説明

プローブ及びその製造方法

【課題】細径化や製造容易性の向上に有利なプローブ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プローブは、光ファイバーバンドル15と、光ファイバーバンドルの一端面に設置された光学フィルター13,14とを備える。光ファイバーバンドルを構成する一部の光ファイバーにより、励起光を導光する第1の光ファイバー系10が構成され、光ファイバーバンドルを構成する他の一部の光ファイバーにより、測定光を受光して導光する第2の光ファイバー系12が構成される。製造方法にあっては、フィルター設置の後、一端面32に光を入射させた時の他端面33において各光ファイバーから出射される光の有無又は相違により識別して、第1の光ファイバー系と第2の光ファイバー系とに分配し、分離することで、光ファイバーの配置精度、光学フィルターの形成精度及び設置精度に影響されずに容易に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の測定対象部位に励起光を照射して測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡による体内管腔の観察・診断は、現在広く普及している診断方法である。この診断方法は、体内組織を直接観察するため、病変部を切除する必要がなく、被験者の負担が小さいとう利点を有する。一方で、このように体内管腔を直接観察する方法は、生検後の病理検査に比べて確度や精度が低いと考えられており、撮像画質の向上の努力が継続的に行われている。
また、最近ではいわゆるビデオスコープ以外に、様々な光学原理を活用した診断装置や、超音波診断装置といったものが提案され、一部は実用化されている。これらの分野でも、その診断確度の改善のために、新しい測定原理を導入したり、複数の測定原理を組み合わせたりすることが行われている。
特に、組織から放射される蛍光や組織に塗布された蛍光物質からの蛍光を観察、測定することで、単に組織の画像を見るだけでは得られない情報を得られることが知られている。蛍光画像を取得し、通常の可視画像にオーバーラップさせて表示するといった蛍光画像内視鏡システムも提案されている。このようなシステムは、悪性腫瘍の早期発見につながるため、非常に期待されている。
また、蛍光画像を構成せずとも、蛍光の強度情報を取得することで組織の状態を判断する方法も知られている。このような方法においては、電子内視鏡に搭載されている撮像素子を使用せずに蛍光を取得するものもある。
【0003】
このような蛍光診断をするための診断子、すなわちプローブは、内視鏡の鉗子チャンネル経由で体内にいたるもの、あるいは内視鏡と一体になっているものなどがある。特許文献1、2に記載の蛍光観察用プローブにあっては、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入されることで、体内に導かれる。
【0004】
また、プローブを用いて体内の組織の情報を得るための分光法としては、蛍光分光以外に例えばラマン分光法が挙げられる。
両者に共通した特徴として、測定の際に、比較的狭帯域の励起光を生体組織に照射し、励起光とは異なる波長領域に現れる蛍光やラマン散乱光といった測定光を受光する点である。このような測定においては、高強度の励起光と低強度の測定光を分離し、測定光のみを検出する必要がある。そのために、一般的に光学フィルターを用いて、測定光と励起光とを分離する。この際、特許文献3に示すように、光学フィルターはプローブ自体にではなく、付属の装置内に組み込まれ、プローブが導光した測定光を、プローブの後段階で光学的に分離することが多い。
しかし、この構成において励起光が高強度の場合、プローブ内の光ファイバーから蛍光やラマン散乱光が発生する。光ファイバーとして、例えば数メートル程の長さのものが用いられるため、光ファイバーで生じた蛍光やラマン散乱光が、生体からのそれと同等または強くなってしまうという問題がある。
この問題への一つの対策として、例えば特許文献4にも示されるように、異なる透過帯域の光学フィルターを励起光導光ファイバーの出射端前方と、受光ファイバーの入射端前方とに設置することが有効である。
励起光導光ファイバーの出射端前方に設置された光学フィルターによって励起光を透過させ、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を遮断することで、励起光導光ファイバー内で発生した蛍光やラマン散乱光が生体組織に照射されることを回避することができる。
また、受光ファイバーの入射端面前方に設置された光学フィルターによって励起光を遮断し、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を透過させることで、受光ファイバーに励起光の一部が入射し同ファイバー内で蛍光やラマン散乱光が発生することを回避することができる。
かかる光学フィルターは、必要に応じて一方のみの設置でもよい。
特許文献4に記載のプローブにおいては、同心円状に励起光導光ファイバーの周囲を囲むように複数の受光ファイバーが配置されている。そのために、受光ファイバーの入射端面前方に設置される光学フィルターが円環形状に形成され、励起光導光ファイバーの出射端面前方に設置される光学フィルターが、その円環形状の中心の中空部に納まる比較的小断面積のものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−104391号公報
【特許文献2】特開2010−88929号公報
【特許文献3】特開2005−305182号公報
【特許文献4】特許第4588324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上説明したプローブにあっては、測定性能を低下させることなく、患者の負担軽減等の観点からの更なる細径化や、感染防止等を目的とするプローブのディスポーザブル化のための製造容易性の向上が、今後要請されるものと予測される。
特許文献4で示されているように、異なる透過帯域の光学フィルターを円環形状の部材とその中空部に収まる部材とで構成する場合、精度良く微小径の孔をあけてその中空部を形成したり、その中空部に収まるフィルターを精度良く形成したりすることに高度な加工技術を要し、また光ファイバーの端面に対して精度よく設置することを要するため、製造が困難であり、プローブ細径化、ディスポーザブル化の障害となるおそれがある。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、生体組織の測定対象部位に励起光を照射して、測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブにおいて、細径化や製造容易性の向上に有利なプローブ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、生体組織の測定対象部位に励起光を照射して、測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブであって、
前記光学系として、
前記プローブの先端部に一端面が配置された一塊の光ファイバーバンドルと、
前記光ファイバーバンドルの前記一端面に設置された光学フィルターと、を備え、
前記光ファイバーバンドルを構成する一部の光ファイバーにより、前記励起光を導光する励起導光路を構成する第1の光ファイバー系が構成され、
前記光ファイバーバンドルを構成する他の一部の光ファイバーにより、前記測定光を受光して導光する受光導光路を構成する第2の光ファイバー系が構成され、
前記光学フィルターは、前記第1の光ファイバー系の出射端面又は/及び前記第2の光ファイバー系の受光端面に設置されて、これら両端面の光学透過特性を異ならしめることを特徴とするプローブである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記光ファイバーバンドルは、イメージガイド光ファイバーファンドルであること特徴とする請求項1に記載のプローブである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記光ファイバーバンドルは、ライトガイド光ファイバーファンドルであり、当該ライトガイド光ファイバーファンドルの光ファイバー素線数が7から64であること特徴とする請求項1に記載のプローブである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記光学フィルターは、前記光ファイバーバンドルの前記一端面に、蒸着又はスパッタリングにより形成されてなる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプローブである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のプローブの製造方法であって、
前記光ファイバーバンドルの前記一端面に、前記光学フィルターを設置するフィルター設置工程と、
前記フィルター設置工程の後、前記一端面に光を入射させた時の他端面において各光ファイバーから出射される光の有無又は相違により識別して、前記光ファイバーバンドルに含まれる光ファイバーの全部又は一部を、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とに分配する分配工程と、
前記光ファイバーバンドルの前記他端面を含む端部において、前記分配工程により分配された前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離し、プローブ基端の光学機器への接続部における前記第1の光ファイバー系の接続端及び前記第2の光ファイバー系の接続端をそれぞれ構成する接続端作製工程と、
を備えるプローブの製造方法である。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記光ファイバーバンドルとしてイメージガイド光ファイバーファンドルを使用し、前記接続端作製工程では、前記第1の光ファイバー系及び前記第2の光ファイバー系のうちいずれか一方を一塊に保持するか、双方をそれぞれ一塊に保持したまま、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離することを特徴とする請求項5に記載のプローブの製造方法である。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記光ファイバーバンドルとしてライトガイド光ファイバーファンドルを使用し、前記接続端作製工程では、前記他端面を含む端部において光ファイバーを1本1本に分離して、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離することを特徴とする請求項5に記載のプローブの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプローブにあっては、蒸着、スパッタリング等により一端面に光学フィルターが設置された光ファイバーバンドルを少なくとも1本構成すればよく、本発明の製造方法を適用することで、光学フィルターの設置後に、前記一端面に光を入射させた時の他端面から出射される光の有無又は相違により識別して、第1の光ファイバー系と第2の光ファイバー系とに分配するから、光ファイバーの配置精度、光学フィルターの形成精度及び設置精度が高レベルに求められることも無く、製造が容易となり、細径化、ディスポーザブル化を促進することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るプローブが適用されたシステムの概要を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプローブが挿通された内視鏡の先端部の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプローブの先端部縦断面図である。
【図4】本発明のプローブに適用する一例の光ファイバーバンドルの断面図である。
【図5】本発明のプローブに適用する他の一例の光ファイバーバンドルの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係り、2つの光学フィルターを直線境界で分けた場合のプローブの主要製造過程を示す模式的斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係り、2つの光学フィルターを円状境界の内と外に分けた場合のプローブの主要製造過程を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0018】
図1に示すように本実施形態のプローブ1は、その基端がベースユニット2に接続される。ベースユニット2には、生体の測定対象部位に照射される励起光を発生するための光源、及び、励起光照射により測定対象部位から放射される光を測定光として検出するための分光器などからなる検出器等が備えられている。
一方、内視鏡本体3が、内視鏡本体に内蔵されるカメラ部や照明などの各部の制御やこれら各部とのデータのやり取りを行うための内視鏡プロセッサ4に接続されている。内視鏡本体3は、体内への挿入部3aと、挿入部3aの曲げ操作等を行うための操作部3bとを有する。内視鏡本体3には、操作部3bに設けられた挿入口から挿入部3aの先端面の開口まで連通するチャネル3cが形成されている。プローブ1はチャネル3cに挿通され、図2に示すようにプローブ1の先端が内視鏡先端に対して進退可能に配置されている。
図2に示すように、内視鏡本体3の挿入部3aの先端部には、撮像素子や対物レンズ等で構成されるカメラ部3d、内視鏡照明の発光部となるライトガイド3e、気体、液体等の流動物を噴射するための送気送水ノズル3f、チャネル3cの先端開口が設けられ、プローブ1の先端部がチャネル3cから必要に応じて延出される。
但し、以上説明した内視鏡の形態、プローブ1が内視鏡のチャネル3cに挿通される形態は説明上の具体的例示に過ぎない。特に、プローブ1の体内に導かれる形態は、内視鏡のチャネル3cを経由する形態のほか、単独で体内に挿入される形態であってもよい。また、プローブ1の構成が内視鏡本体3に一体化された形態であっても、本発明を実施することが可能である。
【0019】
図3に示すようにプローブ1は、プローブチューブ9の内部に、集光レンズ系(集光レンズ11)と、光学フィルター13,14と、光ファイバーバンドル15とを備える。光ファイバーバンドル15を構成する一部の光ファイバーにより第1の光ファイバー系10が構成される。光ファイバーバンドル15を構成する他の一部の光ファイバーにより、第2の光ファイバー系12が構成される。
【0020】
図3に示すように光ファイバーバンドル15の一端面がプローブの先端部に配置されている。
第1の光ファイバー系10は、基端がベースユニット2の光源の励起光出力面に接続又は近接するように設けられ、先端が図3に示すようにプローブ先端部に及んでおり、励起光を導光する励起導光路を構成する。
集光レンズ系は、第1の光ファイバー系10から出射した励起光が照射され、かつ、測定対象部位から放射される測定光を集光する正のパワーを有するレンズ又はレンズ群である。
第2の光ファイバー系12は、基端がベースユニット2の検出器への入力端に接続され、先端が図3に示すようにプローブ先端に及んでおり、集光レンズ系が集光した測定光を受光して導光する受光導光路を構成する。
【0021】
集光レンズ系は、1個又は複数個のレンズから構成されるが、1個の場合はそれが集光レンズ11であり、複数個のレンズから構成されるときには、光ファイバー系10、12に最も近い位置に配置されるレンズを集光レンズ11とする。図3においては、1つの集光レンズ11のみを図示するが、集光レンズ11の光ファイバー系10、12に対する反対側に集光レンズ系を構成する他のレンズを配置してもよい。集光レンズ11に対向する第1の光ファイバー系10の先端が出射端、集光レンズ11に対向する第2の光ファイバー系12の先端が受光端である。
【0022】
ベースユニット2の光源からの励起光は第1の光ファイバー系10によってプローブ1の先端部に導光される。第1の光ファイバー系10の出射端から出射した励起光は、集光レンズ系で集光されてプローブ1から出射し、生体組織表面の測定対象部位へ照射される。測定対象部位に照射された励起光により、病変状態に従って蛍光が発生する。発生した蛍光と生体組織表面での反射光が含まれる測定対象部位からの測定光がプローブ1に入射して集光レンズ系で集光され、第2の光ファイバー系12の受光端に入射する。さらに測定光が第2の光ファイバー系12によって導光される。
【0023】
第2の光ファイバー系12で導光された測定光は、ベースユニット2の検出器に入力される。蛍光は、広義には、X線や紫外線、可視光線が照射された被照射物が、そのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するものである。ここでは、励起光によって、その波長とは異なった波長の蛍光が戻り光として生じるので、これを測定光として受光し、第2の光ファイバー系12を介してベースユニット2の検出器に導光し、スペクトル分布を分析することで、測定対象の病変状態を検知する。
なお、蛍光の測定に代えて、励起光に起因して生じるラマン散乱光を受光し測定することとしてもよい。
【0024】
光学フィルター13,14は、光ファイバーバンドル15の一端面に設置されている。
光学フィルター13は、励起光を透過させ励起光以外の帯域の光を遮断する励起光透過フィルターである。光学フィルター13は、第1の光ファイバー系10の出射端と集光レンズ11との間の光路に介在する。第1の光ファイバー系10の出射端から出射した光は、光学フィルター13に入射する。
したがって、光学フィルター13によって励起光を透過させ、蛍光やラマン散乱光が含まれる励起光以外の帯域の光を遮断することで、第1の光ファイバー系10内で発生した蛍光やラマン散乱光が生体組織に照射されることを回避することができる。
【0025】
光学フィルター14は、励起光を遮断し励起光以外の帯域の光を透過させる励起光遮断フィルターである。光学フィルター14は、集光レンズ11と第2の光ファイバー系12の受光端との間の光路に介在する。光学フィルター14を通過した光が第2の光ファイバー系12の受光端に入射する。
したがって、光学フィルター14によって励起光を遮断し、励起光以外の帯域の蛍光やラマン散乱光が含まれる光を透過させることで、第2の光ファイバー系12に励起光の一部が入射し第2の光ファイバー系12内で蛍光やラマン散乱光が発生することを回避することができる。
【0026】
なお、以上の説明に拘わらず、集光レンズ系(集光レンズ11)を設けるか否かは任意である。
また、光学フィルターの目的は、以上説明したことにも、如何なる目的にも限定されるものではない。第1の光ファイバー系10の出射端端面と、第2の光ファイバー系12の受光端面の光学透過特性を異ならしめるために、ファイバー系10、12のうち少なくともいずれか一方の端面に光学フィルターが設置されていればよい。
【0027】
光ファイバーバンドル15としては、複数の光ファイバーを1本状に固めたもので、図4又は図5に示す断面構造を有したものが知られる。
図4に示す光ファイバーバンドル15Aにあっては、複数の光ファイバー(素線)20が樹脂材料(例えば、ポリエチレン)23中に配置され、すなわち、複数の光ファイバー(素線)20間の隙間に樹脂材料23が充填されて1本状に固められている。
図5に示す光ファイバーバンドル15Bにあっては、複数の光ファイバー(素線)20がチューブ状の被覆材料(例えば、ポリエチレン)24内に配置され、複数の光ファイバー(素線)20同士が互いに接して固着することで1本状に固められている。
なお、図4において21はコア、22はクラッドである。
【0028】
光ファイバーバンドル15としては、イメージガイド光ファイバーファンドル又はライトガイド光ファイバーファンドルを適用できる。
イメージガイド光ファイバーファンドルにあっては、入出力される像を保つために、一端面における光ファイバー配置が、他端面において保たれている。
ライトガイド光ファイバーファンドルにあっては、照明光などの導光用途であるので、一端面における光ファイバー配置が、他端面において保たれているとは限らず、一端面における光ファイバー配置と、他端面における光ファイバー配置との間に一定の関係性は確保されていない。
【0029】
次に、プローブ1の製造方法につき説明する。
図6は、2つの光学フィルター13,14を直線境界で分けた場合の主要製造過程を示す模式的斜視図である。図7は、2つの光学フィルター13,14を円状境界の内と外に分けた場合の主要製造過程を示す模式的斜視図である。但し、光学フィルター13,14の平面形状は任意であり、これらは一例に過ぎない。そのため、形状の違いに拘わらず、図6及び図7において同一の符号を付する。
【0030】
(フィルター設置工程)
まず、フィルター設置工程を実施する。
フィルター設置工程においては、図6(a)又は図7(a)に示す光ファイバーバンドル15の一端面31に、図6(b)又は図7(b)に示すように、光学フィルター13,14を設置する。
そのための方法として、小片の光学フィルター13,14をそれぞれ一端面31に配置し、接着、溶着等によって固定する方法が挙げられる。
または、蒸着又はスパッタリングにより一端面31上に光学フィルター13となる素材、光学フィルター14となる素材を薄膜成長させて、光学フィルター13,14を形成する。
【0031】
(分配工程)
次に、分配工程を実施する。
分配工程においては、図6(b)又は図7(b)に示す光学フィルター13,14が既設の一端面32に光を入射させた時の他端面33において各光ファイバーから出射される光の有無又は相違により識別して、光ファイバーバンドル15に含まれる光ファイバーの全部又は一部を、第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12とに分配する。
光学フィルター13,14によって、光ファイバーバンドル15の一端面32での透過特性が当該一端面32上で分布を持つ。したがって、フィルター設置側の端面32から特定の波長の光を入れると、他端面33では一部のファイバーからは光が見え、他の一部のファイバーからは光が見えないという形、すなわち、出射光の有無で、一方の光学フィルター13が設置されている光ファイバーと、他方の光学フィルター14が設置されている光ファイバーと識別できる。このように識別して、一方の光学フィルター13が設置されている光ファイバーを第1の光ファイバー系10に分配し、他方の光学フィルター14が設置されている光ファイバーを第2の光ファイバー系12に分配する。
なお、光学フィルターの形状精度、設置精度が低い場合、光ファイバーバンドル15の一部の光ファイバーではどちらの光学フィルターも設置されていない、または両方の光学フィルターが設置されているということが起こる。この場合は、その光ファイバーは第1の光ファイバー系10にも第2の光ファイバー系12にも分配しない。
【0032】
識別方法としては、いくつか考えられる。
光学フィルター13,14のうち一方しか設置されていない場合にあっては、設置された光学フィルターによって遮断される光を入射することによって、他端面33から光の出射がある光ファイバーを光学フィルターが設置されていない光ファイバーと、他端面33から光の出射がない光ファイバーを光学フィルターが設置されている光ファイバーと識別できる。
光学フィルター13,14の双方が設置されている場合において、一方の光学フィルターを透過でき他方の光学フィルターにより遮断される光(例えば上述した励起光)を入射することによって、他端面33から光の出射がある光ファイバーを前記一方の光学フィルターが設置されている光ファイバーと、他端面33から光の出射がない光ファイバーを前記他方の光学フィルターが設置されている光ファイバーと識別できる。励起光を入射した場合は、他端面33から光の出射がある光ファイバーを光学フィルター13が設置されている光ファイバーと、他端面33から光の出射がない光ファイバーを光学フィルター14が設置されている光ファイバーと識別できる。
また、双方から光の出射がある条件では、その出射光の強度や波長分布など特性が相違するため、出射光の相違により識別できる。但し、確実に入射していること条件として、光の有無で識別できる条件とする方が、識別性が高く、識別が簡便となることは言うまでもない。
【0033】
(接続端作製工程)
次に、接続端作製工程を実施する。
接続端作製工程においては、図6(c)又は図7(c)に示すように光ファイバーバンドル15の他端面33を含む端部34において、前記分配工程により分配された第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12とを分離し、プローブ基端の光学機器への接続部における第1の光ファイバー系10の接続端及び第2の光ファイバー系12の接続端をそれぞれ構成する。
端部34における第1の光ファイバー系10に分配された光ファイバーと、第2の光ファイバー系12に分配された光ファイバーとの分離は、切断ブレードなどの刃物、レーザーカッターやウォータージェット加工などによって切断して行う方法が挙げられる。切断により損傷する光ファイバーが生じる場合には、切断により損傷する光ファイバーを予め上記分配工程において、第1の光ファイバー系10にも第2の光ファイバー系12にも分配しない光ファイバーとする。このような光ファイバーは、上述した光学フィルターの形状精度、設置精度を理由にいずれの光ファイバー系10,12にも分配されない光ファイバーが生じていれば、これと重複させることができるため、さほど無駄は増加しない。
分離は、図6(c)又は図7(c)に示すように枝分かれ状に分岐するように行う。
【0034】
光ファイバーバンドル15としてイメージガイド光ファイバーファンドルを使用する場合は、分離作業前の図6(b)又は図7(b)に示す他端面33において、第1の光ファイバー系10に分配された光ファイバーと、第2の光ファイバー系12に分配された光ファイバーとが混在しない。そのため、本接続端作製工程では、第1の光ファイバー系10及び第2の光ファイバー系12のうちいずれか一方を一塊に保持するか、双方をそれぞれ一塊に保持したまま、第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12とを分離することが可能であり、そのように分離する。
光ファイバーバンドル15としてライトガイド光ファイバーファンドルを使用する場合は、分離作業前の図6(b)又は図7(b)に示す他端面33において、第1の光ファイバー系10に分配された光ファイバーと、第2の光ファイバー系12に分配された光ファイバーとが混在する可能性が高い。そのため、本接続端作製工程では、他端面33を含む端部34において光ファイバーを1本1本に分離して仕分けすることにより、第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12とを分離する。
使用する光ファイバーバンドルは、どのような光ファイバーバンドルでもよい。しかし、バンドル中のファイバー本数が多い場合、素材コストと製造の手間とを考慮して、イメージガイド光ファイバーバンドルを選択することが好ましい場合がある。イメージガイド光ファイバーバンドルは、像を伝達するためにファイバー本数が多い。
したがって、適用するライトガイド光ファイバーファンドルの光ファイバー素線数は、64以下であることが好ましい。さらに、第1の光ファイバー系10と、第2の光ファイバー系12の2系統が必要となり、上述したように第1の光ファイバー系10にも第2の光ファイバー系12にも分配されない光ファイバーが発生するおそれがあるから、適用するライトガイド光ファイバーファンドルの光ファイバー素線数は、7から64であることが好ましい。
【0035】
プローブ1の基端にはコネクタ1a(図1参照)が設けられる。このコネクタ1aは、上述したベースユニット2などの光学機器への接続部である。図6(c)又は図7(c)に示す分離した枝状部分の末端33a、33bをそれぞれコネクタ1aの接続端子に配設する。これにより第1の光ファイバー系10の接続端及び第2の光ファイバー系12の接続端を構成する。本実施形態においては、コネクタ1aをベースユニット2に接続することによって、第2の光ファイバー系12は、導光した光をベースユニット2の検出器へ入力するように配置され、第1の光ファイバー系10は、ベースユニット2の光源からの励起光が入力されるように配置される。
【0036】
以上説明した本実施形態のプローブにあっては、蒸着、スパッタリング等により一端面に光学フィルターが設置された光ファイバーバンドルを少なくとも1本構成すればよく、本実施形態の製造方法を適用することで、光学フィルターの設置後に、一端面32に光を入射させた時の他端面33から出射される光の有無又は相違により識別して、第1の光ファイバー系10と第2の光ファイバー系12とに分配するから、光ファイバーの配置精度、光学フィルターの形成精度及び設置精度が高レベルに求められることも無く、製造が容易となり、細径化、ディスポーザブル化を促進することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0037】
1 プローブ
2 ベースユニット
3 内視鏡本体
4 内視鏡プロセッサ
9 プローブチューブ
10 第1の光ファイバー系(励起光出射系)
11 集光レンズ
12 第2の光ファイバー系(測定光受光系)
13,14 光学フィルター
15 光ファイバーバンドル
20 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の測定対象部位に励起光を照射して、測定対象部位から放射される測定光を受光するための光学系を備えて当該測定光を測定するためのプローブであって、
前記光学系として、
前記プローブの先端部に一端面が配置された一塊の光ファイバーバンドルと、
前記光ファイバーバンドルの前記一端面に設置された光学フィルターと、を備え、
前記光ファイバーバンドルを構成する一部の光ファイバーにより、前記励起光を導光する励起導光路を構成する第1の光ファイバー系が構成され、
前記光ファイバーバンドルを構成する他の一部の光ファイバーにより、前記測定光を受光して導光する受光導光路を構成する第2の光ファイバー系が構成され、
前記光学フィルターは、前記第1の光ファイバー系の出射端面又は/及び前記第2の光ファイバー系の受光端面に設置されて、これら両端面の光学透過特性を異ならしめることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記光ファイバーバンドルは、イメージガイド光ファイバーファンドルであること特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記光ファイバーバンドルは、ライトガイド光ファイバーファンドルであり、当該ライトガイド光ファイバーファンドルの光ファイバー素線数が7から64であること特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記光学フィルターは、前記光ファイバーバンドルの前記一端面に、蒸着又はスパッタリングにより形成されてなる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載のプローブの製造方法であって、
前記光ファイバーバンドルの前記一端面に、前記光学フィルターを設置するフィルター設置工程と、
前記フィルター設置工程の後、前記一端面に光を入射させた時の他端面において各光ファイバーから出射される光の有無又は相違により識別して、前記光ファイバーバンドルに含まれる光ファイバーの全部又は一部を、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とに分配する分配工程と、
前記光ファイバーバンドルの前記他端面を含む端部において、前記分配工程により分配された前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離し、プローブ基端の光学機器への接続部における前記第1の光ファイバー系の接続端及び前記第2の光ファイバー系の接続端をそれぞれ構成する接続端作製工程と、
を備えるプローブの製造方法。
【請求項6】
前記光ファイバーバンドルとしてイメージガイド光ファイバーファンドルを使用し、前記接続端作製工程では、前記第1の光ファイバー系及び前記第2の光ファイバー系のうちいずれか一方を一塊に保持するか、双方をそれぞれ一塊に保持したまま、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離することを特徴とする請求項5に記載のプローブの製造方法。
【請求項7】
前記光ファイバーバンドルとしてライトガイド光ファイバーファンドルを使用し、前記接続端作製工程では、前記他端面を含む端部において光ファイバーを1本1本に分離して、前記第1の光ファイバー系と前記第2の光ファイバー系とを分離することを特徴とする請求項5に記載のプローブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99487(P2013−99487A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246030(P2011−246030)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】