用いる。一般的に、室温におけるキシレン可溶物の含有量が比較的高い場合は、結果的に、包装材料としての製品が、直接的に食品および医薬品等に接触することは許されない、あるいは、包装した商品の品質を落とす可能性がある。しかし、本発明にて提案されている、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中のブテン−1の含有量の範囲において、ブテン−1の含有量が増加するにつれて、室温におけるキシレン可溶物の含有量はゆっくりと増加する。
【0018】
具体的には、室温(約25℃)における、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中のキシレン可溶物の含有量は、以下の境界「Y=0.77+0.252X」よりも低い。
【0019】
ここで、上記Yは、室温でのキシレン可溶物の重量パーセントであり(例えば、5重量%の場合、Y=5である)、上記Xは、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中のブテン−1のモルパーセントである(例えば、5モル%の場合、X=5である)。
【0020】
室温におけるキシレン可溶物の含有量が減少すると、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、食品包装容器として用いられる場合、より高い安全性を有し;そしてフィルム現像処理のために用いられる場合、ローラーに貼り付けることが困難であり、そして金属メッキ層を剥離することが容易でない。
【0021】
一般的には、メルトインデックスを制御することによって、上記ポリマーの加工可能性は、制御される。好ましくは、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、2.16kgの荷重下で230℃にて測定したメルトインデックスが、0.5〜50g/10分間、好ましくは2〜30g/10分間である。
【0022】
本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、分子量分布を特徴付けるための、GPCにより測定した分子量分布指標Mw/Mnが、3.5〜8、好ましくは3.8〜6である。分子量分布指標が小さすぎる場合、その分子量分布が狭く、そのためその材料の性能を加工することが乏しいことを意味する;そして、分子量分布指標が大きすぎる場合、その分子量分布が広く、そのためその材料の透明性が影響を受ける可能性があり、低下されることを意味する。
【0023】
優れた透明性および耐熱性と共に、ブテン−1の高い相対的分散度を有する、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、加熱した後に食べることができる食品を包装することに大変適している。さらに、上記コポリマーは、室温におけるそのようなキシレン可溶物の低い含有量を有しており、包装材料として用いられる場合、室温にて析出する可溶物から、包装した物品への雑菌混入を有利に避けることができ、そして、食品および医薬品を包装する材料として用いることにより適する可能性がある。
【0024】
本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを調製するための方法は、選択されるチーグラー・ナッタ触媒の存在下にて、および重合温度にて、ならびに、適切な水素含有量にて、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを得るために、プロピレンとブテン−1との共重合が、反応器に加えられるコモノマーであるブテン−1の量を調節することによって実施されることを含む。
【0025】
本発明において、選択されるチーグラー・ナッタ触媒は、中国特許第85100997A号明細書、中国特許第1258680A号明細書、中国特許第1258683A号明細書、中国特許第1258684A号明細書に開示されている触媒をいう。上記4つの文献にて開示されている内容は、本発明の触媒に関して技術的解決法として全て本明細書中に組み込まれ、そして本発明の一部である。中国特許第1258683A号明細書に開示されている触媒は特に、本発明の触媒として用いる場合に利点を有し、そのため、上記文献中に開示されている内容は、本発明の触媒に関して好ましい技術的解決法として全て本明細書中に組み込まれる。
【0026】
特定の実施形態においては、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、主触媒成分A、共触媒成分Bおよび外部電子供与成分(external electron donor component)Cを含んでいるチーグラー・ナッタ触媒を用いた共重合によって得られ、
ここで、上記主触媒成分Aが、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系に溶解しているハロゲン化マグネシウムによって得られる、チタンおよび多塩基性カルボン酸エステルを含んでいる固体触媒成分であり;
上記成分Bが、一般化学式AlR3−nを有するアルキルアルミニウム化合物であり、ここでRは水素または1〜20の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲンであり;並びに、
上記成分Cが、一般化学式RSi(OR’)4−nを有する有機ケイ素化合物であり、ここでnは0≦n≦3であり、RおよびR’は、同じかまたは異なる、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはハロゲン化されているアルキル基である。
【0027】
好ましくは、上述した溶媒系において、上記ハロゲン化マグネシウム1モルを基準として、上記有機エポキシ化合物の量は0.2〜5モルであり、上記有機リン化合物に対する上記有機エポキシ化合物のモル比は0.9〜1.6である。
【0028】
好ましくは、チタンに対するアルミニウムのモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Bのモル比は、5〜1000であり、チタンに対するケイ素のモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Cのモル比は、2〜100である。
【0029】
例えば、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系にハロゲン化マグネシウムが溶解し、均一な溶液を形成し、上記溶液をハロゲン化チタンまたはその誘導体と混合して、沈殿剤の存在下にて固体を沈殿させ、多塩基性カルボン酸エステルを用いて上記固体を処理し、上記固体上に多塩基性カルボン酸エステルを蒸着させ、そして次いで、四ハロゲン化チタンおよび不活性希釈剤を用いて上記固体を処理することによって、上記主触媒成分Aが得られる。ここで上記沈殿剤は、有機酸無水物、有機酸、エーテルおよびケトンから選択される1つである。
【0030】
本発明において、さらに好ましいチーグラー・ナッタ触媒は、主触媒成分A、共触媒成分Bおよび外部電子供与成分Cを含むことで特徴付けられるのであり、
ここで、上記成分Aは、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系にハロゲン化マグネシウムが溶解し、均一な溶液を形成し、上記溶液をハロゲン化チタンまたはその誘導体と混合して、沈殿剤の存在下にて固体を沈殿させ、多塩基性カルボン酸エステルを用いて上記固体を処理し、上記固体上に多塩基性カルボン酸エステルを蒸着させ、そして次いで、四ハロゲン化チタンおよび不活性希釈剤を用いて上記固体を処理することによって得られる、チタンを含んでいる固体触媒成分であり、ここで上記沈殿剤は、有機酸無水物、有機酸、エーテルおよびケトンから選択される1つであり、そして、上述した溶媒系において、上記ハロゲン化マグネシウム1モルを基準として、上記有機エポキシ化合物の量は0.2〜5モルであり、上記有機リン化合物に対する上記有機エポキシ化合物のモル比は0.5〜1.6であり;
上記成分Bは、一般化学式AlR3−nを有するアルキルアルミニウム化合物であり、ここでRは水素または1〜20の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲンであり;並びに、
上記成分Cが、一般化学式RSi(OR’)4−nを有する有機ケイ素化合物であり、ここでnは0≦n≦3であり、RおよびR’は、同じかまたは異なる、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはハロゲン化されているアルキル基であり;
チタンに対するアルミニウムのモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Bのモル比は、5〜1000であり、チタンに対するケイ素のモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Cのモル比は、2〜100である。
【0031】
上記触媒成分Aにおける上記ハロゲン化マグネシウムは、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムと水やアルコール等との混合物、およびジハロゲン化マグネシウムの分子式中の1つのハロゲン原子を炭化水素基またはハロヒドロカルビルオキシ基(halohydrocarbyloxy group)に置き換えることによって得られる誘導体を含む。上述したジハロゲン化マグネシウムに関して、上記ジハロゲン化マグネシウムは、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウムおよび二ヨードマグネシウムであり得る。
【0032】
上記触媒成分Aにおける上記有機エポキシ化合物は、2〜8の炭素原子を有する脂肪族オレフィン、ジオレフィン、またはハロゲン化されている脂肪族オレフィン、あるいは、ジオレフィンやグリシジル・エーテル、分子内エーテル等の酸化物を含む。上記リストの中から具体的な例として、有用な化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブタジエンオキシド、ブタジエンジオキシド、エピクロルヒドリン、メチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、テトラヒドロフランから選択されることができる。
【0033】
上記触媒成分Aにおける有機リン化合物は、o−リン酸または亜リン酸の、ヒドロカルビルエステルまたはハロゲン化されているヒドロカルビルエステルを含む。具体的には、そのような化合物としては、例えば、トリメチルo−ホスフェート、トリエチルo−ホスフェート、トリブチルo−ホスフェート、トリフェニルo−ホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、ベンジルホスファイトを挙げることができる。
【0034】
上記触媒成分Aにおける不活性希釈剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および他の炭化水素またはハロゲン化されている炭化水素化合物を含む可能性がある。
【0035】
上記触媒成分Aにおけるハロゲン化マグネシウム溶液は、以下の組成を有する:ハロゲン化マグネシウム1モルを基準として、有機エポキシ化合物の量が、0.2〜5モル、好ましくは、0.5〜2モルであり;有機リン化合物に対する有機エポキシ化合物のモル比が、0.5〜1.6、好ましくは0.9〜1.6、より好ましくは0.9〜1.4であり;そして、不活性希釈剤の量が、1200〜2400ml、好ましくは1400〜2000mlである。
【0036】
上記触媒成分Aにおける、遷移金属Tiのハロゲン化物またはその誘導体は、それぞれ一般式TiX(OR)4−n(n=1〜4)で表される。具体的に、そのような化合物の例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシチタン、モノクロロトリエトキシチタン、ジクロロジエトキシチタン、およびトリクロロモノエトキシチタンを挙げることができる。遷移金属Tiのハロゲン化物、またはその誘導体の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、0.5〜150モル、好ましくは、1〜20モルである。
【0037】
上記触媒成分Aにおける上記沈殿剤は、有機酸、有機酸無水物、有機エーテル、有機ケトン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。上記リストの中から例として、上記沈殿剤は、酸無水物、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテルから選択されることができる。上記沈殿剤の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、0.03〜1.0モル、好ましくは0.05〜0.4モルである。
【0038】
上記触媒成分Aにおける上記多塩基性カルボン酸エステルは、脂肪族多塩基性カルボン酸エステルおよび芳香族多塩基性カルボン酸エステル、ならびに、それらの混合物からなる群より選択される。例えば、上記多塩基性カルボン酸エステルとして、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソオクチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、ナフタレンジカルボン酸ジエチル、ナフタレンジカルボン酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリブチル、ヘミメリト酸トリエチル(triethyl hemimellitate)、ヘミメリト酸トリブチル(tributyl hemimellitate)、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラブチルから選択されることができる。上記多塩基性カルボン酸エステルの量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、0.0019〜0.01モル、好ましくは0.0040〜0.0070モルである。
【0039】
上記触媒成分Bにおける上記有機アルミニウム化合物は、一般化学式AlR3−nによって表され、ここでRは水素、1〜20の炭素原子を有する炭化水素基、特にアルキル基、アラルキル基、アリール基であり;Xはハロゲン、特に塩素および臭素であり;nは0<n≦3である。具体的には、上記化合物は、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化セスキエチルアルミニウム、および二塩化エチルアルミニウムから選択されることができ、その中でもトリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0040】
上記触媒成分Cにおける上記有機ケイ素化合物は、一般化学式RSi(OR’)4−nによって表され、ここで、nは0≦n≦3であり、RおよびR’は、同じかまたは異なる、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはハロゲン化されているアルキル基である。具体的には、上記化合物は、例えばトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランから選択されることができる。
【0041】
上記触媒系において、上記成分Aにおけるチタンに対する上記成分Bにおけるアルミニウムのモル比は、5〜1000、好ましくは25〜300であり;上記成分Aにおけるチタンに対する上記成分Cにおけるケイ素のモル比は、2〜100、好ましくは8〜32である。
【0042】
上記触媒成分Aを調製するための方法は、以下のステップを包含する:
1. ハロゲン化マグネシウムを、0〜100℃の温度、好ましくは30〜70℃の温度にて、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系に攪拌しながら溶解させ、透明な均一の溶液を形成するステップ;
2. 沈殿剤の存在下および−35〜60℃の温度、好ましくは−30〜5℃の温度にて、チタン化合物を上記ハロゲン化マグネシウム溶液に加え、または上記ハロゲン化マグネシウム溶液をチタン化合物に加え、そしてさらに、固体が沈殿する前後に多塩基性カルボン酸エステルを加えることを必要とし、その結果、沈殿した上記固体を処理し、上記多塩基性カルボン酸エステルを部分的に上記固体上に蒸着させるステップ;
3. その反応混合液を60〜110℃の温度まで加熱し、その懸濁液を上記温度にて10分間〜10時間にわたって攪拌するステップ;
4. 上記攪拌を終了した後に、上記固体をその混合溶液から沈殿させ、続けて濾過し、母液を除去し、トルエンおよびヘキサンを用いて上記固体を洗浄し、チタンを含んでいる上記固体触媒成分Aを得るステップ。
【0043】
上記3つの触媒成分は、上記重合反応器に直接的に加えるか、あるいは、予備錯形成(pre-complexation)、半重合、または予備錯形成および半重合を行った後の反応器に加えることができる。予備錯形成反応のための反応器は、様々な形態がある。例えば、上記反応器は、連続的に攪拌するタンク型反応器、ループ型反応器、静的ミキサを含んでいる一連のパイプ、または上記材料が乱流状態で入る一連のパイプであってもよい。
【0044】
本発明者らは予想外にも、本発明の選択される触媒を予備錯形成の処理に用いることによって、高いブテン−1の相対的分散度と室温におけるキシレン可溶物の低い含有量の両方を有するプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを得ることができることを見出した。上記予備錯形成の温度は、−10〜60℃の範囲、好ましくは0〜30℃の範囲にて制御されることができる。本発明者らはさらに、本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーにおけるブテン−1の相対的分散度が、予備錯形成の時間を長くすればするほど増加し、一方、室温におけるキシレン可溶物の含有量が予備錯形成の時間を長くすればするほど減少することを見出した。しかし、予備錯形成の時間が長すぎると触媒の活性に悪影響を与える。それゆえ、本発明において選択される上記予備錯形成の時間は、0.1〜100分間、好ましくは1〜30分間である。
【0045】
上記予備錯形成された触媒はまた、必要に応じてさらに半重合を行わせることができる。上記半重合は、バルク液相条件下にて連続的に行わせることができ、そしてまた不活性溶媒中においてもまた断続的に行わせることができる。上記半重合の反応器は、連続的に攪拌されるタンク、ループ型反応器等であってもよい。上記半重合の温度は、−10〜60℃の範囲、好ましくは0〜40℃の範囲にて制御することができる。半重合の多発性(multiple)は、0.5〜1000倍、好ましくは1.0〜500倍に制御される。
【0046】
上記重合反応は、プロピレンの液相中にて行われる。上記液相重合を行う場合、上記重合の温度は、0〜150℃、好ましくは40〜100℃であり;重合の圧力は、相当する重合温度でのプロピレンの飽和蒸気圧よりも高くなければならない。
【0047】
上記重合は、連続的に行うことができ、そしてまた断続的に行うことができる。上記連続的な重合は、直列に連結された1つまたは複数の液相の反応器中にて行うことができる。上記液相の反応器は、ループ型反応器、または連続的に攪拌されるタンク型反応器であり得る。
【0048】
さらに、上記重合はまた、ガス相中にて行うことができる。この場合、いくつかの適切なデバイス(例えば、ガス相反応器)を用いることができる。
【0049】
本発明のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、相当する装置を用いることによって、押出の顆粒化が行われ得る。顆粒化する場合、必要であれば、当該分野において一般的に用いられる他の添加剤(例えば、酸化防止剤(例えば、1010、168)、酸吸収剤(例えば、ステアリン酸カルシウム)、光安定剤、熱安定剤、着色剤、または光学的性質を改善することができる核剤)を加えることができる。これら全ての添加剤は、慣習的な量にて加えられ得る。顆粒化の間に、材料を溶融混合する温度は、プロピレンポリマーを処理するときに混合する温度として一般的に採用される温度であり、その温度は、プロピレンポリマーマトリクスが、完全に溶解されるが、分解されない温度範囲(例えば、180〜260℃)から選択されるべきである。
【0050】
好ましい実施形態においては、本発明の好ましいプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物を調製するために、核剤をポリプロピレンに加えることができ、加えることによって、ポリプロピレンの結晶粒子の大きさを小さくし、上記材料の光学的性質を改善し、そしてさらに上記材料の耐熱性を改善することができる。好ましくは、上記核剤は、Millad 3988(Milliken Chemical Co. にて製造)、ADK NA−21(Asahi Denka Corp. にて製造)およびMillad NX8000(Milliken Chemical Corp. にて製造)である。最も好ましい核剤は、Millad 3988である。上記核剤は、顆粒の状態にて加えることができる。上記核剤の量は、0.1〜1重量部、好ましくは0.2〜0.4重量部である。上記組成物を調製するための方法は、上述した重量比に従って、上記プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーの粉末を、好ましいMillad 3988核剤および必要に応じて他の添加剤に溶融混合することを包含する。
【0051】
本発明の上記組成物はまた、以下の技術的特徴を有する:溶解射出成形によって形成されたシートのヘイズが、10%未満、好ましくは8%未満である;そして加熱たわみ温度が、95℃より高い、好ましくは100℃より高い、より好ましくは105℃より高い温度である。本発明の上記組成物は、より優れた透明性および耐熱性を有し、そして加熱した後に食べることができる食品を包装することにより適している。さらに、上記組成物はまた、浮遊物の含有量が低く、そのため、包装材料として用いられる場合には、上記組成物は浮遊物の沈殿から包装した物品への雑菌混入を避けることができ、食品および医薬品の包装材料として特に使用される。
【0052】
さらに本発明は、本発明のポリプロピレンコポリマーまたは上述したポリプロピレンコポリマーの組成物から形成された食品包装容器を提供する。上記容器を調製するための方法は、ポリプロピレン組成物の粒子を溶解し、任意の成形プロセスを用いて形成されることを包含する。上記成形プロセスは、射出成形、熱成形、吹込み成形等であってもよい。本発明の包装容器は、液体または固体の食品、特に油脂性の食品を包装することに適している。
【0053】
[発明の実施形態]
本発明は、以下の実施例を例証することによってさらに説明される。本発明の範囲は、これらの実施例に限られない。本発明の範囲は請求項にて規定される。
【0054】
本発明および実施例における関連したデータは、以下の測定方法に従って得られる:
1. プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーにおけるコモノマーであるブテン−1の含有量および相対的分散度(MDrelative(B)、相対的モノマー分散度)の測定:
上記測定は、AVANCE IIIタイプの400MHzの核磁気共鳴分光学(NMR)(Bruker Co.(スイス)にて製造)を用いることによって、以下の条件およびパラメータにて行われる:溶媒として、重水素化されたo−ジクロロベンゼン、250mgのサンプル/2.5mlの溶媒、140℃にてサンプルを溶解、13C−NMRから回収、検出温度125℃、検出ヘッド10mm、遅延時間D1が10秒、サンプル時間ATが5秒、走査時間>5000回。実験の操作、スペクトルピークの同定およびデータの処理は、基本的なNMRの基準に従って行われる。さらに詳細な含有量に関しては、以下の文献を参照のこと:(1) H. N. Cheng, 13CNMR Analysis of Propylene-Butylene Copolymers by a Reaction Probability Model, Journal of Polymer Science: Polymer Physics Edition, 21, 573-581 (1983). (2) Eric T. Hsieh, and James C. Randall, Monomer Sequence Distributions in Ethylene-1-Hexene Copolymers, Macromolecules, 15, 1402-1406 (1982)。
【0055】
ブテン(B)の相対的分散度(MDrelative(B))は、以下の式に従って計算される:
【0056】
【数2】

【0057】
上記式において、[PB]は、分子鎖中における、プロピレンの単量体単位と結合しているブテン−1の単量体単位の数を表す;[B]は、分子鎖中における、ブテン−1の単量体単位の合計数を表す;MDobserved(B)は、分子鎖中におけるブテン−1モノマーの分散率であり、MDrandom(B)は、理想的なランダム分散率であり、MDrelative(B)は、ブテン−1の相対的分散度である;そして、MDobserved(B)、MDrandom(B)およびMDrelative(B)は、単位%にて計算されたものである。
2. キシレン可溶物の含有量:ASTM D5492−98に従って測定される。
3. メルトインデックス(MFR):2.16kgの荷重下で230℃にてISO1133に従って、測定される。
4. 分子量分布指標Mw/Mn:サンプルの分子量分布は、PL−GPC 220ゲル濾過クロマトグラフィー分析器(Polymer Laboratories Co.(イギリス)にて製造)をIR5検出器(Polychar Corp.(スペイン)にて製造)と組み合わせて用いることによって、以下の条件およびパラメータにて測定される:
クロマトグラフカラムとして直列に連結された3つのPlgel 10μm MIXED−B、溶媒および移動相として1,2,4−トリクロロベンゼン(酸化防止剤である2,6−ジ−ブチル p−クレゾールを0.3g/1000ml含んでいる)、カラム温度150℃、流速1.0ml/分、較正曲線として用いる狭い分布のポリスチレン基準サンプルとしてEasiCal PS−1(PL Co.にて製造)。
5. 加熱たわみ温度(HDT):ASTM D648に従って測定される。
6. ヘイズ:ASTM D1003に従って測定される。
7. n−ヘキサン抽出物:GB/T5009.58に従って測定される。
【0058】
上記測定は全て、何も指示がない限り、室温条件下にて行われる。
【0059】
[実施例1]
重合反応は、試験的生産工場にて行った。主な装置として、予備錯形成反応器、半重合反応器、およびループ型反応器を含む。重合方法および重合のステップは以下の通りである。
【0060】
(1)予備錯形成反応
主触媒(活性化したチタンを含んでいる固体触媒成分)を、中国特許第1258683A号明細書の実施例1に記載されている方法を用いて得た。ここで、内部電子供与体化合物(internal electron donor compound)は、フタル酸ジイソブチルであった。得られた主触媒は、1.93重量%のTi、19.8重量%のマグネシウム、および9.3重量%のフタル酸ジイソブチルを含んでいた。
【0061】
上記主触媒、共触媒(トリエチルアルミニウム)、および外部電子供与体(external electron donor)(メチルシクロヘキシルジメトキシシラン)をそれぞれ異なる配管から、二重に連続している攪拌タンク(a jacketed continuous stirred tank)に仕込み、予備錯形成反応を行った。上記予備錯形成の温度をジャケットの水(the jacketed water)を用いて8℃となるように制御し、種々の反応媒体を底から加え、オーバーフローさせることによって置換した。ヘキサンを用いて、共触媒および外部電子供与体を希釈し、これにより、これら2つの材料の体積流量を制御し、さらに予備錯形成反応器での滞留時間を1分間に制御した。
【0062】
(2)半重合反応
半重合を行うために、プロピレンを10℃まで冷却した予備錯形成の触媒を連続的に半重合反応器に仕込んだ。上記半重合反応器は、全荷重にて操作される、連続的に攪拌されるタンクである。上記半重合を、プロピレンのバルク液相中にて行った(上記半重合の温度および時間を表1に示す)。これらの条件下にて、上記触媒による半重合の多発性は、約80〜120倍であった。
【0063】
(3)プロピレン−ブテン−1の共重合
上記半重合された触媒をループ型反応器に仕込み、プロピレン−ブテン−1の共重合を行った。上記重合反応の温度は、70℃であり、反応圧力は、4.0MPaであった。
【0064】
ループ型反応器に加えたブテン−1および水素の量を表1に示す。
【0065】
上記ループ型反応器から取り出したポリマーを、フラッシュエバポレーションにかけ、プロピレンを分離し、次いで、湿った窒素に通過させて未反応の触媒の活性を除去し、続けて熱を用いて乾燥させた。最後に、ポリマーの粉末を得た。
【0066】
得られたポリマーの粉末100重量部に対して、0.1重量部のIRGAFOS 168添加剤(Ciba Specialty Chemicals)、0.2重量部のIRGANOX 1010添加剤(Ciba Specialty Chemicals)、および0.05重量部のステアリン酸カルシウム(Ciba Specialty Chemicals)をそれぞれ加え、次いで二軸押出機を用いて顆粒化し、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーのペレットを得た。上記コポリマーの性能を試験し、その結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
上記触媒の予備錯形成の時間を変更した以外は実施例1に記載の手順にて行った。上記重合条件および上記ポリマーの性能を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
ブテン−1の量、水素の量、および触媒の予備錯形成の時間を変更した以外は、実施例1に記載の手順にて行った。上記重合条件およびポリマーの性能を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
ブテン−1の量、および触媒の予備錯形成の時間を変更した以外は、実施例1に記載の手順にて行った。上記重合条件およびポリマーの性能を表1に示す。
【0070】
[比較例1]
上記触媒を予備錯形成に晒さないことを除いて、実施例1に記載の手順にて行った。主触媒、共触媒(トリエチルアルミニウム)、外部電子供与体(メチルシクロヘキシルジメトキシシラン)を別々に半重合反応器に直接的に仕込んだ。重合条件および上記ポリマーの性能を表1に示す。
【0071】
[比較例2]
上記触媒を予備錯形成に晒さないことを除いて、実施例4に記載の手順にて行った。主触媒、共触媒(トリエチルアルミニウム)、外部電子供与体(メチルシクロヘキシルジメトキシシラン)を別々に半重合反応器に直接的に仕込んだ。重合条件および上記ポリマーの性能を表1に示す。
【0072】
[比較例3]
主触媒(チタンを含んでいる固体の活性中心化合物)を、中国特許第200410062291.3号明細書の実施例1(実施例1に記載の「Preparation of Particles of Magnesium Chloride/Alcohol Adduct」の内容、および実施例1の前に記載の「General Procedure for Preparing a Spheric Catalyst Component」の内容を含む)に記載されている方法を用いて得た。ここで、内部電子供与体化合物は、フタル酸ジ−n−ブチルであった。得られた主触媒は、2.4重量%のTi、18.0重量%のマグネシウム、および13重量%のフタル酸ジ−n−ブチルを含んでいた。
【0073】
他の操作は、実施例4に記載の手順にて行った。重合条件および上記ポリマーの性能を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記データから分かるように、本発明の選択される触媒に関して、予備錯形成処理を行っていない上記触媒を用いて得られたプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーと比較して、予備錯形成処理を行った上記触媒を用いて得られたプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーは、ブテン−1の相対的分散度が非常に増加し、そして室温におけるキシレン可溶物の含有量が非常に減少していた。ブテン含有量が同じ場合、上記コポリマーは、同等の透明性を有していたが、加熱たわみ温度が上昇した。これにより、上記材料の耐熱性が改善されたことが実証された。さらに、上記予備錯形成時間を長くすると、上記効果がさらに改善され得ることが分かった。比較例3および実施例4のデータから分かるように、予備錯形成は、本発明の選択される触媒の得られる性能に非常に大きな影響を与えた、すなわち、本発明の選択される触媒および予備錯形成は、相乗効果を生み出した。
【0076】
[実施例5(本発明の組成物)]
得られたポリマーの粉末100重量部に対して、0.3重量部の核剤Millad 3988(Milliken Chemical Company, Ltd.)、0.1重量部のIRGAFOS 168添加剤(Ciba Specialty Chemicals)、0.2重量部のIRGANOX 1010添加剤(Ciba Specialty Chemicals)、および0.05重量部のステアリン酸カルシウム(Ciba Specialty Chemicals)をそれぞれ加え、次いで二軸押出機を用いて顆粒化することを除いて、実施例1〜4および比較例1〜3の手順を繰り返し、これにより、組成物1〜4(組成物1〜4)および比較組成物1〜3(比較組成物1〜3)のペレットを得た。上記組成物の性能を表2に示した。
【0077】
【表2】

【0078】
表2のデータから分かるように、核剤を添加した後に、ブテン−1のより高い相対的分散度、およびキシレン可溶物のより低い含有量を有している上記プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーから調製された上記組成物は、より優れた透明性および耐熱性、並びに浮遊物のより低い含有量を有していた。
【0079】
[実施例6(本発明の食品包装容器)]
本発明の食品包装容器を、射出成形プロセスによって生産した。このプロセスにおいて、実施例5にて調製した組成物1のペレットを、温度自動調節のオーブンを用いて90℃の温度で4時間にわたって乾燥させた。均一に加熱することによって、射出する機械のシリンダー中において、上記材料を溶融状態に変化させた。特定の圧力下および特定の射出速度下にて、規定した量の溶融された材料を型穴に射出し、状態を維持しながら加圧し、次いで、成形された物品が固化するまで冷却した。射出成形プロセス全体において、以下のパラメータおよび条件を適用した:射出する機械の温度は190℃〜220℃、射出圧力は50〜60MPa、滞留圧力は50〜60MPa、滞留時間は30〜40秒間、冷却時間は15〜20秒間、および金型温度は35〜45℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブテン−1の含有量が、1〜6モル%、好ましくは3〜6モル%であり、NMR測定にて確定されるブテン−1の相対的分散度が、98.5%よりも高く、好ましくは99.0%よりも高いことを特徴とする、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項2】
室温におけるキシレン可溶物の含有量が、以下の適切な境界「Y=0.77+0.252X」よりも低く、上記Yは、室温におけるキシレン可溶物の重量パーセントであり、上記Xは、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー中のブテン−1のモルパーセントであることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項3】
2.16kgの荷重下で230℃にて測定したメルトインデックスが、0.5〜50g/10分間、好ましくは2〜30g/10分間であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項4】
GPCにより測定した分子量分布指標Mw/Mnが、3.5〜8、好ましくは3.8〜6であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項5】
主触媒成分A、共触媒成分Bおよび外部電子供与成分Cを含んでいるチーグラー・ナッタ触媒を用いた共重合によって得られるプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーであって、上記成分Aが、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系に溶解しているハロゲン化マグネシウムによって得られる、チタンおよび多塩基性カルボン酸エステルを含んでいる固体触媒成分であり;
上記成分Bが、一般化学式AlR3−nを有するアルキルアルミニウム化合物であり、ここでRは水素または1〜20の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲンであり;並びに、
上記成分Cが、一般化学式RSi(OR’)4−nを有する有機ケイ素化合物であり、ここでnは0≦n≦3であり、RおよびR’は、同じかまたは異なる、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはハロゲン化されているアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項6】
上記溶媒系において、上記ハロゲン化マグネシウム1モルを基準として、上記有機エポキシ化合物の量が0.2〜5モルであり、上記有機リン化合物に対する上記有機エポキシ化合物のモル比が0.9〜1.6であることを特徴とする、請求項5に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項7】
チタンに対するアルミニウムのモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Bのモル比が、5〜1000であり、チタンに対するケイ素のモル比を測定することによる、上記成分Aに対する上記成分Cのモル比が、2〜100であることを特徴とする、請求項5または6に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項8】
上記主触媒成分Aが、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系にハロゲン化マグネシウムが溶解し、均一な溶液を形成し、上記溶液をハロゲン化チタンまたはその誘導体と混合して、沈殿剤の存在下にて固体を沈殿させ、多塩基性カルボン酸エステルを用いて上記固体を処理し、上記固体上に多塩基性カルボン酸エステルを蒸着させ、そして次いで、四ハロゲン化チタンおよび不活性希釈剤を用いて上記固体を処理することによって得られ、ここで上記沈殿剤が、有機酸無水物、有機酸、エーテルおよびケトンから選択される1つであることを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項9】
上記成分Aを調製するために有用であるハロゲン化マグネシウムから形成される均一な溶液において、ハロゲン化マグネシウム1モルを基準として、有機エポキシ化合物の量が、0.6〜2モルであり;有機リン化合物に対する有機エポキシ化合物のモル比が、0.9〜1.4であり;不活性希釈剤の量が、1200〜2400mlであることを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項10】
上記成分Aを調製するために有用である上記ハロゲン化マグネシウムが、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムと水またはアルコールとの混合物、およびジハロゲン化マグネシウムの分子式中の1つのハロゲン原子を炭化水素基、ハロヒドロカルビルオキシ基またはその混合物に置き換えることによって得られる誘導体から選択される1つであることを特徴とする、請求項5〜9の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項11】
上記成分Aを調製するために有用である上記有機エポキシ化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブタジエンオキシド、ブタジエンジオキシド、エピクロルヒドリン、メチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物から選択される1つであることを特徴とする、請求項5〜10の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項12】
上記成分Aを調製するために有用である上記有機リン化合物が、トリメチルo−ホスフェート、トリエチルo−ホスフェート、トリブチルo−ホスフェート、トリフェニルo−ホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、ベンジルホスファイトまたはそれらの混合物から選択される1つであることを特徴とする、請求項5〜11のいずれか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項13】
上記成分Aを調製するために有用である上記沈殿剤が、酸無水物、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテルまたはそれらの混合物から選択される1つであることを特徴とする、請求項8〜12の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項14】
上記成分Aを調製するために有用である上記多塩基性カルボン酸エステルが、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソオクチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、ナフタレンジカルボン酸ジエチル、ナフタレンジカルボン酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリブチル、ヘミメリト酸トリエチル、ヘミメリト酸トリブチル、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラブチルから選択される1つであることを特徴とする、請求項5〜13の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項15】
上記成分Aを調製するために有用である上記ハロゲン化チタンまたはその誘導体が、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシチタン、モノクロロトリエトキシチタン、ジクロロジエトキシチタン、トリクロロモノエトキシチタン、またはそれらの組み合わせから選択される1つであることを特徴とする、請求項8〜14の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項16】
上記触媒成分Aを調製するための方法が、以下のステップを包含していることを特徴とする、請求項5〜15の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー:
1. ハロゲン化マグネシウムを、0〜100℃の温度にて、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系に攪拌しながら溶解させ、透明な均一の溶液を形成するステップ;
2. 沈殿剤の存在下および−35〜60℃の温度にて、チタン化合物を上記ハロゲン化マグネシウム溶液に加え、または上記ハロゲン化マグネシウム溶液をチタン化合物に加え、そしてさらに、固体が沈殿する前後に多塩基性カルボン酸エステルを加えることを必要とし、その結果、沈殿した上記固体を処理し、上記多塩基性カルボン酸エステルを部分的に上記固体に蒸着させるステップ;
3. その反応混合液を60〜110℃の温度まで加熱し、その懸濁液を上記温度にて10分間〜10時間にわたって攪拌するステップ;
4. 上記攪拌を終了した後に、上記固体をその混合溶液から沈殿させ、続けて濾過し、母液を除去し、トルエンおよびヘキサンを用いて上記固体を洗浄し、チタンを含んでいる上記固体触媒成分Aを得るステップ。
【請求項17】
上記3つの触媒成分A、BおよびCが、予備錯形成および必要に応じて半重合され、次いで反応器に加えられることを特徴とする、請求項5〜16の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項18】
上記予備錯形成の温度が、−10〜60℃の範囲、好ましくは0〜30℃の範囲にて制御されることを特徴とする、請求項17に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項19】
上記予備錯形成の時間が、0.1〜100分間、好ましくは1〜30分間であることを特徴とする、請求項17または18に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項20】
プロピレンおよびブテン−1の共重合が液相ループ型反応器にて行われることを特徴とする、請求項5〜19の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを調製するための方法であって、主触媒成分A、共触媒成分Bおよび外部電子供与成分Cを含んでいるチーグラー・ナッタ触媒の存在下にて、重合温度にて適切な水素含有量を用いて、反応器中に加えられる、コモノマーであるブテン−1の量を調整することによって、プロピレンおよびブテン−1が共重合される方法であり、
上記成分Aが、有機エポキシ化合物、有機リン化合物および不活性希釈剤からなる溶媒系に溶解しているハロゲン化マグネシウムによって得られる、チタンおよび多塩基性カルボン酸エステルを含んでいる固体触媒成分であり;
上記成分Bが、一般化学式AlR3−nを有するアルキルアルミニウム化合物であり、ここでRは水素または1〜20の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲンであり;並びに、
上記成分Cが、一般化学式RSi(OR’)4−nを有する有機ケイ素化合物であり、ここでnは0≦n≦3であり、RおよびR’は、同じかまたは異なる、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはハロゲン化されているアルキル基であることを特徴とする方法。
【請求項22】
上記3つの触媒成分A、BおよびCが、予備錯形成および必要に応じて半重合され、次いで反応器に加えられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜20の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーを含む、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物であって、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーの100重量部(100 parts by weight)に対して、核剤が、0.1〜1重量部、好ましくは0.2〜0.4重量部であることを特徴とする、プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物。
【請求項24】
上記核剤が、Millad 3988核剤、ADK NA−21核剤およびMillad NX8000核剤であることを特徴とする、請求項23に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物。
【請求項25】
溶解射出成形によって上記組成物から形成される、1mmの厚さを有するシートが、10%よりも小さいヘイズ、好ましくは8%よりも小さいヘイズであることを特徴とする、請求項23または24に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物。
【請求項26】
上記組成物が、95℃よりも高い加熱たわみ温度、好ましくは100℃よりも高い加熱たわみ温度、より好ましくは105℃よりも高い加熱たわみ温度を有することを特徴とする、請求項23〜25の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物。
【請求項27】
請求項23〜26の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物を調製するための方法であって、核剤および必要に応じて他の添加剤を用いて、上記プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーの粉末を溶融混合するステップを包含する方法。
【請求項28】
請求項1〜20の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー、または請求項23〜27の何れか一項に記載のプロピレン−ブテン−1ランダムコポリマー組成物によって形成される、食品包装容器。

【公開番号】特開2013−100499(P2013−100499A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−238183(P2012−238183)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(510016575)中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院 (8)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
【Fターム(参考)】