説明

プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法

【課題】溶融張力と流動性のバランスに優れるプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を、簡易に製造すること。
【解決手段】チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与体(C)と、を接触して得られる固体触媒の存在下に、プロピレンを単独重合またはプロピレンとオレフィン(但し、プロピレンを除く。)とを共重合する、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法であって、前記固体触媒の残余重合活性が5〜45%である時に、水素添加触媒(D)をさらに添加し、前記プロピレン単独重合体または前記プロピレン系ランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210に従って、温度230℃、荷重2.16Kgfで測定)が1〜20(g/10分)であることを特徴とする、前記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法に関するものである。更に詳しくは、溶融張力が高いプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を、固体触媒成分と水素添加触媒を用いて簡易に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体は、剛性、透明性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、各種成形分野に広く用いられている。しかしながら、溶融張力が低いため、ブロー成形、シート成形、ラミネート成形、発泡成形等へ適用するためには、更なる溶融張力の改良が望まれていた。一般的に、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の流動性(MFR)を小さくすれば、溶融張力が大きくなることが知られているが、前述の用途には加工性を鑑みた最適なMFR領域が存在する。したがって、各用途に最適なMFRを有し、かつ、高い溶融張力を有するプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を得ることが求められていた。
一方、固体触媒成分と水素添加触媒を用いてポリプロピレンを製造する方法が知られている。例えば、固体触媒成分の一成分として水素添加触媒を用いる方法が知られている(特許文献1〜4参照)。また、固体触媒成分を用いた重合の初期段階で水素添加触媒を添加してポリプロピレンを製造する方法も知られている(特許文献5〜7参照)。さらに、多段重合における最終段において水素添加触媒を共存させて特定の構造を有するポリプロピレンを製造する方法も知られている(特許文献8参照)。
しかしながら、特許文献1〜7に記載された方法は、水素添加触媒を固体触媒成分の一成分として使用、あるいは重合初期段階で添加する方法であるため、重合活性の著しい低下、最終生成物の使用に耐えない高分子量化などが懸念される。また、特許文献8に記載された方法は、多段重合の最終段への水素添加触媒の添加するため、単段の反応槽しか持たない製造設備においてはこの方法は使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−289003号明細書
【特許文献2】特開平3−70710号明細書
【特許文献3】特開平4−110308号明細書
【特許文献4】特開平4−222804号明細書
【特許文献5】特開平3−91511号明細書
【特許文献6】特開平8−151408号明細書
【特許文献7】特開平10−251314号明細書
【特許文献8】特開2004−175976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる事情に鑑み、本発明は、溶融張力と流動性のバランスに優れるプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を、簡易に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、
有機アルミニウム化合物(B)と、
電子供与体(C)と、
を接触して得られる固体触媒の存在下に、プロピレンを単独重合またはプロピレンとオレフィン(但し、プロピレンを除く。)とを共重合する、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法であって、前記固体触媒の残余重合活性が5〜45%である時に(固体触媒の最終重合活性を100%とする)、
水素添加触媒(D)をさらに添加し、
前記プロピレン単独重合体または前記プロピレン系ランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210に従って、温度230℃、荷重2.16Kgfで測定)が1〜20(g/10分)であることを特徴とする、前記製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、溶融張力と流動性のバランスに優れるプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を、簡易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0008】
[固体触媒成分(A)]
本発明に用いる固体触媒成分(A)としては、オレフィン重合に用いられる公知の重合触媒を使用することができ、チーグラーナッタ系触媒(例えば、特開昭57−63310号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭61−78803号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開昭62−158704号公報、特開平11−92518号公報に記載されている。)、又はメタロセン系触媒(特開平5−155930号公報、特開平9−143217号公報、特開2002−293817号公報、特開2003−171412号公報、特表平8−511044号公報、特開2001−31720号公報に記載されている。)を挙げることができる。
【0009】
チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子を含有する固体触媒成分(A)の調製方法としては、以下(1)〜(5)の方法を例示することができる。
(1)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを接触させる方法。
(2)ハロゲン化マグネシウム化合物と、電子供与性化合物と、チタン化合物とを接触させる方法。
(3)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを電子供与性溶媒に溶解させて溶液を得、次いで、該溶液を担体物質に含浸させる方法。
(4)ジアルコキシマグネシウム化合物と、ハロゲン化チタン化合物と、電子供与性化合物とを接触させる方法。
(5)マグネシウム原子、チタン原子および炭化水素オキシ基を含有する固体成分と、ハロゲン化化合物と、電子供与性化合物および/または有機酸ハライドとを接触させる方法。
なかでも(5)の方法により得られる固体触媒成分が好ましく、電子供与性化合物としてフタル酸エステル化合物を含有する固体触媒成分であることがより好ましい。
【0010】
オレフィン重合用触媒としてメタロセン系触媒を用いる場合は、メタロセン化合物としては、下記一般式[1]で表されるメタロセン化合物であるのが好ましい。
CpnMX4-n [1]
(式中、Cpは置換若しくは無置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基又はフルオレニル基から選ばれる基、Mはジルコニウム、ハフニウムから選ばれる元素、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜10個のアルキル基、又はアリーロキシ基から選ばれる基、複数のCpおよびXは互いに架橋基を介して結合してもよい。nは、1〜3の整数を表す。)
【0011】
[有機アルミニウム化合物(B)]
有機アルミニウム化合物(B)としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、アルミニウムアルコキシド、アルモキサン等が挙げられる。
【0012】
トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等が挙げられる。
アルキルアルミニウムハイドライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等が挙げられる。
アルモキサンとしては、例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0013】
これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムがより好ましい。
【0014】
[電子供与体(C)]
電子供与体(C)としては、下記一般式[2]で表されるケイ素化合物が好ましく用いられる。
1rSi(OR24-r [2]
(式中、R1は、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、又はヘテロ原子を含有する基を表し、R2は、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは、0〜3の整数を表す。R1が複数ある場合は、複数のR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。R2が複数ある場合は、複数のR2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0015】
1の炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素原子数1〜20の分岐鎖状アルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルケニル基、炭素原子数1〜20のアリール基等が挙げられる。
【0016】
炭素原子数1〜20の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0017】
1のヘテロ原子を含有する基としては、例えば、酸素原子を含有する基、窒素原子を含有する基、硫黄原子を含有する基、リン原子を含有する基等が挙げられる。具体的には、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、パーヒドロインドリル基、パーヒドロイソインドリル基、パーヒドロキノリル基、パーヒドロイソキノリル基、パーヒドロカルバゾリル基、パーヒドロアクリジニル基、フリル基、ピラニル基、パーヒドロフリル基、チエニル基等が挙げられ、これらの中でも、ヘテロ原子がアルコキシケイ素化合物のケイ素原子と直接化学結合できる置換基が好ましい。
【0018】
2の炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、R1の炭素原子数1〜20の炭化水素基として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0019】
電子供与体(C)の好ましい具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、((パーヒドロキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、又は(パーヒドロイソキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0020】
[水素添加触媒(D)]
水素添加触媒(D)とは、オレフィン性不飽和二重結合を選択的に水素化する能力を持つ触媒である。気相反応器内に存在する水素は、プロピレンやエチレンなどのオレフィンと反応し、プロパンやエタンとなって除去される。水素添加触媒としては、公知の水素添加触媒が挙げられる。例えば、チタン原子、白金原子、パラジウム原子、パラジウム原子−クロム原子、ニッケル原子、ルテニウム原子を含有する化合物、具体的には、(イ)前記金属、(ロ)前記金属の酸化物、(ハ)前記金属のハロゲン化物、(ニ)上記の(イ)、(ロ)、(ハ)等をシリカ、アルミナ等の多孔質担体に担持させた化合物、等が挙げられる。
【0021】
ニッケル原子を含有する化合物としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、テトラキス(ジエチルフェニルホスフォナイト)ニッケル、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフルオロホスフィン)ニッケル等が挙げられる。
【0022】
チタン原子を含有する化合物としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を配位子に持つチタノセン化合物、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、チオアリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、下記一般式[3]で表される基、下記一般式[4]で表される基、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を配位子に持つ非チタノセン化合物が挙げられる。
【0023】
33P=N− [3]
(式中、R3は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、シリル基、アミノ基を表し、3つのR3は互いに同じであっても異なっていても良く、それら2つ以上が互いに結合していても良く、環を形成していても良い。)
【0024】




[4]




(式中、R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基を表し、複数のR4は互いに同じであっても異なっていても良く、それら2つ以上が互いに結合していても良く、環を形成していても良い。)
【0025】
上記(イ)、(ロ)、(ハ)等をシリカ、アルミナ等の多孔質担体に担持させた化合物としては、例えば、Pd/Al23、Pd/SiO2・Al23、Pd/SiO2、Pt/Al23、等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、チタノセン化合物が好ましい。チタノセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジヨージド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルオリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロルブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェノキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド等が挙げられる。
【0027】
水素添加触媒(D)としては、液状又は溶媒に可溶な状態のものが好ましい。
【0028】
水素添加触媒(D)は、還元剤と組み合わせて用いることもできる。還元剤としては、例えば、有機アルミニウム化合物(B)、有機リチウム化合物、有機マグシウム化合物、有機亜鉛化合物等を挙げることができる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物(B)と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0029】
水素添加触媒(D)は、固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、電子供与体(C)を接触して得られる固体触媒の残余重合活性が5〜45%である時に、重合系に添加される(固体触媒の最終重合活性を100%とする)。残余重合活性が17〜45%である時に添加されるのが好ましく、17〜43%である時に添加されるのがより好ましい。
【0030】
ここでいう重合活性とは、生成したプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の重量(g)を、使用した固体触媒成分(A)の重量(g)で除した値である。また、水素添加触媒(D)添加時の固体触媒の残余重合活性は、以下のようにして求めることができる。重合活性(I)は、水素添加触媒(D)を添加する時の固体触媒の重合活性である。最終重合活性とは、水素添加触媒(D)を添加して重合を終了した時の固体触媒の重合活性である。
水素添加触媒(D)添加時の固体触媒の残余重合活性(%)
=(最終重合活性−重合活性(I))/最終重合活性×100
水素添加触媒(D)添加時の重合活性(I)は、水素添加触媒(D)添加時の重合活性(I)=水素添加触媒(D)添加時のポリマー生成量(I)×最終重合活性/100で算出できる。
【0031】
還元剤、とりわけ有機アルミニウム化合物(B)に含まれるAl原子のモル数と水素添加触媒(D)、とりわけチタノセン化合物に含まれるTi原子のモル数の比(Ti/Al(モル/モル))は、0.1〜2.0であるのが好ましく、0.15〜1.8であるのがより好ましく、0.2〜1.5であるのが更に好ましい。
Ti/Alモル比が0.1未満の場合、十分な水素除去効果が得られないため、所望の高分子量体が生成せず、得られたプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体溶融張力が低い場合がある。また、Ti/Alモル比が2.0を超えた場合、水素添加触媒(D)添加後に重合活性が急激に低下し、所望の高分子量成分割合が生成せず、得られたプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の溶融張力が低い場合がある。
【0032】
水素添加触媒(D)は、不活性有機溶媒で希釈してフィードすることができる。この際、水素添加触媒(D)は還元剤とあらかじめ接触しておいてもよい。前記の不活性有機溶媒とは、溶媒が水添反応のいかなる関与体とも反応しないものを意味する。好適な溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類やその異性体、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類やその誘導体、が挙げられる。
【0033】
本発明に用いる水素添加触媒(D)としては、チタノセン化合物を含むものであるのが好ましく、チタノセン化合物と還元剤とを接触させてなる化合物であるのがより好ましく、チタノセン化合物と有機アルミニウム化合物(B)とを接触させてなる化合物であるのが更に好ましい。
【0034】
本発明の製造方法は、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法である。本発明において使用されるプロピレン以外のオレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が例示できるが、所望重合体製品の種類によって決定される。多段重合の場合は、各段で同じ重合体を製造しても良いし、組成の異なる重合体を製造しても良い。
【0035】
プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体のメルトフローレート(MFR、JIS K7210、温度230℃、荷重2.16Kgf)は1〜20g/10分であり、好ましくは1.5〜15g/10分、さらに好ましくは2〜13g/10分の範囲にある。メルトフローレートが1g/10分未満でも、20g/10分より大きくても、シート成形、ブロー成形、発泡成形等の成形性が悪化する。
【0036】
プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量分布曲線が二峰性であることが好ましい。分子量分布曲線が二峰性とは、分子量分布曲線が二つの最大値または一つの最大値と広い肩を示すことを意味する。また、本発明のプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の重量平均分子鎖長(Aw)と数平均分子鎖長(An)の比(Aw/An)は17〜35であることが好ましく、より好ましくは18〜33、さらに好ましくは19〜31である。Aw/Anが17未満の場合は所望の溶融張力が得られず、35より大きい場合には低分子量領域への分子量分布の広がりが大きくなることが多く、メルトフローレート(MFR)が大きくなり加工性が悪化する。なお、平均分子鎖長は、平均分子量をQファクター(ポリマーのモノマー単位当たりの分子量をモノマー単位の伸張鎖長で除した値)で除した値である。
【0037】
プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体中の、水素添加触媒(D)添加後に生成する成分は、135℃テトラリン中で測定した極限粘度[η]が5.5〜10dl/g、好ましくは5.8〜9.0dl/g、さらに好ましくは6.0〜8.5dl/gであり、該成分は、15〜65重量%、好ましくは17〜63重量%、さらに好ましくは19〜62重量%の割合で含んでいる(プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体を100重量%とする)。
【0038】
本発明の製造方法は、バッチ重合プロセスにも連続重合プロセスにも適用できる。また、例えばメタロセン系触媒をプロピレン重合用触媒とする場合、生成オレフィン重合体は末端に不飽和結合を持つものとして得られることが多いが、そのような不飽和結合は一旦生成した飽和末端が脱水素されて形成されると考えられ、従って循環オレフィン中にはそのような水素が徐々に濃縮される可能性がある。よって、このような場合、単段の重合工程でその水素濃度を制御する技術として本発明が適用できる。
【0039】
また、本発明の製造方法は、重合条件の異なる複数の重合工程を有する多段重合においても必要となる場合がある。多段重合は、ひとつの反応器で重合条件を変化させて重合を行っても、直列に接続された重合条件の異なる複数の反応器で重合を行ってもよい。ひとつの反応器で後段水素濃度を前段と比較して効率良く低い条件とする場合、あるいは、複数の反応器での多段重合において、前段反応器から後段反応器にパウダーと共に流入する水素を効率良く低減させるために本発明が適用できる。
【0040】
重合温度はモノマーの種類、製品の分子量等によっても異なるが、オレフィン重合体の融点以下、好ましくは融点より10℃以上低い温度、更に好ましくは室温〜200℃程度、特に好ましくは40〜160℃程度、最も好ましくは60〜130℃程度である。また重合温度をこの範囲に維持するため、重合系は冷却器で冷却される。その他、重合圧力は、大気圧〜15MPa程度、好ましくは0.2〜7MPa程度、最も好ましくは1〜5MPa程度である。
【0041】
本発明においては、多段重合に適用する場合は、前段の気相部の水素濃度が30%以下の条件にすることが好ましい。水素濃度が30%を超える程高くても本発明の製造方法を実施する上で特に支障はないが、後段に持ち込まれる多量の水素により気相反応器内で生成するオレフィン水素化物(プロパン、エタン等)の濃度が高くなり、後段の重合活性が低下するので、余り高すぎるのは好ましくない。
【0042】
重合工程の前に少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)し、予備重合触媒成分としてもよい。予備重合されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が例示できる。予備重合されるオレフィンの量は、固体触媒成分(A)1g当たり、通常、0.1〜200gであり、該予備重合の方法としては、公知の方法があげられ、例えば、固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法があげられる。予備重合に用いられる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの不活性飽和炭化水素及び液状のオレフィンがあげられ、これらは2種類以上混合して用いてもよい。また、予備重合におけるスラリー濃度は、溶媒1L当たりに含まれる触媒成分の重量として、通常1〜500gであり、好ましくは3〜150gである。
【0043】
予備重合における有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)に含まれる遷移金属原子1モル当たり0.1〜700モルであり、好ましくは0.2〜200モルであり、より好ましくは0.2〜100モルである。予備重合において、必要に応じてアルコキシケイ素化合物などの電子供与体(C)を共存させてもよく、電子供与体(C)の使用量は、固体触媒成分(A)に含まれる遷移金属原子1モル当たり、好ましくは0.01〜400モルであり、より好ましくは0.02〜200モル、さらに好ましくは0.03〜100モルである。
【0044】
予備重合温度は、通常−20〜100℃であり、好ましくは0〜80℃である。また、予備重合時間は、通常2分〜15時間である。
【0045】
本発明の製造方法であるプロピレンの重合方法によって、得られるプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体は、溶融張力と流動性のバランスに優れるため、優れた力学特性を損なうことなく、加工性が良好である。この優れた特性によって、特にフィルム、シート、繊維、パイプ、発泡体、中空製品などに好適である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。なお、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の構造の測定、評価は、下記の方法で行った。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従って、温度230℃、荷重2.16Kgfで測定した。
(2)メルトテンション(MT、単位:g)
東洋精機社製溶融張力測定機を用い、下記条件にて測定した。
オリフィス:L/D=4(D=2mm)
予熱:10分
測定温度:190℃
押出速度:5.7mm/分
引取速度:100rpm
(3)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
(4)重量平均分子鎖長(Aw)及び数平均分子鎖長(An)
東ソー HLC8121GPC/HT GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。
測定温度:152℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
溶媒流速:1ml/分
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)/HT×3
溶液濃度:サンプル5mg/オルトジクロロベンゼン5ml
なお、平均分子鎖長は、平均分子量をQファクター(ポリマーのモノマー単位当たりの分子量をモノマー単位の伸張鎖長で除した値)で除した値である。
(5)水素添加触媒(D)添加時の固体触媒の残余重合活性(%)
下記計算式(1)により求めた。重合活性(I)は、水素添加触媒(D)を添加する時の固体触媒の重合活性である。
(最終重合活性−重合活性(I))/最終重合活性×100・・・ 式(1)
(6)水素添加触媒(D)添加後に生成した成分の極限粘度([η]、単位:dl/g)
下記計算式(2)〜(4)により求めた。
・水素添加触媒(D)添加時のポリマー生成割合(I)(wt%)=
水素添加触媒(D)添加時の重合活性(I)/最終重合活性×100 ・・・ 式(2)
・水素添加触媒(D)添加後のポリマー生成割合(II)(wt%)=
100−(I) ・・・ 式(3)
・水素添加触媒(D)添加後に生成した成分の極限粘度=
(最終生成物の[η]−水素添加触媒(D)添加前の生成物の[η]×(I)/100
)/((II)/100) ・・・ 式(4)
実施例1
【0047】
(1)チタノセン化合物溶液の調製
内容積100mLのフラスコを窒素で置換した。この容器内にジシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド(関東化学製)40.2μmol、ヘプタン30mLを投入すると共に室温で攪拌し、トリエチルアルミニウム2.0mmolを投入して溶液を得た。
【0048】
(2)固体触媒成分(A)の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、ヘキサン800L、フタル酸ジイソブチル6.8Kg、テトラエトキシシラン350Kgおよびテトラブトキシチタン38.8Kgを投入し、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1mol/L)900Lを反応器の温度を7℃に保ちながら5時間かけて滴下した。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体をトルエン1100Lでの洗浄を3回繰り返し、スラリーの全体積が625Lとなるようにトルエンを加えた。その後、得られたスラリーを、攪拌下70℃で1時間加熱処理し、室温まで冷却し、固体物質のスラリーを得た。
該スラリーの一部を減圧乾燥して得た乾燥固体物質の組成分析を行ったところ固体物質中にはチタン原子が2.1重量%、エトキシ基が38.9重量%、ブトキシ基が3.4重量%含有されていた(乾燥固体物質を100重量%とする)。また、この固体物質中のチタン原子の原子価は3価であった。
【0049】
工程1
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換したのち、上記で得た固体物質のスラリーを、乾燥固体物質8gを含む量だけ投入し、スラリーの全体積が26.5mLとなるように上澄み液を抜き取った。40℃で四塩化チタン16.0mL、ジブチルエーテル0.8mLの混合物を投入し、さらにフタル酸クロライド2.0mLとトルエン2.0mLの混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を115℃で4時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、固体成分を得た。
【0050】
工程2
該固体成分を115℃でトルエン40mLで3回洗浄を行った。
工程3
該洗浄された固体成分に、スラリーの体積が26.5mLとなるようにトルエンを加えた。そこへジブチルエーテル0.8mL、フタル酸ジイソブチル0.45mLと、四塩化チタン6.4mLの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、固体成分を得た。
【0051】
工程2の繰り返し
該固体成分を105℃でトルエン40mLで2回洗浄を行った
工程3の繰り返し
該洗浄された固体成分に、スラリーの体積が26.5mLとなるようにトルエンを加え105℃とした。そこへジブチルエーテル0.8mL、四塩化チタン6.4mLの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、固体成分を得た。
【0052】
工程2のさらなる繰り返し
該固体成分を105℃でトルエン40mLで2回洗浄を行った。
工程3のさらなる繰り返し
該洗浄された固体成分に、スラリーの体積が26.5mLとなるようにトルエンを加え105℃とした。そこへジブチルエーテル0.8mL、四塩化チタン6.4mlの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、固体成分を得た。
【0053】
工程4
該固体成分を105℃でトルエン40mLで6回洗浄し、室温でヘキサン40mLで3回洗浄を行った。これを減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
【0054】
該固体触媒成分中には、チタン原子1.6重量%、エトキシ基0.06重量%、ブトキシ基0.15重量%、フタル酸ジエチル7.6重量%、フタル酸エチルノルマルブチル0.8重量%、フタル酸ジイソブチル2.5重量%が含有されていた(固体触媒成分を100重量%とする)。
【0055】
(3)プロピレンの重合
減圧乾燥後、アルゴンで置換、再度減圧した内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブに、トリエチルアルミニウム4.4mmol、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン0.5mmolおよび(2)で調整した固体触媒成分(A)7.0mgを加えた後、水素1.77MPa、プロピレン780gを投入し、オートクレーブ内温を70℃に昇温、20分重合を行った。
あらかじめ、この時点で終了する重合を行った結果、固体触媒成分1g当たりのプロピレン単独重合体の収量(以下、PP/Cat)は、17,200(g/g)、得られたプロピレン単独重合体の[η]は0.91(dl/g)であった。
20分経過後、(1)で調整したチタノセン化合物溶液の半分の量をオートクレーブ内に圧入し、120分重合を継続した。重合終了後、オートクレーブ内の未反応モノマーをパージし、プロピレン単独重合体を回収、60℃で5時間、減圧乾燥して、196gのプロピレン単独重合体パウダーを得た。重合結果は、PP/Cat=28,000(g/g)、[η]=3.02(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0056】
実施例2
固体触媒成分(A)の使用量を5.2mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。138gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=26,400(g/g)、[η]=3.25(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0057】
実施例3
固体触媒成分(A)の使用量を6.4mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量、チタノセン化合物溶液添加後の重合時間を60分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。136gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=21,300(g/g)、[η]=2.26(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0058】
比較例1
固体触媒成分(A)の使用量を6.6mg、チタノセン化合物溶液の使用量を1/20量とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。266gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=40,400(g/g)、[η]=1.17(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0059】
比較例2
固体触媒成分(A)の使用量を5.7mg、チタノセン化合物溶液の使用量を1/10量とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。202gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=35,400(g/g)、[η]=1.76(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0060】
比較例3
固体触媒成分(A)の使用量を7.1mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量、チタノセン化合物溶液添加後の重合時間を30分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。144gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=20,200(g/g)、[η]=1.53(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0061】
比較例4
固体触媒成分(A)の使用量を9.3mg、チタノセン化合物溶液を使用しない、水素添加量を0.02MPa、全重合時間を60分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。179gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=19,200(g/g)、[η]=3.30(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0062】
比較例5
固体触媒成分(A)の使用量を10.0mg、チタノセン化合物溶液を使用しない、水素添加量を0.06MPa、全重合時間を60分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。298gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=29,800(g/g)、[η]=2.13(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0063】
比較例6
固体触媒成分(A)の使用量を9.1mg、チタノセン化合物溶液を使用しない、水素添加量を0.26MPa、全重合時間を60分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。271gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=29,700(g/g)、[η]=1.53(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0064】
比較例7
固体触媒成分(A)の使用量を8.2mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量とし、重合開始と同時に添加、全重合時間を140分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。161gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=19,600(g/g)、[η]=6.94(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0065】
比較例8
固体触媒成分(A)の使用量を9.5mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量とし、重合開始と同時に添加、全重合時間を80分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。140gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=14,700(g/g)、[η]=6.25(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0066】
比較例9
固体触媒成分(A)の使用量を10.5mg、チタノセン化合物溶液の使用量を全量とし、重合開始と同時に添加、全重合時間を50分とした以外は、実施例1の(3)と同様の重合を行った。120gのプロピレン単独重合体パウダーを得て、重合結果は、PP/Cat=11,500(g/g)、[η]=5.57(dl/g)であった。重合結果を表1に、プロピレン単独重合体の構造を表2に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、
有機アルミニウム化合物(B)と、
電子供与体(C)と、
を接触して得られる固体触媒の存在下に、プロピレンを単独重合またはプロピレンとオレフィン(但し、プロピレンを除く。)とを共重合する、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体の製造方法であって、前記固体触媒の残余重合活性が5〜45%である時に(固体触媒の最終重合活性を100%とする)、
水素添加触媒(D)をさらに添加し、
前記プロピレン単独重合体または前記プロピレン系ランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210に従って、温度230℃、荷重2.16Kgfで測定)が1〜20(g/10分)であることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記固体触媒の残余重合活性が17〜45%である時に(固体触媒の最終重合活性を100%とする)、水素添加触媒(D)をさらに添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水素添加触媒(D)がチタン原子を含有する化合物であり、
前記有機アルミニウム化合物(B)に含まれるAl原子のモル数に対する、前記水素添加触媒(D)に含まれるTi原子のモル数の比(Ti/Al(モル/モル))が0.1〜2.0の範囲となるように、前記水素添加触媒(D)を添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体が、
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量分布曲線が二峰性であり、
Aw/Anが17〜35であり、
水素添加触媒(D)添加後に生成する成分の極限粘度[η]が5.5〜10dl/gであり、その生成割合が15〜65重量%である、
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−275382(P2010−275382A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127493(P2009−127493)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】