説明

プローブカード,プローバ

【課題】 接触端子の微細化及びその配列の狭ピッチ化がなされていても,プローブカードと被検査物とを近接させて位置決めしている状態で,プローブカードの接触端子と被検査物との接触状況を検出できること。
【解決手段】 プローブカードX1が,支持部材1に対して一部が固定支持されて弾性変位する板ばね部材3に複数の接触端子2が保持された構造を有する場合に,接触端子2と被検査物15との接触によって生じる板ばね部材3の変位を検知する。例えば,板ばね部材3に近接して設けられた電極部材4と板ばね部材3との導通状態によって検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体ウェハ等の被検査物の通電検査に用いるプローブカード及びそのプローブカードと被検査物とを位置決めして通電検査を行うプローバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の電子部品を被検査物とする通電検査では,電気的な接続装置としてプローブカードが用いられる。
プローブカードは,被検査物表面のICの端子や配線パターン等に接触する接触端子が,支持部材に対して片持ち梁状に支持されること等によって弾性変位するよう支持され,各接触端子が前記支持部材側のプリント基板等に形成された信号配線と電気的に接続された構成を有している。そして,前記信号配線に対して各種の電機子信号を入出力することにより,被検査物の通電検査を行う。
このプローブカードを用いた通電検査において,プローブカードが備える複数の接触端子と被検査物との相対位置を制御することは,電気的な接続状態を安定化するため,さらには,過度な圧接により被検査物やプローブカードが磨耗やダメージを被ることを避けるためにも重要である。
一般に,プローブカードと被検査物との位置決め,及び前記支持部材側の信号配線に対する電気信号の入出力は,プローバと呼ばれる装置により行う。
プローバにより,プローブカードと被検査物との位置決めを行う場合,プローブカードと被検査物との接触状況を作業者の目視により確認しながら微調整を行ったり,事前に(プローブカードと被検査物とを離間させた状態で),プローバが備える静電容量センサーや画像認識装置により,プローブカードが備える複数の接触端子各々の位置(プローブカードの支持部に対する相対位置)を検出し,その検出位置に基づいて,プローバによりプローブカードと被検査物とを自動で位置決めしたりしている。
しかし,作業者の目視確認では精度が十分といえず,また,プローバにより事前に前記接触端子の位置検出を行う方法では,プローブカードと被検査物とを近接させて位置決めしている状態で,前記接触端子の被検査物に対する実際の接触状況を把握できない。
【0003】
これに対し,従来,プローブカードと被検査物とを位置決めしている状態で,プローブカードの接触端子と被検査物との接触状況を検出する技術が各種提案されれいる。
例えば,特許文献1には,複数の接触端子の列と同じ高さに形成された針を設け,この針が被検査物表面のダミー電極に触れてわずかに上昇すると,その針と電気的に接触した他の短針との接触が外れることで導通が遮断され,これにより接触端子と被検査物との接触有無を検知する技術が示されている。さらに,この特許文献1には,被検査物に接触する針の変位を光信号に変換した後に電気信号に変換する技術が示されている。
また,特許文献2,特許文献3及び特許文献4にも,被検査物に接触する接触端子(針)の変位を電気信号に変換することによりプローブカードと被検査物との接触状態を検知するものが示されている。
【0004】
一方,近年の電子部品の高集積化に伴い,被検査物(電子部品)における電極配置の高密度化,狭ピッチ化が進み,これに応じてプローブカードにおける接触端子の微細化及びその配列の狭ピッチ化が進んでいる。
このようにごく狭ピッチで配列される接触端子は,例えば,特許文献5,特許文献6,特許文献7及び特許文献8等に示されるように,フォトリソグラフィ技術とメッキとによる端子形成技術を用いて作られる。これらの技術を用いれば,原理的には,半導体製造と同等レベルまでの微細化が可能となる。
なお,従来の一般的なプローブカードでは,接触端子を針状に形成してそれ自体を弾性変形させるこにより,被検査物との相対位置のばらつきや傾きを吸収していたが,微細化された接触端子を有するプローブカードでは,例えば特許文献7に示されるように,支持体に対して一部が固定された板ばねに,複数の接触端子(接触子ユニット)を保持させ,その板ばねの弾性変形によって被検査物との相対位置のばらつきや傾きを吸収する構成が提案されている。
【特許文献1】特許第3441835号公報
【特許文献2】特開平11−214454号公報
【特許文献3】特開平10−213597号公報
【特許文献4】特開平10−239399号公報
【特許文献5】特開2001−330628号公報
【特許文献6】特開2002−228685号公報
【特許文献7】特開2002−311049号公報
【特許文献8】特開2002−71719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,接触端子の狭ピッチ化(接触端子の微細化)が進むと,従来のように接触端子自体の変位を検出することが困難であるという問題点があった。
以下,これについて説明する。
プローブカードにおける接触端子の微細化,狭ピッチ化が進むと,変位検知に必要な変位量を確保できなくなる。
接触端子が片持ち梁形状である場合,接触端子の先端の変位yは,次の(1)式で表される。
y=WL3/(3EI) …(1)
但し,Wは荷重,Lは梁の長さ,Iは断面2次モーメント,Eはヤング率である。さらに,断面2次モーメントIは,次の(2)式で表される。
I=bh3/12 …(2)
但し,bは梁の幅,hは梁の高さである。
また,梁にかかる最大応力は,次の(3)式で表される。
σ=WLh/(2I) …(3)
これら(1)式〜(3)式より,接触端子のピッチを狭くするために梁の幅bを小さくしていくと,同じ荷重Wに対する梁の変位yは大きくなるが,梁にかかる応力σも増大するため,接触端子の塑性変形が生じてしまう。
また,接触端子の塑性変形が生じないように,梁の長さL,高さhを調整しても,変位yと応力σとはトレードオフの関係にあり,曲げによる応力σを小さく抑えた場合には,変位yも小さくする必要がある。
例えば,接触端子の材料として,ヤング率が200GPa程度,引張強度が100kg/mm2程度である高強度材料を用い,梁の幅bが15μm,高さhがその倍の30μmであるハイアスペクトに形成されたものであるとしても,2gの荷重がかかったときに塑性変形を起こさないためには,梁の長さLを100μm以下に抑えなければならず,そのときの梁(接触端子)の先端部分の変位(変形量)は最大で1μm程度となる。また,強度的な余裕を考慮すれば,さらにその1/2以下の変位に抑えることが通常であり,実際に接触の有無を検知するためには,そこからさらに1/10程度の変位を検知しなければならない。従って,数十nmオーダーの変位を検知することが必要となり,そのような高分解能の変位センサを設けることは非現実的である。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,接触端子の微細化及びその配列の狭ピッチ化がなされていても,プローブカードと被検査物とを近接させて位置決めしている状態で,プローブカードの接触端子と被検査物との接触状況を検出できるプローブカード及びプローバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は,プローブカードが,被検査物と接触する接触端子が微細である場合に好適な構造,即ち,支持部材に対して一部が固定支持されて弾性変位する板ばね等の弾性部材に複数の接触端子が保持された構造を有する場合に,接触端子と被検査物との接触によって複数の前記接触端子各々への押圧(荷重)の合計押圧相当分が前記弾性部材にかかり,その弾性部材が比較的大きく変位(変形)することに着目したものである。即ち,その変位を検知することによって接触端子と被検査物との接触状態を間接的に検知するものである。
ここで,接触端子自体の変位量と弾性部材の変位量とは必ずしも一致するものではないが,接触端子が被検査物に当接することによって必ず変位するものであるので,従来の検知対象であった接触端子自体の変位とほぼ同様に取り扱うことができる。
【0007】
より具体的には,例えば,前記弾性部材が導電性を有する場合は,それを前記支持部材側に設けられた信号配線に電気的に接続し,そうでない場合は,前記弾性部材の表面に導電部を形成させてこれを前記信号配線に電気的に接続するとともに,そのような前記弾性部材に対し,前記信号配線に電気的に接続した1又は複数の電極部材(第1の電極部材)を,各々前記接触端子を保持する側と反対側面に近接して,或いは前記接触端子を保持する側の面に接して設けた構成が考えられる。
これにより,前記信号配線側において,前記弾性部材側(或いはその表面の導電部側)と前記電極部材側との間の導通状態を検知すれば,前記弾性部材の変位状態を検知できる結果,間接的に前記被検査物に対する前記接触端子の接触状態を検知できる。
即ち,前記電極部材を前記弾性部材に上記のように近接配置した場合には,前記接触端子が前記被検査物に接触(当接)することにより前記弾性部材が前記電極部材との間隔以上変位すると,それが前記電極部材と接触することによって遮断状態から導通状態に変化する。逆に,前記電極部材を前記弾性部材に上記のように接して配置した場合には,同様に前記弾性部材が変位すると,それが前記電極部材と離間することによって導通状態から遮断状態に変化する。
そして,このような前記電極部材を異なる位置に複数配置すれば,前記弾性部材の変位状態の分布を検出することができる。
例えば,複数の前記電極部材の前記弾性部材に対する近接部又は接触部を,複数の前記接触端子の配列方向の異なる位置に配置すれば,前記接触端子の配列方向における当該プローブカードと前記被検査物との相対的な傾きの有無を検知できる。
その他,前記接触端子の保持側に接する前記電極部材と,その反対側に近接する前記電極部材との両方を組み合わせれば,まず,前記接触端子の保持側に接する前記電極部材によって前記接触端子が前記被検査物に接触(当接)したことを検知でき,さらに,その反対側に近接する前記電極部材によって前記接触端子が所定の押圧力で前記被検査物に押圧されたことを検知できる。
また,前記弾性部材は,前記支持部材に対する固定支持位置から離れた位置ほど大きく変位する。このため,複数の前記電極部材(第1電極部材)の前記弾性部材に対する近接部又は接触部が,前記弾性部材の前記支持部材に対する固定支持位置から各々異なる距離に配置すれば,前記弾性部材の変位状態を多段階で検知でき,当該プローブカードと被検査物との間隔が適切であるか否かのみならず,前記弾性部材の変位−荷重特性から,どの程度の荷重がかかっているかの検出も可能となる。
また,何らかの原因で,前記弾性部材或いはその表面に形成された導電部を前記信号配線側に電気的に接続する構成をとることが難しい或いはできない場合であっても,前述と同様の電極部材(第2電極部材)を複数設けることにより,それら電極部材相互間の導通状態を検知することによって同様の変位検知を行うことができる。
【0008】
一方,前記弾性部材に,前記信号配線に電気的に接続された歪みゲージを貼り付けたものであれば,前記弾性部材の変位をアナログ的に検出できるので,前記接触端子の接触の有無のみならず,前記弾性部材の変位−荷重特性から,どの程度の荷重がかかっているかについてより詳細に検出することが可能となる。但し,この場合,歪みゲージに対する信号の入出力経路,例えば,プローバにおける信号の入出力部等に,ブリッジ回路や微小電圧変化の検出回路(アンプ等)を設ける必要がある。
以上示した構成は,フォトリソグラフィ技術によって各々近接して形成された複数の接触端子(狭ピッチ(例えば,40μm以下のピッチ)で配列された微細な接触端子),即ち,前記被検出物との接触による変位が微小であるためその検知が困難な接触端子を有するプローブカードに適用することが好適である。
【0009】
また,前記弾性部材の変位を検知する手段を,プローブカードと被検査物との位置決め及び前記信号配線に対する信号の入出力を行うプローバに設けたものであってもよい。例えば,静電容量センサやレーザビームを用いた変位センサ等により,非接触で前記弾性部材の変位を検知するものであれば,前記被検査物の種類ごとに製作されるプローブカードに変位検出部を設ける場合に比べ,プローブカードの基本的な構造が同じであれば,その種類を問わずより汎用的なものとできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,プローブカードが,支持部材に対して一部が固定支持されて弾性変位する板ばね等の弾性部材に複数の接触端子が保持された構造を有する場合に,接触端子と被検査物との接触によって生じる前記弾性部材の変位(変形)を検知することにより,前記接触端子の微細化及びその配列の狭ピッチ化がなされていても,プローブカードと前記被検査物とを近接させて位置決めしている状態で,前記接触端子と前記被検査物との接触状況を間接的に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の第1実施形態に係るプローブカードX1の概略側面図,図2はプローブカードX1が半導体ウェーハに当接した状態を表す概略側断面図,図3は本発明の第2実施形態に係るプローブカードX2の概略側面図及び主要部の斜視図,図4は本発明の第3実施形態に係るプローブカードX3の概略側面図及び主要部の斜視図,図5は本発明の第4実施形態に係るプローブカードX4の概略側面図,図6は本発明の第5実施形態に係るプローブカードX5の概略側面図,図7は本発明の第6実施形態に係るプローブカードX6の概略側面図である。
【0012】
(第1実施形態)
まず,図1に示す側面図を用いて,本発明の第1実施形態に係るプローブカードX1の構成について説明する。
プローブカードX1は,その本体であるプリント基板等の支持部材1に対し,固定部材9や補強部材8によって一端が固定支持されることにより,片持ち梁状に支持された板ばね部材3を備えている。これにより,前記板ばね部材3は,押圧が加わることによって弾性変位する。
さらに,プローブカードX1は,被検査物である半導体ウェーハ15に接触する複数の接触端子2(導電性の接触子)を備え,その接触端子2が,剛体である保持基材6を介して前記板ばね部材3により保持された構成を有している。
前記接触端子2各々は,前記保持基材6に対して片持ち梁状に固定支持されており,わずかではあるが,押圧されることによって弾性変位する。これにより,半導体ウェーハ15表面の若干の凹凸については,前記接触端子2個々の変位によって吸収される。なお,図1において,前記接触端子2は,図の奥行き方向に複数配列されている。
また,前記接触端子2は,シリコン等からなる保持基材6上に設けられ,さらに,前記接触端子2各々は,前記樹脂フィルム5上のプリント配線5aを介して,前記支持部材1側に形成された信号配線1aに電気的に接続されている。
このような構成により,前記接触端子2各々が前記半導体ウェーハ15上のプリント配線等に接触した状態で,前記支持部材1側の信号配線1aに対して検査用の信号を入出力することにより,前記半導体ウェーハ15の通電検査を行うことができる。
【0013】
さらに,プローブカードX1は,以下に示すように,前記板ばね部材3(弾性部材)の変位を検知する構成(変位検知部)を備えている。
まず,前記板ばね部材3は金属製(即ち,導電性)の弾性部材であり,これが,導線3aを介して前記支持部材1側の前記信号配線1aに電気的に接続されている。
さらに,前記板ばね部材3に対し,前記接触端子2を保持する側(図中,下側)と反対側面に近接した位置に,前記板ばね部材3の方向に突出する突起部4bが設けられた電極部材4(第1電極部材の一例)が設けられている。この電極部材4は,絶縁体7と前記固定部材9及び前記補強部材8とを介して,前記支持部材1に対して固定されており,さらに,導線4aを介して前記支持部材1側の前記信号配線1aに電気的に接続されている。
なお,本実施形態では,金属製(導電性)の前記板ばね部材3を用いているが,非導電性の弾性部材を用いる場合には,その表面の前記電極部材4の突起部4bに対応する部分に,金属膜等の導電部が形成された弾性部材を用い,その導電部を前記信号配線1aに対して導線等で接続した構成も考えられる。
【0014】
図2は,プローブカードX1が,半導体ウェーハ15に当接(接触)した状態を表す概略側断面図である。
図2に示すように,前記接触端子2が半導体ウェーハ15に当接(接触)することにより,前記保持基材6を介して前記板ばね部材3が押圧されて変位する。そして,その変位が,元々設定されていた前記電極部材4の突起部4aと前記板ばね部材3との間隔以上となると,前記電極部材4と前記板ばね部材3とが接触することにより,それら相互間が電気的な遮断状態から導通状態に変化する。図2は導通状態,図1は遮断状態を表す。
ここで,適切な通電検査を行うためには,半導体ウェーハ15に対する前記接触端子2各々の押圧(荷重)をある程度確保する必要がある。その押圧を確保するため,半導体ウェーハ15の通電検査を行う際には,図2に示すように,前記板ばね部材3が比較的大きく変位(変形)する状態でプローブカードX1と半導体ウェーハ15との相互が位置決めされる。例えば,前記板ばね部材3は,20μm〜100μm程度変位する。
従って,通電検査に適した押圧(荷重)が確保されるときの前記板ばね部材3の変位位置に,前記電極部材4の突起部4bを予め配置しておき,前記信号配線1a側における検査用信号の入出力により,前記板ばね部材3側と前記電極部材4側との間の導通状態を検知すれば,前記板ばね部材3が,通電検査に適した押圧(荷重)が確保される位置まで変位したか否かを検知できる。即ち,当該プローブカードX1と半導体ウェーハ15とを近接させて位置決めしている状態で,半導体ウェーハ15に対する前記接触端子2の接触状態が適切であるか否かを検知できる。
【0015】
(第2実施形態)
図3は,前記プローブカードX1の変形例である本発明の第2実施形態に係るプローブカードX2の概略側面図(a)及び主要部の斜視図(b)である。
図3に示すように,プローブカードX2は,前記プローブカードX1(図1)において,前記電極部材4を各々異なる位置に複数設けたこと以外は,前記プローブカードX1と同じ構成である。
ここで,プローブカードX2における複数の前記電極部材4(第1電極部材)は,前記板ばね部材3に対する近接部である前記突起部4aが,前記板ばね部材3の前記支持部材1に対する固定支持位置から各々異なる距離に配置されている。また,各突起部4aと前記板ばね部材3との間隔(すき間)は,ほぼ同じとしている。
前記板ばね部材3は,前記支持部材1に対する固定支持位置から離れた位置ほど大きく変位するので,図3に示すような構成により,前記板ばね部材3の変位状態を多段階(図3の例の場合2段階)で検知できる。その結果,当該プローブカードX2と半導体ウェーハ15との間隔が適切であるか否かのみならず,前記板ばね部材3の変位−荷重特性から,どの程度の荷重がかかっているかの検出も可能となる。
例えば,この場合,前記支持部材1から遠い側の前記電極部材4を,通電検査に適した押圧(荷重)が確保されるときの前記板ばね部材3の変位に対応した位置に配置し,前記支持部材1に近い側の前記電極部材4を,前記接触端子2や半導体ウェーハ15に摩耗やダメージを与えない範囲の上限の変位に対応した位置に配置すること等が考えられる。
このようなプローブカードX2を用いることにより,基本的には,前記支持部材1から遠い側の前記電極部材4の導通状態によって位置決めを行い,万一,前記支持部材1に近い側の前記電極部材4の導通が検知された場合には,異常状態であると判断し,その導通状態が解除されるように位置決めのやり直しを行う等の対処が可能となる。その結果,前記接触端子2や半導体ウェーハ15が摩耗したり,ダメージを受けたりすることを防止できる。
【0016】
(第3実施形態)
図4は,前記プローブカードX1の変形例である本発明の第3実施形態に係るプローブカードX3の概略側面図(a)及び主要部の斜視図(b)である。
図4に示すように,プローブカードX3は,前記プローブカードX1(図1)において,対となる2つの前記電極部材4を近接させて設けたこと,及び前記板ばね部材3が,前記支持部材1側の信号配線1aに電気的に接続されていないこと以外は,前記プローブカードX1と同じ構成である。
即ち,プローブカードX3は,導電性の前記板ばね部材3に対し,前記接触端子2を保持する側と反対側面に近接して前記電極部材4(第2電極部材の一例)を設け,その電極部材4を前記信号配線1aに電気的に接続したものである。
このような構成により,何らかの原因で,前記板ばね部材3を前記信号配線1a側に電気的に接続する構成をとることが難しい場合であっても,前記電極部材4相互間の導通状態を検知することによって,前記プローブカードX1の場合と同様に,前記板ばね部材3の変位検知を行うことができる。
【0017】
(第4実施形態)
図5は,前記プローブカードX1の変形例である本発明の第4実施形態に係るプローブカードX4の概略側面図である。
図5に示すように,プローブカードX4は,前記プローブカードX1(図1)において,電極部材4’(前記電極部材4と同等のもの) が前記板ばね部材3に対して反対側に接して設けられていること以外は,前記プローブカードX1と同じ構成である。
即ち,プローブカードX4における前記電極部材4’(第1電極部材の一例)は,前記信号配線1aに電気的に接続された導電性の前記板ばね部材3に対し,前記接触端子2を保持する側の面に接して設けられ,導線4a’を介して前記信号配線1aに電気的に接続されている。
このようなプローブカードX4により,前記接触端子2が半導体ウェーハ15に接触(当接)することにより,前記板ばね部材3が変位すると,前記電極部材4’と離間することによって導通状態から遮断状態に変化する。このような導通状態の変化を,前記信号配線1a側における検査用信号の入出力により検知すれば,少なくとも前記接触端子2が半導体ウェーハ15に接触したか否かを検知できる。
この検知信号を用いれば,例えば,プローバによる位置決め動作中(当該プローブカードX4と半導体ウェーハ15との距離を近づけている最中)に,前記電極部材4’における導通の遮断が検知された場合に,その検知時点の位置から一定の微小長さだけさらに距離を近づけた後に停止させる(位置決め動作を終了させる)等の制御が可能となる。これにより,前記板ばね部材3が,通電検査に適した押圧(荷重)が確保される位置まで変位させ,半導体ウェーハ15に対する前記接触端子2の接触状態を適切な状態にすることができる。
【0018】
(第1〜3実施形態と第4実施形態との組合せ)
また,前記プローブカードX1〜X3のいずれかの前記板ばね部材3に近接させた前記電極部材4と,前記プローブカードX4の前記板ばね部材3に接した前記電極部材4’とを組み合わせた構成も考えられる。
これにより,前記接触端子2の保持側に接する前記電極部材4’によって前記接触端子2が半導体ウェーハ15に接触(当接)したことを検知でき,さらに,その反対側に近接する前記電極部材4によって前記接触端子2が所定の押圧力で半導体ウェーハ15に押圧されたことを検知できる。
このような構成のプローブカードを用いれば,例えば,プローバによる位置決め動作中(当該プローブカードX4と半導体ウェーハ15との距離を近づけている最中)に,前記電極部材4’についての導通の遮断が検知されるまでは,多少精度を犠牲にしても高速で接近動作を行い,前記電極部材4’についての導通の遮断が検知された後,前記電極部材4についての導通が検知されるまでは,速度を犠牲にしても高精度で接近動作(位置決め動作)を行うといった制御が可能となる。これにより,位置決めの高速化と高精度化の両立が可能となる。
【0019】
(第5実施形態)
図6は,前記板ばね部材3(弾性部材)の変位を検知する構成(変位検知部)として,歪みゲージ7を備えた本発明の第5実施形態に係るプローブカードX5の概略側面図である。
図6に示すように,プローブカードX5は,前記プローブカードX1〜X4における前記電極部材4,4’の変わりに,前記板ばね部材3(弾性部材)の表面に貼り付けられ,前記信号配線1aに電気的に接続された歪みゲージ7を備えている。
このような構成により,前記板ばね部材3の変位をアナログ的に検出できるので,前記接触端子2の半導体ウェーハ15への接触の有無(歪み検出値が変化したか否か)に加え,前記板ばね部材3の変位−荷重特性から,どの程度の荷重が前記接触端子2と半導体ウェーハ15との間にかかっているかについてより詳細に検出することが可能となる。
但し,この場合,前記歪みゲージ7に対する信号の入出力経路,例えば,プローバにおける信号の入出力部等に,ブリッジ回路や微小電圧変化の検出回路(アンプ等)を設ける必要がある。
【0020】
(第6実施形態)
図7は,前記プローブカードX1(図1)の変形例である本発明の第6実施形態に係るプローブカードX6の概略側面図である。
プローブカードX6の前記プローブカードX1と異なる点は,以下の通りである。
まず,プローブカードX6は,図7に示すように,前記板ばね部材3が,2つの前記支持部材1によって対向する両端部において支持された(両持ち梁状に支持された)構成を有している。
さらに,プローブカードX6は,被検査物である半導体ウェーハ15に接触する複数の接触端子2の配列を,2つの前記支持部材1各々の側に1列ずつ2列分備え,その接触端子2が,剛体である保持基材6を介して前記板ばね部材3により保持された構成を有している。
また,前記接触端子2各々は,前記保持基材6に対してゴム等からなる弾性層10を介して保持されており,わずかではあるが,押圧されることによって弾性変位する。これにより,半導体ウェーハ15表面の若干の凹凸については,前記接触端子2個々の変位によって吸収される。なお,図7において,前記接触端子2は,図の奥行き方向に複数配列されている。
また,前記電極部材4も,2つの前記支持部材1各々の側に設けられ,その各々により,2つの前記支持部材1各々の側の前記接触端子2の列の接触状態を主として検知するよう配置されている。
このような構成も本発明の一実施形態である。
また,プローブカードは,前記接触端子2を,被検査物である半導体ウェーハ上のICの周囲に形成された電極へ接触させる場合,四角形のICの4辺各々に対応した4列の前記接触端子2の列を備えたものが多い。
この場合,被検査物の4辺各々に対応させて,4つ(複数)の前記板ばね部材3を設け,その板ばね部材3ごとに複数の前記接触端子2の列及び前記電極部材4(変位検出部)を設けたプローブカードとすれば,検査効率及び位置決め精度を向上させることができる。
また,以上示したプローブカードX1〜X6は,前記板ばね部材3が,前記保持基材6(剛体)を介して前記接触端子2を保持する構成であるが,これに限らず,前記板ばね部材3が前記接触端子2を直接保持する構成であってもかまわない。
【0021】
(第7実施形態)
一般に,プローブカードは,検査対象となる半導体ウェーハ15の種類ごとに製作されるため,それごとに前記プローブカードX1〜X6に示した構成を組み込む必要がある。これに対し,プローブカードと半導体ウェーハ15とを位置決めするプローバは,多種のプローブカードに対応した汎用的なものである。
そこで,本発明をより汎用的に利用可能とする実施形態として,本発明をプローバに適用することが考えられる。
一般に,プローバは,プローブカードと半導体ウェーハ等の被検査物との位置決めを行う位置決め手段としてX−Y−Zステージ,その位置決めに用いるカメラ,顕微鏡,前記X−Y−Zステージを制御するコンピュータ等を具備する。
このようなプローバにより位置決めされるプローブカードとして,例えば,前記プローブカードX1(図1参照)における前記電極部材4がないもの,即ち,前記信号配線1aが設けられた前記支持部材1に対し,一端が前記固定部材9により固定支持されて弾性変位する前記板ばね部材3(弾性部材)を備え,その板ばね部材3に対して半導体ウェーハ15(被検査物)に接触する複数の前記接触端子2が,前記保持基材6を介して保持された構成を有し,前記接触端子2各々が前記信号配線1aに電気的に接続されたプローブカードを用いる。
そして,本実施形態に係るプローバには,一般的なプローバの構成に加え,当該プローバによって保持された前記プローブカード(プローブカードX1から前記電極部材4を除いたもの)における前記板ばね部材3の変位を検知する手段として,レーザ変位計等の変位センサが設けられる。
レーザ変位計は,変位の測定対象の表面に対してレーザ光を照射し,その反射光を観測することによって測定対象におけるレーザ光の軸方向の変位量を測定する周知の非接触式変位センサである。
前記変位センサとして設けられるレーザ変位計は,前記板ばね部材3(図1参照)を固定支持する前記支持部材1との相対位置が固定され,前記板ばね部材3の表面に対してほぼ垂直な方向からレーザ光を照射し,その反射光を観測することにより,半導体ウェーハ15表面に対して略垂直な方向における前記板ばね部材3の変位量を検出する。
そして,前記レーザ変位計(変位センサ)に接続されたコンピュータ等の制御手段により,前記プローブカードと半導体ウェーハ15との距離の位置決め動作中(前記プローブカード20と半導体ウェーハ15との距離を近づけている最中)に,前記レーザ変位計の変位検出値を監視し,その変位検出値が,予め定められた変位設定値となった時点で,当該プローバによる前記プローブカードの位置決め動作を停止させる。
これにより,前記変位設定値を,通電検査に適した押圧(荷重)が確保されるときの前記板ばね部材3の変位に対応した値としておけば,前記プローブカードと半導体ウェーハ15とを近接させて位置決めしている状態で,半導体ウェーハ15に対する前記接触端子2の接触状態が適切であるか否かを検知でき,その適切な状態に位置決めできる。
【0022】
また,前記変位設定値を,通電検査に適した押圧(荷重)が確保されるときの前記板ばね部材3の変位に対応した第1の変位設定値と,それより小さい変位に対応した第2の変位設定値との2段階に設定することも考えられる。
この場合,前記制御手段により,前記レーザ変位計等の変位センサの変位検出値が,前記第2の変位設定値となるまでは,多少精度を犠牲にしても高速で前記プローブカードを半導体ウェーハ15に接近させるよう制御し,前記第2の変位設定値以上となった後,前記第1の変位設定値となるまでは,速度を犠牲にしても高精度で接近動作(位置決め動作)をさせるといった制御を行えば,位置決めの高速化と高精度化の両立が可能となる。
また,前記接触端子2や半導体ウェーハ15に摩耗やダメージを与えない範囲の上限の前記板ばね部材3の変位に対応した上限変位設定値を予め設定しておき,例えば,手動モードで前記プローブカードを半導体ウェーハ15に近接させる場合等において,変位検出値が前記上限変位設定値を超えた場合には,アラームを出力する,或いは前記プローブカードの半導体ウェーハ15への近接動作を緊急停止させる等の制御を行うことも考えられる。
このように,前記変位センサを設けたプローバによれば,半導体ウェーハ15の種類ごとに製作されるプローブカードに変位検出部を設ける場合に比べ,プローブカードの基本的な構造が同じであれば,その種類を問わずより汎用的なものとできる。
なお,本実施形態では,前記板ばね部材3の変位検出手段として,前記レーザ変位計40を用いているが,これに限るものでなく,静電容量センサ等の他の非接触式の変位計を用いることも考えられる。
また,前記プローブカードX1〜X6における変位検出と同様に,電極部材等を用いた接触式の変位検知手段を採用することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は,通電検査用のプローブカードやその位置決めに用いるプローバに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプローブカードX1の概略側面図。
【図2】プローブカードX1が半導体ウェーハに当接した状態を表す概略側断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るプローブカードX2の概略側面図及び主要部の斜視図。
【図4】本発明の第3実施形態に係るプローブカードX3の概略側面図及び主要部の斜視図。
【図5】本発明の第4実施形態に係るプローブカードX4の概略側面図。
【図6】本発明の第5実施形態に係るプローブカードX5の概略側面図。
【図7】本発明の第6実施形態に係るプローブカードX6の概略側面図。
【符号の説明】
【0025】
X1〜X6…プローブカード
1…支持部材
1a…信号配線
2…接触端子
3…板ばね部材(弾性部材)
4,4’…電極部材
5…樹脂フィルム
6…保持基材
7…絶縁体
10…弾性層
15…半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に対して一部が固定支持されて弾性変位する1又は複数の弾性部材ごとに,被検査物に接触する複数の接触端子が保持されるとともに,前記接触端子各々が前記支持部材側に設けられた信号配線に電気的に接続されてなるプローブカードであって,
前記弾性部材の変位を検知する変位検知部を具備してなることを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記変位検知部が,
前記信号配線に電気的に接続された導電性の前記弾性部材又は前記信号配線に電気的に接続された導電部が表面に形成された前記弾性部材に対し,前記接触端子を保持する側と反対側面に近接して又は前記接触端子を保持する側の面に接して設けられるとともに前記信号配線に電気的に接続された1又は複数の第1電極部材を具備してなる請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
複数の前記第1電極部材の前記弾性部材に対する近接部又は接触部が,前記弾性部材の前記支持部材に対する固定支持位置から各々異なる距離に配置されてなる請求項2に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記変位検知部が,
導電性の前記弾性部材又は導電部が表面に形成された前記弾性部材に対し,前記接触端子を保持する側と反対側面に近接して又は前記接触端子を保持する側の面に接して設けられるとともに前記信号配線に電気的に接続された複数の第2電極部材を具備してなる請求項1に記載のプローブカード。
【請求項5】
前記変位検知部が,前記弾性部材に設けられ前記信号配線に電気的に接続された歪みゲージを具備してなる請求項1に記載のプローブカード。
【請求項6】
信号配線が設けられた支持部材に対して一部が固定支持されて弾性変位する1又は複数の弾性部材ごとに,被検査物に接触する複数の接触端子が保持されるとともに,前記接触端子各々が前記信号配線に電気的に接続されてなるプローブカードと前記被検査物との位置決めを行うプローバであって,
前記弾性部材の変位を検知する変位検知手段を具備してなることを特徴とするプローバ。
【請求項7】
前記変位検知手段が,非接触で前記弾性部材の変位を検知するものである請求項6に記載のプローバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−98299(P2006−98299A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286694(P2004−286694)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】