説明

プロピレン系重合体組成物及びその用途

【課題】オレフィン系の軟質樹脂でありながら、耐摩耗性にすぐれるプロピレン系重合体組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】特定量の(A)シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上のプロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%含有するプロピレン系重合体、(B)プロピレン由来の構成単位を40〜89モル%のプロピレン系共重合体を含み、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)、スチレン系エラストマー(D)、α−オレフィン共重合体(E)、アイソタクチックプロピレン系重合体(F)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(G)、及び、エチレン系重合体(H)から選ばれる重合体を特定量含むプロピレン系重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性に優れ、例えば人造皮革用シートなどの用途にも好適なプロピレン系重合体組成物、成形体、積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系合成皮革(オレフィン系レザー)は、文具、各種ケース、包装、家具、建装、自動車内装等の種々の用途に使用されている。そして、このようなオレフィン系合成皮革に使用される軟質オレフィン系樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が知られている。しかしながら、このような軟質オレフィン系樹脂を用いて得られるオレフィン系合成皮革においては、耐摩耗性が十分ではないという問題がある。
【0003】
耐摩耗性を改良する方法として、例えば軟質オレフィン系樹脂層の表皮層に、ファブリック層を備える積層体とする方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、かかる方法では、工程数が多く、コストも高くなる虞がある。また、一般に、柔軟性に富むオレフィン系樹脂は、耐摩耗性が劣ることから、耐摩耗性を有する樹脂組成物を得ることが困難であり、依然として、軟質のオレフィン系樹脂でありながら、かつ耐摩耗性に優れる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−287305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オレフィン系の軟質樹脂でありながら、耐摩耗性にすぐれるプロピレン系重合体組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の重合体を含むプロピレン系重合体組成物である。
(A)13C・NMRにより測定されるシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%含有するプロピレン系重合体:1〜35質量部、
(B)プロピレン由来の構成単位を40〜89モル%、炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位を11〜60モル%含有し、以下の(b4)を満たすプロピレン系共重合体:5〜95質量部、
(b4)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と230℃、荷重2160gで測定したMFRが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
【0007】
及び、(A)及び(B)に加え、以下の(C)〜(F)の重合体のいずれか少なくとも1種を含有し、(G)及び/又は(H)の重合体を下記に規定する範囲で任意に含んでもよく、且つ、(C)〜(H)の重合体を合計で1〜94質量部含む〔但し、(A)〜(H)の重合体の合計を100質量部とする。〕。
(C)非架橋の、または部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー:0〜94質量部、
(D)スチレン系エラストマー:0〜94質量部、
(E)プロピレン由来の構成単位を40−85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%含む。
かつ、mmが85%以上である、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα−オレフィン共重合体:0〜94質量部、
(F)アイソタクチックプロピレン系重合体:0〜49質量部、
(G)エチレン・酢酸ビニル共重合体:0〜60質量部、
(H)密度が850〜930kg/m3のエチレン系重合体:0〜60質量部。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、オレフィン系の軟質樹脂でありながら耐摩耗性に優れる。
そのため、本発明のプロピレン系重合体組成物は、各種の成形体に用い得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<プロピレン系重合体(A)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれる重合体成分の一つであるプロピレン系重合体(A)は、13C・NMRにより測定されるシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%、好ましくは92〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%含むプロピレン系重合体である。
【0010】
rrrr分率が上記の範囲にあるプロピレン系重合体(A)は、成形性、さらには耐熱性および透明性にも優れ、結晶性ポリプロピレンとしての特性がより良好なものとなる。また、プロピレン系重合体(A)を用いることで、結晶化が抑制され、低結晶化および微細球晶化が起こるため、得られる本発明のプロピレン系重合体組成物は、透明性および表面光沢性の高いものとなる。
【0011】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)として、上記範囲のプロピレン系重合体を用いると、特に耐熱性に優れるプロピレン系重合体組成物が得られる。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)のシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)は、以下のようにして測定される。
【0012】
rrrr分率は、13C・NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
【0013】
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw…(1)
NMR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C・NMR測定を行う。積算回数は8,000回以上とする。
【0014】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、プロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと炭素原子数が2〜20、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種でも二種以上であってもよい。
【0015】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、好ましくは、融解熱量(ΔHC)が20J/g以上、より好ましくは40J/g以上、さらに好ましくは50J/g以上のプロピレン系重合体である。融解熱量(ΔHC)の上限は特に限定はされないが、通常、120J/g以下である。
【0016】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、好ましくは、示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融点(Tm)が、145℃以上、より好ましくは147℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは155℃以上である。なお、Tmの上限は特にないが、通常は、例えば170℃以下である。融点(Tm)が上記の範囲にあるプロピレン系重合体(A)は、成形性、さらには耐熱性および機械特性にも優れる。
【0017】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、好ましくは135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.5〜10dl/g、より好ましくは1.0〜6dl/g、さらに好ましくは1.0〜4dl/gの範囲にあることが望ましく、極限粘度がこのような範囲にあると、良好な流動性を示し、他の成分と配合し易く、また得られるプロピレン系重合体組成物は機械的強度に優れた成形品が得られる傾向がある。
【0018】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、プロピレン系重合体(A)を配合することにより得られるプロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが0.001〜50g/10分、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
【0019】
<プロピレン系重合体(A)の製造方法>
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、種々公知の製造方法、例えば、国際公開番号WO2006/123759明細書に記載された製造方法などにより、得られる。
【0020】
<プロピレン系共重合体(B)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれる重合体成分の一つであるプロピレン系共重合体(B)は、プロピレン由来の構成単位を40〜89モル%、好ましくは50〜89モル%、より好ましくは55〜89モル%、炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位を11〜60モル%、好ましくは11〜50モル%、より好ましくは60〜89モル%含有し、以下の(b4)を満たすプロピレン系共重合体である。
【0021】
(b4)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と230℃、荷重2160gで測定したMFRが下記の関係式(2)、好ましくは下記の関係式(3)を満たす。
【0022】
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)・・・(2)
1.80×MFR(-0.20)≦[η]≦2.50×MFR(-0.19)・・・(3)
上記(b4)の式(2)、好ましくは式(3)を満たすプロピレン系重合体(B)は、従来のアイソタクチックプロピレン系共重合体に比べて同一極限粘度[η]で大きなMFRを示す。
【0023】
これはMacromolecules 31、1335−1340(1998)にも記載のようにアイソタクチックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文ではMe=6900(g/mol)と報告されている)と、シンジオタクチックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文ではMe=2170(g/mol)と報告されている)との違いに起因すると考えられる。即ち、同一[η]ではシンジオタクチック構造を持つことにより、アイソタクチック構造を有する材料に対して絡み合い点が多くなり、MFRが大きくなると考えられる。
【0024】
以上のように、(b4)上記式(2)を満たすプロピレン系重合体は、アイソタクチック構造を有するプロピレン系重合体とは異なった立体規則性を有した重合体であり、いわゆるシンジオタクチック構造を有するものと考えられる。この場合、得られるプロピレン系重合体組成物は耐摩耗性に優れる。
【0025】
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、プロピレンと炭素原子数が2〜20、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種でも二種以上であってもよい。
【0026】
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、好ましくは、融解熱量(ΔHB)が10J/g以下、より好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは1J/g以下のプロピレン系共重合体である。
【0027】
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、好ましくは、融点が90℃未満、より好ましくは、80℃以下、さらに好ましくは、融点が存在しない重合体である。本発明において、融点が存在しないとは、融解ピークに起因する融解熱量△Hが1J/g以下であることをいう。
【0028】
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、プロピレン系共重合体(B)を混合することにより得られるプロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
【0029】
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.1〜5dl/gの範囲にあることが望ましい。極限粘度[η]が上記範囲にあるプロピレン系重合体(B)を用いた場合、得られるプロピレン系重合体組成物は、成形時の流動性に優れ、得られる成形体の機械物性も十分である。
【0030】
本発明に係るプロピレン系重合体(B)は、通常、GPCで測定したMw/Mn(ポリスチレン換算)は1.2〜3.5、より好ましくは1.5〜3.0の範囲にある。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、さらに以下に示すように、13CNMR法で測定したrr分率が特定の範囲の値をとるものであっても良い。、好ましくは、rr分率が40%以上、さらには45%以上であるものが良い。
【0031】
rr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrr(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw (プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(4)により求められる。
rr分率(%)=100×Prr/Pw・・・(4)
【0032】
ここで、mr由来の吸収(プロピレン単位が3単位の内、少なくともシンジオタクチック結合とアイソタクチック結合の両方から由来する吸収、Pmr(吸収強度)の決定に用いる)、rr由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収、Prr(吸収強度)の決定に用いる)、またはmm由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してアイソタクチック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収、Pmm(吸収強度)の決定に用いる)と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引かずそのまま算出する。
【0033】
具体的には、特開2002-097325号公報の[0018]〜[0031]までに記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方の記載のうち、[0018]〜[0023]までの帰属に従い、第1領域、第2領域、第3領域のシグナルの積算強度から上記式(4)により計算することにより求める。
【0034】
また rr値の測定において、NMR測定は、例えば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-400型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、8,000回以上とする。
【0035】
rr値は、成分(B)がいわゆるシンジオタクチック構造の割合がより多い、ということを示す指標であり、前述した式(b4)を満たすことと類似する意味を有する指標である。
【0036】
本発明に係るプロピレン系重合体(B)が条件(b4)を満たす場合、プロピレン由来の構成単位を例えば40〜89モル%、好ましくは50〜89モル%、より好ましくは55〜80モル%、エチレン由来の構成単位を例えば1〜35モル%、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは5〜20)モル%、及び炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を例えば10〜45モル%、好ましくは10〜40モル%、より好ましくは15〜40モル%の範囲で含むプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα−オレフィン共重合体(B1)が望ましい。また、この場合、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の含量の、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量に対する割合(モル%)(Pb2−2)と、エチレン由来の構成単位の含量の、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量に対する割合(モル%)(Pb2−1)が、Pb2−2>Pb2−1の関係を満たすことが好ましく、P(b2−2)−P(b2−1)≧1モル%以上であることがより好ましい。
【0037】
本発明に係るプロピレン系重合体(B)が条件(b4)を満たす場合としては、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)以外にも、プロピレン由来の構成単位を例えば50〜89モル%、好ましくは55〜89モル%、より好ましくは65〜85モル%、エチレン由来の構成単位を例えば11〜50モル%、好ましくは11〜45モル%、より好ましくは15〜35モル%含むプロピレン・エチレン共重合体(B2)を挙げることもできる。(B1)と(B2)とを比較すると、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)が好ましい。
【0038】
<プロピレン系重合体(B)の製造方法>
本発明に係るプロピレン系重合体(B)は、種々公知の製造方法により製造しうる。例えばシンジオタクチックプロピレンを製造可能な触媒でプロピレンとα−オレフィンとを共重合して得ることができる。より具体的には例えば、国際公開2008−059895号公報の方法により製造できるがこれに限定されるものではない。
【0039】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)は、非架橋の、または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーであり、通常、ポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィン(C2−1)と、α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)とを含有している。
【0040】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)を配合することにより得られるプロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、230℃、10kg荷重で測定されるMFRが0.001〜100g/10分、好ましくは0.01〜80g/10分の範囲にある。
【0041】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)には、以下の結晶性ポリオレフィン(C2−1)及びα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)に加え、任意成分として軟化剤(C2−3)及び/または無機充填剤(C2−4)を含めることができる。
【0042】
軟化剤(C2−3)としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができ、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
【0043】
軟化剤(C2−3)は、結晶性ポリオレフィン樹脂(C2−1)及びα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)の合計量100質量部に対し、通常、200質量部以下、好ましくは2〜100質量部の割合で用いられる。
【0044】
無機充填剤(C2−4)としては、具体的には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カリオン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーンなどが挙げられる。
【0045】
無機充填剤(C2−4)は、結晶性ポリオレフィン(C2−1)及びα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)の合計量100質量部に対して、通常、100質量部以下、好ましくは2〜50質量部の割合で用いられる。
【0046】
[結晶性ポリオレフィン(C2−1)]
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)を構成する結晶性ポリオレフィン(C2−1)は、高圧法または低圧法の何れかによる1種または2種以上のα‐オレフィンを重合して得られる結晶性の重合体である。このような結晶性ポリオレフィンとしては、たとえばアイソタクチックおよびシンジオタクチックのα‐オレフィン重合体が挙げられるが、これらの代表的な重合体は商業的に入手できる。
【0047】
結晶性ポリオレフィン(C2−1)を構成するα‐オレフィンとしては、具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンを例示できる。結晶性ポリオレフィンは、上記α‐オレフィンの単独重合体であっても、二種以上のα‐オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0048】
結晶性ポリオレフィン樹脂(C2−1)としては、特に、プロピレン含量が70モル%以上、好ましくはプロピレン含量が80モル%以上のアイソタクチックポリプロピレンが好適に用いられる。
【0049】
結晶性ポリオレフィン(C2−1)は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
結晶性ポリオレフィン(C2−1)は、MFR(JIS K 7210、2.16kg荷重、230℃)は、通常0.01〜100g/10分、特に0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0050】
結晶性ポリオレフィン(C2−1)は、DSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が120〜165℃であることが好ましく、130〜160℃の範囲にあることが更に好ましい。
【0051】
結晶性ポリオレフィン(C2−1)は、通常、結晶性ポリオレフィン(C2−1)及びα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)の合計量100質量部中に、10〜60質量部、好ましくは20〜55質量部の割合で用いられる。
【0052】
[α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)]
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)を構成するα−オレフィン系重合体ゴム(C2−2)は、炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜12のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエン、例えば非共役ジエンとを共重合して得られるゴムである。
【0053】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。
【0054】
α−オレフィン系重合体ゴム(C2−2)は、上記のようなα−オレフィンを1種単独で用いても良く、また2種以上の混合物として用いても良い。4−メチル−1−ペンテンと、他のα−オレフィンとを混合物として用いる場合、4−メチル−1−ペンテンと、他のα−オレフィンとのモル比(他のα−オレフィン/4−メチル−1−ペンテン)は、10/90〜95/5の範囲内にあることが好ましい。
【0055】
上記α−オレフィンのうち、特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましく用いられる。
α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)としては、例えば、エチレン由来の構成単位と炭素数3以上のα−オレフィン由来の構成単位とを含有する共重合体であって、エチレン由来の構成単位と炭素数3以上のα−オレフィン由来の構成単位との比率であるエチレン/炭素数3以上のα−オレフィン(モル比)が40/60−95/5であるものが挙げられる。
【0056】
非共役ポリエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどが挙げられる。中でも、特に5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン(EMND)が望ましい。
【0057】
α−オレフィン系重合体ゴム(C2−2)は、上記のような非共役ポリエン、例えば非共役ジエンを含む場合は、1種単独で用いてもよく、また2種以上の混合物として用いてもよい。さらに、上記のような非共役ポリエンの他に、他の共重合可能なモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0058】
α−オレフィン系重合体ゴム(C2−2)において、非共役ポリエンが共重合されている場合には、共重合体中の非共役ポリエンに由来する構成単位の含有量は、0.01〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%の範囲内(ただし、該α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)中の構成単位の全量を100モル%とする。)にある。
【0059】
α−オレフィン系共重合ゴム(C2−2)としては、α−オレフィンと非共役ポリエンの共重合体が好ましい。特にエチレン・炭素数3以上のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの比率であるエチレン/炭素数3以上のα−オレフィン(モル比)が40/60〜95/5であり、かつ非共役ポリエン由来の構成単位を0.01〜30モル%含有するものが好ましく挙げられる。
【0060】
α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)は、通常、135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、1.0〜10.0dl/g、好ましくは1.5〜7dl/gの範囲にある。また、特に制限はないが、前記α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)のDSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)は、存在しないかまたは120℃未満に存在することが好ましい。
【0061】
α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)は、結晶性ポリオレフィン(C2−1)及びα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)の合計量100質量部中に、90〜40質量部、好ましくは80〜45質量部の割合で用いられる。
【0062】
α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)は、以下の方法で製造することができる。前記α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)は、オレフィン重合用触媒の存在下に、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ジエンとを共重合させることにより得られる。
【0063】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)の製造方法>
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)は、例えば、結晶性ポリオレフィン(C2−1)と、α−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)と、必要に応じて配合される軟化剤(C2−3)及び/または無機充填剤(C2−4)と、混合物を、下記のような有機過酸化物の存在下に、動的に熱処理して部分的に架橋することによって得られる。
【0064】
ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert− ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0065】
このような有機過酸化物は、被処理物全体、すなわち結晶性ポリオレフィン(C2−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)の合計量100質量部に対し0.02〜3質量部、好ましくは0.05〜1質量部となるような量で用いられる。この配合量が上記範囲であれば、得られる熱可塑性エラストマー(C)は、適度に架橋されているため、耐熱性、成形性なども十分であり、場合によっては、引張特性、弾性回復および反発弾性等も優れる。
【0066】
有機過酸化物による部分架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,N'−m−フェニレンジマレイミド等のパーオキシ架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合してもよい。
【0067】
上記のような架橋助剤などの化合物を用いることにより、均一かつ温和な架橋反応が期待できる。このような架橋助剤あるいは多官能性ビニルモノマーなどの化合物は、上記被処理物全体100質量部に対し、通常、2質量部以下、さらに好ましくは0.3〜1質量部となるような量で用いられる。
【0068】
また有機過酸化物の分解を促進するために、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノ)フェノール等の三級アミンや、アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等のナフテン酸塩などの分解促進剤を用いてもよい。
【0069】
動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。その温度は、結晶性ポリオレフィン(C2−1)の融点から300℃の範囲であり、通常、150〜250℃、好ましくは170〜225℃である。混練時間は、通常、1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
【0070】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
【0071】
上述した動的な熱処理によって、結晶性ポリオレフィン(C2−1)とα−オレフィン系共重合体ゴム(C2−2)とからなるまたは部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)が得られる。
【0072】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)が部分的に架橋されたとは、下記の方法で測定したゲル含量が20%以上、好ましくは20〜99.5%、特に好ましくは45〜98%の範囲内にある場合をいう。ゲル含量の測定は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)の試料を100mg秤取し、これを0.5mm×0.5mm×0.5mmの細片に裁断したものを、密閉容器中にて30mlのシクロヘキサンに、23℃で48時間浸漬した後、試料を濾紙上に取出し、室温で72時間以上、恒量となるまで乾燥することにより行うことができる。
【0073】
この乾燥残渣の重量から、重合体成分以外のすべてのシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量、およびシクロヘキサン浸漬前の試料中の結晶性ポリオレフィン樹脂(C2−1)の重量を減じたものを、「補正された最終重量[y]」とする。
【0074】
一方、試料中のα−オレフィン系共重合体(C2−2)の重量を、「補正された初期重量[x]」とする。ここに、ゲル含量は、次の式で求められる。
ゲル含量[wt%]=(補正された最終重量[y]/補正された初期重量[x])×100。
【0075】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)は、例えば、DSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が120〜165℃、好ましくは130〜160℃の範囲にあるものであってもよい。
【0076】
<スチレン系エラストマー(D)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるスチレン系エラストマー(D)は、重合体成分としてスチレンを含むエラストマーである限り、特に制限はないが、スチレン・ジエン系熱可塑性エラストマーが好ましい。特に、その中でもブロック共重合体エラストマー、ランダム共重合体エラストマーが好ましい。ここでスチレン系成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物などを例示でき、ジエン系成分としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンおよびこれらの混合物などを例示できる。
【0077】
本発明に係るスチレン系エラストマー(D)の代表例としては、ポリブタジエンブロックセグメントと、スチレン系化合物(スチレンを含む。以下において同じ)・ブタジエン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;ポリイソプレンブロックセグメントと、スチレン系化合物・イソプレン共重合体ブロックセグメントとからなる水添ジエン系重合体;スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体;スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物;およびスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。
【0078】
本発明に係るスチレン系熱可塑性エラストマー(D)における、スチレン系成分の含有量は特に制限されないが、5〜40重量%の範囲であれば、特に柔軟性およびゴム弾性の点で好ましい。
【0079】
本発明に係るスチレン系エラストマー(D)は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、スチレン系エラストマー(D)は市販のものを用いることができる。
【0080】
スチレン系エラストマー(D)のMFRは、スチレン系エラストマー(D)を配合することにより得られるプロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、JIS K−7210,230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
【0081】
<α−オレフィン共重合体(E)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるα−オレフィン共重合体(E)は、プロピレン由来の構成単位を40〜85モル%、好ましくは60〜82モル%、より好ましくは61〜75モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、好ましくは8〜15モル%、より好ましくは10〜14モル%、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%、好ましくは10〜25モル%、より好ましくは15〜25モル%の範囲(ここで、プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα-オレフィン由来の構成単位の合計は100モル%である。また、エチレン由来の構成単位、及び炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計は60〜15モル%であることが好ましい。)で含み、且つ、かつ、mmが85%以上、好ましくは87%、より好ましくは90%以上であり、mmの上限が、100%、好ましくは97.5%、より好ましくは97%である、プロピレン・エチレン及び炭素数4〜20との共重合体である。炭素数4〜20のα-オレフィンとしては、1−ブテンが好ましく用いられる。
【0082】
本発明に係るα−オレフィン共重合体(E)は、α−オレフィン共重合体(E)を混合することにより得られるプロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
【0083】
本発明に係るα‐オレフィン共重合体(E)は、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3である。
【0084】
本発明に係るα‐オレフィン共重合体(E)は、好ましくは、下記(o)および(p)の少なくとも1つ以上、より好ましくは両方を満たすことが望ましい。
(o)ショアーA硬度が30〜80、好ましくは35〜60である。
(p)X線回折で測定した結晶化度が20%以下、好ましくは10%以下である。
【0085】
本発明に係るα‐オレフィン共重合体(E)は、好ましくは、DSCで測定した融点Tmが、50℃以下であるか、または融点が存在しないことが望ましく、特に、融点が存在しないことがより好ましい。本発明において、融点が存在しないとは、融解ピークに起因する融解熱量△Hが1J/g以下であることをいう。
【0086】
<α‐オレフィン共重合体(E)の製造方法>
本発明に係るα−オレフィン共重合体(E)は、例えば国際公開2004/087775号パンフレット記載の方法を用いて製造できる。
【0087】
<アイソタクチックプロピレン系重合体(F)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、NMR法により測定したアイソタクチックペンタッド分率が通常、0.85以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上のプロピレン系重合体ある。
【0088】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、先行公報(特開2003-147135号公報)に記載されている方法で測定、計算される。
本発明に係るアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとの共重合体である。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられるが、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα-オレフィンが好ましい。
【0089】
これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
これらのα−オレフィン由来の構成単位は、ポリプロピレン中に35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含まれていてもよい。好ましくはプロピレン由来の構成単位が90−100モル%であり、共重合体の場合、好ましくはプロピレン由来の構成単位はプロピレン由来の構成単位とαオレフィン由来の構成単位との合計のうちの90−99モル%、より好ましくは92−98モル%である。
【0090】
本発明に係るアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0091】
本発明に係るアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、必要に応じて複数のアイソタクチックポリプロピレンを併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
【0092】
本発明に係るアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、耐熱性に優れるプロピレンの単独重合体あるいはα‐オレフィン由来の共重合成分が3モル%以下の重合体、耐熱性および柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30重量%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性および透明性のバランスに優れるプロピレンとα‐オレフィンのランダム共重合体(通常DSCにより測定される融点が110℃〜150℃の範囲にある公知のもの)を、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
【0093】
本発明に係るアイソタクチックプロピレン系重合体(F)は、例えば、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒系で、プロピレンを重合、またはプロピレンと他のα―オレフィンとを共重合することにより製造できる。
【0094】
<エチレン・酢酸ビニル共重合体(G)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるエチレン・酢酸ビニル共重合体(G)は、通常、プロピレン系重合体(A)及びプロピレン系共重合体(B)との相溶性を考慮して酢酸ビニルから導かれる単位を1〜49重量%、好ましくは5〜49重量%含む共重合体である。酢酸ビニルから導かれる単位が上記範囲より少なすぎるとエチレン・酢酸ビニル共重合体を混入する効果が著しく減少する。
【0095】
本発明に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(G)は、通常、MFR(JIS K−7210・1999、190℃、2.16kg荷重)が0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にある。MFRが上記範囲にあることにより良好な流動性を示し、他の成分と配合し易く、また得られるプロピレン系重合体組成物の成形性に優れる。
【0096】
<エチレン系重合体(H)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるエチレン系重合体は、密度が850〜930kg/m3、好ましくは860〜930kg/m3、より好ましくは860〜920kg/m3の範囲にあるエチレンの単独重合体あるいはエチレンと炭素数3〜20のα‐オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル‐1−ペンテン、3‐メチル‐1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサンなどのエチレンを主成分とする共重合体である。エチレン系重合体(H)の密度が前記範囲内にあると、柔軟なシート/フィルムを得ることができる。本発明に係るエチレン系重合体(H)が共重合体である場合は、通常、α‐オレフィンから導かれる単位の含有量は5〜49モル%の範囲にある。
【0097】
本発明に係るエチレン系重合体(H)は、通常、MFR(JIS K−7210・1999、190℃、2.16kg荷重)が0.05〜100g/10分、好ましくは0.5〜100g/10分の範囲にある。MFRが上記範囲にあることにより、得られるプロピレン系重合体組成物の成形性や物性が優れる。
【0098】
<プロピレン系重合体組成物>
本発明のプロピレン系重合体組成物は、前記プロピレン系重合体(A)を1〜35質量部、好ましくは2〜20質量部、前記プロピレン系共重合体(B)を5〜95質量部、好ましくは10〜85質量部含み、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)、前記スチレン系エラストマー(D)、前記α−オレフィン共重合体(E)、及び、前記アイソタクチックプロピレン系重合体(F)のいずれか少なくとも1種を、(C)、(D)、(E)についてはそれぞれ0〜94質量部、好ましくは0〜50質量部、(F)については0〜49質量部、好ましくは0〜45質量部、さらに好ましくは0〜40質量部、特に好ましくは0〜35質量部、さらには0〜35質量部、特には0〜25質量部含み、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(G)及び/又はエチレン系重合体(H)を0〜60質量部、好ましくは0〜50質量部含み、且つ、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)〜前記エチレン系重合体(H)を合計で1〜94質量部、好ましくは13〜88質量部含む〔但し、(A)〜(H)の重合体の合計を100質量部とする。〕組成物である。〔以下、各重合体は、単に(A)〜(H)と表記する場合がある。〕
【0099】
本発明のプロピレン系重合体組成物として、3種の重合体を含む例としては、(A)+(B)+(C)、(A)+(B)+(D)、(A)+(B)+(E)及び(A)+(B)+(F)を例示できる。
【0100】
本発明のプロピレン系重合体組成物として、4種の重合体を含む例としては、(A)+(B)+(C)+(D)、(A)+(B)+(C)+(E)、(A)+(B)+(C)+(F)、(A)+(B)+(D)+(E)、(A)+(B)+(D)+(F)、及び、(A)+(B)+(E)+(F)、あるいは、(A)+(B)+(C)+(G)、(A)+(B)+(C)+(H)、(A)+(B)+(D)+(G)、(A)+(B)+(D)+(H)、(A)+(B)+(E)+(G)、(A)+(B)+(E)+(H)、(A)+(B)+(F)+(G)、及び(A)+(B)+(F)+(H)を例示できる。
【0101】
本発明のプロピレン系重合体組成物として、5種の重合体を含む例としては、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)、(A)+(B)+(C)+(D)+(F)、(A)+(B)+(C)+(E)+(F)及び(A)+(B)+(D)+(E)+(F)、あるいは、(A)+(B)+(C)+(G)+(H)、(A)+(B)+(D)+(G)+(H)、(A)+(B)+(E)+(G)+(H)、及び(A)+(B)+(F)+(G)+(H)、若しくは、(A)+(B)+(C)+(D)+(G)、(A)+(B)+(C)+(D)+(H)、(A)+(B)+(C)+(E)+(G)、(A)+(B)+(C)+(E)+(H)、(A)+(B)+(C)+(F)+(G)、(A)+(B)+(C)+(F)+(H)、(A)+(B)+(D)+(E)+(G)、(A)+(B)+(D)+(E)+(H)、(A)+(B)+(D)+(F)+(G)、(A)+(B)+(D)+(F)+(H)、(A)+(B)+(E)+(F)+(G)、及び(A)+(B)+(E)+(F)+(H)を例示できる。
【0102】
本発明のプロピレン系重合体組成物として、6種の重合体を含む例としては、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)、あるいは、(A)+(B)+(C)+(D)+(G)+(H)、(A)+(B)+(C)+(E)+(G)+(H)、(A)+(B)+(C)+(F)+(G)+(H)、(A)+(B)+(D)+(E)+(G)+(H)、(A)+(B)+(D)+(F)+(G)+(H)、(A)+(B)+(C)+(E)+(F)+(H)、及び(A)+(B)+(E)+(F)+(G)+(H)、若しくは(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(G)、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(H)、(A)+(B)+(C)+(D)+(F)+(G)、(A)+(B)+(C)+(D)+(F)+(H)、(A)+(B)+(D)+(E)+(F)+(G)、及び、(A)+(B)+(D)+(E)+(F)+(H)を例示できる。
【0103】
本発明のプロピレン系重合体組成物として、7種の重合体を含む例としては、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(G)+(H)、(A)+(B)+(C)+(D)+(F)+(G)+(H)、及び、(A)+(B)+(D)+(E)+(F)+(G)+(H)、あるいは、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)+(G)、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)+(H)を例示できる。
【0104】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、また、(A)〜(H)の重合体全てを含んでいてもよい。
本発明のプロピレン系重合体組成物は、前記した例に限らず、(A)〜(H)の重合体は、二種以上の重合体であってもよい。
【0105】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、(A)及び(B)に加え、(C)、(D)、(E)のいずれか1種以上を含むことにより、柔軟性と耐摩耗性が優れており、特に(C)、(D)のうち1種以上を含む場合は、耐摩耗性と柔軟性とのバランスがさらに良い。
【0106】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、更に、(F)、(G)、あるいは(H)を含むことにより、柔軟性を適宜調節することができる。
本発明のプロピレン系重合体組成物の中でも、特に柔軟性と耐摩耗性とのバランスに優れる組成物としては、一例として、(A)及び(B)に加え、(C)〜(H)から以下のように選択した構成を有する組成物が挙げられる。
【0107】
(C)、(C)と(E)との組み合わせ、(C)と(H)との組み合わせ、(D)、(D)と(E)との組み合わせ、(D)と(H)との組み合わせ、(C)と(D)との組み合わせ、(C)と(D)と(E)との組み合わせ、(C)と(D)と(H)との組み合わせなどが挙げられる。もちろんこの例に限定されるものではなく、さらに適宜柔軟性を調節するために、(F)や(G)を含んでも良い。
【0108】
上記のようなプロピレン系重合体組成物は、例えば1mm厚のプレスシートについて、JISK7215に従って測定したデュロメータA硬さが70以下、好ましくは40−70である組成物を得ることができ、このような組成物は耐摩耗性にも優れており、より好ましい。
【0109】
本発明のプロピレン系重合体組成物が、柔軟性でありながら、耐摩耗性に優れる理由は定かではないが、以下のように考えることができる。すなわち耐摩耗性は、重合体組成物に含まれる各成分の相溶性に大きく影響されると考えられるが、本発明のプロピレン系重合体組成物は、マトリックス中に分散相が適度な大きさで分散した構造をとっているのではないかと考えられる。その結果、耐摩耗性は、相分離しているモルフォロジーにおいて分散相の粒径が小さいために、分散相界面を起点とした、界面剥離に由来する摩耗損失が起きにくくなると考えられる。
【0110】
なお、本発明においては、プロピレン系重合体組成物の分散相の粒径が小さいであろうということは、プレスシートのヘイズ値が比較的小さいことから裏付けられる。もちろん、ヘイズは単に相溶性によってのみ決まるものでなく、各構成成分の屈折率の影響も受けることがあるので、樹脂の種類によってはいつもヘイズと分散粒径との間に明確な相関があるわけではないが、概ねある程度の相関がある場合が多いと考えられる。
【0111】
例えば本発明の実施例に記載した方法で測定した1mm厚プレスシートのヘイズが例えば50%以下となるようなプロピレン系樹脂組成物は、耐摩耗性により優れる傾向にある。
【0112】
本発明のプロピレン系重合体組成物において、(A)及び(B)に加えて、(D)を含む場合は、任意の他の成分は(C)、(E)、(F)及び(G)から選ばれる成分を含むことが望ましい。
【0113】
本発明のプロピレン系重合体組成物において、(B)、(C)、(D)、(E)及び(H)の重合体は、柔軟性に寄与し、合計で(A)〜(H)の合計を100質量部とした場合、30質量部以上含むことが望ましく、40質量部以上含むことが、より好ましい。
【0114】
本発明のプロピレン系重合体組成物において、(A)+(B)+(C)+(E)+(F)の含有量は、(A)〜(H)の合計を100質量部とした場合、40質量部以上が望ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上であることがさらに好ましい。かかる範囲で上記成分を含む場合、耐摩耗性に優れる。さらに透明性も特に良い傾向がある。相溶性がさらに向上するのではないかと考えられる。
【0115】
本発明のプロピレン系重合体組成物において、(G)を含む場合は、(G)以外の成分は(C)、(E)、(F)及び(H)から選ばれるものを採用すると、耐摩耗性の点から、より望ましい。また(D)を含む場合は、任意の他の成分は(C)、(E)、(F)及び(G)から選ばれることが、耐摩耗性の点からより望ましい。
【0116】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例7で代表される(A)+(B)+(C)+(D)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜80質量部、(C)を10〜50質量部、及び、(D)を5〜50質量部〔(A)+(B)+(C)+(D)=100質量部〕含む組成物は、柔軟性と耐摩耗性が両立した組成物となる。
【0117】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例10で代表される(A)+(B)+(C)+(D)+(F)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜75質量部、(C)を10〜50質量部、(D)を10〜50質量部、及び、(F)を1〜40質量部〔(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100質量部〕含む組成物は、柔軟性と耐摩耗性が両立した組成物となる。
【0118】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例5で代表される(A)+(B)+(D)+(F)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜80質量部、(D)を10〜50質量部、及び、(F)を5〜40質量部〔(A)+(B)+(D)+(F)=100質量部〕含む組成物は、優れた耐摩耗性を有する組成物となる。
【0119】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例4で代表される(A)+(B)+(C)+(E)+(F)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜65質量部、(C)を10〜50質量部、(E)を10〜50質量部、及び、(F)を10〜40質量部〔(A)+(B)+(C)+(E)+(F)=100質量部〕含む組成物は、優れた耐摩耗性を示し、さらに透明性にも優れるので、透明性が求められる用途へ使用し得る。
【0120】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例3で代表される(A)+(B)+(C)+(H)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜80質量部、(C)を10〜50質量部、及び(H)を5〜50質量部〔(A)+(B)+(C)+(H)=100質量部〕含む組成物は、優れた耐摩耗性を示し、透明性にも優れるため透明性が求められる用途へ使用し得る。
【0121】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例11で代表される(A)+(B))+(E)+(F)+(H)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜80質量部、(E)を10〜50質量部、(F)を1〜40質量部、及び(H)を5〜50質量部〔(A)+(B)+(C)+(E)+(F)+(H)=100質量部〕含む組成物は、優れた耐摩耗性を示し、さらに透明性にも優れるため透明性が求められる用途へ使用し得る。
【0122】
本発明のプロピレン系重合体組成物の内、実施例6で代表される(A)+(B)+(D)+(H)からなり、それぞれ、(A)を1〜15質量部、(B)を10〜80質量部、(D)を10〜50質量部、及び、(H)を5〜50質量部〔(A)+(B)+(D)+(E)+(F)+(H)=100質量部〕含む組成物は、優れた柔軟性と耐摩耗性が両立した組成物となる。
【0123】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、230℃、2.16kg荷重でJIS K−7210に準拠して測定したMFRが、通常、0.01〜50g/10分、好ましくは0.01〜30g/10分の範囲にある。
【0124】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、上記各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0125】
本発明のプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、無機充填剤、造核剤、酸化防止剤、難燃材剤、帯電防止剤、顔料、染料、発錆防止剤などの添加物を添加することができる。
【0126】
前記無機充填剤の代表例としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、クレー、ゼオライトなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0127】
本発明のプロピレン系重合体組成物に無機充填剤を加える場合は、プロピレン系重合体組成物100質量部に対して、0.1〜300質量部、好ましくは1〜250質量部、より好ましくは100〜200質量部の範囲で添加し得る。
【0128】
前記造核剤の代表例としては、例えば安息香酸ナトリウム、ビスベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、ソジウム−2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、タルク、酸化チタン、アルミニウムヒドロキシージーp−t−ブチルベンゾエートなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0129】
前記酸化防止剤の代表例としては、例えばペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系酸化防止剤、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネートなどのイオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0130】
難燃剤の代表例としては水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、リン系化合物をなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明のプロピレン系重合体組成物に上記添加物を添加する場合は、上記添加物を混合した後、ロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等の通常の混練機で混練して組成物を調製する方法を採り得るが、通常はペレット状にするのが好ましい。
【0131】
<プロピレン系重合体組成物の用途>
本発明のプロピレン系重合体組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができ、例えばシート、未延伸または延伸フィルム、フィラメントなどを含む種々の形状の成形体に成形して利用することができる。
【0132】
成形体として具体的には、カレンダー成形、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。
【0133】
以下に数例挙げて成形体を説明する。本発明に係る成形体がたとえばカレンダー成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、たとえばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、フィラメントなどが挙げられ、特にシート、フィルム、フィラメントなどが好ましい。
【0134】
本発明のプロピレン系重合体組成物を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、たとえば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した本発明のプロピレン系重合体組成物をTダイなどから押出すことによりシートまたはフィルム(未延伸)などに成形することができる。
【0135】
<シート成形>
本発明のプロピレン系重合体組成物は、特にシート〔一般に、厚さが厚いものをシート、薄いものをフィルムと呼称するが、本発明においては、シートおよびフィルムを総称して「シート」と呼ぶ。〕成形に適する。本発明のプロピレン系重合体組成物を用いてシート成形する場合は、
(工程1):プロピレン系重合体組成物を加熱溶融する工程と、
(工程2):加熱溶融したプロピレン系重合体組成物をシート成形する工程で行い得る。
また、前記(工程1)と(工程2)の間に、加熱溶融したプロピレン系重合体組成物を混練する工程を含んでもよい。
【0136】
<カレンダー成形>
本発明のプロピレン系重合体組成物は、特にカレンダー成形に適する。本発明のプロピレン系重合体組成物を用いてカレンダー成形する場合は、
(工程1):プロピレン系重合体組成物を加熱溶融する工程と、
(工程2−1):カレンダー加工により、シート成形する工程で行い得る。
【0137】
また、前記(工程1)と(工程2‐1)の間に、加熱溶融したプロピレン系重合体組成物を混練する工程を含んでもよい。
また、前記(工程2)が、
(工程2−2):カレンダー加工により、シート成形と貼り合わせを同時に行う工程により、シート積層体を得る工程を含んでもよい。
【0138】
<人造皮革の成形>
人造皮革の成形は、(工程2−1)カレンダー加工により、シート成形する工程や、(工程2−2)カレンダー加工により、シート成形と貼り合わせを同時に行う工程で積層体を得る方法などが好ましいが、前記(工程1)と(工程2)で得られたシートを引き取り、別途基材と貼り合わせてもよい。
【0139】
また、シートの表面に、熱融着やニードルパンチなどにより、型模様を付すエンボス加工の工程を本発明のシートないし積層体の製造過程の適当な段階で加えてもよい。
すなわち、エンボス加工を本発明のシートに直接行ってもよいし、積層体において、エンボス加工後のシートと基材を貼り合わせて積層体を製造してもよいし、積層体にした後にエンボス加工を行ってもよい。
【0140】
<積層体>
本発明のプロピレン系重合体組成物から得られるシートは、用途により、種々公知の基材と積層して用い得る。
【0141】
積層し得る基材としては、合成繊維、天然繊維、無機繊維、またはこれらの混合物のうち少なくとも1つからなる、織布、編布、不織布、銀面層がある。
合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーンなどからなる合成繊維が挙げられる。
【0142】
天然繊維としては、綿、麻、絹、羊毛などが挙げられる。
無機繊維としては、グラスファイバー、炭素繊維などが挙げられる。
また、織布としては、例えば、繊維質素材から作られた織物、編物などを挙げることができる。また不織布としては、繊維質素材を化学的方法、機械的方法、またはそれらの組み合わせにより絡み合わせてウェッブとしたものが挙げられる。
【0143】
<人造皮革>
本発明のプロピレン系重合体組成物は人造皮革として用い得る。人造皮革は、自動車(二輪含む)、スポーツ、家電、文具、雑貨、家具、衣料、園芸、建材分野で使用され得る。
【0144】
具体的には、自動車の床材、天井材、インストルメントパネル、ドアトリム、内装シート、座席レザー、シートバック、自転車サドル、デッキボード、床マット、滑り止めマット、レジャー用シート、ガスケット、防水シート、椅子表皮、鞄、ランドセル、陸上競技用シューズやマラソンシューズ、ランニング用シューズ、バスケットシューズ、テニスシューズ、ゴルフシューズ、ウォーキングシューズ、ジャンバー、コート、安全ウェア、手袋、スキーウェア、防寒用登山服、帯、たすき、リボン、携帯電話ストラップ、スイッチプレート、ジャケット、ネームタグ、ゴルフバッグ、時計ベルト、鞄グリップ、ゴルフクラブグリップ、ブーツ、手帳カバー、ブックカバー、キーホルダー、灰皿ケース、タバコケース、携帯ケース、ペンケース、ペングリップ、財布、名刺入れ、定期入れ、畳表裏、壁紙、ショルダー紐、サンダル、スリッパ、ボート、ウォータベッド、テント生地、アルバム、アドレス帳カバー、介護用品(ベッドカバー)、野球ボール、バスケットボール、ハンドボール、ドッジボール、テーブルクロス、アコーディオンカーテン、照明器具、ぬいぐるみ、下敷き、机カバー、額縁、馬具、ベルト、帽子、手袋、パラシュート、カヤック、ソファ、クッションカバー、ボール表皮、マウスパッド、ワッペン、バッジ、ブレスレット、ネックレス、収納ボックス、温室用シート、箪笥、テーブル、ティッシュボックスが挙げられるが上記に限定されない。
【0145】
耐摩耗性、耐傷付性などに優れる点や耐水性や軽量化、良リサイクル性の観点から、自動車の床材、天井材、インストルメントパネル、ドアトリム、内装シート、座席レザーなど自動車内装部材用途に特に適する。
【0146】
また、耐水性、軽量性、匂いや色移りがないことからマット、畳表裏、ランニングシューズ、登山靴、ボール、カヤック、スキーウェアなどのスポーツ用品に特に適する。
【実施例】
【0147】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0148】
(1)MFR
MFRの測定は、JIS K−7210(1999年)に従い、(A)(B)(D)(E)(F)については230℃、2.16kg荷重で、(C)については、230℃、10kg荷重で、(G)(H)については、190℃、2.16kg荷重で測定を行った。
【0149】
(2)密度(kg/m3
密度の測定は、測定サンプルを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで冷却した後、密度勾配管により行った。
【0150】
(3)極限粘度[η](dl/g)
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0151】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6- HTを2本およびTSKgel GNH6- HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0152】
(5)各重合体中のエチレン、プロピレン、α−オレフィン含量
エチレン、プロピレン、α−オレフィン含量の定量化は日本電子(株)製JNM GX-400型NMR測定装置を用いて、下記のように測定した。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C・NMR測定を行う。積算回数は、8,000回以上とする。得られた13C・NMRスペクトルにより、エチレン、プロピレン、α−オレフィンの組成を定量化した。
【0153】
(6)立体規則性(rrrrペンタッドおよびrrトライアッド)
立体規則性は、上記同条件で13C・NMR測定にて定量化した。
ペンタッド分率(rrrr分率)は、13C・NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)
の吸収強度から下記式(1)により求められる。
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw・・・(1)
【0154】
トライアッド分率(rr分率)は、13C・NMRスペクトルにおけるPrr(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクチック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(4)により求められる。
rr分率(%)=100×Prr/Pw・・・(4)
【0155】
(7)mmmm
mmmmは、特開2003−147135記載の方法で測定を行った。
【0156】
(8)融点(Tm)及び融解熱量(ΔH)(J/g)
融点(Tm)及び融解熱量(ΔH)セイコ-インスツルメンツ社製DSCを用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、50℃/分で230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、10℃/分で−100℃まで降温し、次いで、5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温した。この最後の昇温時の吸熱曲線より求めた。
【0157】
(9)内部ヘイズ
内部ヘイズを測定する試料として、200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、プロピレン系重合体組成物を用い、1mm厚のプレスシートを成形した。このとき余熱を5〜7分程度し、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。
【0158】
得られたプレスシートを23℃で24時間、状態調節のために静置した後、測定に用いた。ヘイズメーターとして日本電色工業株式会社製 NDH2000を用い、JIS K−7105に従い、測定法A,シクロヘキサノール中で、光源Cを用いて、23℃で測定した。
【0159】
(10)デュロメーターA硬度
試料として、上記(9)の方法で作成し、状態調節して得たプレスシートを用い、JIS K−7215に従って、保持時間5秒で測定した。
【0160】
(11)軟化温度
上記(9)の方法で作成し、状態調節して得た厚さ1mmのプレスシートを試料として用意し、JIS K−7206に従って測定した。
【0161】
(12)耐摩耗性(テーバ−摩耗試験)
試料として、上記プレスシートを用い、JIS K−7204に準拠し、23℃、摩耗輪;H−22、回転速度;60回転/分(60rpm)、回転回数;500回、荷重;1000gで摩耗損失量を測定した。
実施例及び比較例で用いた重合体を以下に示す。
【0162】
(A)プロピレン系重合体(A−1)
充分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150リットル/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、充分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネチックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を5.00mmol、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液5.0μmolを加え、20分間攪拌した。この溶液を、プロピレンを流通させておいたガラス製オートクレーブのトルエンに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で45分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、重合体を析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、重合体2.38gが得られた。重合活性は0.63kg-PP/mmol-Zr・hrであり、得られたプロピレン単独重合体(A−1)の極限繊度[η]は1.9dl/g、Tm=158℃(Tm1=152℃、Tm2=158℃)であり、ペンタッド分率(rrrr分率)は93.5%であり、融解熱量(△HC)は57J/gであり、Mw/Mn=2.0であった。MFR(JIS K6721、230℃、2.16kg荷重)は6.0g/10分であった。
【0163】
(B)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1‐ブテン120gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を60℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.33MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.63MPaに調整した。次いで、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温60℃、系内圧力を0.63MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液から重合体を析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)は97gであり、135℃デカリン中で測定した極限繊度[η]=2.3(dl/g)であった。MFR(JIS K6721、230℃、2.16kg荷重)は1.3g/10分であった。すなわち、式(1)(条件(b4))の左辺の値は、1.50×(1.3)(-0.20)=1.42、右辺の値は2.65×(1.3)(-0.20)=2.51であり、式(1)を満たしていることがわかる。
DSCより得られたガラス転移点は−23.8℃であり、融解熱量(ΔHB)は1J/g以下であった。
【0164】
プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)の組成はプロピレン由来の構成単位が62モル%、エチレン由来の構成単位が10モル%、1−ブテン由来の構成単位が28モル%であった。
【0165】
(C)オレフィン系熱可塑性エラストマー(C−1)
温度:230℃、荷重:10kgで測定したMFR:25g/10分、デュロメータA硬さ:52の部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製、商品名:ミラストマーTM5030NS)を用いた。
【0166】
(D)スチレン系エラストマー(D−1)
温度:230℃、荷重:2.16gで測定したMFR:4.5g/10分、デュロメータA硬さ:42のスチレン系ブロック共重合エラストマー(旭化成株式会社製 商品名タフテックTMH1221)を用いた。
【0167】
(E)α−オレフィン共重合体(E−1)
充分に窒素置換した2000mLの重合装置に、917mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られた共重合体は、60.4gであった。得られたα−オレフィン共重合体は、エチレン含量=14.0モル%、1−ブテン含量=19モル%、MFR=7g/10min、[η]=2.0、融点=観測されず(ΔH:0.5J/g未満)、分子量分布(Mw/Mn)=2.0、ショアーA硬度=45、mm=92%のプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体である。
【0168】
(F)アイソタクチックプロピレン系重合体
(1)プロピレン・エチレンランダム共重合体(F−1)
プロピレン含有量:95.5モル%、エチレン含有量:4.5モル%、mmmm:97.5%以上、融点:146℃、及び、温度:230℃、荷重:2160gで測定したMFR:30g/10分。
【0169】
(2)プロピレン・エチレンランダム共重合体(F−2)
プロピレン含有量:97.0モル%、エチレン含有量:3.0モル%、mmmm:97.5%以上、融点:149℃、及び、温度:230℃、荷重:2160gで測定したMFR:20g/10分。
【0170】
なお、上記プロピレン・エチレンランダム共重合体(F−1)及びプロピレン・エチレンランダム共重合体(F−2)の立体規則性(mmmm)は、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
【0171】
(G)エチレン・酢酸ビニル共重合体(G−1)
酢酸ビニル含有量:25質量%、温度:190℃、荷重:2160gで測定したMFR:2g/10分、デュロメータA硬さ:86のエチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製、商品名 エバフレックスTM EV360)。
【0172】
(H)エチレン系重合体(H−1)
密度:885kg/m3、温度:190℃、荷重:2160gで測定したMFR:3.6g/10分のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製 商品名 タフマーTMA4085)。
【0173】
[実施例1〜11及び比較例1、2]
各重合体を表1及び表2に記載した量で、それぞれ秤量し、各重合体の混合物100重量部に対して、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.2重量部、配合し、二軸押出機を用いて、樹脂温度200℃で溶融混練して造粒することにより、プロピレン系重合体組成物を得た。
【0174】
得られたプロピレン系重合体組成物の物性を前記記載の方法で測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の重合体を含むプロピレン系重合体組成物;
(A)13C・NMRにより測定されるシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%含有するプロピレン系重合体:1〜35質量部、
(B)プロピレン由来の構成単位を40〜89モル%、炭素数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位を11〜60モル%含有し、以下の(b4)を満たすプロピレン系共重合体:5〜95質量部、
(b4)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と230℃、荷重2160gで測定したMFRが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
及び、(A)及び(B)に加え、以下の(C)〜(F)の重合体のいずれか少なくとも1種を含有し、(G)及び/又は(H)の重合体を下記に規定する範囲で任意に含んでもよく、且つ、(C)〜(H)の重合体を合計で1〜94質量部含む〔但し、(A)〜(H)の重合体の合計を100質量部とする。〕。
(C)非架橋の、または部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー:0〜94質量部、
(D)スチレン系エラストマー:0〜94質量部、
(E)プロピレン由来の構成単位を40−85モル%、エチレン由来の構成単位を5〜30モル%、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位を5〜30モル%含む。
かつ、mmが85%以上である、プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα−オレフィン共重合体:0〜94質量部、
(F)アイソタクチックプロピレン系重合体:0〜49質量部、
(G)エチレン・酢酸ビニル共重合体:0〜60質量部、
(H)密度が850〜930kg/m3のエチレン系重合体:0〜60質量部。
【請求項2】
(C)〜(E)の重合体の少なくともいずれか1種を含有する請求項1記載のプロピレン系重合体組成物。
【請求項3】
1mm厚のプレスシートについてJIS K‐7215に従って測定したデュロメータA硬さが70以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系重合体組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物からなる成形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物からなるシート。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系重合体組成物からなるフィルム。
【請求項7】
請求項5記載のシートまたは請求項6記載のフィルムを含む積層体。
【請求項8】
請求項5記載のシートまたは請求項6記載のフィルムを含む人造皮革。

【公開番号】特開2011−225890(P2011−225890A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−144364(P2011−144364)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】