説明

プローブ、プローブセット、プローブ担体及び検査方法

【課題】真菌の菌種ごとによる分類を目的に、同じ菌種は一括検出が可能で、しかも、他の菌種とは区別して検出できるようなプローブとそのプローブを固定した担体を提供する。
【解決手段】感染症起炎菌であるCandida kefyrのDNAを検出するための特定の塩基配列、ならびにそれらの変異配列の少なくとも一つを含んで構成されるオリゴヌクレオチドプローブ、およびこれを担体状に固定したマイクロアレイ、さらにこれらを用いた該DNAの検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染による疾患の原因菌の検出および同定に有用な感染症起炎菌由来のプローブ及びプローブセットならびにそれらを担体に固定したプローブ担体に関する。本発明は更に、このプローブ及びプローブセットを用いた感染症起炎菌DNAの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の病原真菌をより迅速かつ確実に検出するための試薬並びに方法が従来より提案されてきている。例えば特許文献1は、カンジダ症及びアスペルギルス症の起炎菌を検出するためのプローブ及びプライマーとして用い得る特定の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及びそれを用いた対象菌の検出方法が開示されている。また、同特許文献には、複数の対象菌を共通にPCRで増幅するためのプライマーセットが開示され、それを用いてサンプル中の複数の対象となる真菌をPCRで増幅した後、各菌に特異的な配列部分を各菌に固有のプローブを用いるハイブリダイゼーションアッセイで検出し、サンプル中の真菌の菌種を同定する方法も開示されている。
【0003】
一方、複数の異なる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを同時的に検出可能な方法として、当該塩基配列の各々に相補的な配列を有するプローブを固相上に隔離して配置したプローブアレイを用いる方法が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8-89254号公報
【特許文献2】特開2004-313181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、サンプル中に含まれる感染症起炎菌のDNAを特異的に検出するプローブを設定することは決して容易なことではない。即ち、サンプル中には、検出対象たる感染症起炎菌のDNAだけではなく、他の感染症起炎菌のDNAも存在している可能性がある。このような状況においても検出対象外の感染症起炎菌DNAの存在による影響(クロスコンタミネーション)を極力抑えつつ検出対象たる感染症起炎菌DNAを特異的に検出可能なプローブを設定することは、決して容易なことではないのである。このような状況の下、本願発明者らは、下記の感染症起炎菌を検出するためのプローブについての検討を行った。この検討の目的は、複数の菌のDNAが存在するサンプルからもクロスコンタミネーションをより低いレベルに抑えつつ当該感染症起炎菌DNAを精度良く検出することができるプローブを得ることにあった。その結果として当該感染症起炎菌DNAを精度良く検出可能なプローブの複数を得るに至った。
[菌名]
カンジダ・ケフィル(Candida kefyr)
本発明の第1の目的は、対象となる菌のDNAを正確に同定することのできるプローブ及びプローブセットを提供することを目的とする。
【0005】
また本発明の他の目的は、様々な菌が同時に存在しうる検体の中から、対象となる菌を正確に同定することのできるプローブ担体を提供することを目的とする。
【0006】
更にまた本発明の他の目的は、検体中に様々な菌が含まれている場合に、それらから対象となる菌を、より迅速に、且つより正確に検出することができる感染症起炎菌のDNA検査方法およびそのためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る感染症起炎菌であるカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAを検出するためのプローブは、下記の(1)乃至(5)のいずれか1つの塩基配列からなることを特徴とするプローブである。
(1) gcggccagttcttgattctctgc (配列番号1)またはその相補配列、
(2) agctcgtctctccagtggacataaac (配列番号2)またはその相補配列、
(3) ttgaaagtggctagccgttgcc (配列番号3)またはその相補配列、
(4) tcgtggtaagcttgggtcatagagac (配列番号4)またはその相補配列、
(5)配列番号1乃至4の配列またはこれらの相補配列のいずれか1つに、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ。
【0008】
また、本発明に係る感染症起炎菌であるカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAを検出するためのプローブセットは、下記の(A)乃至(P)のいずれかのプローブの2以上を含むことを特徴とするプローブセットである。
(A) gcggccagttcttgattctctgc (配列番号1)で表される塩基配列からなるプローブ、
(B) agctcgtctctccagtggacataaac (配列番号2)で表される塩基配列からなるプローブ、
(C) ttgaaagtggctagccgttgcc (配列番号3)で表される塩基配列からなるプローブ、
(D) tcgtggtaagcttgggtcatagagac (配列番号4)で表される塩基配列からなるプローブ、
(E)配列番号1の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(F)配列番号2の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(G)配列番号3の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(H)配列番号4の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(I)配列番号1の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(J)配列番号2の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(K)配列番号3の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(L)配列番号4の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(M)配列番号1の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(N)配列番号2の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(O)配列番号3の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(P)配列番号4の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ。
【0009】
本発明のプローブ担体は、上記の(A)乃至(P)のプローブの少なくとも1つが担体上に固定され、該固定されるプローブが複数の場合は各プローブが互いに隔離して配置されていることを特徴とするプローブ担体である。
【0010】
本発明にかかるプローブ担体を用いたサンプル中でのカンジダ・ケフィルのDNAの検出方法は、
(i)本発明にかかるプローブ担体とサンプルとを反応させる工程と、
(ii)前記サンプル中の核酸と反応した前記プローブ担体上のプローブの反応強度を検出する工程と、
を有することを特徴とするカンジダ・ケフィルのDNAの検出方法である。
【0011】
本発明の感染症起炎菌検出用のキットは、上記の(A)乃至(P)のプローブの少なくとも1つのプローブまたはこれらのプローブを1つ以上固定したプローブ担体と、プローブと標的核酸との反応を検出するための試薬と、を含むことを特徴とするカンジダ・ケフィルのDNA検出用のキットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検体が、上記に示した原因菌に感染している場合に、上記に示した菌以外の菌と同時に複合的に感染している場合であっても、該検体から上記に示した菌をより迅速かつ正確に同定することができる。特にクロスコンタミネーションの可能性のあるカンジダ属の他の種の菌ならびにトリコスポロン(Trichosporon)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、エピデルモフィトン(Epidermophyton)属、アルスロデルマ(Arthroderma)属およびトリコフィトン(Trichophyton)属の菌と精度良く区別してカンジダ・ケフィルの検出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明により、感染症の起炎菌同定の為のオリゴヌクレオチドプローブ(以下単にプローブという)及びその2以上の組み合わせからなるプローブセットが提供される。このプローブまたはプローブセットを用いることで以下に挙げる感染により炎症を引き起こす真菌の検出が可能となる。
[菌名]
Candida kefyr(カンジダ・ケフィル)
本発明のプローブは、上記の感染症起炎菌のITS(Internal transcribed spacer)領域のDNA配列そのもの、あるいはサンプルに含まれるITS領域に特有な塩基配列を有する核酸と反応し得るものであり、以下の各塩基配列からなるオリゴヌクレオチドそれぞれから選択される。
(A) gcggccagttcttgattctctgc (配列番号1)で表される塩基配列からなるプローブ、
(B) agctcgtctctccagtggacataaac (配列番号2)で表される塩基配列からなるプローブ、
(C) ttgaaagtggctagccgttgcc (配列番号3)で表される塩基配列からなるプローブ、
(D) tcgtggtaagcttgggtcatagagac (配列番号4)で表される塩基配列からなるプローブ、
(E)配列番号1の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(F)配列番号2の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(G)配列番号3の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(H)配列番号4の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(I)配列番号1の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(J)配列番号2の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(K)配列番号3の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(L)配列番号4の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(M)配列番号1の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(N)配列番号2の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(O)配列番号3の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(P)配列番号4の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ。
【0014】
これらのプローブの2つ以上を用いてプローブセットを構成することができる。本発明のプローブセットを用いることで、上記の感染症起炎菌DNAのITS領域を過不足なく検出することが可能となる。
【0015】
上記の変異配列は、プローブとしての機能を損なわない範囲内、すなわち、検出対象としての標的核酸配列にハイブリダイズしてこれを検出可能な範囲内での変異を有するものである。なかでも、ストリンジェントな条件で検出対象としての標的核酸配列にハイブリダイズし得る範囲での変異を有することが好ましい。変異の範囲を規定するハイブリダイゼーションの好ましい条件としては、後述する実施例における条件を挙げることができる。なお、ここでいう検出対象は、ハイブリダイゼーションを行うサンプル中に含まれるもので、感染症起炎菌に特有な塩基配列そのものであってもよいし、この特有な塩基配列の相補配列であってもよい。更に、かかる変異としては、1から数個の塩基の欠失、置換または付加がプローブ機能を保持する範囲内で行われた変異配列を挙げることができる。
【0016】
これらのプローブの機能は、検査対象としての標的核酸配列に対するプローブ配列の特異性に大きく依存している。プローブ配列の特異性は、標的核酸配列に対する塩基の一致度合と、標的核酸配列とプローブ配列との間の融解温度から、評価することが可能である。また、プローブがプローブセットを構成する場合は、他のプローブ配列の融解温度とのバラ付きも性能を左右する条件となる。
【0017】
これらのプローブ配列の設計にあたっては、同一種であれば異なる株であってもバラ付きの無いような当該菌種に対する特異性の高い領域が選択されている。また、当該菌種以外の菌種の配列とは3塩基以上の塩基の不一致箇所がある領域が選択されている。また、プローブ配列と当該菌種の配列との融解温度と、プローブ配列と当該菌種以外の菌種の配列との融解温度の差が、10℃以上となるように設計されている。さらに、同一の担体に固定するプローブのそれぞれの融解温度が一定の範囲内に納まるように、特異性の高い領域に塩基の削除あるいは追加を行って設計されている。
【0018】
本願の発明者らの実験によれば、プローブ配列のうち、連続した80%以上の配列が保存されている場合は、ハイブリダイゼーションの強度の減衰が少ないことが分かっている。このことから、本願により開示しているプローブ配列のうち連続して80%以上の塩基配列が保存されている変異配列であれば、プローブの機能は損なわないといえる。
【0019】
これらのプローブ配列は、当該菌のITS領域のDNA配列に特異的であるため、十分なハイブリダイゼーション感度が期待される。また、これらのプローブ配列は、担体上に固定した状態であっても、対象となるサンプルとのハイブリダイゼーション反応において、安定なハイブリッド体を形成し、良好な結果が得られるように設計されている。また、これらの各プローブは、担体上に固定されるそれぞれのプローブの融解温度が一定の範囲内に収まるように設計されている。
【0020】
また、これらのプローブ配列は、ITS領域全体の配列を決定することなく、特徴的な複数の部分を組み合わせることで、菌種の判定が可能であるように設計されている。
【0021】
さらに、本発明にかかる感染症起炎菌検出用プローブが固定されたプローブ担体(例えばDNAチップ)は、担体の所定位置にプローブを供給し、固定することにより得ることができる。担体へのプローブの供給には、種々の方法が利用できる。例えば、プローブが化学的結合(共有結合など)により担体に固定可能とし、これを含む液体をインクジェット法により担体の所定位置に付与する方法が好適に利用できる。これにより、プローブが担体から剥がれにくくなるうえ、感度が向上するという付帯的な効果も得られる。つまり、従来、一般的に用いられるスタンフォード法と呼ばれるスタンピング法によりDNAチップを作製した場合、塗布したDNAが剥がれやすい場合があるという欠点があった。また、DNAチップの作製方法としては、担体表面上でのDNA合成によりプローブを配置する方法がある(例えば、Affymetrixのオリゴヌクレオチドアレイ等)。この担体上でプローブを合成する方法では、各プローブ配列の合成収量が異なる為に、各プローブの固定領域(スポット)ごとにプローブの固定量が大幅に異なる場合が生じる。そのような各プローブの固定量にバラツキがあると、それを用いた検出結果に対する正確な評価ができない場合が生じる。このような観点から、本発明にかかるプローブ担体は、上述したインクジェット法を利用して作製されることが好ましい。上述したインクジェット法によれば、プローブが担体に安定に固定されは剥がれにくく、高感度と高精度の検出ができるプローブ担体を効率良く提供できるという利点がある。
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0023】
本明細書中で使用されている用語について以下に説明する。
「検体」とは、検査の対象として取得したものを示す。「試料」とは、検体を調整するなどして、DNAや核酸断片を含む状態にしたものを示す。「サンプル」とは、プローブと反応させる対象を示す。検体を直接プローブと反応させる場合には、「サンプル」には検体が含まれ、検体を調整した試料をプローブと反応させる場合には、「サンプル」には試料が含まれる。
【0024】
本発明のプローブを担体に固定したプローブ担体(例えば、DNAチップ)を用いた検査対象としての検体には、ヒト、家畜等の動物由来のものがある。例えば、血液、髄液、喀痰、胃液、膣分泌物、口腔内粘液等の体液、皮膚、爪、毛髪等の組織、尿及び糞便のような排出物など細菌が存在すると思われるあらゆる物が検査対象となる。また、食中毒、汚染の対象となる食品、飲料水及び温泉水のような環境中の水等、または空気清浄器等のフィルタなど、細菌による汚染が引き起こされる可能性のある媒体全てが検出対象として挙げられる。さらに、輸出入時における検疫等の動植物も検査の対象となる。
【0025】
上記のような検体がDNAチップとの反応にそのまま利用できる場合には、それをサンプルとしてDNAチップと反応させて、その結果を分析する。また、検体をそのままDNAチップと反応させることができない場合には、標的物質の抽出、精製などの必要に応じた処理を検体に行って得た試料をサンプルとしてDNAチップと反応させる。例えば、標的核酸が検体に含まれている場合にこれを含むと想定される抽出物画分を検体から調製し、更に必要に応じて洗浄や希釈などの処理を行って得た試料をサンプルとし、これをDNAチップと反応させてもよい。更に、PCR増幅処理などを含む各種の増幅処理を行って標的核酸が検体に含まれている場合にこれを増幅してDNAチップと反応させるサンプルとしてもよい。このような増幅核酸試料には、以下のものがある。
(a)ITS領域検出用に設計されたPCR反応用プライマーを用いて調製された増幅試料。
(b)PCR増幅物を元にさらにPCR反応等を行って調製された試料。
(c)PCR以外の増幅方法により調製された試料。
(d)可視化のために各種標識法により標識された試料。
【0026】
また、DNAチップなどのプローブ担体の調製に用いられる担体としては、目的とする固相−液相反応を行うことができる特性を満たすものであればよい。例えば、ガラス基板、プラスチック基板、シリコンウェハー等の平面基板、凹凸のある三次元構造体、ビーズのような球状のもの、棒状、紐状、糸状のもの等を担体として用いることができる。さらに、その担体の表面をプローブの固定化が可能なように処理されたものであってもよい。特に、表面に化学反応が可能となるように官能基を導入したものは、ハイブリダイゼーション反応の過程でプローブが安定に結合している為に、再現性の点で好ましい形態である。
【0027】
プローブの固定化には種々の方法が利用できる。例えば、マレイミド基とチオール(-SH)基との組み合わせを用いる方法が挙げられる。この方法では、プローブの末端にチオール(-SH)基を結合させておき、担体(固相)表面がマレイミド基を有するように処理しておく。これにより、担体表面に供給されたプローブのチオール基と担体表面のマレイミド基とが反応して共有結合が形成されプローブが固定化される。
【0028】
マレイミド基の導入には、まず、ガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次にそのアミノ基とEMCS試薬(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)との反応によりマレイミド基を導入する方法が利用できる。DNAへのチオール(-SH)基の導入は、DNA自動合成機上5'-Thiol-Modifier C6(Glen Research社製)を用いることにより行うことができる。固定化に利用する官能基の組み合わせとしては、上記したチオール基とマレイミド基の組み合わせ以外にも、例えばエポキシ基(固相上)とアミノ基(核酸プローブ末端)の組み合わせ等が挙げられる。また、各種シランカップリング剤による表面処理も有効であり、該シランカップリング剤により導入された官能基と反応可能な官能基を導入したオリゴヌクレオチドが用いられる。さらに、官能基を有する樹脂をコーティングする方法も利用可能である。
【0029】
本発明にかかるプローブ担体を用いた感染症起炎菌DNAの検出は、少なくとも以下の工程(i)及び(ii)を有するDNA検出方法により行うことができる。
(i)本発明にかかるプローブ担体とサンプルを反応させる工程。
(ii)プローブ担体上のプローブとサンプル中の核酸との反応強度を検出する工程。
【0030】
更に、少なくとも以下の(a)〜(c)の工程を有する検出方法とすることもできる。
(a)本発明にかかるプローブを固定したプローブ担体とサンプルとを反応させる工程。
(b)プローブ担体上のプローブとサンプル中の核酸との反応強度を検出する工程。
(c)プローブとサンプル中の核酸の反応が検出される場合に、サンプル中の核酸と反応したプローブを特定し、プローブの塩基配列に基づいてサンプル中に含まれる感染症起炎菌DNAを特定する工程。
【0031】
プローブ担体に固定するプローブは、先に挙げた(A)乃至(P)の少なくとも1種であり、担体には検査目的に応じてその他のプローブ(Candida kefyr以外の菌種を検出するためのプローブ)が固定されていてもよい。この場合、その他のプローブとしてCandida kefyr以外の菌種をクロスコンタミネーションを起こすことなく検出可能なプローブを用いることで複数菌種の精度良い同時検出が可能となる。
【0032】
先に述べたとおり、検体中に含まれる感染症起炎菌DNA配列上のITS領域の塩基配列をPCRで増幅させてこれをプローブ担体と反応させるサンプルとする場合には、感染症起炎菌の検出用プライマーセットを用いることができる。このプライマーセットとしては以下の公知の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドをプライマーとして含むものが好適である。
(1)5' tccgtaggtgaacctgcgg 3' (ITS1;配列番号5)
(2)5' tcctccgcttattgatatgc 3' (ITS4;配列番号6)
よって、本発明の検出方法では、上記(1)及び(2)の夫々の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして含むプライマーセットを用いて、前記検体中の標的核酸をPCR増幅する工程を更に有していてもよい。
【0033】
以上説明したプローブと、サンプル中の核酸とプローブとの反応を検出するための試薬とを少なくとも用いて感染症起炎菌DNA検出用のキットを構成することができる。このキットにおけるプローブは上述したプローブ担体として提供してもよい。また、検出用試薬には、反応を検出するための標識や、前処理としての増幅を行う場合のプライマーが含まれてもよい。検出用試薬にプライマーを含む場合は、プライマーはCandida kefyrのITS領域のDNAを増幅するためのプライマーで構成されるものが好適である。更に、検出用試薬としてCandida kefyr以外の感染症起炎菌の当該領域DNAを増幅するためのプライマーを、Candida kefyrの当該領域DNAを増幅するためのプライマーとともに含む構成とすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、感染症起炎菌検出用プローブを用いた実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
(実施例1) DNAチップの作製
以下の実施例では、本発明のプローブを固定したDNAチップの作製について説明する。
【0036】
[1.プローブDNAの準備]
真菌検出用プローブとして表1に示す核酸配列を設計した。具体的には、表1中に示す真菌DNA上のITS領域部分より、以下に示したプローブ塩基配列を選んだ。これらのプローブ塩基配列群は、当該菌に対し非常に特異性が高く、十分かつそれぞれのプローブ塩基配列でばらつきのないハイブリダイゼーション感度が期待できるように設計されている。なお、表1に示す各プローブ塩基配列はこれに完全に一致したものに限定される必要はなく、該各プローブ塩基配列を含む20から30程度の塩基長を有するプローブ塩基配列も表1に示す各プローブ塩基配列に含まれるものとする。この場合、表1で規定される塩基配列以外の部分については検出精度に影響のない塩基配列を有していることが必要である。
【0037】
【表1】

【0038】
表1中に示したプローブには、DNAチップに固定するための官能基として、合成後、定法に従って核酸の5'末端にチオール基を導入した。官能基の導入後、精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥したプローブは、-30℃の冷凍庫に保存した。
【0039】
[2.PCRプライマーの準備]
[2-1.検体増幅用PCRプライマーの準備]
起炎菌検出用の為のDNA上のITS領域増幅用PCRプライマーとして既知のプライマーを利用する。既知のプライマーについて、表2に示す。具体的には、DNA上のITS領域部分を特異的に増幅するプライマーセットで、菌種が異なっても同時に増幅することができるように、真菌に共通する領域から設計されている公知のプライマーセットである。
【0040】
【表2】

【0041】
上記表2中に示したプライマーは、合成後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、それぞれのプライマー濃度が、最終濃度10pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解した。
【0042】
[2-2.標識用PCRプライマーの準備]
上述の検体増幅用のプライマーのReverse Primerに標識を導入し、標識用のプライマーとした。標識用プライマーについて、表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3中に示したプライマーには、蛍光色素としてCy3を用いて、標識を行った。
【0045】
合成後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、標識プライマー濃度が、最終濃度10pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解した。
【0046】
[3.DNAチップの作製]
[3-1.ガラス基板の洗浄]
合成石英のガラス基板(サイズ:25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて基板を取り出し、軽く純水ですすいだ後、超純水中で20分超音波洗浄をおこなった。次に80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間基板を浸した。再び純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の石英ガラス基板を用意した。
【0047】
[3-2.表面処理]
シランカップリング剤KBM-603(信越シリコーン社製)を、1重量(wt)%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、先に洗浄したガラス基板をシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、窒素ガスを基板の両面に吹き付けて乾燥させた。次に乾燥した基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させ、基板表面にアミノ基を導入した。次いで、N-マレイミドカプロイロキシスクシイミド(以下EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合(容量比)溶媒中に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。EMCSは、同仁化学研究所社製のN-マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimido)である。
【0048】
ベークの終了したガラス基板を放冷し、調製したEMCS溶液中に室温で2時間浸した。この処理により、シランカップリング剤によって表面に導入されたアミノ基とEMCSのスクシイミド基が反応し、ガラス基板表面にマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げたガラス基板を、先述のEMCSを溶解した混合溶媒を用いて洗浄し、さらにエタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
【0049】
[3-3.プローブDNA]
実施例1の[1.プローブDNAの準備]で作製した微生物検出用プローブを純水に溶解し、それぞれ、最終濃度(インク溶解時)10μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
【0050】
[3-4.BJプリンタによるDNA吐出、および基板への結合]
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、先に用意した4種類のプローブ(表1)の夫々を上記の混合溶媒に規定濃度なるように溶解した。得られたDNA溶液をインクジェットプリンタ(商品名:BJF-850 キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
【0051】
なおここで用いたインクジェットプリンタは平板への印刷が可能なように改造を施したものである。またこのインクジェットプリンタは、所定のファイル作製方法に従って印字パターンを入力することにより、約5ピコリットルのDNA溶液を約120μmピッチでスポッティングすることが可能となっている。
【0052】
続いて、この改造インクジェットプリンタを用いて、1枚のガラス基板に対して、印字操作を行い、アレイを作製した。印字が確実に行われていることを確認した後、30分間加湿チャンバー内に静置し、ガラス基板表面のマレイミド基と核酸プローブ末端のチオール基とを反応させた。
【0053】
[3-5.洗浄]
30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により表面に残ったDNA溶液を洗い流し、ガラス基板表面に一本鎖DNAが固定したDNAチップを得た。
【0054】
(実施例2) Candida kefyrの検出
以下の実施例では、2 Step PCR法を用いた微生物の検出について説明する。
【0055】
[1. Candida kefyr DNA(モデル検体)の抽出]
[1-1. 微生物の培養とDNA抽出]
まず、Candida kefyr標準株(ATCC 42265)を、定法に従って培養した。この微生物培養液から、核酸精製キット(FastPrep FP100A・FastDNA Kit:フナコシ株式会社製)を用いて、DNAの抽出と精製を行った。
【0056】
[1-2. 回収したDNAの検査]
回収された微生物(Candida kefyr)のDNAは、定法に従って、アガロース電気泳動と260/280nmの吸光度測定を行い、その品質(低分子核酸の混入量、分解の程度)と回収量を検定した。本実施例では、約10μgのDNAが回収され、DNAのデグラデーションやribosomal RNAの混入は認められなかった。回収したDNAは、最終濃度が50ng/μlとなるようにTE緩衝液に溶解し、以下の実施例に使用した。
【0057】
[2.検体の増幅と標識化]
[2-1.検体の増幅:1st PCR]
検体となる微生物DNAの増幅(1st PCR)反応を以下の表4に示す。増幅反応に際しては、前記(実施例1)の[2-1.検体増幅用PCRプライマーの準備]に示したプライマーセットを用いる。
【0058】
【表4】

【0059】
上記組成の反応液を図1に示すプロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーで増幅反応を行った。
【0060】
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した後、増幅産物の定量を行った。
【0061】
[2-2.標識化反応:2nd PCR]
表5の組成の反応液を以下の図2に示すプロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーで増幅反応を行った。標識化反応に際しては、前記(実施例1)の[2-2.標識用PCRプライマーの準備]に示した標識化プライマーを用いる。
【0062】
【表5】

【0063】
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製し、標識化検体とした。
【0064】
[3.ハイブリダイゼーション]
上述の(実施例1)における[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップと(実施例2)の[2.検体の増幅と標識化]で作製した標識化検体を用いて検出反応を行った。
【0065】
[3-1.DNAチップのブロッキング]
BSA(牛血清アルブミンFraction V:Sigma社製)を1wt%となるように100mM NaCl/10mM Phosphate Bufferに溶解した。次に、この溶液に(実施例1)[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップを室温で2時間浸し、ブロッキングを行った。ブロッキング終了後、以下の洗浄液で洗浄を行った後、純水でリンスしてからスピンドライ装置で水切りを行った。
洗浄液:
0.1wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む2×SSC溶液(NaCl 300mM 、Sodium Citrate (trisodium citrate dihydrate, C6H5Na3・2H2O) 30mM、pH7.0)
[3-2.ハイブリダイゼーション]
水切りしたDNAチップをハイブリダイゼーション装置(Genomic Solutions Inc. Hybridization Station)にセットし、以下の表6に示すハイブリダイゼーション溶液を用いて、図3に示すプロトコールに従いハイブリダイゼーション反応を行った。
【0066】
【表6】

【0067】
[4.微生物の検出(蛍光測定)]
上記ハイブリダイゼーション反応終了後のDNAチップをDNAチップ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて蛍光測定を行った。その結果、再現性良く、十分なシグナルでCandida kefyrを検出することができた。
以下の表7にCandida kefyrの測定結果を示す。
【0068】
【表7】

【0069】
上記表7に示すように、表1に示すCandida kefyr用の第1〜第4プローブにおいて、特異的なハイブリダイゼーションが見られ、微生物培養液中からのDNA抽出物中にCandida kefyrのDNAのITS領域と同じ配列を持つ核酸配列があることが確認できた。
【0070】
[5.結果]
以上に説明したように、上記実施例によれば、Candida kefyrを検出可能なプローブセットを固定したDNAチップを作製することができた。更に、このDNAチップを用いて、感染症起炎菌を同定することが可能になり、微生物由来のDNAプローブの問題を解決した。すなわち、オリゴヌクレオチドプローブは化学的に大量合成が可能であり、精製や濃度のコントロールが可能である。また、微生物の種による分類を目的に、同じ種は一括検出が可能なプローブセットが提供できた。
【0071】
また、上記実施形態によれば、感染症起炎菌DNAのITS領域の塩基配列を過不足なく検出することにより、該感染症起炎菌の存在を効率良く、また高い精度で判定することができる。
【0072】
(実施例3) 他の真菌による実験
以下の実施例では、(実施例1)にて作製したDNAチップを用いた時に、Candida kefyr以外の菌では強いハイブリダイゼーションが検出されないことを説明する。
【0073】
[1.DNA(モデル検体)の抽出]
[1-1.微生物の培養とDNA抽出]
(実施例2)と同様に、以下に示す真菌株の培養を行ない、DNAの抽出と精製を行った。菌名の後の()内には、株名を示す。
Candida albicans(JCM1542)
Candida dubliniensis(ATCC MYA-646)
Candida glabrata(JCM 3761)
Candida guilliermondii(ATCC 6260)
Candida intermedia(ATCC 14439)
Candida krusei(JCM 1609)
Candida lusitaniae(ATCC 34449)
Candida parapsilosis(JCM 1618)
Candida tropicalis(JCM 1541)
Trichosporon cutaneum(JCM 1462)
Trichosporon asahii(JCM 1809)
Cryptococcus neoformans(ATCC 32045)
Aspergillus fumigatus(JCM 10253)
Aspergillus niger(JCM 10254)
Epidermophyton floccosum(ATCC 52063)
Arthroderma otae(ATCC 28327)
Arthroderma gypseum(ATCC 24163)
Arthroderma benhamiae(ATCC 16781)
Trichophyton rubrum(ATCC 10218)
Trichophyton tonsurans(ATCC 10217)
Trichophyton verrucosum(ATCC 28203)
Trichophyton violaceum(ATCC 28944)
Arthroderma vanbreuseghemii(ATCC 28145)
Arthroderma incurvatum(ATCC 24005)
Trichophyton interdigitale( IFM 55365 )
[1-2. 回収したDNAの検査]
回収されたそれぞれの真菌のDNAは、実施例2に記載のように、回収量を検定した。回収したDNAは、最終濃度50ng/μlとなるようにTE緩衝液に溶解し、以下の実施例に使用した。
【0074】
[2. 検体の増幅と標識化]
[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]
検体となる微生物DNAの増幅反応を、前述の(実施例2)における[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]と同様の要領で行う。
【0075】
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した後、増幅産物の定量を行った。
【0076】
[2-2. 標識化反応: 2nd PCR]
前記[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]にて得た増幅産物を用いて、前述の(実施例2)における[2-2. 標識化反応: 2nd PCR]と同様の要領で、標識化反応を行う。
【0077】
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製し、標識化検体とした。
【0078】
[3. ハイブリダイゼーション]
上述の(実施例1)における[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップと、前記[2.検体の増幅と標識化]で作製した標識化検体を用いて、上述(実施例2)[3. ハイブリダイゼーション]と同様の要領にて、検出反応を行った。
【0079】
[4. 微生物の検出(蛍光測定)]
上述の(実施例2)における[4. 微生物の検出(蛍光測定)]と同様の要領にて、蛍光測定を行った。以下の表8から表32に、それぞれの真菌種ごとの測定結果を示す。
【0080】
【表8】

【0081】
上記表8に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0082】
【表9】

【0083】
上記表9に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0084】
【表10】

【0085】
上記表10に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいて特異的なハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0086】
【表11】

【0087】
上記表11に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいて特異的なハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0088】
【表12】

【0089】
上記表12に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0090】
【表13】

【0091】
上記表13に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0092】
【表14】

【0093】
上記表14に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0094】
【表15】

【0095】
上記表15に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0096】
【表16】

【0097】
上記表16に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0098】
【表17】

【0099】
上記表17に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0100】
【表18】

【0101】
上記表18に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0102】
【表19】

【0103】
上記表19に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0104】
【表20】

【0105】
上記表20に示すように、表1に示す表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0106】
【表21】

【0107】
上記表21に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0108】
【表22】

【0109】
上記表22に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0110】
【表23】

【0111】
上記表23に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0112】
【表24】

【0113】
上記表24に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0114】
【表25】

【0115】
上記表25に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0116】
【表26】

【0117】
上記表26に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0118】
【表27】

【0119】
上記表27に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0120】
【表28】

【0121】
上記表28に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0122】
【表29】

【0123】
上記表29に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0124】
【表30】

【0125】
上記表30に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0126】
【表31】

【0127】
上記表31に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0128】
【表32】

【0129】
上記表32に示すように、表1に示すCandida kefyr用のプローブセットにおいては、上記表7の実験結果と比較して、すべてのプローブにおいてハイブリダイゼーションが起きていないという結果となった。
【0130】
以上に説明したように、表8〜32によればCandida kefyr以外の菌が間違って検出される可能性が低いCandida kefyr用のプローブセットを固定したDNAチップを作製することができた。このDNAチップを用いて、Candida kefyrが検出可能で、しかも、他の種の菌は区別して検出できるようなプローブセットが提供できた。更に、実施例1で作製したDNAチップでは、Candida kefyrにのみ特異的にハイブリダイズし、他の菌種にはハイブリダイズしないことを説明した。このことから、実施例1に説明したCandida kefyr用のプローブと同様の思想で設計された他の菌種用のプローブとを組み合わせて作製したDNAチップにおいて、Candida kefyrの検出のみでなく、Candida kefyrと他の菌種とが混在する検体においても、Candida kefyrを選択的に検出できるプローブセットを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】1st PCRのプロトコールを説明する図である。
【図2】2nd PCRのプロトコールを説明する図である。
【図3】ハイブリダイゼーションのプロトコールを説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症起炎菌であるカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAを検出するためのプローブであって、下記の(1)乃至(5)のいずれか1つの塩基配列からなることを特徴とするプローブ。
(1) gcggccagttcttgattctctgc (配列番号1)またはその相補配列、
(2) agctcgtctctccagtggacataaac (配列番号2)またはその相補配列、
(3) ttgaaagtggctagccgttgcc (配列番号3)またはその相補配列、
(4) tcgtggtaagcttgggtcatagagac (配列番号4)またはその相補配列、
(5)配列番号1乃至4の配列またはこれらの相補配列のいずれか1つに、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ。
【請求項2】
感染症起炎菌であるカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAを検出するためのプローブセットであって、下記の(A)乃至(P)のいずれかのプローブの2以上を含むことを特徴とするプローブセット。
(A) gcggccagttcttgattctctgc (配列番号1)で表される塩基配列からなるプローブ、
(B) agctcgtctctccagtggacataaac (配列番号2)で表される塩基配列からなるプローブ、
(C) ttgaaagtggctagccgttgcc (配列番号3)で表される塩基配列からなるプローブ、
(D) tcgtggtaagcttgggtcatagagac (配列番号4)で表される塩基配列からなるプローブ、
(E)配列番号1の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(F)配列番号2の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(G)配列番号3の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(H)配列番号4の塩基配列の相補配列からなるプローブ、
(I)配列番号1の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(J)配列番号2の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(K)配列番号3の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(L)配列番号4の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(M)配列番号1の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(N)配列番号2の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(O)配列番号3の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ、
(P)配列番号4の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列からなるプローブ。
【請求項3】
請求項1に記載のプローブまたは請求項2に記載のプローブセットを構成する複数のプローブの各々が担体上に固定され、該固定されるプローブが複数の場合は各プローブが互いに隔離して配置されていることを特徴とするプローブ担体。
【請求項4】
プローブ担体を用いたサンプル中でのカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAの検出方法において、
(i)請求項3に記載のプローブ担体とサンプルとを反応させる工程と、
(ii)前記サンプル中の核酸と反応した前記プローブ担体上のプローブの反応強度を検出する工程と、
を有することを特徴とするカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNAの検出方法。
【請求項5】
請求項1に記載のプローブ、請求項2に記載のプローブセットを構成する複数のプローブまたは請求項3に記載のプローブ担体と、プローブと標的核酸との反応を検出するための試薬と、を含むことを特徴とするカンジダ・ケフィル(Candida kefyr)のDNA検出用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−278857(P2008−278857A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128627(P2007−128627)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】