説明

プローブ、並びに記録装置、再生装置及び記録再生装置

【課題】 プローブの動作寿命を長くする。
【解決手段】 プローブ(100)は、媒体(20)に対向する表面を有する基板(110)と、基板中に形成され、且つ媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための点電極(120)とを備え、点電極のうち媒体に対向する側の端部である先端部は、点電極が形成される領域部分周辺において基板の表面が形成する面内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば強誘電体記録媒体等の誘電体に記録された分極情報を記録及び再生するプローブ、並びに該プローブを用いた記録装置、再生装置及び記録再生装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体記録媒体をナノスケールで分析するSNDM(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy:走査型非線形誘電率顕微鏡)を利用した記録再生装置の技術について、本願発明者等によって提案されている。SNDMにおいては、AFM(Atomic Force Microscopy)等に用いられる先端に微小な突起部を設けた導電性のカンチレバー(プローブ)を用いることで、測定に係る分解能を、サブナノメートルにまで高めることが可能である。近年では、SNDMの技術を応用して、データを、強誘電体材料からなる記録層を有する記録媒体に記録する超高密度記録再生装置の開発が進められている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなSNDMを利用した記録再生装置では、記録媒体の分極の正負の方向を検出することで情報の再生を行う。これは、L成分を含む高周波帰還増幅器とこれに取り付けられた導電性プローブ及び該プローブ直下の強誘電体材料の容量Csを含むLC発振器の発振周波数が、分極の正負の分布に起因する非線形誘電率の大小の結果生ずる微小容量の変化ΔCにより変化することを利用して行う。即ち、分極の正負の分布の変化を、発振周波数の変化Δfとして検出することで行う。
【0004】
更に、分極の正負の相違を検出するために、発振周波数に対して十分に低い周波数の交番電界を印加することで、発振周波数が交番電界に伴って変化すると共に、符号を含めた発振周波数の変化の割合が、プローブ直下の強誘電体材料の非線形誘電率によって定まる。そして、このように交番電界の印加に伴う微小容量ΔCの変化に応じてFM(Frequency Modulation)変調されたLC発信器の高周波信号から、交番電界に起因する成分をFM復調して取り出すことで、強誘電体記録媒体に記録された記録情報を再生する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−085969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような記録再生装置に用いられるプローブは、突起部の先端が誘電体記録媒体に接触ないしは接触と同視し得る状態にまで近接させることで情報の記録及び再生を行っている。このとき、該突起部が誘電体記録媒体に接触等することで、突起部の磨耗が進み、結果としてプローブの動作寿命が短くなってしまうという技術的な問題点を有している。
【0007】
また、情報の記録速度・再生速度を向上させるべく、突起部を複数備えたマルチプローブを用いることもできる。マルチプローブにおいては、記録動作・再生動作の安定のために、複数の突起部が同時に誘電体記録媒体に接触等することが望まれる。しかしながら、極めて微小な構造を有する突起部の高さが揃った状態のマルチプローブを形成することは困難であり、該マルチプローブを誘電体記録媒体に押し付けることで、複数の突起部が同時に誘電体記録媒体に接触等する状態を実現している。しかしながら、マルチプローブを誘電体記録媒体に押し付けるがゆえに、複数の突起部の磨耗がより進み、結果としてプローブの動作寿命が短くなってしまうという技術的な問題点を有している。
【0008】
本発明は例えば上述の課題に鑑みなされたものであって、例えば比較的動作寿命の長いプローブ、並びに該プローブを用いた記録装置、再生装置及び記録再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載のプローブは、媒体に対向する表面を有する基板と、前記基板中に形成され、且つ前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための点電極とを備え、前記点電極のうち前記媒体に対向する側の端部である先端部は、前記点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置される。
【0010】
上記課題を解決するために請求項14に記載のプローブは、媒体に対向する表面を有する基板と、前記基板中に形成され、且つ夫々前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための複数の点電極とを備え、前記複数の点電極のうち少なくとも一つの点電極の前記媒体に対向する側の端部である先端部は前記少なくとも一つの点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置される。
【0011】
上記課題を解決するために請求項15に記載の記録装置は、誘電体記録媒体にデータを記録する記録装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段とを備える。
【0012】
上記課題を解決するために請求項16に記載の再生装置は、誘電体記録媒体に記録されたデータを再生する再生装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段とを備える。
【0013】
上記課題を解決するために請求項17に記載の記録再生装置は、誘電体記録媒体にデータを記録し、且つ前記誘電体記録媒体に記録される前記データを再生する記録再生装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段と、前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段とを備える。
【0014】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
(プローブの実施形態)
本発明のプローブに係る第1実施形態は、媒体に対向する表面を有する基板と、前記基板中に形成され、且つ前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための点電極とを備え、前記点電極のうち前記媒体に対向する側の端部である先端部は、前記点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置される。
【0017】
本発明のプローブに係る第1実施形態によれば、例えば点電極より媒体に対して所定の電界(或いは、電圧や電流等)を印加したり、媒体を介して点電極に対して所定の電界等を印加したり、或いは点電極において電気的な変化を検出することができる。その結果、例えば、後述の誘電体記録媒体に対して情報の記録を行なったり(例えば、誘電体記録媒体における微小領域の状態の変化させたり)、或いは誘電体記録媒体に記録された情報の再生を行う(例えば、誘電体記録媒体における微小領域の状態を検出する)ことが可能となる。この点電極は、基板中(即ち、後述の如く基板にあけられた穴の中や、基板上等)に形成されている。尚、点電極から所定の電界を印加する場合には、点電極と媒体とは接触していても良いし、或いは接触と同視し得る程度に離れていてもよい。また、本発明における「点電極」とは、微小な大きさ(例えば後述の如くナノメートルオーダーないしはサブマイクロメートルオーダーの大きさ)を有する電極を意味するものであり、厳密な意味での「点」である必要はない。
【0018】
第1実施形態では特に、点電極の先端部は、基板の表面の少なくとも一部の領域(面)内における一の点(即ち、所定のポイント)に配置される。この基板の表面の少なくとも一部の領域内には、点電極が形成されている。尚、本発明における「領域部分周辺」とは、例えば点電極が形成される部分に加えてその周辺の或いは近接する(近隣する)領域を意味している。また、点電極の「先端部」は、点電極の媒体に対向する側の端部であって、例えば媒体に最も近接している点電極の部分或いは媒体と実際に接触等する部分に相当する。このため、点電極から電界を印加する際には、一の点において形成される点電極の先端部(特に微小な先端部)が媒体と接触等する。そして、先端部は、基板の表面の少なくとも一部の面内に形成されているため、先端部が媒体と接触等する場合には、基板の表面(特に、少なくとも一部の面)も同様に接触等する。
【0019】
従って、第1実施形態に係るプローブは、物理的には基板の存在により、比較的広い平面をその境界面として媒体と接触する(或いは、接触と同視し得る状態を実現する)ことができる。即ち、プローブと媒体との物理的な接触面積を大きくすることができる。このため、点電極に対して局所的に圧力が加わることがなく、プローブ(即ち、基板と点電極)の磨耗の進行を抑制ないしは防止することができる。従って、第1実施形態に係るプローブによれば、その動作寿命を比較的長くすることが可能となる。他方、第1実施形態に係るプローブは、電気的には点電極の存在により、微小な先端部において媒体と接触等することができる。即ち、プローブと媒体との電気的な接触面積を小さくすることができる。このため、例えば後述する記録再生装置においては、高密度なデータの記録動作・再生動作を実現することが可能となる。
【0020】
以上の結果、第1実施形態に係るプローブによれば、プローブと媒体との物理的な接触面積を大きくできると共に電気的な接触面積を小さくすることが可能となる。従って、プローブとしての動作寿命を比較的長くしつつも、好適な動作(例えば、後述するデータの記録動作や再生動作等)を行うことが可能となる。
【0021】
本発明のプローブに係る第1実施形態の一の態様は、前記点電極は、前記媒体から所定の高さまで連続的に前記基板中に形成されている。
【0022】
この態様によれば、基板と媒体とが接触することによって、基板の一部が磨耗したとしても、点電極は微小な接触面積を有する先端部において媒体と接触等することができる。即ち、電気的に接触面積の小さい状態を維持することができ、動作寿命の長いプローブを実現することができる。
【0023】
本発明のプローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記表面全体の前記媒体からの高さは、前記先端部の前記媒体からの高さと相等しい。
【0024】
この態様によれば、点電極が形成される部分においては、点電極の先端部と基板表面とを同一平面上に配置することができる。このため、物理的な接触面積をより大きくすることができ、点電極(特に、その先端部)の磨耗をより効果的に防止することが可能となる。このため、プローブの動作寿命を長くすることが可能となる。
【0025】
尚、この態様に限らず、例えば先端部が基板表面よりも媒体に対向する側に若干突き出るように構成しても、上述したように媒体とプローブとの物理的な接触面積を大きくできると共に電気的な接触面積を小さくすることが可能となり、上述の各種利益を享受することができる。或いは、先端部が基板表面よりも媒体に対向する側とは反対側にへこむように構成すれば、点電極の磨耗を更に効果的に防止することが可能となる。これらの如き点電極の構成も、上述した第1実施形態に係るプローブの範囲に含まれるものである。
【0026】
本発明のプローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記基板は絶縁体及び高抵抗の部材のうち少なくとも一方を含んでいる。
【0027】
この態様によれば、基板と点電極との絶縁性を比較的容易に確保することができる。また、後述するマルチプローブにあっては、複数の点電極間における絶縁性を比較的容易に確保することができる。
【0028】
本発明のプローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記表面は前記媒体に沿った平面である。
【0029】
この態様によれば、例えば基板と媒体とが傾いて接触等することなく、プローブを媒体と好適な状態で接触等させることが可能となる。例えば、基板の角張った部分が媒体に接触したりする不都合を効果的に抑制ないしは防止することができる。従って、物理的な接触面積を大きくすることができ、結果としてプローブの動作寿命を長くすることができる。
【0030】
本発明のプローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記点電極は、前記基板に設けられる穴の中に形成される。
【0031】
この態様によれば、基板中に比較的容易に点電極を形成することが可能となる。
【0032】
上述の如く点電極が穴の中に形成されるプローブの態様では、少なくとも前記穴の側面が金属膜に覆われることで前記点電極が形成されるように構成してもよい。また少なくとも前記穴の側面が導電性を有する部材に覆われることで前記点電極が形成されるように構成してもよい。また、前記穴の内部にカーボンナノ材料を含む部材を形成することで前記点電極が形成されるように構成してもよい。
【0033】
このように構成すれば、比較的容易に点電極を形成することができる。
【0034】
尚、穴の内部に点電極を形成する場合には、穴の側面に絶縁層等を形成することで、基板と点電極とが絶縁されることが好ましい。更には、穴を形成して点電極を形成する場合に限らずに、基板と点電極との境界部分に絶縁層等を形成することで、基板と点電極とが絶縁されることが好ましい。このため、上述したように、基板自体が絶縁性を有していたり或いは高抵抗であることが好ましい。
【0035】
上述の如く点電極が穴の中に形成されるプローブの態様では、所定の第1の径の予備穴が前記基板に設けられ、少なくとも前記予備穴の側面を酸化させることで前記第1の径よりも小さい第2の径を有する前記穴(即ち、点電極が形成される実際の穴)が設けられる。
【0036】
このように構成すれば、予備穴の側面を酸化することで、後述するように側面を拡大させ予備穴の径を小さくすることができる。即ち、微小な径を有する穴を比較的容易に形成することができ、その結果、点電極を微小な先端部において媒体と接触等させることが可能となる。
【0037】
上述の如く予備穴が形成されるプローブの態様では、前記基板のうち前記表面とは反対側の裏面の少なくとも一部にくぼみを形成し、且つ前記くぼみの表面を酸化した後に前記予備穴が設けられる。
【0038】
このように構成すれば、第2の径よりも大きいながらも、相対的に微小な第1の径を有する予備穴を比較的容易に設けることができる。
【0039】
本発明のプローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記点電極の先端部は、前記領域部分を形成する前記基板の周辺部材と前記表面上において接触する。
【0040】
この態様によれば、点電極が基板の表面上に好適に分布するようなプローブを構成することが可能である。
【0041】
本発明に緒プローブに係る第1実施形態の他の態様は、前記点電極は、該点電極に印加される電圧及び供給される電流の少なくとも一方の変化に基づいて、前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行う。
【0042】
この態様によれば、点電極から媒体に対して所定の電界等を印加したり、或いは媒体を介して点電極に対して所定の電界等が印加される。或いは点電極における電圧値や電流値が変化して、何らかの電気的変化(例えば、電圧値の変化や電流値の変化等)が検出される。従って、この電気的変化等に応じて、比較的容易に媒体の微小領域の状態を検出したり、或いは比較的容易に媒体の微小領域の状態を変化させることが可能となる。
【0043】
尚、ここでの「印加される電圧」や「供給される電流」とは、文字通り直流電源や交流電源等より印加ないしは供給される電圧や電流(或いは、電界)を示す場合のほか、何らかの電位ないしは電化を有する領域の存在により点電極に発生ないしは検知し得る電圧(或いはその値)や電流(或いはその値)等、広い意味での電気的変化を意図する趣旨である。
【0044】
本発明のプローブに係る第2実施形態は、媒体に対向する表面を有する基板と、前記基板中に形成され、且つ前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行う複数の点電極とを備え、前記複数の点電極のうち少なくとも一つの点電極の前記媒体に対向する側の端部である先端部は、前記少なくとも一つの点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置される。
【0045】
本発明のプローブに係る第2実施形態によれば、上述した第1実施形態に係るプローブと同様に、プローブと媒体との物理的な接触面積を大きくすることができると共に、電気的な接触面積を小さくすることができる。従って、上述した第1実施形態に係るプローブが有する各種利益と同様の利益を享受することが可能となる。
【0046】
特に第2実施形態に係るプローブによれば、夫々の点電極が形成される領域部分の面内における一の点に夫々の点電極の先端部を形成すれば、該夫々の先端部を比較的容易に基板の表面と同一平面上に配置することもできる。従って、複数の点電極を有するプローブ(例えば、マルチプローブ)であっても、夫々の点電極の先端部を同一平面上に配置するためにプローブを媒体に押し付ける必要がなくなるため、プローブの磨耗の進行をより効果的に抑制ないしは防止することが可能となる。従って、プローブの動作寿命をより効果的に長くすることが可能となる。
【0047】
尚、上述した本発明のプローブに係る第1実施形態の各種態様に対応して、本発明のプローブに係る第2実施形態も各種態様を採ることが可能である。
【0048】
(記録装置の実施形態)
本発明の記録装置に係る実施形態は、誘電体記録媒体にデータを記録する記録装置であって、上述した本発明のプローブに係る第1又は第2実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段とを備える。
【0049】
本発明の記録装置に係る実施形態によれば、上述した本発明のプローブに係る実施形態が有する利点を生かしつつ、記録信号生成手段が生成した記録信号に基づき、データの記録を行うことができる。
【0050】
尚、上述した本発明のプローブに係る第1又は第2実施形態の各種態様に対応して、本発明の記録装置に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
【0051】
(再生装置の実施形態)
本発明の再生装置に係る実施形態は、誘電体記録媒体に記録されたデータを再生する再生装置であって、上述した本発明のプローブに係る実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段とを備える。
【0052】
本発明の再生装置に係る実施形態によれば、電界印加手段により誘電体記録媒体に電界を印加することで、該誘電体記録媒体の非線形誘電率の変化に応じた容量変化に起因して、発振手段の発振周波数が変化する。そして、係る発振手段による発振周波数の変化に応じた発振信号を、再生手段が復調及び再生することで、データを再生する。
【0053】
本実施形態では特に、上述した本発明のプローブに係る実施形態が有する利点を生かして、データの再生を行うことができる。
【0054】
尚、上述した本発明のプローブに係る第1又は第2実施形態の各種態様に対応して、本発明の再生装置に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
【0055】
(記録再生装置の実施形態)
本発明の記録再生装置に係る実施形態は、誘誘電体記録媒体にデータを記録し、且つ前記誘電体記録媒体に記録される前記データを再生する記録再生装置であって、上述した本発明のプローブに係る第1又は第2実施形態(但し、その各種態様を含む)と、前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段と、前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段とを備える。
【0056】
本発明の記録再生装置に係る実施形態によれば、上述した本発明のプローブに係る実施形態が有する利点を生かしつつ、データの記録を行い、またデータの再生を行うことができる。
【0057】
尚、上述した本発明のプローブに係る第1又は第2実施形態の各種態様に対応して、本発明の記録再生装置に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
【0058】
本実施形態におけるこのような作用、及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
【0059】
以上説明したように、本発明のプローブに係る第1実施形態によれば、基板及び点電極を備え、点電極の先端部は、点電極が形成される領域部分周辺において基板の表面が形成する面内の一の点に配置される。また、本発明のプローブに係る第2実施形態によれば、基板及び複数の点電極を備え、少なくとも一つの点電極の先端部は、該少なくとも一つの点電極が形成される領域部分周辺において基板の表面が形成する面内の一の点に配置される。従って、プローブと媒体との物理的な接触面積を大きくすることができると共に電気的な接触面積を小さくすることができ、その結果プローブの動作寿命を比較的長くすることが可能となる。
【0060】
又、本発明の記録装置に係る実施形態によれば、本実施形態に係るプローブ及び記録信号生成手段を備える。従って、本発明のプローブに係る実施形態が有する各種利益を享受できる。
【0061】
又、本発明の再生装置に係る実施形態によれば、本実施形態に係るプローブ、電界印加手段、発振手段及び再生手段を備える。従って、本発明のプローブに係る実施形態が有する各種利益を享受できる。
【0062】
又、本発明の記録再生装置に係る実施形態によれば、本実施形態に係るプローブ、記録信号生成手段、電界印加手段、発振手段及び再生手段を備える。従って、本発明のプローブに係る実施形態が有する各種利益を享受できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明のプローブに係る実施例を図面に基づいて説明する。
【0064】
(1)プローブの実施例
先ず、図1から図19を参照して、本発明のプローブに係る実施例について説明する。
【0065】
(i)プローブの構造
先ず、図1から図4を参照して、本実施例に係るプローブの構造(即ち、基本構成)について説明する。ここに、図1は、本実施例に係るプローブの構造を概念的に示す斜視図であり、図2は、本実施例に係るプローブの構造を概念的に示す断面図及び底面図であり、図3は、本実施例に係るプローブが備える電極をより詳細に示す断面図であり、図4は、本実施例に係るプローブの他の構成を概念的に示す断面図である。
【0066】
図1に示すように、本実施例に係るプローブ100は、基板110と複数の電極120(本発明における「点電極」の一具体例)とを備える。
【0067】
基板110は、例えばシリコンやガラス等の絶縁部材ないしは高抵抗部材を含んでおり、内面形状が頂部を平面とした錐形状に構成されている。そして、内面側において、四角錐の形状を有するくぼみが複数(図1中には4つ)形成されており、該くぼみの頂部(即ち、先端)付近より、基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面(図1における下側の面)に向かって貫通穴が形成されている。この四角錐のくぼみ及び貫通穴に電極120が形成されている。
【0068】
尚、基板110の材料としてシリコンやガラス等に限定されることはなく、絶縁性を有する部材や高抵抗な部材であれば、該基板110として用いることが可能である。
【0069】
電極120は、後述の誘電体記録再生装置の記録・再生動作時において、誘電体記録媒体20との間で電界を印加可能に構成されている。電極120は、例えばクロムや白金等の各種金属或いはこれらの合金等を含んでおり、基板110に形成される貫通穴の中に形成される。具体的には、四角錐のくぼみ及び貫通穴の表面に金属等がメッキないしは蒸着されることで、図1に示すような電極120が形成される。また、貫通穴を各種金属や合金等で満たすように(即ち、塞ぐように)電極120が形成されていてもよい。また、電極120は、基板110のうち誘電体記録媒体20と対向する側の面において、微小な円形上の形状を有している。この電極の半径は、例えば約400nm以下であることが好ましく、約100nm以下であることがより好ましく、約50nm程度(或いは、それ以下)であることが更に好ましい。
【0070】
本実施例に係るプローブ100は特に、図2(a)の断面図に示すように、電極120の先端(即ち、電極120のうち誘電体記録媒体20に接触する部分であって、本発明における「先端部」の一具体例)と基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面とが同一平面上に配置されている。即ち、電極120の先端が、基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面より突き出ていたり、或いは陥没していたりすることなく、該先端が基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面に揃うように電極120が形成されている。
【0071】
このため、図2(b)の底面図(即ち、本実施例に係るプローブ100を、誘電体記録媒体20に対向する側より観察した図)に示すように、比較的広い面積を有する基板110の平面中に、比較的微小な面積を有する電極120が規則的に(或いは、離散的に)分布しているプローブ100を実現することができる。即ち、微小な点電極を複数有するプローブ100を実現することができる。
【0072】
このため、本実施例に係るプローブ100は、物理的には基板110の存在により、比較的広い平面をその境界面として誘電体記録媒体20と接触する(或いは、接触と同視し得る状態を実現する)ことができる。即ち、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積を大きくすることができる。例えば、本実施例に係るプローブ100の如く複数の電極120を備えるアレイ上のプローブ(マルチプローブ)であれば、例えば5mm四方程度にまで接触面積を大きくすることができる。或いは、単一の電極を備えるプローブ(シングルプローブ)であれば、500μm四方程度にまで接触面積を大きくすることができる。このため、電極120(或いは、基板110)対して局所的に圧力が加わることがなく、プローブ100(即ち、基板110と電極120)の磨耗の進行を抑制ないしは防止することができる。従って、本実施例に係るプローブ100によれば、その動作寿命を比較的長くすることが可能となる。
【0073】
他方、電気的には電極120の存在により、微小な接点において誘電体記録媒体20と接触等することができる。即ち、プローブ100と誘電体記録媒体20との電気的な接触面積を小さくすることができる。例えば、1つの電極毎に考えると、例えば直径400nm、好ましくは100nm、より好ましくは50nm程度の円の大きさに相当するまで接触面積を小さくすることができる。このため、例えば後述する誘電体記録再生装置においては、情報の記録単位である誘電体材料の分極方向を適宜変化可能な領域をより小さくすることができる。より具体的には、例えば現在開発が進められている青色レーザ光を用いた次世代DVD(例えば、Blu−ray DiscやHD DVD等)における情報の記録密度を決定するレーザ光の波長(約400nm)よりも小さな単位で、情報を高密度に記録することが可能となる。このため、高密度なデータの記録動作・再生動作を実現することが可能となる。
【0074】
更には、誘電体記録媒体20と相対的に広い平面で接触等することができるがゆえに、プローブ100の誘電体記録媒体20からの不必要な或いは無駄に多い浮きをなくすことができ、安定的にプローブ100と誘電体記録媒体20とを接触等させることが可能となる。即ち、プローブ100の不必要な或いは無駄に多い浮きにより電極120が誘電体記録媒体20から離れすぎてしまい、記録動作や再生動作を適切に行えなくなる不都合を抑制ないしは防止することが可能となる。
【0075】
更には、電極120の先端が基板110の誘電体記録媒体20と対向する側の面と同一平面上に配置されているため、例えば電極が突起状の形状を有するプローブにおいて見られるような、電極の先端に微小なチリ等のごみが付着してしまうという不都合を抑制ないしは防止することが可能となる。これにより、記録動作や再生動作時における信号特性の悪化という不都合を効果的に抑制ないしは防止することが可能となる。
【0076】
加えて、電極120は、基板110に形成される貫通穴の中に連続的に形成されている。このため、基板110と誘電体記録媒体20との接触等により、基板110の一部が仮に磨耗してしまったとしても、電極120が形成される微小な径の貫通穴が残っているため、微小な円形の形状を有する電極120を継続的に誘電体記録媒体20と接触させることが可能となる。即ち、プローブ100と誘電体記録媒体20との電気的な接触面積が比較的小さな状態を維持することが可能となる。
【0077】
また、図3に示すように、基板110と電極120との間には、二酸化シリコン膜が形成されており、基板110と電極120との間(或いは、一の電極120と他の電極120との間)における絶縁性を担保している。従って、複数の電極120を備えていても、夫々の電極120毎に好適に記録動作や再生動作を行なうことが可能となる。この二酸化シリコン膜が形成される態様については、後述する本実施例に係るプローブの製造方法の説明において、より詳細に述べる。
【0078】
尚、この絶縁性については、絶縁性を有する或いは高抵抗な基板110によってある程度担保されていることはいうまでもない。従って、基板110により絶縁性が担保されていれば、二酸化シリコン膜は必ずしも備えていなくともよい。
【0079】
また、基板110の内面形状を錐形にすることで、電極120が形成される部分においては所望の薄さを確保しながら、プローブ100全体としての強度を保つことができる。但し、上述したプローブ100の動作寿命を長くするという観点からは、基板100の内面形状は必ずしも錐形になっていなくともよいことはいうまでもない。更に、プローブ100の動作寿命を長くするという観点からは、基板110の内面に形成される四角錐の形状のくぼみがなくともよい。
【0080】
更に、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積を大きくし且つ電気的な接触面積を小さくするという観点からは、電極120は必ずしも貫通穴の中に連続的に形成される必要はなく、少なくとも誘電体記録媒体20と接触等することができる程度に形成されていればよい。例えば、四角錐の形状のくぼみの頂部から伸びる貫通穴がなくとも、該頂部において概ね50nmないし400nm程度の直径を有する略円形状の電極120を実現可能に構成されていればよい。また、必ずしも貫通穴である必要はなく、例えばその上部が基板110等により覆われている穴の中に電極120が形成されていてもよい。
【0081】
また、電極120は、上述した金属でなくとも、例えばボロン等の不純物がドーピングされたシリコンやダイヤモンド等の導電性を有する部材であってもよい。或いは、基板110に形成される貫通穴の中においてカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノホーンやアモルファスカーボン等を成長させることで電極120として用いてもよい。要は、誘電体記録媒体20に対して電界を印加することができれば、本実施例に係るプローブが備える電極120として用いることができる。
【0082】
また、基板110に形成される貫通穴及び四角錐のくぼみの側面に電極120が形成されていれば足りる。但し、貫通穴全体を金属等で満たして電極120を形成してもよいことは言うまでもない。
【0083】
尚、図4(a)に示すように、電極120の先端が基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面よりも若干突き出ている(即ち、凸な状態にある)ように構成してもよい。このように構成しても、基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面の大きさと比較して電極120の先端の大きさは極めて微小である。このため、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積を大きくし且つ電気的な接触面積を小さくすることができる。但し、プローブ100の磨耗の進行を効果的に抑制ないしは防止するという観点からは、電極120の先端は基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面と同一平面上にあることが好ましい。
【0084】
或いは、プローブ100の磨耗の進行をより効果的に抑制ないしは防止するという観点からは、図4(b)に示す用に、電極120の先端が基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面よりも若干へこんでいる(即ち、凹な状態にある)ように構成してもよい。このように構成しても、誘電体記録媒体20に対して電極120より電界を印加することができるため、記録動作や再生動作に影響を与えることなく、プローブ100の磨耗の進行をより一層効果的に抑制ないしは防止することが可能となる。
【0085】
(ii)プローブの変形例
続いて、図5を参照して、本実施例に係るプローブの変形例について説明する。ここに、図5は、本実施例に係るプローブの構造の変形例を底面側(誘電体記録媒体20に対向する側)から観察したときの斜視図である。
【0086】
図5に示すように、変形例に係るプローブ101は、基板110の誘電体記録媒体に対向する側の面に所望の溝(或いは、凹凸等)が形成されている。例えば、プローブ101が誘電体記録媒体20の記録面上を移動する際の風の通り道となる溝等を形成してもよい。係る変形例に係るプローブ101も、基板110の誘電体記録媒体に対向する側の面のうち電極120が形成される部分(更に、その周辺部分)においては、電極120の先端と基板110とが同一平面上に配置されている。この電極120が形成される部分及びその周辺部分が、本発明における「領域部分周辺」の一具体例に相当する。言い換えれば、電極120の先端が、基板110の誘電体記録媒体20に対向する側の面のうち電極120が形成される領域部分の面内における所定のポイントに形成されている。
【0087】
このように構成しても、少なくとも基板110の誘電体記録媒体に対向する側の面のうち電極120が形成される部分において、電極120の先端と基板110とが同一平面上に配置されていれば、上述した本実施例に係るプローブ100が有する各種利益と同様の利益を享受することが可能となる。但し、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積をより大きくするという観点からは、基板110のより広い範囲と電極120の先端とが同一平面上に配置されることが好ましい。
【0088】
(iii)プローブの製造方法
続いて、図6から図19を参照して、本実施例に係るプローブの製造方法について説明する。ここに、図6から図19は、本実施例に係るプローブの製造方法の各工程を概念的に示す断面図である。
【0089】
先ず、図6に示すように、シリコン基板201を用意する。係るシリコン基板201は、後述する工程を経て、主としてプローブ100が備える基板110となる。尚、後の工程において、結晶格子構造における(100面)に沿って(或いは、平行に)二酸化シリコン膜が形成されるようなシリコン基板201を用意することが好ましい。これは、後述するように、異方性エッチングを施すことで電極120が形成される部分のうち四角錐の形状(或いは、ピラミッド型の形状)のくぼみを形成するためである(図11参照)。係るシリコン基板201は、(100)基板と称される。
【0090】
そして、シリコン基板201の表側及び裏側の面に対して、二酸化シリコン(SiO)膜202が形成される。ここでは、高温酸化雰囲気中にシリコン基板201を配置することで、その表面に二酸化シリコン膜202を形成されてもよい。
【0091】
続いて、例えばスピンコーティングにより二酸化シリコン膜202上にフォトレジスト203がコーティングされ、パターニングが行われる。具体的には、フォトレジスト203をシリコン基板201の一方の面(例えば、表側の面)上に形成した二酸化シリコン膜202上にコーティングした後、基板110の内面形状に合わせてパターニングしたフォトマスクを用いて紫外線等を照射する。その後、現像を行うことで、フォトレジスト203のパターニングがなされる。もちろん、例えばEB(Electron Beam)レジストやその他の材料を用いてパターニングを行ってもよい。
【0092】
続いて、フォトレジスト203のパターニングが行われたシリコン基板201に対して、エッチングが行われる。ここでは、例えばBHF(バッファードフッ酸)等を用いて、二酸化シリコン膜202のうちフォトレジスト203が塗布されていない部分のエッチングが行われる。但し、他のエッチャントを用いてエッチングが行われてもよいし、或いはドライエッチングによりエッチングが行われてもよい。
【0093】
二酸化シリコン膜201のエッチング後、フォトレジスト203の除却が行われることで、図7に示すシリコン基板201及び二酸化シリコン膜202が残る。ここでは、ドライエッチングによりフォトレジスト203の除却が行われてもよいし、或いはウェットエッチングによりフォトレジスト203の除却が行われてもよい。
【0094】
続いて、シリコン基板201に対して異方性エッチングが行われる。ここでは、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等のアルカリ性のエッチャントを用いて異方性エッチングが行われてもよい。
【0095】
このとき、シリコン基板201は、(100)面の法線方向(即ち、図11中シリコン基板201に垂直な方向)に向かってエッチングは進行するが、他方(111)面の法線方向(即ち、図11中シリコン基板201に対して概ね45度で入射する方向)に向かってエッチングは進行しにくいという性質を有する。この性質を利用して異方性エッチングを行うことで、図8に示すように、内面形状が頂部を平面とした錐形状の基板110が形成される。
【0096】
この内面側のくぼみは、シリコン基板201が概ね250μm程度の厚さだけエッチングされることで形成されることが好ましい。そして、このくぼみ部分のシリコン基板201の厚さは、概ね100μm以下であることが好ましい。
【0097】
続いて、図9に示すように、再びシリコン基板201の表側及び裏側の面に対して、二酸化シリコン膜202が形成される。
【0098】
続いて、図10に示すように、四角錐の形状のくぼみを形成するために、二酸化シリコン膜202の一部をエッチングする。ここでは、例えば、上述の如くフォトレジスト等を用いて例えば50μm四方の矩形状に二酸化シリコン膜202がエッチングされるようなパターニングが行われ、該パターニングに合わせて二酸化シリコン膜202がエッチングされる。
【0099】
続いて、図11に示すように、シリコン基板201に対して異方性エッチングが行われる。ここでは、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等のアルカリ性のエッチャントを用いて異方性エッチングが行われる。これにより、シリコン基板201は、四角錐の形状のくぼみを有するようにエッチングされる。
【0100】
具体的には、四角錐のくぼみの頂部(即ち、図11中最下部)からシリコン基板201の誘電体記録媒体20に対向する側の面までの厚さが、概ね1μm以下になることが好ましい。このとき、エッチングの進行速度等を考慮して、図8におけるエッチングにより残されるシリコン基板201の厚さや或いは図10においてエッチングされる二酸化シリコン膜202の大きさや形状等を調整することが好ましい。
【0101】
続いて、図12(a)に示すように、再び高温酸化雰囲気中にシリコン基板201を配置することで、二酸化シリコン膜202が形成される。この二酸化シリコン膜202の形成の際には、図12(b)において詳細に示すように、四角錐のくぼみの表面の端部(例えば、四角錐のくぼみの頂部等)においては二酸化シリコン膜202が形成されにくく、他方、該表面の中心部に近づくほど二酸化シリコン膜202が形成されやすくなる。即ち、四角錐のくぼみの表面の端部においては相対的に薄く二酸化シリコン膜202が形成され、該表面の中心部に近づくほど相対的に厚い二酸化シリコン膜202が形成される。
【0102】
その後、図13(a)に示すように、形成された二酸化シリコン膜を僅かにエッチングする。このとき、図12における工程で、四角錐のくぼみの端部に形成された二酸化シリコン膜202(即ち、相対的に薄く形成された二酸化シリコン膜202)が除却される。そして、図13(b)に示すように、四角錐のくぼみの頂部の概ね100nm程度の領域において、二酸化シリコン膜202の隙間が形成される。この二酸化シリコン膜202の隙間は概ね100nm程度となることが好ましい。
【0103】
続いて、図14に示すように、シリコン基板201の誘電体記録媒体20に対向する側の面に形成されている二酸化シリコン膜202を除却する。
【0104】
続いて、図15に示すように、シリコン基板201に100nm程度の径を有する貫通穴を形成する。この貫通穴は、例えばICP−RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching)により、図13(b)に示す二酸化シリコン膜202の100nm程度の隙間にイオンビームを照射してシリコン基板201を削り取ることで形成される。
【0105】
続いて、図16(a)に示すように、貫通穴が形成されたシリコン基板201(特に貫通穴の側面)を酸化して、二酸化シリコン膜202を形成する。このとき、シリコンが酸化されて二酸化シリコンとなることで、その体積が増加する。このため、図16(b)においてより詳細に示すように、貫通穴の径が狭くなる。従って、この二酸化シリコン膜202の形成により、例えば約50nm程度の径を有する穴が形成される。
【0106】
尚、以後の説明においては、図面の簡略化のため、複数の電極120のうち一の電極120についてのみ図面に抜き出して説明を進める。もちろん、複数の電極120のうち他の電極120についても同様の工程が行われていることは言うまでもない。
【0107】
続いて、図17に示すように電極120の少なくとも一部を形成する。具体的には、少なくとも四角錐のくぼみの表面に金属等を蒸着することで、電極120の少なくとも一部を形成する。ここでは、例えば蒸着法やスパッタリング法或いはCupper-CVD法等を用いて電極120の形成を行う。このとき、二酸化シリコン膜202に対する電極120の付着力を高めるために、電極120の材料たる金属等を蒸着する前にチタン等の下地を蒸着させ、その後に金属等を蒸着させることで、電極120を形成するように構成してもよい。
【0108】
その後、図17の工程において形成された少なくとも一部の電極120を基に、貫通穴の側面或いは内部全体を金属でメッキ加工する。即ち、図17の工程において形成された電極120を種として、貫通穴の内部に金属を成長させることで、図18に示すように、貫通穴の内部全体が金属で満たされた電極120が形成される。
【0109】
続いて、シリコン基板201等の誘電体記録媒体20に対向する側の面を研磨等し、滑らかにする。ここでは、該面が略平面となるように、より好ましくは、誘電体記録媒体20の記録面に対して略平行な平面となるように研磨等される。これにより、上述した本実施例に係るプローブを製造することができる。
【0110】
(2)記録再生装置の実施例
続いて、図20から図23を参照して、上述した本実施例に係るプローブを用いた記録再生装置について説明する。
【0111】
(i)基本構成
先ず、本実施例に係る誘電体記録再生装置の基本構成について、図20を参照して説明する。ここに、図20は、本実施例に係る誘電体記録再生装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【0112】
誘電体記録再生装置1は、電極120が誘電体記録媒体20の誘電体材料17に対向して電界を印加するプローブ100と、プローブ100(特に、電極120)から印加された信号再生用の高周波電界が戻るリターン電極12と、プローブ100(特に、電極120)とリターン電極12の間に設けられるインダクタLと、インダクタLとプローブ100(特に、電極120)の直下の誘電体材料17に形成される、記録情報に対応して分極した部位の容量Csとで決まる共振周波数で発振する発振器13と、誘電体材料17に記録された分極状態を検出するための交番電界を印加するための交流信号発生器21と、誘電体材料に分極状態を記録する記録信号発生器22と、交流信号発生器21及び記録信号発生器22の出力を切り替えるスイッチ23と、HPF(High Pass Filter)24と、プローブ100の直下の誘電体材料17が有する分極状態に対応した容量で変調されるFM信号を復調する復調器30と、復調された信号からデータを検出する信号検出部34と、復調された信号からトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー検出部35等を備えて構成される。
【0113】
プローブ100は、上述した本実施例に係るプローブ100等を用いる。そして、プローブ100のうち電極120はHPF24を介して発振器13と接続され、またHPF24及びスイッチ23を介して交流信号発生器21及び記録信号発生器22と接続される。そして、誘電体材料17に電界を印加する電極として機能する。
【0114】
尚、係るプローブ100は、説明の簡略化のために単一の電極120を備える構成にて図示してあるが、もちろん複数の電極120を備えるプローブ100であってもよい。この場合、交流信号発生器21は、夫々の電極120に対応して複数設けることが好ましい。また、信号検出部34において夫々の交流信号発生器21に対応する再生信号を弁別可能なように、信号検出部34を複数備え、且つ夫々の信号検出部34は、夫々の交流信号発生器21より参照信号を取得することで、対応する再生信号を出力するように構成することが好ましい。
【0115】
リターン電極12は、プローブ100(特に、電極120)から誘電体材料17に印加される高周波電界(即ち、発信器13からの共振電界)が戻る電極であって、プローブ100を取り巻くように設けられている。尚、高周波電界が抵抗なくリターン電極12に戻るものであれば、その形状や配置は任意に設定が可能である。また、リターン電極12を、プローブ10が備えるシリコン基板110上に形成するように構成してもよい。
【0116】
インダクタLは、プローブ100とリターン電極12との間に設けられていて、例えばマイクロストリップラインで形成される。インダクタLと容量Csとを含んで共振回路14が構成される。この共振周波数が例えば1GHz程度を中心とした値になるようにインダクタLのインダクタンスが決定される。
【0117】
発振器13は、インダクタLと容量Csとで決定される共振周波数で発振する発振器である。その発振周波数は容量Csの変化に対応して変化するものであり、従って記録されているデータに対応した分極領域によって決定される容量Csの変化に対応してFM変調が行われる。このFM変調を復調することで、誘電体記録媒体20に記録されているデータを読み取ることができる。
【0118】
尚、後に詳述するように、プローブ100、リターン電極12、発振器13、インダクタL、HPF24及び誘電体材料17中の容量Csから共振回路14が構成され、発信器13において増幅されたFM信号が復調器30へ出力される。
【0119】
交流信号発生器21は、リターン電極12と電極16との間に交番電界を印加する。また、複数の電極120を備えているプローブを用いる誘電体記録再生装置においては、この周波数を参照信号として同期を取り、プローブ100で検出する信号を弁別する。その周波数は5kHz程度を中心としたものであり、誘電体材料17の微小領域に交番電界を印加することになる。
【0120】
記録信号発生器22は、記録用の信号を発生し、記録時にプローブ100に供給される。この信号はデジタル信号に限らずアナログ信号であってもよい。これらの信号として、音声情報、映像情報、コンピュータ用デジタルデータ等、各種の信号が含まれる。また、記録信号に重畳された交流信号は信号再生時の参照信号として各探針の情報を弁別して再生するためである。
【0121】
スイッチ23は、再生時、交流信号発生器21からの信号を、一方、記録時は記録信号発生器22からの信号をプローブ100に供給するようにその出力を選択する。この装置は機械式のリレーや半導体の回路が用いられるが、アナログ信号にはリレーが、デジタル信号には半導体回路で構成するのが好適である。
【0122】
HPF24は、インダクタ及びコンデンサを含んでなり、交流信号発生器21や記録信号発生器22からの信号が発振器13の発振に干渉しないように信号系統を遮断するためのハイパスフィルタを構成するために用いられていて、その遮断周波数はf=1/2π√{LC}である。ここで、LはHPF24に含まれるインダクタのインダクタンス、CはHPF24に含まれるコンデンサのキャパシタンスとする。交流信号の周波数は5KHz程度であり、発振器13の発振周波数は1GHz程度であるので、1次のLCフィルタで分離は十分に行われる。さらに次数の高いフィルタを用いてもよいが素子数が多くなるので装置が大きくなる虞がある。
【0123】
復調器30は、容量Csの微小変化に起因してFM変調された発振器13の発振周波数を復調し、プローブ100がトレースした部位の分極された状態に対応した波形を復元する。記録されているデータがデジタルの「0」と「1」のデータであれば、変調される周波数は2種類であり、その周波数を判別することで容易にデータの再生が行われる。
【0124】
信号検出部34は、復調器30で復調された信号から記録されたデータを再生する。この信号検出器34として例えばロックインアンプを用い、交流信号発生器21の交番電界の周波数に基づいて同期検波を行うことでデータの再生を行う。尚、他の位相検波手段を用いてもよいことは当然である。
【0125】
トラッキングエラー検出部35は、復調器30で復調された信号から、装置を制御するためのトラッキングエラー信号を検出する。検出したトラッキングエラー信号がトラッキング機構に入力されて制御がなされる。
【0126】
続いて、図20に示す誘電体記録媒体20の一例について、図21を参照して説明する。ここに、図21は、本実施例において用いられる誘電体記録媒体20の一例を概念的に示す平面図及び断面図である。
【0127】
図21(a)に示すように、誘電体記録媒体20は、ディスク形態の誘電体記録媒体であって、例えばセンターホール10と、センターホール10と同心円状に内側から内周エリア7、記録エリア8、外周エリア9を備えている。センターホール10はスピンドルモータに装着する場合等に用いられる。
【0128】
記録エリア8はデータを記録する領域であって、トラックやトラック間のスペースを有し、また、トラックやスペースには記録再生にかかわる制御情報を記録するエリアが設けられている。また、内周エリア7及び外周エリア8は誘電体記録媒体20の内周位置及び外周位置を認識するために用いられると共に、記録するデータに関する情報、例えばタイトルやそのアドレス、記録時間、記録容量等を記録する領域としても使用可能である。尚、上述した構成はその一例であって、カード形態等、他の構成を採ることも可能である。
【0129】
また、図21(b)に示すように誘電体記録媒体20は、基板15の上に電極16が、また、電極16の上に誘電体材料17が積層されて形成されている。
【0130】
基板15は例えばSi(シリコン)であり、その強固さと化学的安定性、加工性等において好適な材料である。電極16はプローブ100(或いは、リターン電極12)との間で電界を発生させるためのもので、誘電体材料17に抗電界以上の電界を印加することで分極方向を決定する。データに対応して分極方向を定めることにより記録が行われる。
【0131】
誘電体材料17は、例えば強誘電体であるLiTaO等を電極16の上にスパッタリング等の公知の技術によって形成されている。そして、分極の+面と−面が180度のドメインの関係であるLiTaOのZ面に対して記録が行われる。他の誘電体材料を用いても良いことは当然である。この誘電体材料17は直流のバイアス電圧と同時に加わるデータ用の電圧によって、高速で微小な分極を形成する。
【0132】
又、誘電体記録媒体20の形状として、例えばディスク形態やカード形態等がある。プローブ10との相対的な位置の移動は媒体の回転によって行われ、或いはプローブ100と媒体のいずれか一方が直線的に(例えば、X軸及びY軸の2軸上において)移動して行われる。
【0133】
(ii)動作原理
続いて、図22及び図23を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置1の動作原理について説明する。尚、以下の説明では、図20に示した誘電体記録再生装置1のうち一部の構成要素を抜き出して説明している。
【0134】
(記録動作)
先ず、図22を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置の記録動作について説明する。ここに、図22は、情報の記録動作を概念的に示す断面図である。
【0135】
図22に示すように、プローブ100(即ち、プローブ100が備える電極120)と電極16との間に誘電体材料17の抗電界以上の電界を印加することで、印加電界の方向に対応した方向を有して誘電体材料は分極する。そして、印加する電圧を制御し、この分極の方向を変えることで所定の情報を記録することができる。これは、誘電体(特に、強誘電体)にその抗電界を超える電界を印加すると分極方向が反転し、且つその分極方向が状態で維持されるという性質を利用したものである。
【0136】
例えばプローブ100から電極16に向かう電界が印加されたとき、微小領域は下向きの分極Pとなり、電極16からプローブ100に向かう電界が印加されたときは上向きの分極Pとなるとする。これが情報を記録した状態に対応する。プローブ100が矢印で示す方向に操作されると、検出電圧は分極Pに対応して、上下に振れた矩形波として出力される。尚、分極Pの分極程度によりこのレベルは変化し、アナログ信号としての記録も可能である。
【0137】
本実施例では特に、上述した本実施例に係るプローブ100等をプローブとして用いるため、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積を大きくし且つ電気的な接触面積を小さくすることができる。従って、上述したようにプローブ100の磨耗を進行させることなく、その結果動作寿命の長いプローブ100を用いて好適に記録動作を行なうことができる。
【0138】
(再生動作)
続いて、図23を参照して、本実施例に係る誘電体記録再生装置1の再生動作について説明する。ここに、図23は、情報の再生動作を概念的に示す断面図である。
【0139】
誘電体の非線形誘電率は、誘電体の分極方向に対応して変化する。そして、誘電体の非線形誘電率は、誘電体に電界を印加した時に、誘電体の容量の違いないし容量の変化の違いとして検出することができる。従って、誘電体材料に電界を印加し、そのときの誘電体材料の一定の微小領域における容量Csの違いないし容量Csの変化の違いを検出することにより、誘電体材料の分極の方向として記録されたデータを読み取り、再生することが可能となる。
【0140】
具体的にはまず、図23に示すように、不図示の交流信号発生器21からの交番電界が電極16及びプローブ100(即ち、プローブ100が備える電極120)の間に印加される。この交番電界は、誘電体材料17の抗電界を越えない程度の電界強度を有し、例えば5kHz程度の周波数を有する。交番電界は、主として、誘電体材料17の分極方向に対応する容量変化の違いの識別を可能にするために生成される。尚、交番電界に代えて、直流バイアス電圧を印加して、誘電体材料17内に電界を形成してもよい。係る交番電界が印加されると誘電体記録媒体20の誘電体材料17内に電界が生ずる。
【0141】
次に、電極120の先端と記録面との距離がナノオーダの極めて小さい距離となるまで、プローブ100を記録面に接近させる。この状態で発振器13を駆動する。尚、プローブ100直下の誘電体材料17の容量Csを高精度に検出するためには、プローブ11を誘電体材料17の表面、即ち、記録面に接触させることが好ましい。但し、電極120の先端を記録面に接触させなくとも、例えば実質的には接触と同視できる程度に電極120の先端を記録面に接近させても、再生動作(更には、上述の記録動作)を行なうことは可能である。
【0142】
そして、発振器13は、電極120直下の誘電体材料17に係る容量CsとインダクタLとを構成要因として含む共振回路の共振周波数で発振する。この共振周波数は、上述のとおりその中心周波数をおおよそ1GHz程度とする。
【0143】
ここで、リターン電極12及びプローブ100は、発振器13による発振回路14の一部を構成している。プローブ11から誘電体材料17に印加された1GHz程度の高周波信号は、図23中点線の矢印にて示すように、誘電体材料17内を通過してリターン電極12に戻る。リターン電極12をプローブ100(即ち、電極120)の近傍に設け、発振器13を含む発振回路の帰還経路を短くすることにより、発振回路内にノイズ(例えば、浮遊容量成分)が入り込むのを軽減することができる。
【0144】
付言すると、誘電体材料17の非線形誘電率に対応する容量Csの変化は微小であり、これを検出するためには、高い検出精度を有する検出方法を採用する必要がある。FM変調を用いた検出方法は、一般に高い検出精度を得ることができるが、誘電体材料17の非線形誘電率に対応する微小な容量変化の検出を可能とするために、さらに検出精度を高める必要がある。そこで、本実施例に係る誘電体記録再生装置1(即ち、SNDM原理を用いた記録再生装置)は、リターン電極12をプローブ100の近傍に配置し、発振回路の帰還経路をできる限り短くしている。これにより、極めて高い検出精度を得ることができ、誘電体の非線形誘電率に対応する微小な容量変化を検出することが可能となる。
【0145】
発振器13の駆動後、プローブ100を誘電体記録媒体20上において記録面と平行な方向に移動させる。すると移動によって、プローブ100直下の誘電体材料17のドメインが変わり、その分極方向が変わるたびに、容量Csが変化する。容量Csが変化すると、共振周波数、即ち、発振器13の発振周波数が変化する。この結果、発振器13は、容量Csの変化に基づいてFM変調された信号を出力する。
【0146】
このFM信号は、復調器30によって周波数−電圧変換される。この結果、容量Csの変化は、電圧の大きさに変換される。容量Csの変化は、誘電体材料17の非線形誘電率に対応し、この非線形誘電率は、誘電体材料17の分極方向に対応し、この分極方向は、誘電体材料17に記録されたデータに対応する。従って、復調器30から得られる信号は、誘電体記録媒体20に記録されたデータに対応して電圧が変化する信号となる。更に、復調器30から得られた信号は、信号検出部34に供給され、例えば同期検波されることで、誘電体記録媒体20に記録されたデータが抽出される。
【0147】
このとき、信号検出部34では、交流信号発生器21により生成された交流信号が参照信号として用いられる。これにより、例えば復調器30から得られる信号がノイズを多く含んでおり、又は抽出すべきデータが微弱であっても、後述の如く参照信号と同期をとることで当該データを高精度に抽出することが可能となる。
【0148】
本実施例では特に、上述した本実施例に係るプローブ100等をプローブとして用いるため、プローブ100と誘電体記録媒体20との物理的な接触面積を大きくし且つ電気的な接触面積を小さくすることができる。従って、上述したようにプローブ100の磨耗を進行させることなく、その結果動作寿命の長いプローブ100を用いて好適に再生動作を行なうことができる。
【0149】
尚、上述の実施例においては、誘電体記録媒体20やプローブ100の具体的な駆動方式について深く言及していないが、各種駆動方式を採用可能である。例えば誘電体記録媒体20及びプローブ100の少なくとも一方を、直交する2軸に沿って(例えば、誘電体記録媒体20の記録面に沿って)自由に動かすことの可能なx−yスキャナ等に備え付けることで、誘電体記録媒体20或いはプローブ100を駆動させてもよい。この駆動方式では、データが記録されるべき或いは再生されるべきデータが記録されている誘電体記録媒体20上の記録領域の位置に応じて、x軸方向の移動量及びy軸方向の移動量を制御してやれば、比較的容易にデータの記録動作や再生動作を行うことが可能である。また、誘電体記録媒体20とプローブ100との間の距離を調整するべく、x軸及びy軸の2軸に加えて、z軸方向(例えば、誘電体記録媒体20の記録面に垂直な方向)へ誘電体記録媒体20或いはプローブ100を駆動させるように構成してもよい。
【0150】
或いは、例えば円形状の誘電体記録媒体20をスピンドルモータ等により回転させるように構成してもよい。この場合、例えば、光ディスクのCLV(Constant Liner Velocity))記録方式の如く、プローブ100に対する誘電体記録媒体20の相対線速度を一定にすることが可能である。このため、誘電体記録媒体20とプローブ100との間の隙間に空気の流れを発生させることができ、プローブ100が誘電体記録媒体20の記録面に対して微小量だけ浮上するような浮上型記録再生ヘッド(フライングヘッド)としてプローブを構成することができる。このとき、定常状態(即ち、プローブ100が浮上している状態)では、プローブ100の磨耗が進行することはないが、例えば誘電体記録媒体20のうねり(或いは、チルト)やプローブ100に作用する力によっては、誘電体記録媒体20とプローブ100とが接触することも十分に考えられる。このような意図せぬ接触が発生した場合であっても、本実施例に係るプローブ100によれば、上述の如くプローブ100の磨耗の進行を抑制ないしは防止することができるという大きな利点を有している。
【0151】
或いは、これに限らず、誘電体記録媒体20に適切にデータを記録し、また誘電体記録媒体20に記録されたデータを再生することができれば、各種記録再生装置において用いられている各種駆動方式を採用できる。そして、採用する駆動方式に応じて、誘電体記録媒体20やプローブ100の形状や構造や機能等も、上述した本発明の特徴を具備する限りにおいては適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【0152】
また、上述の実施例では、誘電体材料17を記録層に用いているが、非線形誘電率や自発分極の有無という観点からは、該誘電体材料17は、強誘電体であることが好ましい。
【0153】
尚、上述した本実施例に係るプローブ100等は、本実施例において説明したSNDMに係る記録再生装置に限らず、例えばSCaM等の走査型容量性顕微鏡或いは記録再生装置や、例えばSHG(Sub Harmonic Generation)デバイス等の各種デバイスを作成するための装置に用いられてもよい。
【0154】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うプローブ、並びに記録装置、再生装置及び記録再生装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明のプローブに係る実施例を概念的に示す斜視図である。
【図2】本発明のプローブに係る実施例を概念的に示す断面図及び底面図である。
【図3】本発明のプローブに係る実施例が備える電極をより詳細に示す断面図である。
【図4】本発明のプローブに係る実施例の他の構成を概念的に示す断面図である。
【図5】本発明のプローブに係る実施例の変形例を概念的に示す斜視図である。
【図6】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の一の工程を概念的に示す断面図である。
【図7】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図8】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図9】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図10】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図11】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図12】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図13】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図14】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図15】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図及び平面図である。
【図16】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図及び平面図である。
【図17】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図18】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図19】本発明のプローブに係る実施例の製造方法の他の工程を概念的に示す断面図である。
【図20】本発明のプローブに係る実施例を採用する誘電体記録再生装置に係る実施例の基本構成を概念的に示すブロック図である。
【図21】実施例に係る誘電体記録再生装置の再生に用いられる誘電体記録媒体を概念的に示す平面図及び断面図である。
【図22】実施例に係る誘電体記録再生装置の記録動作を概念的に示す断面図である。
【図23】実施例に係る誘電体記録再生装置の再生動作を概念的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0156】
1・・・誘電体記録再生装置
12・・・リターン電極
13・・・発振器
14・・・共振回路
16・・・電極
17・・・誘電体材料
20・・・誘電体記録媒体
21・・・交流信号発生器
22・・・記録信号発生器
100、101・・・プローブ
110・・・基板
120・・・電極
201・・・シリコン基板
202・・・二酸化シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対向する表面を有する基板と、
前記基板中に形成され、且つ前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための点電極と
を備え、
前記点電極のうち前記媒体に対向する側の端部である先端部は、前記点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置されることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記点電極は、前記媒体から所定の高さまで連続的に前記基板中に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記表面の前記媒体からの高さは、前記先端部の前記媒体からの高さと相等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記基板は絶縁体及び高抵抗の部材のうち少なくとも一方を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記表面は前記媒体に沿った平面であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記点電極は、前記基板に設けられる穴の中に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
少なくとも前記穴の側面が金属膜に覆われることで前記点電極が形成されることを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
少なくとも前記穴の側面が導電性を有する部材に覆われることで前記点電極が形成されることを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項9】
少なくとも前記穴の内部にカーボンナノ材料を含む部材を形成することで前記点電極が形成されることを特徴とする請求項6に記載のプローブ。
【請求項10】
所定の第1の径の予備穴が前記基板に設けられ、少なくとも前記予備穴の側面を酸化させることで前記第1の径よりも小さい第2の径を有する前記穴が設けられることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項11】
前記基板のうち前記表面とは反対側の裏面の少なくとも一部にくぼみを形成し、且つ前記くぼみの表面を酸化した後に前記予備穴が設けられることを特徴とする請求項10に記載のプローブ。
【請求項12】
前記点電極の先端部は、前記領域部分を形成する前記基板の周辺部材と前記表面上において接触することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項13】
前記点電極は、該点電極に印加される電圧及び供給される電流の少なくとも一方の変化に基づいて、前記微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項14】
媒体に対向する表面を有する基板と、
前記基板中に形成され、且つ夫々前記媒体における微小領域の状態の検出及び変化の少なくとも一方を行うための複数の点電極と、
を備え、
前記複数の点電極のうち少なくとも一つの点電極の前記媒体に対向する側の端部である先端部は、前記少なくとも一つの点電極が形成される領域部分周辺において前記表面が形成する面内の一の点に配置されることを特徴とするプローブ。
【請求項15】
誘電体記録媒体にデータを記録する記録装置であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、
前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段と
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項16】
誘電体記録媒体に記録されたデータを再生する再生装置であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、
前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、
前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、
前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段と
を備えることを特徴とする再生装置。
【請求項17】
誘電体記録媒体にデータを記録し、且つ前記誘電体記録媒体に記録される前記データを再生する記録再生装置であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載のプローブと、
前記データに対応する記録信号を生成する記録信号生成手段と、
前記誘電体記録媒体に電界を印加する電界印加手段と、
前記誘電体記録媒体の非線形誘電率に対応する容量の違いに応じて発振周波数が変化する発振手段と、
前記発振手段による発振信号を復調し、再生する再生手段と
を備えることを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−4501(P2006−4501A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178612(P2004−178612)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)