説明

プロペラントガス

【課題】 より地球温暖化係数が低減された、不燃性のプロペラントガスを提供する。
【解決手段】 噴射ボタンを備えるスプレー缶に充填されるプロペラントガスである。トリフルオロヨードメタンガス(CFI)と1,1−ジフルオロエタンガス(C)との混合ガスからなる。トリフルオロヨードメタンガス(CFI)の重量比率が、66〜70%であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾールで内容物を噴出させる噴射用ガスや、除塵ガスとして噴出させる除塵ブロワー用噴射ガスに用いるプロペラントガスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾールや除塵ブロワーに用いられるプロペラントガスとしては、フロンガス等の不燃性液化ガス(HFC134a)が使用されていたが、近年では、オゾン層破壊・地球温暖化係数が小さいHFC152aなどの代替フロンが使用されている。
【特許文献1】特開2005−206723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このHFC152aであっても、フロンよもオゾン層破壊・地球温暖化係数は小さいものの、ゼロではないので、地球環境によりやさしいプロペラントガスが求められている。
【0004】
また、HFC152aは可燃性液化ガスであるため、火気に対する安全性が低く、高温の除塵対象物に向けて噴射したり、密閉空間に多量に噴射すると爆発性が高くなるという問題も内包していた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、より地球温暖化係数が低減された、不燃性のプロペラントガスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために本発明は、噴射ボタンを備えるスプレー缶に充填されるプロペラントガスであって、トリフルオロヨードメタンガス(CFI)とHFC152aで知られる1,1−ジフルオロエタンガス(C)との混合ガスで構成したことを特徴としている。そして、請求項2に記載の発明は、この混合ガスでのトリフルオロヨードメタンガス(CFI)の重量比率を、66〜70%にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
トリフルオロヨードメタンガス(CFI)は、沸点が−22.7℃の無色の気体で、1個の炭素原子と3個のフッ素原子と1個のヨウ素原子とからなり、分子構造中に塩素を含まないことから、オゾン破壊能力が殆どないとされている。また、トリフルオロヨードメタンガス(CFI)のGWP(地球温暖化係数)も殆どゼロとされており、HFC152aとの混合ガス中でのトリフルオロヨードメタンガス(CFI)の混合量を増やすにつれて、混合ガスで構成されているプロペラントガスのGWP(地球温暖化係数)を低減させることが可能となる。
【0008】
さらにトリフルオロヨードメタンガス(CFI)は不燃物であることから、HFC152aとの混合ガスでの可燃性を低減し、混合量によって、不燃性のプロペラントガスを提供することができることになる。さらに、トリフルオロヨードメタンガスとHFC152aとは、共沸様混合物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るプロペラントガスは、トリフルオロヨードメタンガス(CFI)を主成分と市、この主成分のトリフルオロヨードメタンガス(CFI)にHFC152aで知られる1,1−ジフルオロエタンガス(C)を混合させた混合ガスで構成されている。 そして、このプロペラントガスは、噴射ボタンを備えるスプレー缶に充填して使用されるものであって、エアゾールにおいて噴射物を噴出させる噴出剤として、あるいは、除塵ブロワ−として直接対象物に噴射したりするものである。
【0010】
表1は、HFC152aとCFIとからなる2成分の各種混合物について、一定温度(35℃)における飽和蒸気圧を示したものである。
【0011】
【表1】

【0012】
上記表1からわかるように、HFC152aとCFIの混合物は、CFIの単体、HFC152aの単体よりも蒸気圧が高く、ほぼ共沸混合物様となる。
【0013】
HFC152aとCFIとからなる2成分の各種混合物について、爆発燃焼試験を行った結果を表2に示す。
この爆発燃焼試験は、中央部に着火用電極を取り付けた覗き窓のついた約2Lの円筒形の金属容器の中に、HFC152aとCFIを混合したガスを想定している混合比になるよう導入後、空気を大気圧まで導入して電極からの放電によって、燃焼の有無を確認した。燃焼の有無の判定は、覗き窓からの目視にて行った。
【0014】
【表2】

【0015】
上記表2から、HFC152aとCFIの混合物は、HFC152aの混合比率が33.6以下で燃焼が起こっていないことがわかり、この混合物はHFC152aの混合比率が33.6以下では不燃物となる。
【0016】
HFC152aとCFIとからなる2成分の混合物と、プロペラントガスとして従来から使用されているLPG、HFC152aについて、旧高圧ガス取締法の爆発性試験に準じた試験を行い、爆発の有無を確認した。その結果を表3に示す。この場合、HFC152aとCFIの混合ガスとして、CFI:HFC152aが66:34のものを使用した。
評価方法は、約50Lの金属製容器の中央部に着火電極、強制攪拌を行うためのファンを左部に取り付けられ、試料用ガスを左上部から一定量導入できる機構を取り付けたものの中に、試料を充填している噴射缶から一定量吹きつけ、電極からの放電によって爆発の有無を確認した。
【0017】
【表3】

【0018】
上記表3から、HFC152aとCFIの混合物においては、爆発が発生しておらず、HFC152aとCFIの混合物は不燃性を示していることがわかる。
【0019】
次に、HFC152aとCFIとからなる2成分の混合物と、プロペラントガスとして従来から使用されているLPG、HFC152aについて、バーナーに対して、4.5cmから5.5cm以下に調整された火炎に対し、各種試料を充填している噴射缶から噴射ボタンを押して、ガス若しくは液化ガスを噴射し、火炎の有無を計測した。その結果を表4に示す。
【0020】
【表4】

【0021】
上記表4からわかるように、HFC152aとCFIとからなる2成分の混合物は火炎への噴射に対しても不燃性を示している。
【0022】
上記の結果、本発明にかかるプロペラントガスは、従来使用されているHFC134aやHFC152aに比べてGWP(地球温暖化係数)を小さくすることができるうえ、CFIが不燃性物質であることから、不燃性を示し、火気に対する安全性を高めることができる。
【0023】
そして、この場合、HFC152aとCFIとの混合割合としては、噴射圧力を確保する上で、HFC152aの混合割合は、30重量%以上であることがのぞましく、不燃性確保の観点から、CFIの混合割合が66重量%以上あることが好ましい。このため、本発明にかかるHFC152aとCFIとからなる2成分の混合ガスの混合割合としては、トリフルオロヨードメタンガス(CFI)の重量比率が、66〜70%の範囲にあることが最も効果的に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかるプロペラントガスは、各種エアゾールでの噴射剤あるいは、除塵ブロワーでの噴出ガスとして使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ボタンを備えるスプレー缶に充填されるプロペラントガスであって、
トリフルオロヨードメタンガス(CFI)と1,1−ジフルオロエタンガス(C)との混合ガスであることを特徴とするプロペラントガス。
【請求項2】
混合ガス中のトリフルオロヨードメタンガス(CFI)の重量比率が、66〜70%であることを特徴とする請求項1に記載のプロペラントガス。
【請求項3】
プロペラントガスが除塵ブロワー用の噴射ガスである請求項1または2に記載したプロペラントガス。
【請求項4】
プロペラントガスがエアゾール用の噴射ガスである請求項1または2に記載したプロペラントガス。

【公開番号】特開2010−116506(P2010−116506A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291612(P2008−291612)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【出願人】(595058808)日本瓦斯株式会社 (13)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)