説明

プロポフォールのアミノ酸誘導体プロドラッグ、組成物、及びその使用方法

本発明は、プロポフォール・プロドラッグ、プロポフォール・プロドラッグの製造方法、プロポフォール・プロドラッグを含む医薬組成物、及びプロポフォール・プロドラッグの使用方法、及び片頭痛、及び化学療法後又は外科的手術後の悪心及び嘔吐などの疾患又は障害を治療又は予防するためのプロポフォール・プロドラッグの医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポフォール・プロドラッグ、プロポフォール・プロドラッグの製造方法プロポフォール・プロドラッグの医薬組成物、及び片頭痛及び化学療法後又は外科的手術後の悪心及び嘔吐などの疾患又は症状を治療又は予防するためのこれらのプロポフォール・プロドラッグ及び組成物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノール)、(1)は、哺乳動物において麻酔及び/又は鎮静の導入及び維持において静脈注射催眠鎮静剤として広く使用される低分子量のフェノールである。麻酔薬としてのプロポフォールの利点は、麻酔の開始が早いこと、クリアランスが早いこと、及び副作用が最小限であることを含む(Langleyら、Drugs 1988, 35, 334-372)。プロポフォールは、GABA受容体複合体、ヘテロ-オリゴマーリガンド依存性クロリド・イオン・チャネルとの相互作用を介して鎮静効果を発揮する(Peduto ら、Anesthesiology 1991, 75, 1000-1009)。
【化1】

【0003】
プロポフォールは、哺乳動物体内で素早く代謝されて、当該薬剤は主にプロポフォール及び4-ヒドロキシプロポフォールのグルクロン酸及び硫酸抱合体として排除される(Langleyら、Drugs 1988, 35, 334-372)。プロポフォールのクリアランスは、肝血量を超えており、これにより肝外組織が当該薬剤の全体的代謝に寄与することが示唆される。ヒト腸粘膜グルクロン酸プロポフォールのin vitro研究及びラットへの経口投与研究により、投与された薬剤の約90%が初回通過代謝を受けており、腸粘膜による除去がこの体内に入る前の大量排除の主な原因となることが示唆される。この初回代謝のため、プロポフォールは注射又は静脈内輸液により投与され、そして経口投与は治療的に有効であるとは考えられていなかった。
【0004】
プロポフォールは、広範囲の生物学的及び医学的適用を有し、当該適用は麻酔域下用量において明らかであり、そして手におえない片頭痛の治療及び/又は予防を含む(Kruszら、Headache 2000, 40, 224-230; Krusz, 国際公開第WO 00/54588号)。麻酔を維持するために使用される場合、プロポフォールは、一般的な吸入麻酔薬に比較した際、術後悪心嘔吐(PONV)の発生率を低減し、そして多くの比較臨床試験により、プロポフォールの制吐作用が裏付けられた(Tramerら、Br. J. Anaesth. 1997, 78, 247-255; Brookerら、Anaesth, Intensive Care 1998, 26, 625-629; Gan ら、Anesthesiology 1997, 87, 779-784)。プロポフォールは、化学療法のための化合物と組み合わせて使用される場合、制吐作用を有することも示された(Phelps ら、Ann. Pharmacother. 1996, 30, 290-292; Borgeat ら、Oncology 1993, 50, 456-459; Borgeatら、Can. J. Anaesth. 1994, 41, 1117-1119; Tomiokaら、Anesth. Analg. 1999, 89, 798-799)。様々な化学療法剤(例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、アントラサイクリン薬など)により誘導される悪心、むかつき、及び/又は嘔吐は、通常の制吐剤(例えば、セロトニン・アンタゴニスト及びコルチコステロイド)を用いた予防では効果のない患者において、低用量のプロポフォール輸液により制御された。
【0005】
プロポフォールは、てんかん重積症を患う患者を治療するためにも使用されてきた(Brownら、Pharmacother. 1998, 32, 1053-1059; Kuismaら、Epilepsia 1995, 36, 1241-1243; Walderら、Neurology 2002, 55, 1327-1332; Sutherlandら、Anaesth. Intensive Care 1994, 22, 733-737)。さらに、プロポフォールの鎮痙性効果は、麻酔域下用量でラットの有効性モデルにおいて示された(Holtkampら、Ann. Neural. 2001, 49, 260-263; Hasanら、Pharmacol Toxicol 1994, 74, 50-53)。
【0006】
プロポフォールは、抗酸化剤としても使用された(Murphyら、Br. J. Anaesth. 1992, 68, 613-618; Sagara ら、J. Neurochem. 1999, 73, 2524-2530; Young ら、 Eur. J. Anaesthesiol 1997, 14, 320-326; Wang ら、 Eur. J. Pharmacol 2002, 452, 303-308)。手術用の麻酔として使用される典型的な用量において、プロポフォールは、ヒトにおける注目すべき抗酸化効果を示した (De la Cruzら、Anesth. Analg. 1999, 89, 1050-1055)。様々な神経変性疾患において発症機序又はその後に続く損傷経路は、反応性酸素種に関し、そして従って、抗酸化剤を用いて治療されうるか、又は予防されうる(Simonianら、Pharmacol Toxicol 1996, 36, 83-106)。抗酸化剤で治療又は予防されうる特異的神経変性疾患は、非限定的に、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ピック病、炎症性疾患、並びに腫瘍壊死因子(TNF)及びIL-1などの炎症メディエーターにより引き起こされる疾患を含む。
【0007】
プロポフォールの製剤及び使用についての重大な問題は、難水溶性であることである。従って、プロポフォールは、可溶化剤又は乳濁剤を用いて水性溶媒中に特異的に剤形されなくてはならない(Briggsら、Anaesthesia 1982, 37, 1099-1 101)。例えば、現在の市販製品(Diprivan(登録商標), Astra-Zeneca)では、水中油型エマルジョン(乳濁剤はレシチン混合物、Intralipid(登録商標)である)を使用して、プロポフォールを剤形する。残念なことに、水中油型エマルジョン製剤は、注射部位において不快感及び疼痛を引き起こす。
【0008】
添加剤、可溶化剤又は乳濁剤の使用及び付随する注射部位疼痛をさける難水溶性プロポフォールについての1つの見込みある解決方法は、in vivoにおいてプロポフォールへと変換される安定なプロポフォール・プロドラッグである(Hendler ら、国際公開第WO 99/58555号;Morimotoら、国際公開第WO 00/48572; Hendlerら、米国特許第6,254,853号;Stellaら、米国特許出願第US2001/0025035号;Hendler, 米国特許第6,362,234号; Hendler,国際公開第WO 02/13810号;Sagaraら、J. Neurochem. 1999, 73, 2524-2530; Banaszczykら、Anesth. Analg. 2002, 95, 1285-1292; Trapani ら、Int. J. Pharm. 1998, 175, 195-204; Trapaniら、J. Med. Chem. 1998, 41, 1846-1854; Andersonら、J. Med. Chem. 2001, 44, 3582-3591; Popら、Med. Chem. Res. 1992, 2, 16-21)。これらの従来のプロポフォール・プロドラッグに関する重大な問題は、in vivoにおいて安定性が高いことである。この安定性は、特に当該プロドラッグが経口投与される場合、治療上重要で有る濃度のプロポフォールを放出することを妨げる。
【0009】
従って、プロドラッグが経口投与される場合、治療有効濃度のプロポフォールを提供するために生理条件下において十分に不安定であるプロポフォール・プロドラッグについての必要性が存在する。
【発明の開示】
【0010】
上記必要性を満たす、プロポフォール・プロドラッグ、プロポフォール・プロドラッグの製造方法、プロポフォール・プロドラッグの医薬組成物、及び片頭痛、神経変性疾患、化学療法後又は外科的手術後の悪心及び嘔吐を治療するためのプロポフォール・プロドラッグの使用方法が開示される。一の実施態様では、プロポフォールのプロドラッグ、及びその医薬組成物は、経口投与される。別の実施態様では、プロポフォールのプロドラッグは、胃腸管を覆う腸細胞内で発現されるトランスポータータンパク質との相互作用を介して胃腸管粘膜を通して輸送される。
【0011】
第一の態様では、以下の式(I):
【化2】

[式中、
1は、水素、[R5NH(CHR4)PC(O)]-、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
2は、-OR7又は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり;
p及びqは、独立して1又は2であり;
各R4は、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から独立して選ばれるか、又は場合により、R4及びR5が隣接する原子に結合する場合、R4及びR5は、それらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成し;
5は、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
6は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換へテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
7は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
8は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
各R9は、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれるか、又は場合により、R8及びR9が隣接原子に結合する場合、R8及びR9は、それらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成する;
但し、R2が、-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であるとき、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-ではない]
で表される構造の化合物、又はその医薬として許容される塩、水和物、溶媒和物、又は若しくはN−オキシドが提供される。
【0012】
さらに別の態様では、医薬組成物が提供される。本明細書に開示される医薬組成物は、一般的に、式(I)- (III)の1以上の化合物及び医薬として許容されるビヒクル、例えば希釈剤、担体、賦形剤、又はアジュバントを含む。希釈剤、担体、賦形剤、及びアジュバントの選択は、他の因子のなかでも特に、所望される投与様式に左右されるであろう。一の実施態様では、投与様式は経口投与である。
【0013】
さらに別の態様では、様々な疾患又は障害を治療する方法が提供される。本明細書中に開示される方法は、一般的に、患者の血中及び/又は組織中においてプロポフォールの治療有効濃度を達成するために、式(I)-(III)の1以上の化合物を投与することを含む。当該方法は、非限定的に以下の:偏頭痛、化学療法後又は外科的手術後の悪心及び嘔吐、並びに神経変性障害(例えば、癲癇、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ピック病など)を含む疾患又は障害の治療に有用である。当該方法は、一般的に、かかる治療又は予防を必要とする患者に、治療有効量の1以上の式(I)-(III)の化合物、又は式(I)-(III)の1以上の化合物を含む医薬組成物を投与することに関する。
【0014】
さらに別の態様では、哺乳動物において麻酔又は沈静を誘導及び/又は維持するための方法が提供される。当該方法は、一般的に、かかる麻酔又は沈静の誘導及び/又は維持を必要とする患者に、治療有効量の1以上の式(I)-(III)の化合物、又は1以上の式(I)-(III)の化合物を含む医薬組成物を投与することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
4.詳細な記載
4.1 定義
それ自身又は他の置換基の一部として「アルキル」は、飽和又は不飽和、分枝状、直鎖、又は環状の一価炭化水素ラジカルであって、親アルカン、アルケン、又はアルキンの1の炭素原子から1個の水素を取り除くことにより生成されるラジカルを指す。典型的なアルキル基は、非限定的に、メチル;エチル、例えばエタニル、エテニル、エチニル;プロピル、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロパ-1-エン-1-イル;シクロプロパ-2-エン-1-イル、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イルなど;ブチル、例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イルなどを含む。
【0016】
「アルキル」という用語は、具体的に、任意の程度又はレベルの飽和度を有する基、つまり炭素-炭素単結合のみを有する基、1以上の炭素-炭素二重結合を有する基、1以上の炭素-炭素三重結合を有する基、及び炭素-炭素単結合、二重結合、三重結合を混ぜて有する基を含むように意図される。飽和の具体的レベルが意図される場合、「アルカニル(alkanyl)」、「アルケニル」、及び「アルキニル」が使用される。好ましくは、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子を含む。「C1-6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を指す。
【0017】
それ自身又は他の置換基の一部として「アルカニル」は、親アルカンの1個の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことにより生成される、飽和、分枝状、直鎖、又は環状アルキルラジカルを指す。典型的なアルカニル基は、非限定的に、メタニル;エタニル;プロパニル、例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イルなど;ブタニル、例えばブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イルなどを含む。
【0018】
それ自身又は他の置換基の一部として「アルケニル」は、親アルケンの1個の炭素から1個の水素原子を取り除くことにより生成される少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和、分枝状、直鎖又は環状アルキルラジカルを指す。当該基は、二重結合についてシス又はトランス立体配置で存在しうる。典型的なアルケニル基は、非限定的に、エテニル;プロペニル、例えばプロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イル;シクロプロパ-2-エン-1-イル;ブテニル、例えば、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル,ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イルなどを含む。
【0019】
それ自身又は他の置換基の一部として「アルキニル」は、親アルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことにより、少なくとも1の炭素-炭素三重結合を有する不飽和、分枝状、直鎖、又は環状アルキルラジカルを指す。典型的なアルキニル基は、非限定的に、エチニル;プロピニル、例えばプロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イルなど;ブチニル、例えばブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イルなどを含む。
【0020】
それ自身又は他の置換基の一部として「アシル」は、-C(O)R30ラジカル[基中、R30は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、これらは本明細書中に定義される通りである]を指す。代表的な例は、非限定的に、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどを含む。
【0021】
それ自身又は他の置換基の一部として「アルコキシ」は、-OR31ラジカル[基中、R31は、本明細書に定義されるアルキル又はシクロアルキルを表す]を指す。代表的な例は、非限定的に、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどを含む。
【0022】
それ自身又は他の置換基の一部として「アルコキシカルボニル」は、-C(O)OR31ラジカル[基中、R31は上で定義される通りである]を指す。
【0023】
それ自身又は他の置換基の一部として「アリール」は、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことにより生成される一価芳香族炭化水素ラジカルを指す。典型的なアリール基は、非限定的にアセアントレリン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンから生成する基を含む。好ましくは、アリール基は、6〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜12個の炭素原子を含む。
【0024】
それ自身又は他の置換基の一部として「アリールアルキル」は、炭素原子に結合された1の水素原子、典型的には末端又はsp3炭素原子、がアリール基で置換されている非環式アルキルラジカルを指す。典型的なアリールアルキル基は、非限定的に、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどを含む。具体的なアルキル部分が意図される場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル、及び/又はアリールアルキニルという命名法が使用される。好ましくは、アリールアルキル基は(C6-C30)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、又はアルキニル部分は(C-C10)であり、そしてアリール部分は(C6-C20)であり、より好ましくは、アリールアルキル基は(C6-C20)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、又はアルキニル部分は(C1-C8)であり、そしてアリール部分は(C6-C12)である。
【0025】
それ自身又は他の置換基の一部として「カルバモイル」は、-C(O)N(R32)R33ラジカル[式中、R32及びR33は、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、又は置換ヘテロアリールであり、これらは本明細書中に定義される通りである]を指す。
【0026】
それ自身又は他の置換基の一部として「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和環状アルキルラジカルを指す。具体的な飽和レベルが意図される場合、「シクロアルカニル」又は「シクロアルケニル」という命名法が使用される。典型的なシクロアルキル基は、非限定的に、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどを含む。好ましくは、シクロアルキル基は、(C3-C10)シクロアルキル、より好ましくは(C3-C7)シクロアルキルである。
【0027】
それ自身又は他の置換基の一部として「シクロへテロアルキル」は、1以上の炭素原子(及び任意の付随する水素原子)が独立して同じ又は異なるヘテロ原子で置換されている、飽和又は不飽和環状アルキルラジカルを指す。炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子は、非限定的に、N、P、O、S、Siなどを含む。具体的な飽和レベルが意図される場合、「シクロヘテロアルカニル」 又は「シクロヘテロアルケニル」が使用される。典型的なシクロへテロアルキル基は、非限定的に、エポキシド、アジリン、チイラン、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジノ、キヌクリジンなどから生成される基を含む。
【0028】
それ自身又は他の置換基の一部として「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、及びヘテロアルキニル」は、基中において1以上の炭素原子(及び任意の付随する水素原子)が独立して、同じ又は異なるヘテロ原子群で置換されるアルキル、アルカニル、アルケニル、及びアルキニル基をそれぞれ指す。これらの基の中に含められうる典型的なヘテロ原子群は、非限定的に、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR3435-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR3637、-PR38-、-P(O)2-、-POR39-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR4041-などを含みうる。ここでR34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、及びR41は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、又は置換ヘテロアリールアルキルである。
【0029】
それ自身又は他の置換基の一部として「ヘテロアリール」は、親へテロ芳香族環系の1つの原子から1個の水素原子を取り除くことにより生成される一価へテロ芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基は、非限定的に、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから生成される基を含む。好ましくは、当該ヘテロアリール基は、5〜20員環のヘテロアリール、より好ましくは5〜10員環のヘテロアリールである。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、及びピラジンから生成される基である。
【0030】
それ自身又は他の置換基の一部として「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp3炭素原子、に結合される水素原子のうちの一つがヘテロアリール基で置換される非環式のアルキルラジカルを指す。具体的なアルキル部分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、及び/又はヘテロアリールアルキニルという命名法が使用される。好ましい実施態様では、ヘテロアリールアルキル基は、6〜30員環のヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、又はアルキニル部分は1〜10員であり、そしてヘテロアリール部分は5〜20員のヘテロアリールである。より好ましくは6〜20員のヘテロアリールアルキル、例えばヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、又はアルキニル部分は、1〜8員であり、そしてヘテロアリール部分は5〜12員のヘテロアリールである。
【0031】
「親芳香環系」は、π電子共役系を有する不飽和環又は多環を指す。「親芳香環系」の定義には、1以上の環が芳香族であり、かつ1以上の環が飽和若しくは不飽和である融合環系が含まれ、例えばフルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどである。典型的な芳香環系は、非限定的にアセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどを含む。
【0032】
「親へテロ芳香族環系」は、1以上の炭素原子(及び任意の付随水素原子)が同一又は異なるヘテロ原子で独立して置換される、芳香環系を指す。炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子は、非限定的に、N、P、O、S、Siなどを含む。「親へテロ原子環系」の定義には、具体的に、1以上の環が芳香族であり、かつ1以上の環が飽和又は不飽和である融合環系、例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどが含まれる。典型的なヘテロ芳香環系は、非限定的に、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどを含む。
【0033】
「医薬として許容される塩」は、親化合物の所望される薬理効果を有する式(I)-(III)の化合物の塩を指す。かかる塩は、以下の:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成されるか、又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成される酸添加塩、或いは(2)親化合物の一部において存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンにより置換されるか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどを配位する場合に形成される塩を含む。
【0034】
「医薬として許容されるビヒクル」は、式(I)-(III)の化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は担体を指す。
【0035】
「患者」は、ヒトを含む。「ヒト」及び「患者」という用語は、本明細書中で交換して使用することができる。
【0036】
「PEPT1」は、腸などの特定の組織において、ジペプチド及びトリペプチド(及び関連する構造物)を通常吸収するトランスポータータンパク質を指す(Adibi, S. A., Gastroenterology 1997,113,332-340; Leibachら、Ann. Rev. Nutr. 1990, 16, 99-119)。
【0037】
「予防する」又は「予防」は、疾患又は障害に罹患する危険性を減少させること(つまり、疾患に晒されるか又はかかりやすい状態であるが、未だ疾患の症状を経験しないか又は示さない患者において、疾患の少なくとも1の臨床症状を発達させないようにすること)を指す。
【0038】
「プロドラッグ」は、体内での変換されることを必要として活性薬剤を放出する薬剤分子の誘導体を指す。プロドラッグは、親薬剤へと変換されるまで、薬理学的に不活性であることが多いが、必ずしもそうである必要はない。水酸基含有薬剤は、例えば、in vivoで加水分解されて水酸基化合物を提供しうるエステル、カーボネート、アシルオキシアルキル、又はスルホネートプロドラッグに変換されうる。上記の官能基と異なる官能基を有する薬剤プロドラッグは、当業者に周知である。
【0039】
「プロモイエティ」は、薬剤分子中の官能基をマスクするために使用される場合、薬剤をプロドラッグへと変換する保護基の形態を指す。典型的に、プロモイエティは、in vivoにおいて酵素又は非酵素的方法により切断される結合(単数又は複数)を介して薬剤に結合されよう。
【0040】
「保護基」は、分子中の反応性官能基に結合された場合、官能基の反応性をマスクし、低減し、又は妨げる原子の群を指す。保護基の例は、Greenら、"Protective Groups in Organic Chemistry", (Wiley著、第二版. 1991) 及びHarrisonら、"Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)に見出すことができる。代表的なアミノ保護基は、非限定的に、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBz」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラチルオキシカルボニル(「NVOC」)などを含む。代表的な水酸基保護基は、非限定的に、水酸基をアシル化又はアルキル化する基、例えばベンジル、及びトリチル・エーテル、並びにアルキル・エーテル、テトラヒドロピラニル・エーテル、トリアルキルシリル・エーテル、及びアリルエーテルを含む。
【0041】
「置換される」は、1以上の水素原子が同じ又は異なる置換基で独立して置き換えられる基を指す。典型的な置換基は、非限定的に、-M、-R60、-O-、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR6061、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2-、-S(O)2OH、-S(O)260、-OS(O2)O-、-OS(O)260、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR6061、-C(O)O-、-C(S)OR60、-NR62C(O)NR6061、-NR62C(S)NR6061、-NR62C(NR63)NR6061、及び-C(NR62)NR6061[ここで、Mは独立してハロゲンであり、R60、R61、R62、及びR63は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、又は置換ヘテロアリールであり、又は場合により、R60及びR61はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、シクロへテロアルキル又は置換シクロへテロアルキル環を形成し;そしてR64及びR65は独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、又は置換ヘテロアリールであり、或いは場合により、R64及びR65は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環形成する]を含む。好ましくは、置換基は、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR6061、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)260、-OS(O2)O-、-OS(O)260、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR6061、-C(O)O-、-NR62C(O)NR6061を含み、より好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR6061、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)260、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR6061,-C(O)O-を含み、最も好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR6061、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)260、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)O-を含む。ここで、R60、R61、及びR62は上で定義された通りである。
【0042】
「PEPT1トランスポーターにより輸送される」は、PEPT1トランスポーターを発現する細胞膜を通して分子を輸送することを指す。輸送は、トランスポーターとの間の相互作用を介して生じ、そして膜を通したH+イオンの共輸送により駆動される。
【0043】
いずれかの疾患又は障害を「治療する」又は「治療」は、以下の:(1)疾患又は障害を改善すること(つまり、疾患又はその少なくとも1の臨床症状の発達を停止又は低減させること);(2)患者により識別されないかもしれない少なくとも1の身体的パラメーターを改善すること;(3)身体的に(例えば、認識される症状の安定化)、生理的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)、又はその両方において疾患又は障害を阻害すること;そして(4)疾患又は障害の開始を遅延させること、のうちの1以上を指す。
【0044】
「治療有効量」は、患者に投与されたとき、所望の治療効果を奏するために十分な化合物又は組成物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重篤度、並びに治療を受ける患者の年齢、体重などに応じて変化するであろう。
【0045】
特定の化合物、及び当該化合物の製造方法及び投与方法を詳細に記載する。本発明は、これらの化合物及び方法に限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲により定義される。
【0046】
4.2 化合物
本明細書に開示される化合物は、プロポフォールのプロドラッグである。以下の式(I):
【化3】

[式中、
1は、水素、[R5NH(CHR4)PC(O)]-、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
2は、-OR7又は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり;
p及びqは独立して1又は2であり;
各R4は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ、R4及びR5が隣接する原子に結合する場合、R4及びR5はそれらが結合する原子と一緒になってシクロへテロアルキル又は置換シクロへテロアルキル環を形成し;
5は、水素、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
6は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
7は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
8は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
各R9は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれるか、又は場合により、R8及びR9が隣接する原子に結合される場合、R8及びR9はそれらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成する;
但し、R2が-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であるとき、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-ではない]
で表される構造の化合物、又は医薬として許容されるその塩、水和物、溶媒和物、若しくはN−オキシドを含むプロポフォール・プロドラッグの第一のクラスが提供される。
【0047】
幾つかの実施態様では、式(I)の化合物は、α-アミノ酸(例えば、[H2N(CHR4)C(O)OH]及び/又は[HNR8(CHR9)C(O)OH])、例えば非限定的に遺伝子をコードする20個のアミノ酸及び非コードアミノ酸、例えば、2,3-ジアミノ酪酸、2、4-ジアミノ酪酸、ヒドロキシリジン、ホモセリン、ホモアルギニン、ホモチロシン、ホモシステイン、ホモフェニルアラニン、シトルリン、サルコシン、オルチニン、N-メチルロイシン、キヌレニン、ペニシラミン、4-アミノフェニルアラニン、3-(2-ナフチル)アラニン、3-(1-ナフチル)アラニン、メチオニン・スルホン、メチオニン・スルホキシド、t-ブチルアラニン、4-ヒドロキシフェニルグリシン、アミノアラニン、1,2,3,4テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ビニルアラニン、プロパルギルグリシン、1,2,4-トリアゾロ-3-アラニン、4,4,4-トリフルオロ-スレオニン、サイロニン、6-ヒドロキシトリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン、3-ヒドロキシキヌレニン、3-アミノチロシン、トリフルオロメチルアラニン(2-(4-ピリジル)エチル)システイン、3,4-ジメトキシ-フェニルアラニン、3-(2-チアゾリル)アラニン、イボテン酸、キスカル酸、3-トリフルオロメチルフェニルアラニン、4-トリフルオロメチルフェニルアラニン、t-ブチルグリシン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、チオヒスチジン、3-メトキシチロシン、ノルロイシン、ノルバリン、アロイソロイシン、チオプロリン、デヒドロプロリン、ヒドロキシプロリン、イソニペクトト酸(isonipectotic acid)、ホモプロリン、N-アセチルリジン、アミノフェニル酪酸、フェニル部分のオルト, メタ, 又はパラ位において以下の:(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、ハロゲン、又はニトロ基のうちの1又は2つで置換されるか、或いはメチレンジオキシ基で置換されるフェニルアラニン、β-2-及び3-チエニルアラニン、β-2-及び3-フラニルアラニン、2-,3-及び4-ピリジルアラニン、β-(ベンゾチエニル-2-及び3-イル)アラニン、β-(1-及び2-ナフチル)アラニン、チロシンのO-スルフェート、O-ホスフェート、及びO-カルボキシラート・エステル、3-スルホ-チロシン、3-カルボキシ-チロシン、3-ホスホ-チロシン、チロシンの4-メタンスルホン酸エステル、チロシンの4-メタンホスホン酸エステル、3,5-ジヨードチロシン、又は3-ニトロチロシンから生成される。
【0048】
式(I)の化合物の別の実施態様では、R1は水素又は[R5NH(CHR4)PC(O)]-である[ここで、pは1である]。好ましくはR4は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル、又は置換ヘテロアリールアルカニルであるか、或いは場合によりR4及びR5は、それらが結合する原子と一緒になってシクロへテロアルキル又は置換シクロへテロアルキル環を形成する。
【0049】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は、[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1であり、R5は水素であり、そしてR4は水素、アルカニル又はシクロアルカニルである。好ましくは、R4は水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである。
【0050】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は、[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1、R5は水素であり、そしてR4は置換アルカニルである。好ましくは、R4は-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CO2H、-CH2CH2CO2H、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、-CH2CH2SCH3、-CH2SH、-CH2(CH2)3NH2、又は-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2である。
【0051】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は、[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1であり、R5は水素であり、そしてR4はアリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、又はヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R4はフェニル、ベンジル、4-ヒドロキシベンジル、4-イミダゾリルメチル、又は3-インドリルメチルである。
【0052】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は、[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1であり、そしてR4及びR5はそれらが結合する原子と一緒になって、シクロへテロアルキル又は置換シクロへテロアルキル環を形成する。好ましくは、R4及びR5は、それらが結合する原子と一緒になってアゼチジン、ピロリジン又はピペリジン環を形成する。
【0053】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は、[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1であり、R4は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル、又は置換ヘテロアリールアルカニルであり、R5はR6-、R6C(O)-、又はR6OC(O)-であり、そしてR6はアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルである。好ましくは、R6は、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、又は置換ベンジルである。
【0054】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は水素又は[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、ここでpは2である。好ましくは、R4は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル、又は置換ヘテロアリールアルカニルであるか、又は場合により、R4及びR5が隣接する原子に結合する場合、R4及びR5はそれらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成する。
【0055】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは2であり、そしてR4は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル、又は置換ヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R4は水素、C1-4アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、又は置換ベンジルである。
【0056】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは2であり、R5は水素であり、そしてR4は水素、C1-4アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、又は置換ベンジルである。
【0057】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-OR7であり、そしてR7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルである。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0058】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルである。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0059】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R8は水素であり、そしてR9は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル又は置換ヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルであり、より好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0060】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、又は置換アリールアルキルであり、R8は水素であり、そしてR9は水素、アルカニル、又はシクロアルカニルである。好ましくは、R9は水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0061】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルであり、R8は水素であり、そしてR9は置換アルカニルである。好ましくは、R9は-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CO2H、-CH2CH2CO2H、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、-CH2CH2SCH3、-CH2SH、-CH2(CH2)3NH2、又は-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2である。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0062】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、又は置換アリールアルキルであり、R8は水素であり、そしてR9はアリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル又はヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R9はフェニル、ベンジル、4-ヒドロキシベンジル、4-イミダゾリルメチル又は3-インドリルメチルである。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0063】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは1であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルであり、そしてR8及びR9は、それらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成する。好ましくは、R8及びR9はそれらが結合する原子と一緒になってアゼチジン、ピロリジン又はピペリジン環を形成する。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、又は置換ベンジルである。
【0064】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R2は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり、qは2であり、R7は水素、アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル又は置換アリールアルキルであり、そしてR9は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル又は置換ヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R7は水素、C1-4アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。好ましくは、R8は水素であり、そしてR9は水素、C1-4アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、置換フェニル、ベンジル又は置換ベンジルである。
【0065】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-であり、pは1であり、R5は水素であり、そしてR2は-OHであり、以下の式(II):
【化4】

[式中、
4は水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル又は置換ヘテロアリールアルカニルである]
で表される化合物、又は医薬として許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくはN−オキシドを与える。
【0066】
式(II)の化合物のいくつかの実施態様では、R4は水素、アルカニル又はシクロアルカニルである。好ましくは、R4は水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0067】
式(II)の化合物の別の実施態様では、R4は置換アルカニルである。好ましくは、R4は-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CO2H、-CH2CH2CO2H、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、-CH2CH2SCH3、-CH2SH、-CH2(CH2)3NH2又は-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2である。
【0068】
式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、R4はアリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、又はヘテロアリールアルカニルである。好ましくは、R4はフェニル、ベンジル、4-ヒドロキシベンジル、4-イミダゾリルメチル又は3-インドリルメチルである。
【0069】
式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、N末端アミノ酸残基のα-炭素がL体である。式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、N-末端アミノ酸残基のα炭素はD体である。式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、C末端アミノ酸残基のα炭素はL体である。式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、C末端アミノ酸残基のα炭素はD体である。式(II)の化合物のさらに別の実施態様では、N及びC末端アミノ酸残基の両方のα炭素はL体である。
【0070】
式(I)の化合物のさらに別の実施態様では、R1は水素であり、そしてR2は-OHであり、以下の式(III):
【化5】

で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、水和物、又は溶媒和物を提供する。
【0071】
式(III)の化合物の幾つかの実施態様では、アミノ酸残基のα炭素は、L体である。式(III)の化合物の別の実施態様では、アミノ酸残基のα炭素は、D体である。
【0072】
本明細書中に開示される化合物は、その化学構造及び/又は化学名のいずれかにより同定されうる。化学構造と化学名が一致しない場合、化学構造が化合物を決定する。
【0073】
本明細書中に記載される化合物は、1以上の不斉中心及び/又は二重結合を含みうる。そのため、立体異性体、例えば二重結合異性体(つまり幾何異性体)、エナンチオマー、又はジアステレオマーとして存在しうる。したがって、不斉中心での立体異性体について言及されていない場合、本明細書中に記載される化学構造は全て、不斉中心において取りうる立体配置の全てを含み、立体異性体として純粋な形態(例えば、幾何異性体として純粋、エナンチオマーとして純粋、又はジアステレオマーとして純粋)、並びにエナンチオマーと立体異性体の混合物を含む。エナンチオマー及び立体異性体の混合物は、当業者に周知の分離技術又はキラル合成技術を用いて、構成するエナンチオマー又は立体異性体へと分離されうる。本明細書に開示される化合物はまた、エノール形態、ケト形態、及びそれらの混合物を含む幾つかの互変異性体の形態で存在してもよい。従って、本明細書に開示される化学構造は、記載された化合物の全てのとりうる互変異性体を含む。
【0074】
本明細書中に開示される化合物は、一以上の原子が通常自然において見られる原子量とは異なる原子量を有する同位体標識された化合物を含んでもよい。当該化合物中に取り込まれうる同位体の例は、非限定的に、2H、3H、11C、13C、14C、15N、17O、及び18Oを含む。
【0075】
本明細書中に開示される化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態、例えば水和形態で存在してもよく、そしてN-オキシドとして存在してもよい。一般的に、水和、溶媒和、及びN-オキシド形態は、本発明の範囲内である。ある化合物は、複数の結晶又は非晶形態で存在してもよい。一般的に、全ての物理的形態は、本明細書において意図される用途について同等であり、そして本開示の範囲内であることが意図される。さらに、化合物の構造の一部が記載される場合、括弧は、部分光造を残余の分子に結合する点を指すことが理解されるべきである。
【0076】
式(I)-(III)の構造の化合物は、経口投与され、そして胃腸管内腔を覆う細胞(つまり、腸細胞)を通して輸送されうる。任意の特定の輸送メカニズムにとらわれることを望まない一方、式(I)-(III)の構造の化合物の幾つかが、プロトン共役腸ペプチド輸送システム(PEPT1)(Leibachら, Annu. Rev. Nutr. 1996, 16, 99-119)の基質であってもよい。当該システムは、典型的に食物のタンパク質の消化により生成される2又は3個のアミノ酸からなる損傷していない小さいペプチドの細胞への取り込みを媒介する。腸において、小さいペプチドが受動拡散により効率的に吸収されない場合、PEPT1は、腸粘膜の頂端膜を通して効率的に取り込むためのビヒクルとして作用しうる。
【0077】
式(I)-(III)の化合物がPEPT1トランスポーターの基質として機能するかを決定する方法を、本明細書の実施例23において開示する(第5節を参照のこと)。当該輸送システムを異種的に発現するように操作された細胞、或いは当該トランスポーターを内在的に発現する細胞系列(例えばCaco-2細胞)を使用するin vitroシステムは、PEPT-1トランスポーターによる式(I)-(III)の化合物の輸送をアッセイするために使用されうる。in vitroにおけるプロポフォール・プロドラッグ化合物のプロポフォールへの酵素変換を評価するための標準方法を本明細書の実施例24に開示する。
【0078】
プロポフォール・プロドラッグ化合物のサルへの経口投与を実施例25に記載し、そして、能動輸送されるプロドラッグが、プロポフォールの経口バイオアベイラビリティを有意に高めうるということが示される。
【0079】
4.3 プロポフォール・プロドラッグ化合物の合成
式(I)-(III)の化合物は、スキーム1-3に記載される合成方法を経て取得されうる。これらの化合物及びその中間体を製造するために有用な開始物質は市販されているか、又は周知の合成方法により製造することができる(Harrisonら、"Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996); "Beilstein Handbook of Organic Chemistry," Beilstein Institute of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany; Feiserら、 "Reagents for Organic Synthesis," Volumes 1-17, Wiley Interscience; Trostら、 "Comprehensive Organic Synthesis," Pergamon Press, 1991 ; "Theilheimer's Synthetic Methods of Organic Chemistry," Volumes 1 -45, Karger, 199 1 ; March, "Advanced Organic Chemistry," Wiley Interscience, 1991 ; Larock "Comprehensive Organic Transformations," VCH Publishers, 1989; Paquette, "Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis," John Wiley & Sons, 1995)。本明細書に記載される化合物の他の合成方法及び/又は開始物質は、当該技術分野において記載されているか、当業者に容易に明らかであろう。従って、本明細書のスキーム1-2に示される方法は、理解のためというよりはむしろ例示である。
【0080】
式(I)-(III)の化合物を製造するために有用なアミノ酸基本要素(Amino acid building block)は、典型的に1以上の保護基を含む。かかるアミノ酸の窒素原子について有用な保護基の非限定的な例は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、及び9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)部分を含み、一方カルボキシ基についてはtert-ブチル、ベンジル、及び9-フルオレニルメチル・エステルを含む。L-又はD-立体化学のアミノ酸は、これらの反応において使用されてもよい。式(I)-(III)の化合物のスレオニン部分は、L-スレオニン、D-スレオニン、又はL-アロスレオニン及びD-アロスレオニンのエピマーアナログから生成されてもよい。
【0081】
プロポフォール(1)は、スキーム1に記載されるように、ホスゲン同等物で処理することにより、クロロホルマート誘導体に変換される。
【化6】

【0082】
1が[H2N(CHR)C(O)]-であり、そしてR2がOHである式(I)の化合物、つまり化合物(8)の製造方法の一つを、スキーム2において記載する。保護スレオニン誘導体(3)を、塩基(例えば、三級アミン)の存在下でクロロホルマート(2)で処理して中間体(4)を与え、当該中間体を脱保護して化合物(5)を与えた。標準ペプチド・カップリング・プロトコルに従って、保護アミノ酸(6)とのアシル化は、中間体(7)をもたらし、当該中間体を脱保護してジペプチド・プロポフォール・カーボネート化合物(8)を与える。
【化7】

【0083】
1が[H2N(CHR)C(O)]-であり、そしてR2がOHである式(I)の化合物、つまり化合物(8)の製造方法をスキーム3に例示する。保護スレオニンジペプチド(9)をクロロホルマート(2)と反応させ、そしてさらに脱保護して化合物(8)を与える。
【化8】

【0084】
1が水素であり、そしてR2がOHである式(I)の化合物、つまり式(III)の化合物を化合物(5)からカルボキシル保護基を取り除くことにより製造する。
【0085】
4.4 治療的/予防的使用及び投与方法
本明細書中に記載されるように、式(I)-(III)の化合物は、患者において片頭痛を治療及び/又は予防するために使用される。当該方法は、片頭痛を治療及び/又は予防するために有効な量の式(I)-(III)の化合物を患者に投与することを含む。本明細書の治療方法では、治療有効量の当該化合物を、片頭痛を患う患者に投与する。本明細書の予防方法では、片頭痛を発達させる危険性のある患者に治療有効量の当該化合物を投与する。
【0086】
一の実施態様では、当該化合物は、片頭痛を治療及び/又は予防するために経口投与される。しかしながら、一の他の実施態様では、当該化合物は非経口(例えば吸入又は注射を介して)投与される。一の実施態様では、片頭痛を治療又は予防するため、約10mg〜約4gの量で投与される。
【0087】
式(I)-(III)の化合物は制吐剤として使用されてもよく、そして嘔吐する危険性の有る患者及び/又は悪心を患う患者に投与されうる。例えば、悪心を誘導する様々な化学療法剤及び/又は外科的方法で同時に治療される患者に、悪心及び嘔吐を治療及び/又は予防するために、投与されうる。典型的に、治療有効量の当該化合物は、悪心及び嘔吐を治療及び/又は予防するために患者に投与される。
【0088】
一の実施態様では、当該化合物は、悪心又は嘔吐を治療及び/又は予防するために経口投与される。しかしながら、他の実施態様では、当該化合物は、悪心又は嘔吐を治療及び予防するために、非経口的に(例えば吸入又は注射を介して)投与される。一の実施態様では、当該化合物は、悪心又は嘔吐の治療及び/又は予防のために、約10mg〜4gの量で投与される。
【0089】
式(I)-(III)の化合物は、全身麻酔及び/又は鎮静作用を誘導及び/又は維持する催眠剤として使用されてもよい。典型的に、治療有効量の化合物が患者に投与されて、
催眠、麻酔、及び/又は鎮静作用を誘導する。
【0090】
一の実施態様では、当該化合物は、全身麻酔薬として使用される場合、全身投与される。別の実施態様では、当該化合物は吸入により投与される。当該化合物は、当該技術分野に周知である、プロポフォールを剤形するために使用される方法により剤形されてもよい。一の実施態様では、水溶性である式(I)-(III)の化合物は、注射水溶液として剤形されてもよく、当該水溶液はプロポフォールの水性製剤において使用される乳濁剤又は可溶化剤よりも有意に少ない量の乳濁剤又は可溶化剤しか含まず、それにより注射部位における不快感が避けられる。
【0091】
一の実施態様では、当該化合物は鎮静剤として(例えば、不安症の治療に)使用される場合、1日あたり約10mg〜4gの量で経口投与される。しかしながら、別の実施態様では、当該化合物は、鎮静剤として使用される場合、吸入により、静脈内に、又は筋肉中に投与されてもよい。
【0092】
式(I)-(III)の化合物は、プロポフォールについての技術分野において記載されるのと同様の量で、そして同じスケジュールで投与されてもよい。一の実施態様では、全身麻酔をもたらし、麻酔を維持し、そして鎮静効果をもたらすための式(I)-(III)の化合物の投与レベルは、プロポフォールについての技術分野において記載された通りである。
【0093】
式(I)-(III)の化合物は、生体物質の酸化を阻害するために使用されてもよい。本方法は、生体物質を有効量の当該化合物と接触させることに関する。本明細書の治療方法において、当該化合物の治療有効量が、酸化の抑制により治療される病態を患う患者に投与される。本明細書の予防方法において、本化合物の治療有効量は、酸化ストレスに晒された結果として疾患を発達させる危険性を有する患者に投与される。炎症成分に関与する中枢神経系の障害において酸化を予防及び/又は治療する当該化合物の特定用途が発見されうる。
【0094】
式(I)-(III)の化合物は、非限定的に、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、及びピック病を含む神経系の神経変性障害の治療及び/又は予防のために使用されてもよい。1の実施態様では、治療有効量の当該化合物(例えば、一日あたり約10mg〜4g)は、慢性神経変性疾患を治療及び/又は予防するために経口投与される。
【0095】
式(I)-(III)の化合物は、中枢神経系の外傷、例えば、頭蓋骨骨折及びそれにより生じる浮腫、振盪症、挫傷、脳内出血、せん断損傷(shearing lesions)、硬膜下血腫及び硬膜外血腫、及び脊椎損傷(例えば、脊椎圧縮又は湾曲のため生じる機械的損傷)を治療及び/又は予防するために使用されてもよい。一の実施態様では、中枢神経系の外傷障害を治療及び/又は予防するために、静脈内注射又は中枢神経系(つまり、髄膜内(IT)または脳内)に直接注射することにより非経口投与される。別の実施態様では、化合物の治療有効量(例えば、IV又はIMで約25mg〜約500mg、及びITで約5mg〜約100mg)が、中枢神経系の外傷障害を治療及び/又は予防するために投与される。
【0096】
式(I)-(III)の化合物は、てんかん(例えば、てんかん性痙攣)を治療及び/又は予防するために、鎮痙剤として使用されてもよい。痙攣を治療及び/又は予防する方法は、治療有効量の化合物を、かかる治療を必要とする患者に投与することを含む。一の実施態様では、当該化合物は、痙攣を治療及び/又は予防するために経口投与される。別の実施態様では、当該化合物は、痙攣を治療及び/又は予防するために非経口投与される。さらに別の実施態様では、当該化合物は、痙攣を治療及び/又は予防するために、一日あたり約10mg〜約4gの量で投与される。
【0097】
上記疾患又は障害を治療及び/又は予防するために使用されるとき、式(I)-(III)の化合物及び/又は医薬組成物は、単独で、又は他の薬剤と組み合わせて投与又は適用されうる。化合物及び/又は組成物は、単独で、又は他の医薬活性成分、例えば式(I)-(III)の他の化合物と組み合わせて投与又は適用されてもよい。
【0098】
式(I)-(III)の組成物又は化合物の治療有効量を患者に投与することにより、治療及び予防する方法が本明細書中に提供される。患者は動物であってもよいし、より好ましくは哺乳動物であり、そしてさらに好ましくはヒトである。
【0099】
式(I)-(III)の化合物及び/又はその医薬組成物は、好ましくは経口投与される。当該化合物及び/又はその医薬組成物は他の任意の都合のよい経路により、例えば輸液又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜の覆い(例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収により投与されてもよい。投与は全身性又は局所投与でありうる。様々なデリバリーシステムが知られており(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセル中への封入)、それは化合物及び/又は医薬組成物の投与のために使用されうる。投与方法は、非限定的に、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、大脳内、膣内、経皮、経直腸、吸入、又は局所、特に耳、鼻、目、又は皮膚への投与を含む。
【0100】
具体的な実施態様において、1以上の化合物及び/又はその医薬組成物を、治療の必要がある領域に局所的に投与することが望ましいこともある。これは、例えば非限定的に、手術中における局所輸液、例えば手術後の創傷包帯と併せた局所適用により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、又はインプラントにより達成されうる。当該インプラントは、多孔性、無孔性、又はゼラチン製であり、例えばシラスティック膜若しくはファイバーなどの膜を含む。一の実施態様では、癌又は関節炎の部位(又はかって癌又は関節炎であった部位)において直接注射により投与されうる。
【0101】
ある実施態様では、任意の適切な経路により、例えば、脳室内、髄腔内、及び硬膜外注射により、中枢神経系に1以上の化合物及び/又はその医薬組成物を導入することが望ましいこともある。静脈内注射は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに結合された脳室内カテーテルにより行われてもよい。
【0102】
一の実施態様では、当該化合物及び/又は医薬組成物は、徐放性システム、好ましくは経口徐放性システムを介してデリバリーされうる。一の実施態様では、ポンプが使用されてもよい(Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit Ref Biomed Eng. 14:201; Saudekら、 1989, N. Engl. JMed. 321:574)。
【0103】
別の実施態様では、ポリマー物質が使用されうる("Medical Applications of Controlled Release," Langer及び Wise (共著), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); "Controlled Drug Bioavailability," Drug Product Design and Performance, Smolen及び Ball (共著), Wiley, New York (1984); Langerら、 1983, J Macromol. Sci. Rev. Macromol Chem. 23:61; Levyら、 1985, Science 228: 190; Duringら、 1989, Ann. Neural. 25:351; Howardら、 1989, J. Neurosurg. 71:105を参照のこと)。
【0104】
さらに別の実施態様では、ポリマー物質は、経口徐放デリバリーのために使用される。好ましいポリマーは、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース(最も好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである)を含む。他の好ましいセルロース・エーテルが記載される (Alderman, Int. J. Pharm. Tech. & Prod. Mfr. 1984, 5(3) 1-9)。薬剤放出に影響を与える要因は、当業者に周知であり、そして当該技術分野に記載された(Bambaら、 Int. J. Pharm. 1979, 2, 307)。
【0105】
さらに別の実施態様では、腸溶コーティング製剤は、経口徐放性投与に使用されうる。好ましいコーティング物質は、pH依存性の溶解性(つまり、pH制御放出)を有するポリマー、ゆっくりした又はpH依存性の膨潤、溶解、又は侵食の割合を有する(つまり、時間制御放出)ポリマー、酵素により分解される(つまり、酵素制御放出)ポリマー、及び圧力の増大により破壊されるフィルム層を形成する(つまり、圧力制御放出)ポリマーを含む。
【0106】
さらに別の実施態様では、浸透圧デリバリーシステムは、経口徐放性投与のために使用される(Vermaら、Drug Dev. Ind. Pharm. 2000, 26:695-708)。好ましい実施態様において、OROS(商標)浸透圧デバイスは、経口徐放性デリバリーデバイスに使用される(Theeuwesら、米国特許第3,845,770号:Theeuwesら、米国特許第3,916,899号)。
【0107】
吸入投与について、化合物は多くの装置により肺にうまくデリバリーされうる。例えば、適切な低沸点の高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス、を含む小型容器を利用する計量用量吸入器(Metered Dose Inhaler)(「MDI」)は、肺に直接化合物をデリバリーするために使用されてもよい。
【0108】
或いは、乾燥粉末吸入器(「DPI」)デバイスを使用して、肺に化合物を投与してもよい。(例えば、Raleighら、Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting 1999, 40, 397を参照のこと)。DPIデバイスは典型的に、容器内に乾燥粉末の混濁状態を作り出すためにガスの噴射などのメカニズムを使用し、混濁状態の乾燥粉末は次に患者により吸引される。当該DPIデバイスは当業者に周知であり、そして多くの販売元から購入することができる。多く販売されている改良品は、多用量DPI(MDDPI)システムであり、当該システムは1を超える治療用量をデリバリーすることを可能にする。例えば、吸入器又は注入器に用いるためのカプセル及びゼラチン製のカートリッジは、化合物とラクトース又はスターチなどの当該システムに適切な粉末基剤の粉末ミックスを含むように剤形されうる。
【0109】
化合物を肺にデリバリーするために使用されうる別のタイプのデバイスは、例えばAradigm Corporation, Hayward, CA.により供給される液体スプレーデバイスである。液体スプレーシステムは、液体製剤をエアロゾル化するためにかなり小さいノズルを使用し、当該液体製剤は次に肺内に直接吸入される。
【0110】
一の実施態様では、肺に化合物をデリバリーするために噴霧器を用いる。噴霧器は、例えば、容易に吸入されうる微細粒子を形成するための超音波エネルギーを使用することにより、液体製剤からエアロゾルを作り出す(例えば、Verschoyleら、British J. Cancer 1999, 80, Suppl. 2, 96; Armerら, 米国特許第5,954,047号; van der Lindenら、 米国特許第5,950,619号; van der Lindenら、米国特許第5,970,974号)。
【0111】
別の実施態様では、化合物を肺にデリバリーするために、電気流体力学的(EHD)エアロゾルデバイスを用いる。EHDエアロゾルデバイスは、液体薬剤の溶液又は懸濁液をエアロゾル化するために電気エネルギーを用いる(例えば、Noakesら、米国特許第4,765,539号; Coffee, 米国特許第第4,962,885号; Coffee,国際公開第WO 94/12285号; Coffee, 国際公開第WO 94/14543号; Coffee, 国際公開第WO 95/26234号, Coffee, 国際公開第WO 95/26235号、Coffee, 国際公開第WO 95/32807号を参照のこと)。EHDエアロゾルデバイスを用いて肺に化合物をデリバリーする場合、化合物の電気化学的性質は、最適化のための重要なパラメーターでありうる。そしてかかる最適化は、当業者により通常どおりに行われる。EHDエアロゾルデバイスは、現在存在する肺デリバリー技術よりもより効率的に肺に薬剤をデリバリーしうる。化合物を肺内デリバリーする他の方法は、当業者に知られているであろう。
【0112】
式(I)-(III)の化合物及び/又はかかる化合物を含む組成物は、好ましくは、患者にin vivo投与する際、治療又は予防レベルのプロポフォールを提供する。理論により束縛されることを望まない一方、化合物のプロモイエティ(単数又は複数)は、化学的又は酵素的に切断されてもよい。哺乳動物の胃、腸管腔、腸組織、血液、肝臓、脳、又は他の適切な哺乳動物組織のいずれかに存在する1以上の酵素は、投与された化合物のプロモイエティ(単数又は複数)を酵素切断しうる。
【0113】
理論に束縛されることを望まない一方、化合物のプロモイエティ(単数又は複数)は、胃腸管に吸収される前に(例えば、胃又は小腸ルーメン内で)、及び/又は胃腸管により吸収された後に(例えば哺乳動物の腸組織、血液、肝臓、又は他の適切な組織において)切断されてもよい。好ましくは、プロポフォールは、腸粘膜障壁を通過する間はプロモイエティに結合されたままであり、プレシステミック代謝(presystemic metabolism)からの保護をもたらす。一の実施態様では、化合物は、腸細胞内において実質的にプロポフォールに代謝されることはないが、体循環の間に親薬剤へと代謝される。胃腸管により吸収された後での化合物のプロモイエティ(単数又は複数)の切断は、当該プロドラッグが、能動輸送、受動拡散により、又は能動及び受動プロセスの両方法により、体循環中に吸収されることを許容する。一の実施態様では、化合物は、腸ペプチドトランスポーターPEPT1との相互作用を介して能動吸収される。
【0114】
胃腸管による吸収後の式(I)-(III)の化合物のプロモイエティ(単数又は複数)の切断は、大腸から体循環へ当該プロドラッグが吸収されることを許容しうる。一の実施態様では、式(I)-(III)の化合物及び/又は当該化合物を含む医薬組成物は、好ましくは、徐放性システムとして投与され、別の実施態様では当該化合物及び/又は医薬組成物は、経口徐放性投与によりデリバリーされる。好ましくは、当該実施態様では、当該化合物及び/又は医薬組成物は、1日あたり2回(より好ましくは1日あたり1回)投与される。
【0115】
4.5 医薬組成物
本医薬組成物は、好ましくは精製形態の治療有効量の1以上の式(I)-(III)の化合物を、適切な量の医薬として許容されるビヒクルと一緒に含み、患者への適切な投与のための形態を提供する。患者に静脈内投与されるとき、化合物及び医薬として許容されるビヒクルは好ましくは滅菌される。化合物が静脈内投与されるとき、水は好ましいビヒクルである。生理食塩水及びデキストロース水溶液、及びグリセロール溶液もビヒクルとして、特に注射溶液に使用されうる。適切な医薬ビヒクルは、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、水、エタノールなどを含む。必要に応じて本組成物は、少量の湿潤剤又は乳濁剤、又はpH緩衝剤を含んでもよい。さらに、補助剤、安定剤、増量剤、潤滑剤、及び着色剤が使用されてもよい。
【0116】
式(I)-(III)の化合物を含む医薬組成物は、慣用される混合、溶解、造粒、糖衣作成、微紛化、乳濁化、カプセル化、封入、凍結乾燥プロセスを利用して製造されうる。医薬組成物は、1以上の生理的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は補助剤を用いて慣用される様式で剤形されてもよく、医薬として使用されうる製剤へと化合物を処理することを容易にする。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0117】
本医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、ペレット、カプセル、液体含有カプセル、粉末、徐放性製剤、坐薬、乳濁役、エアロゾル、スプレー懸濁液の形態、又は使用に適した他の任意の形態を取りうる。一の実施態様では医薬として許容されるビヒクルはカプセルである(例えば、Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照のこと)。適切な医薬ビヒクルの他の例は、当該技術分野において記載されてきた(RemingtonのPharmaceutical Sciences, Philadelphia College of Pharmacy and Science, 第19版, 1995を参照のこと)。好ましくは医薬組成物は経口デリバリー用に剤形される。
【0118】
経口デリバリー用の医薬組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、顆粒、粉末、乳濁液、カプセル、シロップ、又はエリクシルの形態であってもよい。経口投与される医薬組成物は、1以上の任意の薬剤、例えば、甘味料、例えばフルクトース、アスパルテーム、又はサッカリンなど、香味剤、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、又はチェリー着色剤、及び保存剤を含んで、医薬としての口当たりのよい製剤を提供してもよい。さらに、錠剤又はピル形態である場合、医薬組成物は、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延するために被覆されてもよく、それにより長時間に渡り徐放性作用を提供してもよい。浸透圧活性を駆動する化合物(osmotically active driving compound)を覆う選択的浸透性膜は、経口投与される化合物及び医薬組成物にも適している。遅延プラットフォームでは、カプセルの周囲の環境の液体は駆動化合物により吸収され、当該化合物は膨潤して、隙間を通して薬剤又は薬剤組成物を移動させる。これらのデリバリープラットフォームは、即放性製剤の急上昇プロファイルとは対照的に、実質的に0次デリバリープロファイルを提供しうる。グリセロール・モノステアリン酸又はグリセロールステアリン酸などの時間遅延物質が使用されてもよい。経口医薬組成物は、マンニトール、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準ビヒクルを含みうる。かかるビヒクルは、好ましくは医薬品質である。
【0119】
例えば、懸濁液、エリクシル、及び溶液などの経口液体製剤については、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)油、アルコール類、pH4〜pH6のわずかに酸性の緩衝液(例えば、約5mM〜約50mMの酢酸、クエン酸、アスコルビン酸緩衝液)などを含む。従って、香味剤、保存剤、着色料、胆汁酸塩、アシルカルニチンなどが加えられてもよい。
【0120】
式(I)-(III)の化合物は、例えば、慣用の坐薬基剤、例えばカカオバター又は他のグリセリドなどを含む坐薬又は停留浣腸などの直腸又は膣用医薬組成物に剤形されてもよい。
【0121】
上に記載された製剤に加えて、式(I)-(III)の化合物は、デポー製剤として剤形されてもよい。こうして、長期間作用する製剤はインプラント(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与されてもよい。こうして、例えば、化合物は、適切なポリマー製又は疎水性物質(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として剤形されてもよい。
【0122】
式(I)-(III)の化合物が酸性である場合、遊離酸、医薬として許容される塩、溶媒和物、水和物若しくはN−オキシドが上記製剤のいずれかに含まれる。医薬として許容される塩は、実質的に、遊離酸の活性を保持し、塩基との反応により製造されてもよく、そして対応する遊離酸形態よりも、水及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい。
【0123】
噴霧器及び液体スプレーデバイス及びEHDエアロゾルデバイスを用いて使用するために適した液体薬剤製剤は、典型的に、医薬として許容される担体を伴う化合物を含む。好ましくは、医薬として許容される担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンなどの液体である。場合により、他の物質が、当該化合物の溶液又は懸濁液のエアロゾル粒子を変換させるために加えられてもよい。好ましくは、当該物質は、アルコール、グリコール、ポリグリコール、又は脂肪酸などの液体である。エアロゾルデバイスにおいて使用するために適した液体薬剤溶液又は懸濁液を剤形する方法は、当業者に知られている(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号; Biesalski、米国特許第5,556,611号)。
【0124】
4.6 組合せ治療
ある実施態様では、式(I)-(III)の化合物は、少なくとも1の他の治療薬との組合せ治療において使用されうる。当該化合物及び他の治療薬(単数又は複数)は、相加的に又は好ましくは相乗的に作用しうる。好ましい実施態様では、プロポフォール・プロドラッグ化合物を含む組成物は、例えば、他の鎮静薬、睡眠薬、又は麻酔薬(例えば、プロポフォール)などの他の治療薬と同時に投与されてもよく、当該治療薬は、プロポフォール・プロドラッグ化合物と同じ組成物の一部であるか又は異なる組成物でありうる。例えば、化学療法後又は手術後の悪心及び嘔吐の治療において、式(I)-(III)の化合物は、5HT3アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン)、コルチコステロイド(例えば、デキサメタソン)、ドーパミンアンタゴニスト(例えば、メトクロプラミド、ドロペリドール、クロルプロマジン)、又は他の制吐剤(例えば、ベンゾジアゼピン、例えばジアゼパム若しくはロラゼパム;NK-1アンタゴニスト、例えばアプレピタント)とともに投与されてもよい。別の実施態様では、プロポフォール・プロドラッグ化合物を含む組成物は、他の治療薬、例えば、他の鎮静薬、睡眠薬、又は麻酔薬(例えば、プロポフォール)などの投与の前に又は当該投与に続いて投与される。
【0125】
5. 実施例
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに定義される。当該実施例は、式(I)-(III)の化合物の製法、かかる化合物を含む組成物、及びかかる化合物及び組成物を使用するアッセイを記載する。物質及び方法の両方について、多くの改変が本発明の範囲から逸脱することなく行われうるということが当業者に明らかであろう。
【0126】
以下の実施例において、以下の略語は次に記載する意味を有する。略語が定義されていない場合、略語はその一般的に許容される意味を有する。
【0127】
Aib = α-アミノイソ酪酸
Atm = 気圧
Boc = tert-ブチルオキシカルボキシ
Bzl = ベンジル
Cbz = カルボベンジルオキシ
Dap = L-2,3-ジアミノプロピオン酸
DCC = ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMAP = 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMEM = ダルベッコ最小イーグル培地
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
Fmoc = 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
g = グラム
h = 時間
HBSS = ハンクス緩衝生理食塩水
L = リットル
LC/MS = 液体クロマトグラフィー/質量分析
M = モル
min = 分
mL = ミリリットル
mmol = ミリモル
NHS = N-ヒドロキシスクシンイミド
PBS = リン酸緩衝生理食塩水
THF = テトラヒドロフラン
TFA = トリフルオロ酢酸
TMS = トリメチルシリル
μL = マイクロリットル
μM = マイクロモル
v/v = 体積対体積
【実施例】
【0128】
実施例1
H-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (10)
ステップA:2,6-ビス(イソプロピル)フェノキシカルボニル・クロリド (2)
20%ホスゲンを含むトルエン(139mL、0.269mol)を、プロポフォール(40g、0.225mmol)を含むトルエン(80.0mL)の攪拌溶液に窒素雰囲気下で0℃にて加えた。N,N-ジメチルアニリン(34.0mL、0.269mmol)を15分かけて滴下して加えた。反応混合液をゆっくり室温まで温め、そして14時間攪拌させた。反応混合液をセライトを通してろ過し、そして溶媒を吸引下で取り除いた。粗製生成物を更に精製することなく次のステップに供した。
【化9】

【0129】
ステップB:Boc-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OBn (11)
L-Boc-Thr-OBn(14.1g、0.045mol)を含むジクロロメタン(115mL)の氷冷溶液に、プロポフォール・クロロホルマート(2)(14.3g、0.059mmol)を加えた。攪拌反応混合液に、ジイソプロピルエチルアミン(8.74mL、0.050mmol)を15分かけて滴下して加えて、次に触媒量のジメチルアミノピリジン(0.558g、0.005mol)を加えた。得られた混合物を室温にし、そして12時間攪拌した。混合物を次に酢酸エチル(150mL)で希釈し、そして10%クエン酸水溶液(2×75mL)、塩類溶液(2×75mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、そして吸引下で濃縮した。粗製油をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製し(100%ヘキサンから20%酢酸エチルを含むヘキサンへの勾配で溶出する)、生成物(11)を白色固体として生成した(8.25g、収率36%)。
【化10】

【0130】
ステップC:H-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (12)
上記ステップから得た精製された化合物(11)をジクロロメタン(80ml)中に溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(20ml)で処理した。得られた混合物を室温で1時間攪拌した。溶媒を吸引下で取り除いた。粗製残渣に10%炭素担持パラジウム(800mg)を加えた。N2で脱気し、反応混合液を1:1(v/v)の酢酸エチルとメタノール(250ml)の混合液中で再溶解させ、もう一度脱気し、そして(バルーンを介して)水素雰囲気下で攪拌した。水素付加を二時間以上行い、その後反応混合液をセライトを通してろ過し、そして吸引下で濃縮した。化合物の一部を逆相LC/MSにより精製して、表題の化合物(12)を、白色固体として与えた。
【化11】

残りの物質をさらに精製することなく用いた。
【0131】
ステップD:Boc-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (13)
Boc-グリシン(317mg、1.8mmol)を含むDMF(6mL)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(944μL、5.4mmol)を加え、次にO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,Nt,Nt-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロ-ホスフェート(671mg、1.76mmol)を加えた。反応混合液を室温で30分間攪拌し、(12)を含むDMF(2ml)の溶液を滴下して加え、そして反応を2時間行わせた。反応混合液を次に酢酸エチル(40ml)で希釈し、そして10%クエン酸水溶液(2×30ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×30mL)、及び塩類溶液(2×30mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、次に吸引下で濃縮した。粗製化合物(13)をさらに精製することなく用いた。
【0132】
ステップE:H-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール-OH (10)
上のステップで得られた粗製化合物(13)をジクロロメタン(5ml)中で溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(2ml)で処理した。得られた混合物を室温で1時間攪拌した。溶媒を吸引下で取り除き、そして粗製残渣を逆相LC/MSにより精製して、表題の化合物(10)を与えた(195mg、収率32%)。
【化12】

【0133】
実施例2
H-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (10)
ステップA:Boc-Gly-Thr-OtBu (14)
Boc-グリシン(2.16g、0.012mol)を含むアセトニトリルの窒素パージ氷冷溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.80g、0.013mol)及びN-ヒドロキシ-スクシンイミド(1.49g、0.013mol)を加えた。反応液を2時間攪拌し、次にろ過し、そして吸引下で濃縮した。得られた油を1:1(v/v)アセトニトリル及び水の溶液中に再溶解し、そして炭酸水素ナトリウム(2.23g、0.027mol)及びL-スレオニンα-t-ブチルエステルで処理した。得られた混合物を室温で14時間攪拌し、次に酢酸エチル(100ml)で希釈した。有機溶液を10%クエン酸水溶液(2×50ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×50ml)、及び塩類溶液(2×50ml)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に吸引下で濃縮した。粗製化合物(14)をさらに精製することなく用いた。
【0134】
ステップB:Boc-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OtBu(15)
プロポフォール・クロロホルマート(2)(5.94g、0.025mol)、及び(14)を含むジクロロメタン(20mL)の攪拌氷冷溶液に、ピリジン(2mL、0.025mol)を10分間かけて滴下した。得られた混合液を室温にし、そして12時間攪拌した。混合液を酢酸エチルで希釈し(75ml)、そして10%クエン酸水溶液で洗浄し(2×30ml)、MgSO4で乾燥し、ろ過紙、そして吸引下で濃縮した。粗製生成物(15)を、精製することなく次のステップで使用した。
【0135】
ステップC:H-Gly-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (10)
上記ステップから得た粗製化合物(15)をジクロロメタン(25)中で溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(25ml)で処理した。得られた混合液を、室温で3時間攪拌した。溶媒を吸引下で取り除き、そして粗製残渣を逆相LC/MSにより精製して、表題の化合物(10)を与えた(2.67g、3個のステップで57%超)。
【0136】
実施例3
H-Ala-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (16)
化合物(10)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-アラニンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(16)を与えた。
【化13】

【0137】
実施例4
H-Asn-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (17)
化合物(10)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-アスパラギン(トリチル)を用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(17)を与えた。
【化14】

【0138】
実施例5
H-Lys-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHビス-ヒドロクロリド (18)
化合物(10)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-リジン(Boc)を用い、2当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(18)を与えた。
【化15】

【0139】
実施例6
H-Ser-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (19)
化合物(10)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-セリン(OtBu)を用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(19)を与えた。
【化16】

【0140】
実施例7
H-Val-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (20)
化合物(10)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-バリンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(20)を与えた。
【化17】

【0141】
実施例8
H-Abu-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (21)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-アミノ酪酸を用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(21)を与えた。
【化18】

【0142】
実施例9
H-β-Ala-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (22)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-β-アラニンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(22)を与えた。
【化19】

【0143】
実施例10
H-Arg-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH トリス-ヒドロクロリド (23)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-アルギニン(Boc)2を用い、3当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(23)を与えた。
【化20】

実施例11
H-Dap-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH ビス-ヒドロクロリド (24)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-ジアミノプロピオン(Boc)酸を用い、2当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(24)を与えた。
【化21】

実施例12
H-His-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH ビス-ヒドロクロリド (25)
化合物(1)の製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-ヒスチジン(N-Bn)を用い、そしてトリフルオロ酢酸で処理する前に、(実施例1のステップEにおいて、又は実施例2のステップCにおいて)水素添加分解の追加ステップを行い、表題の化合物(25)を与えた。(トリフルオロ酢酸で未処理の)粗製残渣に、10%炭素担持パラジウムを加えた。N2で脱気後、反応混合液を1:1(v/v)の酢酸エチルとメタノールの混合液中で再溶解し、もう一度脱気し、そして(バルーンを介して)水素雰囲気下で攪拌した。水素添加分解を2時間超行い、その後反応混合液をセライトを通してろ過し、そして吸引下で濃縮した。トリフルオロ酢酸で処理後、(実施例1のステップE又は実施例2のステップCにおいて記載されるように)精製し、2当量の1N塩酸水溶液を加え、凍結乾燥して表題の化合物(25)を与えた。
【化22】

【0144】
実施例13
H-Leu-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (26)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-ロイシンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(26)を与えた。
【化23】

実施例14
H-Met-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (27)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-メチオニンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(27)を与えた。
【化24】

実施例15
H-Orn-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH ビス-ヒドロクロリド (28)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-オルニチン(Boc)を用い、2当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(28)を与えた。
【化25】

【0145】
実施例16
H-Pro-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH ヒドロクロリド (29)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-L-プロリンを用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(29)を与えた。
【化26】

【0146】
実施例17
H-D-Asn-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (30)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-D-アスパギン(トリチル)を用い、表題の化合物(30)を与えた。
【0147】
【化27】

実施例18
H-D-Lys-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH ビス-ヒドロキシクロリド (31)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-D-リジン(Boc)を用い、2当量の2N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(31)を与えた。
【化28】

【0148】
実施例19
H-D-Ser-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OHヒドロクロリド (32)
化合物(1)製法に従い、そして(実施例1のステップDにおいて、又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-D-セリン(OtBu)を用い、1当量の1N塩酸水溶液加え、そして凍結乾燥して表題の化合物(32)を与えた。
【化29】

【0149】
実施例20
H-Asn-D-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (33)
化合物(1)製法に従い、そしてまず実施例1のステップBにおいてBoc-L-スレオニン-OBnの代わりに又は実施例2のステップAにおいてD-スレオニンα-t-ブチルエステルの代わりにBoc-D-スレオニン-OBnを用い、そして次に(実施例1のステップDにおいて又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-アスパラギン(トリチル)を用いて、表題の化合物(33)を与えた。
【化30】

【0150】
実施例21
H-Leu-D-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (34)
化合物(1)製法に従い、そしてまず実施例1のステップBにおいてBoc-L-スレオニン-OBnの代わりに又は実施例2のステップAにおいてD-スレオニンα-t-ブチルエステルの代わりにBoc-D-スレオニン-OBnを用い、そして次に(実施例1のステップDにおいて又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-ロイシンを用いて、表題の化合物(34)を与えた。
【化31】

【0151】
実施例22
H-Ser-D-Thr(γ-OC(O)Oプロポフォール)-OH (35)
化合物(1)製法に従い、そしてまず実施例1のステップBにおいてBoc-L-スレオニン-OBnの代わりに又は実施例2のステップAにおいてD-スレオニンα-t-ブチルエステルの代わりにBoc-D-スレオニン-OBnを用い、そして次に(実施例1のステップDにおいて又は実施例2のステップAにおいて)Boc-グリシンの代わりにBoc-アスパラギン(トリチル)を用いて、表題の化合物(33)を与えた。
【化32】

【0152】
実施例23
in vitro化合物輸送アッセイ
PEPT-1発現アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞における起電性輸送の解析
PCT出願WO01/20331において記載されるように輸送誘導性の電流を、ラット及びヒトPEPT1をトランスフェクションさせたアフリカツメガエル卵母細胞において計測した。
【0153】
RNA調製:ラット及びヒトPEPT1トランスポーターのcDNAをアフリカツメガエルβ-アクチン遺伝子由来の5’及び3’未翻訳配列を含む改変pGEMプラスミド中にサブクローニングした。これらの配列は、RNA安定性及びタンパク質を増加させた。プラスミドcDNAを鎖状にし、そしてin vitro転写の鋳型として使用した(エピセンターテクノロジー(Epicentre Technologies)転写キット4:1メチル化:非メチル化GTP)。
【0154】
アフリカツメガエル卵母細胞の単離:ゼノパス・ラエビス(Xenopus laevis)カエルをトリカイン(脱イオン水中に1.5g/ml)中に15分間浸すことにより麻酔にかけた。卵母細胞を取りだし、そして1mg/mlコラゲナーゼ(Worthington Type 3)を含むカエル・リンゲル溶液(90mM・NaCl、2mM・KCl、1mM・MgCl2、10mM・NaHEPES、pH7.45、CaCl2なし)中で、80〜100分間シェイクしてバラバラにした。卵母細胞を6回洗浄し、緩衝液をCaCl2(1.8mM)を含むカエル・リンゲル溶液に換えた。必要あらば、残っている濾胞細胞を取り除いた。細胞を16℃でインキュベーションし、そして卵母細胞に10〜20μgRNAを含む45μl溶液を注射した。
【0155】
電気生理学的計測:輸送電流を、注射後2〜14日において、標準2本の電極の電気生理学的セットを用いて計測した(Geneclamp 500増幅器、Digidata 1320/PCLAMPソフトウェア及びADInstrumentsハードウェア及びソフトウェアをシグナルの収集のために用いた)。Sutter Instrument pullerを用いて電極(2〜4mΩ)を微細加工し、そして3M・KClで満たした。浴槽を直接接地した(トランスポーター電流は0.3μA未満であった)。浴流を、自動化かん流システム(ALA Scientific Instruments、ソレノイドバルブ)により制御した。
【0156】
トランスポーターの薬理学について、卵母細胞を-60〜-90mVでクランプし、そしてPowerLabソフトウェア及びADInstrumentsデジタイザーを用いて連続電流値を得た。電流シグナルは、20Hzでローパスフィルターにかけ、そして4〜8Hzで得た。全ての浴溶液及び薬剤含有溶液はCaCl2を含むカエル・リンゲル溶液であった。誘導電流が新たな定常レベルに達するまで、10〜30秒間薬剤を適用し、続いて薬剤適用前のレベルにベースライン電流が戻るまで、対照溶液を適用した。電流差(薬剤適用の間のピーク電流からベースライン電流を引いたもの)は、起電性輸送から得られた電荷の移動の合計を表し、そして輸送割合に正比例した。一つの卵母細胞から、最大60分間記録し、30〜40の異なる化合物を一つの卵母細胞あたり試験することを可能にした。化合物誘導性の電流が飽和し、そして放射性標識競合実験に匹敵する基質濃度で、半値を与えた。異なるレベルの輸送活性を示した卵母細胞を比べるために、グリシル-サルコシン(1mM)の飽和濃度を、試験化合物からの結果を標準化するための共通のレファレンスとして用いた。この標準化方法を用いて、異なる卵母細胞に関して試験された異なる化合物のImax(つまり、最大誘導電流)を比較することができる。
【0157】
(10)、(16)-(20)、(24)-(28)、及び(32)の各化合物は、PEPT1発現卵母細胞上で3mMで試験した際に、バックグラウンドを越えるPEPT特異的電流を有意に誘発し(少なくともGly-サルコシンについてのImaxの2%)、これらの化合物が当該トランスポーターの基質として働きうるということを確認した。
【0158】
実施例24
in vitroにおけるプロドラッグの酵素切断の標準測定法
プロポフォール・プロドラッグの安定性を、当該技術分野において知られている以下の方法に従って、様々な組織調製品を用いた1以上のin vitroシステムにおいて評価した。組織は、市販の販売元(例えば、Pel-Freez Biologicals, Rogers, AR、又はGenTest Corporation,Woburn,MA)から得た。in vitro試験において使用される実験条件を以下の表1に記載した。各調製品を試験化合物と、37℃で1時間インキュベーションした。一定量(50μl)を、0、30、及び60分で取り出し、そして0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルで反応を止めた。サンプルを遠心し、そしてLC/MS/MSにより分析した(詳細な方法については以下の実施例134を参照のこと)。特異的酵素(例えば、ペプチターゼなど)に対する薬剤複合体の安定性を、精製された酵素とインキュベーションすることによりin vitroでアッセイした。
【0159】
パンクレアチンに対する安定性:1%(w/v)パンクレアチン(Sigma、P-1625、ブタ膵臓由来)、0.5M・NaCl(pH7.5)を含む0.025Mトリス緩衝液と複合体(5μM)とを37℃で60分間インキュベーションすることにより行った。2体積量のメタノールを加えることにより反応を止めた。14000rpmで10分間遠心した後に、上清を取り除き、そしてLC/MS/MSにより分析した。
【0160】
Caco-2ホモジェネート・S9に対する安定性:Caco-2細胞を、回収する前に21日間増殖させた。培養培地を取り除き、そして細胞単層を洗浄し、そして剥がして氷冷10mMナトリウム・ホスフェート/0.15M塩化カリウム、pH7.4中にいれた。プローブソニケーターを用いて4℃で超音波処理することにより細胞を溶解させた。溶解した細胞を次に1.5ml遠心バイアル中に移し、そして4℃9000gで20分間遠心した。得られた上清(Caco-2細胞ホモジェネートS9分画)を一定分量に分けて0.5mlバイアルに入れ、そして-80℃で使用するまで貯蔵した。
【0161】
安定性試験について、プロドラッグ(5μM)を、37℃で60分間、Caco-2ホモジェネートS9分画(0.5mgタンパク質/ml)中でインキュベーションした。無傷のプロドラッグと遊離されたプロポフォールの濃度を、LC/MS/MSを用いて0分と60分において測定した。
【0162】
表2に要約されるように、好ましい複合体は、60分のうちに少なくとも1%の切断を示して、遊離の薬剤又はその活性代謝物をもたらした。
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
実施例25 プロドラッグのサルへ経口投与した後のプロポフォールの取り込み
ステップA: 投与プロトコル
2〜4匹の成獣雄カニクイザル(マカカ・ファスシクラリス(Macaca Fascicularis))の群に、水溶液又はPEG400の溶液として、体重1kgあたり25mg当量のプロポフォールの用量で、静脈内ボーラス注射として又は強制経口投与により試験化合物を投与した。実験前一晩及び投与後4時間の間動物を絶食させた。血液サンプル(1.0ml)を、経口投与後24時間にわたり間隔をおいて大腿部の静脈から得た。1%ギ酸を含むアセトニトリルを用いてすぐに活性を止め、そして次に分析するまで-80℃で凍結させた。投与セッションの間を、少なくとも72時間の排出期間あけて試験化合物をサルに投与する。
【0165】
ステップB:LC/MS/MS分析
血漿中のプロポフォール濃度を、Agilent1100バイナリ-ポンプ及びAgilent オートサンプラーを備えたAPI4000LC/MS/MS装置を用いて測定した。カラムは、室温で実行されるPhenomenex Hydro-RP 4.6×50 mmカラムであった。移動相は2mM酢酸アンモニウム水溶液(A)及び5mM酢酸アンモニウムを伴う95%アセトニトリル(B)であった。勾配条件は:5%Bで一分、2.5分かけて90%Bに増加させ、そして2分間維持した。20μlのサンプルを注入した。Turbo-IonSprayソースを用い、そしてQ1において陰イオンモードにて、m/z=177でプロポフォールを検出した。プロドラッグを、陽イオンモードで、プロドラッグ(12)について323.97/101.91、(18)について452.11/84.05、(19)について411.04/189.0、(23)について480.05/70.24、(24)並びにプロドラッグ(10)及び(27)について409.99/159.00のMRM遷移を用いて検出した。ピークを、Analyst1.2定量ソフトウェアを用いて積分した。
【0166】
時間に対するプロポフォール濃度曲線の下の領域(AUC)を、プロポフォール自身を経口投与した後に計測されたAUCと用量標準化ベースに基づいて比較することにより、当該プロドラッグのプロポフォールとしての経口バイオアベイラビリティ(F)を測定した。上記化合物(プロドラッグ(10)、(12)、(18)、(19)、(23)、(24)、及び(27))の各々は、10%を超えるプロポフォールとしての経口バイオアベイラビリティを有し、能動的に輸送されたプロドラッグが、プロポフォールの経口バイオアベイラビリティを有意に高めることができるということを示唆する。
【0167】
実施例26
プロドラッグのラットへの経口又は静脈内投与後の、プロポフォールの取り込み
ステップ1:投与プロトコル
プロポフォール又はプロポフォール・プロドラッグを、4〜6匹の成獣雄スプラーグ-ドーリー(Sprague-Dawley)ラット(体重約250g)の群に、静脈内ボーラス注射として又は経口強制投与により投与した。動物を、実験時間に起きている状態にした。プロポフォール又はプロポフォール・プロドラッグを、体重1kgあたりプロポフォール25mgに相当する用量で水溶液として経口投与した。静脈内投与される場合、プロポフォール又はプロポフォール・プロドラッグを、Diprivan(登録商標)(Astra-Zeneca)中の溶液として、体重1kgあたり15mgのプロポフォールに相当する用量で投与した。動物を実験前一晩及び投与後4時間絶食させた。血液サンプル(0.3ml)を、頚静脈を介して、経口投与後8時間にわたり間隔をおいて採取した。血液を、1%ギ酸を含むアセトニトリルを用いてすぐに活性を止め、そして次に-80℃で分析まで凍結した。
【0168】
ステップ2: 吸収された薬剤についてのサンプル調製品
1. 空の1.5mlチューブ中に300μlの0.1%ギ酸を含むアセトニトリルを加えた。
2. ラット血液(300μl)を、様々な時間でEDTAチューブに回収し、そしてボルテックスして混合した。一定量の血液(100μl)をすぐにエッペンドルフ・チューブに加え、そしてボルテックスして混合した。
3. 10μlのプロポフォール標準ストック溶液(0.04、0.2、1、5、25、100μg/ml)を、300μlの0.1%ギ酸を含むアセトニトリルで活性を止めた空のラット血液(90μl)に加えた。次に、20μlのp-クロロフェニルアラニンを、各チューブに加えて、最終較正標準(0.004、0.02、0.1、0.5、2.5、10μg/ml)を作成した。
4. サンプルをボルテックスし、そして14000rpmで10分間遠心した。
5. 上清をLC/MS/MSにより分析した。
【0169】
ステップ3:LC/MS/MS分析
Agilent1100バイナリ-ポンプ及びCTC HTS-PALオートサンプラーを備えたAPI4000LC/MS/MS分光計を分析に用いた。Phenomenex Synergihydro-RP 4.6×30 mmカラムを分析の間用いた。プロポフォール分析についての移動相は、2mM酢酸アンモニウム水溶液(A)及び5mM酢酸アンモニウムを伴う95%アセトニトリル(B)であった。プロポフォール・プロドラッグを分析するための移動相は、(A)0.1%ギ酸及び(B)0.1%ギ酸を含むアセトニトリルであった。勾配条件は:10%Bで0.5分、次に2.5分かけて95%Bに増加させ、そして1.5分間95%(B)に維持した。移動相を10%Bに2分間戻した。ACPIソースをAPI4000で用いた。プロポフォールについて陰イオンモード、プロポフォールプロドラッグについて陽イオンモードで行った。各分析についてのMRM遷移を標準溶液を用いて最適化した。5μlのサンプルを注入した。個別の動物プロファイルに基づいて、WinNolin(v3.1Professional Version, Pharsight Corporation, Mountain View, California)を用いて、非-コンパートメント解析を行った。主要パラメーターに関する要約統計を、Cmax(投与後の観察されたピーク濃度)、Tmax(最大濃度を得る時間は、ピーク濃度が観察される時間である)、AUC(0-t)(ゼロから最後の回収時までの血清濃度対時間の曲線の下の領域であって、対数線形台形法を用いて見積もった領域)、AUC(0-∞)(ゼロから無限代の血清濃度時間曲線の下の領域であって、最後に回収した時間を無限と推定して、対数線形台形法を用いて見積もった領域)及びt1/2,z(最終半減期)について行った。
【0170】
プロポフォールの経口バイオアベイラビリティ(F)を、プロポフォールの経口投与後の時間に対するプロポフォール濃度曲線の下の領域(AUC)を、プロポフォールの静脈内投与の後のプロポフォール濃度対時間の曲線のAUCとを、用量標準化ベースに基づいて比較することにより測定した。当該計測技術を用いると、プロポフォールの経口バイオアベイラビリティは、予想よりかなり低いことが分かった(F=0.23%)。
【0171】
プロポフォール・プロドラッグ(10)及び(27)の経口投与の後のプロポフォール濃度対時間曲線の下の領域(AUC)を、プロポフォール自身の当モル用量を静脈内投与した後に計測されるAUCと比較することにより、プロポフォール・プロドラッグ(10)及び(27)をラットに経口投与することにより得られるプロポフォールの経口によるバイオアベイラビリティ(F)を測定した。プロドラッグ(10)及び(28)は、当モル用量のプロポフォール自身を静脈投与した後の、プロポフォールの経口バイオアベイラビリティに比べて、10%を超えるプロポフォールの絶対経口バイオアベイラビリティを提供した。こうして、プロドラッグ(10)及び(27)は、プロポフォール自身の経口バイオアベイラビリティに比べて、40倍高いプロポフォールの経口バイオアベイラビリティを提供した。この結果により、本開示のプロドラッグが、ラットにおいてプロポフォールの経口バイオアベイラビリティを有意に高めることができるということが示される。
【0172】
最後に、本発明を実施する他の方法が存在するということに注意すべきである。従って、本実施態様は例示であり制限するものとして考えられるべきでなく、そして本発明は、本明細書に与えられる詳細な記載に制限されないが、添付の特許請求される範囲とその均等物の範囲内で改変されうる。本明細書で引用される全ての文献及び特許は本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中、
1は、水素、[R5NH(CHR4)PC(O)]-、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
2は、-OR7又は-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]であり;
p及びqは独立して1又は2であり;
各R4は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれるか、又は場合により、R4及びR5が隣接する原子に結合する場合、R4及びR5は、それらが結合する原子と一緒になって、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキル環を形成し;
5は、水素、R6-、R6C(O)-、及びR6OC(O)-からなる群から選ばれ;
6は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
7は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
8は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれ;
各R9は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、置換アシル、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、カルバモイル、置換カルバモイル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、及び置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選ばれるか、又は場合により、R8及びR9が隣接する原子に結合する場合、R8及びR9は、それらが結合する原子と一緒になって、シクロへテロアルキル又は置換シクロへテロアルキル環を形成する;
但し、R2が-[NR8(CHR9)qC(O)OR7]である場合、R1は[R5NH(CHR4)PC(O)]-ではない]
で表される化合物、又は医薬として許容されるその塩、水和物、溶媒和物、若しくはN−オキシド。
【請求項2】
以下の式(II):
【化2】

[式中、
4は、水素、アルカニル、置換アルカニル、アリール、置換アリール、アリールアルカニル、置換アリールアルカニル、シクロアルカニル、ヘテロアリールアルカニル、又は置換へテロアリールアルカニルである]
で表される構造を有する、請求項1に記載の化合物、又は医薬として許容されるその塩、水和物、溶媒和物、若しくはN−オキシド。
【請求項3】
4が、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CO2H、-CH2CH2CO2H、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、-CH2CH2SCH3、-CH2SH、-CH2(CH2)3NH2、-CH2CH2CH2NHC(NH)NH2、フェニル、ベンジル、4-ヒドロキシベンジル、4-イミダゾリルメチル、及び3-インドリルメチルからなる群から選ばれる、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記N-末端アミノ酸残基がL体である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記N-末端アミノ酸残基がD体である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記C-末端アミノ酸残基がD体である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
前記C-末端アミノ酸残基がD体である、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
以下の式(III):
【化3】

で表される構造を有する、請求項1に記載の化合物、又は医薬として許容されるその塩、水和物、又は溶媒和物。
【請求項9】
前記アミノ酸残基が、L体である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記アミノ酸残基が、D体である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
偏頭痛、悪心、嘔吐、不安症、てんかん、痙攣、中枢神経系の外傷、及びフリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、及びピック病を含む神経変性障害の治療又は予防方法であって、かかる治療を必要とする患者に、治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
治療有効量の請求項1に記載の化合物及び医薬として許容されるビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項13】
5-HT3アンタゴニストをさらに含む、悪心及び嘔吐の治療のための請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記5-HT3アンタゴニストが、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、及びパロノセトロンからなる群から選ばれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
コルチコステロイドをさらに含む、悪心及び嘔吐の治療のための請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記コルチコステロイドがデキサメタソンを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
5-HT3アンタゴニストを投与することをさらに含む、悪心及び嘔吐の治療のための、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記5-HT3アンタゴニストが、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、及びパロノセトロンからなる群から選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コルチコステロイドを投与することをさらに含む、悪心及び嘔吐の治療のための、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記コルチコステロイドがデキサメタソンを含む、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2008−505979(P2008−505979A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521626(P2007−521626)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/024915
【国際公開番号】WO2006/017352
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503455503)ゼノポート,インコーポレイティド (22)
【Fターム(参考)】