説明

プローブの固定量の推定方法、及びその利用

【課題】プローブのスポット内での固定量を精度よく推定することができる新規な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む試料を基体上に供して、当該液体のスポットを1ないしは複数個、基体上に形成する工程と、次いで、少なくとも1つの上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する工程と、次いで、測定された上記粒子状物質の個数から、当該スポットに含まれる上記プローブの量を推定する工程と、を含むプローブの固定量の推定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば核酸等のプローブの固定量の推定方法、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、数cm角のチップ上に、例えば10数個〜数千ものDNA又はタンパク質を、直径数100μmほどの微小なスポット状に塗布したマイクロアレイが開発され、ゲノミクス研究、或いはプロテオーム解析に用いられている。
【0003】
マイクロアレイにおいて、DNA又はタンパク質をスポット状に塗布する方法には、例えば、光リソグラフィー、メカニカルスポッティング、インクジェット、及びマイクロコンタクトプリンティングなどがある。
【0004】
ところで、測定結果の信頼性及び定量性を得る上では、DNA又はタンパク質を含むスポットを再現性よく形成する必要がある。しかし、現状では、上記何れの方法を採用した場合でも、スポットを再現性良く作製することは技術的に困難を伴う。
【0005】
スポットの再現性よい形成は上記の通り困難であるため、マイクロアレイでは、各スポットに含まれるDNA又はタンパク質の量の均一性を事前に評価することが、測定結果の信頼性及び定量性を得る上で重要となる。
【0006】
各スポットに含まれるDNA又はタンパク質の量の均一性を評価する方法として、例えば、特許文献1及び非特許文献1には、DNAマイクロアレイにおいて、DNAをフルオレセイン等の蛍光色素で標識した後に、当該DNAをスポット状に塗布し、各スポットを蛍光値(蛍光量)により評価する方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、チップ上で行われるDNAの逐次合成において、品質管理用DNAの蛍光値を元に品質管理を行う方法が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、あらゆる配列に相補的な配列からなる蛍光標識DNAをチップに結合させることで評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−501237(公表日:2005年1月13日)
【特許文献2】特表2005−531315(公表日:2005年10月20日)
【特許文献3】特開2008−142020(公開日:2008年6月26日)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nucleic. Acids. Res., 31, 頁e60(2003年6月公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のような蛍光色素が発する蛍光値で評価等を行う従来の方法は何れも、正確な評価を行い難い場合があるという問題を有する。例えば、蛍光色素の蛍光値は、その乾燥状態及び濃度等により異なる(参考文献:第2版 機器分析のてびき 第1集、化学同人、ページ135-146、1996年)。よって、溶液状態(塗布前、又は塗付後間もなく)での蛍光色素の蛍光値と、乾燥し凝集したスポットでの蛍光色素の蛍光値とを単純に比較することができず、スポットあたりの微量のDNA又はタンパク質の絶対量を蛍光値の測定により正確に定量することは困難であった。
【0012】
また、上記従来の方法は何れも、蛍光値の相対比較により、一バッチ内のスポット間の相対的な均一性をある程度の精度で評価できる可能性はある。しかし、上述の通り、スポットあたりのDNA又はタンパク質の絶対量を測定する方法ではないため、当該DNA又はタンパク質の固定化方法が異なる場合、或いは蛍光値の測定条件が異なる場合等では比較が困難である。結果として、異なるバッチ間では、スポット間の相対的な均一性の評価すら出来ないという問題があった。
【0013】
さらに、蛍光色素の退色は、蛍光値を低下させて測定の精度を低下させる原因となる。そのため、測定前のスポットを外光にさらさないよう、取り扱いには充分な注意を要するという問題があった。
【0014】
さらに、DNA又はタンパク質が固定化されるチップの基材は蛍光色素よりも高いバックグラウンド蛍光を示す場合がある。そのため、蛍光値の測定には、共焦点レーザー顕微鏡などのバックグラウンド蛍光を除くことができる高価な測定系を必要とするという問題もあった。
【0015】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば核酸又はタンパク質等からなるプローブのスポット内での固定量を推定する新規な方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本願発明者らは鋭意検討を行った。その結果、スポット中に含まれるプローブ量の評価を、プローブと共存させた粒子状物質の量に基づき行うこと、及び、粒子状物質が発する連続量であるシグナル(例えば蛍光値)を測定するのではなく、離散的な指数であるその粒子数を測定することで、評価精度が向上することを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明にかかるプローブの固定量の推定方法は、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む試料を基体上に供して、当該試料のスポットを1ないしは複数個、基体上に形成する工程と、次いで、少なくとも1つの上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する工程と、次いで、測定された上記粒子状物質の個数から、上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定する工程と、を含むことを特徴としている。
【0018】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、上記粒子状物質が蛍光ビーズであることがより好ましい。蛍光ビーズを用いれば、塗布に伴って乾燥等してもその蛍光値は実質的に変化しない。さらに本発明では、蛍光ビーズの個数を検出するので、1)バックグラウンドよりも高い蛍光値があれば充分に検出可能である。2)また、共焦点レーザー顕微鏡等を使わなくとも、容易にバックグラウンドと分離できるため、蛍光値を測定する場合と比較して安価な測定装置で測定可能である。3)さらに、外光による蛍光の退色又は励起光の強度変化に対しても、測定結果は影響を受けにくいという利点もある。
【0019】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、粒子数の計数が容易であるとの観点では、上記粒子状物質の粒径が1μm以上で3μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、推定の精度がより一層向上するという観点では、上記スポット夫々における粒子状物質の密度が30個/100μm以下で、かつ、当該粒子状物質の含有数が100個/スポット以上の条件を満たすことが好ましい。なお、粒子状物質の個数が測定されるスポットが1つのみである場合には、「スポット夫々」とは単一のスポットを指す。
【0021】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、プローブが、核酸配列、タンパク質、及びアフィニティータグ特異的リガンドからなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0022】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、上記スポットは、上記基体上に供された上記試料のパターンと、この試料のパターンに交差して設けられた流路との交点として、上記基体上に形成されているものであってもよい。例えば、マイクロ流体チップ(マイクロ流路チップ)の基板上に固定された上記試料の直線状パターンと、これと交差するマイクロ流路との交点等が、当該スポットに相当する。
【0023】
本発明にかかるプローブの固定量の推定方法では、上記試料が、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む液体であることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、上記プローブの固定量の推定方法を用いて2つ以上の上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程を含む、プローブが固定された基体の品質検査方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、上記プローブの固定量の推定方法を用いて2つ以上の上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程と、次いで、上記プローブの固定量が不足しているスポットに上記プローブを供して、異なるスポット間でのプローブの固定量を均一化する工程と、を含む、プローブが固定された基体の製造方法(A)を提供する。
【0026】
また、上記製造方法(A)において、上記プローブの固定量を均一化する工程は、上記プローブをエレクトロスプレーデポジション(ESD)法により供することで行われることが好ましい。
【0027】
本発明はまた、上記プローブの固定量の推定方法を用いて少なくとも1つの上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、当該スポットに固定されるべきプローブの固定量の期待値との差を検出する工程と、上記プローブが不足しているスポットに上記プローブを供して、上記期待値との差を解消する工程と、を含む、プローブが固定された基体の製造方法(B)を提供する。
【0028】
また、上記製造方法(B)において、上記期待値との差を解消する工程は、上記プローブをESD法により供することで行われることが好ましい。
【0029】
本発明はまた、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されてなるプローブ固定基体を提供する。
【0030】
本発明はさらに、上記プローブ固定基体と、このプローブ固定基体に形成された夫々のスポットに含まれる粒子状物質の個数、及び、当該粒子状物質の個数から推定された夫々のスポットに含まれるプローブの量、の少なくとも一方を記録した記録媒体と、を含むキットを提供する。なお、当該キットにおいて、プローブ固定基体に形成されたスポットが1つの場合、「夫々のスポット」とは単一のスポットを指す。
【0031】
本発明はまた、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されたプローブ固定基体に対して、上記何れかの推定方法を用いて少なくとも1つのスポットに含まれるプローブの固定量を推定する工程と、上記プローブ固定基体に対して、上記プローブと反応するターゲットを反応させてプローブに反応したターゲット量の値を取得する工程と、推定された上記プローブの固定量に基づき、取得されたターゲット量の上記値を補正する工程と、を含むターゲット反応量の補正方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、プローブ固定基体を撮像する撮像部と、上記撮像部が取得した上記プローブ固定基体の画像を分析して、夫々の上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する粒子数測定部と、上記粒子数測定部が測定した上記粒子状物質の個数から、夫々の上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定するプローブ量推定部と、上記プローブ量推定部が推定した夫々のスポットに含まれるプローブの固定量に基づきプローブ固定基体の品質を判定する品質判定部と、を備える、プローブ固定基体を対象とする製造装置を提供する。なお、当該製造装置に関して、プローブ固定基体に形成されたスポットが1つの場合、「夫々のスポット」とは単一のスポットを指す。
【0033】
本発明にかかる製造装置は、上記撮像部で撮像されるプローブ固定基体を製造するスポット形成手段、及び、上記品質判定部で不良品と判定されたプローブ固定基体上のスポットを修正するスポット修正手段の少なくとも一方を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、核酸又はタンパク質等からなるプローブのスポット内での固定量を精度よく推定することができる新規な方法等が提供されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】乾燥前後における蛍光色素(ローダミンB)と蛍光ビーズとの蛍光の状態を示す図である。
【図3】異なる蛍光ビーズ濃度における、蛍光ビーズの粒子数と蛍光値とを比較するグラフである。
【図4】蛍光ビーズ量と、スポットに含まれる蛍光ビーズの粒子数との関係を表すグラフである。
【図5】本発明の実施例の実験手順を示す図である。
【図6】本発明の実施例に関し、キャップチャー抗体量(プローブ量)と発光量との相関を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例に関し、スポット当たりのキャップチャー抗体量に基づき測定値を補正した結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例に関し、検出可能な蛍光ビーズの粒径の一例を示す図である。
【図9】蛍光ビーズの密度、及びスポット当たりの個数に関する検討結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔実施の形態1〕
(1) プローブの固定量の推定方法
本発明に係るプローブの固定量の推定方法は、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む試料を基体上に供して、当該液体のスポットを1ないしは複数個、基体上に形成する工程(工程Aと称する)と、次いで、少なくとも1つの上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する工程(工程Bと称する)と、次いで、測定された上記粒子状物質の個数から、上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定する工程(工程Cと称する)と、を含んでなる。
【0037】
(プローブ及びターゲット)
本発明において、プローブとは、所定のターゲットに特異的に反応する物質を指す。プローブとして、具体的には例えば、DNA又はRNA等の核酸配列;抗原、抗体、受容体タンパク質又はその断片、タンパク質性のリガンド又はその断片、糖鎖に特異的に結合するレクチン等、所定のターゲットと結合性のあるタンパク質;医薬品候補化合物等の生理活性化合物;アビジン、ストレプトアビジン、グルタチオン、Ni−NTA、抗FLAGタグ(登録商標)抗体、アミロース等のアフィニティータグ特異的リガンド;等が挙げられる。
【0038】
上記核酸配列としては、例えば、DNAチップ、又はRNAチップに固定される核酸プローブと同様のものを採用することができ、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、必要に応じて配列内に人工塩基を含むものであってもよい。また、核酸配列は必要に応じて修飾されていてもよい。核酸配列の長さは特に限定されないが、例えば、20塩基長以上で300k塩基長以下の範囲内のものが挙げられ、好ましくは25塩基長以上で60塩基長以下の範囲内のものが挙げられる。なお、核酸配列が一本鎖の場合には上記塩基長とはmerを意味し、二本鎖の場合には上記塩基長はbpを意味する。プローブが核酸配列の場合、ターゲットは、例えば、プローブに実質的に相補的な核酸配列、又はプローブに特異的に結合するタンパク質等である。
【0039】
プローブとしての上記タンパク質は、例えば、プロテインチップに固定されるタンパク質、固定化抗体、固定化抗原、固定化酵素と同様のものを採用することができ、必要に応じてアミノ酸配列内に人工アミノ酸を含むものであってもよい。また、タンパク質は必要に応じて修飾されていてもよい。タンパク質を構成するアミノ酸配列の長さは特に限定されないが、例えば、当該タンパク質が断片である場合、3アミノ酸残基長以上で70アミノ酸残基長以下の範囲内のものが挙げられ、好ましくは8アミノ酸残基長以上で25アミノ酸残基長以下の範囲内のものが挙げられる。プローブが、抗原である場合にはターゲットは当該抗原に特異的に結合する抗体である。プローブが、抗体である場合にはターゲットは当該抗体により特異的に結合される抗原である。プローブが受容体タンパク質又はその断片である場合には、ターゲットは当該受容体タンパク質に特異的なリガンドである。プローブがタンパク質性のリガンド又はその断片である場合には、ターゲットは当該プローブを認識する受容体又はその断片である。
【0040】
プローブとしての生理活性化合物は、例えば、化合物チップに固定される各種の低分子又は高分子化合物と同様のものを採用することができ、より具体的には医薬品候補化合物、農薬候補化合物、食品添加物、その他が挙げられる。プローブが生理活性化合物である場合には、ターゲットは、一般的には、酵素、受容体タンパク質その他の、プローブによりその活性が調節されるタンパク質である。
【0041】
プローブがレクチンである場合は、ターゲットは糖鎖又は糖脂質、若しくはこれら糖鎖又は糖脂質を表面に有する細胞である。
【0042】
プローブが、アビジン又はストレプトアビジンの何れか、グルタチオン、Ni−NTA、抗FLAGタグ(登録商標)抗体、アミロース等のアフィニティータグ特異的リガンドである場合は、ターゲットは、順に、ビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ(登録商標)、FLAG(登録商標)ペプチド、マルトース結合タンパク、等のアフィニティータグで特異的に標識された核酸、タンパク質、又はリガンドである。また、プローブがビオチン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ(登録商標)、FLAG(登録商標)ペプチド、マルトース結合タンパク等のアフィニティータグ特異的リガンドの場合は、ターゲットは順に、アビジン又はストレプトアビジンの何れか、グルタチオン、Ni−NTA、抗FLAGタグ(登録商標)抗体、アミロース等のアフィニティータグで特異的に標識された核酸、タンパク質、又はリガンドである。
【0043】
(粒子状物質)
本発明において粒子状物質とは、上記プローブとは異なる粒子状の物質を広く指し、具体的には例えば、非蛍光性の各種マイクロビーズ、及び蛍光粒子が挙げられる。蛍光観察による計数が可能という観点からは、例示の中では蛍光粒子がより好ましい。粒子状物質は、工程Bの説明にて詳述するように、その個数を計数可能なものである必要がある。また、粒子状物質は、上記プローブ及びターゲットに対する特異的な反応性を有しないことが好ましい。さらに、液体中に含まれる粒子状物質同士は、同一の規格により製造されたもの(すなわち実質的な同一物)であることが好ましい。粒子状物質は、1種類のみを用いてもよく、あるいは相互に識別し得る複数の種類を所定の割合で混合して同時に用いてもよい。複数種の粒子状物質を混合して用いる場合、これら粒子状物質同士は、例えば、粒径が互いに異なる、発する蛍光が互いに異なる、又は材質が互いに異なる等の点で相互に識別し得る。
【0044】
相互に識別し得る複数の種類の粒子状物質を同時に用いる利点としては、例えば、1)後述する工程Bにて粒子状物質の個数を測定する際に、使用可能な測定機器の選択肢が広がる点(例えば、測定機器aで測定可能な粒子状物質a、測定機器bで測定可能な粒子状物質b、及び測定機器cで測定可能な粒子状物質c、を混合して使用する。)、及び、2)プローブに対して、濃度の異なる複数種の粒子状物質(例えば、高濃度の粒子状物質A、中濃度の粒子状物質B、及び低濃度の粒子状物質C)を混合しておき、基体に形成されたスポット中の粒子状物質A、B、Cのそれぞれの個数を測定することで、単一の粒子状物質を用いた場合に比べ、プローブ量の測定範囲を広げることが出来る点、等が挙げられる。
【0045】
粒子状物質の粒径(直径)は計数が可能な限り特に限定されないが、例えば、30nm(0.03μm)以上で100μm以下の範囲内である。計数の容易さの観点からは、粒子状物質の粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0046】
粒子状物質の粒径の好ましい範囲は、また、基体上に形成されるスポットの直径との関係で規定することもできる。基体上に形成されるスポットの直径が数十μm以上で数百μm以下の範囲内(すなわち、10μm以上で1000μm未満の範囲内)の場合には、当該スポットの直径の1/100以上で1/10以下の範囲内の粒径を有する粒子状物質を用いることが好ましく、この条件を満たす0.1μm以上で10μm以下の範囲内の粒径を有する粒子状物質を用いることが好ましい。より好ましくは、1μm以上で3μm以下の範囲内の粒径を有する粒子状物質を用いることである。
【0047】
また、粒子状物質は、例えばその表面に親水化処理等が施されることで、粒子状物質間で凝集し難いことがより好ましい。親水化処理として、具体的には例えば、粒子状物質の表面へのカルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホン基、水酸基、又は親水性高分子等の導入処理が挙げられる。
【0048】
粒子状物質としての上記蛍光粒子とは、励起光の照射により蛍光を発する粒子である。蛍光粒子として、具体的には例えば、蛍光標識ポリマー、蛍光ラテックス粒子、蛍光シリカ粒子、蛍光ポリスチレン粒子、蛍光ビーズ、又は量子ドット(例えば、カンタムドット社製Qdot(登録商標))等、を用いることができるが、中でも、蛍光色素を添加した合成高分子基材(ポリスチレン、ラテックス、及びアクリル樹脂等)を粒子状に成形してなる蛍光ビーズが、乾燥に伴う蛍光値の変化が比較的少なく好ましい。
【0049】
蛍光ビーズに用いられる上記蛍光色素は、具体的には例えば、フルオロセイン、ローダミン、フィコビリン、アクリジン、クマリン、シアニン、Alexa Fluor(登録商標)(モレキュラープローブ)、Cy色素(登録商標)(GEヘルスケア・ジャパン)、ルテニウム(II)錯体、又はランタノイド錯体など、様々なものを採用可能である。
【0050】
また、粒子状物質としての上記非蛍光性の各種マイクロビーズとは、例えば、上記蛍光粒子を、蛍光色素を含まないように構成したものが挙げられ、より具体的には例えば、ラテックス粒子、シリカ粒子、ポリスチレン粒子等が挙げられる。非蛍光性の各種マイクロビーズは、例えば、可視光領域に主吸収を示す色素材料により着色されていてもよく、又は無色透明であってもよい。
【0051】
また、粒子状物質は、例えば、磁性粒子等を内部に含むことにより磁性を帯びていてもよい。粒子状物質が磁性を帯びていれば、必要に応じて磁場を印加することで、プローブ固定基体から粒子状物質のみを容易に除去可能となる。
【0052】
(工程Aについて)
本発明において、工程Aは、上記粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む試料(組成物)を基体上に供して、当該試料のスポットを1ないしは複数個、基体上に形成する工程である。
【0053】
上記粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む試料は、例えば、液体状、ペースト状、又は固体状(例えば粉体状)等、その形態は特に限定されないが、粒子状物質とプローブとを均一に分散させることがより容易であるとの観点では、液体状であることが好ましい。なお、液体状の範疇には、粒子状物質とプローブとを含むゾル(ゲル化前の溶液)も含まれる。
【0054】
また、上記試料がペースト状、又は固体状である場合、粒子状物質とプローブとを均一に分散させる方法の一例としては、プローブを含む溶液に粒子状物質を添加して均一に混合した後に、温度処理(加温又は冷却)或いは化学的処理などにより、この試料をペースト状、又は固形状にする方法などが挙げられる。
【0055】
上記試料が、粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む液体である場合、当該液体の調製において、粒子状物質とプローブと液体とを混合する順序、その他の条件は特に限定されない。具体的には例えば、1)上記プローブを所定の濃度で含んだ高濃度溶液を上記液体で希釈した後に、当該液体に上記粒子状物質を添加してもよく、又は、2)上記プローブを所定の濃度で含んだ高濃度溶液を、上記粒子状物質を所定の量含んだ上記液体で希釈してもよい。何れの場合でも、上記液体中に最終的に含まれるプローブの量と粒子状物質の量とが明らかになっていればよい。
【0056】
工程Aで用いる上記液体は、上記プローブ及び粒子状物質に対して反応性を示さないことが望まれ、具体的には例えば、水(純水)、生理的食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等の各種緩衝液、メタノール、エタノール、プロパノール、などの有機溶媒等が好ましい。また上記液体中には、プローブ及び粒子状物質以外の試薬、例えば、プローブ又は粒子状物質を安定化するための、または検出反応を促進するための、塩化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、プロテアーゼ阻害剤、グリシン、ベタイン、プロリン、グリセロール、トレハロース、シュークロース、及びポリエチレングリコール等から選択される試薬を添加してもよい。
【0057】
上記液体の単位量中に含まれる粒子状物質の数は、当該粒子状物質の粒径及び種類等に応じて適宜設定すればよい。具体的には例えば、当該数の上限は、基体上に形成されるスポットの面積100μm当たり300個以下の密度となるように設定され、当該スポットの面積100μm当たり35個以下の密度となるように設定することが好ましく、より好ましくは30個以下であり、さらに好ましくは25個以下である。粒子状物質の数の上限を前記した範囲内に設定することにより、後述する工程Bにおいて異なる粒子状物質同士をより確実に識別し易くなるという利点がある。一方、粒子状物質の数の下限は特に限定されないものの、より精度の高い測定結果を得るという観点では、基体上に形成されるスポット1個当たり100個以上であることが好ましい。
【0058】
上記液体の単位量中に含まれるプローブの量は、当該プローブを基体上にスポッティングしてアレイ化し、検出する際の検出感度と反応条件とに準じて適宜設定すればよい。特に限定されないが、プローブがタンパク質の場合は18μg/mL以上で800μg/mL以下の範囲内が挙げられる。
【0059】
測定の精度を向上させるために、上記粒子状物質とプローブとは液体中に出来うる限り均一に分散した状態とすることが好ましい。そのため、必要に応じて、粒子状物質とプローブとを含む液体を攪拌する等の操作を行ってもよい。
【0060】
また、上記粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む試料が液体である場合、後述する工程Bに供される際に、当該液体のスポットは乾燥していてもよい。
【0061】
上記粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む試料(好ましくは液体)が供される基体の種類は特に限定されず、具体的には例えば、ガラス基体、プラスチック基体、シリコン系基体(Si基体、SiC基体等)、及びニトロセルロース膜等の、DNAチップ、プロテインチップ及び化合物チップに使用される基体を採用することができる。基体の形状も特に限定されず、具体的には例えば、平板形状(すなわち基板)、又はマイクロ流体チップ形状、等が挙げられる。
【0062】
上記試料(好ましくは液体)を基体に供する方法(すなわち、塗布の方法)は特に限定されず、具体的には例えば、メカニカルスポッティング法、インクジェットプリンティング法、マイクロコンタクトプリンティング法、ESD法などが利用できるが、形成されるスポットの均一性および再現性に優れる観点からはESD法が好ましい。なお、ESD法を用いる場合には、基体側に、例えばITO(インジウム錫酸化物)薄膜等の導電層を設ける。
【0063】
なお、上記試料(好ましくは液体)のスポットは、1)上記試料を基体にスポット状に塗布することにより形成されてもよいし、又は、2)上記試料を所定のパターンで基体上に供し、この試料のパターンに交差して設けられた流路との交点をスポットとしてもよい。例えば、上記試料を複数本の平行な細線状のパターンとして基体上に供し、この試料のパターンに交差して設けられた複数の流路との交点それぞれをスポットとしてもよい。
【0064】
工程Aでは、上記試料のスポットが複数個、基体におけるスポット形成面上に形成される。形成されるスポットの形状(円形状、矩形状等)、大きさ(直径、面積等)、及び密度等は特に限定されないが、スポットが微小になるほどプローブの固定量の不均一性による影響を受け易いことから、スポットの面積は7.85×10−5mm以上で78.5mm以下の範囲内であることが好ましく、0.07mm以上で0.375mm以下の範囲内であることがより好ましい。また、基体上の単位面積辺りのスポット密度は、1個/cm以上で10個/cm以下の範囲内であることが好ましく、1個/cm以上で2,000個/cmの範囲内であることがより好ましい。
【0065】
(工程Bについて)
工程Bは、上記工程Aの後段の工程として位置づけられ、工程Aで形成された上記スポットの少なくとも1つ、好ましくは夫々のスポット、に含まれる上記粒子状物質の個数を測定する工程である。
【0066】
粒子状物質が上記蛍光粒子の場合、蛍光粒子に励起光を照射して、蛍光粒子が発する蛍光を観察する。この観察には、例えば、個々の蛍光粒子を識別し得る光学分解能をもつ蛍光顕微鏡、又は蛍光スキャナを用いる。すなわち、工程Bでは、従来測定に用いられる連続量である蛍光値(蛍光量)を測定するのではなく、離散的な粒子数を測定することを特徴点の一つとする。
【0067】
また、上記粒子状物質が非蛍光性の各種マイクロビーズの場合、粒子状物質の検出には、透過、位相差、微分干渉、偏光、又は暗視野などの各種顕微鏡による観察;蛍光以外の発光現象を利用した観察;等の、当該マイクロビーズの特性に応じた光学的検出方法を用いることができる。なお、上記蛍光粒子をこれら例示の方法により検出してもよい。
【0068】
また、非蛍光性の各種マイクロビーズが色素材料(但し蛍光色素材料を除く)によって、基体(バックグラウンド)とは異なる色にて着色されている場合には、個々のマイクロビーズを識別し得る光学分解能をもつ光学顕微鏡を用いてスポットの画像を取得し、当該画像を画像分析してマイクロビーズの個数を計数すればよい。
【0069】
なお、粒子状物質の計数は、目視で行ってもよいが、作業が簡便であるという観点では、スポットの画像を取得し、当該画像をソフトウェアによる画像分析によりスポット当たりのマイクロビーズの個数を計数する方法がより好ましい。画像分析に用いるソフトウェアとして、具体的には例えば、ImageJ(実施例参照)等が挙げられる。
【0070】
(工程Cについて)
工程Cは、上記工程Bの後段の工程として位置づけられ、工程Bで測定された上記粒子状物質の個数から、上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定する工程である。
【0071】
工程Aで説明した通り、液体中に含まれる粒子状物質の粒子数とプローブの量との割合は既知(所定の割合)であるため、工程Bにて計数した少なくとも1つのスポット、好ましくは夫々のスポットに含まれる粒子状物質の粒子数から、当該スポットに塗布されたプローブの量(絶対量)を求めることができる。
【0072】
例えば、単位量当たり約100個の粒子状物質と約1ngのプローブとを含む液体を基体に塗布して複数のスポットを形成した場合、当該スポット中に50個の粒子状物質が計数されるとスポット中に0.5ngのプローブが固定されていると推定することができる。
【0073】
或いは、工程Cでは、比較対象となるスポット間での、相対的なプローブの固定量(相対量)を求めるようにしてもよい。例えば、第一のスポット中に50個の粒子状物質が計数され、第二のスポット中に75個の粒子状物質が計数されたとすれば、第二のスポットには第一のスポットと比較して1.5倍(75/50)量のプローブが固定されていると推定することができる。
【0074】
(2) プローブ固定基体、及びキット
上記の工程A〜工程Cを経ることで、蛍光ビーズ等の粒子状物質と、プローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成された本発明のプローブ固定基体が製造される。プローブ固定基体は、具体的には例えば、DNAチップ、又はRNAチップ等の核酸チップ(核酸マイクロアレイ等);プロテインチップ(タンパク質マイクロアレイ);生理活性化合物が配された化合物チップ;レクチンチップ;アフィニティータグ特異的プローブチップ(アビジン、グルタチオン等);核酸、タンパク質、生理活性化合物、レクチン、又はアフィニティー−タグ特異的プローブが配されたマイクロ流体チップ;等である。
【0075】
また、本発明のキットは、1)上記プローブ固定基体と、2)プローブ固定基体に形成された夫々のスポットに含まれる粒子状物質の個数情報、及び、当該粒子状物質の個数から推定された夫々のスポットに含まれるプローブの量に係る情報、の少なくとも一方の情報を記録した記録媒体と、を備えてなる。
【0076】
上記記録媒体の種類は特に限定されず、具体的には例えば、紙媒体、フロッピディスク、又はCD−ROM等が挙げられるが、好ましくはコンピュータ等の情報処理装置にて取り扱い可能な記録媒体である。記録媒体に記録された上記情報は、例えば、後述する「(6)ターゲット反応量の補正方法」を実行するために利用される。
【0077】
また、本発明のキットは、プローブ固定基体から粒子状物質を除去するための、例えば、磁石、又は圧縮気体スプレー、等の粒子状物質除去手段を備えていてもよい。粒子状物質が磁性を帯びたものである場合には、磁石を用いて粒子状物質のみを取り除くことが可能である。また、例えば、プローブ固定基体を叩く等の方法にてプローブ固定基体に機械的振動を付与して、粒子状物質のみを取り除くことも可能である。或いは、圧縮気体スプレーを用いて、圧縮気体(圧縮空気等)で粒子状物質のみを吹き飛ばすことも可能である。
【0078】
(3) プローブ固定基体の品質検査方法、及び製造装置
本発明に係る基体の品質検査方法は、一つの上記プローブ固定基体が有する、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程を含む。すなわち、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」を用いて、一つの上記プローブ固定基体が有する2つ以上のスポット中でのプローブの固定量を推定する。次いで、推定したプローブの固定量を用いて、これら異なるスポット間でのプローブの固定量の分散を測定する(すなわち均一性を評価する)。
【0079】
次いで、上記分散が所定の範囲内であるか否かを判定し、所定の範囲内であれば良品、所定の範囲外であれば不良品と判定する工程をさらに備えることが好ましい。なお、良品及び不良品の判定基準は、例えばプローブ固定基体の用途等に応じて任意に設定すればよい。
【0080】
また、本発明に係るプローブ固定基体の製造装置(品質検査装置を兼ねる)は、撮像部と、粒子数測定部と、プローブ量推定部と、品質判定部とを少なくとも備える。
【0081】
撮像部は、上記粒子状物質と上記プローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されたプローブ固定基体を撮像し、1ないしは複数個の上記スポットを画像化する。撮像部は、具体的には例えば、粒子状物質を観察可能な撮像機能付き各種顕微鏡装置(蛍光顕微鏡等)、又は粒子状物質の特性に応じたスキャナ(蛍光スキャナ等)等で構成される。
【0082】
粒子数測定部は、上記撮像部が取得したプローブ固定基体の画像を分析して、夫々のスポットに含まれる粒子状物質の個数を測定する。粒子数測定部は、具体的には例えば、画像分析用の上記ソフトウェア(ImageJ等)がインストールされた情報処理装置等で構成される。
【0083】
プローブ量推定部は、上記粒子数測定部が測定した粒子状物質の個数から、夫々の上記スポットに含まれるプローブの量を推定する。プローブ量推定部は、具体的には例えば、粒子数測定部と同じ情報処理装置等で構成される。すなわち、情報処理装置等に、プローブと粒子状物質との量的相関情報をインストール又はメモリに格納することにより、当該情報処理装置を用いて夫々のスポットに含まれるプローブの量(絶対量)を推定することができる。或いは、情報処理装置等を用いて、夫々のスポットに含まれる粒子状物質の個数を比較すれば、比較対象となるスポット間での相対的なプローブの固定量(相対量)を推定することができる。
【0084】
品質判定部は、上記プローブ量推定部が推定した夫々のスポットに含まれるプローブの固定量に基づきプローブ固定基体の品質を判定する。品質判定部は、具体的には例えば、粒子数測定部と同じ情報処理装置等で構成される。良品及び不良品の判定基準は、例えばプローブ固定基体の用途等に応じて任意に設定すればよい。判定基準の一例としては、スポット間でのプローブ固定量の分散が所定の範囲内であるか否かを判定し、所定の範囲内であれば良品、所定の範囲外であれば不良品と判定する。
【0085】
なお、撮像部及び粒子数測定部の動作説明は、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」の工程Bの記載も参照することができる。プローブ量推定部の動作説明は、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」の工程Cの記載も参照することができる。
【0086】
本発明に係るプローブ固定基体の製造装置は、さらに、後述するスポット形成手段及びスポット修正手段の少なくとも一方、好ましくは双方を備えていてもよい。
【0087】
上記スポット形成手段とは、上記プローブと粒子状物質とを所定の割合で含む試料を基体上に供して、当該試料のスポットを形成する手段である。上記スポット形成手段にて製造されたプローブ固定基体は、次いで、上記撮像部を用いた撮像に供される。なお、スポット形成手段の動作説明は、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」の工程Aの記載も参照することができる。
【0088】
上記スポット修正手段とは、上記品質判定部で不良品と判定されたプローブ固定基体上のスポットを修正する手段である。すなわち、スポット修正手段は、プローブの固定量が不足しているスポットに、不足している分量のプローブを供することによって当該スポットにおけるプローブの固定量を修正する。スポット修正手段の動作説明は、後述する「(4)プローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法(A)」、及び「(5)プローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法(B)」の記載も参照することができる。
【0089】
上記スポット形成手段、及びスポット修正手段としては、メカニカルスポッティング法、インクジェットプリンティング法、マイクロコンタクトプリンティング法、及びESD法等の方法により試料のパターン(スポット等)形成が可能なパターン形成装置を用いることができるが、中でもESD装置がより好ましい。
【0090】
以下、図1を用いて本発明の製造装置の一例について説明する。図1に概略構成を示すように、製造装置10は、ロボットアーム(基体搬送部)2、顕微鏡装置(撮像部)5、基板保管用のスタッカー3、XYステージ(基体観察用ステージ)4、選別後基板保管用のスタッカー6及びコンピュータ(制御装置・粒子数測定部・プローブ量推定部・品質判定部)1とを備える。
【0091】
粒子状物質が蛍光粒子である場合、顕微鏡装置5は、個々の蛍光粒子を識別し得る光学分解能をもつ蛍光顕微鏡である。顕微鏡装置5はその一構成として白色光と励起光とを切り替え可能な光源装置8、及びCCDカメラ(撮像手段:図示せず)を備える。
【0092】
ロボットアーム2は、プローブ固定基板(プローブ固定基体)7を、基板保管用のスタッカー3からXYステージ4上へ搬送し、かつXYステージ4上から選別後基板保管用のスタッカー6へ搬送する。なお、基体搬送部としてロボットアーム2に代えてベルトコンベアを設けてもよいが、微細なスポット内の粒子状物質の数をより正確に測定する目的では、図1に示す製造装置10の構成がより優れている。
【0093】
XYステージ4は、搭載されたプローブ固定基板7を水平二方向に移動させる。これにより、顕微鏡装置5を用いた基板7の全体観察を可能とする。プローブ固定基板7が比較的小型の場合、又は顕微鏡装置5に代えて蛍光スキャナを用いる場合には、XYステージ4に代えて固定ステージを用いてもよい。
【0094】
製造装置10では、ロボットアーム2、顕微鏡装置5、基板保管用のスタッカー3、XYステージ4、及び選別後基板保管用のスタッカー6はいずれも、その動作がコンピュータ1により自動制御されている。すなわち、製造装置10を用いて、プローブ固定基体の品質検査を自動化することができる。
【0095】
(4) プローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法(A)
本発明に係るプローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法の一例は、一つの上記プローブ固定基体が有する、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程と、プローブの固定量が不足しているスポットに当該プローブを供して、異なるスポット間でのプローブの固定量を均一化する工程と、を含む。
【0096】
すなわち、本発明に係るプローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法では、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」を用いて、一つの上記プローブ固定基体が有する2つ以上の上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定する(「プローブ固定量推定工程」)。次いで、推定したプローブの固定量を用いて、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する(「均一性評価工程」)。さらに、プローブの固定量が不足しているスポットに上記プローブを供して、異なるスポット間でのプローブの固定量を均一化する(「不均一性解消工程」)。
【0097】
上記プローブ固定量推定工程では、夫々のスポット中でのプローブ固定量の推定情報と、基体上でのスポットの位置情報とがセットで取得される。これら情報が、均一性評価工程に供されることで、基体上の所定の位置にあるスポットが、他の位置にあるスポットと比較してどの程度プローブの固定量が多い/少ないかという不均一性情報が取得される。
【0098】
不均一性解消工程では、例えば、基体上に形成されたスポットのうち、不均一性の許容範囲を越えてプローブの固定量が少ないものに対してのみプローブを再供給(追加)する。これにより、スポット間でのプローブの固定量の不均一性を、許容される範囲内とすることができる。
上記不均一性解消工程における、スポットへのプローブの供給は、具体的には例えば、メカニカルスポッティング法、インクジェットプリンティング法、マイクロコンタクトプリンティング法、ESD法などが利用できるが、プローブを乾燥した粉体として塗布可能で、スポットを溶解することがないという観点ではESD法が好ましい。
【0099】
このように製造されたプローブ固定基体は、例えば生化学的検査等において、当該プローブと特異的に反応するターゲットを反応させる。夫々のスポットにおけるプローブの固定量が許容される不均一性の範囲内であることから、このプローブ固定基体を用いれば、正確な生化学的検査等の結果を得ることができる。
【0100】
(5) プローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法(B)
本発明に係るプローブ固定基体の製造方法又はスポットの修正方法の他の例では、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」を用いて、一つの上記プローブ固定基体が有する少なくとも1つの上記スポット中、好ましくは夫々のスポット中でのプローブの固定量を推定する(「プローブ固定量推定工程」)。次いで、当該スポットに固定されるべきプローブの固定量の期待値とプローブ固定量(上記推定値)との差を検出する(「差分取得工程」)。さらに、プローブの固定量が不足しているスポットにプローブを供して、上記期待値との差を解消する(「差分解消工程」)。
【0101】
上記プローブ固定量推定工程では、夫々のスポット中でのプローブ固定量の推定情報と、基体上でのスポットの位置情報とがセットで取得される。これら情報が、差分取得工程に供されることで、基体上の所定の位置にあるスポット毎に、プローブの固定量の期待値と比較してどの程度、プローブの固定量が多い/少ないかという差分情報が取得される。
【0102】
差分解消工程では、例えば、基体上に形成されたスポットのうち、プローブの固定量が期待値より少ないものに対してのみプローブを再供給(追加)する。これにより、各スポットのプローブの固定量を期待値に近づけることが可能となる。
【0103】
上記差分解消工程における、スポットへのプローブの供給は、具体的には例えば、メカニカルスポッティング法、インクジェットプリンティング法、マイクロコンタクトプリンティング法、ESD法などが利用できるが、プローブを乾燥した粉体として塗布可能で、スポットを溶解することがないという観点ではESD法が好ましい。
【0104】
このように製造されたプローブ固定基体は、例えば生化学的検査等において、当該プローブと特異的に反応するターゲットを反応させる。夫々のスポットにおけるプローブの固定量はほぼ期待値と同じであることから、このプローブ固定基体を用いれば、正確な生化学的検査等の結果を得ることができる。
【0105】
(6) ターゲット反応量の補正方法
上記の項目(4)及び(5)では、プローブ固定基体上でプローブの追加を行うことで、夫々のスポットを修正する方法を説明した。しかし、以下に述べるように、プローブ固定基体に対してターゲットを反応させた後に、得られたデータを補正してもよい。
【0106】
すなわち、本発明に係るターゲット反応量の補正方法は、上記「(1)プローブの固定量の推定方法」を参照して、プローブ固定基体が有する少なくとも1つのスポットにおけるプローブの固定量を推定する。次いで、当該プローブ固定基体に対してターゲットを反応させて、プローブに反応したターゲット量の値をスポット毎に取得する。次いで、推定された上記プローブの固定量に基づき、取得されたターゲット量の上記値をスポット毎に補正する。
【0107】
ターゲット量の値を補正する工程では、例えば、スポット毎に、反応したターゲット量の値をプローブの固定量(推定量)で除し、これを補正後のターゲット反応量の値とする。この補正により、夫々のスポットにおけるターゲット反応量を、プローブの単位量ベースで比較することが出来るため、測定の精度がより一層向上する。
【0108】
上記ターゲット反応量の補正方法は、一つのプローブ固定基体内におけるスポット間での測定値の補正に適用可能で、さらには、複数のプローブ固定基体間での測定値の補正にも適用可能である。
【0109】
また、上記「項目(2)プローブ固定基体、及びキット」の欄で記載したキットが備える記録媒体が格納した情報は、上記したターゲット反応量の補正に用いることができる。
【実施例】
【0110】
以下、参考例、及び実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0111】
〔参考例1:乾燥に伴う蛍光の変化〕
96穴プレートの各ウェルに、75μg/mLのローダミンB(ワコー)の水溶液、0.25重量%で蛍光ビーズ(蛍光イエローグリーン・カルボキシル基修飾ポリスチレン・ラテックスビーズ(平均粒径0.03μm、水懸濁液)、シグマアルドリッチ社製)を含む水、又はブランク(水)を1μLずつ滴下した後、オリンパス社製蛍光顕微鏡(BX51 WI)で蛍光観察を行った。次いで、そのまま放置し乾燥させた各々のスポットを再度蛍光観察した。その結果、図2に示すように、ローダミンBは乾燥に伴う顕著な蛍光の減少が見られたが、蛍光ビーズは乾燥しても充分な蛍光が見られた。このためローダミンBをプローブと混合して滴下した場合には、ローダミンBの乾燥によって大幅に蛍光値が低下し、滴下されたプローブ量をその蛍光値に基づき正確に見積もることが難しいと考えられる。一方、蛍光ビーズを用いた場合、乾燥しても顕著な蛍光値の減少が見られずその計数が可能なことから、プローブ量の推定に用いることができることが判明した。
【0112】
〔参考例2:蛍光ビーズ濃度に対する、蛍光値と粒子数との比較〕
幅250μm、深さ115μmの微細な流路(チャンネル)を16本持つ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のマイクロ流路を作製した。次いで、濃度が250ng/mLから2500μg/mLとなるように水で10倍ずつ5段階希釈した、蛍光ビーズ(蛍光オレンジ・カルボキシル基修飾ポリスチレン・ラテックスビーズ(平均粒径1μm、水懸濁液)、シグマアルドリッチ社製)を、マイクロ流体チップ用送液装置(フューエンス社製)を用いて、各濃度3チャンネルずつマイクロ流路に注入した。残りの1チャンネルにはブランクとして水を注入した。
【0113】
次いで、浜松ホトニクス社製冷却CCDカメラ(ORCAII)を接続した、倍率1倍のオリンパス社製蛍光顕微鏡(BX-51 WI)を用いて、このマイクロ流路の蛍光画像を撮影した。蛍光フィルターは、オメガオプティカル製蛍光フィルター(XF102―2)を用いた。
【0114】
撮影した蛍光画像は、ImageJ(参考文献:バイオフォトニクス インターナショナル、11巻, ページ36−42、2004年)を用いて分析した。具体的には、蛍光画像に写りこんだマイクロ流路上において、幅250μm、長さ750μmの範囲(容量約22nL)のピクセル輝度の平均を求め、ブランクの数値を差し引くことで、蛍光ビーズの各濃度における蛍光値とした。
【0115】
また、蛍光顕微鏡の倍率を5倍に上げて同様に蛍光画像の撮影を行い、ImageJを用いて同様に幅250μm、長さ750μmの範囲に存在する蛍光ビーズの粒子数を測定した。
【0116】
そして、蛍光値、粒子数とも、各濃度3チャンネルの平均値と標準偏差とを求めた。その結果、図3に示すように、蛍光値では250μg/mL(およそ1グリッドあたり5,500pg)以上で検出が出来たのに対し、粒子数では2.5μg/mL(55pg)以上で検出が出来、蛍光ビーズを用いる場合には粒子数による観察の方が約100倍感度が高いことが示された。
【0117】
〔参考例3:蛍光ビーズ量と粒子数との相関〕
フューエンス社製エレクトロスプレー装置(ES-3200)を用い、縦26mm、横76mm、厚み1.1mmのITOコートスライドガラス(ITOガラス:オプトンジャパン社製)上に、ESD法を用いて、蛍光ビーズ(参考例2参照)を幅約750μmで長さ14mmの細線パターン状に均一にスプレーした。この細線パターンは、夫々が1本あたり5ng、10ng、20ng、及び40ngの蛍光ビーズを含むように、4本形成された。
【0118】
次いで、この細線パターンと交差するように、PDMS製の上記マイクロ流路(参考例2参照)を設置し、各流路と細線パターンとの交点を1スポット(幅250μm、長さ750μm)として、その蛍光ビーズ数を測定した。1スポットあたりの蛍光ビーズ量は、約90pg〜900pgである。細線パターン1本あたりに形成される16個のスポットについて、蛍光ビーズの粒子数の平均と標準偏差とを同様に求め、図4に示した。
【0119】
その結果、蛍光ビーズ量とその粒子数との間に、R2=0.958の高い相関性が見られ、回帰直線より蛍光ビーズは1pgあたり約1.3個と求められた。このため、1スポットあたりの粒子数から、エレクトロスプレーされた蛍光ビーズ量を求めることができ、結果として、蛍光ビーズと、塗布するDNAやタンパク質などのサンプル(プローブ)との量比から、スポット上のサンプル(プローブ)量を求められることが示された。
【0120】
〔実施例1:蛍光ビーズによるスポット上のタンパク(プローブ)量の測定〕
純水に対して脱塩した、抗マウスインターロイキン2(IL-2)キャプチャー抗体(eBioscience)90.4μg/mLに、蛍光ビーズ(参考例2参照)を終濃度29.0μg/mL(参考例3より約3.77×10個/mL)になるように添加し、エレクトロスプレー装置(ES-3200)を用いて、ITOガラス上に、86.3nL、173nL、345nL、690nL、1,380nLずつ、幅約750μm、長さ14mmの細線パターン状に、均一にスプレーした。これにPDMS製のマイクロ流路(参考例2参照)をセットして、マイクロ流体チップを作製した。
【0121】
オリンパス製蛍光フィルター(U-NIBA3)を用いて、オリンパス社製蛍光顕微鏡でマイクロ流体チップ上の各スポット(幅250μm、長さ750μm)中の粒子数を測定した後、図5に示すスキーム1に従い、ブロッキング後、順次、IL-2抗原(eBioscience)の注入、ビオチン標識抗マウスIL-2検出抗体(eBioscience)の注入、アビジン-HRP(eBioscience)の注入を行い抗原抗体反応を行った後、酵素化学発光法により反応したスポットを検出した。
【0122】
結果を図6に示す。スプレーサンプル(液体)中における、キャプチャー抗体(プローブ)と蛍光ビーズ(粒子状物質)との濃度比より、蛍光ビーズ1個あたりのキャプチャー抗体は約2.40pgであり、スポット上の蛍光ビーズ数から、当該スポットに塗布されたキャプチャー抗体量(蛍光ビーズ数×2.40pg)を求めることができた。
【0123】
アーティファクトではない発光が観察された60個のスポット夫々について、蛍光ビーズ数からキャプチャー抗体量を求めた。次いで、夫々のスポットについて、求めたキャプチャー抗体量と、酵素化学発光法による発光値との相関を調べると、図6に示すようにR2=0.5722の直線性が求められた。すなわち、塗布されたキャプチャー抗体量と、酵素化学発光法による発光値との間には、相関性が示された。
【0124】
このため、スポット上のキャプチャー抗体量を蛍光ビーズを用いて事前に検査し、一定量のキャプチャ抗体が固定化されているマイクロ流体チップを選別するか、足りないものはさらにキャプチャー抗体を追加することで、各スポット上のキャプチャー抗体量を一定にし、マイクロ流体チップの品質を向上することができる。
【0125】
さらに、図6に示す、キャプチャー抗体量と発光量との相関式より、測定された発光量を、スポットあたりのキャプチャー抗体量から求められる発光量の計算値で割って補正をすると、全体の均一性が変動係数(CV)21%から13%に改善された(図7参照)。このように、スポット上のプローブ量で測定値を補正することで、得られる測定値データの品質を改善することもできる。
【0126】
〔参考例4:蛍光ビーズの好適な粒径の検討〕
参考例2と同様の条件で、蛍光顕微鏡の倍率を5倍に設定し、平均粒径0.03μm(蛍光イエローグリーン)、0.05μm(蛍光オレンジ)、0.5μm(蛍光オレンジ)、及び1μmの蛍光ビーズ(蛍光オレンジ)(いずれもカルボキシル基修飾ポリスチレン・ラテックスビーズ(水懸濁液)、シグマアルドリッチ社製)を励起光で5秒間露光した後に観察した。その結果、この実験条件下では、図8に示すように、個々の粒子としての形状まで観察可能な粒径の最小値は1μmであった。そのため、参考例2の条件における、実用的な蛍光ビーズの粒径の下限は1μmである。なお、作製するスポットの大きさ、蛍光ビーズの種類、及び観察の条件等を変更すれば、観察可能な蛍光ビーズの粒径は変わりうる。
【0127】
〔参考例5:ビーズの好適な密度/個数の検討〕
粒径1μmから3μmのビーズを用いて、ビーズ密度の上限値を調べた。平均粒径1μm(参考例2参照)(濃度2、4、8、16、31μg/mL)、及び2μm(蛍光オレンジ・カルボキシル基修飾ポリスチレン・ラテックスビーズ(水懸濁液)、シグマアルドリッチ社製)(濃度31、63、125、250、500μg/mL)の二種類の蛍光ビーズを用い、参考例2と同様の条件で、顕微鏡の倍率を5倍にし、同様に蛍光画像の撮影を行い、ImageJを用いて同様に幅250μm、長さ750μmの範囲に存在する蛍光ビーズの粒子数を調べた。粒径3μm(濃度31、63、125、250、500μg/mL)の場合は、非蛍光性のラテックスビーズ(水懸濁液、シグマアルドリッチ社製)を用いて上方から白色光で照射し、ビーズによって散乱した光を検出した。
【0128】
結果を図9に示す。蛍光ビーズの粒径が1μm及び2μmの場合には、スポット100μm当たりの粒子数が30個以下であれば、蛍光ビーズの濃度と粒子数との関係に明確な相関が見られ好適であった。ビーズの粒径が3μmで、かつ当該ビーズによる光の散乱を用いて観察をした場合には、スポット100μm当たりの粒子数が24個以下であれば、ビーズの濃度と粒子数との関係に明確な相関が見られ好適であった。
【0129】
なお、測定の条件等を変更すれば、ビーズの濃度と粒子数との関係に明確な相関が見られる範囲は変わり得る。よって、スポット100μm当たりの粒子数が30個を上回る場合でも本発明を適用しうる。
【0130】
以上、参考例及び実施例にて示すように、蛍光ビーズは蛍光色素が基材の内部に添加されており、塗布に伴って乾燥しても蛍光色素の周囲の環境は変わらないため、蛍光値は変わらない。しかし基材の分だけ、同じ量の蛍光色素に比べ蛍光値が下がるため、蛍光ビーズの蛍光値でスポット量を評価するのは実際的でなかった。そこで、蛍光ビーズの粒子数を測定したところ、粒子数の方が蛍光値よりも感度が高く、デポジット量評価に適していることが分った。また粒子として検出するので、バックグラウンドよりも高い蛍光値があれば検出可能で、かつ外光による蛍光の退色又は励起光の強度変化に対しても、測定結果は影響を受けにくい。また、共焦点レーザー顕微鏡を使わなくとも、容易にバックグラウンドと分離できるため、蛍光値を測定する場合と比較して安価な測定装置で測定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、核酸又はタンパク質等からなるプローブのスポット内での固定量を精度よく推定することができる新規な方法等が提供される。
【符号の説明】
【0132】
1 コンピュータ(粒子数測定部・プローブ量推定部・品質判定部)
5 顕微鏡装置(撮像部)
10 製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む試料を基体上に供して、当該試料のスポットを1ないしは複数個、基体上に形成する工程と、次いで、
少なくとも1つの上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する工程と、次いで、 測定された上記粒子状物質の個数から、上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定する工程と、を含むことを特徴とするプローブの固定量の推定方法。
【請求項2】
上記粒子状物質が蛍光ビーズであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記粒子状物質の粒径が1μm以上で3μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記スポット夫々における粒子状物質の密度が30個/100μm以下で、かつ、当該粒子状物質の含有数が100個/スポット以上の条件を満たすことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
プローブが、核酸配列、タンパク質、及びアフィニティータグ特異的リガンドからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記スポットは、上記基体上に供された上記試料のパターンと、この試料のパターンに交差して設けられた流路との交点として、上記基体上に形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記試料が、粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む液体であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の方法を用いて2つ以上の上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程を含むプローブが固定された基体の品質検査方法。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載の方法を用いて2つ以上の上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、異なるスポット間でのプローブの固定量の均一性を評価する工程と、次いで、
上記プローブの固定量が不足しているスポットに上記プローブを供して、異なるスポット間でのプローブの固定量を均一化する工程と、を含むことを特徴とするプローブが固定された基体の製造方法。
【請求項10】
上記プローブの固定量を均一化する工程は、上記プローブをエレクトロスプレーデポジション法により供することで行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7の何れか一項に記載の方法を用いて少なくとも1つの上記スポットに含まれるプローブの固定量を推定し、当該スポットに固定されるべきプローブの固定量の期待値との差を検出する工程と、
上記プローブが不足しているスポットに上記プローブを供して、上記期待値との差を解消する工程と、を含むことを特徴とするプローブが固定された基体の製造方法。
【請求項12】
上記期待値との差を解消する工程は、上記プローブをエレクトロスプレーデポジション法により供することで行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されてなることを特徴とするプローブ固定基体。
【請求項14】
請求項13に記載のプローブ固定基体と、
上記プローブ固定基体に形成された夫々のスポットに含まれる粒子状物質の個数、及び、当該粒子状物質の個数から推定された夫々のスポットに含まれるプローブの量、の少なくとも一方を記録した記録媒体と、を含むことを特徴とするキット。
【請求項15】
粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されたプローブ固定基体に対して、請求項1から7の何れか一項に記載の方法を用いて少なくとも1つのスポットに含まれるプローブの固定量を推定する工程と、次いで、
上記プローブ固定基体に対して、上記プローブと反応するターゲットを反応させてプローブに反応したターゲット量の値を取得する工程と、
推定された上記プローブの固定量に基づき、取得されたターゲット量の上記値を補正する工程と、を含むことを特徴とするターゲット反応量の補正方法。
【請求項16】
粒子状物質と、所定のターゲットに反応するプローブとを所定の割合で含む1ないしは複数個のスポットが基体上に形成されたプローブ固定基体を製造する装置であって、
プローブ固定基体を撮像する撮像部と、
上記撮像部が取得した上記プローブ固定基体の画像を分析して、夫々の上記スポットに含まれる上記粒子状物質の個数を測定する粒子数測定部と、
上記粒子数測定部が測定した上記粒子状物質の個数から、夫々の上記スポットに含まれる上記プローブの量を推定するプローブ量推定部と、
上記プローブ量推定部が推定した夫々のスポットに含まれるプローブの固定量に基づきプローブ固定基体の品質を判定する品質判定部と、を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項17】
上記撮像部で撮像されるプローブ固定基体を製造するスポット形成手段、及び、上記品質判定部で不良品と判定されたプローブ固定基体上のスポットを修正するスポット修正手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項16に記載の製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145110(P2011−145110A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4309(P2010−4309)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】