説明

プローブ情報センタおよびプローブ情報センタにデータを送信する送信装置

【課題】プローブ情報収集システムにおいて、プローブ情報センタ側で必要となる情報を効率的に取得できるようにする。
【解決手段】プローブ情報センタが、受信したプローブ情報のうち、情報の提供者を示す提供者識別情報と関連付けられた状態で送信されたプローブ情報の品質を特定し、特定した品質が高いほど配信の品質が高くなるよう、当該提供者識別情報に対応する通信装置に配信する加工情報を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ情報センタおよびプローブ情報センタにデータを送信する送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車両にそれぞれ搭載された複数のプローブ装置から、搭載先の車両の走行状況の情報(以下、プローブ情報という)が、プローブ情報センタに送信され、プローブ情報センタにおいて、当該プローブ情報が加工されて配信データとなり、作成した配信データがプローブ情報センタから通信装置に配信されるという、プローブ情報収集システムの技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このような技術を実用化する方法として、タクシー、バス等の既存の配車システムで用いられる車両にプローブ装置を搭載することが考えられている。
【特許文献1】特開2006−293876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、プローブ情報を送信する側の車両の業務形態は様々なので、各車両から送信されるプローブデータの内容間にばらつきが生じる。したがって、プローブ情報センタ側が必要としている情報が、プローブセンタに効率的に提供されない場合が多い。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、プローブ情報収集システムにおいて、プローブ情報センタが、必要とする情報を効率的に取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、それぞれ異なる車両に搭載された複数のプローブ装置が検出した搭載先の車両の走行状況の情報を受信し、それら受信した走行状況の情報を加工した結果の加工情報を、複数の通信装置に配信するプローブ情報センタについてのものである。このプローブ情報センタが、受信した走行状況の情報のうち、情報の提供者を示す提供者識別情報と関連付けられた状態で送信された走行状況の情報の品質を特定し、当該提供者識別情報に対応する提供者に、特定した品質が高いほど高い対価を提供するための処理を行う。
【0006】
このようになっていることで、プローブ情報センタに送信される走行状況の情報の品質が、当該第1品質指標において高いほど、その提供者への対価が向上する。これによって、情報提供者に、プローブ情報センタの第1品質指標によって高く評価される情報を提供しようというインセンティブが働き、その結果、プローブ情報センタは、必要となる情報を効率的に取得できるようになる。
【0007】
ここで、走行状況の情報とは、走行時の外部環境(例えば勾配)、および、走行時の車両挙動(例えば電力消費量、車速)のうちいずれかまたは両方の情報をいう。また、車両の走行状況の情報は、プローブ装置からプローブ情報センタへ無線通信等を介して送信されるようになっていてもよいし、人がプローブ装置から車両の走行状況の情報を記録している記憶媒体を搬出し、他の通信装置に当該記憶媒体を接続したときに、当該通信装置からプローブ情報センタへ無線通信等を介して送信されるようになっていてもよい。すなわち、プローブ情報センタは、プローブ装置が検出した車両の走行状況の情報を最終的に受信すれば足りるのであって、その受信経路はどのようなものであってもよい。
【0008】
また、ここでいう「所定の」とは、「あらかじめ定められた」という意味である。そして、この「あらかじめ」とは、その所定の品質指標が実際に用いられる前にという意味である。したがって、あらかじめ定められる時期は、このプローブ情報センタの製造時でもよいし、その品質指標が用いられる直前であってもよい。また、「対価」とは、金銭的対価のみをいうのではなく、配信するデータの付加価値の高さ等であってもよい。
【0009】
また、「提供者識別情報に対応する提供者に、特定した品質が高いほど高い対価を提供するための処理」としては、具体的には、当該提供者識別情報に対応する通信装置に配信する加工情報を、特定した品質が高いほどその加工情報の所定の第2品質指標に基づいた品質が高くなるよう決定し、さらに、決定したこの加工情報を、当該提供者識別情報に対応する通信装置に配信する処理であってもよい。このようになっていることで、走行状況の情報の提供者は、提供した当該情報の品質が第1品質指標に照らして高ければ高いほど、より高い品質の加工データの配信を受けることができる。
【0010】
また、プローブ情報センタは、第1品質指標として、過去の基準時間範囲内において受信された同一の提供者識別情報を有するすべての走行状況の情報についての総データ量またはデータ受信頻度が多いほど高品質であるという指標を用いるようになっていてもよい。
【0011】
このようになっていることで、ある提供者がプローブ装置が搭載された車両を多数有している場合、それらプローブ装置が検出した走行状況の情報に同一の提供者識別情報を関連付ければ、プローブ情報センタにおいては、当該提供者から受ける走行状況の情報の量および頻度が、他の提供者に比べて増大する。したがって、いわゆる大口の提供者が優遇される。
【0012】
また、本発明の第2の特徴は、送信装置が、それぞれ異なる車両に搭載された複数のプローブ装置が検出した搭載先の車両の走行状況の情報を取得し、それら取得した走行状況の情報のそれぞれに、同一の提供者識別情報を関連付け、また、関連付けた結果の走行状況の情報を、上述のような第1品質指標を採用するプローブ情報センタに送信することである。
【0013】
このようになっていることで、装置が搭載される車両を複数台有する大口の提供者の提供者識別情報の、車両の状況情報への関連付けは、プローブ装置で個々に行われるのではなく、送信装置で一括して行われる。したがって、提供者識別情報を個々のプローブ装置が有する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係るプローブ情報収集システムの一例を概略的に示す。プローブ情報収集システムにおいては、車両1、6、8のそれぞれに搭載されたプローブ装置2、7、9が、搭載先の車両のプローブ情報を検出し、その検出されたプローブ情報を最終的にプローブ情報センタ5が受信する。
【0015】
ここで、車両のプローブ情報とは、当該車両の走行状況の情報をいう。走行状況の情報とは、走行時の外部環境および走行時の車両挙動のうちいずれかまたは両方の情報をいう。車両の走行状況の情報としては、例えば、当該車両の所在位置情報、走行速度情報、路面勾配情報、および、これらのプローブ情報を取得した時刻の情報等がある。各プローブ装置2、7、9は、これらの情報を、車両に搭載された各種センサ(例えば、GPS受信機、車速センサ、傾斜センサ等)を用いて検出する。また、プローブ装置2、7、9は、カーナビゲーション装置等で広く利用されているマップマッチング処理を行うことができる場合、マップマッチングの結果の位置を自車両の所在位置として検出してもよい。また、プローブ情報には、所在位置の検出のためにマップマッチングを利用したか否かを示す情報を含める。
【0016】
個人の有する車両である車両1に搭載されたプローブ装置2で検出されたプローブ情報は、プローブ装置2から携帯電話網3までの無線通信路および通信網4を介してプローブ情報センタ5に送信される。通信網4は、インターネット等の広域ネットワークであってもよいし、プローブ情報の提供のためだけの専用回線であってもよい。
【0017】
また、同じ1つの業者の所有する業者車両6、8に搭載されたプローブ装置7、9で検出されたプローブ情報は、プローブ装置7、9から業者情報センタ10に渡される。そして業者情報センタ10は、受けたプローブ情報を通信網4を介してプローブ情報センタ5に送信する。なお、プローブ装置7、9から業者情報センタ10へのプローブ情報の提供は、図1に示すような無線通信によって実現してもよいし、あるいは、プローブ装置7、9からプローブ情報が記録された記憶媒体を人が業者情報センタ10まで運び、その上で当該記憶媒体を業者情報センタ10に接続することで実現してもよい。
【0018】
ここで、プローブ装置2、7、9から無線によって送信されるプローブ情報の送信形態について説明する。プローブ装置2、7、9は、所定の時間区間(例えば長さ1分の時間区間)毎に、当該時間区間において検出したプローブ情報を、1まとまりのプローブデータフレームとして送信する。そして、当該プローブデータフレームには、検出時刻および検出時の自車両の位置の情報を1つ付加する。また、個人車両1に搭載されたプローブ装置2は、当該プローブデータフレームに、個人車両1の所有者の提供者識別情報を付加する。この提供者識別情報は、あらかじめプローブ装置2に登録されている。したがって、プローブ装置2、7、9から無線で送信されるデータは、基本的にリアルタイム性を有している。
【0019】
しかし、車両が地下、トンネル内等、無線通信が不能な位置を走行している期間は、プローブデータフレームを送信できないので、その期間中のプローブデータフレームは、無線通信が回復して後送信する。このような場合のプローブデータフレームは、リアルタイム性を有していない場合がある。
【0020】
また、業者車両6、8に搭載されたプローブ装置7、9から業者情報センタ10まで運ばれる記憶媒体中のプローブ情報について説明する。記憶媒体中のプローブ情報は、1日、半日、数日等、無線送信するデータよりも長い期間内に複数回検出された情報の集合体となっており、各回に検出されたデータには、その検出時時刻および検出位置の情報が付加されている。
【0021】
プローブ情報センタ5は、このようにして受信した各車両2、5、7からのプローブ情報に対して統計処理等を行うことで、当該プローブデータを加工し、その加工結果の情報を、プローブ装置2、業者情報センタ10、および他の通信装置に配信する。そしてこの配信時に、その配信先から過去に提供されたプローブ情報の品質の高低に基づいて、どのような品質の加工情報を当該配信先に送信するかを決定する。
【0022】
図2に、業者情報センタ10の構成を概略的に示す。業者情報センタ10は、無線部11、ネットワークI/F部12、外部データ読取部13、リアルタイムデータ蓄積部14、過去データ蓄積部15、および制御部16を有している。
【0023】
無線部11は、業者車両6、8と無線通信することでプローブ情報を受信する装置である。ネットワークI/F部12は、通信網4に接続し、プローブ情報センタ5とのデータの授受を実現するためのインターフェースである。外部データ読取部13は、プローブ装置によって検出されたプローブ情報が記録されている記憶媒体から、当該プローブ情報を読み取る装置である。リアルタイムデータ蓄積部14は、無線部11が受信したプローブ情報のうち、リアルタイム性のある情報をリアルタイムデータとして記憶するための記憶媒体を有する装置である。過去データ蓄積部15は、無線部11が受信したプローブ情報のうちリアルタイム性のない情報、および、外部データ読取部13が読み取ったプローブ情報を、過去データとして記憶するための記憶媒体を有する装置である。
【0024】
制御部16は、これら各部11〜15の作動を制御する装置である。具体的には、制御部16は、無線部11が受信したプローブデータフレームの個々について、リアルタイム性があるか否かを判定し、リアルタイム性があれば当該プローブデータフレームをリアルタイムデータ蓄積部14に記憶させ、リアルタイム性がなければ当該プローブデータフレームを過去データ蓄積部15に記憶させる。なお、リアルタイム性があると判定する場合は、当該プローブデータフレームに含まれる、プローブ情報の検出時刻の情報が、現在から基準時間幅(例えば5分、10分)未満の過去を示している場合である。また、リアルタイム性がないと判定する場合は、当該プローブデータフレームに含まれる、プローブ情報の検出時刻の情報が、現在から基準時間幅(例えば5分、10分)以上の過去を示している場合である。
【0025】
また、制御部16は、リアルタイムデータ蓄積部14に記録されたプローブデータフレームのうち、時間が経過したことによってリアルタイム性が失われたプローブデータフレームを、過去データとして、過去データ蓄積部15に移動させる。
【0026】
また、制御部16は、リアルタイムデータ蓄積部14中のプローブデータフレームについては、それがリアルタイムデータ蓄積部14中に記録されるとすぐに(例えば10秒以内に)、プローブ情報センタ5へ送信する。また、制御部16は、過去データ蓄積部15中の過去データについては、所定のタイミング(例えば1時間間隔のタイミング)で、前回のタイミングから今回のタイミングまでに取得した過去データをまとめて1つのプローブデータフレームとして、プローブ情報センタ5へ送信する。
【0027】
また、制御部16は、プローブデータフレームを送信するとき、各プローブデータフレームに、そのプローブデータフレームがどの車両のプローブ装置によって検出されたかに関らず、同一の提供者識別情報を付加した上で、ネットワークI/F部12を用いてプローブ情報センタ5に送信する。ここで付加する提供者識別情報は、業者情報センタ10を有する業者に、あらかじめ契約時に割り当てられた提供者識別情報である。
【0028】
なお、プローブ装置2、7、業者情報センタ10、および他の通信装置は、ユーザの操作に基づいて、プローブ情報センタ5に対して配信要求を送信するようになっていてもよい。
【0029】
図3に、プローブ情報センタ5の構成を概略的に示す。プローブ情報センタ5は、ネットワークI/F部52、個別データ記憶部53、リアルタイムデータ蓄積部54、過去データ蓄積部55、リアルタイム渋滞情報加工部56、統計渋滞情報加工部57、配信用渋滞情報分配部58、リアルタイムデータ送信部59、統計データ送信部60、および制御部61を有している。
【0030】
ネットワークI/F部52は、通信網4に接続し、業者情報センタ10とのデータの授受を実現するためのインターフェースである。個別データ記憶部53は、ネットワークI/F部52を介して受けたプローブ情報を一時的に記録するための記憶媒体を有する装置である。リアルタイムデータ蓄積部54は、個別データ記憶部53に蓄積されたデータのうち、リアルタイム性のあるデータをリアルタイムデータとして記憶するための記憶媒体を有する装置である。過去データ蓄積部55は、個別データ記憶部53に蓄積されたデータのうち、リアルタイム性のないデータを過去データとして記憶するための記憶媒体を有する装置である。
【0031】
リアルタイム渋滞情報加工部56は、リアルタイムデータ蓄積部54中のリアルタイムデータを加工することで、速報性のある渋滞情報を生成する装置である。統計渋滞情報加工部57は、過去データ蓄積部55中の過去データを加工することで、過去の渋滞の統計を示す統計渋滞情報を生成する装置である。
【0032】
配信用渋滞情報分配部58は、リアルタイム渋滞情報加工部56で生成された情報のうち、配信する必要がある情報をリアルタイムデータ送信部59に出力し、また、統計渋滞情報加工部57で生成された情報のうち、配信する必要がある情報を統計データ送信部60に出力する。配信する必要があるか否かは、ネットワークI/F部52を介して、プローブ装置2、7、9または他の通信装置から、限定された(例えば特定の地域に限定された)配信対象についての配信要求があった場合、その限定内容に基づいて判定する。
【0033】
リアルタイムデータ送信部59は、配信用渋滞情報分配部58から受けたリアルタイムデータを、ネットワークI/F部52を用いて、配信要求の送信元に配信する。統計データ送信部60は、配信用渋滞情報分配部58から受けた過去データを、ネットワークI/F部52を用いて、配信要求の送信元に配信する。リアルタイムデータ送信部59および統計データ送信部60は、配信用渋滞情報分配部58から受けたデータを、どの通信装置に宛てて送信するかについては、後述する通り制御部61によって登録された送信先のデータに従って決定する。
【0034】
制御部61は、プローブ情報センタ5の各部52〜60を制御する。具体的には、制御部61は、図4に示すプローブ情報受信処理100、および図5に示す情報提供処理200を必要に応じて繰り返し実行するようになっている。
【0035】
具体的には、制御部61は、プローブ情報受信処理100を実行しておらず、かつネットワークI/F部52がプローブデータフレームを受信したことに基づいて、プローブ情報受信処理100の実行を開始する。そして、プローブ情報受信処理100の1回の実行において、現在時刻と、受信したプローブデータフレーム中の検出時刻とを比較することで、検出時刻に対する現在時刻の遅れが許容幅(例えば5分、10分)を超えているか否かを判定し(ステップ110)、許容幅以下であれば、プローブデータフレーム中のリアルタイムフラグ(以下、Rフラグという)をオンにセットする(ステップ115)。
【0036】
図6に、プローブデータフレーム70のデータフォーマットを概略的に示す。この図に示すように、プローブ装置2、業者情報センタ10等から送信され、プローブ情報センタ5が受信するプローブデータフレーム70は、提供者識別情報部71、プローブ情報部72、Rフラグ部73、Mフラグ部74、Tフラグ部75、Dフラグ部76を有している。提供者識別情報部71は、提供者識別情報が記録されている部分である。プローブ情報部72は、検出された情報(検出時刻、車速、勾配等、)が記録されている部分である。Rフラグ部73、Mフラグ部74、Tフラグ部75、Dフラグ部76は、それぞれ、Rフラグ、マップマッチングフラグ(以下、Mフラグという)、収集頻度フラグ(以下、Tフラグという)、データ量フラグ(以下、Dフラグという)を記録するための部分である。なお、プローブ装置2、業者情報センタ10当からプローブデータフレーム70が送信された時点では、Rフラグ部73、Mフラグ部74、Tフラグ部75、Dフラグ部76の値はオフとなっている。
【0037】
続いて制御部61は、プローブデータフレーム70の所在位置情報がマップマッチングを行ったものであるか否かをプローブ情報部72中の情報に基づいて判定し(ステップ120)、マップマッチングを行っていればMフラグをオンにセットする(ステップ125)。
【0038】
続いて、当該プローブデータフレーム70を個別データ記憶部53に記録する(ステップ130)。その後、このプローブ情報受信処理100の今回の開始時以降、基準時間(例えば10分)が経過するまで(ステップ140)、別のプローブデータフレームの受信を待ち(ステップ135)、その受信がある度に、受信したプローブデータフレームに対して、先に受信したプローブデータフレームと同様の処理を施す(ステップ110〜130)。
【0039】
基準時間経過後、制御部61は、今回のプローブ情報受信処理100の開始以降個別データ記憶部53に記録されたプローブデータフレームを、それらの提供者識別情報に基づいてグループ分けし(ステップ145)、それらグループ毎に、プローブデータフレームの数が基準数(例えば、1、2、5)を超えているか否かを判定し(ステップ150)、基準数以上であればTフラグをオンにセットする(ステップ155)。さらに、それらグループ毎に、全プローブデータフレームの総データ量が基準量を超えているか否かを判定し(ステップ160)、超えていればDフラグをオンにセットする(ステップ165)。
【0040】
このように、収集頻度および受信データ量については、提供者識別情報別にまとめて計測および判定を行うので、1つの提供者識別情報に多くのプローブ装置を対応させている提供者、すなわち大口の提供者の方が、1つの提供者識別情報に1つのプローブ装を割り当てている個人の提供者よりも、その計測結果が大きくなり易く、かつ、TフラグおよびDフラグがオンになる可能性が高い。
【0041】
以上のような処理100を制御部61が実行することで、プローブ情報センタ5は、受信したプローブデータフレームの時刻がリアルタイム性を有しているか否か、(ステップ110参照)、および、マップマッチングが為されたデータであるか否か(ステップ120参照)について判定し、その判定結果を当該プローブデータフレームにフラグとして付加する(ステップ115、125参照)。そして、基準時間範囲内で取得した(ステップ135、140参照)プローブデータフレームを提供者識別情報別に分け、各提供者識別情報毎に、プローブデータフレームの収集頻度が基準より高いか否か(ステップ150参照)、および、プローブデータフレームの総受信データ量が基準より多いか否か(ステップ160参照)を判定し、その判定結果を、当該提供者識別情報を有するプローブデータフレームにフラグとして付加する(ステップ155、165参照)。その結果、個別データ記憶部53には、図7に示すように、提供者識別情報毎にフラグ値が異なる複数のプローブデータフレームが格納された状態となる。
【0042】
また、制御部61は、プローブ情報受信処理100の実行直後に情報提供処理200の実行を開始し、まず、直前のプローブ情報受信処理100によって個別データ記憶部53に格納されたプローブデータフレーム(以下、新規プローブデータフレームという)のそれぞれについて、それがリアルタイム性を有しているか否かを、Rフラグの値に基づいて判定し(ステップ205)、リアルタイムデータであればリアルタイムデータ蓄積部54に追加蓄積(ステップ220)した後に、リアルタイム渋滞情報加工部56を制御するこことで、リアルタイムデータ蓄積部54中の全データを加工して渋滞情報を生成する(ステップ225)。また、当該プローブデータフレームがリアルタイムデータでなければ過去データ蓄積部55に追加蓄積(ステップ210)した後に、統計渋滞情報加工部57を制御するこことで、過去データ蓄積部55中のデータを加工して渋滞情報を生成する(ステップ215)。なお、渋滞情報とは、どの程度の長さの渋滞があるか等を示す情報をいう。
【0043】
さらに制御部61は、個別データ記憶部53中の新規プローブデータフレームを参照することで(ステップ230)、新規プローブデータフレームのそれぞれについて、そのRフラグおよびDフラグのうち少なくともいずれか一方がオンとなっているか、あるいはそうでないかを判定する(ステップ235)。そして、その判定が肯定的となったプローブデータフレーム中の提供者識別情報を、品質の高いデータを提供した提供者として、リアルタイムデータ送信部59に登録し(ステップ240)、その判定が否定的となったプローブデータフレーム中の提供者識別情報を、品質の低いデータを提供した提供者として、リアルタイムデータ送信部59に登録する(ステップ245)。
【0044】
このとき、配信用渋滞情報分配部58は、リアルタイム渋滞情報加工部56で生成されたデータをリアルタイムデータ送信部59に渡し、統計渋滞情報加工部57で生成されたデータを統計データ送信部60に渡す。配信用渋滞情報分配部58からデータを受けたリアルタイムデータ送信部59および統計データ送信部60は、自己に登録された提供者識別情報に対応する送信先の通信装置(携帯電話機であれば電話番号、業者情報センタのような装置であればネットワーク上のアドレス)に、受けたデータの送信を行う。
【0045】
したがって、プローブ情報センタ5において決められたステップ235の品質指標(第1品質指標の一例に相当する)によって品質が高いと判定されたプローブ情報を送信した提供者は、リアルタイム性のある高品質の渋滞情報の配信を受けることができ、当該品質指標によって品質が低いと判定されたプローブ情報を送信した提供者は、リアルタイム性のない低品質の渋滞情報の配信を受けることになる。なお、配信するデータの品質の高低の指標(第2品質指標の一例に相当する)も、プローブ情報センタ5によってあらかじめ決められている。
【0046】
以上のような情報提供処理200を制御部61が繰り返し実行することで、プローブ情報センタ5は、個別データ記憶部53に記録されたプローブデータフレームのそれぞれについて、それがリアルタイムデータであるか過去データであるかによって格納先を分け(ステップ205参照)、さらに仕分けされたデータをそれぞれリアルタイム渋滞情報および統計渋滞情報として加工する(ステップ215、225参照)。そして、これらプローブデータフレーム中の提供者識別情報とフラグとの対応関係に応じて、提供者識別情報毎に、当該提供者に高品質の(具体的にはリアルタイムの)加工データを送信するか、低品質の(具体的にはリアルタイムでない過去の)加工データを送信するかを決定し(ステップ235参照)、その決定に従った配信を行う(ステップ240、245参照)。
【0047】
また、制御部16は、リアルタイムデータ蓄積部54に記録されたプローブデータフレームのうち、時間が経過したことによってリアルタイム性が失われたプローブデータフレームを、過去データとして、過去データ蓄積部55に移動させる。リアルタイム性が失われたか否かは、プローブデータフレーム中のプローブ情報部のデータと、現在時刻との比較に基づいて判定する。
【0048】
以上のように、プローブ情報センタ5が、受信したプローブ情報のうち、情報の提供者を示す提供者識別情報と関連付けられた状態で送信されたプローブ情報の品質を特定し、特定した品質が高いほど配信の品質が高くなるよう、当該提供者識別情報に対応する通信装置に配信する加工情報を決定する。
【0049】
このようになっていることで、プローブ情報センタ5に送信されるプローブ情報の品質が、所定の品質指標において高いほど、そのプローブ情報の提供者への配信品質が向上する。これによって、情報提供者に、プローブ情報センタ5の決めた品質指標によって高く評価される情報を提供しようというインセンティブが働き、その結果、プローブ情報センタ5は、必要となる情報を効率的に取得できるようになる。
【0050】
また、プローブ情報センタ5は、受信するプローブ情報に適用する品質指標として、過去の基準時間範囲内において受信された同一の提供者識別情報を有するすべての走行状況の情報についての総データ量が多いほど高品質であるという指標を用いるようになっている。
【0051】
このようになっていることで、ある提供者が、プローブ装置が搭載された車両を多数有している場合、それらプローブ装置が検出したプローブ情報に同一の提供者識別情報を関連付ければ、プローブ情報センタ5においては、当該提供者から受ける走行状況の情報の量および頻度が、他の提供者に比べて増大する。したがって、いわゆる大口の提供者が優遇される。
【0052】
また、業者情報センタ10が、それぞれ異なる車両に搭載された複数のプローブ装置7、9が検出した搭載先の車両6、8のプローブ情報を取得し、それら取得したプローブ情報のそれぞれに、同一の提供者識別情報を関連付け、また、関連付けた結果のプローブ情報をプローブ情報センタ5に送信するようになっている。
【0053】
このようになっていることで、プローブ装置が搭載される車両を複数台有する大口の提供者の提供者識別情報の、プローブ情報への関連付けは、プローブ装置で個々に行われるのではなく、業者情報センタ10で一括して行われる。したがって、提供者識別情報を個々のプローブ装置が有する必要がなくなる。
【0054】
なお、上記の実施形態において、業者情報センタ10が送信装置の一例に相当し、プローブ装置2、業者情報センタ10が通信装置の一例に相当する。また、制御部61が、処理100を実行することで受信品質特定手段の一例として機能し、処理200を実行すること、配信品質決定手段の一例として機能する。また、リアルタイムデータ送信部59および統計データ送信部60のそれぞれが、配信手段の一例に送信する。また、ネットワークI/F部12が送信手段の一例に相当し、また、制御部16が関連付け手段の一例に相当する。
【0055】
また、上記したプローブ情報センタ5および業者情報センタ10の各部11〜16、52〜61は、それらの機能を実現する専用の回路を有したハードウェアとして実現されていてもよいし、それらの機能を実現するためのプログラムを実行するコンピュータとして実現されていてもよい。
【0056】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0057】
例えば、上記の実施形態においては、高品質配信がリアルタイム渋滞情報の送信となり、低品質配信が統計渋滞情報の送信となっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、高品質配信がリアルタイム渋滞情報を示す簡易図形+リアルタイム渋滞情報の詳細文字データ(例えば渋滞の総距離等)であり、低品質配信が上記簡易図形のみの配信であってもよい。すなわち、第2品質指標はどのようなものでもよい。
【0058】
また、上記の実施形態においては、ある提供者からのプローブ情報の品質を判定するための第1品質指標として、当該提供者からのプローブデータフレームがリアルタイム性を有しているか否か、および、当該提供者からのデータ量が多いか否かを採用している。しかし、これら以外にも、当該提供者からのプローブデータフレームがマップマッチングを行っているか否か(すなわちMフラグがオンか否か)、および、当該提供者のプローブ情報の収集頻度が高いか否か(すなわちTフラグがオンか否か)を、第1品質指標として採用してもよい。
【0059】
また、配信サービスの種別ごとに求められるプローブ情報のデータ項目やデータ量、収集頻度は異なる。したがって、より多くの種別の配信サービスに提供できるプローブデータフレームほど品質が高くなるような指標を、第1品質指標として採用してもよい。
【0060】
また、上記の実施形態においては、プローブ情報センタ5が配信する情報は、渋滞情報のみとなっているが、プローブ情報センタ5は、複数種類の情報(例えば、渋滞情報および事故情報)を配信するようになっていてもよい。この場合、配信する情報の種類毎に、異なる第1品質指標を設定し、受信したプローブ情報に、それぞれの第1品質指標を適用して品質判定を行い、それら品質判定の結果を複合的に利用して配信データの品質を決定するようになっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、直前に受信したプローブデータフレームの提供者に対して、加工した情報を配信するようになっている。しかし、必ずしもこのように、提供元からのプローブデータフレームの受信と加工データの当該提供元への配信とが1対1の連動関係となっている必要はない。例えば、プローブ情報センタ5は、過去にプローブデータフレームを提供したことがある提供元から加工データの配信の要求があったとき、その要求の直前に当該提供元からプローブデータフレームを受けているといないとに関わらず、加工データを配信するようになっていてもよい。
【0062】
この場合、当該提供元からプローブ情報の提供があった時点においては、プローブ情報センタ5は、リアルタイムデータ送信部59、統計データ送信部60に提供者識別情報を登録しておき、後に当該提供元から配信要求があったときに初めて、登録内容に応じた品質の配信を行うようになっていてもよい。なお、プローブ情報センタ5は、提供者識別情報と提供者の通信装置との対応情報を有しているので、提供者の通信装置から配信要求に提供者識別情報が含まれていなくても、プローブ情報センタ5は、その対応情報に基づいて、当該通信装置に対応する提供者識別情報を特定することができる。
【0063】
また、上記の実施形態においては、プローブ情報センタ5は、配信データの付加価値に変化をつけることで、プローブ情報の品質が高いほど高い対価を提供者に提供するようになっている。しかし、配信についてはこの方法以外にも、プローブ情報を送信するだけでデータの配信を受けない提供者に対して、提供されたプローブ情報の品質が高いほど高い金銭的対価を支払うようになっていてもよい。例えば、プローブ情報センタ5からのデータの配信に対して、配信を受ける側からデータ利用料を(例えば電子マネー等の技術を用いて)受け取り、受け取った利用料を、プローブ情報の提供者に、提供されたプローブ情報の品質の高低に応じて分配するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態に係るプローブ情報収集システムの一例を概略的に示す。
【図2】業者情報センタ10の構成を概略低に示すブロック図である。
【図3】プローブ情報センタ5の構成を概略低に示すブロック図である。
【図4】制御部61が実行するプローブ情報受信処理100のフローチャートである。
【図5】制御部61が実行する情報提供処理200のフローチャートである。
【図6】プローブデータフレーム70のデータフォーマットを示す概略図である。
【図7】個別データ記憶部53に記録されるプローブデータフレーム81〜84の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1…個人車両、2、7、9…プローブ装置、3…携帯電話網、4…通信網、
5…プローブ情報センタ、6、8…業者車両、10…業者情報センタ、11…無線部、
12…ネットワークI/F部、13…外部データ読取部、
14…リアルタイムデータ蓄積部、15…過去データ蓄積部、16…制御部、
52…ネットワークI/F部、53…個別データ記憶部、
54…リアルタイムデータ蓄積部、55…過去データ蓄積部、
56…リアルタイム渋滞情報加工部、57…統計渋滞情報加工部、
58…配信用渋滞情報分配部、59…リアルタイムデータ送信部、
60…統計データ送信部、61…制御部、70…プローブデータフレーム、
71…提供者識別情報部、72…プローブ情報部、73…Rフラグ部、
74…Mフラグ部、75…Tフラグ部、76…Dフラグ部、
81…プローブデータフレーム、82…プローブデータフレーム、
83…プローブデータフレーム、84…プローブデータフレーム、
100…プローブ情報受信処理、200…情報提供処理。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる車両に搭載された複数のプローブ装置が検出した搭載先の車両の走行状況の情報を受信し、それら受信した走行状況の情報を加工した結果の加工情報を、複数の通信装置に配信するプローブ情報センタであって、
受信した前記走行状況の情報のうち、情報の提供者を示す提供者識別情報と関連付けられた状態で送信された走行状況の情報の品質を、所定の第1品質指標を用いて特定する受信品質特定手段と、
前記提供者識別情報に対応する提供者に、前記品質特定手段が特定した前記品質が高いほど高い対価を提供するための処理を行う対価提供手段と、を備えたプローブ情報センタ。
【請求項2】
前記対価提供手段は、前記提供者識別情報に対応する通信装置に配信する前記加工情報を、前記品質特定手段が特定した前記品質が高いほど当該加工情報の所定の第2品質指標に基づいた品質が高くなるよう決定する配信品質決定手段と、前記配信品質決定手段が決定した前記加工情報を、前記提供者識別情報に対応する通信装置に配信する配信手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のプローブ情報センタ。
【請求項3】
前記受信品質特定手段は、前記第1品質指標として、過去の基準時間範囲内において受信された同一の提供者識別情報を有するすべての走行状況の情報についての総データ量またはデータ受信頻度が多いほど高品質であるという指標を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のプローブ情報センタ。
【請求項4】
それぞれ異なる車両に搭載された複数のプローブ装置が検出した搭載先の車両の走行状況の情報を取得し、それら取得した走行状況の情報のそれぞれに、同一の提供者識別情報を関連付ける関連付け手段と、
前記関連付け手段が関連付けた結果の走行状況の情報を、請求項3に記載のプローブ情報センタに送信する送信手段と、を備えた送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−310396(P2008−310396A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154969(P2007−154969)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、総務省委託研究「プローブ情報を活用した動的経路誘導システムの研究開発」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【出願人】(507193870)株式会社エイ・ワークス (1)
【Fターム(参考)】