説明

プロモーター

本発明は、異種ポリペプチドまたは選択マーカーの限定された発現において特に有用な、低減されたプロモーター強度を有する、5’短縮SV40プロモーターである、SEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06の核酸配列を有するプロモーターについて報告する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質発現および細胞選択の分野に属する。プロモーター強度が低く、そのため機能的に連結するコード核酸の発現が限定されているプロモーターを、本明細書において報告する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質の発現は、生細胞における基本的な過程である。タンパク質の発現に必要な情報はすべて、単一の核酸により提供される。この核酸は、タンパク質のアミノ酸配列の情報を含有するだけでなく、プロモーター/プロモーター配列を含む必要な制御情報(たとえば、リボソーム結合部位、転写開始および終結シグナル、スプライスシグナル、エンハンサーエレメントなど)もまた提供する。
【0003】
プロモーターは、核酸の、たとえば、それが機能的に連結するポリペプチドをコードする核酸の、mRNA前駆体への転写量を制御する核酸である。これは、機能的に連結したコード配列の5’末端におけるRNAポリメラーゼ開始部位の周辺に位置する転写調節因子である。SV40初期プロモーターの分析により、転写アクチベーターを認識/結合する部位は、7〜20塩基対からなるセグメントのプロモーターに含まれることが公知である。1つのセグメントは、RNA合成の開始部位、たとえば、周知のTATAボックスである。RNA合成の開始部位に対し5'側すなわち上流のおよそ30〜110塩基対に位置する他のセグメントは、転写開始頻度を規定している。プロモーターは、特定の部位で規定の向きすなわち5’から3’の向きにRNA合成を開始する少なくとも1つのセグメントを必要とする。
【0004】
公知のプロモーターは、lac-lpp、ara-、lac-、tac-、trc-、trp-、phoA-、PBAD-、λPL-、lpp-、およびT7-プロモーターである。SV40プロモーターは、シミアン(空胞化)ウイルス40のゲノムに由来する核酸配列である。真核細胞または原核細胞における異種ポリペプチドの組換え産生のために、通常1つまたは複数の発現プラスミドを細胞に導入する。発現プラスミドは、異種ポリペプチドを発現するための発現カセットを含み、かつ、異種ポリペプチドを発現しているトランスフェクト細胞の選択に必要な選択マーカーを発現するための発現カセットも含む。異種ポリペプチドおよび選択マーカーの合成はいずれも、細胞の発現機序の能力のうちのある割合を必要とする。
【0005】
主として異種ポリペプチドを産生することが目的であるので、細胞の発現機序の利用可能な能力の大半は、異種ポリペプチドをコードする核酸の発現に割り当てられるべきである。少量のみが選択マーカーの発現に用いられるべきである。発現能力のこの割り当ては、対応するプロモーターの強度により行われる。プロモーター強度が強いほど、より多くの機能的に連結した核酸が転写されしたがって翻訳される。そのため、調整可能なまたは低減可能なプロモーター強度を有するプロモーターが必要とされている。
【0006】
Taylor, W. E.ら(Endocrinol. 137 (1996) 5407-5414)(非特許文献1)は、ヒト幹細胞因子プロモーター欠失変種を報告している。米国特許出願US 2007/0092968(特許文献1)において、癌治療遺伝子の腫瘍選択的かつ高効率な発現のための新規のhTMCプロモーターおよびベクターが報告されている。Frommら(J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982) 457-481(非特許文献2)および同書2 (1983) 127-135(非特許文献3))は、SV40初期領域プロモーターの欠失マッピングおよび欠失変異体を報告している。US 6,399,571(特許文献2)において、キチナーゼのキチン結合断片が報告されている。WO 99/62927(特許文献3)は結合組織成長因子4を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 2007/0092968
【特許文献2】US 6,399,571
【特許文献3】WO 99/62927
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Taylor, W. E.ら(Endocrinol. 137 (1996) 5407-5414)
【非特許文献2】Frommら(J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982) 457-481
【非特許文献3】Frommら(J. Mol. Appl. Gen. 2 (1983) 127-135
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の局面は、SEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06の核酸配列を有するすなわち伴うプロモーターである。一態様において、このプロモーターはSEQ ID NO:04の核酸配列を有する。
【0010】
本発明の第2の局面は、SEQ ID NO:04の核酸配列を有し、かつ緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするSEQ ID NO:07の核酸に機能的に連結した場合に、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターと比較して20%またはそれ未満のプロモーター強度を有する核酸である。
【0011】
本発明のさらなる局面は、以下の工程をこの順番に含む、細胞を選択するための方法である:
(a)
(i)異種ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現カセット、
(ii)SEQ ID NO:04の第1の核酸および選択マーカーをコードする第2の核酸を含む第2の発現カセットであって、第1の核酸が第2の核酸に機能的に連結している、第2の発現カセット
を含む核酸を真核細胞にトランスフェクトする工程:
(b)トランスフェクトされた細胞を、非トランスフェクト真核細胞の増殖に適した条件下で培養する工程;
(c)工程(b)において増殖し、かつ
(i)選択的培養条件下で増殖する、または
(ii)選択マーカーを発現する
細胞を選択する工程。
【0012】
本発明のこの局面の一態様において、真核細胞は哺乳動物細胞である。好ましい態様において、哺乳動物細胞は、CHO細胞、BHK細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞、またはHEK細胞、またはSp2/0 細胞である。別の態様において、異種ポリペプチドは、免疫グロブリン、または免疫グロブリン断片、または免疫グロブリンコンジュゲートである。一態様において、選択マーカーは、ネオマイシン-アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、またはハイグロマイシン-ホスホトランスフェラーゼ、またはdLNGFR、またはGFPである。
【0013】
本発明の第4の局面は、以下の工程をこの順番で含む、異種ポリペプチドを発現するための方法である:
(a)哺乳動物細胞に、異種ポリペプチドをコードする第2の核酸に機能的に連結したSEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06の第1の核酸を含む発現カセットを含む核酸をトランスフェクトする工程;
(b)工程(a)においてトランスフェクトされた細胞を選択する工程;
(c)選択された細胞を、異種ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程;
(d)異種ポリペプチドを該細胞または培養培地から回収する工程。
【0014】
本発明のこの局面の一態様において、哺乳動物細胞は、CHO細胞、BHK細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞、またはHEK細胞、またはSp2/0細胞である。別の態様において、第1の核酸はSEQ ID NO:04のものである。さらなる態様において、第2の核酸は免疫グロブリン、または免疫グロブリン断片、または免疫グロブリンコンジュゲートをコードする。さらに別の態様において、核酸は、選択マーカーをコードする第2の発現カセットを含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、SEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06を有するヌクレオチド配列を有する新規のプロモーター核酸を報告する。
【0016】
本発明の実行に有用な方法および技術は当業者に公知であり、たとえば、Ausubel, F.M., ed., Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997)、およびSambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載されている。当業者には公知であるように、組換えDNA技術の使用により、核酸および/またはポリペプチドの多数の誘導体の産生が可能である。このような誘導体は、たとえば、1つの個別のまたは複数の位置を、置換、改変、交換、欠失、または挿入により修飾することができる。修飾または誘導は、たとえば、部位特異的変異誘発の手段によって実行することができる。このような修飾は、当業者により容易に実行することができる(たとえば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A laboratory manual (1999) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USAを参照)。組換え技術の使用により、当業者は異種核酸により様々な宿主細胞を形質転換することが可能である。
【0017】
「プロモーター」とは、それが機能的に連結する核酸の転写を調節する核酸、すなわち、ポリヌクレオチド配列を意味する。プロモーターは、RNAポリメラーゼ結合および転写開始のシグナルを含みうる。使用されるプロモーターは、機能的に連結された核酸の発現が企図される宿主細胞の細胞型において機能的であると考えられる。様々な異なる供給源に由来する、構成的プロモーター、誘導的プロモーター、および抑制的プロモーターを含む多数のプロモーターが当技術分野において周知である(かつ、GenBankのようなデータベースにおいて同定されている)。それらは、クローン化ポリヌクレオチドとして、またはクローン化ポリヌクレオチド内で、(たとえば、ATCCのような寄託機関および他の販売源または個人供給源から)入手可能である。「プロモーター」は、たとえば、機能的に連結した構造遺伝子の転写を導くヌクレオチド配列を含む。典型的に、プロモーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近位の、遺伝子の5'非コード領域または5’非翻訳領域(5'UTR)に位置している。プロモーター内で転写の開始において機能する配列エレメントは往々にして、コンセンサスヌクレオチド配列を特徴とする。これらの配列エレメントは、RNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSE; McGehee, R.E., et al., Mol. Endocrinol. 7 (1993) 551)、環状AMP応答エレメント(CRE)、血清応答エレメント(SRE; Treisman, R., Seminars in Cancer Biol. 1 (1990) 47)、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)、および他の転写因子に対する結合部位、たとえば、CRE/ATF (O'Reilly, M.A., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 19938)、AP2 (Ye, J., et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 25728)、SP1、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB; Loeken, M.R., Gene Expr. 3 (1993) 253-264)、およびオクタマー因子(概要は、Watson et al., eds., Molecular Biology of the Gene, 4th ed., The Benjamin/Cummings Publishing Company, Inc. 1987およびLemaigre, F.P. and Rousseau, G.G., Biochem. J. 303 (1994) 1-14を参照)を含む。プロモーターが誘導的プロモーターである場合、転写速度は誘導物質に反応して増加する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターである場合、転写速度は誘導物質によって制御されない。抑制的プロモーターもまた公知である。たとえば、c-fosプロモーターは、成長ホルモンが細胞表面上のその受容体に結合すると特異的に活性化される。たとえば、CMVプロモーターおよびそれに続く2つのTetオペレーター部位からなる人工ハイブリッドプロモーターにより、テトラサイクリン(tet)制御発現を達成することができる。Tetリプレッサーは、この2つのTetオペレーター部位に結合し、転写を阻害する。誘導因子テトラサイクリンを添加すると、TetリプレッサーがTetオペレーター部位から離れて転写が進行する(Gossen, M. and Bujard, H., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 5547-5551)。メタロチオネインおよび熱ショックプロモーターを含む他の誘導的プロモーターについては、たとえば、Sambrook, et al.(上記)およびGossen, M., et al., Curr. Opin. Biotech. 5 (1994) 516-520を参照のこと。高レベル発現のための強力なプロモーターとして同定された真核生物プロモーターには、SV40初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネインIプロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列、チャイニーズハムスター伸長因子1α(CHEF-1、たとえばUS 5,888,809参照)、ヒトEF-1α、ユビキチン、およびヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV IE)がある。エンハンサー(すなわち、プロモーターに作用して転写を増加させるシスに作用するDNAエレメント)は、プロモーターと共に機能して、プロモーターのみから得られた発現レベルを増加させるのに必要であり、転写制御因子として含まれてもよい。往々にして、プロモーターを含むポリヌクレオチドセグメントは、エンハンサー配列も含む(たとえば、CMVまたはSV40)。
【0018】
本明細書において使用される「核酸」という用語は、個々のヌクレオチド、すなわちポリヌクレオチドからなるポリマーである。それは、たとえば、組換え的に作製することができるポリペプチドをコードする、天然の核酸、または部分的もしくは完全に非天然の核酸を意味する。核酸は、化学的手段により単離されたまたは合成されたDNA断片で構築することができる。核酸は、別の核酸、たとえば発現プラスミドまたは宿主細胞のゲノム/染色体に組み込むことができる。プラスミドはシャトルベクターおよび発現ベクターを含む。典型的に、プラスミドは、細菌中のベクターをそれぞれ複製および選択するための複製起点(たとえば、ColE1複製起点)および選択マーカー(たとえば、アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性遺伝子)を含む原核生物増殖単位も含む。
【0019】
本発明において用いられる「プロモーター強度」という用語およびその文法的等価物は、機能的に連結された核酸の転写におけるプロモーターの効力を示す。プロモーターのプロモーター強度は、SEQ ID NO:05である野生型SV40プロモーターのプロモーター強度と比較した場合に、高:90%から100%以上、または中:40%から90%未満、または低:最大でも40%未満、でありうる。この値は、同一の細胞型における、関心対象のプロモーターに機能的に連結した異種ポリペプチドの発現量と野生型SV40プロモーターに機能的に連結した異種ポリペプチドの発現量とを比較することによって決定することができる。これは、たとえば、異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した関心対象のプロモーターからなる発現カセットをトランスフェクトされたCHO細胞またはHEK細胞中の異種ポリペプチドの発現量を、ELISAアッセイによって決定することによって、行うことができる。この量と、同じELISAアッセイにより決定された、異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した野生型SV40プロモーターからなる発現カセットをトランスフェクトした同じ細胞株中の同じ異種ポリペプチドの発現量とを比較することにより、すなわち、同じ発現プラスミドを有し、プロモーターのみを変更した同じ細胞中の異種ポリペプチドの量を比較することにより、相対的なプロモーター強度を決定することができる。本願中で使用される「野生型SV40プロモーター」という用語は、SV40のゲノムであるSEQ ID NO:01の核酸の72〜411位に対応するSEQ ID NO:05の核酸を示す。
【0020】
「機能的に連結した」とは、意図された様式で機能することを可能にする関係にある2つ以上の構成要素の並置を意味する。たとえば、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、それらがシスに作用して、連結したコード配列の転写を調節または調整する場合、コード配列に機能的に連結している。必須ではないが一般的に、「機能的に連結した」DNA配列は、連続的であり、分泌リーダー/シグナル配列およびポリペプチドなどの2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合には、連続的でありかつリーディングフレームにある。しかしながら、機能的に連結したプロモーターは一般にコード配列の上流に位置しているが、コード配列と連続的である必要はない。エンハンサーは連続的である必要はない。エンハンサーは、それがコード配列の転写を増加させる場合、コード配列に機能的に連結している。機能的に連結したエンハンサーは、コード配列の上流、内部、または下流でありかつプロモーターから相当な距離に位置することができる。ポリアデニル化部位は、転写がコード配列を通ってポリアデニル化配列へと進行するような形でコード配列の下流末端に位置する場合、コード配列に機能的に連結している。連結は、当技術分野において公知の組換え法、たとえば、PCR法を用いる方法、および/または好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。好都合な制限部位が存在しない場合は、従来の慣例に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが用いられる。
【0021】
本発明の範囲内においては、トランスフェクトされた細胞は、当技術分野において公知の実質的に任意の種類のトランスフェクション方法によって得てもよい。たとえば、核酸はエレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションの手段によって細胞内に導入されてもよい。あるいは、FuGENE 6(Roche Diagnostics GmbH, Germany)、X-tremeGENE(Roche Diagnostics GmbH, Germany)、およびLipofectAmine(Invitrogen Corp., USA)のようなリポフェクション試薬を用いてもよい。さらにあるいは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスに基づく適切なウイルスベクター系によって核酸を細胞内に導入してもよい(Singer, O., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 5313-5314)。
【0022】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、核酸、たとえば、異種ポリペプチドをコードするまたはshRNAを構成する核酸をその中に導入/トランスフェクトすることができるまたは導入/トランスフェクトされる細胞を意味する。宿主細胞は、ベクター/プラスミドの増殖に用いられる原核細胞、および核酸の発現に用いられる真核細胞の両方を含む。一態様において、真核細胞は哺乳動物細胞である。別の態様において、哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞(たとえば、CHO K1またはCHO DG44)、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK 293細胞、HEK 293 EBNA細胞、PER.C6細胞、およびCOS細胞を含む哺乳動物細胞より選択される。さらなる態様において、哺乳動物細胞はハイブリドーマ、ミエローマ、およびげっ歯類細胞を含む群より選択される。ミエローマ細胞は、ラットミエローマ細胞(たとえば、YB2)およびマウスミエローマ細胞(たとえば、NS0、SP2/0)を含む。薬学的適用において使用するためのポリペプチドは、一態様において、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0 細胞、COS細胞、HEK細胞、BHK細胞、PER.C6(登録商標)細胞などの哺乳動物細胞内で産生される。宿主細胞の発酵のために、およびそれによる関心対象のポリペプチドの発現のために、培養培地が用いられる。今日、CHO細胞は、実験室における小さな規模または製造過程における大きな規模のいずれにおいても、薬学的ポリペプチドの発現に広く用いられている。その広範囲な流通および使用のゆえに、CHO細胞の特有の性質および遺伝的背景は周知である。したがって、CHO細胞は、ヒトへ適用するための治療用タンパク質の製造において、規制当局による承認を得ている。一態様において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0023】
「発現カセット」とは、少なくとも宿主細胞中に含まれる構造遺伝子の発現および分泌に必要な要素を含む核酸を意味する。核酸は、個々のヌクレオチドからなる配列によって、または核酸分子によってコードされるアミノ酸配列によって、同様に特徴付けられる。
【0024】
「遺伝子」とは、たとえば、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす、染色体上またはプラスミド上のセグメントである核酸を示す。コード領域、すなわち構造遺伝子以外に、遺伝子には、他の機能的エレメント、たとえばシグナル配列、プロモーター、イントロン、および/またはターミネーターが含まれる。
【0025】
「構造遺伝子」とは、シグナル配列を除く遺伝子の領域、すなわちコード領域を示す。
【0026】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、細胞内で起こる転写および/または翻訳を意味する。宿主細胞中の所望の産物の転写レベルは、その細胞中に存在する対応するmRNAの量に基づいて決定することができる。たとえば、選択された核酸から転写されたmRNAは、PCRまたはノーザンハイブリダイゼーションにより定量化することができる(Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照)。選択された核酸によりコードされるタンパク質は、様々な方法により、たとえば、ELISAにより、該タンパク質の生物活性についてのアッセイにより、またはウエスタンブロットもしくはラジオイムノアッセイのようなそうした活性とは別個のアッセイを用いることにより、該タンパク質を認識してそれに結合する抗体を使用することにより、定量化することができる(Sambrook, et al., 1989、上記を参照)。
【0027】
本明細書において用いられる「制御エレメント」とは、関心対象のポリペプチドをコードする核酸配列の転写および/または翻訳に必要な、シスに存在するヌクレオチド配列を意味する。転写制御因子は通常、発現されようとする核酸配列の上流のプロモーター、転写開始部位および終結部位、ならびにポリアデニル化シグナル配列を含む。「転写開始部位」という用語は、一次転写産物、すなわちmRNA前駆体に組み込まれている第1のヌクレオチドに対応する核酸中のヌクレオチドを意味し、転写開始部位はプロモーター配列と重複してもよい。「転写終結部位」という用語は、転写される関心対象の遺伝子の3’末端に通常現れ、RNAポリメラーゼに転写を終結させるヌクレオチド配列を意味する。ポリアデニル化シグナル配列またはpoly-A付加シグナルは、真核生物mRNAの3’末端の特定の部位で切断するためのシグナル、および切断された3’末端に約100〜200アデニンヌクレオチド(polyAテール)の配列を核内で転写後付加するためのシグナルを提供する。ポリアデニル化シグナル配列は、切断部位から上流約10〜30ヌクレオチドに位置するコンセンサス配列AATAAAを含んでもよい。
【0028】
「ポリペプチド」は、天然に産生されるかまたは合成的に産生されるかによらず、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸残基のポリマーである。20アミノ酸残基未満のポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる。2つ以上のアミノ酸鎖を含むポリペプチドまたは100アミノ酸以上の長さのアミノ酸鎖を含むポリペプチドは、「タンパク質」と呼ばれる。ポリペプチドまたはタンパク質は、糖質基または金属イオンのような非ペプチド成分も含んでもよい。糖質置換基および他の非ペプチド置換基を、あるタンパク質が産生される細胞によってそのタンパク質に加えてもよく、これは細胞のタイプによって様々であってよい。タンパク質およびポリペプチドは、そのアミノ酸骨格構造に関して本明細書において定義される。糖質基のような置換基は一般的には明記されないが、存在しうる。
【0029】
「異種DNA」または「異種ポリペプチド」とは、所与の宿主細胞内に天然では存在しないDNA分子もしくはポリペプチド、またはDNA分子の集団もしくはポリペプチド集団を意味する。特定の宿主細胞に対して異種であるDNA分子は、宿主由来DNAを非宿主由来DNA(すなわち、外因性のDNA)と組み合わせる限り、宿主細胞種に由来するDNA(すなわち、内因性のDNA)を含んでもよい。たとえば、プロモーターを含む宿主DNAセグメントに機能的に連結したポリペプチドをコードする非宿主DNAセグメントを含むDNA分子は、異種DNA分子であると見なされる。逆に、異種DNA分子は、外因性のプロモーターに機能的に連結した内因性構造遺伝子を含みうる。非宿主DNA分子によりコードされるペプチドまたはポリペプチドは、「異種」ペプチドまたはポリペプチドである。
【0030】
「選択マーカー」という用語は、対応する「選択物質」の存在下で、ある核酸を保有する細胞がそれについて特異的に選択されるかまたはそれに対抗して特異的に選択されることを可能にする核酸を示す。有用な陽性選択マーカーは、たとえば、抗生物質耐性遺伝子である。選択マーカーは、対応する選択物質の存在下で、それにより形質転換された細胞の選択を可能にする。選択的培養条件下、すなわち選択物質の存在下では、非形質転換細胞は増殖または生存することはできない。選択マーカーは、陽性マーカー、陰性マーカー、または二機能性マーカーでありうる。陽性選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞の選択を可能にし、一方、陰性選択マーカーは該マーカーを保有する細胞の選択的な排除を可能にする。典型的に、選択マーカーは、薬物に対する耐性または細胞の代謝障害もしくは異化障害の代償を与える。真核細胞において有用な選択マーカーは、たとえば、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)の遺伝子、たとえば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシンおよびG418 APH、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミンシンセターゼ(GS)、アスパラギンシンセターゼ、トリプトファンシンセターゼ(選択物質:インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(選択物質:ヒスチジノールD)の遺伝子、ならびにピューロマイシン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、およびミコフェノール酸に対する耐性をもたらす遺伝子を含む。さらなる選択マーカーは、WO 92/08796 およびWO 94/28143に報告されている。
【0031】
本発明において用いられる「発現機序」という用語は、核酸または遺伝子の転写から始まり(すなわち「遺伝子発現機序」とも呼ばれる)、その核酸によってコードされるポリペプチドの翻訳後修飾に至る過程に関与する、細胞の酵素、補因子などの全体を示す。「発現機序」は、たとえば、DNAをプレmRNAに転写する工程、プレmRNAをスプライスして成熟mRNAにする工程、mRNAを翻訳してポリペプチドにする工程、およびポリペプチドを翻訳後修飾する工程を含む。
【0032】
「異種ポリペプチドの発現に適した条件下」という用語は、異種ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の培養に用いられ、かつ当業者に周知のまたは当業者により容易に決定される条件を示す。これらの条件が、培養される哺乳動物細胞のタイプおよび発現されるタンパク質のタイプに依存して多様でありうることもまた当業者に公知である。一般に哺乳動物細胞は、たとえば、20℃〜40℃の温度で培養され、有効なタンパク質産生をもたらすのに十分な期間に関しては、たとえば0.1リットル〜107 リットルの容量で、4日〜28日である。
【0033】
「非トランスフェクト細胞の増殖に適した条件下」とは、同じ細胞株の非トランスフェクト細胞の培養に一般的に用いられる条件を示す。これらの条件は、当業者に公知であるか、または当業者によって容易に決定することができる。
【0034】
本発明において用いられる「異種ポリペプチドの回収」という用語は、沈降、塩析、限外濾過、ダイアフィルトレーション、凍結乾燥、濃縮溶液を得るための溶媒体積の減少、またはクロマトグラフィーを示す。一般的に、クロマトグラフィー過程がポリペプチドの分離および精製に用いられる。微生物タンパク質によるアフィニティークロマトグラフィー(たとえば、プロテインAまたはプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(たとえば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、および混合モード交換)、チオフィリック(thiophilic)吸着クロマトグラフィー(たとえば、βメルカプトエタノールおよび他のSHリガンドによる)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、芳香族吸着クロマトグラフィー(たとえば、フェニルセファロース、アザアレノ(aza-arenophilic)樹脂、もしくはm-アミノフェニルボロン酸による)、金属キレートアフィニティクロマトグラフィー(たとえば、Ni(II)およびCu(II)アフィニティー材料による)、分子篩クロマトグラフィー、ならびに電気泳動法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)のような様々な方法が十分に確立されており、タンパク質の回収および精製に広く利用されている(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75(1998)93-102)。
【0035】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、様々な定常領域遺伝子、加えて種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。免疫グロブリン、たとえばFv、Fab、およびF(ab)2、ならびに単鎖(scFv)またはダイアボディ(たとえば、Huston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883; Bird, R.E., et al., Science 242 (1988) 423-426; 概要は、Hood, et al., Immunology, Benjamin N.Y., 2nd edition (1984); およびHunkapiller, T. and Hood, L., Nature 323 (1986) 15-16)を含む多様な形態で存在していてもよい。
【0036】
免疫グロブリンは一般的に、2つのいわゆる軽鎖ポリペプチド(軽鎖)と2つのいわゆる重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。重鎖および軽鎖ポリペプチドの各々は、抗原と相互作用することのできる結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(一般にポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含む。重鎖および軽鎖ポリペプチドの各々は、定常領域(一般にカルボキシ末端部分)を含む。重鎖定常領域は、抗体の、(i)食細胞のような、Fcγ受容体(FcγR)を保持する細胞への、または(ii)Brambell受容体としても知られる新生児Fc受容体(FcRn)を保持する細胞への結合を媒介する。それはまた、補体成分C1qのような従来の補体系の因子を含む一部の因子の結合を媒介する。免疫グロブリンの可変ドメインの軽鎖または重鎖は、様々なセグメント、すなわち4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(CDR)を含む。
【0037】
「免疫グロブリン断片」とは、免疫グロブリンの重鎖の、可変ドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4 ドメイン、または免疫グロブリンの軽鎖の、可変ドメインもしくはCLドメインを含むドメインの群のうちの少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを示す。それらの誘導体および変種もまた含まれる。さらに、1つまたは複数のアミノ酸またはアミノ酸領域が欠失した可変ドメインも存在してもよい。
【0038】
「免疫グロブリンコンジュゲート」とは、ペプチド結合を介してさらなるポリペプチドに結合された免疫グロブリン重鎖または軽鎖の少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを示す。さらなるポリペプチドは、ホルモン、増殖受容体、または抗膜融合性ペプチドなどのような非免疫グロブリンペプチドである。
【0039】
本発明は、SEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06のヌクレオチド配列を有するプロモーターを報告する。
【0040】
潜在的な高産生細胞のクローンを同定する方法は、選択マーカー遺伝子の発現と異種ポリペプチドをコードする構造遺伝子との配列内リボソーム進入部位(IRES)を介した連結である。この設計により、異種ポリペプチドの発現を選択マーカーの発現と相関させることができる。別の方法は、遺伝子増幅である。この方法において、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)酵素を欠く細胞に、DHFRポリペプチドの発現のための第1の発現カセットおよび異種ポリペプチドの発現のための第2の発現カセットを含むベクター/プラスミドをトランスフェクトする。グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジンの枯渇した培養培地を利用することで、選択的培養条件が確立される。増幅のためにDHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)を加える(Kaufman, R.J., et al., J Mol. Biol. 159 (1982) 601-621; US 4,656,134)。一般的に、トランスフェクタントの濃縮および選択のマーカーとして発現産物が細胞表面に位置する/細胞表面で検出できる、任意の種類の遺伝子を用いてもよい。低アフィニティ神経成長因子受容体の切断形態であり、そのためシグナル伝達に対し不活性なdLNGFRは、細胞表面に発現し、細胞の生物学的分析において高度に有用なマーカーであることが実証されている(Philipps, K., et al., Nat. Med. 2(1996)1154-1156およびMachl, A.W., et al., Cytometry 29(1997)371-374)。
【0041】
関心対象の異種ポリペプチドの産生を不必要に減少させないために、異種ポリペプチドを産生している細胞、すなわちうまく転写された細胞の選択に必要な選択マーカーの発現は、可能な限り低く、しかしそれにも関わらずなお検出可能であるべきである。
【0042】
ここで驚くべきことに、上記の必要性は本発明のプロモーターによって満たすことができることが見出された。本発明のプロモーターを用いることで、異種ポリペプチドを、同一の条件下で本発明のプロモーターを用いずに選択された細胞と比較してより高いレベルで発現する細胞を選択することが可能である。驚くべきことに、本発明のプロモーターにより、異種ポリペプチドを発現している細胞をより低い経費で単離できることが見出された。加えて、本発明のプロモーターを用いることにより、同一の条件および選択物質濃度の下で、全長SV40プロモーターを用いて選択された細胞と比較してより高いレベルで異種ポリペプチドを発現する細胞を選択できることが見出された。
【0043】
本願において用いられる「5’短縮SV40プロモーター」という用語は、ヌクレオチド配列の5’末端における規定の数の連続ヌクレオチドが欠失した野生型SV40プロモーターを示す。
【0044】
したがって、本発明は、SEQ ID NO:02の核酸配列を有するすなわち伴うプロモーターを報告する。SEQ ID NO:02は、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのヌクレオチド61〜348を含む、すなわちヌクレオチド1〜60が欠失している。SEQ ID NO:02のプロモーターの調製は、実施例1に示されている。
【0045】
本発明はまた、SEQ ID NO:03の核酸配列を有するすなわち伴うプロモーターを報告する。SEQ ID NO:03は、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのヌクレオチド130〜348に対応する、すなわちヌクレオチド1〜129が欠失している。SEQ ID NO:03のプロモーターの調製は、実施例2に示されている。
【0046】
本発明はさらに、SEQ ID NO:04の核酸配列を有するすなわち伴うプロモーターを報告する。SEQ ID NO:04は、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのヌクレオチド177〜348である、すなわちヌクレオチド1〜176が欠失している。SEQ ID NO:04のプロモーターの調製は、実施例3に示されている。
【0047】
本発明はさらに、SEQ ID NO:06の核酸配列を有するすなわち伴うプロモーターを報告する。SEQ ID NO:06は、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのヌクレオチド203〜348からなる、すなわちヌクレオチド1〜202が欠失している。
【0048】
SEQ ID NO:02〜04および06の核酸配列によってプロモーターのプロモーター強度を決定するために、異なるプロモーターのそれぞれがGFP(緑色蛍光タンパク質、SEQ ID NO:07)をコードする核酸に機能的に連結した発現プラスミドを作製した。図7(a)〜(c)に示されるように、野生型SV40プロモーター核酸におけるヌクレオチドの5’欠失はプロモーター強度を減少させる。SEQ ID NO:02のプロモーターは、全長野生型SV40プロモーターとほぼ同等の強度を有する。SEQ ID NO:03および04のプロモーターは、それぞれ約56%および約19%のプロモーター強度を有する。したがって、本発明のプロモーターにより、それに機能的に連結した核酸の発現は、野生型SV40プロモーターと比較して減少させるまたは限定することが可能である。
【0049】
シミアンウイルス40には、2つの72bp反復配列が前に付くSV40プロモーターがある。本発明の一態様において、1つ目の72bp反復配列が欠失し、2つ目の72bp反復配列が維持されている。一態様において、本発明の核酸は、SEQ ID NO:04の核酸の前にSEQ ID NO:14の核酸を含む。別の態様において、本発明の核酸は、シミアンウイルス40プロモーターのSEQ ID NO:14の第2の72bp反復配列を含む。本発明の核酸におけるさらなる態様において、SV40プロモーターの第1の72bp反復配列が欠失し、SV40プロモーターの第2の72bp反復配列が維持されている。これは、異種ポリペプチドの発現において有用である。この態様において、本発明のプロモーターは、選択マーカーをコードする核酸に機能的に連結する野生型SV40プロモーターの第2の72bp反復配列のみを含む。このプロモーターのプロモーター強度の低下に伴い、選択マーカーの発現は低下するが、一方で異種ポリペプチドの発現は、たとえばSEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターを用いることで維持される。したがって、選択マーカーをコードする核酸に機能的に連結した本発明のプロモーターと、関心対象の異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結した野生型プロモーター、たとえばSV40またはCMVとの組み合わせにより、選択マーカーをコードする核酸と関心対象の異種ポリペプチドをコードする核酸とが両方とも野生型プロモーターに機能的に連結された構築物と比較して、異種ポリペプチドの発現の向上がもたらされることが見出された。
【0050】
安定な細胞クローンにおいて、選択マーカーをコードする核酸および異種ポリペプチドをコードする核酸、ならびにそれらの対応するプロモーターは、該細胞のゲノム内に一緒に組み込まれる。ゲノム内の組み込み位置はランダムな過程であるので、通常、選択工程が実施される。この選択工程において、ゲノム内に組み込まれた連結された核酸が転写的に高活性な座位に近接する細胞のみが選択される。そのような座位から離れた位置に核酸が組み込まれた、または両方の核酸が別の座位に組み込まれた細胞は、選択工程により排除される。
【0051】
本発明の別の局面は、SEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06の核酸配列からなる核酸であり、これらの核酸は、SEQ ID NO:07の核酸に機能的に連結した場合、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのプロモーター強度と比較して、90%以上、または40%以上90%未満、または40%未満のプロモーター強度を有する。
【0052】
好ましい態様は、SEQ ID NO:04の核酸であり、それらのいずれもが別個にSEQ ID NO:07の核酸に機能的に連結した場合、SEQ ID NO:05の野生型SV40プロモーターのプロモーター強度の20%またはそれ未満のプロモーター強度を有する。
【0053】
本発明の核酸およびプロモーターがそれぞれ、低下したプロモーター強度を有するなら、すなわち、それに機能的に連結した核酸が、野生型SV40プロモーターと比較して低下した量または低下した効率で転写されるなら、それらは複数の用途において有用である。
【0054】
たとえば、それらは、細胞のタンパク質発現機序の能力の大きな割合を必要とすることなく、選択マーカーを保有する細胞の選択を可能にする、機能的に連結した選択マーカーの発現の促進に用いることができる。それにより、たとえば共発現異種ポリペプチドの発現は、負の影響を受けない。
【0055】
本発明の別の局面は、以下の工程を含む、異種ポリペプチドを発現している細胞を選択する方法である:
(a)
(i)異種ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現カセット、
(ii)SEQ ID NO:04の第1の核酸および選択マーカーをコードする第2の核酸を含む第2の発現カセットであって、第1の核酸が第2の核酸に機能的に連結している、発現カセット
を含む核酸を真核細胞にトランスフェクトする工程;
(b)トランスフェクトした細胞を、非トランスフェクト真核細胞の増殖に適した条件下で培養する工程;
(c)工程(b)において増殖し、かつ
(i)選択条件下で増殖するか、
(ii)選択マーカーを発現する
細胞を選択する工程。
【0056】
この方法に適した細胞は、たとえば、CHO細胞、BHK細胞、PER.C6(登録商標)細胞、HEK細胞、HeLa 細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、ミエローマ細胞、またはハイブリドーマ細胞である。一態様において、細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい態様において、細胞は、CHO細胞、BHK細胞、HEK細胞、Sp2/0細胞、PER.C6(登録商標)細胞より選択される。
【0057】
異種ポリペプチドは、たとえば、プロドラッグ、酵素、酵素断片、酵素阻害剤、酵素アクチベーター、生体活性ポリペプチド、ヘッジホッグタンパク質、骨形成タンパク質、増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、G-CSF、インターロイキン、インターフェロン、免疫グロブリン、抗膜融合性ペプチド、またはそれらの断片もしくはコンジュゲートのような、関心対象の任意の異種ポリペプチドであってよい。一態様において、異種ポリペプチドは、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、または免疫グロブリンコンジュゲートである。
【0058】
一態様において、本方法の工程(c)は、工程(b)において選択的培養条件下、すなわち選択物質の存在下で増殖する細胞を選択する工程である。別の態様において、方法の工程(c)は、工程(b)において増殖し、かつ第2の核酸によりコードされる選択マーカーを発現する細胞を選択する工程である。第1の態様は、トランスフェクトされていない細胞または選択マーカーをコードする第2の核酸を十分に発現していない細胞の増殖を阻害する選択物質の存在下で培養されたトランスフェクト細胞である。第2の態様は、選択物質の不在下で培養されたトランスフェクト細胞であり、選択は、選択マーカーの発現の検出、たとえばFACSまたは目視により行われる。
【0059】
細胞の選択は、単一の工程または複数の工程により実施することができる。単一/複数工程の過程において、第1の選択は、たとえば、dLNGFRまたはGFPのような選択マーカーの閾値レベルに基づいて実施される。たとえば、フローサイトメトリー(たとえば、FACS:蛍光活性化細胞選別)による選択においては、蛍光閾値レベルが設定され、この閾値レベルより上の蛍光度を有する細胞が選択される。あるいは、試料集団の蛍光強度が上位1〜15%(すなわち、最も顕著な検出レベルを有する、細胞の15%)、または上位1〜10%、または上位1〜5%、または上位5〜10%以内の細胞が収集されうる。細胞選択の別の方法は、たとえばプロテインAまたは特定の免疫グロブリンでコーティングした磁気ビーズへの免疫学的結合である。選択された細胞パネルは、たとえば、単離細胞の播種、培養、およびELISA(酵素結合免疫吸着測定法)分析による、限界希釈クローニングによる、数日間の培養による増殖およびさらなるFACS選択による、たとえば先のFACS選択で検出した蛍光強度に基づいてより高い閾値レベルを用いたさらなるFACS選択による、または免疫沈降法(たとえばWO 2005/020924を参照)による、さらなる選択工程のための基礎集団と見なしうる。本発明における細胞を選択する工程は、一態様において、フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降、免疫親和性カラムクロマトグラフィー、磁気ビーズ免疫親和性選別、顕微鏡に基づく単離法、または免疫学的結合より選択される方法によって実施することができる。別の態様において、本発明における細胞を選択する工程は、フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降、免疫親和性カラムクロマトグラフィー、磁気ビーズ免疫親和性選別、顕微鏡に基づく単離法、または免疫学的結合より選択される方法、それに続く、単離細胞の播種および培養、限界希釈、または培養による増殖により選択される方法、それに続く、FACS、免疫沈降、免疫親和性カラムクロマトグラフィー、磁気ビーズ免疫親和性選別、顕微鏡に基づく単離法、またはELISAより選択される方法によって実施することができる。
【0060】
この局面のさらなる局面は、本発明のプロモーターを異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結させることにより、細胞内で該異種ポリペプチドを発現するための方法である。この方法は、たとえば溶解度が低く、折りたたみ速度が遅い大きなタンパク質の発現に適している。異種ポリペプチドの発現量もしくは発現率の低下または核酸の転写量もしくは転写率の低下は、異種ポリペプチドまたは核酸が宿主細胞に対し不利な影響を及ぼすまたは機能的すなわち適切に折り畳まれた異種ポリペプチドの総生産収率を低減する場合、推奨される。したがって、本発明の1つの局面は、機能的でないすなわち適切に折り畳まれていないポリペプチドの割合が低下した、異種ポリペプチドの発現または産生である。宿主細胞で発現される異種ポリペプチドが、たとえば、重量、アミノ酸数、サブユニット数、二次修飾の数に関して一定量を超える場合、宿主細胞の培養後に、機能的でない形態、すなわち非活性または適切に折り畳まれていない形態が生じうると考えられる。この問題を回避する1つの可能性は、タンパク質の発現量、すなわち発現率を減少させることである。タンパク質発現は機能的に連結したプロモーターの強度によって制御されるため、本発明のプロモーターは適切である。
【0061】
したがって、本発明は、以下の工程をこの順番で含む、機能的でないポリペプチドの割合が低下した異種ポリペプチドを発現または産生するための方法を含む:
(a)哺乳動物細胞に、異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結したSEQ ID NO:02またはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04またはSEQ ID NO:06のプロモーターを含む発現カセットを含む核酸をトランスフェクトする工程;
(b)工程(a)でトランスフェクトした細胞を選択する工程;
(c)選択された細胞を、異種ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程;
(d)異種ポリペプチドを細胞または培養培地から回収する工程。
【0062】
本発明のこの局面の一態様において、哺乳動物細胞は、CHO細胞、BHK細胞、HEK細胞、Sp2/0 細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞である。この方法の一態様において、プロモーターはSEQ ID NO:03またはSEQ ID NO:04である。別の態様は、SEQ ID NO:04のプロモーターを有する。さらなる態様は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片または免疫グロブリンコンジュゲートをコードする異種ポリペプチドをコードする核酸である。さらに別の態様は、選択マーカーをコードする第2の発現カセットを含む核酸を含む。
【0063】
以下の実施例、配列表、および図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであって、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲により規定される。本発明の趣旨から逸脱しない限り、記載された手法に変更を加えてもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】プラスミド5500のプラスミドマップである。
【図2】プラスミド5501のプラスミドマップである。
【図3】プラスミド4703のプラスミドマップである。
【図4】プラスミド4712のプラスミドマップである。
【図5】プラスミド4713のプラスミドマップである。
【図6】以下をトランスフェクトしたHEK293EBNA細胞のdLNGFR発現のFACS分析である: (a)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:05の発現カセット、(b)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:04の発現カセット、(c)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:06の発現カセット。
【図7】以下をトランスフェクトしたHEK293EBNA細胞のGFP発現のFACS分析である: (a)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:05の発現カセット、(b)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:03の発現カセット、(c)SEQ ID NO:07に機能的に連結したSEQ ID NO:06の発現カセット。
【0065】
実施例1
SEQ ID NO:02の核酸の構築
SEQ ID NO:02の5’短縮SV40プロモーターを、dLNGFR (プラスミド4788)をコードする核酸に機能的に連結した全長SV40プロモーターをテンプレートとするPCR反応によって得た。PCR混合物は、MgSO4 2 mMを加えた1×PWO緩衝液(Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)、dNTP PCR Nucleotide Mix(Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany) 200 μM、SEQ ID NO:08のフォワードプライマー 1 μM、SEQ ID NO:13のリバースプライマー 1 μM、プラスミド4788のテンプレートDNA 50 ng、PWO-DNAポリメラーゼ (PWO = パイロコッカス・ヴェッセイ(Pyrococcus woesei); Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany) 2.5 U、および二回蒸留超純水 100 μLであった。PCR条件は、94℃で1分間を1サイクル;94℃で0.5分間を25サイクル;55℃で0.5分間を25サイクル;72℃で1分間を25サイクル;72℃で5分間を1サイクルであった。
【0066】
実施例2
SEQ ID NO:03の核酸の構築
SEQ ID NO:03の5’短縮SV40プロモーター変種を、プラスミド4788由来のdLNGFRをコードする核酸に機能的に連結した全長SV40プロモーターをテンプレートとするPCR反応によって得た。PCR混合物は、MgSO4 2 mMを加えた1×PWO緩衝液、dNTP PCR Nucleotide Mix 200 μM、SEQ ID NO:09のフォワードプライマー 1 μM、SEQ ID NO:13のリバースプライマー 1 μM、プラスミド4788のテンプレートDNA 50 ng、PWO-DNAポリメラーゼ 2.5 U、および二回蒸留超純水 100 μLであった。PCR条件は、94℃で1分間を1サイクル;94℃で0.5分間を25サイクル;55℃で0.5分間を25サイクル;72℃で1分間を25サイクル;72℃で5分間を1サイクルであった。
【0067】
実施例3
SEQ ID NO:04の核酸の構築
SEQ ID NO:04の5’短縮SV40プロモーター変種を、dLNGFR(プラスミド4788)をコードする核酸に機能的に連結した全長SV40プロモーターをテンプレートとするPCR反応によって得た。PCR混合物は、MgSO4 2 mMを加えた1×PWO緩衝液、dNTP PCR Nucleotide Mix 200 μM、SEQ ID NO:10のフォワードプライマー 1 μM、SEQ ID NO:13のリバースプライマー 1 μM、プラスミド4788のテンプレートDNA 50 ng、PWO-DNAポリメラーゼ 2.5 U、および二回蒸留超純水 100 μLであった。PCR条件は、94℃で1分間を1サイクル;94℃で0.5分間を25サイクル;55℃で0.5分間を25サイクル;72℃で1分間を25サイクル;72℃で5分間を1サイクルであった。
【0068】
実施例4
さらなるプロモーターの構築
さらなる5’短縮SV40プロモーター変種を、dLNGFRをコードする核酸に機能的に連結した全長SV40プロモーターをテンプレートとするPCR反応によって産生した。PCR混合物は、MgSO4 2 mMを加えた1×PWO緩衝液、dNTP PCR Nucleotide Mix 200 μM、SEQ ID NO:11(SEQ ID NO:06を生じる)またはSEQ ID NO:12のフォワードプライマー 1 μM、SEQ ID NO:13のリバースプライマー 1 μM、プラスミド4788のテンプレートDNA 50 ng、PWO-DNAポリメラーゼ 2.5 U、および二回蒸留超純水 100 μLであった。PCR条件は、94℃で1分間を1サイクル;94℃で0.5分間を25サイクル;55℃で0.5分間を25サイクル;72℃で1分間を25サイクル;72℃で5分間を1サイクルであった。
【0069】
実施例5
SEQ ID NO:02、03、04、および06に機能的に連結したdLNGFRの発現
SEQ ID NO:02、03、04、および06の核酸を得るプライマーは、制限エンドヌクレアーゼSalIおよびEcoRIの制限部位を含んだ。これらの制限部位/制限エンドヌクレアーゼを用いて、dLNGFR(LNGFR(低親和性神経成長因子)については、たとえばPhilipps, K., et al., Nat. Med. 2 (1996) 1154-1156; またはMachl, A.W., et al., Cytometry 29 (1997) 371-374を参照)をコードする核酸に機能的に連結したこれらの核酸を、制限部位SalIおよびPvuIIを用いて直線化されたプラスミド4736-pUC-DHFRにライゲーションした。結果として生じるプラスミドは以下のとおりである:
5500-pUC-DHFR_dLNGFR_wildtypeSV40(図1のプラスミドマップ)、
5501-pUC-DHFR_dLNGFR_Shortening_2 (図2のプラスミドマップ)、
5502-pUC-DHFR_dLNGFR_Shortening_3、
5503-pUC-DHFR_dLNGFR_Shortening_4、
5504-pUC-DHFR_dLNGFR_Shortening_6。
【0070】
HEK 293 EBNA細胞にこれらのプラスミドをトランスフェクトし、コードされたポリペプチドを一過性に発現させた。48時間後、dLNGFRの発現をFACSによって検証した。発現された表面マーカーdLNGFRを抗dLNGFR抗体により蛍光標識して、各種のプロモーターのプロモーター強度(発現強度)を決定した。
【0071】
それぞれの決定のために、約0.5x106 〜1.0x106 の細胞を、6ウェルあたり1 mlのAccutase(登録商標)(GIBCO Invitrogen, Karlsruhe, Germany)の添加によって分離した。分離した細胞をバイアルに移し、ウシ胎児血清 10 % (v/v)を加えたRPMI 1640 培養液で1回洗浄した。その後、その細胞を遠心分離(1,500 rpm、5分間)で沈殿させ、上清を廃棄した。以下の工程はすべて、氷浴上または氷浴中で0〜2℃で実施した。細胞ペレットを、抗dLNGFR抗体を30 μg/ml含む溶液100 μL中に再懸濁した。30分間のインキュベーション期間の後、氷冷RPMI 1640培養液2 mlを加えて試料を希釈し、続いて遠心分離により沈殿させた。ペレットを、二次抗体溶液、すなわちフィコエリスリン(Caltag Laboratories, Burlingame, CA, USA)にコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体 100 μL中に20 μg/mlの濃度で再懸濁した。この試料を、暗所の氷上で30分間インキュベートした。洗浄および遠心分離の工程の後、試料を培養液 500 μlに再懸濁し、測定まで暗所で氷上に保存した。FACSCaliburソフトウェア(Cell Quest Pro)を用いてFACS分析を評価した。結果は図6に示されている。
【0072】
FACS分析の結果:

【0073】
プラスミド5504から発現された標識dLNGFRの平均蛍光強度が、約85%減の有意な発現の減少を示すことを見出すことができる。
【0074】
実施例6
SEQ ID NO:02、03、04、および06に機能的に連結したGFPの発現
SEQ ID NO:02、03、04、および06の核酸を得るプライマーは、制限エンドヌクレアーゼSalIおよびEcoRIの制限部位を含んだ。これらの制限部位/制限エンドヌクレアーゼを用いて、GFPをコードする核酸(SEQ ID NO:07)に機能的に連結したこれらの核酸を、制限部位SalIおよびPvuIIを用いて直線化されたプラスミド4703-pUC-OriPにライゲーションした(図3)。結果として生じるプラスミドは以下のとおりである:
4712-pUC-Hyg_GFP_wildtypeSV40(図4のプラスミドマップ)、
4713-pUC-Hyg_GFP_Shortening_2(図5のプラスミドマップ)、
4714-pUC-Hyg_GFP_Shortening_3、
4715-pUC-Hyg_GFP_Shortening_4、
4716-pUC-Hyg_GFP_Shortening_6。
【0075】
それぞれの決定のために、約5x105 〜1x106 の細胞を、6ウェルあたり1 mlのAccutase(登録商標)(GIBCO Invitrogen, Karlsruhe, Germany)の添加によって分離した。分離した細胞をバイアルに移し、ウシ胎児血清 10 % (v/v)を加えたRPMI 1640 培養液 3 ml中に再懸濁した。その後、その細胞を遠心分離(1,500 rpm、5分間)で沈殿させ、上清を廃棄した。細胞ペレットを、培養液500 μl中に再懸濁した。ヨウ化プロピジウム1 μlを加えて、生細胞と死細胞を分別した。この細胞を、FACS測定の直前に再懸濁した。FACSCaliburソフトウェア(Cell Quest Pro)を用いてFACS分析を評価した。結果は図7に示されている。
【0076】
FACS分析の結果:

【0077】
プラスミド4714またはプラスミド4715から発現されたGFPの平均蛍光強度が、それぞれ約50%および75%減の有意な発現の減少を示すことを見出すことができる。プラスミド4716に関しては、検出可能なGFPの発現は見出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:04の核酸配列を有するプロモーター。
【請求項2】
SEQ ID NO:04の核酸からなり、かつSEQ ID NO:07の核酸に機能的に連結した場合にSEQ ID NO:05のSV40プロモーターの20%またはそれ未満のプロモーター強度を有することを特徴とする、核酸。
【請求項3】
SEQ ID NO:04の核酸の前にSEQ ID NO:14の核酸を含むことを特徴とする、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
シミアンウイルス40プロモーターのSEQ ID NO:14の第2の72bp反復配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の核酸。
【請求項5】
SV40プロモーターの第1の72bp反復配列が欠失しており、かつSV40プロモーターの第2の72bp反復配列が維持されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項記載の核酸。
【請求項6】
以下の工程を含むことを特徴とする、細胞を選択するための方法:
(a)
(i)異種ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の発現カセット、
(ii)SEQ ID NO:04の第1の核酸および選択マーカーをコードする第2の核酸を含む第2の発現カセットであって、第1および第2の核酸が機能的に連結している、第2の発現カセット
を含む核酸を真核細胞にトランスフェクトする工程;
(b)トランスフェクトされた細胞を、非トランスフェクト細胞の増殖に適した条件下で培養する工程;
(c)工程(b)で増殖する細胞を選択的培養条件下で選択する工程。
【請求項7】
工程(c)が、工程(b)で増殖する細胞を選択的培養条件下で選択する工程であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(c)が、工程(b)で増殖し、かつ第2の核酸によりコードされる選択マーカーを発現する細胞を選択する工程であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含むことを特徴とする、異種ポリペプチドを発現するための方法:
(a)真核細胞に、異種ポリペプチドをコードする第2の核酸に機能的に連結したSEQ ID NO:04の第1の核酸を含む発現カセットを含む核酸をトランスフェクトする工程;
(b)工程(a)でトランスフェクトした細胞を選択する工程;
(c)異種ポリペプチドの発現に適した条件下で、工程(b)で選択された細胞を培養する工程;
(d)細胞または培養培地から異種ポリペプチドを回収する工程。
【請求項10】
核酸が、選択マーカーをコードする第2の発現カセットを含むことを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
真核細胞が哺乳動物細胞であることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物細胞が、CHO細胞、BHK細胞、HEK細胞、Sp2/0細胞、またはPer.C6(登録商標)細胞であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物細胞がCHO細胞またはHEK細胞であることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
異種ポリペプチドが、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、または免疫グロブリンコンジュゲートであることを特徴とする、請求項6〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
選択マーカーが、ネオマイシンアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、またはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、またはdLNGFR、またはGFPであることを特徴とする、請求項6〜8および10〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
第1の核酸が請求項2記載の核酸であることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
第1の核酸が野生型SV40プロモーターの第2の72bp反復配列のみを含むことを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下を含むことを特徴とする、異種ポリペプチドを発現するための方法:
(i)選択マーカーをコードする核酸に機能的に連結した、野生型SV40プロモーターの第2の72bp反復配列を含むSEQ ID NO:04の核酸;
(ii)異種ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結したSEQ ID NO:05またはCMVプロモーターの核酸;
(iii)CHO細胞またはHEK細胞;
(iv)(iii)の細胞に(i)および(ii)の核酸をトランスフェクトする工程;
(v)(iv)でトランスフェクトされた細胞を選択物質の存在下で選択する工程;
(vi)(v)で選択された細胞を、(v)で使用された選択物質の非存在下、異種ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程;
(vii)培養培地または細胞から異種ポリペプチドを回収する工程。
【請求項19】
選択する工程が、フローサイトメトリー、ELISA、免疫沈降、免疫親和性カラムクロマトグラフィー、磁気ビーズ免疫親和性選別、顕微鏡に基づく単離法、または免疫学的結合より選択される方法によることを特徴とする、請求項6〜18のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−531647(P2010−531647A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513746(P2010−513746)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005135
【国際公開番号】WO2009/003622
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】