説明

プローブカー車載機及びプローブ情報収集システム

【課題】 プローブカーの出発地や目的地を特定できないように、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送可能にする。
【解決手段】 プローブカー車載機10は、走行軌跡計測情報蓄積部13において、自車位置判定部12で検出された自車位置情報の履歴より得られる自車の走行軌跡を蓄積する。送信軌跡判断部14は、自車位置判定部12で検出された自車位置、車両動作情況取得部55で取得されたエンジンオンオフ、発進や停止などの自車の動作情況、目的地設定情況取得部56で取得されたカーナビゲーション装置等による自車の目的地の設定情況などに基づき、所定の軌跡抽出条件によって走行軌跡計測情報蓄積部13に蓄積した走行軌跡データが伝達可能なものかどうかを判断し、伝達可能な伝達対象の走行軌跡データを走行軌跡送信部15よりプローブ情報受信装置20へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行軌跡等の情報を含むプローブ情報を収集するプローブカー車載機及びプローブ情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通情報を収集する新たな方法として、走行中の車両がセンサ(プローブ)となり、この車両で計測された走行軌跡、速度等の情報をセンタに集めるプローブカーシステムの研究が現在進められている。センタで収集したプローブ情報は、交通情報や交通制御情報の生成に活用される。プローブカーは、道路上に固定されている超音波センサやAVIセンサと違って、情報収集位置が限定されず、極めて広い範囲からリアルタイムでデータを集めることができるため、プローブ情報を解析することにより、精度の高い交通情報や交通制御情報の生成が可能になる。
【0003】
プローブカーシステムでは、プローブカーとなる各車両のIDや位置、走行軌跡などが特定されるおそれがあり、プライバシー侵害について考慮する必要がある。現在は、個人情報を保護するために、個人を特定可能なID情報の取り扱いについていくつか検討されている。例えば、特許文献1には、プライバシー侵害の問題を回避するために、ナビゲーション装置において、匿名モードが指定されている場合に生成された交通情報を自己の識別IDを付加しないで1つの通信路を使用して継続的に送信する送信手段を備えたものが開示されている。また、特許文献2には、プライバシーを保護しつつ正確に交通諸量を算出するために、路上側制御装置と車両との間で、路上側制御装置が設置されている位置を示すエリアコードと、カウンタによりカウントされているカウント値から構成されるN地点コードとを有するスポットダイナミックコードを含むデータ列を送信する情報処理装置が開示されている。
【0004】
また、現在、路上に設置したビーコンを用いてプローブ情報を収集するプローブカーシステムとして、出発地及び到着地の情報、並びに走行経路の情報を収集する目的でID情報を用いるものが検討されている。このシステムでは、プローブカーのエンジン始動時に乱数でIDを決定し、最初のビーコン通過時に、プローブカー車載機からビーコンへ「初回通信」というフラグが立ったアップリンクを送信する。センタ側では、受信したデータに「初回通信」のフラグが立っている場合、センタで決定したIDを含むダウンリンクをビーコンからプローブカー車載機へ送信する。次回以降の通信では、プローブカー車載機は前記付与されたIDを使用してアップリンクを送信する。このように、センタから付与したIDは個人情報ではないとみなし、このIDを使用してデータを授受することによって、プライバシーを確保しつつプローブ情報を収集することができる。
【0005】
しかしながら、プローブカー車載機は、当該車両の走行軌跡情報を送信するため、上記のようなID情報の処理をしたとしても、走行軌跡情報から個人情報が推定できるおそれがある。例えば、エンジンを始動した位置や停止した位置によって自宅位置が推定できたり、エンジンの始動または停止の位置やプローブカーを停車した位置によって目的地などの行動が推定できる場合がある。このような場合、プローブカーを使用した個人が容易に推定できたり、他人に知られたくない行動が知られてしまうなど、プライバシーの侵害となるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−340895号公報
【特許文献2】特開2003−196784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、プローブカーの走行軌跡情報から出発地や目的地を特定できないように、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能なプローブカー車載機及びプローブ情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプローブカー車載機は、車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブカー車載機であって、前記車両が走行した走行軌跡データを取得する走行軌跡取得手段と、所定の軌跡抽出条件を用いて前記走行軌跡データを判定し、前記車両を使用する使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いた伝達対象となる走行軌跡データを抽出する走行軌跡抽出手段と、前記伝達対象の走行軌跡データを伝達する伝達手段と、を備えるものである。
【0009】
これにより、使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いて送信等を行って伝達することで、プローブカーの出発地や目的地を特定できないようにすることができ、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記走行軌跡抽出手段は、前記車両の出発地または到着地または経由地のいずれか、もしくは複数が特定可能な走行軌跡データを除いた伝達対象の走行軌跡データを抽出するものとする。
これにより、車両の出発地または到着地または経由地のいずれか、もしくは複数が特定可能な走行軌跡データを除いて送信等を行って伝達することで、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、前記車両のエンジン始動時または所定時間以上停車した時からの経過時間が所定時間未満、走行距離が所定距離未満、或いは離間距離が所定距離未満となる、エンジン始動時または所定時間以上停車時以後の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
これにより、エンジン始動時または所定時間以上停車時以後の所定の期間または区間の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、出発地が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0012】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、前記車両のエンジン始動地点または所定時間以上停車した地点が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
これにより、エンジン始動地点または所定時間以上停車した地点を含む任意のエリア内の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、出発地が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0013】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、前記車両において目的地を設定している場合に、前記目的地が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
これにより、目的地を含む任意のエリア内の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、目的地が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0014】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記エリアを、行政界または基準地域メッシュ、または予め定めた任意形状ポリゴンに基づいて決定するものとする。
【0015】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、予め設定した所定のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記エリアは、前記車両の使用者によって設定されるものとする。
これにより、予め設定した所定のエリア内の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、このエリア内における出発地、目的地、走行経路等が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0016】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、前記車両の停車時またはエンジン停止時から遡って経過時間が所定時間未満、走行距離が所定距離未満、或いは離間距離が所定距離未満となる、停車時またはエンジン停止時以前の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
これにより、停車時またはエンジン停止時以前の所定の期間または区間の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、目的地が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0017】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件として、前記車両において目的地を設定している場合に、前記目的地までの到達距離、または前記目的地までの離間距離が所定距離未満となる、目的地への到達以前の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるものとする。
これにより、目的地への到達以前の所定の期間または区間の走行軌跡データが伝達されないようにすることができ、目的地が特定されないように走行軌跡データを伝送可能である。
【0018】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記走行軌跡抽出手段は、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出をデータ伝達前に行い、前記軌跡抽出条件により除外される所定の期間または区間の走行軌跡データを前記伝達手段により伝達しないようにするものとする。
これにより、使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データが伝達されないようにすることができる。
【0019】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記取得した走行軌跡データを蓄積する走行軌跡蓄積手段を備え、前記走行軌跡抽出手段は、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出をデータ蓄積前に行い、前記軌跡抽出条件により除外される所定の期間または区間の走行軌跡データを前記走行軌跡蓄積手段により蓄積しないようにするものとする。
これにより、使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データが蓄積及び伝達されないようにすることができる。
【0020】
また、本発明の一態様として、上記のプローブカー車載機であって、前記軌跡抽出条件における所定の期間または区間に対応する数値を可変的に決定する軌跡抽出条件決定手段を備え、前記走行軌跡抽出手段は、前記決定された数値による軌跡抽出条件を用いて、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出を行うものとする。
これにより、軌跡抽出条件における所定の期間または区間に対応する数値が不定となり、使用者個人またはその行動が特定可能な期間または区間が変化するため、走行軌跡データから出発地や目的地の特定をさらに困難にすることが可能となる。
【0021】
本発明のプローブ情報収集システムは、車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブ情報収集システムであって、上記いずれかに記載のプローブカー車載機と、前記プローブカー車載機より伝達された走行軌跡データを含むプローブ情報を取得し、このプローブ情報に基づいて該当道路区間の交通情報を生成するセンタ装置と、を備えるものである。
これにより、使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いて伝達することで、プローブカーの出発地や目的地を特定できないようにすることができ、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能となる。
【0022】
本発明のプローブ情報収集方法は、車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブ情報収集システムにおけるプローブ情報収集方法であって、前記車両が走行した走行軌跡データを取得する走行軌跡取得ステップと、所定の軌跡抽出条件を用いて前記走行軌跡データを判定し、前記車両を使用する使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いた伝達対象となる走行軌跡データを抽出する走行軌跡抽出ステップと、前記伝達の走行軌跡データを伝達する伝達ステップと、を有するものである。
これにより、使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いて送信等を行って伝達することで、プローブカーの出発地や目的地を特定できないようにすることができ、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、上記のプローブ情報収集方法の各手順を実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プローブカーの走行軌跡情報から出発地や目的地を特定できないように、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能なプローブカー車載機及びプローブ情報収集システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図である。プローブ情報収集システムは、プローブカーに搭載されるプローブカー車載機10と、プローブカー車載機10から送信されるプローブ情報を受信するプローブ情報受信装置20と、プローブ情報受信装置20よりプローブ情報を取得して各種交通情報を生成するセンタ装置30とを有して構成される。
【0026】
このプローブ情報収集システムは、民間の情報収集プロバイダが配備したデータ収集用車両、或いは交通情報提供サービスを契約した利用者の車両等をプローブカーとし、このプローブカーにプローブカー車載機10を搭載して、プローブカーが走行した道路の各地点に関する走行速度や走行軌跡などの情報を含むプローブ情報を収集するものである。
【0027】
プローブ情報受信装置20は、路上に設置されたビーコン、或いは移動体通信の基地局などから構成され、プローブカー車載機10から送信されるプローブ情報を受信するものである。このプローブ情報受信装置20は、プローブカーの走行軌跡、走行速度等を含むプローブ情報を受信するデータ受信部21と、センタ装置30との間でプローブ情報等のデータを送受信するセンタ装置通信部22とを備える。
【0028】
センタ装置30は、情報処理装置等を有して構成され、各所に配置されたプローブ情報受信装置20からのプローブ情報を取得し、交通情報の生成、配信等を行うものである。 このセンタ装置30は、プローブ情報の編集、解析等の処理を行って該当道路区間の平均速度、旅行時間等の交通情報を生成する交通情報生成部31と、生成した交通情報を配信する情報配信部32とを備える。生成された交通情報は、カーナビゲーション装置、携帯電話端末、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ等による交通情報活用装置40に配信されて活用される。交通情報活用装置40では、提供された交通情報に基づき、対象道路区間の渋滞度や旅行時間の表示、目的地までの経路探索、音声等によるルート案内などが行われる。
【0029】
プローブカー車載機10は、センサ情報収集部11、自車位置判定部12、走行軌跡計測情報蓄積部13、送信軌跡判断部14、走行軌跡送信部15を有して構成される。センサ情報収集部11は、速度センサ、動力出力センサ、燃料消費センサ等の車両に設けられた各種センサの計測情報を収集する。自車位置判定部12は、速度パルスより自車の走行速度を検出する速度検出部52、自車が向いている方角を検出するジャイロ53、及びGPSからのGPS信号を受信して位置情報を取得するGPS受信部54より送られる情報に基づき、現在自車がいる位置を判定し、自車位置として検出する。走行軌跡計測情報蓄積部13は、走行軌跡取得手段及び走行軌跡蓄積手段の機能を有するもので、自車位置判定部12で検出された自車位置情報の履歴より自車の走行軌跡を取得し、得られた自車の走行軌跡と、センサ情報収集部11で収集した各種センサの計測情報を蓄積する。
【0030】
送信軌跡判断部14は、走行軌跡抽出手段の機能を有するもので、自車位置判定部12で検出された自車位置、車両動作情況取得部55で取得されたエンジンオンオフ、発進や停止などの自車の動作情況、目的地設定情況取得部56で取得されたカーナビゲーション装置等による自車の目的地の設定情況などに基づき、所定の軌跡抽出条件によって走行軌跡計測情報蓄積部13に蓄積した走行軌跡データが伝達可能なものかどうかを判断する。 走行軌跡送信部15は、伝達手段の機能を有するもので、送信軌跡判断部14で伝達可能と判定されて出力された走行軌跡データをプローブ情報受信装置20へ送信する。なお、走行軌跡データを送信する際に、符号化圧縮を行ってデータ量が少なくなるようにしてもよい。
【0031】
ここで、走行軌跡データの伝達とは、無線や有線での情報送信を含み、また、記録媒体を介した伝達も含むものとする。よって、走行軌跡データを伝達する伝達手段としては、上記走行軌跡送信部15のような送信手段だけでなく、メモリカード等の記録媒体等も含まれる。また、上記のように走行軌跡計測情報蓄積部13で走行軌跡データを蓄積するものに限らず、蓄積を行わずにリアルタイムに走行軌跡データを送信するような構成としてもよい。
【0032】
上記構成のプローブカー車載機10では、例えば1秒単位で、自車位置判定部12において走行軌跡データの素になる現在位置を検出し、走行軌跡計測情報蓄積部13において速度、動力出力、燃料消費等の計測データを収集する。そして、送信軌跡判断部14において、自車位置、自車の動作情況、目的地の設定情況の少なくともいずれかに基づき、所定の軌跡抽出条件によって走行軌跡データが伝達してもよいものかどうかを判断したり、或いは、伝達してもよい走行軌跡データを選択して出力する。これにより、プローブカーの出発地や目的地等が推定されないようにし、プローブカーを使用する個人またはその行動が特定されることを防止してプライバシーを確保する。
【0033】
なお、上記のように所定の軌跡抽出条件に基づき、軌跡抽出条件に合致しない場合は走行軌跡データの送信を禁止したり、軌跡抽出条件に合致する走行軌跡データのみを選択して送信するなどして、軌跡抽出条件によって走行軌跡データの送信を行わないようにする処理のみに限らず、他の処理を行ってもよい。例えば、所定の軌跡抽出条件に合致しない場合は、走行軌跡データの蓄積をしないようにしたり、蓄積した走行軌跡データを破棄するなどの処理を行うことで、結果的に走行軌跡データが送信されないようにしてもよい。
【0034】
ここで、伝達可能な走行軌跡データを選択するための軌跡抽出条件について説明する。 本実施形態では、以下のような場合に走行軌跡データをセンタ装置側へ送信しないようにし、プローブカーを使用する個人またはその行動の特定を防止する。
【0035】
(1)プローブカーのエンジン始動後または所定時間以上停車後のしばらくの間、すなわちエンジン始動時または所定時間以上停車時から所定時間経過(例えば5分経過)、所定距離走行(例えば1km走行)、或いは所定距離以上離間(例えば直線距離で1km以上離間)するまでの間は、その間の走行軌跡データを送信しない、或いは蓄積しないようにする。これにより、例えば、エンジン始動後から5分経過するまでの走行軌跡が伝達されないようになる。
【0036】
(2)走行軌跡データの蓄積から送信までのタイミングを所定時間ずらす(例えば5分遅延させる)ようにし、プローブカーの停車前またはエンジン停止前のしばらくの間、すなわち停車時またはエンジン停止時から遡って所定時間経過(例えば5分経過)、所定距離走行(例えば1km走行)、或いは所定距離以上離間(例えば直線距離で1km以上離間)した以前の走行軌跡データを送信しないようにする。これにより、例えば、エンジン停止時より前の直近5分間の走行軌跡が伝達されないようになる。
【0037】
(3)カーナビゲーション装置等で目的地を設定している場合に、目的地までの到達距離、または目的地までの直線距離が所定値未満となる目的地への到達前のしばらくの間(例えば目的地まで1km以内)の走行軌跡データを送信しないようにする。これにより、例えば、目的地から1km手前までの走行軌跡が伝達されないようになる。
【0038】
次に、本実施形態における走行軌跡データの送信動作の例を示す。図2は路上に設置されたビーコンをプローブ情報受信装置20として用いた場合に関する第1動作例を示す図である。ここでは、自宅61から目的地62までの区間をプローブカー63で走行した軌跡を収集する場合を示す。道路上の複数地点には、プローブ情報受信装置20として機能するビーコン64が配置されており、このビーコン64の近傍を通過するプローブカー63のプローブカー車載機10より走行軌跡データを含むプローブ情報がアップロードされる。
【0039】
まず上記軌跡抽出条件(1)を用いて、プローブカー63の使用者の自宅61においてエンジンを始動した後、または長時間停車した後、しばらくの間(例えば1km走行するまでの間)は走行軌跡データを送信しない、または蓄積しないようにする。このため、所定の期間または区間が過ぎる地点より前にあるビーコンAでは、自宅61からビーコンA近傍までの走行軌跡データが送信されず、出発地が不明となる。そして、プローブカー63が走行していき、所定の期間または区間が過ぎた後は、走行軌跡データが伝達可能となり、ビーコンB、ビーコンCにおいてそれぞれ走行軌跡データが送信されて収集される。その後、プローブカー63が目的地62に到着すると、ビーコンDまでは到達していないため、ビーコンC近傍から目的地62までの走行軌跡データは送信されず、目的地が不明となる。
【0040】
この第1動作例のように、プローブ情報の収集手段としてビーコンを用いる場合は、ビーコン設置位置は幹線道路等の道路上の所定位置に固定されているため、目的地手前の最終のビーコンと通信した後は走行軌跡が不明で目的地までは特定できず、走行軌跡から特定できるのは出発地のみである。このため、軌跡抽出条件(1)のみを適用して出発地を不明とするだけでも十分である。
【0041】
なお、上記軌跡抽出条件(2)を用いて、プローブカー63の停車またはエンジン停止より以前の所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにしたり、上記軌跡抽出条件(3)を用いて、カーナビゲーション装置等で目的地を設定している場合に目的地への到達前の所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにしてもよい。 このようにすることで、目的地62の近傍の直前直後にビーコン64がある場合などに、目的地が推定されることを防止できる。
【0042】
図3は移動体通信の基地局をプローブ情報受信装置20として用いた場合に関する第2動作例を示す図である。この場合、移動体通信の所定通信エリア毎に配置された基地局65を用いて、所定の地点、所定の走行距離毎または所定の時間毎などで、走行するプローブカー63のプローブカー車載機10より基地局65に対して走行軌跡データを含むプローブ情報がアップロードされる。
【0043】
まず第1動作例と同様、上記軌跡抽出条件(1)を用いて、プローブカー63の使用者の自宅61においてエンジンを始動した後、または長時間停車した後、しばらくの間(例えば1km走行するまでの間)は走行軌跡データを送信しない、または蓄積しないようにする。このため、所定の期間または区間が過ぎる地点より前にある地点Aでは、自宅61から地点A近傍までの走行軌跡データが送信されず、出発地が不明となる。そして、プローブカー63が走行していき、所定の期間または区間が過ぎた後は、走行軌跡データが伝達可能となり、地点B、地点Cにおいてそれぞれ走行軌跡データが送信されて収集される。第2動作例では、走行軌跡データの蓄積から送信までのタイミングを所定時間遅らせるようにし、送信地点より少し前の地点までの走行軌跡データを送信する。
【0044】
その後、プローブカー63が目的地62に到着した際、上記軌跡抽出条件(2)を用いて、地点Dではプローブカー63の停車またはエンジン停止より以前の所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにする。これにより、目的地62より上流しばらくの地点C手前から目的地62までの走行軌跡データの送信が回避され、目的地が不明となる。
【0045】
なお、上記軌跡抽出条件(3)を用いて、カーナビゲーション装置等で目的地を設定している場合に目的地への到達前の所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにしてもよい。このようにすることで、目的地62の直前で走行軌跡データが送信されるような場合などに、目的地が推定されることを防止できる。
【0046】
次に、走行軌跡データ送信時の動作を説明する。図4は第1の実施形態のプローブカー車載機10における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【0047】
自車位置判定部12は、速度検出部52、ジャイロ53及びGPS受信部54の出力に基づき、現在の自車位置を検出する(ステップS11)。そして、走行軌跡計測情報蓄積部13は、一定距離毎に現在位置及び現在時刻を計測し、得られた走行軌跡データを蓄積する(ステップS12)。
【0048】
そして、送信軌跡判断部14は、送信タイミングか否か、すなわちプローブ情報受信装置20との通信が発生するかどうかを判断し(ステップS13)、送信タイミングになるまでステップS12で走行軌跡データが蓄積される。ステップS13で送信タイミングになったときに、送信軌跡判断部14は、蓄積されている走行軌跡データから上記軌跡抽出条件に合致する伝達可能な伝達対象の走行軌跡データを選択して抽出する(ステップS14)。その後、走行軌跡送信部15は、伝達可能と判断された走行軌跡データを送信用のフォーマットに変換し(ステップS15)、この走行軌跡データをプローブ情報受信装置20へ送信する(ステップS16)。そして、上記処理を繰り返す。
【0049】
このように蓄積した走行軌跡データを送信する際に所定の軌跡抽出条件によって選択し、プローブカーの使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにすることで、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図である。第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、データ蓄積時に伝達可否の判定を行って伝達可能な走行軌跡データのみを蓄積する例である。第2の実施形態のプローブ車載機60は、自車位置判定部12と走行軌跡計測情報蓄積部13との間に走行軌跡判断部14を備えている。その他の構成要素は図1に示した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0051】
図6は第2の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャートである。自車位置判定部12は、速度検出部52、ジャイロ53及びGPS受信部54の出力に基づき、現在の自車位置を検出する(ステップS21)。そして、走行軌跡判断部14は、上記軌跡抽出条件に合致するか否かを判断する(ステップS22)。ここで、軌跡抽出条件に合致する場合は、走行軌跡計測情報蓄積部13は、一定距離毎に現在位置及び現在時刻を計測し、得られた走行軌跡データを蓄積する(ステップS23)。この場合、軌跡抽出条件に合致する伝達可能な走行軌跡データのみが蓄積される。
【0052】
そして、走行軌跡計測情報蓄積部13は、送信タイミングか否か、すなわちプローブ情報受信装置20との通信が発生するかどうかを判断し(ステップS24)、送信タイミングになるまでステップS23で走行軌跡データが蓄積される。ステップS24で送信タイミングになると、走行軌跡送信部15は、蓄積された伝達可能な走行軌跡データを送信用のフォーマットに変換し(ステップS25)、この走行軌跡データをプローブ情報受信装置20へ送信する(ステップS26)。そして、上記処理を繰り返す。
【0053】
このように走行軌跡データを蓄積する際に所定の軌跡抽出条件によって選択し、プローブカーの使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データが蓄積及び送信されないようにすることで、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0054】
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図である。第3の実施形態は、軌跡抽出条件のパラメータを可変とした例である。第3の実施形態のプローブカー車載機70は、軌跡抽出条件のパラメータの数値を決定する軌跡抽出条件決定手段の機能を有する軌跡抽出条件決定部71を備えている。その他の構成要素は図1に示した第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0055】
第1の実施形態のように、軌跡抽出条件によって出発地から所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにする場合、この期間(例えば5分間)または区間(例えば1km)の規定値が固定で値を予め知っている場合、いくつかの走行軌跡から出発地を推定できる場合がある。
【0056】
図8は複数の走行軌跡から出発地を推定可能な例を説明する図である。例えば、走行軌跡データについて「エンジン始動地点から直線距離2km」の位置から伝達対象の走行軌跡として送信する場合、図8のように軌跡1〜3のそれぞれの走行軌跡の開始位置を中心に半径2kmの円C1〜C3を描いて交点を求めることにより、2ないし3つの走行軌跡から出発地を推定可能である。また、伝達対象の走行軌跡の規定値が「エンジン始動地点から走行距離2km」の場合は、出発点は送信された走行軌跡の開始位置から道なり距離2km地点のいずれかであり、多少面倒な計算が必要であるが、いくつかの走行軌跡から出発点の推定は可能である。また、伝達対象の走行軌跡の規定値が「エンジン始動時点から5分間」の場合も、交通情報の旅行時間から走行距離に換算して類似の推定は可能である。
【0057】
そこで、第3の実施形態では、本発明の主旨であるプローブカーの使用者個人またはその行動が特定可能な出発地または目的地の周辺の走行軌跡を伝達しないという点に鑑み、「周辺」を既定する軌跡抽出条件のパラメータの数値を可変とすることで、ふらつきを持たせて不定となるようにする。これにより、上記のような出発地または目的地の推定が困難となる。
【0058】
プローブカー車載機70の軌跡抽出条件決定部71は、乱数発生器等を備え、軌跡抽出条件におけるパラメータ「走行距離Xkm」「直線距離Ykm」「Z分間」のX、Y、Zの値をランダムに変化させ、軌跡抽出条件を決定する。さらに、出発の都度、「走行距離Xkm」「直線距離Ykm」「Z分間」のうちのどれを使用するかをランダムに選出するようにしてもよい。なお、この軌跡抽出条件の情報はセンタ装置側に知らせないようにする。
【0059】
図9は第3の実施形態のプローブカー車載機70における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【0060】
自車位置判定部12は、速度検出部52、ジャイロ53及びGPS受信部54の出力に基づき、現在の自車位置を検出する(ステップS31)。そして、走行軌跡計測情報蓄積部13は、一定距離毎に現在位置及び現在時刻を計測し、得られた走行軌跡データを蓄積する(ステップS32)。
【0061】
そして、送信軌跡判断部14は、送信タイミングか否か、すなわちプローブ情報受信装置20との通信が発生するかどうかを判断し(ステップS33)、送信タイミングになるまでステップS32で走行軌跡データが蓄積される。ステップS33で送信タイミングになったときに、軌跡抽出条件決定部71は、乱数等を発生させて軌跡抽出条件のパラメータの数値をランダムに決定し、軌跡抽出条件をその都度設定する(ステップS34)。ここで、エンジン始動位置またはエンジン停止位置或いは停車位置からの走行距離または離間距離、或いは経過時間がいくつ以上の走行軌跡を送信するか、パラメータをその都度変更して軌跡抽出条件を決定する。
【0062】
続いて、送信軌跡判断部14は、蓄積されている走行軌跡データから上記設定した軌跡抽出条件に合致する伝達可能な伝達対象の走行軌跡データを選択して抽出する(ステップS35)。その後、走行軌跡送信部15は、伝達可能と判断された走行軌跡データを送信用のフォーマットに変換し(ステップS36)、この走行軌跡データをプローブ情報受信装置20へ送信する(ステップS37)。そして、上記処理を繰り返す。
【0063】
このように蓄積した走行軌跡データを送信する際に軌跡抽出条件をその都度ランダムに決定することで、出発地及び目的地の推定をより困難にする。そして、設定された軌跡抽出条件によって走行軌跡データを選択して、プローブカーの使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを送信しないようにすることで、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0064】
(第4の実施形態)
図10は本発明の第4の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図である。第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、データ蓄積時に伝達可否の判定を行って伝達可能な走行軌跡データのみを蓄積する例である。第4の実施形態のプローブ車載機80は、自車位置判定部12と走行軌跡計測情報蓄積部13との間に走行軌跡判断部14を備えている。その他の構成要素は図7に示した第3の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0065】
図11は第4の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャートである。軌跡抽出条件決定部71は、乱数等を発生させて軌跡抽出条件のパラメータの数値をランダムに決定し、軌跡抽出条件をその都度設定する(ステップS41)。自車位置判定部12は、速度検出部52、ジャイロ53及びGPS受信部54の出力に基づき、現在の自車位置を検出する(ステップS42)。そして、走行軌跡判断部14は、上記設定した軌跡抽出条件に合致するか否かを判断する(ステップS43)。ここで、軌跡抽出条件に合致する場合は、走行軌跡計測情報蓄積部13は、一定距離毎に現在位置及び現在時刻を計測し、得られた走行軌跡データを蓄積する(ステップS44)。この場合、軌跡抽出条件に合致する伝達可能な走行軌跡データのみが蓄積される。
【0066】
そして、走行軌跡計測情報蓄積部13は、送信タイミングか否か、すなわちプローブ情報受信装置20との通信が発生するかどうかを判断し(ステップS45)、送信タイミングになるまでステップS44で走行軌跡データが蓄積される。ステップS45で送信タイミングになると、走行軌跡送信部15は、蓄積された伝達可能な走行軌跡データを送信用のフォーマットに変換し(ステップS46)、この走行軌跡データをプローブ情報受信装置20へ送信する(ステップS47)。そして、上記処理を繰り返す。
【0067】
このように走行軌跡データを蓄積する際に軌跡抽出条件をその都度ランダムに決定することで、出発地及び目的地の推定をより困難にする。そして、設定された軌跡抽出条件によって走行軌跡データを選択して、プローブカーの使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データが蓄積及び送信されないようにすることで、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0068】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、軌跡抽出条件の他の例として、走行軌跡中の所定の区間や期間の代わりに、エリアによって伝達対象の走行軌跡データを選別する場合を示したものである。 プローブカー車載機の構成については、図1に示した第1の実施形態または図5に示した第2の実施形態と同様である。
【0069】
この第5の実施形態では、プローブカーのエンジン始動地点または所定時間以上停車した地点が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを除外して生成、蓄積、送信等を行うようにする。この場合、予め設定したエリアから外へ出たところから、走行軌跡データの生成、蓄積、送信等が行われる。
【0070】
また、カーナビゲーション装置等でプローブカーの目的地を設定している場合に、この目的地が含まれる任意のエリア内の走行軌跡データを除外して生成、蓄積、送信等を行うようにすることも可能である。
【0071】
上記任意のエリアは、市区町村などの行政界、基準地域メッシュ(1次、2次、3次メッシュ:行政管理庁告示第143号)などの矩形、プローブカー側で世帯数や人口数を元に作成した任意形状のポリゴン領域などを用いて設定することが可能である。また、これらのエリアからNm離れたら伝達対象とするようにしてもよい。
【0072】
よって、第5の実施形態においては、伝達可能な走行軌跡データを選択するための軌跡抽出条件として以下の条件が用いられる。
【0073】
(4)プローブカーのエンジン始動地点または所定時間以上停車した地点が存在する任意のエリアにおいて、このエリア内の走行軌跡データを送信しないようにする。これにより、例えば、エンジンを始動した地点の市区町村などの行政区域内部のエリア、すなわちエンジン始動地点から行政界までの走行軌跡が伝達されないようになる。
【0074】
(5)カーナビゲーション装置等で目的地を設定している場合に、この目的地が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを送信しないようにする。これにより、例えば、目的地がある市区町村などの行政区域内部のエリア、すなわち目的地から遡って行政界までの走行軌跡が伝達されないようになる。
【0075】
図12は本発明の第5の実施形態における伝達対象の走行軌跡データの例を示す図である。この例では、任意のエリアを市区町村などの行政界B1に基づいて設定したものである。図12に示す軌跡1〜3のように、行政界B1より内側の走行軌跡データが除外され、行政界B1と交差する地点P1〜P3より外の走行軌跡データだけが生成、蓄積、送信等なされる。
【0076】
第5の実施形態における走行軌跡データ送信処理の手順は、図4に示す第1の実施形態または図6に示す第2の実施形態と同様である。すなわち、図4のステップS14または図6のステップS22において、上記軌跡抽出条件(4)または(5)を用いてエリアより外に出たかどうかを判定することで、軌跡抽出条件に合致する伝達可能な伝達対象の走行軌跡データを選択する。
【0077】
このように出発地や目的地を含む任意のエリア内の走行軌跡データを除外することで、出発地や目的地が特定されることを防止し、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0078】
次に、上記第5の実施形態の変形例を示す。この変形例は、走行軌跡データの生成、蓄積、送信等を行わないように除外するエリアを、プローブカーの使用者が任意に設定するようにしたものである。この場合、使用者がプローブカー車載機への操作入力などによって、その周辺での行動、走行経路等を知られたくない領域を所定のエリアとして予め設定し、このエリア内については走行軌跡データの生成、蓄積、送信等を行わないようにする。
【0079】
これにより、図12に示した第5の実施形態と同様に、設定したエリア内の走行軌跡データが伝達されないようになり、エリア内における出発地、目的地、停車地点、走行経路などの特定ができなくなる。
【0080】
上記任意のエリアは、市区町村などの行政界、基準地域メッシュ(1次、2次、3次メッシュ)などの矩形、任意矩形、任意形状のポリゴン、任意地点を中心とした半径Nkmの円またはNkm四方などを使用者が指定して設定することが可能である。
【0081】
このようにプローブカーの使用者が予め設定した所定のエリア内の走行軌跡データを除外することで、設定エリア内の出発地、目的地、停車地点、走行経路などが特定されることを防止し、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送する。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、プローブカーの出発地または目的地の周辺、あるいは予め設定したエリア内の走行軌跡データを伝達しないことによって、走行軌跡から出発地、目的地、停車地点、走行経路などの推定を困難にすることができる。したがって、プローブカーの使用者の自宅位置やプローブカーで行った目的地などを推定し、プローブカーの使用者個人またはその行動が特定されることを防止できる。これによって、プローブカーシステムにおいて、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送し、交通情報を生成したり、この交通情報を活用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、プローブカーの走行軌跡情報から出発地や目的地を特定できないように、プライバシーを保護しつつ収集したプローブ情報を伝送することが可能となる効果を有し、車両の走行軌跡等の情報を含むプローブ情報を収集するプローブカー車載機及びプローブ情報収集システム等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図
【図2】本実施形態における走行軌跡データの送信動作の例として、路上に設置されたビーコンをプローブ情報受信装置として用いた場合に関する第1動作例を示す図
【図3】本実施形態における走行軌跡データの送信動作の例として、移動体通信の基地局をプローブ情報受信装置として用いた場合に関する第2動作例を示す図
【図4】第1の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャート
【図5】本発明の第2の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャート
【図7】本発明の第3の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図
【図8】複数の走行軌跡から出発地を推定可能な例を説明する図
【図9】第3の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャート
【図10】本発明の第4の実施形態に係るプローブ情報収集システムの機能構成を示すブロック図
【図11】第4の実施形態のプローブカー車載機における走行軌跡データ送信処理の手順を示すフローチャート
【図12】本発明の第5の実施形態における伝達対象の走行軌跡データの例を示す図
【符号の説明】
【0085】
10、60、70、80 プローブカー車載機
11 センサ情報収集部
12 自車位置判定部
13 走行軌跡計測情報蓄積部
14 送信軌跡判断部
15 走行軌跡送信部
20 プローブ情報受信装置
21 データ受信部
22 センタ装置通信部
30 センタ装置
31 交通情報生成部
32 情報配信部
40 交通情報活用装置
55 車両動作情況取得部
56 目的地設定情況取得部
71 軌跡抽出条件決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブカー車載機であって、
前記車両が走行した走行軌跡データを取得する走行軌跡取得手段と、
所定の軌跡抽出条件を用いて前記走行軌跡データを判定し、前記車両を使用する使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いた伝達対象となる走行軌跡データを抽出する走行軌跡抽出手段と、
前記伝達対象の走行軌跡データを伝達する伝達手段と、
を備えるプローブカー車載機。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブカー車載機であって、
前記走行軌跡抽出手段は、前記車両の出発地または到着地または経由地のいずれか、もしくは複数が特定可能な走行軌跡データを除いた伝達対象の走行軌跡データを抽出するプローブカー車載機。
【請求項3】
請求項1に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、前記車両のエンジン始動時または所定時間以上停車した時からの経過時間が所定時間未満、走行距離が所定距離未満、或いは離間距離が所定距離未満となる、エンジン始動時または所定時間以上停車時以後の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項4】
請求項1に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、前記車両のエンジン始動地点または所定時間以上停車した地点が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項5】
請求項1または4に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、前記車両において目的地を設定している場合に、前記目的地が存在する任意のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプローブカー車載機であって、
前記エリアは、行政界または基準地域メッシュ、または予め定めた任意形状ポリゴンに基づいて決定されるプローブカー車載機。
【請求項7】
請求項1に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、予め設定した所定のエリア内の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項8】
請求項7に記載のプローブカー車載機であって、
前記エリアは、前記車両の使用者によって設定されるプローブカー車載機。
【請求項9】
請求項1または3に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、前記車両の停車時またはエンジン停止時から遡って経過時間が所定時間未満、走行距離が所定距離未満、或いは離間距離が所定距離未満となる、停車時またはエンジン停止時以前の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項10】
請求項1または3に記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件として、前記車両において目的地を設定している場合に、前記目的地までの到達距離、または前記目的地までの離間距離が所定距離未満となる、目的地への到達以前の期間または区間の走行軌跡データを伝達対象から除外する条件を用いるプローブカー車載機。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のプローブカー車載機であって、
前記走行軌跡抽出手段は、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出をデータ伝達前に行い、前記軌跡抽出条件により除外される所定の期間または区間の走行軌跡データを前記伝達手段により伝達しないようにするプローブカー車載機。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のプローブカー車載機であって、
前記取得した走行軌跡データを蓄積する走行軌跡蓄積手段を備え、
前記走行軌跡抽出手段は、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出をデータ蓄積前に行い、前記軌跡抽出条件により除外される所定の期間または区間の走行軌跡データを前記走行軌跡蓄積手段により蓄積しないようにするプローブカー車載機。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のプローブカー車載機であって、
前記軌跡抽出条件における所定の期間または区間に対応する数値を可変的に決定する軌跡抽出条件決定手段を備え、
前記走行軌跡抽出手段は、前記決定された数値による軌跡抽出条件を用いて、前記伝達対象となる走行軌跡データの抽出を行うプローブカー車載機。
【請求項14】
車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブ情報収集システムであって、
請求項1〜13のいずれかに記載のプローブカー車載機と、
前記プローブカー車載機より伝達された走行軌跡データを含むプローブ情報を取得し、このプローブ情報に基づいて該当道路区間の交通情報を生成するセンタ装置と、
を備えるプローブ情報収集システム。
【請求項15】
車両の走行軌跡の情報を含むプローブ情報を収集するプローブ情報収集システムにおけるプローブ情報収集方法であって、
前記車両が走行した走行軌跡データを取得する走行軌跡取得ステップと、
所定の軌跡抽出条件を用いて前記走行軌跡データを判定し、前記車両を使用する使用者個人またはその行動が特定可能な所定の期間または区間の走行軌跡データを除いた伝達対象となる走行軌跡データを抽出する走行軌跡抽出ステップと、
前記伝達の走行軌跡データを伝達する伝達ステップと、
を有するプローブ情報収集方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項15に記載のプローブ情報収集方法の各手順を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−11814(P2006−11814A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187950(P2004−187950)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】