説明

プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの加熱方法および延伸フィルムの製法

【課題】プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の均一加熱方法を提供し、それをさらに長手方向に延伸する延伸フィルムの製法を提供し、厚さの均一性の高い延伸フィルムを提供する。
【解決手段】長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に、レーザーを照射して加熱するに際し、照射されるレーザーが到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴とするプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の均一加熱方法。および、この加熱方法にて加熱されたプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを、引き続き長手方向に延伸することを特徴とする延伸フィルムの製法およびそれにより得られた延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの加熱方法およびその加熱フィルムまたはシートを用いた延伸フィルムの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等の一軸延伸フィルムは、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ種々の用途に広く用いられている。また、これらの延伸フィルムの強度、透明度をさらに改良して更に広い用途への利用が期待される。
【0003】
従来からポリプロピレン等の熱可塑性ポリマーのシートは、加熱ロール、赤外線ヒーター、加熱空気等が連続的に送られるテンター等により加熱されていた(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、長手方向に連続的に供給されるポリプロピレン等の熱可塑性のシートをその幅方向において均一に加熱することは困難であり、温度の分布が発生し、その後の延伸工程において、厚みのばらつきが発生しやすく、均一厚み精度の高い延伸フィルムを得ることが求められていた。
【特許文献1】特開2008−24935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向のより均一な加熱方法を提供するものであり、また本発明は、それをさらに長手方向に延伸する延伸フィルムの製法を提供するものであり、さらには、厚さの均一性の高い延伸フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に、赤外線、例えばレーザーを照射して加熱するに際し、照射されるレーザー等の赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴とするプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法に関する。
【0007】
また、本発明は長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを予め加熱した後に、引き続きその幅方向に、赤外線を照射して特定温度、例えば延伸温度まで加熱するに際し、照射される赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴とするプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法に関する。
【0008】
本発明におけるレーザー等の赤外線を照射して加熱する好適な態様として、フィルムまたはシートの幅方向に複数のレーザーを部分的に重ねて照射する方法がある。
また、他の好適な態様には、赤外線の照射位置を幅方向に高速に移動させる方法がある。このためには、赤外線を照射し、または反射する装置に回転駆動装置を設けることが望ましい。
【0009】
また、赤外線の照射位置を幅方向に高速に移動させる他の好ましい態様として、赤外線
を幅方向に往復移動させることにより、幅方向の光線強度を均一化する方法がある。
本発明において、赤外線としてレーザーが好適である。
【0010】
レーザーの光線軸に垂直な断面の光線強度を均一化処理する方法としては、レーザーの光線の強度が光束の中心部が周辺部より高強度の形状を整形する他、マスク投影して光線強度が均一な範囲のみを利用する方法がある。
【0011】
本発明においては、レーザーの照射位置を幅方向に移動させることにより、フィルムまたはシートの一端側の表面の位置におけるレーザー光束の最大光線強度となる位置と、その次回の照射でレーザー光束の最大光線強度となるフィルムまたはシートの表面の位置との間の長手方向への距離(d1)が、使用されるレーザーの光束の当該フィルムまたはシートの表面における最大光線強度の点と70%光線強度となる点の間の距離(d2)より短くなるようにレーザーの照射位置の幅方向の移動の速度をコントロールすることが望ましい。
【0012】
本発明において、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの厚みが5ミクロンメータ(μm)から6000ミクロンメータ(μm)であることが望ましい。
本発明は上記のいずれかの加熱方法によって加熱されたプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを、引き続き長手方向に延伸することを特徴とする延伸フィルムの製法およびそれによって得られる延伸フィルムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの加熱方法に比べ、幅方向の均一加熱を極めて効率よく行うことができ、それを利用した長手方向の延伸により、厚み均一性の高い延伸フィルムを得ることができる。さらに、高い倍率まで延伸することができるので高強度等の機械物性の優れた一軸延伸フィルム、例えばテープ等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ポリプロピレン系ポリマー
本発明に用いられるプロピレン系ポリマーは、従来公知のポリプロピレンから選択して用いることができる。また、これらのプロピレン系ポリマーはその2種類以上を併用したり、並列あるは直列の多段重合によって調製したポリプロピレン組成物を用いてもよい。
【0015】
これらポリプロピレン系ポリマーとしては、一般にポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレンを主体とする重合体も利用することができる。通常、密度が0.890〜0.930g/cm3、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度2
30℃)が0.001〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1質量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは単独重合体と共重合体との組成物等がある。
【0016】
プロピレン系ポリマーには、上記の他に延伸フィルムとした場合の優れた機械的物性を損なわない範囲で、他のポリマー、その他の添加剤を配合してもよい。
更に本発明の延伸フィルムには、必要に応じて石油樹脂などの炭化水素樹脂、高メルトテンションのポリプロピレン、核剤等を配合することが行われる。
【0017】
また、プロピレン系ポリマーは、チーグラー・ナッタ系触媒に限らず、シングルサイト触媒(メタロセン触媒等)を始め種々の触媒を用いて重合されたものを用いることができる。
【0018】
プロピレン系ポリマーには、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、ベンジリデンソルビトール等の核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0019】
幅方向の加熱方法
上記のプロピレン系ポリマーは、溶融押出しされて通常の方法によりシートに成形された後、その幅方向に赤外線を照射する。一般に溶融押出しにより成形されるシートは連続的に長手方向に移動して供給され、それをさらに加工して目的の製品とすることが行われる。
【0020】
従って、プロピレン系ポリマーのシートまたはフィルムが長手方向に連続的に移動している状態でその加熱処理とタテ方向(長手方向)の延伸処理を行うことが最も効率がよく、経済的である。
【0021】
その際、プロピレン系ポリマーのシートまたはフィルムはその厚みが一般に5ミクロンメータ(μm)から6000ミクロンメータ(μm)であり、幅方向の長さは、10ミリメータ(mm)から1000(mm)程度である。
【0022】
本発明においては、長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に、赤外線を照射して加熱するに際し、照射される赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度が均一化することを特徴としている。
【0023】
また、本発明の他の態様においては、長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを予め加熱した後に、引き続きその幅方向に、赤外線を照射して特定温度、例えば延伸温度まで加熱するに際し、照射される赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴としている。
【0024】
これらの加熱方法に用いられる赤外線としては高温の発熱体を利用した連続スペクトル光源、アーク放電を利用したキセノンランプを含むアーク放電、レーザー発振を利用したコヒーレント光源などがある。これらの中ではレーザーが好適である。
【0025】
レーザーとしては、特に限定されず、気体、固体、半導体、色素、エキシマー、自由電子を放出源としたものが例示される。中でも、気体の炭酸ガスを放出源とする発信波長9〜12ミクロンメータ(μm)、Nd3+を微量加えたイットリウムアルミニウムガーネット(3Y23・5Al23)を放出源とする発振波長0.9〜1.2ミクロンメータ(μm)が好適である。
【0026】
これらレーザーの光束はフィルムの表面に到達する際の光線強度の分布が、最高光線強度の30%以上となる範囲(レーザーの有効照射範囲)として、一般に1ミリメータ(mm)から15ミリメータ(mm)程度である。
【0027】
レーザーが照射される対象の面積を大きくすると同時に均一な加熱を可能とするために、レーザーの断面内の光線強度の均一化の処理をすることが必要である。
一般にレーザーの光線の強度は光束の中心部が周辺部より高強度であり、その光線強度を均一化処理する態様には、その光束の光線強度の形状を整形して用いる他、光束をマスク投影して、利用したい部分の光束のみを利用する方法がある。
【0028】
均一化処理の具体例としては、レーザーの光束をレンズやミラーの焦点位置からディフォーカスされた地点でのレーザーをフィルムまたはシートに照射する方法、多数の矩形あるいは正方形レンズを組み合わせ、光束を分割し重畳することにより光線強度を均一化する方法。多数の矩形あるいは正方形の鏡を凹面鏡に沿って張りつけて光束を分割し重畳して光線強度を均一化する方法、カライドスコープ(例えば、4枚の内面反射鏡で光束を多重反射させて均一化する)を用いる方法がある。例えばレーザーを強度の均一化ホモジナイザーやエキスパンダー等によって均一化することが挙げられる。
【0029】
対象となるフィルムまたはシートによっては、このようなレーザーの強度の均一化のみでは、幅方向の表面のレーザーによる光線強度を均一化が不十分な場合がある。
本発明では、これらの均一化と共に、あるいはこれらの均一化に替えて以下の態様を採用することが望ましい。
【0030】
フィルムまたはシートの幅方向に複数のレーザーを部分的に重ねて照射することにより、レーザーの幅方向の光線強度を均一化する方法がある。
この方法によれば、例えばガウス型の光線強度のレーザーがフィルムまたはシートの幅方向に部分的に重ね合わされ、フィルムまたはシートの幅方向の光線強度の均一化を図ることができる。
【0031】
複数のレーザーを部分的に重ねるには、例えば、各レーザーの最大光線強度の50%の光線強度となる部分を境界として部分的に重ね合わせれば、ほぼ最大光線強度のレベルの光線強度でフィルムまたはシートの幅方向の全体をレーザーで照射することができる。
【0032】
複数のレーザーは、例えば単一のレーザーから従来公知の方法で複数の分割ビームを得てそれらを利用することが望ましい。部分的な重ね合わせの割合を調整することにより、光束の垂直断面方向の光線強度を均一化することが可能となる。
【0033】
また、本発明におけるレーザーを照射して加熱する他の好適な態様には、レーザーの照射位置を幅方向に高速移動させる方法がある。
レーザーの照射位置をフィルムまたはシートの幅方向に移動させるには、レーザーを照射し、または反射するポリゴン鏡等の反射鏡等の装置に回転駆動装置を設けることにより、フィルムまたはシートに照射される光束を幅方向に高速で移動させることができる。また、レーザーをオッシレータ等により幅方向に往復移動させながら、フィルムまたはシートを長手方向に連続的に移動させる方法がある。
【0034】
レーザーの照射位置を幅方向に移動させる速度は、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの長手方向に移動する速度に比較して十分な高速度とすることが望ましい。例えば、長手方向の移動速度の10倍以上、好ましくは100倍以上、さらに好ましいくは500倍以上とすることが望ましい、また、一般的には1×104倍以下である。
【0035】
また、本発明におけるレーザーを照射して加熱する他の好適な態様には、レーザーの照射位置を幅方向に高速移動させつつ断続的に照射させる方法がある。
この態様においては、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートが長手方向に移動する速度より早い速度で、レーザー光の照射位置を幅方向に高速移動させつつ断続的に照射させることが望ましく、フィルムまたはシートの一端側の表面におけるレーザー光束の最大光線強度となる位置と、次回に照射されるレーザー光束の最大光線強度となる位置との間の距離(d1)が、使用されるレーザーの光束の当該フィルムまたはシート表面における最大光線強度の点と70%光線強度となる点の間の長手方向への距離(d2)より短くなるように、レーザーの幅方向の往復移動の速度をコントロールすることが望ましい。こ
れにより、フィルムまたはシートの表面のレーザーの光線強度のより精度の高い均一化が可能となる。
【0036】
これらのレーザーの照射によって、フィルムまたはシートの加熱が行われる。加熱温度はプロピレン系ポリマーの種類やフィルムまたはシートの厚みなどにより、適宜変更する必要がある。
【0037】
中でも、長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを予め加熱した後に、引き続きその幅方向に、レーザーを照射して特定温度、例えばその延伸温度まで加熱することが望ましい。この方法によれば、フィルムまたはシートをその延伸温度よりやや低い温度、例えば延伸温度より5℃〜20℃低い温度までの加熱を従来の加熱手段で行い、その後の加熱による延伸温度の制御をレーザーの加熱により精密にコントロールすることができ、経済的に有利でありかつ加熱温度の精度を高めることができるという優れた効果が得られる。
【0038】
さらに、本発明ではプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの種類により、例えばその厚みが1000ミクロンメータ(μm)を越える場合は、上記のレーザーの照射による幅方向の均一加熱を、フィルムまたはシートの両側から1対のレーザーで行うことが望ましい。また、フィルムまたはシートの厚さによっては、照射したレーザーの透過光を反射させて反射光を再度フィルムまたはシートに照射させてもよい。これによりフィルムまたはシートの均一加熱をより精度よく行うことができる。
【0039】
延伸フィルムの製法
上記の加熱方法にて加熱されたプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートは、引き続き長手方向に延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。
【0040】
タテ方向(長手方向)に一軸延伸する方法としては従来から知られている方法を採用することができる。一般には未延伸フィルムのタテ方向だけをロール、テンター等を用いて延伸する方法、一段のみならす、2段以上の多段延伸が採用される。このタテ方向(長手方向)の延伸倍率は通常2〜15倍程度である。
【0041】
このようにして得られる延伸フィルムは、一般にその厚みが1ミクロンメータ(μm)から200ミクロンメータ(μm)程度である。
タテ方向(長手方向)に一軸延伸されたフィルムは、種々の用途に用いられる。また、一軸延伸の後、さらにヨコ方向(幅方向)の延伸処理がされて二軸延伸フィルムとしても用いることができる。ヨコ方向(幅方向)の延伸倍率は一般に2〜10倍程度である。
【0042】
また、延伸温度は通常140℃〜200℃、中でも150℃〜190℃程度が好ましい。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0043】
なお、物性値などは、以下の評価方法により求めた。
(1)厚薄(μm)
延伸ポリプロピレンテープからタテ方向(MD)に500mm切出し、連続厚み計[(株)テーイーエス社製フィルムインスペクタTS−0600A]を用い、1mmおきに厚薄を測定し、平均厚薄(μm)および標準偏差を求めた。
【0044】
(2)引張弾性率(MPa)
延伸ポリプロピレンテープからタテ方向(MD)及びヨコ方向(TD)に短冊状フィル
ム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機[(株)オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225]を用い、チャック間距離:100mm、
クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を求めた。
【0045】
実施例1〜3
ポリプロピレン(MFR2.0g/10分)のフィルム(厚さ5ミリメートル(mm)、厚さ100ミクロンメートル(μm))のロール巻から順次テープを繰り出し速度0.1メートル(m)で繰り出し、赤外線レーザー(炭酸ガスレーザー)を照射直径(1/e2)10ミリメートルの光線として、テープの幅方向に垂直にその中心に照射しながら、
巻き取り速度をコントロールすることにより、赤外線レーザーを照射した部分あるいはそれから僅かに下流側において延伸を施した。
巻き取り速度をコントロールすることにより、長手方向(MD)の延伸倍率を5倍にして行った。得られたテープの厚さ、引張弾性率を測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
また、巻き出されたテープを予めニクロム線ヒーターで60℃に予熱する以外は、上記の実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
また、得られたサンプルの引張弾性率は3.4GPaであった。
【0047】
比較例
上記の実施例1において、レーザーによる加熱を行うことなく、ニクロム線ヒーターの加熱のみを行って同様に延伸した。
【0048】
結果を表1に示す。
【0049】
[表1]
表 1

レーザー加熱延伸 ヒーター加熱延伸

予熱なし 予熱なし 予熱なし 予熱あり ヒーター加熱のみ

項 目 単位 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 比較例

レーザー出力 W 1 3 4 3 −

ヒーター温度 ℃ − − − 60 100

平均厚さ(MD)μm 25.5 24.8 25.7 35.4 47.7

標準偏差 1.12 1.05 1.09 1.65 2.60
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向を精度よく加熱することができる。そのため、プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの延伸に適した温度に精度よく加熱することができる。
【0051】
その結果、高倍率の延伸が可能となり、得られたフィルムまたはシートの厚さの均一性
の高い延伸フィルム、例えば延伸テープ等が提供され、包装材料、種々の産業材の用途への利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に、赤外線を照射して加熱するに際し、照射される赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴とするプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項2】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを予め加熱した後に、引き続きその幅方向に、赤外線を照射して特定温度まで加熱するに際し、照射される赤外線が到達するフィルムまたはシートの幅方向の表面において、その光線強度を均一化して照射することを特徴とするプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項3】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に、赤外線を照射して加熱するに際し、フィルムまたはシートの幅方向に複数の赤外線を部分的に重ねて照射することにより、幅方向の光線強度が均一化された赤外線を照射することを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項4】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に赤外線を照射して加熱するに際し、赤外線の照射位置を幅方向に高速に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項5】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向に赤外線を照射して加熱するに際し、赤外線の照射位置を幅方向に高速に往復移動させて、幅方向の光線強度が均一化されるように赤外線を照射することを特徴とする請求項4に記載のプロピレンポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項6】
赤外線の照射位置を幅方向に移動させるために、赤外線を照射し、または反射する装置に回転駆動装置を有することを特徴とする請求項4に記載のプロピレン系ポリマーまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項7】
赤外線がレーザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロピレン系ポリマーまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項8】
長手方向に連続的に移動するプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向にレーザーを照射して加熱するに際し、レーザーの光線軸に垂直な断面の光線強度が均一化処理されたレーザーを用いることを特徴とする請求項7に記載のプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項9】
フィルムまたはシートが長手方向に移動する速度より早い速度で、レーザーの照射位置を幅方向に移動させることにより、フィルムまたはシートの一端側の表面の位置におけるレーザー光束の最大光線強度となる位置と、その次回の照射でレーザー光束の最大光線強度となるフィルムまたはシートの表面の位置との間の距離(d1)が、使用されるレーザーの光束の当該フィルムまたはシートの表面における最大光線強度の点と70%光線強度となる点の間の長手方向への距離(d2)より短くなるようにレーザーの照射位置の幅方向の移動の速度をコントロールすることを特徴とする請求項7または8に記載のプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの幅方向の加熱方法。
【請求項10】
プロピレン系ポリマーフィルムまたはシートの厚みが5ミクロンメータ(μm)から6000ミクロンメータ(μm)であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の加熱方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の加熱方法にて加熱されたプロピレン系ポリマーフィルムまたはシートを、引き続き長手方向に延伸することを特徴とする延伸フィルムの製法。
【請求項12】
請求項11の延伸フィルムの製法で得られた延伸フィルム。

【公開番号】特開2009−262484(P2009−262484A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117053(P2008−117053)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】