説明

プローブ担体の製造方法および製造装置

【課題】 液体吐出ユニットを用いてプローブ担体を製造する際に、プローブ担体基板上に配置された各プローブ材料に、異なったプローブ材料が混ざることのない、配置された各プローブ材料の純度が高い良好なプローブ担体の製造方法および、配置された各プローブ材料の純度が高い良好なプローブ担体の提供を可能にする、プローブ担体の製造装置を提供すること。
【解決手段】 プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットは異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルを備え、該液体吐出ユニットの複数のノズルが配置されたノズル面をワイピングする、m個またはn個のワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相基板上にプローブ担体を製造する方法、ならびに、専ら前記の製造方法の実施に利用されるプローブ担体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子DNAの塩基配列の解析を行う場合、あるいは多項目に関する高信頼性の遺伝子診断を同時に行う場合などにおいて、目的とする塩基配列を有するDNAを複数種のプローブを用いて選別することが必要となる。この選別作業に利用される複数種のプローブを提供する手段として、DNAマイクロチップが注目を浴びている。また、薬剤等のハイスループット・スクリーニングあるいはコンビナトリアル・ケミストリーによる薬剤等の開発においても、対象となる多数(たとえば96種、384種または1536種)のタンパク質あるいは薬物の溶液の秩序立ったスクリーニングを行うことが必要となる。その目的で多数種の薬剤を配列するための手法、その状態での自動化されたスクリーニング技術、専用の装置、一連のスクリーニング操作を制御し、また結果を統計的に処理するためのソフトウェア等も開発されてきている。
【0003】
基本的に、これらの並列的なスクリーニング作業は、評価すべき物質に対する選別手段となる既知のプローブを多数並べてなる、いわゆるプローブ担体(プローブ・アレイ)を利用して行われ、同一条件下でのプローブ材料に対する作用あるいは反応などの有無を検出するものである。一般的に、どのようなプローブ材料に対する作用あるいは反応を利用するかは予め決定されており、従って、ひとつのプローブ担体に搭載されるプローブ材料は、例えば、塩基配列の異なる一群のDNAプローブ材料など、大きく区分すると一種類の物質である。すなわち、一群のプローブ材料として利用される物質は、例えば、DNA、タンパク質、合成された化学物質(薬剤)などである。多くの場合、一群をなす複数種のプローブからなるプローブ担体を用いることが多いが、スクリーニング作業の性質によっては、プローブとして、同一の塩基配列を有するDNA、同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、同一の化学物質を多数点並べ、アレイ状とした形態を利用することもあり得る。これらは主として薬剤スクリーニング等に用いられる。
【0004】
一群をなす複数種のプローブからなるプローブ担体では、具体的には、異なる塩基配列を有する一群のDNA、異なるアミノ酸配列を有する一群のタンパク質、あるいは異なる化学物質の一群について、その一群を構成する複数種を、所定の配列順序に従って、アレイ状に基板上などに配置する形態をとることが多い。なかでも、DNAプローブ担体は、遺伝子DNAの塩基配列の解析を行う際、あるいは信頼性の高い遺伝子診断を同時に多項目に関して行う際などに用いられる。
【0005】
複数種のプローブを基板上にアレイ状に配置する1つの方法として、液体吐出ユニットを用いて複数種のプローブ溶液を所望のタイミングで順次吐出し、基板上に配置させる方法がある。液体吐出ユニットには、プリンタに一般的に用いられているインクジェット法の技術が用いられている発明が開示されている。
【0006】
例えば、特開平11−187900号公報には、プローブ材料を含む液体をサーマルインクジェットヘッドにより液滴として固相に付着させて、プローブを固相上に配置する方法が開示されている。この方法では、プローブ材料として用いるDNAを予め合成および精製し、場合によってはその塩基長を確認した上で、基板上に付着させている。
【0007】
また、欧州特許公告公報EP 0 703 825B1号には、DNAの固相合成において利用される、ヌクレオチドモノマー、ならびに、アクティベーターをそれぞれ別のピエゾ・ジェット・ノズルより供給することにより、それぞれ所定の塩基配列を有するDNA複数種を固相合成する方法が記載されている。この方法では、基板上においてDNAの固相合成を行い、各伸長段階毎に、インクジェット法により合成に必要な物質の溶液を基板上に供給している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に紹介したように、プローブ担体を作製する従来の方法として、プリンタに一般的に用いられているインクジェット法の技術が用いられている。
【0009】
しかしながら、プローブ担体を作製する際、プリンタ用のインクの吐出方法をそのまま、プローブ溶液の吐出方法に応用するだけでは問題があった。以下この点に関してDNAプローブ担体を例にとって詳しく述べる。
【0010】
DNAプローブ担体には、これまで説明したように、基板上にそれぞれ異なった多種類のプローブ材料が配置されている。このためプローブ担体の作製には従来のプリンタ用インクジェットヘッドとは異なり、多種類の液体を吐出することが可能な液体吐出ユニットを用いることが望まれる。
【0011】
一般的なプリンタ用のインクジェットヘッドでは、使用されるインクの種類が4〜7種類である。
【0012】
図1に従来のヘッドのノズルの配列形態を示す。図1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の4色のインクを吐出するヘッドのノズル構成を示した。
【0013】
図1において、11はノズル、12はノズル面である。
【0014】
現在のプリンタでは、1色あたり256個ないし512個のノズルを持つヘッドがあるが、説明を簡便に行うために、図1では1色あたり8個のノズルを持つヘッドを示した。図1に示したヘッドでは、1色あたり8個のノズルで構成されるノズル列が4列並んでいる。
【0015】
プリントを行っている際、意図せぬインクやゴミがノズル面に付着する場合がある。このような付着がおきた場合インクの吐出状態に影響を与え印字品位を落とす場合がある。
【0016】
これを防ぐために、一般的なプリンタでは、印字中の所望のタイミングでワイピングという動作を行う。ワイピングでは、ゴムや高分子からなるワイパーでノズル面の表面を走査し、付着したインクやゴミを除去する。
【0017】
図1に示したような一般的なプリンタ用ヘッドでは、図2に示したように、同色のインクが吐出するノズル列と垂直方向にワイパーを配置し、ワイパーをノズル列の配列方向(図2中、白抜き矢印で示した方向)に走査させる。
【0018】
図2において、13はワイパーである。
【0019】
図2のA−A' 線での断面図を、図3に示す。
【0020】
図3において、14は流路である。図3には説明を簡便に行うために、ノズルおよび流路を形成する、ノズル材の部分のみ示している。
【0021】
このようにワイピングを行う際、ワイパーがノズル部を通過する時に、ノズル内部に存在するインクの一部を引き出す場合がある。
【0022】
また、吐出した主たる液滴(主滴)に付随して発生するサテライトと呼ばれる副滴の一部が、紙等の被印刷物に到達せずにノズル面に付着する現象が知られている。この場合、それぞれのノズルの近傍には、それぞれのノズルから吐出したインクのサテライトが付着する。
【0023】
このような現象が知られているため、上記した様に一般的なプリンタ用ヘッドでは、ワイパーの走査方向が、同色のインクを吐出するノズルの配列方向と一致するようにワイピングを行い、異なった色のインクが混ざる現象、すなわち混色を防いでいる。
【0024】
ところで、前記したように、プローブ担体の作製の場合、多種類の液体を吐出することが可能な液体吐出ユニットを用いることが望まれる。
【0025】
図4に液体吐出ユニットのノズルの配列形態を示す。図4では、8行8列のノズル配列を持つ液体吐出ユニットのノズル構成を示した。この液体吐出ユニットでは、64個のそれぞれのノズルから異なった64種類のプローブ溶液を吐出する。図4において、11はノズル、12はノズル面である。
【0026】
このような液体吐出ユニットにおいて、前記したようなプリンタ用のヘッドと同様なワイピング動作を行うと、各列で異なったプローブ溶液を吐出するノズルが並んでいるため、プローブ溶液が混ざってしまう。
【0027】
このような状態でプローブ溶液の吐出を行うと、得られたプローブ担体のそれぞれのプローブは、意図せぬプローブ材料が混在した物になってしまう。
【0028】
従って、プリンタ用のワイピング方法を、そのままプローブ担体作製に応用するだけでは、良好なプローブ担体の作製は行えない。
【0029】
本発明は前記の課題を解決するもので、液体吐出ユニットを用いてプローブ担体を製造する際に、プローブ担体基板上に配置された各プローブ材料に、異なったプローブ材料が混ざることのない、配置された各プローブ材料の純度が高い良好なプローブ担体の製造方法および、配置された各プローブ材料の純度が高い良好なプローブ担体の提供を可能にする、プローブ担体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明者は、前記課題の解決を図るべく、鋭意研究を進めた結果、プローブ単体の製造装置は、異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルと、m個またはn個の独立したワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定することにより、ワイピングする際に生じる、意図せぬプローブ材料の混合をほとんど生じさせなくすることができることを見出した。
【0031】
また、本発明者は、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーを備え、ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定することにより、ワイピングする際に生じる、意図せぬプローブ材料の混合をほとんど生じさせなくすることができることを見出した。
【0032】
また、本発明者は、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーおよび液体吸収体を備え、ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定し、ワイピング動作終了後に、前記液体吸収体によって液体吐出ユニットのノズル面に付着している液体を除去する手段を有することにより、ワイピングする際に生じる、意図せぬプローブ材料の混合をほとんど生じさせなくすることができることを見出した。
【発明の効果】
【0033】
本発明のプローブ担体の製造方法では、液体吐出ユニットのノズル面をワイピングを行った場合においても、隣接するノズルに充填されている、異なるプローブ溶液が互いに混ざり合う現象を無くすことができ、えられたプローブ担体は、個々のプローブで純度の高い良好な物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明のプローブ担体の製造方法に関して、より詳しく説明する。なお、ここに示す実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
図5に、液体吐出ユニットを用いた、プローブ担体製造装置の構造の模式図を示す。
【0036】
図5中、51は液体吐出ユニット、52は液体吐出ユニットの移動を略平行に案内するシャフト、53はプローブ担体の基板が固定されるステージ(基板担持機構)、54はプローブ担体の基板となるガラス基板、55はワイピングを行うためのワイピング装置である。
【0037】
液体吐出ユニット51は、図5中のX方向に移動することができ、ステージ53はY方向に移動することができる。従って、液体吐出ユニット51は、ステージ53に対して相対的に2次元的に移動できることになる。
【0038】
液体吐出ユニット51がステージ53に固定されているガラス基板54上を通過する際、所望のタイミングで液体吐出ユニットからプローブ溶液の吐出を行い、プローブをガラス基板上に配置する。
【0039】
図6は、プローブ担体の模式図を示す。プローブ56は、図2に示したように規則的にガラス基板54に配置される。
【0040】
配置されたプローブの直径は10μmないし150μmであり、隣接したプローブの距離は、50μmないし1000μmである。
【0041】
予め合成および精製されたプローブ材料(たとえばDNA)を基板上に配置する場合、液体吐出ユニット51は、ガラス基板上に配置するプローブと同数のプローブ溶液を吐出可能なノズルを備えた構造の物が好ましい。
【0042】
たとえば、図6に示した8行8列のプローブ配列を持ったプローブ担体を、図4に示した8行8列の異なったプローブ材料を吐出できる液体吐出ユニットを用いて作製する場合、プローブ溶液の入替え無しでプローブ担体を作製出来る。
【0043】
また、作製するプローブ担体のプローブの配置密度と、液体吐出ユニットのノズルの配置密度が同等の場合、1回の液体吐出ユニットの走査でプローブ担体が作製できるので好ましい。
【0044】
図5では、複数のガラス基板54を固定して、プローブを配置する場合のプローブ担体製造装置の構造を示したが、1枚の大きなガラス基板上にプローブを配置し、その後、該ガラス基板を切断して複数のプローブ担体を得ても良い。
【0045】
図7に、液体吐出ユニットの模式図を示す。液体を吐出させる方式としては、ヒータから発生する熱エネルギーにより液体の吐出を行うサーマルジェット方式と、ピエゾ素子に電圧を印加して生じる素子の変形により液体の吐出を行うピエゾジェット方式がある。図7にはサーマルジェット方式の液体吐出ユニットの構造を示した。
【0046】
図7において、71はシリコン基板、72は絶縁膜、73はTaN、TaSiN、TaAl等から成るヒータ、74は保護膜、75はTa等から成る耐キャビテーション膜、76はノズル材、77はノズル、78は流路、79は供給口である。
【0047】
ヒータ73の両端にはアルミニウム等からなる配線(不図示)が接続され、該配線を介してヒータ73両端に所望の電圧パルスが印加される。
【0048】
絶縁膜72は、シリコン基板を熱酸化して作成される熱酸化膜、あるいはCVDにより作成される酸化膜もしくは窒化膜等のいずれの膜でもよい。
【0049】
保護膜74は、CVDにより作成される酸化膜または窒化膜等いずれの膜でもよい。
【0050】
ノズル77および流路78を形成しているノズル材76の形成は、あらかじめノズルおよび流路を有したノズル材を半導体基板に貼り付けてもよいし、フォトリソグラフィー技術を用い半導体プロセスを用いて形成してもよい。
【0051】
供給口79は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液を用いたシリコンの異方性エッチングにより作製され、図7に示したように、基板表面に対して約54.7°の角度で傾斜して開口する。供給口79は、基板裏面から基板表面に液体(プローブ溶液)を供給すると共に、液体(プローブ溶液)を保持する液体リザーバーとしても機能する。
【0052】
プローブ担体の製造枚数が少なく、かつ1つのプローブに対するプローブ溶液の吐出量が少ない場合は、供給口内に存在するプローブ溶液量で、一連のプローブ担体製造に充分な場合がある。より多くのプローブ溶液の吐出が必要とされる場合は、該供給口79に接続される第2のリザーバー(不図示)を設ける。
【0053】
液体(プローブ溶液)は基板裏面から図8に示したように、供給口79から基板表面に導かれ、流路78を通ってノズル77まで導かれる。ヒータ73両端に所望の電圧パルスが印加されると、ヒータ近傍の液体(プローブ溶液)が過熱され膜発泡を起こし、液体は図8に示したように吐出する。
【0054】
液体(プローブ溶液)を安定に吐出させるためには、安定に膜発泡を起こすことが必須である。安定な膜発泡を起こすためには、ヒータに対して0.1ないし5μsの電圧パルスを印可することが望ましい。
【0055】
一度に一個のノズルから吐出されるプローブ溶液の量は、プローブ溶液の粘度、プローブ溶液と固相基板の親和性、プローブ材料と固相基板との反応性などの様々の要素を考慮の上で、形成されるプローブ(アレイ)のドットサイズや形状に応じて、適宜選択されるものである。プローブ溶液は水性溶媒を用いることが一般的であり、本発明の方法においては、液体吐出ユニットの各ノズルから吐出されるプローブ溶液の液滴は、一般的に、その液量を0.5plから100plの範囲内で選択され、その液量に合わせてノズル径などを設計することが好ましい。
【0056】
プローブ材料は固相基板に結合可能な構造を有するものとし、プローブ溶液を吐出し、塗布した後、かかる結合可能な構造を利用して固相基板に結合させることが望ましい。この固相基板へ結合可能な構造は、例えば、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸ハロゲン化物(−COX)、ハロゲン化物、アジリジン、マレイミド、スクシイミド、イソチオシアネート、スルホニルクロリド(−SO2Cl)、アルデヒド(−CHO)、ヒドラジン、ヨウ化アセトアミドなどの有機官能基をプローブ材料分子に予め導入する処理を施すことで形成することができる。その場合、一方、基板表面には、前記の各種有機官能基と反応して共有結合を形成する構造、有機官能基を導入する処理を予め行っておくことが必要となる。
【0057】
次に本発明の特徴である、液体吐出ユニットに関して説明する。
【0058】
図5を用いて説明したプローブ担体製造装置では、前記したように、図5において55に示したワイピング装置を備えている。
【0059】
前記したように、プローブ材料の配置を行っている際に、所望のタイミングでワイピングを行い、ノズル面に付着した意図せぬインクやゴミを除去する。
【0060】
ワイピングを行う際は、液体吐出ユニット51は、ワイピング装置55まで移動し、ワイピング動作を受ける。
【0061】
前記したように、従来のプリンタ用ヘッドでのワイピング方法では、液体吐出ユニットのワイピングに適さない。これを図9を用いて説明する。
【0062】
従来のワイピング方法、すなわち図9で矢印で示したように、ノズルの配列方向と平行な方向にワイパーを動かす場合を考える。前記したように、液体吐出ユニットでは、それぞれのノズルから異なった溶液を吐出する。従って、図9中に示された8行8列、計64個のノズルには、それぞれ異なった64種類のプローブ溶液が充填されている。
【0063】
今、図9で、列は左から順にA、B、C・・H、行は上から1、2、3・・8、とする。
【0064】
たとえはA列を例にとって説明すると、A列にはA−1〜A−8までの8ノズルがあり、それぞれ異なった8種類のプローブ溶液がノズル内に充填されている。
【0065】
ここで、従来のワイピングを行うと、初めにワイパーが通過するはノズルA−1であるが、ワイパーがノズルA−1を通過する際、ノズル内に充填されているプローブ溶液が僅かに引き出される。
【0066】
また、ノズルA−1の近傍には、サテライトの付着すなわち、ノズルA−1から吐出したプローブ溶液が付着する場合がある。
【0067】
従って、ワイパーはノズルA−1に充填されているプローブ溶液を移動させながらノズルA−2を通過する。この時ワイパーによって運ばれたノズルA−1に充填されていたプローブ溶液の一部はノズルA−2に入り込む。
すなわち、ノズルA−2内に充填されているプローブ溶液に、ノズルA−1に充填されていたプローブ溶液が混ざってしまうのである。
【0068】
また同様に、ワイパーの移動に伴って、ノズルA−2に充填されていたプローブ溶液は、ノズルA−3に運ばれる。
【0069】
同様な現象がノズルA−8まで繰り返される。
【0070】
他の列、すなわちB列〜H列でも同様な現象が起こる。
このように、従来の液体吐出ユニットの構造は、液体吐出ユニットのワイピングには適していない。
【0071】
図10に本発明のワイピング装置の構造を示す。本発明では、ワイピング装置は、m行n列に配置されたノズルを備える液体吐出ユニットの場合、m個またはn個のワイパーを備える。ここでは8行8列のノズル列を備える液体吐出ユニットを例にとって説明しているので、図10に示したように、ワイパーの数は8個になる。8個のワイパーが一体となりワイパーユニット15を形成する。
【0072】
図10のB−B' 線での断面図を、図11に示す。図11に示したように、ワイパーユニット15は、複数のワイパー13と、ワイパーの支持部16から形成される。
【0073】
図12を用いて、より詳しく説明を行う。図12は図11の一部を拡大した図である。
【0074】
図12において17は、サテライトの付着等により発生したりした、ノズル面上に存在するプローブ溶液である。このような意図せぬプローブ溶液がノズル近傍のノズル面に存在すると、液滴の着弾精度が低下や、不吐の発生等の吐出異常が生じる。
【0075】
図12−1は、ワイピングを行う動作で、液体吐出ユニットが、図5において55で示したワイピング装置部に移動した時の図である。液体吐出ユニットが所望の位置まで移動した後、ワイパーユニット15が、液体吐出ユニットに対して、図12−1に矢印で示したように接近する。
【0076】
ワイパーユニット15のワイパー13が液体吐出ユニットのノズル面12に接触すると、ワイピング装置の液体吐出ユニット方向への移動は終了し、ワイピング動作へ移る。(図12−2)
ワイピング動作は、図12−2に矢印で示した方向に行われる。
【0077】
ワイピングにより、ノズル近傍に付着したプローブ溶液は、液体の吐出に影響しないノズルから充分離れた位置に移動させられる。(図12−3)
ワイパーユニットが所望の距離ノズル面と並行に移動した後、ワイパーユニット15は液体吐出ユニットから離れ、一連のワイピング動作は終了する(図12−4)。
【0078】
図13に示したように、ワイパーユニットが液体吐出ユニットに対してノズル面と並行に移動する距離Xを、ノズル間隔Yより狭い値に設定すれば、ノズル近傍に付着したり、ワイピングによってノズルから引き出されたりしたプローブ溶液が、異なったプローブ溶液を吐出するノズル近傍に運ばれることは無い。従って、プローブ溶液の混合は生じない。
【0079】
図14にワイパーの形状を示す。図14は、図10で矢印で示された方向からワイパーを見た図である。ワイパーの形状は図14−1に示したように、各行に並んでいる複数のノズルを1枚のワイパーでワイピング出来る形状でも良いし、図14−2に示したように、各ノズルをワイピングする領域間に切れ込みを入れた形状でも良いし、図14−3に示したように、各ノズル毎に完全に分離された形状でも良い。
【0080】
このように、本発明により、液体吐出ユニットを用いてプローブ担体を製造する際に、プローブ担体基板上に配置された各プローブ材料に、異なったプローブ材料が混ざることのない、配置された各プローブ材料の純度が高い良好なプローブ担体の製造が出来る。
【実施例2】
【0081】
図15に、第2の実施例を示す。実施例2では、実施例1で図5に示した構成に加え、図15中に57で示した液体吸収装置を備える。
【0082】
図16を用いて、より詳しく説明を行う。
【0083】
図16−1は、実施例1で説明した、ワイピングが終了した際の図である。前記したように、ワイピングによりプローブ溶液は、液体の吐出に影響しないノズルから充分離れた位置に移動させられる。(図12−3)
ワイピング終了後、液体吐出ユニットは、ワイピング装置部55から、液体吸収装置部57に移動する。
【0084】
図16−2は、液体吸収体ユニットが、図15において57で示した液体吸収装置部に移動した時の図である。
【0085】
液体吐出ユニットが所望の位置まで移動した後、液体吸収体ユニット19が、液体吐出ユニットに対して、図16−2に矢印で示したように接近する。
【0086】
液体吸収体ユニットの構造は、例えば、図16−2に示したように、ワイパーユニットと同様な構造を持つ。液体吸収体ユニット19は、複数の液体吸収体18と、液体吸収体の支持部16から形成される。
【0087】
液体吸収体ユニット19の液体吸収体18が液体吐出ユニットのノズル面12に接触し(図16−3)所望の時間経過後、液体吸収体ユニット19は液体吐出ユニットから離れ、一連の動作は終了する。(図16−4)
この一連の動作により、ワイピングにより発生した、ノズル面上に存在するプローブ溶液が除去される。
【0088】
このように、本実施例ではノズル面に付着しているプローブ溶液を完全に除去できるので、ノズル面に付着している液体が、プローブ溶液の吐出に与える悪影響を完全に無くすことができる。
【0089】
液体吸収体18は、ノズル近傍には接触しないため、液体吸収体18に付着している物質が、液体吸収時にノズル近傍に付着し、プローブ溶液の吐出に悪影響を与えることは無い。
【0090】
なお、ここでは説明を簡潔にするために、ワイパーユニットと、液体吸収体ユニットが、同様な構成の場合について示したが、液体吸収体ユニットの形状はここで示した形状に限らず、ノズル近傍に接しない形状であれば良い。
【実施例3】
【0091】
図17に、第3の実施例を示す。図17において、58はワイピング兼液体吸収装置である。実施例2では、ワイピング装置と液体吸収装置が別々に存在する場合を示した。実施例3では、ワイピング動作と液体吸収動作を共通の装置行う場合について述べる。
【0092】
図18にワイピング兼液体吸収装置で使用するワイパー兼液体吸収体ユニットを示す。図18は、実施例1の説明で用いた図10で矢印で示された方向からワイパー兼液体吸収体ユニットを見た図である。ワイパー兼液体吸収体ユニットはワイパー13、液体吸収体19、および支持部16から形成される。
【0093】
ワイピングを行う場合は図18−1に示したように、ワイパーがノズル部に対応する位置で、これまで説明したようにワイピングを行う。
【0094】
ワイピング終了後、ノズル面上に残留しているプローブ溶液を吸収する場合は液体吸収体がノズル部に対応する位置に図18−2で矢印で示した様に移動し、これまで説明したように吸収を行う。
【0095】
以上、実施例1ないし実施例3で、ワイピングの際に隣接したノズルに充填されていたプローブ溶液が混ざり合う現象が生じない、プローブ担体の製造方法およびプローブ担体の製造装置を示した。
【0096】
以上の説明では説明を明確にするために、1種類のプローブ溶液は、1つのノズルから吐出させるという最も単純な液体吐出ユニットの構成で説明を行ってきたが、1種類のプローブ材料を吐出するノズルが複数である構成でも良い。この場合、異なるプローブ溶液を吐出するノズル間に溝があれば良い。
【0097】
また、本発明の溝の形態は実施例1ないし実施例3に示した形態に限られる物ではない。
【0098】
また、これまでサーマルジェット方式の液体吐出ユニットを用いて説明を行ってきたが、本発明はサーマルジェット方式に限らず、ピエゾジェット法等の、他の方式の液体吐出ユニットにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来のヘッドのノズルの配列形態を示模式図である。
【図2】従来のヘッドのワイピング方法を説明するための模式図である。
【図3】従来のヘッドのワイピング方法を説明するための模式図(断面図)である。
【図4】液体吐出ユニットのノズルの配列形態を示す模式図である。
【図5】プローブ担体製造装置の構造の模式図である。
【図6】プローブ担体の模式図である。
【図7】液体吐出ユニットの模式図である。
【図8】液体吐出ユニットの模式図である。
【図9】液体吐出ユニットに、従来のヘッドのワイピング方法を適用した場合の問題点を説明するための模式図である。
【図10】本発明の第1の実施例を説明するための模式図である。
【図11】本発明の第1の実施例を説明するための模式図である。
【図12】本発明の第1の実施例を説明するための模式図である。
【図13】本発明の第1の実施例を説明するための模式図である。
【図14】本発明の第1の実施例を説明するための模式図である。
【図15】本発明の第2の実施例を説明するための模式図である。
【図16】本発明の第2の実施例を説明するための模式図である。
【図17】本発明の第3の実施例を説明するための模式図である。
【図18】本発明の第3の実施例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0100】
11 ノズル
12 ノズル面
13 ワイパー
14 流路
15 ワイパーユニット
16 支持部
17 プローブ溶液
18 液体吸収体
19 液体吸収ユニット
51 液体吐出ユニット
52 シャフト
53 ステージ
54 ガラス基板
55 ワイピング装置
56 プローブ
57 液体吸収装置
58 ワイピング兼液体吸収装置
71 シリコン基板
72 絶縁膜
73 ヒータ
74 保護膜
75 耐キャビテーション膜
76 ノズル材
77 ノズル
78 流路
79 供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造方法であって、
前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットは異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルを備え、該液体吐出ユニットの複数のノズルが配置されたノズル面をワイピングする、m個またはn個のワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造方法。
【請求項2】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造方法であって、
前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造方法。
【請求項3】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造方法であって、
前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットは異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルを備え、該液体吐出ユニットの複数のノズルが配置されたノズル面をワイピングする、m個またはn個のワイパーおよび、ノズル面に付着した液体を除去する液体吸収体を備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造方法。
【請求項4】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造方法であって、
前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーおよび、ノズル面に付着した液体を除去する液体吸収体を備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造方法。
【請求項5】
前記液体吸収体の個数が、前記ワイパーの個数と同一であることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載のプローブ担体の製造方法。
【請求項6】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造装置であって、
前記装置は、前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットは異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルを備え、該液体吐出ユニットの複数のノズルが配置されたノズル面をワイピングする、m個またはn個のワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造装置。
【請求項7】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造装置であって、
前記装置は、前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーを備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造装置。
【請求項8】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造装置であって、
前記装置は、前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットは異なった液体を吐出するm行n列に配置された液体吐出ユニットのノズルを備え、該液体吐出ユニットの複数のノズルが配置されたノズル面をワイピングする、m個またはn個のワイパーおよび、ノズル面に付着した液体を除去する液体吸収体を備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造装置。
【請求項9】
液体吐出ユニットからプローブ材料を含有する複数種のプローブ溶液を基板上に吐出することにより、前記基板上に複数種のプローブの各々が配置されたプローブ担体の製造装置であって、
前記プローブ溶液の吐出を行う前記液体吐出ユニットのノズル数と同数のワイパーおよび、ノズル面に付着した液体を除去する液体吸収体を備え、該ワイパーの可動範囲を、異なった液体を吐出する液体吐出ユニットのノズル間隔以下に設定する事を特徴とするプローブ担体の製造装置。
【請求項10】
前記液体吸収体の個数が、前記ワイパーの個数と同一であることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載のプローブ担体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−3151(P2006−3151A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178195(P2004−178195)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】