説明

プロピレン/α−オレフィンのコポリマーから作製される繊維

弾性回復率Re(300パーセントのひずみおよび1サイクルでのパーセント)および密度d(g/cm3)によって特徴づけられ、弾性回復率および密度が次の関係:Re>1481−1629(d)を満たすプロピレン/α−オレフィン共重合体から繊維を得ることができるか、または、そのようなプロピレン/α−オレフィン共重合体を含む繊維。そのような共重合体はまた他の特性によっても特徴づけられ得る。そのような共重合体から作製された繊維は比較的大きい弾性回復率および比較的低い摩擦係数を有する。繊維は、所望されるならば、架橋することができる。織布または不織布をそのような繊維から作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン/α−オレフィンコポリマーから作製される繊維、および、そのような繊維の作製方法、ならびにそのような繊維から作製される製造物に関連する。
【背景技術】
【0002】
繊維は典型的にはその直径に従って分類される。モノフィラメント繊維は一般には、個々の繊維の直径がフィラメントあたり約15デニールよりも大きい繊維、通常はフィラメントあたり約30デニールよりも大きい繊維として定義される。ファインデニール繊維は一般には、フィラメントあたり約15デニール未満の直径を有する繊維を示す。ミクロデニール繊維は一般には、直径が100ミクロン未満である繊維として定義される。繊維はまた、繊維が作製されるプロセス、例えば、モノフィラメント繊維、連続巻き取り細フィラメント繊維、ステープルファイバーまたはショートカット繊維、スパンボンド繊維、および、メルトブローン(melt blown)繊維など、によって分類することができる。
【0003】
優れた弾性を有する繊維が、無数の耐久品(例えば、スポーツ用衣類および椅子張りなど)を順次製造するために使用される様々な布地の製造用に必要である。弾性は性能属性の1つであり、布地が着用者の身体または品物のフレームに適合する能力の1つの尺度である。好ましくは、布地は、反復使用時におけるその適合する着具合や、体温および他の高い温度(例えば、布地の洗濯時および乾燥時に経験する温度)における伸長および収縮を維持する。
【0004】
布地は典型的には、バイアス力を加えた後で高い割合の弾性回復率(すなわち、低い割合の永久ひずみ)を有するならば、弾性であるとして特徴づけられる。理想的には、弾性材料は、3つの重要な特性の組合せ、すなわち、(i)低い割合の永久ひずみ、(ii)ひずみにおける低い応力または負荷、および(iii)低い割合の応力緩和または負荷緩和の組合せ、によって特徴づけられる。言い換えれば、弾性材料は、下記の特性を有するとして特徴づけられる:(i)材料を伸張するための低い応力要求または負荷要求、(ii)一旦材料が伸張されると、応力の緩和がないかもしくは低いか、または負荷がかからないこと、および(iii)伸張、バイアス付加または引張りが中断された後での、元の寸法への回復が完全であるか、または、大きいこと。
【0005】
スパンデックスは、ほぼ理想的な弾性特性を示すことが知られているセグメント化ポリウレタン弾性材料である。しかしながら、スパンデックスは多くの用途のためには大きな費用がかかる。また、スパンデックスは、特に湿気の存在下では、オゾン、塩素および高温に対する不良な環境耐性を示す。そのような特性、特に、塩素に対する耐性がないことにより、スパンデックスは、衣類用(例えば、水着など)において、また、塩素系漂白剤の存在下で望ましくは洗濯される白い衣服において明らかな欠点を引き起こしている。
【0006】
様々な繊維および布地が、熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン、高圧重合プロセスで典型的には作製される高度に枝分かれした低密度ポリエチレン(LDPE)、線状の不均一に枝分かれしたポリエチレン(例えば、チーグラー触媒を使用して作製される線状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレンおよび線状の不均一に枝分かれしたポリエチレンの配合物、線状の不均一に枝分かれしたポリエチレンの配合物、ならびに、エチレン/ビニルアルコールコポリマーの配合物など)から作製されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当分野においてなされた進歩にもかかわらず、柔軟であり、かつ、身体の動きに対して従順であるポリオレフィン系弾性繊維が引き続き求められている。好ましくは、そのような繊維は比較的大きい弾性回復率を有し、また、比較的大きい処理量で作製され得る。そのうえ、煩雑な加工工程を要求せず、しかし、それでもなお、べとつかない、柔軟で、快適な布地を提供する繊維を形成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記要求は本発明の様々な態様によって満たされる。1つの態様において、本発明は、下記の特性の1つまたはそれ以上によって特徴づけられるプロピレン/α−オレフィン共重合体から得ることができるか、または、そのようなプロピレン/α−オレフィン共重合体(interpolymer)を含む繊維に関する。
【0009】
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および、密度d(g/cm3)を有すること、この場合、Tmおよびdの数値は下記の関係に対応する:
m>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または
【0010】
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有すること、ならびに、融解熱ΔH(J/g)、および、最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴づけられること、この場合、ΔTおよびΔHの数値は下記の関係を有する:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHが0よりも大きく、130J/gまでである場合)、
ΔT≧48℃(ΔHが130J/gよりも大きい場合)、
【0011】
この場合、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である;または
【0012】
(c)共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定された弾性回復率Re(300パーセントの伸びおよび1サイクルでのパーセント)、および、密度d(g/cm3)を有すること、この場合、Reおよびdの数値は、共重合体が架橋相を実質的に有しないとき、下記の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または
【0013】
(d)TREFを使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムプロピレン共重合体画分のコモノマーモル含有量よりも少なくとも5パーセント大きいコモノマーモル含有量を有することを特徴とする分子画分を有すること、この場合、前記比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを有し、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、共重合体のものから10パーセント以内に有する;または
【0014】
(e)25℃での貯蔵弾性率(G'(25℃))および100℃での貯蔵弾性率(G'(100℃))を有し、G'(25℃)対G'(100℃)の比率が約1:1から約10:1であること。
【0015】
(f)TREFを使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、少なくとも0.5から約1までのブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)とを有することを特徴とする分子画分を有すること;または
【0016】
(g)ゼロよりも大きく、約1.0までの平均ブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)とを有すること。
【0017】
別の態様において、本発明は、約0.860g/cc〜約0.895g/ccの密度と、約70%未満の70℃での圧縮永久ひずみとを有する、プロピレンおよびC2α−オレフィンまたはC4〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができるか、または、そのような共重合体を含む繊維に関連する。いくつかの実施形態において、70℃での圧縮永久ひずみは、約60%未満、約50%未満、約40%未満、または、約30%未満である。
【0018】
いくつかの実施形態において、共重合体は下記の関係を満たす:
Re>1491−1629(d);または
Re>1501−1629(d);または
Re>1511−1629(d)。
【0019】
他の実施形態において、共重合体は、ASTM D−1238(条件、190℃/2.16kg)に従って測定される、約0.1g/10分〜約2000g/10分のメルトインデックス、約1g/10分〜約1500g/10分のメルトインデックス、約2g/10分〜約1000g/10分のメルトインデックス、約5g/10分〜約500g/10分のメルトインデックスを有する。いくつかの実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は1.7〜3.5のMw/Mnを有し、また、少なくともハードブロックを含み、かつ、少なくともソフトブロックを含むランダムブロックコポリマーである。好ましくは、プロピレン/α−オレフィン共重合体は約0.86g/cc〜約0.96g/ccの範囲の密度または約0.86g/cc〜約0.92g/ccの範囲での密度を有する。他の実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は別のポリマーと配合される。
【0020】
「プロピレン/α−オレフィン共重合体」または「プロピレン/α−オレフィン/ジエン共重合体」における「α−オレフィン」は、本明細書中では、C2またはより高級のα−オレフィン(例えば、C3以上のオレフィンなど)を示す。いくつかの実施形態において、α−オレフィンは、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、または、それらの組合せであり、ジエンは、ノルボルネン、1,5−ヘキサジエンまたは組合せである。
【0021】
繊維は弾性または非弾性である。時には、繊維は架橋される。架橋は、光子照射、電子ビーム照射または架橋剤によって達成することができる。いくつかの実施形態において、架橋ポリマーの割合は、形成されたゲルの重量パーセントによって測定されるとき、少なくとも20パーセントであり、例えば、約20パーセント〜約80パーセント、または、約35パーセント〜約50パーセントである。時には、繊維は複合繊維である。複合繊維は、シース・コア(theath-core)構造、海島(sea-island)構造、サイド−バイ−サイド(side-by-side)構造、マトリックス・フィブリル構造またはセグメント化パイ構造を有する。繊維はステープルファイバーまたはバインダー繊維であり得る。いくつかの実施形態において、繊維は、共重合体が何らかの繊維と混合されていない場合、約1.2未満の摩擦係数を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、繊維は直径が約0.1デニール〜約1000デニールの範囲であり、共重合体は、約0.5〜約2000のメルトインデックスと、約0.865g/cc〜約0.955g/ccの密度とを有する。他の実施形態において、繊維は直径が約0.1デニール〜約1000デニールの範囲であり、共重合体は、約1〜約2000のメルトインデックスと、約0.865g/cc〜約0.955g/ccの密度とを有する。さらに他の実施形態において、繊維は直径が約0.1デニール〜約1000デニールの範囲であり、共重合体は、約3〜約1000のメルトインデックスと、約0.865g/cc〜約0.955g/ccの密度とを有する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って作製された繊維を含む布地に関する。布地は、スパンボンド、メルトブローン、ゲル紡糸、溶液紡糸などによるものであり得る。布地は弾性または非弾性の織布または不織布であり得る。いくつかの実施形態において、布地は100パーセントの伸びにおける少なくとも50パーセントのMD回復率を有する。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の様々な実施形態に従って作製された繊維を含む梳毛ウェブまたは糸に関する。糸は被覆または非被覆であり得る。被覆されるとき、糸は綿糸またはナイロン糸によって被覆され得る。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、繊維を作製する方法に関連する。本発明の方法は、(a)(本明細書中に記載されるような)プロピレン/α−オレフィン共重合体を溶融すること;および、プロピレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出すことを含む。繊維は、溶融紡糸、スパンボンディング(spun bonding)、メルトブローイング(melt blowing)などによって形成することができる。いくつかの実施形態において、布地は、形成されたとき、ローピング(roping)を実質的に有しない。好ましくは、繊維は共重合体のピーク融解温度よりも低い温度で引っ張られる。
【0026】
本発明のさらなる態様、ならびに、本発明の様々な実施形態のさらなる特徴および特性が下記の説明により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
一般的定義
「繊維」は、長さ対直径の比率が約10より大きい材料を意味する。繊維は典型的にはその直径に従って分類される。フィラメント繊維は一般には、個々の繊維の直径がフィラメントあたり約15デニールよりも大きい繊維、通常はフィラメントあたり約30デニールよりも大きい繊維として定義される。ファインデニール繊維は一般には、フィラメントあたり約15デニール未満の直径を有する繊維を示す。ミクロデニール繊維は一般には、直径がフィラメントあたり100ミクロンデニール未満である繊維として定義される。
【0028】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」は、明確な長さを有する材料の不連続なストランド(すなわち、所定の長さのセグメントに切断されているか、または、そうでない場合には分割されているストランド)である「ステープルファイバー」とは対照的に、不定の長さ(すなわち、事前に決定されていない長さ)の材料の連続したストランドを意味する。
【0029】
「弾性(的)」は、繊維が、100%の伸び(長さの2倍)への最初の引張りの後、および、4回目の引張りの後で、その伸長した長さの少なくとも約50パーセントを回復することを意味する。弾性はまた、繊維の「永久ひずみ」によって記述することができる。永久ひずみは弾性の逆である。繊維が、ある点に伸張され、続いて、伸張前の元の位置に解除され、その後、再び伸張される。繊維が負荷を引張り始める点が、パーセント永久ひずみと呼ばれる。「弾性材料」はまた、当分野では「エラストマー」または「エラストマー的」とも呼ばれる。弾性材料(これは時には弾性品とも呼ばれる)には、コポリマー自身、ならびに、限定されないが、繊維、フィルム、ストリップ、テープ、リボン、シート、被覆物および成形物などの形態でのコポリマーが含まれる。好ましい弾性材料は繊維である。弾性材料は、硬化または非硬化のいずれか、放射線照射または放射線非照射のいずれか、および/あるいは、架橋/非架橋のいずれかでありうる。
【0030】
「非弾性材料」は、上記で定義されたような弾性的でない材料(例えば、繊維)を意味する。
【0031】
「実質的に架橋された」および類似する用語は、コポリマーが形状化されているか、または、物品の形態にある場合、コポリマーが、70重量パーセント以下のキシレン抽出分(すなわち、30重量パーセント以上のゲル含有量)、好ましくは、40重量パーセント以下のキシレン抽出分(すなわち、60重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを意味する。キシレン抽出分(およびゲル含有量)はASTM D−2765に従って求められる。
【0032】
「ホモフィル(homofil)繊維」は、1種類のみのポリマー領域またはポリマードメインを有し、かつ、(複合繊維が有するような)何らかの他の異なったポリマー領域を有しない繊維を意味する。
【0033】
「複合繊維」は、2種類以上の異なったポリマー領域またはポリマードメインを有する繊維を意味する。複合繊維はまた、コンジュゲート繊維または多成分繊維として知られている。2種類以上の成分が同じポリマーを構成する場合があるが、これらのポリマーは通常、互いに異なっている。これらのポリマーは、複合繊維の断面全体にわたって実質的に異なった帯域に配置され、通常、複合繊維の長さに沿って連続して伸展される。複合繊維の形態は、例えば、シース/コア配置(一方のポリマーが別のポリマーによって囲まれる)、サイド−バイ−サイド配置、パイ配置、または、「海中島」配置が可能である。様々な複合繊維が、米国特許第6,225,243号、同第6,140,442号、同第5,382,400号、同第5,336,552号および同第5,108,820号においてさらに記載される。
【0034】
「メルトブローン繊維」は、溶融された熱可塑性ポリマー組成物を、多数の細い(通常は円形の)ダイキャピラリーから、スレッドまたはフィラメントを縮小した直径に繊細化するために機能する、収束する高速度のガス流(例えば、空気)の中に、溶融したスレッドまたはフィラメントとして押出すことによって形成される繊維である。フィラメントまたはスレッドは高速度のガス流によって運ばれ、捕集表面に堆積して平均直径が一般には10ミクロン未満であるランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0035】
「メルトスパン繊維」は、少なくとも1つのポリマーを融解し、次いで、溶融状態の繊維をダイの直径(または他の断面形状)よりも小さい直径(または他の断面形状)に引っ張ることによって形成される繊維である。
【0036】
「スパンボンド繊維」は、融解された熱可塑性ポリマー組成物をフィラメントして紡糸口金の多数の細い(通常は円形の)ダイキャピラリーから押出すことによって形成される繊維である。押出されたフィラメントの直径は迅速に減少し、その後、フィラメントは、捕集表面に堆積して、平均直径が一般には7ミクロン〜約30ミクロンの間であるランダムに分散された繊維のウェブを形成する。
【0037】
「不織」は、編物の場合のような識別可能な様式ではなく、ランダムに挿入される個々の繊維またはスレッドの構造を有するウェブまたは布地を意味する。本発明の実施形態による弾性繊維は、不織構造、ならびに、非弾性材料の組合せでの弾性不織布の複合構造を得るために用いることができる。
【0038】
「糸(yarn)」は、織物または編物および他の物品の製造において使用することができる、撚りフィラメント、または、そうでない場合にはからみ合ったフィラメントの連続した長さのものを意味する。糸は被覆または非被覆が可能である。被覆された糸は、少なくとも一部が別の繊維または材料(典型的には、天然繊維(例えば、綿または羊毛など))の外側の被覆物の内部で巻き付いた(wrapped)糸である。
【0039】
「ポリマー」は、モノマー(同じタイプまたは異なるタイプのモノマーのどちらであっても)を重合することによって調製される高分子化合物を意味する。総称である「ポリマー」は、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」、ならびに、「共重合体(interpolymer)」の各用語を包含する。
【0040】
「共重合体」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。総称である「共重合体」は、用語「コポリマー」(これは通常、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)、ならびに、用語「ターポリマー」(これは通常、3つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)を包含する。総称である「共重合体」はまた、4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製されるポリマーを包含する。
【0041】
用語「プロピレン/α−オレフィン共重合体」は、プロピレンがポリマー全体のモル分率の大部分を占めるポリマーを示す。好ましくは、プロピレンはポリマー全体の少なくとも50モルパーセントを構成し、より好ましくは、少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、または、少なくとも80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の残りは少なくとも別のコモノマーを含む。プロピレン/オクテンコポリマーについては、好ましい組成は約80モルパーセントを超えるプロピレン含有量を含み、オクテン含有量は約20モルパーセント以下である。いくつかの実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、低収率で、または微量で、または化学プロセスの副産物として生成される化合物を含まない。プロピレン/α−オレフィン共重合体は1つまたはそれ以上のポリマーと配合することができる一方で、製造したままのプロピレン/α−オレフィン共重合体は実質的に純粋であり、重合プロセスの主要成分を構成する。
【0042】
プロピレン/α−オレフィン共重合体は、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数(すなわち、2つまたはそれ以上)のブロックまたはセグメントによって特徴づけられる(ブロック共重合体)重合形態で含み、好ましくは、マルチブロックコポリマーである。いくつかの実施形態において、マルチブロックコポリマーは下記の式によって表すことができる:
(AB)n
【0043】
式中、nは少なくとも1であり、好ましくは、1よりも大きい整数であり、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上などであり、「A」はハードブロックまたはハードセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはソフトセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、枝分かれした様式または星型様式ではなく、線状様式で連結される。「ハード」セグメントは、プロピレンが、95重量パーセントを超える量で、好ましくは、98重量パーセントを超える量で存在する重合ユニットのブロックを示す。言い換えれば、ハードセグメントにおけるコモノマー含有量は5重量パーセント未満であり、好ましくは、2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態において、ハードセグメントはすべてまたは実質的にすべてがプロピレンから構成される。他方で、「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量が5重量パーセントを超えるか、好ましくは8重量パーセントを超えるか、10重量パーセントを超えるか、または、15重量パーセントを超える重合ユニットのブロックを示す。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントにおけるコモノマー含有量は20重量パーセントを越えることができ、または、25重量パーセントを越えることができ、または、30重量パーセントを越えることができ、または、35重量パーセントを越えることができ、または、40重量パーセントを越えることができ、または、45重量パーセントを越えることができ、または、50重量パーセントを越えることができ、または、60重量パーセントを越えることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、AブロックおよびBブロックはポリマー鎖に沿ってランダムに分布する。別の言い方をすれば、ブロックコポリマーは下記のような構造を有しない:
AAA−AA−BBB−BB。
【0045】
他の実施形態において、ブロックコポリマーは第3のタイプのブロックを有しない。さらに他の実施形態において、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、ブロック内にランダムに分布するモノマーまたはコモノマーを有する。別の言い方をすれば、ブロックAまたはブロックBはいずれも、異なった組成の2つまたはそれ以上のセグメント(またはサブブロック)(例えば、ブロックのその他の部分とは異なる組成を有する先端セグメントなど)を含まない。
【0046】
用語「結晶質」は、用いられるならば、示差走査熱量測定法(DCS)または同等な技術によって測定されるような一次転移点または結晶の融点(Tm)を有するポリマーを示す。この用語は、用語「半結晶質」と交換可能に使用される場合がある。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定法(DCS)または同等な技術によって測定されるような結晶の融点を有しないポリマーを示す。
【0047】
用語「マルチブロックコポリマー」または用語「セグメント化コポリマー」は、好ましくは線状様式で結合した2つまたはそれ以上の化学的に異なった領域またはセグメント(これは「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント様式またはグラフト化された様式ではなく、むしろ、重合したエチレン性官能基に関して両端同士で結合した化学的に区別されるユニットを含むポリマーを示す。好ましい実施形態において、ブロックは、ブロックに取り込まれたコモノマーの量またはタイプ、そのような組成のポリマーに起因する密度、結晶化度の量、微結晶サイズ、タクチシティのタイプまたは程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、レジオ規則性またはレジオ不規則性、枝分かれ(長鎖枝分かれまたは超枝分かれを含む)の程度、均一性、あるいは、何らかの他の化学的特性または物理的特性において異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーを作製する特有のプロセスのために、多分散性指数(PDIまたはMw/Mn)、ブロック長分布および/またはブロック数分布の全ての特有の分布によって特徴づけられる。より具体的には、連続プロセスで製造される場合、ポリマーは望ましくは、1.7〜2.9のPDIを有し、好ましくは1.8〜2.5のPDI、より好ましくは1.8〜2.2のPDI、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。回分プロセスまたは半回分プロセスで製造される場合、ポリマーは1.0〜2.9のPDIを有し、好ましくは1.3〜2.5のPDI、より好ましくは1.4〜2.0のPDI、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0048】
下記の説明において、本明細書中に開示されるすべての数字は、「約」または「およそ」の語がそれに関連して使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値である。本明細書中に開示される数字は、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または、時には10パーセント〜20パーセント異なる場合がある。下限(RL)および上限(RU)を伴う数値範囲が開示されるときは常に、その範囲に含まれる任意の数字が具体的には開示される。特に、範囲に含まれる下記の数字が具体的には開示される:R=RL+k*(RU−RL)、式中、kは1パーセント刻みで1パーセントから100パーセントに及ぶ変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、・・・、50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセントまたは100パーセントである。そのうえ、上記で定義されたように2つのRの数字によって定義される任意の数値範囲もまた、具体的に開示される。
【0049】
本発明の様々な実施形態により、特有の特性を有する新しいプロピレン/α−オレフィン共重合体から作製される繊維、ならびに、そのような繊維から作製される布地および他の製造物が提供される。この繊維は、良好な耐摩耗性、低い摩擦係数、高い上限使用温度、大きい回復/収縮力、低い応力緩和(高温および低温)、柔軟な伸長、大きい破断点伸度、不活性:化学的抵抗性、および/またはUV抵抗性を有し得る。この繊維は比較的大きい紡糸速度およびより低い温度で溶融紡糸することができる。加えて、この繊維は粘着性がほとんどなく、これにより、より良好な巻き戻し性能、および、より良好な貯蔵寿命をもたらし、また、ローピング(すなわち、繊維のバンドリング(bundling))を実質的に有しない。この繊維はより大きい紡糸速度で紡糸され得るので、繊維の製造処理量が大きい。そのような繊維はまた、形成範囲が広く、また、加工範囲が広い。
【0050】
プロピレン/α−オレフィン共重合体
本発明の様々な実施形態において使用されるプロピレン/α−オレフィン共重合体(これはまた「本発明の共重合体」または「本発明のポリマー」とも呼ばれる)は、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合形態で含み、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントによって特徴づけられ(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマーである。プロピレン/α−オレフィン共重合体は、下記のように記載される態様の1つまたはそれ以上によって特徴づけられる。
【0051】
1つの態様において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mnと、少なくとも1つの融点Tm(℃)と、密度d(g/cm3)とを有し、この場合、これらの変数の数値は下記の関係に対応する:
m>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、好ましくは、
m≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、より好ましくは、
m≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
【0052】
融点が密度の低下とともに低下するプロピレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、本発明の共重合体(ひし形によって表される)は、密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccの間にあるときには特に、密度に実質的に依存しない融点を示す。例えば、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲にあるとき、そのようなポリマーの融点は約110℃〜約130℃の範囲にある。いくつかの実施形態において、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲にあるとき、そのようなポリマーの融点は約115℃〜約125℃の範囲にある。
【0053】
別の態様において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は重合形態でプロピレンおよび1つまたはそれ以上のα−オレフィンを含み、かつ、最も高い示差走査熱量測定法(「DSC」)ピークに対する温度から、最も高い結晶化分析分別化(「CRYSTAF」)ピークに対する温度を引いた差として定義されるΔT(℃)と、融解熱ΔH(J/g)とによって特徴づけられ、ΔTおよびΔHは下記の関係を満たす:
130J/gまでのΔHについて、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、より好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95。
【0054】
そのうえ、ΔTは、ΔHが130J/gを超える場合、48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ(すなわち、このピークは累積ポリマーの少なくとも5パーセントを表さなければならない)、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃であり、ΔHはJ/g単位での融解熱の数値である。より好ましくは、最大CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。
【0055】
さらに別の態様において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶出分別化(「TREF」)を使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この分子画分が、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムプロピレン共重合体画分のコモノマーモル含有量よりも大きいコモノマーモル含有量(好ましくは、少なくとも5パーセント大きいコモノマーモル含有量、より好ましくは、少なくとも10パーセント、15パーセント、20パーセントまたは25パーセント大きいコモノマーモル含有量)を有することを特徴とし、この場合、比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを含み、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、ブロック共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、比較可能な共重合体のMw/Mnもまた、ブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であり、かつ/または、比較可能な共重合体は総コモノマー含有量をブロック共重合体の総コモノマー含有量から10パーセント以内で有する。
【0056】
さらに別の態様において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、プロピレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムに対して測定された弾性回復率Re(300パーセントの伸びおよび1サイクルでのパーセント)によって特徴づけられ、かつ、密度d(g/cm3)を有し、この場合、Reおよびdの数値は、プロピレン/α−オレフィン共重合体が架橋相を実質的に有しないとき、下記の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);好ましくは
Re≧1491−1629(d);より好ましくは
Re≧1501−1629(d);一層より好ましくは
Re≧1511−1629(d)。
【0057】
従来のランダムコポリマーと比較した場合、本発明の共重合体の方が、同じ密度については、実質的に大きい弾性回復率を有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、10MPaを超える引張強度、好ましくは、11MPa以上の引張強度、より好ましくは、13MPa以上の引張強度、および/または、11cm/分のクロスヘッド分離速度において、少なくとも600パーセントの破断点伸度、より好ましくは、少なくとも700パーセントの破断点伸度、非常に好ましくは、少なくとも800パーセントの破断点伸度、最も非常に好ましくは、少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0059】
他の実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1〜50の貯蔵弾性率比(G'(25℃)/G'(100℃))、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の貯蔵弾性率比;および/または(2)80パーセント未満の70℃圧縮永久ひずみ、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または、40パーセント未満、下は0パーセントの圧縮永久ひずみまで、を有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または、100ポンド/フィート2(4800Pa)以下のペレットブロッキング(pellet blocking)強度、好ましくは、50lbs/ft2(2400Pa)以下、特に、5lbs/ft2(240Pa)以下、および、0lbs/ft2(0Pa)程度に低いペレットブロッキング強度を有する。
【0061】
他の実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は少なくとも50モルパーセントのプロピレンを重合形態で有し、かつ、80パーセント未満、好ましくは、70パーセント未満または60パーセント未満、最も好ましくは、40パーセント〜50パーセント未満、および、下はゼロパーセントに近くまでの70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、マルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなく、むしろ、シュルツ・フローリー分布に一致するPDIを有する。コポリマーはさらに、多分散ブロック分布と、ブロックサイズの多分散分布との両方を有するとして、また、ブロック長さの最確分布を有するとして特徴づけられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4つまたはそれ以上のブロックまたはセグメントを有するものである。より好ましくは、コポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5個、10個または20個のブロックまたはセグメントを含む。
【0063】
コモノマー含有量は、任意の好適な技術を使用して測定することができ、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術が好ましい。そのうえ、比較的広いTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの配合物については、ポリマーは望ましくは、最初に、TREFを使用して、それぞれが10℃以下の溶出温度範囲を有する画分に分画される。すなわち、それぞれの溶出された画分が10℃以下の回収温度域を有する。この技術を使用したとき、前記ブロック共重合体は、比較可能な共重合体の対応する画分よりも大きいコモノマーモル含有量を有する少なくとも1つのそのような画分を有する。
【0064】
好ましくは、プロピレンおよび1−オクテンの共重合体については、このブロック共重合体は、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含有量が所定量((−0.2013)T+20.07)以上であり、より好ましくは、所定量((−0.2013)T+21.07)以上であり、この場合、Tは、℃の単位で測定された、比較されているTREF画分のピーク溶出温度の数値である。
【0065】
上記態様および本明細書中に記載される特性に加えて、本発明のポリマーは1つまたはそれ以上のさらなる特性によって特徴づけられ得る。1つの態様において、本発明のポリマーは、オレフィンの共重合体であり、好ましくは、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合形態で含み、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントによって特徴づけられ(ブロック化された共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。この場合、前記ブロック共重合体は、TREF増分を使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この分子画分が、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムプロピレン共重合体画分のコモノマーモル含有量よりも大きいコモノマーモル含有量(好ましくは、少なくとも5パーセント大きいコモノマーモル含有量、より好ましくは、少なくとも10パーセント、15パーセント、20パーセントまたは25パーセント大きいコモノマーモル含有量)を有することを特徴とする。この場合、前記比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを有し、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、ブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、比較可能な共重合体のMw/Mnもまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であり、かつ/または、比較可能な共重合体は総コモノマー含有量をブロック化された共重合体の総コモノマー含有量から10パーセント以内で有する。
【0066】
好ましくは、上記共重合体は、プロピレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンからなる共重合体であり、特に、約0.855g/cm3〜約0.935g/cm3の全体的なポリマー密度を有するそのような共重合体であり、より詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについては、ブロック化された共重合体は、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含有量が所定量((−0.1356)T+13.89)以上であり、より好ましくは、所定量((−0.1356)T+14.93)以上であり、最も好ましくは、所定量((−0.2013)T+21.07)以上であり、この場合、Tは、℃の単位で測定された、比較されているTREF画分のピークATREF溶出温度の数値である。
【0067】
コモノマー含有量は、任意の好適な技術を使用して測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。そのうえ、比較的広いTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの配合物については、ポリマーは望ましくは、最初に、TREFを使用して、それぞれが10℃以下の溶出温度範囲を有する画分に分画される。すなわち、それぞれの溶出した画分が10℃以下の回収温度域を有する。この技術を使用したとき、前記ブロック化された共重合体は、比較可能な共重合体の対応する画分よりも大きいコモノマーモル含有量を有する少なくとも1つのそのような画分を有する。
【0068】
別の態様において、本発明のポリマーは、オレフィンの共重合体で、好ましくは、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合形態で含み、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントによって特徴づけられ(ブロック化された共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。この場合、前記ブロック共重合体は、40℃と130℃との間で溶出する(しかし、個々の画分を回収および/または単離することを伴わない)ピーク(しかし、これは単に1つの分子画分ではない)を有し、前記ピークは、半値全幅(FWHM)面積計算を使用して展開されたとき、赤外分光法によって推定されるコモノマー含有量を有し、同じ溶出温度での比較可能なランダムプロピレン共重合体ピークの、半値全幅(FWHM)面積計算を使用して展開された平均コモノマーモル含有量よりも大きい平均コモノマーモル含有量(好ましくは、少なくとも5パーセント大きい平均コモノマーモル含有量、より好ましくは、少なくとも10パーセント大きい平均コモノマーモル含有量)を有することを特徴とする。この場合、前記比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを含み、好ましくは、それは同じコモノマーであり、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、ブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、比較可能な共重合体のMw/Mnもまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であり、かつ/または、比較可能な共重合体は総コモノマー含有量をブロック化された共重合体の総コモノマー含有量から10パーセント以内に有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外検出器からのメチレン応答面積に対するメチル応答面積の比率[CH3/CH2]に基づいており、この場合、ベースラインからの最高(最大)ピークが特定され、その後、FWHM面積が求められる。ATREFピークを使用して測定された分布については、FWHM面積が、T1およびT2の間での曲線下面積として定義され、この場合、T1およびT2は、ピーク高さを2によって割り、その後、ATREF曲線の左部分および右部分と交わる、ベースラインに対して水平な線を引くことによってATREFピークの左側および右側に決定された点である。コモノマー含有量についての検量線が、ランダムプロピレン/α−オレフィンコポリマーを使用し、NMRからのコモノマー含有量をTREFピークのFWHM面積比に対してプロットして作成される。この赤外法のために、検量線が、目的とする同じコモノマータイプについて作成される。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含有量は、TREFピークのそのFWHMでのメチル:メチレン面積比[CH3/CH2]を使用してこの検量線を参照することによって求めることができる。
【0069】
コモノマー含有量は、任意の好適な技術を使用して測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。この技術を使用したとき、前記ブロック化された共重合体は、対応する比較可能な共重合体よりも大きいコモノマーモル含有量を有する。
【0070】
好ましくは、プロピレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの上記共重合体、特に、約0.855g/cm3〜0.935g/cm3の全体的なポリマー密度を有するそのような共重合体について、より詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化された共重合体は、40℃と130℃との間で溶出するTREF画分のコモノマー含有量が所定量((−0.2013)T+20.07)以上であり、より好ましくは、所定量((−0.2013)T+21.07)以上であり、この場合、Tは、℃の単位で測定された、比較されているTREF画分のピーク溶出温度の数値である。
【0071】
さらに別の態様において、本発明のポリマーは、オレフィンの共重合体であり、好ましくは、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合形態で含み、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントによって特徴づけられ(ブロック化された共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。この場合、前記ブロック共重合体は、TREF増分を使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含有量を有するすべての画分が約100℃よりも高い融点を有することを特徴とする。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含有量を有するそのような画分については、すべての画分が約110℃以上のDSC融点を有する。より好ましくは、前記ポリマー画分は、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有する場合、下記の式に対応するDSC融点を有する:
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90。
【0072】
さらに別の実施形態において、本発明のポリマーは、オレフィンの共重合体であり、好ましくは、プロピレンおよび1つまたはそれ以上の共重合可能なコモノマーを重合形態で含み、化学的特性または物理的特性において異なる2つまたはそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントによって特徴づけられ(ブロック化された共重合体)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。この場合、前記ブロック共重合体は、TREF増分を使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶出温度を有するすべての画分が、下記の式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶出温度、℃)−136.58
に対応する、DSCによって測定されるような融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0073】
ブロック共重合体は、TREF増分を使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、40℃と約76℃未満との間のATREF溶出温度を有するすべての画分が、下記の式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶出温度、℃)+22.97
に対応する、DSCによって測定されるような融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0074】
赤外検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成を、Polymer Char(Valencia、スペイン)(http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を使用して測定することができる。
【0075】
検出器の「組成モード」は、2800cm-1〜3000cm-1の領域における固定された狭帯域赤外フィルターである測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を備える。測定センサーにより、(溶液中のポリマー濃度に直接に関連する)ポリマーにおけるメチレン(CH2)炭素が検出され、一方、組成センサーにより、ポリマーのメチル(CH3)基が検出される。組成シグナル(CH3)が測定シグナル(CH2)によって除された数値比は、溶液における測定されたポリマーのコモノマー含有量の影響を受けやすく、その応答は既知のプロピレンα−オレフィンコポリマー標準物により較正される。
【0076】
検出器は、ATREF装置とともに使用されたとき、TREFプロセス中における溶出ポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)の両方のシグナル応答をもたらす。ポリマー特異的な較正を、コモノマー含有量が既知である(好ましくは、NMRによって測定される)ポリマーについてのCH3対CH2の面積比を測定することによって得ることができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含有量を、個々のCH3応答およびCH2応答についての面積の比率の参照較正(すなわち、コモノマー含有量に対する面積比CH3/CH2)を適用することによって推定することができる。
【0077】
ピークの面積は、TREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分するための適切なベースラインを適用した後、半値全幅(FWHM)計算を使用して計算することができる。半値全幅の計算は、ATREF赤外検出器からのメチレン応答面積に対するメチル応答面積の比率[CH3/CH2]に基づいており、この場合、ベースラインからの最高(最大)ピークが特定され、その後、FWHM面積が求められる。ATREFピークを使用して測定された分布については、FWHM面積が、T1およびT2の間での曲線下面積として定義され、この場合、T1およびT2は、ピーク高さを2によって割り、その後、ATREF曲線の左部分および右部分と交わる、ベースラインに対して水平な線を引くことによってATREFピークの左側および右側に決定された点である。
【0078】
ポリマーのコモノマー含有量をこのATREF赤外法で測定するための赤外分光法の適用は、原理的には、下記の参考文献に記載されるようなGPC/FTIRシステムの適用と類似する:Markovich, Ronald P.;Hazlitt, Lonnie G.;Smith, Linley;"Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of propylene-based polyolefin copolymers"、Polymeric Materials Science and Engineering (1991)、65、98〜100;および、Deslauriers, P.J.;Rohlfing, D.C.;Shieh, E.T.;Quantifying short chain branching microstructures in propylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)、Polymer (2002)、43、59〜170(これらはともに、その全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0079】
さらに別の態様において、本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロよりも大きく、約1.0までである平均ブロックインデックス(ABI)、および、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)によって特徴づけられる。平均ブロックインデックス(ABI)は、5℃の増分により20℃〜110℃の分取TREFで得られたポリマー画分のそれぞれについてのブロックインデックスの重量平均である:
ABI=Σ(wiBIi
【0080】
式中、BIiは、分取TREFで得られた本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、wiはi番目の画分の重量百分率である。
【0081】
それぞれのポリマー画分について、BIは2つの下記の式(これらはともに、同じBI値を与える)の1つによって定義される:
【数1】

【0082】
式中、Txはi番目の画分についての分取TREF溶出温度(好ましくはケルビン単位で表される)であり、Pxはi番目の画分についてのプロピレンモル分率(これは、上記で記載されたように、NMRまたはIRによって測定することができる)である。PABはプロピレン/α−オレフィン共重合体全体(分画前)のプロピレンモル分率であり、これもまた、NMRまたはIRによって測定することができる。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント」(これは共重合体の結晶質セグメントを示す)についてのATREF溶出温度およびプロピレンモル分率である。「ハードセグメント」についての実際の値が得られないならば、一次近似として、TAおよびPAの値はポリプロピレンホモポリマーについての値に設定される。
【0083】
ABは、同じ組成で、PABのプロピレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは下記の式から計算することができる:
Ln PAB = α/TAB + β
【0084】
式中、αおよびβは、数多くの既知のランダムプロピレンコポリマーを使用する較正によって求めることができる2つの定数である。αおよびβは装置毎に変化し得ることに留意しなければならない。そのうえ、目的とするポリマー組成に関して、また、画分と類似する分子量範囲でもまた、それら自身の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果が存在する。検量線が、類似する分子量範囲から得られるならば、そのような効果は本質的には無視できる。いくつかの実施形態において、ランダムプロピレンコポリマーは下記の関係を満たす:
Ln P = −237.83/TATREF + 0.639
【0085】
XOは、同じ組成で、Pxのプロピレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから計算することができる。逆に、PXOは、同じ組成で、TXのATREF温度を有するランダムコポリマーについてのプロピレンモル分率であり、LnPXO=α/TX+βから計算することができる。
【0086】
それぞれの分取TREF画分についてのブロックインデックスが得られると、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックス(ABI)を計算することができる。いくつかの実施形態において、ABIはゼロよりも大きいが、約0.3未満であるか、または、約0.1〜約0.3である。他の実施形態において、ABIは約0.3よりも大きく、約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7の範囲、約0.5〜約0.7の範囲、または、約0.6〜約0.9の範囲でなければならない。いくつかの実施形態において、ABIは、約0.3〜約0.9の範囲、約0.3〜約0.8の範囲、または、約0.3〜約0.7の範囲、約0.3〜約0.6の範囲、約0.3〜約0.5の範囲、または、約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態において、ABIは、約0.4〜約1.0の範囲、約0.5〜約1.0の範囲、または、約0.6〜約1.0の範囲、約0.7〜約1.0の範囲、約0.8〜約1.0の範囲、または、約0.9〜約1.0の範囲である。
【0087】
本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体の別の特徴は、本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分を含むことであり、この場合、その画分は、約0.1よりも大きく、約1.0までのブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)とを有する。いくつかの実施形態において、ポリマー画分は、約0.6よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、約0.7よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、約0.8よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、または、約0.9よりも大きく、約1.0までのブロックインデックスを有する。他の実施形態において、ポリマー画分は、約0.1よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、約0.2よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、約0.3よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、約0.4よりも大きく、約1.0までのブロックインデックス、または、約0.4よりも大きく、約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態において、ポリマー画分は、約0.1よりも大きく、約0.5までのブロックインデックス、約0.2よりも大きく、約0.5までのブロックインデックス、約0.3よりも大きく、約0.5までのブロックインデックス、または、約0.4よりも大きく、約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態において、ポリマー画分は、約0.2よりも大きく、約0.9までのブロックインデックス、約0.3よりも大きく、約0.8までのブロックインデックス、約0.4よりも大きく、約0.7までのブロックインデックス、または、約0.5よりも大きく、約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0088】
プロピレンおよびα−オレフィンのコポリマーについて、本発明のポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3のPDI、より好ましくは、少なくとも1.5、少なくとも1.7または少なくとも2.0のPDI、最も好ましくは、少なくとも2.6で、5.0の最大値まで、より好ましくは、3.5の最大値まで、特に、2.7の最大値までのPDI;(2)80J/g以下の融解熱;(3)少なくとも50重量パーセントのプロピレン含有量;(4)−25℃未満、より好ましくは、−30℃未満のガラス転移温度(Tg);および/または(5)唯一のTmを有する。
【0089】
さらに、本発明のポリマーは、単独で、または、本明細書中に開示される任意の他の特性との組合せで、log(G')が100℃の温度で400kPa以上(好ましくは1.0MPa以上)であるような貯蔵弾性率(G')を有することができる。そのうえ、本発明のポリマーは、ブロックコポリマーに特徴的であり、または、オレフィンコポリマー、特に、プロピレンと、1つまたはそれ以上のC2またはC48の脂肪族α−オレフィンとのコポリマーについてはこれまで知られていない、0℃〜100℃の範囲において温度の関数としての比較的平坦な貯蔵弾性率を有する。(この文脈における用語「比較的平坦な」によって、logG'(パスカル単位で)が、50℃〜100℃の間で、好ましくは、0℃〜100℃の間で、1桁以上減少しないことが意味される)。
【0090】
本発明の共重合体はさらに、少なくとも90℃の温度での1mmの熱機械的分析針入深さ、ならびに、3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)の曲げ弾性率によって特徴づけられ得る。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度での1mmの熱機械的分析針入深さ、ならびに、3kpsi(20MPa)の曲げ弾性率を有することができる。本発明の共重合体は、90mm3未満の耐摩耗性(または体積減少)を有するとして特徴づけられ得る。
【0091】
加えて、本発明の共重合体は、0.01g/10分〜2000g/10分のメルトインデックス(I2)、好ましくは、0.01g/10分〜1000g/10分のメルトインデックス(I2)、より好ましくは、0.01g/10分〜500g/10分のメルトインデックス(I2)、特に、0.01g/10分〜100g/10分のメルトインデックス(I2)を有することができる。ポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モルの分子量(Mw)、好ましくは、1000g/モル〜1,000,000g/モルの分子量(Mw)、より好ましくは、10,000g/モル〜500,000g/モルの分子量(Mw)、特に、10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量(Mw)を有することができる。本発明のポリマーの密度は0.80g/cm3〜0.99g/cm3であり得るが、好ましくは、プロピレン含有ポリマーについては、0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。
【0092】
エチレン系ポリマーを作製するプロセスが下記の特許出願に開示されている:米国仮特許出願第60/553,906号(2004年3月17日出願)、米国仮特許出願第60/662,937号(2005年3月17日出願)、米国仮特許出願第60/662,939号(2005年3月17日出願)、米国仮特許出願第60/5662938号(2005年3月17日出願)、PCT出願番号PCT/US2005/008916(2005年3月17日出願)、PCT出願番号PCT/US2005/008915(2005年3月17日出願)およびPCT出願番号PCT/US2005/008917(2005年3月17日出願)(これらのすべてはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)。開示された方法は、改変して、または、改変することなく、プロピレン系ポリマーを作製するために、同様に使用することができる。例えば、1つのそのような方法は、プロピレンと、場合により、プロピレン以外の1つまたはそれ以上の付加重合可能なモノマーとを、
(A)大きいコモノマー取り込み指数を有する第1のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー取り込み指数の90パーセント未満(好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満)のコモノマー取り込み指数を有する第2のオレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動(chain shuttling)剤
を組み合わせることから得られる混合物または反応生成物
を含む触媒組成物とともに付加重合条件下で接触させることを含む。
【0093】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は下記の通りである。
【0094】
触媒(A1)は[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルであり、これは、WO03/40195、2003US0204017、米国特許出願第10/429,024号(2003年5月2日出願)およびWO04/24740の教示に従って調製される。
【化1】

【0095】
触媒(A2)は[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルであり、これは、WO03/40195、2003US0204017、米国特許出願第10/429,024号(2003年5月2日出願)およびWO04/24740の教示に従って調製される。
【化2】

【0096】
触媒(A3)はビス[N,N'''−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【化3】

【0097】
触媒(A4)はビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルであり、これは実質的には米国特許出願公開第2004/0010103号の教示に従って調製される。
【化4】

【0098】
触媒(B1)は1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【化5】

【0099】
触媒(B2)は1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【化6】

【0100】
触媒(C1)は(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルであり、これは実質的には米国特許第6,268,444号の教示に従って調製される。
【化7】

【0101】
触媒(C2)は(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルであり、これは実質的には米国特許出願公開第2003/004286号の教示に従って調製される:
【化8】

【0102】
触媒(C3)は(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタンジメチルであり、これは実質的には米国特許出願公開第2003/004286号の教示に従って調製される:
【化9】

【0103】
触媒(D1)は、Sigma−Aldrichから入手可能なビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウム二塩化物である:
【化10】

【0104】
可逆的移動(shuttling)剤。用いられる可逆的移動剤には、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0105】
好ましくは、前記プロセスは、相互変換ができない多数の触媒を使用する、2つまたはそれ以上のモノマー(より詳細には、プロピレンおよびC2またはC420のオレフィンまたはシクロオレフィン、最も詳細には、プロピレンおよびC420α−オレフィン)のブロックコポリマー(特に、マルチブロックコポリマー、好ましくは、線状マルチブロックコポリマー)を形成するための連続溶液プロセスの形態を取る。すなわち、これらの触媒は化学的に異なる。連続溶液重合条件のもとでは、このプロセスは、モノマーの混合物を高いモノマー変換率で重合する場合に理想的に適している。このような重合条件のもとでは、可逆的連鎖移動剤から触媒への可逆移動(shuttling)が、鎖の成長と比較して有利になり、マルチブロックコポリマー(特に、線状マルチブロックコポリマー)が高い効率で形成される。
【0106】
本発明の共重合体は、逐次モノマー付加、流動性触媒、アニオンまたはカチオンのリビング重合技術によって調製される従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的配合物、および、ブロックコポリマーから区別することができる。具体的には、同等な結晶化度または弾性率での同じモノマーおよびモノマー含有量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体の方が、融点によって測定されるようなより良好な(大きい)耐熱性、動的な機械的分析によって求められるようなより高いTMA針入温度、より大きい高温引張強度および/またはより大きい高温ねじり貯蔵弾性率を有する。同じモノマーおよびモノマー含有量を含むランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体の方が、特により高温での低い圧縮永久ひずみ、より低い応力緩和、より大きいクリープ抵抗性、より大きい剪断強度、より大きいブロッキング抵抗性、より高い結晶化(固化)温度に起因するより早い硬化、より大きい回復率(特に高温において)、より良好な耐摩耗性、より大きい収縮力、ならびに、より良好なオイル許容性およびフィラー許容性を有する。
【0107】
本発明の共重合体はまた、特有の結晶化および枝分かれ分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、同じモノマーおよびモノマーレベルを含むランダムコポリマー、または、同等な統合密度でのポリマーの物理的配合物(例えば、高密度ポリマーおよび低密度コポリマーの配合物など)と比較した場合には特に、融解熱の関数としての、CRYSTAFおよびDSCを使用して測定される最高ピーク温度の間における比較的大きい差を有する。本発明の共重合体のこの特有の特徴はポリマー骨格内のブロックにおけるコモノマーの特有の分布に起因すると考えられる。具体的には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含有量の交互ブロック(ホモポリマーのブロックを含む)を構成することができる。本発明の共重合体はまた、密度またはコモノマー含有量が異なるポリマーブロックの数および/またはブロックサイズにおける分布(これはシュルツ・フローリー型の分布である)を含むことができる。加えて、本発明の共重合体はまた、ポリマー密度、弾性率および形態学に実質的に依存しない、ピーク融点および結晶化温度の特有のプロフィルを有する。好ましい実施形態において、ポリマーの微結晶性秩序により、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは識別可能である特徴的な球晶およびラメラが、1.7未満またはさらには1.5未満であり、1.3未満に低下したPDI値においてでさえ明らかにされる。
【0108】
そのうえ、本発明の共重合体は、ブロック性(blockiness)の程度またはレベルに影響を及ぼす技術を使用して調製することができる。すなわち、コモノマーの量と、それぞれのポリマーブロックまたはポリマーセグメントの長さとを、触媒および可逆的移動剤の比率およびタイプ、ならびに、重合温度および他の重合変数を制御することによって変えることができる。この現象の驚くべき利点は、ブロック性の程度が増大するにつれて、得られるポリマーの光学的特性、剪断強度および高温回復特性が改善されるという発見である。具体的には、ポリマーにおけるブロックの平均数が増大するにつれて、曇り(haze)が低下し、その一方で、透明性、剪断強度および高温回復特性が増大する。所望する可逆的連鎖移動能(低レベルの連鎖停止を伴う大きい可逆的移動速度)を有する可逆的移動剤と触媒組合せとを選択することによって、他の形態のポリマー停止が効果的に抑制される。従って、β−ヒドリド脱離が、本発明の実施形態に従ったプロピレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合において存在したとしても、ほとんど認められず、また、生じる結晶質ブロックは高度に線状であるか、または実質的に完全に線状であり、長鎖枝分かれをほとんどまたは全く有しない。
【0109】
高結晶質の鎖末端を有するポリマーを本発明の実施形態に従って選択的に調製することができる。エラストマー適用において、非晶質ブロックで停止するポリマーの相対的な量を減らすことにより、結晶質領域に対する分子間希釈効果が低下する。この結果は、水素または他の連鎖停止剤に対する適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤と触媒とを選ぶことによって得ることができる。具体的には、高結晶質ポリマーをもたらす触媒が、あまり結晶質でないポリマーセグメントを(例えば、より大きいコモノマー取り込み、位置エラー(regio-error)またはアタクチックポリマー形成などにより)もたらすことに関わる触媒よりも(例えば、水素の使用などによって)連鎖停止を受けやすいならば、高結晶質ポリマーセグメントがポリマーの末端部分を優先的に占める。得られる末端化基が結晶質であるだけでなく、停止したとき、高結晶質ポリマーを形成する触媒部位が、もう一度、ポリマー形成を再開始するために利用可能になる。従って、最初に形成されたポリマーは別の高結晶質ポリマーセグメントである。それにより、得られるマルチブロックコポリマーの両末端が優先的に高結晶質である。
【0110】
本発明の実施形態において使用されるプロピレンα−オレフィン共重合体は、好ましくは、プロピレンと、少なくとも1つのC2α−オレフィンまたはC4〜C20α−オレフィンとの共重合体である。プロピレンおよびC2α−オレフィンまたはC4〜C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。共重合体はさらに、C4〜C18のジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを含むことができる。プロピレンと重合させるために有用な好適な不飽和コモノマーには、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役ジエンまたは非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。そのようなコモノマーの例には、C2またはC4〜C20のα−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンおよび1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の好適なモノマーには、スチレン、ハロ置換スチレンまたはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよびナフテン系モノマー(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0111】
プロピレン/α−オレフィン共重合体が好ましいポリマーであるが、他のプロピレン/オレフィンポリマーもまた使用することができる。本明細書中で使用される場合、オレフィンは、少なくとも1つの炭素・炭素二重結合を有する一群の不飽和炭化水素系化合物を示す。触媒の選択に依存して、任意のオレフィンを本発明の実施形態において使用することができる。好ましくは、好適なオレフィンは、ビニル性不飽和を含有するC2またはC4〜C20の脂肪族化合物および芳香族化合物、ならびに、環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、および、ノルボルネン(C1〜20のヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基により5位および6位において置換されたノルボルネンが挙げられるが、これに限定されない)である。そのようなオレフィンの混合物、ならびに、そのようなオレフィンと、C4〜C40ジオレフィン化合物との混合物もまた挙げられる。
【0112】
オレフィンモノマーの例には、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4〜40ジエン(これには、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンおよび他のC4〜40α−オレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。ビニル基を含有する任意の炭化水素が潜在的には本発明の様々な実施形態において使用され得るが、実用的な問題、例えば、モノマーの入手性、コスト、および、未反応モノマーを生じたポリマーから都合良く除く能力が、モノマーの分子量が大きくなりすぎると、より問題となり得る。
【0113】
本明細書中に記載される重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびt−ブチルスチレンなどをはじめとするモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの製造のために十分に適する。具体的には、プロピレンおよびスチレンを含む共重合体を本明細書中の教示に従うことによって調製することができる。場合により、エチレン、スチレンおよびC4〜20α−オレフィンを含み、場合によりC4〜20ジエンを含み、改善された特性を有するコポリマーを調製することができる。
【0114】
好適な非共役ジエンモノマーは、6個〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素ジエンが可能である。好適な非共役ジエンの例には、直鎖の非環状ジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン)、分枝鎖の非環状ジエン(例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびに、ジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体)、単環の脂環状ジエン(例えば、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン)ならびに、多環の脂環式の縮合環ジエンおよび架橋環ジエン(例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン)、アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン)、および、ノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。EPDMを調製するために典型的に使用されるジエンの中で、特に好ましいジエンが、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。とりわけ好ましいジエンが5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0115】
本発明の実施形態に従って作製され得る望ましいポリマーの1つのクラスが、プロピレンと、C2またはC4〜C20のα−オレフィン(特に、エチレン)と、場合により使用される1つまたはそれ以上のジエンモノマーとのエラストマー共重合体である。本発明のこの実施形態において使用される好ましいα−オレフィンは式CH2=CHR*(式中、R*は1個〜12個の炭素原子の直鎖アルキル基または分枝状アルキル基である)によって示される。好適なα−オレフィンの例には、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいα−オレフィンがプロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般には、当分野ではEPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。そのようなポリマー(特に、マルチブロックEPDMタイプのポリマー)を調製する際に使用される好適なジエンには、4個〜20個の炭素を含有する共役型または非共役型の直鎖または分枝鎖の環状ジエンまたは多環ジエンが含まれる。好ましいジエンには、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが含まれる。特に好ましいジエンが5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0116】
ジエン含有ポリマーは、より多い量またはより少ない量のジエン(非存在を含む)およびα−オレフィン(非存在を含む)を含有する交互セグメントまたは交互ブロックを含有するので、ジエンおよびα−オレフィンの総量を、その後のポリマー特性を失うことなく低下させることができる。すなわち、ジエンモノマーおよびα−オレフィンモノマーが、ポリマー全体に一様またはランダムにではなく、むしろ、ポリマーの1つのタイプのブロックに優先的に取り込まれるので、ジエンモノマーおよびα−オレフィンモノマーがより効率的に利用され、続いて、ポリマーの架橋密度をより良好に制御することができる。そのような架橋可能なエラストマーおよび硬化製造物は、より大きい引張強度およびより良好な弾性回復率を含めて、様々な有利な特性を有する。
【0117】
いくつかの実施形態において、異なる量のコモノマーを取り込む2つの触媒を用いて作製された本発明の共重合体は、それによって形成されるブロックの重量比が95:5〜5:95である。エラストマーポリマーは望ましくは、ポリマーの総重量に基づいて、20パーセント〜90パーセントのプロピレン含有量、0.1パーセント〜10パーセントのジエン含有量、および、10パーセント〜80パーセントのα−オレフィン含有量を有する。さらに好ましくは、マルチブロックエラストマー性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、60パーセント〜90パーセントのプロピレン含有量、0.1パーセント〜10パーセントのジエン含有量、および、10パーセント〜40パーセントのα−オレフィン含有量を有する。好ましいポリマーは、10,000〜約2,500,000の重量平均分子量(Mw)、好ましくは、20,000〜500,000の重量平均分子量(Mw)、より好ましくは、20,000〜350,000の重量平均分子量(Mw)、および、3.5未満の多分散度、より好ましくは、3.0未満の多分散度、および、1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量のポリマーである。より好ましくは、そのようなポリマーは、65パーセント〜75パーセントのプロピレン含有量、0パーセント〜6パーセントのジエン含有量、および、20パーセント〜35パーセントのα−オレフィン含有量を有する。
【0118】
プロピレン/α−オレフィン共重合体は、少なくとも1つの官能基をそのポリマー構造に取り込むことによって官能基化することができる。例示的な官能基には、例えば、エチレン性不飽和のモノ官能性カルボン酸および二官能性カルボン酸、エチレン性不飽和のモノ官能性カルボン酸無水物および二官能性カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルが含まれ得る。そのような官能基はプロピレン/α−オレフィン共重合体にグラフト化することができ、または、プロピレンおよび場合により使用されるさらなるコモノマーと共重合して、プロピレン、機能性コモノマーおよび場合により使用される他のコモノマーの共重合体を形成することができる。官能基をポリエチレンにグラフト化するための手段が、例えば、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号(これらの特許の開示はその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される。1つの特に有用な官能基がマレイン酸無水物である。
【0119】
機能性共重合体に存在する官能基の量は変化し得る。官能基は典型的には、コポリマータイプの官能基化された共重合体において、少なくとも約1.0重量パーセントの量で、好ましくは、少なくとも約5重量パーセントの量で、より好ましくは、少なくとも約7重量パーセントの量で存在させることができる。官能基は典型的には、コポリマータイプの官能基化された共重合体において、約40重量パーセント未満の量で、好ましくは、約30重量パーセント未満の量で、より好ましくは、約25重量パーセント未満の量で存在する。
【0120】
繊維および製造品
本発明の繊維の好ましい使用は布地(特に、不織布)の形成における使用である。本発明の繊維から形成される布地は、布地を多くの衣料品用途のために好適にする優れた弾性特性を有することが見出されている。本発明の繊維から形成される布地はまた、良好なドレープ適性を有する。
【0121】
繊維および布地の望ましい特性のいくつかが引張弾性率および永久ひずみの用語で表現される場合がある。本発明によるスパンボンド法布地については、得られる好ましい特性は下記の通りである:
【0122】
引張弾性率(g)(ASTM−1682)(100%伸展、6サイクル、機械方向(MD)):好ましくは900未満、より好ましくは800未満、最も好ましくは100〜400;および/または
【0123】
引張弾性率(g)(50%伸展、6サイクル、MD):好ましくは700未満、より好ましくは600未満、最も好ましくは100〜300;および/または
【0124】
引張弾性率(g)(100%伸展、6サイクル、横方向(TD)):好ましくは600未満、より好ましくは500未満、最も好ましくは50〜300;および/または
【0125】
引張弾性率(g)(50%伸展、6サイクル、TD):好ましくは370未満、より好ましくは40〜200;および/または
【0126】
永久ひずみ(%)(ASTM D−1682の改変法(この場合、伸長が、布地の破損を無視して続けられるのではなく、むしろ反復される)の使用によって得られる)(50%伸展、6サイクル、MD);好ましくは30未満、より好ましくは約5%〜約25%の範囲、最も好ましくは10〜20未満;および/または
【0127】
永久ひずみ(%)(50%伸展、6サイクル、TD);好ましくは35%未満、より好ましくは約5%〜約25%の範囲;および/または
【0128】
永久ひずみ(%)(100%伸展、6サイクル、MD);好ましくは40%未満、より好ましくは約5%〜約35%の範囲、最も好ましくは8%〜20%;および/または
【0129】
永久ひずみ(%)(100%伸展、6サイクル、TD);好ましくは40%未満、より好ましくは約5%〜約35%の範囲、最も好ましくは約5%〜約25%の範囲;および/または
【0130】
結合温度(℃)、110未満、より好ましくは約35〜約105の範囲、最も好ましくは40〜80。これらの特性は好ましく、本発明のすべての布地のために有用であり、例えば、本発明による繊維から作製され、約70g/m2〜約80g/m2(好ましくは約70g/m2)の基本重量を有し、約25μm〜28μmの直径を有する繊維から形成された布地によって明らかにされる。
【0131】
メルトブローン布地については、本発明によれば、好ましい特性は下記の通りである:
【0132】
永久ひずみ(%)(50%伸展、6サイクル、MD);好ましくは25未満、より好ましくは約10〜約20の範囲、最も好ましくは15〜18;および/または
永久ひずみ(%)(50%伸展、6サイクル、TD);好ましくは25未満、より好ましくは約10〜約20の範囲、最も好ましくは15〜18;および/または
【0133】
引張弾性率(g)(50%伸展、6サイクル、MD);好ましくは約300以下、より好ましくは約200〜約300の範囲;および/または
引張弾性率(g)(50%伸展、6サイクル、TD);好ましくは約300未満、より好ましくは約50〜約150の範囲;約150;および/または
【0134】
トータルハンド(Total Hand)(g):好ましくは約75未満、より好ましくは約70未満、最も好ましくは約10〜約20の範囲。
【0135】
これらの特性は好ましく、本発明のすべての布地のために有用であり、例えば、8μm〜10μmの直径を有する本発明による繊維から作製された、本発明による、約70g/m2の公称基本重量を有するメルトブローン布地によって明らかにされる。
【0136】
様々なホモフィル繊維を本発明のコポリマーから作製することができ、これらには、ステープルファイバー、スパンボンド繊維またはメルトブローン繊維(例えば、米国特許第4,340,563号、同第4,663,220号、同第4,668,566号または同第4,322,027号に開示されるようなシステムを使用して)、および、ゲル紡糸(gel spun)繊維(例えば、米国特許第4,413,110に開示されるシステム)が挙げられる。ステープルファイバーを、さらなる延伸を用いることなく直接に最終的な繊維直径に溶融紡糸することができ、あるいは、より大きい直径に溶融紡糸し、続いて、従来の繊維延伸技術を使用して所望の直径に熱延伸または冷延伸することができる。
【0137】
複合繊維もまた、本発明のコポリマーから作製することができる。そのような複合繊維は本発明のコポリマーを繊維の少なくとも1つの部分に有する。例えば、シース/コアの複合繊維(すなわち、シースがコアを同心状に取り囲む繊維)では、ポリオレフィンがシースまたはコアのいずれかに存在し得る。典型的には、また、好ましくは、コポリマーは複合繊維のシース成分であり、しかし、コポリマーがコア成分であるならば、シース成分は、コアが架橋することを妨げないようにしなければならない。すなわち、シース成分は、十分なUV線がシース成分を通過して、コアポリマーを実質的に架橋することができるように、UV線に対して透過性である。異なるコポリマーもまた、好ましくは両方の成分が弾性である場合に、また、シース成分がコア成分よりも低い融点を有する場合には特に、同じ繊維におけるシースおよびコアとして独立的に使用することができる。他のタイプの複合繊維もまた本発明の範囲内であり、そのような繊維は、並列コンジュゲートファイバ(例えば、本発明のポリオレフィンが繊維の表面の少なくとも一部分を含む、ポリマーの別個の領域を有する繊維)のような構造を含む。
【0138】
繊維の形状は限定されない。例えば、典型的な繊維は円形の断面形状を有するが、時には、繊維は異なる形状を有する(例えば、三葉状形状または平坦な(すなわち、「リボン」様)形状など)。本明細書中に開示される繊維は繊維の形状によって限定されない。
【0139】
繊維の直径は様々な様式で測定および報告され得る。一般に、繊維の直径はフィラメントあたりのデニールで測定される。デニールは、その繊維の長さの9000メートルあたりの繊維のグラム数として定義される繊維用語である。モノフィラメントは一般には、フィラメントあたりのデニールが15よりも大きく、通常の場合には30を超える押出されたストランドを示す。ファインデニール繊維は一般には、約15以下のデニールを有する繊維を示す。マクロデニール(akaマクロ繊維)は一般には、約100マイクロメートル以下の直径を有する繊維を示す。本発明の繊維については、直径は、繊維の弾性に対する影響をほとんど伴うことなく、広範囲に変化させることができる。しかしながら、繊維のデニールは、完成品の可能性に適するように調節することができ、そのため、好ましくは、メルトブローンフィラメントについては約0.5デニール/フィラメント〜約30デニール/フィラメントであり、スパンボンドフィラメントについては約1デニール/フィラメント〜約30デニール/フィラメントであり、連続巻き取りフィラメントについては約1デニール/フィラメント〜約20,000デニール/フィラメントである。それにもかかわらず、好ましくは、デニールは40よりも大きく、より好ましくは55以上であり、最も好ましくは65以上である。これらの性能は、典型的には、耐久性の衣料品では、約40を超えるデニールを有する繊維が用いられるという事実のためである。
【0140】
弾性コポリマーはまた、弾性のフィルム、被覆、シート、ストリップ、テープおよびリボンなどに形状化または製造することができる。本発明の弾性のフィルム、被覆およびシートは、ブローンバブル(blown bubble)プロセス(例えば、単純なバブル技術ならびに二軸延伸技術、例えば、トラップドバブル(trapped bubble)、二重バブルおよびテンターフレーミングなど)、注型押出し、射出成形プロセス、熱成形プロセス、押出しコーティングプロセス、異形押出しおよびシート押出しプロセスが挙げられる、当分野で公知の任意の方法によって製造することができる。単純なブローンバブルフィルムプロセスが、例えば、The Encyclopedia of Chemical Technology(Kirk-Othmer、第3版、John Wiley & Sons、New York、1981年、第16巻416頁〜417頁および第18巻191頁〜192頁)に記載される。注型押出し法が、例えば、Modern Plastics Mid-October 1989 Encyclopedia Issue、第66巻、第11号、256頁〜257頁に記載される。射出成形プロセス、熱成形プロセス、押出しコーティングプロセス、異形押出しプロセスおよびシート押出しプロセスが、例えば、Plastics Materials and Processes(Seymour S. SchwartzおよびSidney H. Goodman、Van Nostrand Reinhold Company、New York、1982年、527頁〜563頁、632頁〜647頁および596頁〜602頁)に記載される。
【0141】
本発明の弾性のストリップ、テープおよびリボンは、直接的な押出し加工を含む任意の公知方法によって、あるいは、押出し後のスリッティング技術、カッティング技術またはスタンピング技術によって調製することができる。異形押出しは、テープ、バンドおよびリボンなどの調製に特に適する一次押出しプロセスの一例である。
【0142】
繊維は、弾性の布地を作製するために、他の繊維(例えば、PET、ナイロン、綿、Kevlar(商標)など)とともに使用することができる。付加された利点として、ある種の繊維の耐熱性(および耐湿性)により、ポリエステルPET繊維を通常のPET染色条件で染色することを可能にすることができる。その他の一般に使用される繊維(特に、スパンデックス(例えば、Lycra(商標))は、特性の劣化を防止するために、あまり過酷でないPET染色条件で使用することができるだけである。
【0143】
本発明の繊維から作製された布地には、織布、不織布およびメリヤス生地が挙げられる。不織布を様々な方法によって作製することができる。例えば、米国特許第3,485,706号および同第4,939,016号に開示されるようなスパンレース(spunlaced)(または流体力学的にからみ合った)布地、ステープルファイバーをカーディング(carding)し、熱的に結合すること;連続繊維を1回の連続操作でスパンボンディングすること;または、繊維を布地にメルトブローイングし、続いて、得られたウェブをカレンダー処理するか、または、熱的に結合することによる。これらの様々な不織布製造技術が当業者には周知であり、本開示はいずれかの特定の方法に限定されない。そのような繊維から作製された他の構造もまた本発明の範囲内であり、これらには、このような新規な繊維と、他の繊維(例えば、ポリ(エチレンテレフタラート)または綿)との配合物が含まれる。
【0144】
不織布は、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を溶液紡糸またはフラッシュ紡糸することから得られる繊維に由来し得る。溶液紡糸には、湿式紡糸および乾式紡糸が含まれる。両方の方法において、ポリマーの粘性溶液がフィルターを介してポンプ送液され、次いで、紡糸口金の細い穴を通過する。続いて、溶媒が除かれ、繊維が残る。
【0145】
いくつかの実施形態において、下記のプロセスが、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体から繊維をフラッシュ紡糸し、シートを形成するために使用される。基本的なシステムが米国特許第3,860,369号および同第6,117,801号(これらはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に以前に開示されている。このプロセスは、蒸気除去口と、このプロセスで製造された不織シート材料が取り出される開口部とを有するチャンバー(これは時には紡糸セル(spin cell)とも呼ばれる)において行われる。ポリマー溶液(または紡糸液体)が高温高圧において連続的に、または回分様式で調製され、導管を介して紡糸セルに供給される。溶液の圧力は、ポリマーが、均一な単一相混合物を形成する紡糸剤に完全に溶解する最低圧力である曇り点圧力よりも大きい。
【0146】
この単一相ポリマー溶液はレットダウン(letdown)オリフィスを通って、低圧側(またはレットダウン)チャンバーに入る。低圧側チャンバーにおいて、溶液は2相の液−液分散物に分離する。分散物の一方の相が、主に紡糸剤を含有する富紡糸剤相であり、分散物の他方の相が、ポリマーのほとんどを含有する富ポリマー相である。この2相液−液分散物は紡糸口金を通って、紡糸剤が非常に迅速に蒸発(フラッシュ)し、ポリマーが糸(またはプレキシフィラメント)として紡糸口金から現れる、はるかにより低い圧力(好ましくは大気圧)の領域に送られる。糸は穴において伸張され、回転するバッフルに突き当たるように導かれる。回転するバッフルは、糸を、幅が約5cm〜15cmである平坦なウェブに転換し、かつ、ウェブを広げるためにフィブリルを分離する形状を有する。回転するバッフルはさらに、幅広い前後の帯域を生じさせるための十分の振幅を有する前後に振動する動きを与える。ウェブは、紡糸口金の約50cm下方に位置する動くワイヤ敷きベルトに置かれ、前後に振動する動きは、シートを形成するために、一般にはベルトと交差するように整えられる。
【0147】
ウェブは、動くベルトへの途中でバッフルによってそらされるので、固定されたマルチニードルイオン銃と、接地された回転する標的プレートとの間のコロナ放電域に入る。マルチニードルイオン銃は、好適な電源によってDC電位に帯電させられる。帯電したウェブは、高速度の紡糸剤蒸気の流れによって、前方区域および後方区域の2つの部分からなるディフューザーを通って運ばれる。ディフューザーはウェブの膨張を抑制し、ウェブを減速させる。ディフューザーの後方区域は固定されて標的プレートから離れていてもよく、または、標的プレートと一体化されてもよい。後方区域および標的プレートが一体となっている場合、それらは一緒に回転する。吸引穴が、動くウェブとディフューザーの後方区域との間でのガスの十分な流れを保証して、動くウェブがディフューザーの後方区域に粘着することを防止するために、ディフューザーの後方区域に開けられる。動くベルトはロールを介して接地され、その結果、帯電したウェブがベルトに静電的に引き寄せられ、ベルト上において定位置に保たれる。動くベルトに集められ、静電力によってベルトに保たれた重なっているウェブの細長い区域が、ベルトの速度によって制御された厚さとともにシートに形成される。シートはベルトと圧密ロールとの間で圧縮されて、チャンバーの外で取り扱われるための十分な強度を有する構造にされ、その後、チャンバーの外において巻き取りロールに集められる。
【0148】
従って、本発明のいくつかの実施形態では、本明細書中に記載される本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体を含む柔軟なポリマー状のフラッシュ紡糸されたプレキシフィラメント状材料が提供される。好ましくは、エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.1g/10分〜約50g/10分または約0.4g/10分〜約10g/10分のメルトインデックス、および、約0.85g/cc〜約0.95g/ccまたは約0.87g/cc〜約0.90g/ccの密度を有する。好ましくは、共重合体の分子量分布は約1よりも大きく、しかし、約4よりも小さい。そのうえ、フラッシュ紡糸されたプレキシフィラメント状材料は、約2m2/gを超えるBET表面積、または、約8m2/gを超えるBET表面積を有する。柔軟なフラッシュ紡糸された不織シート材をそのような柔軟なポリマー状のフラッシュ紡糸されたプレキシフィラメント状材料から作製することができる。柔軟なフラッシュ紡糸された不織シート材はスパン結合(spunbonded)、エリア結合(area bonded)またはポインティド結合(pointed bonded)が可能である。本発明の他の実施形態では、高密度ポリエチレンポリマーと配合された(本明細書中に記載される)エチレン/α−オレフィン共重合体を含む柔軟なポリマー状のフラッシュ紡糸されたプレキシフィラメント状材料が提供され、この場合、エチレン/α−オレフィン共重合体は、約0.4g/10分〜約10g/10分の間のメルトインデックス、約0.87g/cc〜約0.93g/ccの間の密度、および、約4未満の分子量分布を有し、かつ、プレキシフィラメント状材料は、約8m2/gを超えるBET表面積を有する。柔軟なフラッシュ紡糸された不織シートは少なくとも85%の不透過率を有する。
【0149】
前記プロセスと類似するプロセスによって作製されたフラッシュ紡糸された不織シートは、建築用途における空気侵入バリアのためのTyvek(登録商標)スパンボンド法オレフィンシートに取って代わるために、また、包装材(例えば、航空速達用封筒など)として、また、医療用包装材として、また、横断幕(垂れ幕)として、また、保護衣料および他の使用のために使用することができる。
【0150】
本発明の繊維および布地を使用して作製することができる製造品には、弾性部分を有する弾性複合品(例えば、おむつ)が挙げられる。例えば、弾性部分は典型的には、(米国特許第4,381,781号(Sciaraffa)(その開示は参考として本明細書中に組み込まれる)に示されるように)、おむつが落ちることを防止するためのおむつのウエストバンド部分に、また、漏れを防止するための脚バンド部分に組み立てられる。多くの場合、弾性部分により、快適さおよび確実性の良好な組合せのためのより良好な形態一致システムおよび/または形態固定システムの向上がもたらされる。本発明の繊維および布地はまた、弾性を通気性と両立させる構造を製造することができる。例えば、本発明の繊維、布地および/またはフィルムは、米国仮特許出願第60/083,784号(1998年5月1日出願)に開示される構造に組み込むことができる。本発明の繊維を含む不織布の積層体もまた形成することができ、そのような積層体は、消費財、例えば、衣料品、おむつ、病院用室内着、衛生用適用品、椅子張り生地のような耐久品および使い捨て消費材などが挙げられる、様々な物品において使用することができる。
【0151】
本発明の繊維、フィルムおよび布地はまた、米国特許第2,957,512号に記載されるような様々な構造において使用することができる。例えば、米国特許第2,957,512号に記載される構造の層50(すなわち、弾性成分)を、平坦、プリーツ加工、クレープ加工、けん縮加工などがなされた非弾性材料が弾性構造にされる場合には特に、本発明の繊維および布地に取り替えることができる。本発明の繊維および/または布地を非繊維、布地または他の構造に取り付けることを、溶融結合することによって、または、接着剤を用いて行うことができる。ギャザー加工またはシャーリング加工(shirted)された弾性構造を、取り付け前に(米国特許第2,957,512号に記載されるように)非弾性成分をプリーツ加工することによって、または、取り付け前に弾性成分を予備延伸することによって、または、取り付け後に弾性成分を熱収縮することによって、本発明の繊維および/または布地および非弾性成分から製造することができる。
【0152】
本発明の繊維はまた、新規な構造を作製するために、スパンレース(または流体力学的にからみ合った)プロセスにおいて使用することができる。例えば、米国特許第4,801,482号には、本明細書中に記載される新規な繊維/フィルム/布地を用いて今では作製することができる弾性シート(12)が開示される。
【0153】
本明細書中に記載されるような連続弾性フィラメントはまた、高い回復性が所望される織物または編物の用途において使用することができる。
【0154】
米国特許第5,037,416号には、弾性リボンを使用することによる形態一致用の表面シートの利点が記載される(米国特許第5,037,416号の部材19を参照のこと)。本発明の繊維は米国特許第5,037,416号の部材19の機能を果たすことができ、または、所望する弾性を提供するために布地形態で使用することができる。
【0155】
米国特許第4,981,747号(Morman)において、本明細書中に開示される本発明の繊維および/または布地を、可逆的に縮められる(necked)材料を含む複合弾性材料を形成する弾性シート122の代わりに使用することができる。
【0156】
本発明の繊維はまた、米国特許第4,879,170号(Radwanski)の図面の符号6で記載されるようなメルトブローン弾性成分であり得る。米国特許第4,879,170号では一般には、弾性コフォーム(co-form)材料および製造プロセスが記載される。
【0157】
弾性パネルもまた、本明細書中に開示される本発明の繊維および布地から作製することができ、そのような弾性パネルは、例えば、米国特許第4,940,464号の部材18、部材20、部材14および/または部材26として使用することができる。本明細書中に記載される本発明の繊維および布地はまた、複合サイドパネルの弾性成分(例えば、米国特許第4,940,464号の層86)として使用することができる。
【0158】
本発明の弾性材料はまた、穴形成、スリット形成、微細孔形成、または、繊維もしくは発泡体との混合など、および、それらの組合せが挙げられる、当分野では周知である任意の方法によって透過性または「通気性」にすることができる。そのような方法の例には、米国特許第3,156,242号(Crowe, Jr.)、米国特許第3,881,489号(Hartwell)、米国特許第3,989,867号(Sisson)および米国特許第5,085,654号(Buell)が挙げられる。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態による繊維は被覆繊維であり得る。被覆繊維はコア部および被覆部を含む。本発明の目的のために、コア部は1つまたはそれ以上の弾性繊維を含み、被覆部は1つまたはそれ以上の非弾性繊維を含む。被覆繊維を組み立てるとき、それらのそれぞれの非伸長状態において、被覆部はコア繊維よりも長く、典型的には著しく長い。被覆部は、従来の様式で、典型的には、らせん状の巻付け形態でコア部を取り囲む。非被覆繊維は、被覆を伴わない繊維である。本発明の目的のために、編上げ繊維または編上げ糸、すなわち、互いに撚り合わされているか、または、互いに撚られているそれらのそれぞれの非伸長状態においてほぼ等しい長さの2つまたはそれ以上の繊維ストランドまたは繊維フィラメント(弾性および/または非弾性)からなる繊維は被覆繊維ではない。しかしながら、このような糸は被覆繊維のコア部および被覆部のいずれかまたは両方として使用することができる。本発明の目的のために、弾性の被覆部で包まれた弾性のコア部からなる繊維は被覆繊維ではない。
【0160】
繊維または繊維から作製された布地に付与される熱処理伸長の完全または実質的な可逆性は有用な特性であり得る。例えば、被覆繊維が染色前および/または製織前に熱処理され得るならば、繊維は巻き取り操作の期間中に伸長する可能性があまりないので、染色プロセスおよび/または製織プロセスはより効率的である。このことは、同様に、繊維が最初にスプールに巻き取られる染色操作および製織操作において有用であり得る。染色および/または製織が完了すると、被覆繊維または被覆繊維を含む布地は緩和処理することができる。この技術は、特定の製織操作のために必要な繊維量を減少させるだけでなく、その後の収縮をも防ぐことになる。そのような可逆性の熱処理された弾性繊維、ならびに、そのような繊維を作製する方法、および、そのような繊維から作製された物品が、米国特許出願第10/507,230号(これは米国特許出願公開第20050165193号として公開された)(これはその全体が本明細書中に参考として組み込まれる)に開示される。そのような方法はまた、可逆性の熱処理された弾性繊維、布地、および、それから作製される物品を作製するために、改変して、または、改変することなく、本発明の実施形態において使用することができる。
【0161】
事前に活性化された物品を、米国特許第5,226,992号、同第4,981,747号(KCC、Morman)および同第5,354,597号(これらのすべてがその全体において本明細書中に参考として組み込まれる)の教示に従って作製することができる。
【0162】
高テナシティ繊維を、米国特許第6,113,656号、同第5,846,654号および同第5,840,234号(これらのすべてがその全体において本明細書中に参考として組み込まれる)の教示に従って作製することができる。
【0163】
低デニール繊維(ミクロデニール繊維が挙げられる)を本発明の共重合体から作製することができる。
【0164】
別のポリマーとの配合
プロピレン/α−オレフィン共重合体は、繊維を作製する少なくとも別のポリマー(例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)など)と配合することができる。ポリオレフィンは、2つまたはそれ以上のオレフィン(すなわち、アルケン)に由来するポリマーである。オレフィン(すなわち、アルケン)は、少なくとも1つの炭素・炭素二重結合を含有する炭化水素である。そのようなオレフィンは、モノエン(すなわち、1つだけの炭素・炭素二重結合を含有するオレフィン)、ジエン(すなわち、2つの炭素・炭素二重結合を含有するオレフィン)、トリエン(すなわち、3つの炭素・炭素二重結合を含有するオレフィン)、テトラエン(すなわち、4つの炭素・炭素二重結合を含有するオレフィン)および他のポリエンであり得る。オレフィンまたはアルケン(例えば、モノエン、ジエン、トリエン、テトラエンおよび他のポリエンなど)は、3個以上の炭素原子、4個以上の炭素原子、6個以上の炭素原子、8個以上の炭素原子を有することができる。いくつかの実施形態において、オレフィンは、3個〜約100個の炭素原子、4個〜約100個の炭素原子、6個〜約100個の炭素原子、8個〜約100個の炭素原子、3個〜約50個の炭素原子、3個〜約25個の炭素原子、4個〜約25個の炭素原子、6個〜約25個の炭素原子、8個〜約25個の炭素原子、または、3個〜約10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、オレフィンは、2個〜約20個の炭素原子を有する直鎖または分枝状の環状モノエンまたは非環状モノエンである。他の実施形態において、アルケンはジエンであり、例えば、ブタジエンおよび1,5−ヘキサジエンなどである。さらなる実施形態において、アルケンの水素原子の少なくとも1つがアルキルまたはアリールで置換される。具体的な実施形態において、アルケンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレン、または、それらの組合せである。
【0165】
ポリマー配合物におけるポリオレフィンの量は、ポリマー配合物の総重量の約0.5wt%〜約99wt%、約10wt%〜約90wt%、約20wt%〜約80wt%、約30wt%〜約70wt%、約5wt%〜約50wt%、約50wt%〜約95wt%、約10wt%〜約50wt%、または、約50wt%〜約90wt%が可能である。
【0166】
当業者に公知の任意のポリオレフィンを、本明細書中に開示されるポリマー配合物を調製するために使用することができる。そのようなポリオレフィンは、オレフィンのホモポリマー、オレフィンのコポリマー、オレフィンのターポリマー、および、オレフィンのクォーターポリマーなど、ならびに、それらの組合せが可能である。
【0167】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つのポリオレフィンのうちの1つがオレフィンホモポリマーである。オレフィンホモポリマーは1つのオレフィンに由来し得る。当業者に公知の任意のオレフィンホモポリマーを使用することができる。オレフィンホモポリマーの限定されない例には、ポリエチレン(例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび超高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブチレン(例えば、ポリブテン−1)、ポリペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリデセン−1、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエンが挙げられる。
【0168】
さらなる実施形態において、オレフィンホモポリマーはポリプロピレンである。当業者に公知の任意のポリプロピレンを、本明細書中に開示されるポリマー配合物を調製するために使用することができる。ポリプロピレンの限定されない例には、ポリプロピレン(LDPP)、高密度ポリプロピレン(HDPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、高衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)およびシンジオタクチックポリプロピレン(sPP)など、ならびに、それらの組合せが挙げられる。
【0169】
ポリマー配合物におけるポリプロピレンの量は、ポリマー配合物の総重量の約0.5wt%〜約99wt%、約10wt%〜約90wt%、約20wt%〜約80wt%、約30wt%〜約70wt%、約5wt%〜約50wt%、約50wt%〜約95wt%、約10wt%〜約50wt%、または、約50wt%〜約90wt%が可能である。
【0170】
架橋
繊維は、架橋触媒を伴った、または、架橋触媒を伴わない電子ビーム照射、ベータ線照射、ガンマ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリル化合物およびUV照射(これらに限定されない)に挙げられる、当分野で公知の任意の手段によって架橋することができる。米国特許出願第10/086,057号(これは米国特許出願公開第2002/0132923号A1として公開された)および米国特許第6,803,014号には、本発明の実施形態において使用することができる電子ビーム照射法が開示される。
【0171】
照射は、高エネルギー、イオン化電子、紫外線、X線、ガンマ線およびベータ粒子など、ならびに、それらの組合せの使用によって達成することができる。好ましくは、電子が70メガラドまでの線量で用いられる。照射源は、所望の線量を供給することができる出力を有する、約150キロボルト〜約6メガボルトの範囲で運転される任意の電子ビーム発生器が可能である。電圧は、例えば、100,000、300,000、1,000,000または2,000,000または3,000,000または6,000,000、あるいは、それ以上またはそれ以下であり得る適切なレベルに調節することができる。ポリマー材料に照射するための多くの他の装置が当分野では知られている。照射は通常、約3メガラド〜約35メガラドの間の線量で行われ、好ましくは、約8メガラド〜約20メガラドの間の線量で行われる。さらに、照射は好都合には室温において行うことができ、だが、それよりも高い温度および低い温度(例えば、0℃〜約60℃)もまた用いることができる。好ましくは、照射は物品の成形後または製造後に行われる。また、好ましい実施形態において、プロラド(pro-rad)添加剤が配合されているプロピレン共重合体には、電子ビーム線が約8メガラド〜約20メガラドの間で照射される。
【0172】
架橋は架橋触媒により促進され得る。そして、この機能を提供する任意の触媒を使用することができる。好適な触媒には、一般に、有機塩基、カルボン酸、および、有機金属化合物(有機チタン酸塩、ならびに、鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛およびスズの錯体またはカルボキシラートが挙げられる)が挙げられる。ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズマレアート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジオクトアート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛およびナフテン酸コバルトなど。スズカルボキシラート(特に、ジブチルスズジラウラートおよびジオクチルスズマレアート)が本発明のために特に効果的である。触媒(または触媒の混合物)は触媒量で存在し、典型的には約0.015phr〜約0.035phrの間で存在する。
【0173】
代表的なプロラド添加剤には、アゾ化合物、有機過酸化物、および、多官能性のビニル化合物またはアリル化合物、例えば、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、ペンタエリトリトールテトラメタクリラート、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジメタクリラート、ジアリルマレアート、ジプロパルギルマレアート、ジプロパルギルモノアリルシアヌラート、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過オクタン酸t−ブチル、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、過酢酸tert−ブチルおよびアゾビスイソブチルニトリトなど、ならびに、それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用される好ましいプロラド添加剤は、多官能性(すなわち、少なくとも2つ)の部分(例えば、C=C、C=NまたはC=Oなど)を有する化合物である。
【0174】
少なくとも1つのプロラド添加剤を当分野で公知の任意の方法によってプロピレン共重合体に導入することができる。しかしながら、好ましくは、プロラド添加剤は、プロピレン共重合体と同じまたは異なるベース樹脂を含むマスターバッチ高濃度物により導入される。好ましくは、マスターバッチのためのプロラド添加剤濃度は比較的高く、例えば、(高濃度物の総重量に基づいて)約25重量パーセントである。
【0175】
少なくとも1つのプロラド添加剤が任意の効果的な量でプロピレンポリマーに導入される。好ましくは、少なくとも1つのプロラド添加剤の導入量は、(プロピレン共重合体の総重量に基づいて)約0.001重量パーセント〜約5重量パーセントであり、より好ましくは約0.005重量パーセント〜約2.5重量パーセントであり、最も好ましくは約0.015重量パーセント〜約1重量パーセントである。
【0176】
電子ビーム照射に加えて、架橋はまた、UV照射によって達成することができる。米国特許第6,709,742号には、本発明の実施形態において使用することができるUV照射による架橋方法が開示される。その方法では、光開始剤を、繊維が形成される前に、または、その期間中に、または、その後で、光架橋剤とともに、または光架橋剤を伴うことなく、ポリマーと混合すること、次いで、繊維を光開始剤とともに、ポリマーを所望のレベルに架橋するための十分なUV線にさらすことが含まれる。本発明の実施において使用される光開始剤は、芳香族ケトン(例えば、ベンゾフェノン類)、または、1,2−ジケトンのモノアセタールである。モノアセタールの主要な光反応は、アシルラジカルおよびジアルコキシアルキルラジカルを生じさせるためのα−結合の均等開裂である。このタイプのα−開裂はNorrishのI型反応として知られており、この反応はより詳しくは、W. HorspoolおよびD. Armesto、Organic Photochemistry: A Comprehensive Treatment、Ellis Horwood Limited、Chichester、England、1992;J. Kopecky、Organic Photochemistry: A Visual Approach、VCH Publishers, Inc.、New York、NY 1992;N.J. Turro他、Acc. Chem. Res.、1972、5、92;およびJ.T. Banks他、J. Am. Chem. Soc.、1993、115、2473に記載される。芳香族1,2−ジケトンのモノアセタール(Ar−CO−C(OR)2−Ar')の合成が米国特許第4,190,602号およびドイツ国特許公開2,337,813に記載される。このクラスからの好ましい化合物が2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(C65−CO−C(OCH32−C65)であり、これはCiba−GeigyからIrgacure651として市販されている。光開始剤として本発明の実施において有用な他の芳香族ケトンの例が、Irgacure184、同369、同819、同907および同2959であり、これらのすべてがCiba−Geigyから入手可能である。
【0177】
本発明の1つの実施形態において、光開始剤は光架橋剤との組合せで使用される。フリーラジカルが生成したとき、2つまたはそれ以上のポリオレフィン骨格を骨格との共有結合の形成によって一緒に連結する任意の光架橋剤を本発明において使用することができる。好ましくは、このような光架橋剤は多官能性である。すなわち、このような光架橋剤は、活性化されたとき、コポリマーの骨格における部位との共有結合性の結合を形成する2つまたはそれ以上の部位を含む。代表的な光架橋剤には、多官能性のビニル化合物またはアリル化合物、例えば、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、ペンタエリトリトールテトラメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、ジアリルマレアート、ジプロパルギルマレアートおよびジプロパルギルモノアリルシアヌラートなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用される好ましい光架橋剤は、多官能性(すなわち、少なくとも2つ)の部分を有する化合物である。特に好ましい光架橋剤がトリアリルシアヌラート(TAC)およびトリアリルイソシアヌラート(TAIC)である。
【0178】
ある種の化合物は本発明の実施において光開始剤および光架橋剤の両方として作用する。このような化合物は、UV光にさらされたときに2つまたはそれ以上の反応性化学種(例えば、フリーラジカル、カルベン、ニトレンなど)を生じさせ、続いて、2つのポリマー鎖と共有結合により結合することができることによって特徴づけられる。これら2つの機構を果たすことができる任意の化合物を本発明の実施において使用することができ、代表的な化合物には、米国特許第6,211,302号および同第6,284,842号に記載されるスルホニルアジド系化合物が挙げられる。
【0179】
本発明の別の実施形態において、コポリマーは二次架橋(すなわち、光架橋以外で、および光架橋に加えての架橋)に供される。この実施形態において、光開始剤が非光架橋剤(例えば、シラン)との組合せで使用されるか、あるいは、コポリマーが二次的な架橋手順(例えば、Eビーム線に対する暴露)に供される。シラン架橋剤の代表的な例が米国特許第5,824,718号に記載され、Eビーム線に対する暴露による架橋が米国特許第5,525,257号および同第5,324,576号に記載される。この実施形態における光架橋剤の使用は必要に応じて行われる。
【0180】
少なくとも1つの光反応性添加剤(photoadditive)、すなわち、光開始剤および場合により使用される光架橋剤を、当分野で公知の任意の方法によってコポリマーに導入することができる。しかしながら、好ましくは、光反応添加剤は、コポリマーと同じまたは異なるベース樹脂を含むマスターバッチ高濃度物により導入される。好ましくは、マスターバッチのための光反応性添加剤濃度は比較的高く、例えば、(高濃度物の総重量に基づいて)約25重量パーセントである。
【0181】
少なくとも1つの光反応性添加剤は任意の効果的な量でコポリマーに導入される。好ましくは、少なくとも1つの光反応性添加剤の導入量は、(コポリマーの総重量に基づいて)約0.001wt%〜約5wt%であり、より好ましくは約0.005wt%〜約2.5wt%であり、最も好ましくは約0.015wt%〜約1wt%である。
【0182】
光開始剤および場合により使用される光架橋剤は、繊維またはフィルムの製造プロセスの種々の段階の期間中において加えることができる。光反応性添加剤が押出し温度に耐えることができるならば、ポリオレフィン樹脂を、押出し機に供給される前に、例えば、マスターバッチへの添加によって、添加剤と混合することができる。あるいは、添加剤をスロットダイの直前で押出し機に導入することができ、しかし、この場合には、押出しの前における成分の効率的な混合が重要である。別の方法では、ポリオレフィン繊維を、光反応性添加剤を伴うことなく延伸することができ、光開始剤および/または光架橋剤を、キスロール、スプレー、添加剤を伴う溶液への浸漬により、または、後処理のための他の工業的方法によって、押出された繊維に適用することができる。光反応性添加剤を伴う得られた繊維は、その後、連続プロセスまたは回分プロセスで電磁放射線によって硬化させられる。光反応性添加剤は、一軸スクリュー押出し機および二軸スクリュー押出し機が挙げられる従来の配合装置を使用してポリオレフィンと配合することができる。
【0183】
電磁放射線の出力および照射時間は、ポリマー分解および/または寸法欠陥を伴うことなく効率的な架橋を可能にするように選ばれる。好ましいプロセスが欧州特許0490854B1に記載される。十分な熱安定性を有する光反応性添加剤はポリオレフィン樹脂と事前に混合され、繊維に押出され、1つのエネルギー源または連続してつながれた数個のユニットを使用して連続プロセスで照射される。スプールに集められる繊維またはメリヤス生地のシートを硬化させるための回分プロセスと比較して、連続プロセスを使用することには利点がいくつかある。
【0184】
照射をUV線の使用によって達成することができる。好ましくは、UV線は100J/cm2の強度まで用いられる。照射源は、所望の線量を供給することができる出力を有する、約50ワット〜約25000ワットの範囲で運転される任意のUV光発生器が可能である。ワット数は、例えば、1000ワットまたは4800ワットまたは6000ワット、あるいは、それ以上またはそれ以下であり得る適切なレベルに調節することができる。ポリマー材料にUV照射するための多くの他の装置が当分野では知られている。照射は通常、約3J/cm2〜約500J/scm2の間での線量で行われ、好ましくは、約5J/cm2〜約100J/cm2の間での線量で行われる。さらに、照射は好都合には室温において行うことができ、だが、それよりも高い温度および低い温度(例えば、0℃〜約60℃)もまた用いることができる。光架橋プロセスは、より高い温度ではより速くなる。好ましくは、照射は物品の成形後または製造後に行われる。好ましい実施形態において、光反応性添加剤が配合されているコポリマーには、UV線が約10J/cm2〜約50J/cm2で照射される。
【0185】
他の添加剤
酸化防止剤(例えば、Ciba Geigy Corp.によって作製されるIrgafos168、Irganox1010、Irganox3790およびchimassorb944)を、成形操作時または製造操作時における元に戻る(undo)分解から保護するために、かつ/あるいは、グラフト化または架橋の程度をより良く制御するために(すなわち、過度なゲル化を阻害するために)、プロピレンポリマーに加えることができる。工程中の添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、水、フルオロポリマーなどもまた、様々な目的のために、例えば、残存触媒の失活化および/または加工性の改善などのために使用することができる。Tinuvin770(Ciba Geigyから得られる)を光安定剤として使用することができる。
【0186】
コポリマーは充填または非充填が可能である。充填されるならば、存在するフィラーの量は、高温において耐熱性または弾性のいずれかに悪影響を及ぼす量を超えてはならない。存在するならば、典型的には、フィラーの量は、コポリマーの総重量(または、コポリマーおよび1つまたはそれ以上の他のポリマーの配合物であるならば、配合物の総重量)に基づいて0.01wt%〜80wt%の間である。代表的なフィラーには、カオリン粘土、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。好ましい実施形態において、フィラーが存在する場合、フィラーが他の場合には架橋反応を妨害するように有し得る何らかの傾向を妨げるか、または遅らせる物質が被覆される。ステアリン酸がそのようなフィラー被覆剤の例示である。
【0187】
繊維の摩擦係数を低下させるために、様々なスピン仕上げ配合物を使用することができる(例えば、繊維油に分散された金属石けん(例えば、米国特許第3,039,895号または米国特許第6,652,599号を参照のこと)、基油における界面活性剤(例えば、米国特許出願公開第2003/0024052号を参照のこと)、および、ポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3,296,063号または米国特許第4,999,120号を参照のこと)など)。米国特許出願第10/933,721号(これは米国特許出願公開第20050142360号として公開された)には、同様に使用することができるスピン仕上げ組成物が開示される。
【0188】
下記の実施例は、本発明の実施形態を例示するために示され、しかし、本発明を示された特定の実施形態に限定するためには意図されない。そうでないことが示されない限り、すべての部および百分率は重量比である。すべての数値は概数である。数値範囲が示されるとき、言及された範囲の外側における実施形態が依然として本発明の範囲に含まれ得ることを理解しなければならない。それぞれの実施例において記載される具体的な細部は本発明の必須な特徴として解釈してはならない。
【実施例1】
【0189】
約12重量パーセントのエチレンおよび約88重量パーセントのプロピレン(ソフトセグメントの組成)、約25g/10分のメルトフローレート(MFR、これはASTM D1238(条件、230℃/2.16kg)で測定された)、および、約0.877g/cm3の全体的な密度、ならびに、約30%の推定されたハードセグメント含有量および約70%の推定されたソフトセグメント含有量を有するプロピレン/エチレンブロックコポリマーを、スパンボンド法装置を使用して(フィラメントあたり約4デニール未満の)ファインデニール繊維に溶融紡糸する。溶融紡糸温度は約245℃であり、処理量は約0.5ghm(グラム/分/穴)であり、繊維を、約600ミクロンの紡糸口金から、フィラメントあたり約2デニール〜約4デニール未満までの繊維直径に溶融状態で延伸する。得られた不織布をその後、約200℃〜220℃の温度、および、繊維をポイント結合するために十分な圧力のもとで熱的に結合する。個々の繊維を機械的特性について測定し、個々の繊維は、約0.5グラム/デニール〜1グラム/デニールの引張強度、約150%〜270%の破断点伸度、約3%〜12%の永久ひずみ(100%の伸びでの2サイクルのヒステリシス)、約5グラム/デニール〜15グラム/デニールの弾性率、および、約160℃の融点を有する。得られた不織布は、約30g/m2の基準重量、ならびに、約200%の破断点MD伸びおよび約330%の破断点CD伸び、約8%のMD%残留ひずみおよび約8%のCD%残留ひずみという物理的特性を有する。
【実施例2】
【0190】
約12重量パーセントのエチレンおよび約88重量パーセントのプロピレン、約9g/10分のメルトフローレート(MFR、これはASTM D1238(条件、230℃/2.16kg)で測定された)、および、約0.875g/cm3の全体的な密度、ならびに、約30%の推定されたハードセグメント含有量および約70%の推定されたソフトセグメント含有量を有するプロピレン/エチレンブロックコポリマーを、溶融紡糸装置を使用して約40デニールの繊維(モノフィラメント)に溶融紡糸する。溶融紡糸温度は約245℃であり、繊維を、約800ミクロンの紡糸口金から、約550m/分の巻き取り速度で、40デニールに対応する繊維直径までに溶融状態で延伸する。スプールの形態での繊維を機械的特性(架橋前)について測定し、繊維は、約1グラム/デニール〜1.5グラム/デニールの引張強度、約450%〜500%の破断点伸度、約40%〜60%の永久ひずみ(5サイクル、300%の伸び、BISFA法)、および、約160℃の融点を有する。
【実施例3】
【0191】
約12重量パーセントのエチレンおよび約88重量パーセントのプロピレン(ソフトセグメントの組成)、約50g/10分のメルトフローレート(MFR、これはASTM D1238(条件、230℃/2.16kg)で測定された)、および、約0.877g/cm3の全体的な密度、ならびに、約30%の推定されたハードセグメント含有量および約70%の推定されたソフトセグメント含有量を有するプロピレン/エチレンブロックコポリマーを、スパンボンド法装置を使用して(フィラメントあたり約1.5デニール未満)のミクロデニール繊維に溶融紡糸する。溶融紡糸温度は約245℃であり、処理量は約0.5ghm(グラム/分/穴)であり、繊維を、約600ミクロンの紡糸口金から、フィラメントあたり約1デニール〜約1.5デニールまでの繊維直径に溶融状態で延伸する。個々の繊維を機械的特性について測定し、個々の繊維は、約2.5グラム/デニール〜3グラム/デニールの引張強度、約50%〜100%の破断点伸度、約35%〜45%の永久ひずみ(100%の伸びでの2サイクルのヒステリシス)、および、約160℃の融点を有する。
【0192】
上記で記載されたように、本発明の実施形態により、プロピレンおよびα−オレフィンの特有のマルチブロックコポリマーから作製された繊維が提供される。この繊維は下記利点の1つまたはそれ以上を有することができる:良好な耐摩耗性;低い摩擦係数;高い上限使用温度;大きい回復/収縮力;低い応力緩和(高温および低温);柔軟な伸長;大きい破断点伸度;不活性:化学的抵抗性;UV抵抗性。この繊維は比較的大きい紡糸速度およびより低い温度で溶融紡糸することができる。この繊維は電子ビーム法または他の照射法によって架橋することができる。加えて、この繊維は粘着性がほとんどなく、これにより、より良好な巻き戻し性能、および、より良好な貯蔵寿命をもたらし、また、ローピング(すなわち、繊維のバンドリング)を実質的に有しない。この繊維はより大きい紡糸速度で紡糸され得るので、繊維の製造処理量が大きい。そのような繊維はまた、形成範囲が広く、また、加工範囲が広い。他の利点および特徴が当業者には明らかである。
【0193】
本発明が、限定された数の実施形態に関して記載されているが、1つの実施形態の具体的な特徴は本発明の他の実施形態の属性であると考えてはならない。1つだけの実施形態により、本発明のすべての態様は表されない。いくつかの実施形態において、その組成物または方法は、本明細書中に述べられていない数多くの化合物または工程を含む場合がある。他の実施形態において、その組成物または方法は、本明細書中に列挙されていない何らかの化合物または工程を含まないか、または、実質的に有しない。記載された実施形態からの様々な変化および改変が存在する。樹脂を作製する方法が、多数の行為または工程を含むとして記載される。これらの工程または行為は、別途示されない限り、任意の系列または順序で実施することができる。最後に、本明細書中に開示された数字はどれも、「約」または「およそ」の語句が、その数字を記述する際に使用されるかどうかにかかわらず、概数を意味するように解釈されなければならない。添付された請求項は、本発明の範囲に含まれるようなすべてのそのような改変および変化を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特性の1つまたはそれ以上によって特徴づけられるプロピレン/α−オレフィン共重合体から得ることができるか、またはそのようなプロピレン/α−オレフィン共重合体を含む、繊維:
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および、密度d(g/cm3)、この場合、Tmおよびdの数値は下記の関係に対応する:
m>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mn、ならびに、融解熱ΔH(J/g)、および、最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量ΔT(℃)、この場合、ΔTおよびΔHの数値は下記の関係を有する:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHが0よりも大きく、130J/gまでである場合)、
ΔT≧48℃(ΔHが130J/gよりも大きい場合)、
ただし、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である;または
(c)プロピレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定された弾性回復率Re(300パーセントの伸びおよび1サイクルでのパーセント)、および、密度d(g/cm3)、この場合、Reおよびdの数値は、プロピレン/α−オレフィン共重合体が架橋相を実質的に有しないとき、下記の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または
(d)TREFを使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムプロピレン共重合体画分のコモノマーモル含有量よりも少なくとも5パーセント大きいコモノマーモル含有量を有することを特徴とする分子画分、この場合、前記比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを含み、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、プロピレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント以内に有する。
【請求項2】
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が、プロピレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成型フィルムから測定された弾性回復率Re(300パーセントの伸びおよび1サイクルでのパーセント)、および、密度d(g/cm3)よって特徴づけられ、この場合、弾性回復率および密度は、プロピレン/α−オレフィン共重合体が架橋相を実質的に有しないとき、下記の関係:
e>1481−1629(d)
を満たす、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および、密度d(g/cm3)を有し、この場合、これらの変数の数値は、下記の関係:
m>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、かつ、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が約1.7〜約3.5のMw/Mnを有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が、融解熱ΔH(J/g)、および、最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴づけられ、この場合、ΔTおよびΔHの数値は、下記の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHが0よりも大きく、130J/gまでである場合)、または、
ΔT≧48℃(ΔHが130J/gよりも大きい場合)、
を満たし、
この場合、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である、請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
下記の特性:(a)TREFを使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する少なくとも1つの分子画分であって、少なくとも0.5で、約1までのブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)とを有することを特徴とする分子画分を有すること;または(b)ゼロよりも大きく、約1.0までの平均ブロックインデックスと、約1.3よりも大きい分子量分布(Mw/Mn)とを有すること、のうちの1つまたはそれ以上によって特徴づけられるプロピレン/α−オレフィン共重合体から得ることができるか、またはそのようなプロピレン/α−オレフィン共重合体を含む、繊維。
【請求項6】
約0.860g/cc〜約0.895g/ccの密度と、約70%未満の70℃での圧縮永久ひずみとを有する、プロピレンおよびC2α−オレフィンまたはC4〜C20α−オレフィンの少なくとも1つの共重合体から得ることができるか、またはそのような共重合体を含む、繊維。
【請求項7】
前記α−オレフィンが、スチレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンまたはそれらの組合せである、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項8】
架橋される、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項9】
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体が別のポリマーと配合される、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項10】
複合繊維である、請求項1、2、3、4または5に記載の繊維。
【請求項11】
前記架橋が、光子照射、電子ビーム照射または架橋剤によって達成される、請求項8に記載の繊維。
【請求項12】
架橋ポリマーの割合が、形成されたゲルの重量パーセントによって測定されたとき、少なくとも20パーセントである、請求項8に記載の繊維。
【請求項13】
約1.2未満の摩擦係数を有し、前記共重合体が何らかのフィラーと混合されない、請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維。
【請求項14】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む布地。
【請求項15】
溶液紡糸によって作製された繊維を含む、請求項14に記載の布地。
【請求項16】
弾性を有する、請求項14に記載の布地。
【請求項17】
織布である、請求項14に記載の布地。
【請求項18】
100パーセントの伸びにおける少なくとも50パーセントのMD回復率を有する、請求項14に記載の布地。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の繊維を含む糸。
【請求項20】
被覆される、請求項19に記載の糸。
【請求項21】
綿糸またはナイロン糸によって被覆される、請求項20に記載の糸。
【請求項22】
プロピレン/α−オレフィン共重合体を融解すること;および
下記の特性:
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および、密度d(g/cm3)、この場合、Tmおよびdの数値は下記の関係に対応する:
m≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2;または
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mn、ならびに、融解熱ΔH(J/g)、および、最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量ΔT(℃)、この場合、ΔTおよびΔHの数値は下記の関係を有する:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHが0よりも大きく、130J/gまでである場合)、
ΔT≧48℃(ΔHが130J/gよりも大きい場合)、
この場合、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である;または
(c)プロピレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムを用いて測定された弾性回復率Re(300パーセントの伸びおよび1サイクルでのパーセント)、および、密度d(g/cm3)、この場合、Reおよびdの数値は、プロピレン/α−オレフィン共重合体が架橋相を実質的に有しないとき、下記の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または
(d)TREFを使用して分画されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムプロピレン共重合体画分のコモノマーモル含有量よりも少なくとも5パーセント大きいコモノマーモル含有量を有することを特徴とする分子画分(この場合、前記比較可能なランダムプロピレン共重合体は同じコモノマーを含み、かつ、メルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(ポリマー全体に基づく)を、プロピレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント以内に有する);
の1つまたはそれ以上によって特徴づけられる前記プロピレン/α−オレフィン共重合体を繊維に押出しすること
を含む、繊維の作製方法。
【請求項23】
前記繊維から形成される布地が実質的にローピング(roping)を有しない、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2008−538389(P2008−538389A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502018(P2008−502018)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009405
【国際公開番号】WO2006/101927
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】