説明

プローブ及びこれを用いた光測定装置

【課題】被検者の頭部表面に短時間で容易に配置することができるプローブを提供する。
【解決手段】 被検体に装着されるホルダ50の装着部51に固定するための筒形状の筐体12aと、筐体12aの末端側から挿入されることで筐体12aの内部に配置され、先端部から光を送光するか又は先端部で光を受光する管状の光伝送体130aと、筐体12aと光伝送体130aとの間に配置され、光伝送体130aを先端方向に押し出す弾性部材12bとを備えるプローブ12であって、光伝送体130aを振動させる振動機構12cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて非侵襲で脳活動を測定するためのプローブ及びこれを用いた光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳の活動状況を観察するために、光を用いて簡便に非侵襲で測定する光脳機能イメージング装置(光測定装置)が開発されている。このような光脳機能イメージング装置では、送光用プローブと受光用プローブとを備える。これにより、光脳機能イメージング装置では、被検者の頭部表面上に配置した送光用プローブにより、異なる3種類の波長λ、λ、λ(例えば、780nmと805nmと830nm)の近赤外光を脳に照射するとともに、頭部表面上に配置した受光用プローブにより、脳から放出された各波長の近赤外光の強度(受光量情報)A(λ)、A(λ)、A(λ)をそれぞれ検出する。
【0003】
そして、このようにして得られた受光量情報A(λ)、A(λ)、A(λ)から、脳血流中のオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]とを求めるために、例えば、Modified Beer Lambert則を用いて関係式(1)(2)(3)に示す連立方程式を作成して、この連立方程式を解いている(例えば、非特許文献1参照)。さらには、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]とから総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を算出している。
A(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(1)
A(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(2)
A(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(3)
なお、E(λm)は、波長λmの光におけるオキシヘモグロビンの吸光度係数であり、E(λm)は、波長λmの光におけるデオキシヘモグロビンの吸光度係数である。
【0004】
ここで、送光用プローブと受光用プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係について説明する。図5(a)は、一対の送光用プローブ及び受光用プローブと、測定部位との関係を示す断面図であり、図5(b)は、図5(a)の平面図である。
送光用プローブ112が被検者の頭部表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光用プローブ113が被検者の頭部表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光用プローブ112から光を照射させるとともに、受光用プローブ113に頭部表面から放出される光を入射させる。このとき、光は、頭部表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭部表面の受光点Rに到達する。これにより、測定領域の中でも、特に送光点Tと受光点Rとを被検者の頭部表面に沿って最短距離で結んだ線Lの中点Mから、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭部表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さL/2である被検者の測定部位Sに関する受光量情報A(λ)、A(λ)、A(λ)が得られるとしている。
【0005】
また、光脳機能イメージング装置では、脳の複数箇所の測定部位に関するオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])をそれぞれ測定するために、例えば、近赤外分光分析計(以下、NIRSと略す)等が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
図6は、従来の光脳機能イメージング装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
光脳機能イメージング装置(近赤外分光分析計)101は、直方体形状の筐体6を有する。筐体6の内部には、光を出射する光源(発光部)102と、光源102を駆動する光源駆動機構4と、受光量情報A(λ)を検出する光検出器(受光部)103と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部21と、解析用制御部22と、メモリ23とを備えるとともに、筐体6の外部には、被検者の頭部に装着されるホルダ50と、ホルダ50に固定されるA個の送光用プローブ112と、ホルダ50に固定されるB個の受光用プローブ113と、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0006】
光源駆動機構4は、送受光用制御部21から入力された駆動信号により光源102を駆動する。光源102は、例えば、異なる3種類の波長λ、λ、λの近赤外光を出射することができる半導体レーザLD1、LD2、LD3等である。
光検出器103は、近赤外光をそれぞれ検出することにより、受光信号(受光量情報)A(λ)、A(λ)、A(λ)をA/D5を介して送受光用制御部21に出力する検出器であり、例えば、光電子増倍管等が用いられる。
【0007】
このような近赤外分光分析計101では、A個の送光用プローブ112と、B個の受光用プローブ113とを所定の配列で被検者の頭部表面に密着させるために、ホルダ50が使用される。ホルダ50としては、例えば、頭部表面の形状に合わせて椀形状に成型されたものが使用される。図7は、ホルダの一例を示す斜視図である。ホルダ50には、(A+B)個の貫通孔(装着部)51が行方向と列方向とで30mmをあけるように形成されている。貫通孔51は円柱形状で、その直径は10mm程度であり、深さは5mm程度である。
【0008】
そして、図8は、従来の送光用プローブ(受光用プローブ)の一例を示す図である。図8(a)は、送光用プローブの斜視図であり、図8(b)は、送光用プローブの断面図であり、図8(c)は、送光用プローブの正面図である。
送光用プローブ112は、外径が10mm程度である円筒形状の筐体112aを有し、筐体112aの外周面は、貫通孔51の内周面に固定できるようになっている。筐体112aの内部には、直径2mmの管状の送光用光ファイバ130aの一端部が挿入されている。これにより、送光用光ファイバ130aの他端部が、発光部102と接続されることで、送光用光ファイバ130aの他端部から入射した近赤外光が、送光用光ファイバ130aの内部を通過して送光用光ファイバ130aの一端部(送光用プローブ112の先端)から出射することができるようになっている。
また、筐体112aの内部には、送光用光ファイバ130aを先端方向Sに押し出すバネ部材(弾性部材)112bが配置されている。これにより、後述するが、被検者の頭部に装着されたホルダ50に固定された際には、送光用光ファイバ130aの先端を頭部表面に押し付けるようになっている。
【0009】
受光用プローブ113は、送光用プローブ112と同様の構造をしており、外径が10mm程度である円筒形状の筐体113aを有し、筐体113aの外周面は、貫通孔51の内周面に固定できるようになっている。筐体113aの内周面には、直径2mmの管状の受光用光ファイバ140aの一端部が挿入されている。これにより、受光用光ファイバ140aの他端部が、光検出器103と接続されることで、受光用光ファイバ140aの一端部(受光用プローブ113の先端)から入射した近赤外光が、受光用光ファイバ140aの内部を通過して受光用光ファイバ140aの他端部から出射することができるようになっている。
【0010】
このようなA個の送光用プローブ112とB個の受光用プローブ113とが、ホルダ50の貫通孔51に、行方向と列方向とに交互となるように挿入されることになる。図9は、A個の送光用プローブとB個の受光用プローブとの位置関係の一例を示す図である。なお、送光用プローブ112を黒丸で示し、受光用プローブ113を白丸で示す。
このとき、ホルダ50のどの貫通孔51に、どの送光用プローブ112T1〜112TA又は受光用プローブ113R1〜113RBが挿入されたかが認識されるように、各貫通孔51には、異なる番号(T1、T2、・・・、TA、R1、R2、・・・、RB)がそれぞれ振り当てられているとともに、各送光用プローブ112T1〜112TAにも、異なる番号(T1、T2、・・・、TA)がそれぞれ振り当てられ、各受光用プローブ113R1〜113RBにも、異なる番号(R1、R2、・・・、RB)がそれぞれ振り当てられている。これにより、各送光用プローブ112T1〜112TAと各受光用プローブ113R1〜113RBとは、対応する番号の各貫通孔51にそれぞれ挿入される。
【0011】
そして、A個の送光用プローブ112T1〜112TAとB個の受光用プローブ113R1〜113RBとの位置関係では、1個の受光用プローブ113で、複数個の送光用プローブ112から照射された光を同時に受光しないで、1個の送光用プローブ112から照射された光のみを受光するように、送光用プローブ112から光を照射するタイミングと、受光用プローブ113で光を受光するタイミングとを調整する必要がある。このため、メモリ23には、光源102で光を出射するタイミングと光検出器103で光を検出するタイミングとを示す測定用制御テーブルが記憶されている。
このような測定用制御テーブルに基づいて、送受光用制御部21は、所定の時間に、1個の送光用プローブ112に光を送光する駆動信号を光源102に出力するとともに、受光用プローブ113で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器103で検出する。その結果、X箇所の測定部位に関する受光量情報A(λ)、A(λ)、A(λ)(x=1,2,・・・,X)の収集が行われる。
【0012】
解析用制御部22は、X箇所の測定部位に関する受光量情報A(λ)、A(λ)、A(λ)(x=1,2,・・・,X)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−109964号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Factors affecting the accuracy of near-infrared spectroscopy concentration calculations for focal changes in oxygenation parameters, NeuroImage 18, 865-879, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、ホルダ50を被検者の頭部に装着させ、送光用プローブ112T1〜112TAや受光用プローブ113R1〜113RBをホルダ50の貫通孔51に固定した後、送光用プローブ112T1〜112TAの送光用光ファイバ130aの先端や受光用プローブ113R1〜113RBの受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面に接触させることになるが、人体の頭部表面には毛髪が存在するので、医師等は耳かき等を用いて毛髪を掻き分けながら送光用光ファイバ130aの先端や受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面に接触させていくという作業が発生する。
よって、複数個(例えば、128個)の送光用光ファイバ130aの先端や複数個の受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面に接触させる場合には、何箇所も毛髪を掻き分けることになり、医師等にとっては非常に手間がかり、被検者にとっては長い時間拘束されるため非常にストレスがかかるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、本発明者は、被検者の頭部表面に短時間で容易に配置することができるプローブについて検討を行った。上述したようなプローブでは、送光用光ファイバ130aの先端や受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面と接触させる際に、耳かき等を用いて毛髪を掻き分ける必要があるので、耳かき等を用いることに代えて、プローブの送光用光ファイバ130aや受光用光ファイバ140aを振動させることにした。すなわち、プローブの送光用光ファイバ130aや受光用光ファイバ140aに振動機構を取り付けることを見出した。これにより、送光用プローブ112T1〜112TAの送光用光ファイバ130aの先端や受光用プローブ113R1〜113RBの受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面に接触させる際には、送光用光ファイバ130aや受光用光ファイバ140aを振動させることで毛髪を掻き分けながら、送光用光ファイバ130aの先端や受光用光ファイバ140aの先端を頭部表面に接触させていくことができる。
【0017】
すなわち、本発明のプローブは、被検体に装着されるホルダの装着部に固定するための筒形状の筐体と、前記筐体の末端側から挿入されることで前記筐体の内部に配置され、先端部から光を送光するか又は先端部で光を受光する管状の光伝送体と、前記筐体と前記光伝送体との間に配置され、前記光伝送体を先端方向に押し出す弾性部材とを備えるプローブであって、前記光伝送体を振動させる振動機構を備えるようにしている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のプローブによれば、耳かき等を用いることなく、被検体の頭部表面に短時間で容易に配置することができる。
【0019】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明のプローブは、前記振動機構は、前記先端方向と垂直な一方向に振動させるようにしている。
本発明のプローブによれば、光伝送体を毛髪の方向のみに振動させることで毛髪を掻き分けながら、光伝送体の先端部を頭部表面に接触させていくことができる。
また、本発明のプローブは、前記振動機構は、振動数、振動強度及び/又は振動時間を変更することが可能となっている。
本発明のプローブによれば、被検体の頭部における毛髪の状態によって振動数や振動強度や振動時間を変更することができる。
【0020】
そして、本発明の光測定装置は、上述したような複数のプローブと、前記被検体に装着されるホルダと、前記プローブに対して光の送光又は受光を制御する制御部とを備えるようにしてもよい。
また、本発明の光測定装置は、前記制御部が、一のプローブから被検体に光を照射するとともに、他のプローブで被検体から放出される光を受光して、検出された光強度に基づいて、前記被検体と前記一のプローブの光伝送体の先端部と前記他のプローブの光伝送体の先端部との接触状態を判定する判定部を有するようにしている。
本発明の光測定装置によれば、被検体と光伝送体の先端部との接触状態を判定することができる。
【0021】
また、本発明の光測定装置は、前記判定部が、前記被検体と前記プローブの光伝送体の先端部との接触状態が良好であると判定したときには、良好であると判定したプローブの光伝送体の振動を停止させるようにしている。
本発明の光測定装置によれば、接触状態が良好になれば、プローブの光伝送体の振動を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である光脳機能イメージング装置の概略構成の一例を示すブロック図。
【図2】送光用プローブの一例を示す図。
【図3】受光用プローブの一例を示す図。
【図4】判定部の動作について説明するためのフローチャート。
【図5】送光用プローブと受光用プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係を示す図。
【図6】従来の光脳機能イメージング装置の概略構成の一例を示すブロック図。
【図7】ホルダの一例を示す図。
【図8】従来の送光用プローブ(受光用プローブ)の一例を示す図。
【図9】A個の送光用プローブとB個の受光用プローブの位置関係の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態である光脳機能イメージング装置の概略構成の一例を示すブロック図である。なお、光脳機能イメージング装置101と同様のものについては、同じ符号を付している。
光脳機能イメージング装置(近赤外分光分析計)1は、直方体形状の筐体6を有する。筐体6の内部には、光を出射する光源(発光部)102と、光源102を駆動する光源駆動機構4と、受光量情報A(λ)を検出する光検出器(受光部)103と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部21と、解析用制御部22と、判定部24と、メモリ23とを備えるとともに、筐体6の外部には、被検者の頭部に装着されるホルダ50と、ホルダ50に固定されるA個の送光用プローブ12と、ホルダ50に固定されるB個の受光用プローブ13と、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0025】
図2は、送光用プローブの一例を示す図である。図2(a)は、送光用プローブの斜視図であり、図2(b)は、送光用プローブの断面図であり、図2(c)は、送光用プローブの正面図である。
送光用プローブ12は、外径が10mm程度である円筒形状の筐体12aを有し、筐体12aの外周面は、貫通孔51の内周面に固定できるようになっている。
筐体12aの内部には、直径2mmの管状の送光用光ファイバ130aの一端部が挿入されている。これにより、送光用光ファイバ130aの他端部が、発光部102と接続されることで、送光用光ファイバ130aの他端部から入射した近赤外光が、送光用光ファイバ130aの内部を通過して送光用光ファイバ130aの一端部(送光用プローブ12の先端)から出射することができるようになっている。
【0026】
また、筐体12aの内部には、送光用光ファイバ130aを先端方向Sに押し出すバネ部材(弾性部材)12bが配置されている。これにより、被検者の頭部に装着されたホルダ50に固定された際には、送光用光ファイバ130aの先端部を頭部表面に押し付けるようになっている。
さらに、筐体12aの末端には、送光用光ファイバ130aに接触するように振動子(振動機構)12cが配置され、振動子12cは電源と制御とを含むケーブル12dの一端部と接続されている。ケーブル12dは、送光用光ファイバ130aに沿うように配置され、ケーブル12dの他端部が判定部24と接続されている。これにより、振動子12cにケーブル12dを介して電力と制御信号とが供給された際には、送光用光ファイバ130aを、制御信号に基づいて先端方向と垂直な一方向Tに振動させることができるようになっている。
なお、振動子12cとしては、例えば、扁平型小型振動モータや圧電素子等が挙げられ、制御信号によって振動数と振動強度と振動時間とを様々な数値に変更することが可能となっている。
【0027】
図3は、受光用プローブの一例を示す図である。図3(a)は、受光用プローブの斜視図であり、図3(b)は、受光用プローブの断面図であり、図3(c)は、受光用プローブの正面図である。
受光用プローブ13は、送光用プローブ12と同様の構造をしており、外径が10mm程度である円筒形状の筐体13aを有し、筐体13aの外周面は、貫通孔51の内周面に固定できるようになっている。筐体13aの内周面には、直径2mmの管状の受光用光ファイバ140aの一端部が挿入されている。これにより、受光用光ファイバ140aの他端部が、光検出器103と接続されることで、受光用光ファイバ140aの一端部(受光用プローブ13の先端)から入射した近赤外光が、受光用光ファイバ140aの内部を通過して受光用光ファイバ140aの他端部から出射することができるようになっている。
【0028】
また、筐体13aの内部には、受光用光ファイバ140aを先端方向Sに押し出すバネ部材(弾性部材)13bが配置されている。これにより、被検者の頭部に装着されたホルダ50に固定された際には、受光用光ファイバ140aの先端部を頭部表面に押し付けるようになっている。
さらに、筐体13aの末端には、受光用光ファイバ140aに接触するように振動子(振動機構)13cが配置され、振動子13cは電源と制御とを含むケーブル13dの一端部と接続されている。ケーブル13dは、受光用光ファイバ140aに沿うように配置され、ケーブル13dの他端部が判定部24と接続されている。これにより、振動子13cにケーブル13dを介して電力と制御信号とが供給された際には、受光用光ファイバ140aを、制御信号に基づいて先端方向と垂直な一方向Tに振動させることができるようになっている。
なお、振動子13cとしては、例えば、扁平型小型振動モータや圧電素子等が挙げられ、振動数と振動強度と振動時間とを様々な数値に変更することが可能となっている。
【0029】
判定部23は、測定者によってキーボード27を用いて接触状態を判定するための判定実行信号が入力されると、被検者と送光用プローブ12と受光用プローブ13との接触状態が良好になるように制御する。図4は、判定部24の動作について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、判定実行信号が入力されたか否かを判定する。判定実行信号が入力されていないと判定したときには、ステップS101の処理を繰り返す。つまり、判定実行信号が入力されるまで、ステップS101の処理が繰り返されることになる。
【0030】
一方、判定実行信号が入力されたと判定したときには、ステップS102の処理において、回数パラメータtに0と更新するように、t=0とメモリ23に記憶させる。
次に、ステップS103の処理において、メモリ23に記憶された判定用制御テーブルと、後述する合否情報とに基づいて、1個の送光用プローブ12に光を送光する駆動信号を光源102に出力するとともに、受光用プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器103で検出する。このとき、3種類の波長λ、λ、λの光を送光することができるが、1種の波長λの光のみを送光する。その結果、受光量情報A(λ)(x=1,2,・・・,A×B)の収集が行われる。
【0031】
次に、ステップS104の処理において、受光量情報A(λ)(x=1,2,・・・,A×B)に基づいて、被検者の頭部表面と送光用プローブ12の送光用光ファイバ130aの先端と受光用プローブ13の受光用光ファイバ140aの先端との接触状態を判定する。このとき、例えば、一の送光用プローブ12と一の受光用プローブ13と間で検出された受光量情報A(λ)が閾値以上であるときには、被検者の頭部表面と一の送光用プローブ12と一の受光用プローブ13との接触状態は良好であると判定し合格情報をメモリ23に記憶させ、一方、閾値未満であるときには、被検者の頭部表面と一の送光用プローブ12と一の受光用プローブ13との接触状態が良好でないと判定し不合格情報をメモリ23に記憶させる。
【0032】
次に、ステップS105の処理において、全てのプローブ12、13の接触状態が良好であるか否かを判定する。全てのプローブ12、13の接触状態が良好であると判定したときには、本フローチャートを終了させる。
次に、少なくとも1個のプローブ12、13の接触状態が良好でないと判定したときには、ステップS106の処理において、回数パラメータtにt+1と更新するように、t=t+1とメモリ23に記憶させる。
【0033】
次に、ステップS107の処理において、合否情報に基づいて、送光用プローブ12の振動子12cや受光用プローブ13の振動子13cに制御信号と電力とを供給して、ステップS103の処理に戻る。このとき、回数パラメータtに応じて、振動数Otと振動強度Ptと振動時間Qtとを変更した制御信号を出力する。これにより、被検者の頭部における様々な毛髪の状態に対しても、振動させることでプローブ12、13の接触状態が良好となるようにすることができる。
【0034】
以上のように、本発明のプローブ12、13によれば、耳かき等を用いることなく、被検者の頭部表面に短時間で容易に配置することができる。
さらに、本発明の光脳機能イメージング装置1によれば、被検者の頭部表面と送光用光ファイバ130aの先端と受光用光ファイバ140aの先端との接触状態を判定することができる。
【0035】
<他の実施形態>
上述した光脳機能イメージング装置1において、回数パラメータtに応じて、振動数Otと振動強度Ptと振動時間Qtとを変更するような構成を示したが、振動方向を変更するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する光脳機能イメージング装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:光脳機能イメージング装置(光測定装置)
12:送光用プローブ
12a:筐体
12b:バネ部材(弾性部材)
12c:振動子(振動機構)
21:送受光用制御部
50:ホルダ
51:貫通孔(装着部)
130a:送光用光ファイバ(光伝送体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に装着されるホルダの装着部に固定するための筒形状の筐体と、
前記筐体の末端側から挿入されることで前記筐体の内部に配置され、先端部から光を送光するか又は先端部で光を受光する管状の光伝送体と、
前記筐体と前記光伝送体との間に配置され、前記光伝送体を先端方向に押し出す弾性部材とを備えるプローブであって、
前記光伝送体を振動させる振動機構を備えることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記振動機構は、前記先端方向と垂直な一方向に振動させることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記振動機構は、振動数、振動強度及び/又は振動時間を変更することが可能となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複数のプローブと、
前記被検体に装着されるホルダと、
前記プローブに対して光の送光又は受光を制御する制御部とを備えることを特徴とする光測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、一のプローブから被検体に光を照射するとともに、他のプローブで被検体から放出される光を受光して、検出された光強度に基づいて、前記被検体と前記一のプローブの光伝送体の先端部と前記他のプローブの光伝送体の先端部との接触状態を判定する判定部を有することを特徴とする請求項4に光測定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記被検体と前記プローブの光伝送体の先端部との接触状態が良好であると判定したときには、良好であると判定したプローブの光伝送体の振動を停止させることを特徴とする請求項5に光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−135380(P2012−135380A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288608(P2010−288608)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】