説明

プロピレン樹脂組成物

【課題】従来の成形体の機械特性を維持しつつ、耐傷付性に優れる成形体を製造できるプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン樹脂(A)60質量%以上99質量%以下と、pH9以上14以下の充填材(B1)1質量%以上40質量%以下と(但し、前記(A)及び(B1)の合計を100質量%とする)、前記(A)及び前記(B1)100質量部に対して下記の変性オレフィン樹脂(C1)0.01質量部以上5質量部以下を含有するプロピレン樹脂組成物。
変性オレフィン樹脂(C1):オレフィン樹脂100質量部と、
当該オレフィン樹脂100質量部に対し、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基と、を有し、pHが0を超えて4以下の酸性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン樹脂に、エチレン−α−オレフィン共重合体や無機充填材等を添加することにより、所望の機械物性が得られることが知られている。
例えば、特許文献1にはポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー又はスチレン系エラストマー、無機フィラーを所定量含有する樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、ポリプロピレン、タルク、オレフィン系エラストマー及びアミド化合物を所定量含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−3692号公報
【特許文献2】特開2006−83251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの文献に開示されている樹脂組成物中の無機充填材は、中性の充填材が多く使用されており、ポリプロピレンとの相互作用が弱く、充填材とポリプロピレンとの界面強度が弱い。そのため樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐傷付性が低くなってしまうという問題があった。
【0005】
以上の課題に鑑み、本発明は、従来の成形体の機械特性を維持しつつ、耐傷付性に優れる成形体を製造できるプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プロピレン樹脂(A)60質量%以上99質量%以下と、pH9以上14以下の充填材(B1)1質量%以上40質量%以下と(但し、前記(A)及び(B1)の合計を100質量%とする)、前記(A)及び前記(B1)100質量部に対して下記の変性オレフィン樹脂(C1)0.01質量部以上5質量部以下を含有するプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
変性オレフィン樹脂(C1):オレフィン樹脂100質量部と、
当該オレフィン樹脂100質量部に対し、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基と、を有し、pHが0を超えて4以下の酸性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる。
【0007】
また本発明は、プロピレン樹脂(A)60質量%以上99質量%以下と、pHが0を超えて4以下の充填材(B2)1質量%以上40質量%以下と(但し、前記(A)及び(B2)の合計を100質量%とする)、前記(A)及び前記(B2)100質量部に対して下記の変性オレフィン樹脂(C1)0.01質量部以上5質量部以下を含有するプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
変性オレフィン樹脂(C1):オレフィン樹脂100質量部と、
当該オレフィン樹脂100質量部に対し、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基と、を有し、pHが9以上14以下の塩基性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の成形体の機械特性を維持しつつ、耐傷付性に優れる成形体を製造できるプロピレン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るプロピレン樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)は、プロピレン樹脂(A)と、上記充填材(B1)若しくは充填材(B2)と、上記変性オレフィン樹脂(C1)若しくは変性オレフィン樹脂(C2)を含有する。
〔成分(A):プロピレン樹脂(A)〕
本発明におけるプロピレン樹脂(A)とは、プロピレン単独重合体又はプロピレンと他のモノマーとの共重合体をいう。これらは単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。前記共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体としては、プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、プロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体が挙げられる。
ブロック共重合体としては、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する)からなる重合材料が挙げられる。
【0010】
プロピレン樹脂(A)は樹脂組成物の引張強度と耐衝撃性のバランスの観点から、13C−NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率と表記されることもある)が0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。なお、アイソタクチック・ペンタッド分率は、後述する測定方法により求められる値であり、プロピレン樹脂(A)のアイソタクチック・ペンタッド分率が1に近いほどそのプロピレン樹脂(A)は高い立体規則性を示す分子構造を有する高結晶性の重合体であることを表す指標である。
また、プロピレン樹脂(A)が上記ランダム共重合体又は上記ブロック共重合体の場合には、共重合体中のプロピレン単位の連鎖について測定される値を用いる。
【0011】
プロピレン共重合体(A)の230℃、2.16kgf荷重下で、JIS−K−7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)は、得られる成形体の破断伸びや衝撃強度の観点から、0.5g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、2g/10分以上80g/10分以下であることが更に好ましく、5g/10分以上50g/10分以下であることが最も好ましい。
【0012】
プロピレン樹脂(A)は、重合触媒を用いて下記の方法により製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0013】
重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン樹脂(A)に応じて、適宜決定すればよい。
【0014】
プロピレン樹脂(A)の製造において、プロピレン樹脂(A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてプロピレン樹脂(A)をそのプロピレン樹脂(A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0015】
<ランダム共重合体>
上述のように、本発明におけるランダム共重合体はプロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、プロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体である。
上記ランダム共重合体を構成するプロピレン以外のα−オレフィンとしては、炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0016】
プロピレン由来の構成単位とα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、α−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
【0017】
ランダム共重合体中のエチレン及び/又はα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。そして、プロピレンに由来する構成単位の含有量は99.9質量%以上60質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、98質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0018】
<ブロック共重合体>
上述のように、本発明におけるブロック共重合体は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分((以下、重合体成分(I)と称する)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する)からなる重合材料をいう。
重合体成分(I)は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分である。プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分とは、エチレン及び炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレン由来の単位とからなるプロピレン共重合体成分が挙げられる。
【0019】
重合体成分(I)が、プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分である場合、エチレン及び炭素原子数4個以上10個以下のα―オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01質量%以上30質量%以下である(但し、重合体成分(I)の質量を100質量%とする)。
炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンとしては、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0020】
プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
重合体成分(I)としては、好ましくは、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分が挙げられる。
【0021】
重合体成分(II)は、エチレン及び炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する構成単位と、プロピレンに由来する構成単位とを有する共重合体成分である。
重合体成分(II)に含有されるエチレン及び炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、1質量%以上80質量%以下であり、好ましくは5質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上60質量%以下である(但し、重合体成分(II)の質量を100質量%とする)。
【0022】
重合体成分(II)を構成する炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンとしては、例えば、前記重合体成分(I)を構成する炭素原子数4個以上10個以下のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0023】
重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
【0024】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合材料の重合体成分(II)の含有量は1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが最も好ましい(但し、プロピレン樹脂(A)の質量を100質量%とする)。
【0025】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体の重合体成分(I)がプロピレン単独重合体成分の場合、該プロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。
【0026】
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合材料の重合体成分(I)がプロピレン由来の単位からなるプロピレン共重合体成分の場合、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。
【0027】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体であり、より好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体である。
【0028】
重合体成分(I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I)は、0.1dl/g以上5dl/g以下であり、好ましくは0.3dl/g以上4dl/g以下であり、より好ましくは0.5dl/g以上3dl/g以下である。
【0029】
重合体成分(II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)は1dl/g以上20dl/g以下であり、好ましくは1dl/g以上10dl/g以下であり、より好ましくは2dl/g以上7dl/g以下である。
【0030】
また、重合体成分(I)の極限粘度([η]I)に対する重合体成分(II)の極限粘度([η]II)の比は、好ましくは1から20であり、より好ましくは2から10であり、さらに好ましくは2から9である。
【0031】
なお、本発明における極限粘度(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1dl/g、0.2dl/g及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
プロピレン樹脂(A)が重合体成分(I)と重合体成分(II)とを多段重合させて得られる重合材料である場合、前段の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーから重合体成分(I)又は重合体成分(II)の極限粘度を求め、この極限粘度の値と各成分の含有量を用いて残りの成分の極限粘度を算出する。
【0032】
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体が、重合体成分(I)が前段の重合工程で得られ、重合体成分(II)が後段の工程で得られる方法によって製造される共重合体である場合、重合体成分(I)及び重合体成分(II)の含有量、極限粘度([η]Total、[η]I、[η]II)の測定及び算出の手順は、以下のとおりである。なお、極限粘度([η]Total)は、プロピレン樹脂(A)の全体の極限粘度を示す。
【0033】
前段の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度([η]I)、後段の重合工程後の最終重合体(成分(I)と成分(II))の前記の方法で測定した極限粘度([η]Total)、最終重合体に含有される重合体成分(II)の含有量から、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIを、下記式から計算する。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:後段重合工程後の最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]I:前段重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
XI:プロピレン樹脂(A)全体に対する重合体成分(I)の質量比
XII:プロピレン樹脂(A)全体に対する重合体成分(II)の質量比
尚、XI、XIIは重合時の物質収支から求める。
【0034】
ブロック共重合体は、重合体成分(I)を第1工程で製造し、重合体成分(II)を第2工程で製造することにより得られる。重合は上述の重合触媒を用いて行われる。
【0035】
プロピレン樹脂(A)の含有量は、60質量%以上99質量%以下であり、好ましくは65質量%以上80質量%以下である(但し、成分(A)、及び、成分(B1)若しくは成分(B2)の合計を100質量%とする)。99質量%より多いと、成形体の剛性や耐衝撃性が悪化する場合があり、60質量%より少ないと、成形体の耐傷付性が悪化する場合がある。
【0036】
〔成分(B):充填材(B)〕
本発明で用いられる充填材は、pH9以上14以下の充填材(B1)、又は、充填材はpH0を超えて4以下の充填材(B2)である。充填材(B1)は変性オレフィン樹脂(C1)と組み合わせて用いられ、充填材(B2)は変性オレフィン樹脂(C2)と組み合わせて用いられる。
本発明では、充填材(B1)及び充填材(B2)を併せて充填材(B)と表記する。
【0037】
<pH9以上14以下の充填材(B1)>
pH9以上14以下の無機充填材(B1)としては、塩基性水酸化アルミニウム、アルカリ性のケイ酸類、塩基性硫酸マグネシウム、塩基性ワラストナイト、及び、塩基性物質で表面を処理した無機充填剤等が挙げられる。これらのうち、好ましくは塩基性硫酸マグネシウム、塩基性ワラストナイトであり、更に好ましくは塩基性ワラストナイトである。
無機充填材(B1)のpHの範囲は9以上14以下であり、好ましくは10以上14以下である。pHが9未満であると、オレフィン共重合体変性物(C1)との接着性が悪くなり、耐傷付性が悪化してしまう。
【0038】
無機充填材(B1)の平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ここで本発明における「平均粒子径」とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
無機充填材(B1)は、粉状、フレーク状、顆粒状等、いずれの形態のものを用いてもよい。
【0039】
無機充填材(B1)の含有量は、1質量%以上40質量%以下であり、好ましくは2質量%以上10質量%以下である(但し、(A)及び(B1)の合計を100質量%とする)。含有量が40質量%より多いと、成形体の耐衝撃性が悪化する場合があり、1質量%未満であると剛性が悪化する場合がある。
【0040】
<pH0を超えて4以下の充填材(B2)>
pH0を超えて4以下の無機充填材(B2)としては、カオリンクレー、酸性シリカ、及び、酸性物質で表面を処理した無機充填剤等が挙げられる。
無機充填材(B2)のpHの範囲は0を超えて4以下である。pHが4より大きいと、オレフィン共重合体変性物(C2)との接着性が悪くなり、耐傷付性が悪化してしまう。
【0041】
無機充填材(B2)平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。
無機充填材(B2)は、粉状、フレーク状、顆粒状などが挙げられ、いずれの形態のものを用いてもよい。
【0042】
無機充填材(B2)の含有量は、1質量%以上40質量%以下であり、好ましくは2質量%以上10質量%以下である(但し、(A)及び(B2)の合計を100質量%とする)。10質量%より多いと、成形体の耐衝撃性が悪化する場合があり、1質量%より少ないと剛性が悪化する場合がある。
【0043】
〔成分(C):変性オレフィン樹脂(C)〕
本発明で用いられる変性オレフィン樹脂は、変性オレフィン樹脂(C1)又は変性オレフィン樹脂(C2)である。変性オレフィン樹脂(C1)は上記充填材(B1)と組み合わせて用いられ、変性オレフィン樹脂(C2)は充填材(B2)と組み合わせて用いられる。
本発明では、変性オレフィン樹脂(C1)及び変性オレフィン樹脂(C2)を併せて変性オレフィン樹脂(C)と表記する。
【0044】
変性オレフィン樹脂(C)の含有量は、成分(A)及び、成分(B1)若しくは成分(B2)100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であり、0.1質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上2質量部以下であることがより好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、成形体の耐傷付性が低下する場合がある。また、含有量が5質量部を超えると、成形体の剛性や衝撃性が低下する場合がある。
【0045】
<変性オレフィン樹脂(C1)>
変性オレフィン樹脂(C1)は、オレフィン樹脂100質量部と、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基とを有し、pHが0を超えて4以下の酸性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる樹脂である。
【0046】
オレフィン樹脂は、オレフィンに由来する構造単位を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、ブテン樹脂、水素添加ブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、エチレン樹脂又はプロピレン樹脂を用いることが好ましく、プロピレン樹脂を用いることがより好ましい。
【0047】
エチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。また、市販品を用いてもよい。例えばダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、エスプレンSPO(登録商標)等が挙げられる。
プロピレン樹脂としては、成分(A)と同様のプロピレン樹脂が挙げられる。
【0048】
pHが0を超えて4以下の酸性化合物は、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基とを有する化合物である。
不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等が挙げられる。極性基としては、カルボキシル基、エステル基、スルホ基、スルフィノ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基が挙げられる。
pHが0を超えて4以下の酸性化合物として、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、桂皮酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、2−メタクリロキシエチルコハク酸、2−メタクリロキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−クロロアミドホスホキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロキシエチルアシツドホスフエート等が挙げられる。これらのうち無水マレイン酸、マレイン酸、及び、フマル酸からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を用いることが好ましい。
【0049】
有機化酸化物は、分解してラジカルを発生した後、オレフィン樹脂からプロトンを引き抜く作用を奏するものであれば特に限定されないが、pHが0を超えて4以下の酸性化合物のオレフィン樹脂へのグラフト量を向上させるという観点や、オレフィン樹脂の架橋及び分解を防止するという観点から、半減期が1分である分解温度が50℃以上210℃以下の有機過酸化物を用いることが好ましい。
半減期が1分である分解温度が50℃以上210℃以下の有機過酸化物として、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、及びパーカルボネートを例示することができる。中でも、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アルキルパーエステル、又はパーカルボネートが好ましい。
【0050】
半減期が1分である分解温度が50℃以上210℃以下の有機過酸化物として具体的には、ジセチルパーオキシジカルボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α―クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を例示することができる。
【0051】
変性オレフィン樹脂(C1)は、上記オレフィン樹脂100質量部に対し、pHが0を超えて4以下の酸性化合物0.01質量部以上20質量部以下、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下を反応させて得られる。酸性化合物の使用量は、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。酸性化合物の使用量が0.01質量部未満であると、耐傷付性が低下する場合がある。また使用量が20質量部を超えると剛性や衝撃性が低下する場合がある。
有機過酸化物の使用量は、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。有機過酸化物の使用量が0.01質量部未満であると、オレフィン樹脂の変性量が少なく、成形体の耐傷つき性が低下する場合がある。また使用量が10質量部を超えるとオレフィン樹脂が分解又は架橋する場合がある。
【0052】
変性オレフィン樹脂(C1)の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
[1]:オレフィン樹脂、酸性化合物及び有機過酸化物を溶融混練する方法
[2]:オレフィン樹脂、酸性化合物及び有機過酸化物を有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を加熱する方法
[3]:オレフィン樹脂、酸性化合物及び有機過酸化物を水中に懸濁させ、得られた懸濁液を加熱する方法
このうち上記[1]の方法を用いることが好ましい。また上記の溶融混練で用いられる混練機として、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、及び二軸押出機のような公知の装置を例示することができる。中でも、連続生産ができ生産性が高いという観点から、一軸押出機又は二軸押出機が好ましい。
【0053】
<変性オレフィン樹脂(C2)>
変性オレフィン樹脂(C2)は、オレフィン樹脂100質量部と、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基とを有し、pHが9以上14以下の塩基性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる樹脂である。
【0054】
オレフィン樹脂及び有機過酸化物は、上記変性オレフィン樹脂(C1)に用いるものと同様のものを使用することが可能である。
【0055】
pHが9以上14以下の塩基性化合物は、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基とを有する化合物である。
不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等が挙げられる。極性基としては、アミノ基(−NH2基、−NHR基、−NRR´基:但し、R,R´はアルキル基又はアリル基である)、ピリジル基及びピペリジル基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基が挙げられる。
pHが9以上14以下の塩基性化合物として、具体的には、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N−フエニルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジフエニルアミノエチルメタクリレート、アミノスチレン、ジメチルアミノスチレン、N−メチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノエトキシスチレン、ジフエニルアミノエチルスチレン、N−フエニルアミノエチルスチレン、2−N−ピペリジルエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−6−メチルピリジン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0056】
変性オレフィン樹脂(C2)は、上記オレフィン樹脂100質量部に対し、pHが9以上14以下の塩基性化合物0.01質量部以上20質量部以下、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下を反応させて得られる。塩基性化合物の使用量は、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。塩基性化合物の使用量が0.01質量部未満であると、耐傷付性が低下する場合がある。また使用量が20質量部を超えると剛性や衝撃性が低下する場合がある。
有機化酸化物の使用量は、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。有機化酸化物の使用量が0.01質量部未満であると、オレフィン樹脂の変性量が少なく、成形体の耐傷つき性が低下する場合がある。また使用量が10質量部を超えるとオレフィン樹脂が分解又は架橋する場合がある。
【0057】
変性オレフィン樹脂(C2)の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
[1]:オレフィン樹脂、塩基性化合物及び有機過酸化物を溶融混練する方法
[2]:オレフィン樹脂、塩基性化合物及び有機過酸化物を有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を加熱する方法
[3]:オレフィン樹脂、塩基性化合物及び有機過酸化物を水中に懸濁させ、得られた懸濁液を加熱する方法
このうち上記[1]の方法を用いることが好ましい。また上記の溶融混練で用いられる混練機として、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、及び二軸押出機のような公知の装置を例示することができる。中でも、連続生産ができ生産性が高いという観点から、一軸押出機又は二軸押出機が好ましい。
【0058】
〔成分(D):オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族含有化合物系エラストマー(D)〕
本発明では、オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族含有化合物系エラストマー(D)を含有していてもよい。
オレフィン系エラストマーは、エチレンと炭素数4以上20以下のα−オレフィンとの共重合体(但し、エチレンの含有量が50質量%以上である)である。
炭素数4以上20以下のα−オレフィンとしては、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0059】
JIS−K−7112に準拠して測定したオレフィン系エラストマーの密度は、得られる成形体を二次加工する際の溶着性という観点や、プロピレン樹脂(A)に対する分散性を高めるという観点、室温又は低温での衝撃強度が高い成形体を製造するという観点から、0.85g/cm以上0.885g/cm以下であり、好ましくは0.85g/cm以上0.88g/cm以下であり、より好ましくは0.855g/cm以上0.875g/cm以下である。また、JIS−K−6758に準拠して測定したオレフィン系エラストマーの190℃でのメルトフローレートは、成形体の衝撃強度を高めるという観点から、0.1g/10分以上30g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以上20g/10分以下である。
【0060】
オレフィン系エラストマーの製造方法としては、重合触媒を用いて製造する方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物、有機アルミニウム化合物及びハロゲン化エステル化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒や、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子に少なくとも1種のシクロペンタジエニルアニオン骨格を有する基が配位したメタロセン化合物と、アルモキサンあるいはホウ素化合物と、を組み合わせた触媒や、いわゆるメタロセン触媒が挙げられる。
重合方法としては、例えば、炭化水素化合物のような不活性有機溶媒中でエチレンとα−オレフィンを共重合させる方法や、溶媒を用いずにエチレン及びα−オレフィン中で共重合させる方法が挙げられる。
【0061】
ビニル芳香族化合物含有エラストマーとしては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなるブロック共重合体、又はこのブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック重合体、オレフィン系共重合体エラストマーとビニル芳香族化合物とを反応させて得られるエラストマー等が挙げられる。このうち、ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加されているブロック重合体を用いることが好ましく、85%以上水素添加されているブロック重合体を用いることがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビニル芳香族化合物含有エラストマーに含有されるビニル芳香族化合物としては、スチレンが挙げられる。
【0062】
ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体としては、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系エラストマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系エラストマー(SEPS)、スチレン−ブタジエン系エラストマー(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系エラストマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系エラストマー(SIS)等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物含有エラストマーに含有されるビニル芳香族化合物単量体単位の平均含有量として、好ましくは10質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上19質量%以下である(ただし、ビニル芳香族化合物含有エラストマーの全量を100質量%とする)。
【0063】
JIS−K−6758に準拠して測定したビニル芳香族化合物含有エラストマーの230℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.1g/10分以上15g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上13g/10分以下である。
ビニル芳香族化合物含有エラストマーの分子量分布としては、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
【0064】
ビニル芳香族化合物含有エラストマーの製造方法としては、オレフィン系共重合体エラストマーもしくは共役ジエンエラストマーに対し、ビニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法等が挙げられる。
【0065】
なお、オレフィン系共重合体エラストマーとビニル芳香族化合物を反応させて得られるエラストマーを成分(D)として用いてもよい。オレフィン系共重合体エラストマーとビニル芳香族化合物を反応させて得られるエラストマーとしては、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系エラストマー(EPDM)等のオレフィン系共重合体エラストマーとスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られるエラストマーが挙げられる。
【0066】
成分(D)の含有量は、成分(A)及び、成分(B1)若しくは成分(B2)100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。
【0067】
〔成分(E):滑剤(E)〕
本発明では、滑剤(E)を含有していてもよい。
滑剤(E)としては、シラン化合物、ポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アミド等が挙げられる。このうち、脂肪酸アミドを用いることが好ましく、炭素原子数6以上22以下の脂肪酸アミドを用いることが更に好ましい。脂肪酸アミドとしては、具体的にはラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0068】
成分(E)の含有量は、成分(A)及び、成分(B1)若しくは成分(B2)100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上0.5質量部以下であることがさらに好ましい。
含有量が0.01質量部未満であると、成形体の耐傷付き性が低下する場合がある。また、含有量が1質量部を超えるとブリードにより成形品の外観が悪化する場合がある。
【0069】
〔成分(F):その他添加剤(E)〕
本発明に係るプロピレン樹脂組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、発泡剤、発泡核剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤、光拡散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、樹脂組成物は、pHが4より大きく9未満の無機充填剤を含有していてもよい。pHが4より大きく9未満の無機充填剤としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
〔樹脂組成物の製造〕
本発明に係る樹脂組成物は、上記の原料成分を180℃以上、好ましくは180℃から300℃、より好ましくは180℃から250℃で溶融混練することにより得られる。溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が用いられる。各原料成分の混練順序は特に限定されるものではないが、各成分を一括に混練する方法が好ましい。
樹脂組成物の形状は、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物を成形加工するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、形状として好ましくは、長さが1mmから50mmのペレット状である。
【0072】
樹脂組成物全体のメルトフローレート(230℃、2.16kgf荷重、JIS−K−7210に準拠)は、成形加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上400g/10分以下であり、より好ましくは、0.5g/10分以上300g/10分以下であり、さらに好ましくは、1g/10分以上200g/10分以下である。
【0073】
本発明に係る樹脂組成物を成形して得られる成形体は、射出成形法により製造した射出成形体であることが好ましい。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
このようにして得られる成形体は、例えば、自動車材料、家電材料、モニター用材料、OA機器材料、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、ボトル、コンテナー、シート、フィルム、建材等が挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した成分は下記の通りである。
(1)プロピレン樹脂(A)
(A−1):(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体
プロピレン樹脂(A)として、重合体成分(I)と重合体成分(II)とからなる(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体を用いた。
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造した。
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のメルトフローレート(230℃、2.16kgf荷重):30g/10分
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のエチレン含有量:5.1質量%
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の極限粘度([η]total):1.52dl/g
[η]II/[η]I=5.0
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度([η]I):1.00dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:13.0質量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:39.5質量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):5.0dl/g
【0075】
(A−2):プロピレン単独重合体
プロピレン樹脂(A)として、プロピレン単独重合体を用いた。
メルトフローレート:(230℃、2.16kgf荷重):120g/10分
極限粘度([η]):0.92dl/g
【0076】
(2)充填材(B)
(B−1)塩基性ワラストナイト
pH9以上14以下の充填材(B1)として、塩基性ワラストナイト((登録商標)NYGLOS4W:NYCO製)を用いた。
平均繊維径:4.5μm
pH:10.3
【0077】
(B−2)タルク
充填材(B)として、タルクを用いた((登録商標)JR−46:林化成製)。
平均粒子径:2.8μm、
pH:8.1
(B−3)ワラストナイト
充填材(B)として、ワラストナイト((登録商標)NYGLOS8:NYCO製)を用いた。
平均繊維径:8μm
pH:8.3
(B−4)マイカ
充填材(B)として、マイカ((登録商標)A−41:ヤマグチマイカ製)を用いた。
平均粒子径:47μm
pH:7.0
【0078】
(3)変性オレフィン樹脂(C1)
変性オレフィン樹脂として、下記のオレフィン樹脂と、pHが0を超えて4以下の酸性化合物と、有機過酸化物とを下記の手順で反応させたものを用いた。
オレフィン樹脂として、重合体成分(I)と重合体成分(II)とからなる下記の(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体を用いた。この(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体は、特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造したものである。
プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のメルトフローレート(230℃、2.16kgf荷重):0.6g/10分
プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のエチレン含有量:6.0質量%
プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の極限粘度([η]total):2.76dl/g
[η]II/[η]I=5.0
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度([η]I):2.75dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:16.0質量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:37.5質量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):2.8dl/g
【0079】
pHが0を超えて4以下の酸性化合物として、無水マレイン酸(日本触媒製、pH:1.2)を用いた。
有機過酸化物として、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン((登録商標)パーブチルP:日本油脂製)及びジセチルパーオキシジカルボネート((登録商標)パーカドックス24:化薬アクゾ製)を用いた。
【0080】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のパウダー100質量部に、無水マレイン酸1.0質量部、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.16質量部、ジセチルパーオキシジカルボネート0.54質量部、ステアリン酸カルシウム0.16質量部、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.3質量部を添加して十分に予備混合後、90mm二軸押出機の供給口より供給して、前段を180℃、後段を250℃に設定して混練を行い、得られたものを変性オレフィン樹脂(C1)とした。
【0081】
(4)オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族含有化合物系エラストマー(D)
(D−1)オレフィン系エラストマー
オレフィン系エラストマーとして、エチレン−オクテンランダム共重合体((登録商標)ENGAGE EG8100(ダウ・ケミカル日本(株)製))を用いた。
密度:0.870(g/cm3)
メルトフローレート(190℃、2.16kgf荷重):1g/10分
(D−2)オレフィン系エラストマー
オレフィン系エラストマーとして、エチレン−オクテンランダム共重合体((登録商標)ENGAGE EG8200(ダウ・ケミカル日本(株)製))を用いた。
密度:0.870(g/cm3)
メルトフローレート(190℃、2.16kgf荷重):5g/10分
【0082】
(5)滑剤(E)
滑剤(E)として、エルカ酸アミド((登録商標)ニュートロン−S:日本精化製)を用いた。
【0083】
原料成分及び樹脂組成物の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210(1995)に従い、試験荷重2.16kgf、試験温度230℃の条件で測定を行った。
(2)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
射出成形により成形された厚みが6.4mmである試験片を用いて、ASTM D790に準拠し23℃における曲げ弾性率を測定した。
【0084】
(3)破断伸び(UE、単位:%)
射出成形により成形された厚みが3.2mmである試験片を用いて、ASTM D638に準拠し23℃における破断伸びを測定した。引っ張り速度は10mm/分で行った。
(4)アイゾット衝撃強度(Izod、単位:kJ/m
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが3.2mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は23℃で測定した。
【0085】
(5)耐傷付性(白斑数、単位:個)
後述するシボ付き平板試験片から100×100mmの正方形平板切り出し、傷付き試験用とした。上島製作所社製 特殊大型U−F引っかき試験機を用いて、以下の条件で傷付き試験を行った。先端が直径0.3mmの半球(材質SUS403)である傷付き試験用の針に350gの荷重をのせ、600mm/分の速度で、MD方向と、TD方向に50mmの長さで40本の傷を付け、傷による白斑数を求めた。白斑数が少ないほど、耐傷付性に優れる事を意味する。
【0086】
(6)pH測定
充填材、塩基性化合物及び酸性化合物のpHは以下の手順で測定した。
測定試料5.0gにメタノール20mlを加え、ガラス棒で攪拌し、更に純水100mlを加えた。その後60℃から70℃のウォーターバスに30分入れ、放置冷却後、ろ過したろ液を、pHメータを用いてガラス電極法で測定を行った。
【0087】
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
表1に示した組成で、タンブラーにて均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押出量50kg/hr、シリンダ設定温度200℃、スクリュー回転数を200rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物を、東芝機械工業製IS220EN型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型温度50℃で射出成形を行い、曲げ弾性率、破断伸び、アイゾット衝撃強度評価用試験片を得た。
また、住友重機製SE180D型射出成形機を用いて、成形温度220℃、金型冷却温度50℃で射出成形を行い、400mm×100mm×3mmの耐傷付性評価用シボ付き平板試験片を得た。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表2に示す。表中、成分(A)及び成分(B)の含有量は、その合計量を100質量%として記載した値であり、成分(C1)、成分(D)、及び成分(E)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計を100質量部として記載した値である。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン樹脂(A)60質量%以上99質量%以下と、
pH9以上14以下の充填材(B1)1質量%以上40質量%以下と(但し、前記(A)及び(B1)の合計を100質量%とする)、
前記(A)及び前記(B1)100質量部に対して下記の変性オレフィン樹脂(C1)0.01質量部以上5質量部以下を含有するプロピレン樹脂組成物。
変性オレフィン樹脂(C1):オレフィン樹脂100質量部と、
当該オレフィン樹脂100質量部に対し、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基と、を有し、pHが0を超えて4以下の酸性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる。
【請求項2】
プロピレン樹脂(A)60質量%以上99質量%以下と、
pHが0を超えて4以下の充填材(B2)1質量%以上40質量%以下と(但し、前記(A)及び(B2)の合計を100質量%とする)、
前記(A)及び前記(B2)100質量部に対して下記の変性オレフィン樹脂(C1)0.01質量部以上5質量部以下を含有するプロピレン樹脂組成物。
変性オレフィン樹脂(C1):オレフィン樹脂100質量部と、
当該オレフィン樹脂100質量部に対し、少なくとも一箇所の不飽和結合と、少なくとも一種の極性基と、を有し、pHが9以上14以下の塩基性化合物0.01質量部以上20質量部以下と、有機過酸化物0.001質量部以上20質量部以下とを反応させて得られる。
【請求項3】
前記酸性化合物は、無水マレイン酸、マレイン酸、及び、フマル酸からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物である請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩基性化合物は、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及び、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物である請求項2に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)及び、前記(B1)若しくは(B2)100質量部に対して、オレフィン系エラストマー及び/又はビニル芳香族含有化合物系エラストマー(D)1質量部以上40質量部以下を更に含有する請求項1〜4いずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)及び、前記(B1)若しくは(B2)100質量部に対して、滑剤(E)0.01質量部以上5質量部以下を更に含有する請求項1〜5いずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−180469(P2012−180469A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44919(P2011−44919)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】