説明

プロリン誘導体

【課題】抗菌剤として有用な新規化合物の提供
【解決手段】
本発明は多剤耐性菌に対する抗菌剤として有用な下記式で表されるプロリン誘導体(I)およびその製造中間体等に関する。式(I)において、A環はベンゼン環と融合していることもある5〜6員の異項環基であり、R1およびR2は、H、置換されていてもよい低級アルキル基、5〜6員の飽和または不飽和の環状基(a)などであり、R3およびR4はB環のいずれかの位置に結合しており、Hまたは低級アルキル基などであり、n、mは1または2の整数であり、R5およびR6は、H、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、フェニル基などであり、XはC、S又はOであり、YはHまたはアミノ保護基であるか、下記式で表される基(b)であり、ここにおいてR7はアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり、R8はHまたはヒドロキシ保護基である。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬として有用な新規プロリン誘導体およびその製造中間体に関するものである。更に詳細には、本発明は、特に多剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有するプロリン誘導体またはその塩、その製造中間体、医薬ならびに薬学的組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
MRSAと略称されるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus)は、1961年に英国でその存在が初めて報告された難治性術後感染症、呼吸器や消化器における感染症の起因菌として知られている。MRSA感染症は、1960年代後半から1970年代の後半に欧米で流行し、日本では1980年代に院内感染の主要起因菌として世間の注目を集め、1990年代後半には全国的に蔓延した。現在、MRSAは、多剤に高度耐性化しており、MRSA感染症に対する抗菌剤であったバンコマイシン(Vancomycin)やアルベカシン(Arbekacin)に耐性の株も出現している。
【0003】
また、医療界において高い関心を集めている多剤耐性菌としては、前述のMRSAのほかにペニシリン耐性肺炎球菌(Penicillin-Resistant Streptococcus pneumoniae, PRSP)やバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-Resistant Enterococcus faecium, VRE)が知られている。肺炎球菌は、その毒性が強いことから恐れられている肺炎起因菌であり、腸球菌は、MRSAとともに臨床分離されることもある全身感染症および/または尿路感染症起因菌である。これらの多剤耐性菌による感染症に対しては、ニューキノロン系抗菌剤やオキサゾリジノン系抗菌剤などが使用されているが、これらの抗菌活性はそれほど強くなく、これらの抗菌剤に耐性な株の出現も報告されている。
【0004】
そこで、本発明者らは、これらの多剤耐性菌、殊にMRSAに対して強い抗菌力を有する化合物の探索をおこない、後述のプロリン誘導体を選択することに成功し、本発明を完成した。
【0005】
なお、WO99/39704号国際公開公報の請求の範囲の第1項には、次式で表される一般式が記載されている。
【0006】
【化5】

【0007】
後記本発明化合物を念頭において、前記(化5)における各置換基の定義を検討すれば本発明化合物にやや近い構造の化合物が想定できるが、後記本発明化合物のA環が存在しない点において本発明化合物とは相違する。この国際公開公報の明細書に具体的に記載されているプロリン誘導体としては、その実施例12に記載されている次の化合物Aだけである。
【0008】
【化6】

【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次式で表されるプロリン誘導体またはその塩に関するものである。
【0010】
【化7】

【0011】
(式中、A環は環構成原子として1〜4個のヘテロ原子を有し、ベンゼン環と融合していることもある5〜6員の異項環基である。
1およびR2は同一または異なって、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基、水素原子、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノカルボニル基(当該アミノ基は保護されているか、低級アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよい)、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキルスルホニルオキシ基またはシアノ基を意味するか、R1が水素原子であり、R2は5〜6員の飽和または不飽和の環状基(a)がA環と直接結合しているか、アミノ低級アルキレンもしくはオキシ低級アルキレンを介して結合しており、環状基(a)の構成原子としては1〜2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、低級アルキル基で置換されていることもある。
3およびR4は、B環上のいずれかの位置に結合しており、同一または異なって、水素原子または低級アルキル基であるか、両者が一緒になってオキソ基を形成していてもよい。
mは1または2の整数である。
5およびR6は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルキルオキシ基、保護されていてもよいアミノ基であるか、両者が一緒になって飽和環状基を形成していてもよい。
Xは炭素原子、イオウ原子または酸素原子であり、nは1または2の整数である。
Yは水素原子またはアミノ保護基であるか、次式で表される基(b)である。
【0012】
【化8】

ここにおいてR7はアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり、R8は水素原子またはヒドロキシ保護基である。)
【0013】
本発明化合物(I)は、主要構造を共通にするものの性格を異にするふたつのグループに分けられる。
第一のグループは、Yが水素原子またはアミノ保護基である次式(I―A)で表されるプロリン誘導体またはその塩である。
【0014】
【化9】

(式中、Wは水素原子またはアミノ保護基であり、その他の置換基または記号の定義は前述の定義と同じである。)
【0015】
第二のグループは、Yが式(b)で表されるプロリン誘導体(I−B)またはその塩である。
【0016】
【化10】

(式中、各記号および置換基の定義は前掲の定義と同じである。)
【0017】
化合物(I−A)は化合物(I−B)の製造中間体であり、化合物(I−B)は、抗菌作用、とりわけMRSAを始めとする多剤耐性菌に対して強い抗菌作用を有し抗菌剤として有用である。
【0018】
前記化合物(I−B)の構造上の特徴は、▲1▼A環が存在すること、▲2▼A環を含めて少なくとも3個の異項環基を有すること、▲3▼A環とB環とが直結していること、▲4▼N−ホルミル−N−ヒドロキシアミン部分を有すること、▲5▼置換基R7が存在すること、およびこれらの組み合わせに存在し、特に▲1▼▲2▼および▲3▼、なかんずく▲1▼が特徴の本質である。
【0019】
本発明(I−B)の内でも抗菌剤として好適な化合物は、次の一般式(I−C)で表されるプロリン誘導体またはその塩である。
【0020】
【化11】

【0021】
(式中、R1、R2およびR7の定義は前掲の定義と同じであり、A1環は1〜3個の二重結合を有する不飽和5〜6員単環異項環基であり、ここにおけるZ1、Z2、Z3およびZ4は同一または異なって、炭素原子、窒素原子、イオウ原子または酸素原子から選択される原子である。但し、Z1、Z2、Z3およびZ4のいずれか1個は非存在である場合もあり、R1およびR2は、A1環を構成するいずれかの炭素原子と結合しているものとする。)
【0022】
本発明化合物のうち抗菌剤として有用な化合物の具体例としては、後記実施例に記載の以下の化合物またはその塩が挙げられる。
【0023】
化合物(1):(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン;
【0024】
化合物(2):(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン;
【0025】
一般式(I−B)に含まれる具体的化合物としては、上記化合物の他にも以下の化合物およびその塩が例示できる。
【0026】
(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0027】
(2S)−1−{(2R)−3−シクロペンチル−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]プロピオニル]−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0028】
(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(5−ブロモまたはクロロ−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0029】
(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(5−ブロモまたはクロロ−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0030】
(2S)−1−{(2R)−3−シクロペンチル−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]プロピオニル}−2−{1−[4−(5−ブロモまたはクロロ−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0031】
(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(4−エチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0032】
(2S)−1−{(2R)−3−シクロペンチル−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]プロピオニル}−2−{1−[4−(4−エチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0033】
次に、各置換基や記号について説明する。
本発明化合物(I)におけるA環は、環構成原子として1〜4個のヘテロ原子を有し、ベンゼン環と融合していることもある5〜6員の異項環基である。ここにおけるヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、イオウ原子または酸素原子から選択され、少なくとも1個の窒素原子を含む場合が好適である。A環は、飽和であってもよいが、不飽和が好ましい。A環およびB環は、B環の窒素原子とA環の炭素原子との間の直接結合(以下、N−C結合)で結合しているのが好ましい。
【0034】
A環で示される5〜6員の異項環基の具体例としては、限定されることはないが、例えば、ピリジル、ピラニル、チエニル、フリル、ピロリルの如きヘテロ原子1個有する単環異項環基;ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルの如きヘテロ原子2個を有する単環異項環基;テトラゾリル、1,3,5−トリアジニル、1,2, 4−トリアジニル、テトラジニル、チアジアゾリルの如きヘテロ原子3−4個有する単環異項環基およびこれらの単環異項環基とベンゼン環が融合した融合異項環基が挙げられる。このような融合異項環基としては、例えばイソキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリルなどが挙げられる。
【0035】
A環で示されるこれらの5〜6員の異項環基の内でも、一般式(I−C)のA1環のようにN−C結合のC側の結合部位の隣にヘテロ原子たる窒素原子が存在する場合が、好適である。このような異項環基の最も好適な例としては、ピリミジニル、チアゾリル、ピラジニルが例示される。
【0036】
本発明化合物(I)における置換基R1またはR2は、A環のいずれの位置で置換していてもよいが、好ましくはA環上の炭素原子と結合する。R1およびR2に含まれるひとつの置換基として、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基がある。本明細書において「低級」なる用語は、特に断らない限り、この用語が付された基の炭化水素部分の炭素原子数が1〜6であることを意味する。「低級アルキル」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの直鎖状又は分岐状のものが挙げられる。また、「ハロゲン原子」なる用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。従って、「1〜3個のハロゲン原子で置換された低級アルキル基」としては、例えば、トリフルオロメチルが挙げられる。
【0037】
本明細書において、「低級アルコキシ」は、その低級アルキル部分が上記の意味を有する低級アルキルオキシ基であり、例えば、R1またはR2における低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。
【0038】
本明細書においては、「当該アミノ基は保護されている」、「保護されていてもよいアミノ基」または「アミノ保護基」なる用語が使用されているが、これらの用語はいずれも「アミノ基の保護基」に関する説明である。本明細書における「アミノ基の保護基」は、化学の分野、特にペプチド化学の分野において常用されるものが使用される。
【0039】
「アミノ基の保護基」としては、保護基を還元的に脱離できるものと加水分解的に脱離できるものとがある。還元的に脱離できる「アミノ基の保護基」としては、p−トルエンスルホニルの如きアリールスルホニル基;ベンジル、トリチル、ベンジルオキシメチルの如きフェニルまたはベンジルオキシによって置換されたメチル基;ベンジルオキシカルボニルやp−メトキシベンジルオキシカルボニルの如きアリールメトキシカルボニル;2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−ヨードエトキシカルボニルの如きハロゲノエトキシカルボニル基などがその例としてあげられる。一方、加水分解的に脱離できる「アミノ基の保護基」としては、エトキシカルボニルやBocと略称されるt−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、2−トシルエトキシカルボニルの如きオキシカルボニルを含む基;ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチルの如きアシル基などが挙げられ、このほかo−ニトロフェニルスルフェニル、トリメチルシリル、テトラヒドロピラニル、ジフェニルホスフィニルなどが例示される。
【0040】
同一分子内に2個のアミノ基が存在する場合は、一方は加水分解的に脱離できる「アミノ基の保護基」を、他方は還元的に脱離できる「アミノ基の保護基」を採用するのが得策である。例えば、R1またはR2における「アミノ基またはアミノカルボニル基(当該アミノ基は保護されている)」における「アミノ基の保護基」としては還元的に脱離できるものを採用し、Yのアミノ保護基として加水分解的に脱離できる「アミノ基の保護基」を選択するのが好ましい。
【0041】
2における「5〜6員の飽和または不飽和の環状基(a)」としては、限定されないが、フェニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピラジニル基、テトラヒドロフラニル基などが例示でき、これらの環状基(a)はメチルやエチルの如き低級アルキル基で置換されていることもある。これらの環状基(a)は、直接結合;アミノエチレンの如きアミノ低級アルキレン;オキシエチレンの如きオキシ低級アルキレンを介してA環と結合している。
【0042】
7として定義されているアルキル基は、その炭素数が2〜10であれば、直鎖状または分岐状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。好ましいアルキル基としては、炭素数5〜7、特に好ましくはn−ブチルまたはn−ペンチルである。また、R7として定義されている「シクロアルキル低級アルキル」におけるシクロアルキルとしては、炭素数4〜7個、好ましくは5または6個のものが例示される。従って、好適な「シクロアルキル低級アルキル」の具体例としては、シクロペンチルメチル基やシクロヘキシルメチル基などが挙げられる。
【0043】
8として定義されているヒドロキシ保護基としては、化学の分野において常用されるものであり、特に限定されないが、例えば、ベンジル、2,4−ジメトキシフェニルメチルがその例として挙げられる。これらのなかでも脱離の容易な2,4−ジメトキシフェニルメチルが好適である。
【0044】
本発明化合物(I)は、分子中の塩基性窒素原子と酸との間で酸付加塩を形成し得る。ここにおける酸付加塩としては、酒石酸、フマル酸、酢酸、乳酸、コハク酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、マロン酸、グルコン酸、アスパラギン酸の如きアミノ酸などの有機酸との塩または塩酸、リン酸などの無機酸との塩が挙げられる。また、本発明化合物のN−ホルミル−N−ヒドロキシアミン部分において、ナトリウムやカルシウムなどの金属塩を形成し得る。
【0045】
本発明化合物(I)は、ときとして水和物や溶媒和物として、更には、光学異性体、立体異性体またはこれらの混合物として存在しており、これらの総てが本発明に包含される。
【0046】
次に本発明化合物(I)の製造方法について説明する。本発明化合物は、例えば、次の(化12)で示される反応式に従って有利に製造される。(化12)においてW’はアミノ保護基であり、R8’はヒドロキシ基の保護基である。その他の置換基または記号の定義は前掲の定義と同じである。
【0047】
【化12】

【0048】
工程1は、化合物(1)と化合物(2)とを反応(アミド化反応)させて新規化合物(I−A−1)となす工程である。本工程はペプチド製造の常法に従って実施できる。例えば、本工程は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)の如き縮合剤および1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ルの如き反応促進剤の存在下、塩化メチレンの如き溶媒中において、両原料化合物を混合撹拌することにより実施できる。化合物(2)が酸付加塩を形成している場合にはトリエチルアミンの如き塩基の存在下に行うのが好ましい。本工程は−10℃〜45℃において1時間〜3日間行われる。
なお、化合物(1)は公知であり、化合物(2)も殆どが公知である。
【0049】
工程2は、工程1で製造された化合物(I−A−1)のアミノ保護基W’を脱離して化合物(I−A−2)となす工程である。脱離は、アミノ保護基W’の性格により還元的または加水分解的に行うことができる。通常は加水分解的、好ましくは酸分解により行うのが好適であり、酸分解に適したアミノ保護基W’を選択するのがよい。酸分解に適したW’としてはBocが好適である。酸分解によるアミノ保護基W’の脱離は、溶媒中、−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜室温において、化合物(I−A−1)と酸を接触させることにより実施できる。ここにおける酸としては塩化水素、トリフルオロ酢酸などが例示でき、溶媒としては酢酸エチル、1,4−ジオキサン、塩化メチレンなどが挙げられる。
かくして得られる化合物(I−A−2)は次の工程3の原料として使用される。
【0050】
工程3は、化合物(3)と前記化合物(I−A−2)とを工程1と同様に反応(アミド化反応)させて化合物(I−B−1)となすことにより実施できる。化合物(3)は、後記参考例に記載の方法またはこれに準じる方法により有利に製造できる。
【0051】
工程4は化合物(I―B−1)のヒドロキシ基の保護基R8’を酸分解により脱離して本発明化合物(I−B−2)となす工程である。本工程は塩化メチレンの如き溶媒中、化合物(I−B−1)にトリフルオロ酢酸の如き酸を−10℃〜45℃において1〜20時間作用させることにより実施できる。
【0052】
かくして製造される本発明化合物の置換基を別な置換基に変換することも適宜おこなわれる。例えば、R1、R2、R4またはR5に「アミノ基の保護基」、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基が存在するときは、これらをアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基に変換できる。また、光学異性体や立体異性体の混合物が得られた場合には、常法によりこれらを分離することもできる。生成物の精製は溶媒洗浄やシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより実施できる。
【0053】
次に製造実施例または参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の製造実施例または参考例は、シリーズB:中間体(I−A)の製造、シリーズC:原料(3)の製造およびシリーズD:本発明化合物(I−B)の製造から構成されている。
【0054】
一般式(I−B)に包含される本発明化合物はNMRによってその物性を明らかにしている。
【0055】
なお、以下の製造実施例において使用している略称は、次の通り定義される。
WSC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
THF:テトラヒドロフラン
Me:メチル
Et:エチル
n−Bu:n−ブチル
Boc:t−ブトキシカルボニル
Ph:フェニル
Ac:アセチル
【0056】
シリーズB:化合物(I−A)の製造
【0057】
実施例B−1::
(2S)−1−t−ブトキシカルボニル−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0058】
【化13】

【0059】
公知化合物4−メチル−2−(1−ピペラジニル)−チアゾール300mg(1.63mmol)、N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン333mg(1.55mmol)、WSC441mg(2.3mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物208mg(1.36mmol)及びジクロロメタン8mlからなる混合物を室温で一晩撹拌後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=170/1〜100/1)により精製して(2S)−1−t−ブトキシカルボニル−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン440mg(収率74%)を得た。
【0060】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 1.40(0.5×9H,s),1.46(0.5×9H,s),1.78−2.25(4H,m),2.26(3H,s),3.30−3.93(10H,m),4.53−4.73(1H,m),6.16(0.5×1H,s),6.19(0.5×1H,s)
【0061】
実施例B−2::
実施例B−1に記載の方法と同様にして(2S)−1−t−ブトキシカルボニル−2−{1−[4−(2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジンを得た。
【0062】
【化14】

【0063】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 1.40(0.4×9H,s),1.46(0.6×9H,s),1.80−2.33(4H,m),3.30−3.93(10H,m),4.51−4.55(1H,m),6.58−6.66(1H,m),7.16−7.25(1H,m).
【0064】
シリーズC:原料(3)の製造
【0065】
参考例C−1::
(2R)−N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサンアミド
【0066】
【化15】

【0067】
(1) 公知化合物(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(ベンジルオキシメチル)ヘキサノイル]−2−オキサゾリジノン240g(606mmol)に、5%Pd-C25.0g、エタノール1600mlを加え40℃に加温しながら、水素雰囲気下接触還元した。濾過して触媒を除去後、濾液を濃縮し固体残渣を得た。ヘキサン300mlを加えて一旦加温した後、攪拌しながら徐々に冷却した。濾過により結晶を集め、ヘキサンで洗浄し、乾燥することにより(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサノイル]−2−オキサゾリジノン177.9g(収率96%)を得た。
【0068】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.89(3H,t,J=7.0Hz),1.0−1.8(6H,m),2.15−2.3(1H,br.s),2.81(1H,dd,J=9.3,13.5Hz),3.30(1H,dd,J=3.3,13.4Hz),3.75−4.0(2H,m),4.1−4.3(2H,m),4.65−4.75(1H,m),7.1−7.5(5H,m).
【0069】
(2) 前項で得た化合物に、30〜35.5%過酸化水素水226ml、水350ml、THF1400mlを加えて、氷冷しながら水酸化リチウム1水和物48.9g(1.17mol)の水溶液(350ml)を滴下した後、室温下に2時間撹拌した。反応液へ氷冷しながら亜硫酸ナトリウム330gを1.5時間かけて加え、室温で3時間撹拌し、溶媒を留去した。得られた残渣に水を加えてクロロホルムで4回洗浄した後、濃塩酸にてpH4とし遊離した目的化合物を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去して(2R)−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサン酸78.2g(収率92%)を得た。
【0070】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.91(3H,t,J=7.0Hz),1.25−1.48(4H,m),1.48−1.77(2H,m),2.62(13H,quint,J=6.4Hz),3.80(2H,d,J=6.2Hz).
【0071】
(3) 前項で得た化合物 77.3g(529mmol)、公知化合物O−[(2,4−ジメトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン 119.7g(555mmol)及びピリジン750mlからなる混合物に、氷冷しながらWSC121.7g(635mmol)を加えた。室温下に一晩撹拌した後、反応液を減圧濃縮して得られた残渣に酢酸エチルを加えて、10%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して得られた油状粗製物172gに酢酸エチルとジイソプロピルエーテルの混合溶媒を加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を酢酸エチルとジイソプロピルエーテルの混合溶媒から再結晶して(2R)−N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサンアミドの119.7g(収率73%)を得た。
【0072】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.2−1.75(6H,m),2.0−2.6(1H,m),3.6−3.8(2H,m),3.81(3H,s),3.83(3H,s),4.77−5.0(2H,m),6.42−6.52(2H,m),7.1−7.35(1H,m).
【0073】
参考例C−2::
参考例C−1に記載の方法と同様にして表1の化合物を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
参考例C−3::
(2R)−2−[{N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]アミノ}メチル}ヘキサン酸
【0076】
【化16】

【0077】
(1) 参考例C−1で得た化合物128.2g(412mmol)にトリフェニルホスフィン118.8g(453mmol)、THF1200mlを加え氷冷し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート85.4ml(412mmol)を徐々に添加した。室温下に1時間撹拌後、反応液を減圧濃縮して得られた油状粗製物にジイソプロピルエーテルを加え、緩やかに撹拌し、析出した結晶を濾取した。この濾液を減圧濃縮し、得られた残渣にジイソプロピルエーテルとヘキサンの混合溶媒を加え、氷冷しながら緩やかに撹拌して、析出した結晶を濾取した。濾液を減圧濃縮し138.4gの粗製物を得た。
【0078】
(2) 前項で得た粗製物9.73g及びTHF−水(3:1)の混合溶媒120mlの混合物に水酸化リチウム1水和物1.58g(37.5mmol)を添加し、室温で一晩撹拌後、減圧下にTHFを留去した。残渣を酢酸エチルで洗浄した後、水層をHCl酸性とし、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して(2R)−2−[{N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]アミノ}メチル]ヘキサン酸 7.14g(2工程の収率79%)を得た。
【0079】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.89(3H,t,J=7.1Hz),1.25−1.4(6H,m),1.4−1.6(1H,m),1.63−1.8(1H,m),2.65−2.78(1H,m),3.02−3.18(2H,m),3.81(3H,s),3.82(3H,s),4.70(1H,d,J=11.0Hz),4.76(1H,d,J=11.0Hz),6.4−6.5(2H,m),7.18−7.23(1H,d−likem).
【0080】
参考例C−4::
参考例C−3に記載の方法と同様にして表2の化合物を得た。
【0081】
【表2】

【0082】
参考例C−5::
(2R)−2−[{N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]−N−ホルミルアミノ}メチル}ヘキサン酸
【0083】
【化17】

【0084】
参考例C−3で得た(2R)−2−[{N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]アミノ}メチル]ヘキサン酸 1.50g(4.8mmol)に、蟻酸エチル25ml(310mmol)を加え、24時間加熱還流した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/1)により精製して、目的とする(2R)−2−[{N−[(2,4−ジメトキシフェニル)メトキシ]−N−ホルミルアミノ}メチル]ヘキサン酸 1.35g(収率82%)を得た。
【0085】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.88(3H,t,J=7.0Hz),1.2−1.75(6H,m),2.75−3.0(1H,m),3.75−3.9(2H,m),3.81(3H,s),3.83(3H,s),4.7−5.0(2H,m),6.42−6.5(2H,m),7.1−7.2(1H,m),8.10(1H,br.s).
【0086】
参考例C−6::
参考例C−5に記載の方法と同様にして表3の化合物を得た。
【0087】
【表3】

【0088】
シリーズD:化合物(I−B)の製造
【0089】
実施例D−1::
(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン
【0090】
【化18】

【0091】
(1) 実施例B−1で得られた化合物440mg(1.15mmol)に酢酸エチル5ml及び4モル/1000mlのHCl1、4−ジオキサン溶液5mlを加え、室温で2時間撹拌後、減圧下に溶媒を留去して(2S)−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン2塩酸塩の粗製物を得た。
【0092】
(2) 前項で合成した粗製物にトリエチルアミン0.96ml(6.9mmol)及びジクロロメタン10mlを加え、参考例C−6で得られた化合物406mg(1.15mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物155mg(1.01mmol)及びWSC330mg(1.72mmol)を添加した。室温で一晩撹拌後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して得られた油状粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/1)により精製して(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン610mg(収率86%)を得た。
【0093】
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.87(3H,t,J=6.5Hz),1.17−2.17(13H,m),2.25(3H,s),2.80−3.82(12H,m),3.83(6H,s),4.66−5.03(3H,m),6.16(1H,s),6.47(2H,br.s),7.08−7.22(1H,br.),7.84(0.5×1H,s),8.11(0.5×1H,s).
【0094】
(3) 前項で合成した化合物にジクロロメタン7ml及び10%トリフルオロ酢酸ジクロロメタン溶液4mlを加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して得られた油状粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=25/1〜16/1)により精製して(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン321mg(収率69%)を得た。
【0095】
MS(m/z)466(MH+),
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ/ppm 0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.00−2.25(13H,m),2.25(3H,s),2.86−4.00(12H,m),4.33−4.97(1H,m),6.17(0.6×1H,s),6.18(0.4×1H,s),7.80(0.6×1H,s),8.34(0.4×1H,s).
【0096】
実施例D−2::
参考例C−5で得られた化合物を用い、実施例D−1に記載の方法と同様にして(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジンを得た。
【0097】
【化19】

【0098】
MS(m/z)438(MH+),
1H−NMR(300MHz,CD3OD):δ/ppm 0.93(3H,t,J=6.9Hz),1.20−2.73(11H,m),3.00−4.00(12H,m),4.80−5.10(1H,m),6.78(1H,d,J=3.7Hz),7.17(1H,d,J=3.7Hz),7.81(0.6×1H,s),7.90(0.4×1H,s).
【0099】
かくして得られる本発明化合物(I−B)は、優れた抗菌作用を有し、抗菌剤として有用である。
次に本発明化合物(I−B)の抗菌作用を掲載する。
【0100】
実験例 1:in vitroにおける抗菌活性(MIC:μg/ml):
The National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS)の定める標準法に準じて、最小発育阻止濃度(MIC:μg/ml)を測定し、表4の結果を得た。
【0101】
【表4】

【0102】
菌株A: Staphylococcus aureus Smith
菌株B: Staphylococcus aureus KT0116 (MRSA)*
菌株C: Staphylococcus aureus KT0150 (MRSA)*
菌株D: Staphylococcus aureus KT0130 (MRSA)*
菌株E: Staphylococcus aureus FDA 209P
菌株F: Staphylococcus aureus KMP9 (MRSA)*
菌株G: Staphylococcus epidermidis ATCC12228
菌株H: Streptococcus pneumoniae ATCC49619
菌株I: Streptococcus pneumoniae KT2524 (PRSP)*
菌株J: Streptococcus pneumoniae KB2534 (PRSP)*
菌株K: Streptococcus pyogenes ATCC12344
菌株L: Enterococcus faecium ATCC19434
菌株M: Moraxella (B.) catarrhalis K1209*,**
*本株は臨床分離株である。
**本株はグラム陰性菌であり、他はグラム陽性菌である。
【0103】
実験例 2:マウス全身感染症に対する効果:
マウス全身症に対する効果(ED50:mg/kg/dose)は、ICR系雄性マウス(体重約20g)に一匹あたり50%感染致死量の約50倍量の上記記載病原菌(A〜D)の生菌を腹腔内投与(ip)して感染せしめ、テスト化合物を生理食塩水に溶解したものを感染後1時間後および4時間後の2回皮下投与(sc)し、感染7日後のマウスの生存率からプロビット法により算出した。その結果を表5に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
上記表4及び表5に示すように本発明化合物は、極めて優れた抗菌活性を有した。しかも、その毒性も低い。従って、本発明化合物(I−B)またはその生理的に許容される塩は抗菌剤として有用である。
【0106】
本発明化合物(I−B)の投与量は、投与方法、症状、年齢などにより異なるが、通常、1日につき、体重60kg当たり約2〜5000mg、好ましくは約5〜500mg、特に好ましくは30〜300mgである。投与経路は、経口投与でもよいが、非経口投与、特に静脈内投与が推奨される。
【0107】
本発明化合物(I−B)は、製剤の形で投与されるのが一般的である。これらの製剤は、化合物(I−B)と製剤化成分とを配合することにより調製できる。例えば、非経口投与製剤たる液剤における製剤化成分としては、水、生理食塩水などの溶剤が必須の成分であり、このほか等張化剤、無痛化剤、pH調節剤、緩衝剤、保存剤などの補助成分が、適宜、配合される。
【0108】
注射剤(injection)の如き液剤は、化合物(I−B)を注射用生理食塩水などの溶剤に溶解し、所望により溶解の前もしくは後にその他の補助成分を配合することにより調製できる。凍結乾燥製剤は、このような液剤を凍結乾燥することにより調製でき、投与するとき再溶解される。
【0109】
【発明の効果】
本発明化合物(I−B)は、多剤耐性菌に対して優れた作用を有し、抗菌剤として有用である。また、本発明化合物(I−A)は化合物(I−B)の直接的な製造中間体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるプロリン誘導体またはその塩:
【化1】

(式中、A環は環構成原子として1〜4個のヘテロ原子を有し、ベンゼン環と融合していることもある5〜6員の異項環基である。
1およびR2は同一または異なって、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキル基、水素原子、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基もしくはアミノカルボニル基(当該アミノ基は保護されているか、低級アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよい)、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルカルボニルオキシ基、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよい低級アルキルスルホニルオキシ基、またはシアノ基を意味するか、R1が水素原子であり、R2は5〜6員の飽和または不飽和の環状基(a)がA環と直接結合しているか、アミノ低級アルキレンもしくはオキシ低級アルキレンを介して結合しており、環状基(a)の構成原子としては1〜2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、低級アルキル基で置換されていることもある。
3およびR4は、B環上のいずれかの位置に結合しており、同一または異なって、水素原子または低級アルキル基であるか、両者が一緒になってオキソ基を形成していてもよい。
mは1または2の整数である。
5およびR6は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルキルオキシ基、保護されていてもよいアミノ基であるか、両者が一緒になって飽和環状基を形成していてもよい。
Xは炭素原子、イオウ原子または酸素原子であり、nは1または2の整数である。
Yは水素原子またはアミノ保護基であるか、次式で表される基(b)である。
【化2】

ここにおいてR7はアルキル基またはシクロアルキル低級アルキル基であり、R8は水素原子またはヒドロキシ保護基である。)
【請求項2】
一般式(I−B)で表されるプロリン誘導体またはその塩:
【化3】

(式中、各記号および置換基の定義は請求項1記載の定義と同じである。)
【請求項3】
化合物が次式(I−C)で表される請求項2記載のプロリン誘導体またはその塩:
【化4】

(式中、R1、R2およびR7の定義は請求項1記載の定義と同じであり、A1環は1〜3個の二重結合を有する不飽和5〜6員単環異項環基であり、ここにおけるZ1、Z2、Z3およびZ4は同一または異なって、炭素原子、窒素原子、イオウ原子または酸素原子から選択される原子である。但し、Z1、Z2、Z3およびZ4のいずれか1個は非存在である場合もあり、R1およびR2は、A1環を構成するいずれかの炭素原子と結合しているものとする。)
【請求項4】
化合物が次のいずれかである請求項3記載のプロリン誘導体またはその塩:
化合物(1):(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘプタノイル}−2−{1−[4−(4−メチル−2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン;
化合物(2):(2S)−1−{(2R)−2−[(N−ホルミル−N−ヒドロキシアミノ)メチル]ヘキサノイル}−2−{1−[4−(2−チアゾリル)ピペラジニル]カルボニル}ピロリジン。

【公開番号】特開2006−52139(P2006−52139A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−339200(P2002−339200)
【出願日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】