説明

プローブ用カバー装着装置

【課題】超音波診断で用いられるプローブに対して簡便にカバーを装着できるようにする。
【解決手段】送りロール14と巻き取りロール16との間においてフィルム12が伸展状態におかれ、2つのプレート38,42によってフィルム12が挟まれる。その後、上方からプローブ60がフィルムに対して押し付けられると、切取部分20Aが伸張し、またプローブヘッドに沿って変形することになる。フィルム12にはミシン目18が形成されており、一定の張力においてミシン目18に沿って破断が生じる。その後、フィルムの自己収縮性によってプローブヘッドに切取部分20Aが完全に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプローブ用カバー装着装置に関し、特に、超音波診断で使用されるプローブのヘッドに対してカバーを装着する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、超音波診断を行う際にはプローブ(超音波探触子)が利用される。プローブは超音波振動子を内蔵したプローブヘッドを有する。プローブヘッドの送受波面あるいは音響レンズ面が生体表面に当接される。体腔内に挿入されるプローブも知られている。通常、被検者の超音波診断前にプローブにおける送受波面にゼリーが塗布される。これにより超音波診断時に送受波面と生体表面との間における空気層を除外して音響伝搬を良好にできる。超音波診断後においては、プローブに付いているゼリーがタオルやペーパーによって除去される。次の被検者の超音波診断に先立って再びプローブの送受波面上にゼリーが塗布される。被検者ごとにプローブを洗浄しあるいは滅菌するといった処理までは通常行われていない。
【0003】
特許文献1にはプローブに内蔵されたシートから剥離された保護シートを送受波面に被着する技術が開示されている。これは送受波面だけを保護するカバーでありプローブヘッドの全体(あるいは生体に触れる部分の全体)を包み込むものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3236645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の被検者に対して同じプローブが繰り返し使用される状況において、被検者間における感染(院内感染)を防止する必要性が指摘されている。しかし、超音波診断ごとにプローブの消毒や滅菌を行うのは非常に煩雑である。プローブヘッドの形状と同一形状をもった特殊なカバーをプローブヘッドに装着することも考えられるが、そのための作業負担やコストが問題となる。形状の異なるプローブヘッドごとにカバーを用意しなければならないという問題も生じる。カバーの装着によって音響伝搬が妨げられると画質低下という問題が生じる。なお他の目的から膜状部材の装着が求められることもあり、その場合にも装着作業を簡便に行うことが要請される。
【0006】
本発明の目的は、プローブヘッドに対して膜状部材を簡便に装着できるようにする。あるいは、本発明の目的は、プローブヘッドの形状が異なってもカバーを容易に密着させることができ、しかも装着後に不用意には脱落しない膜状部材の装着法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る装置は、カバー用の切取部分を有する伸縮性をもったフィルムと、前記切取部分が張られた状態において前記フィルムにおける前記切取部分の周囲を保持する保持機構と、を含み、前記保持機構は、前記切取部分へのプローブヘッドの押し付けによって前記切取部分が前記プローブヘッド形状に沿って伸長しつつ変形し更に前記切取部分がフィルム本体から分離するまで前記切取部分の周囲を保持する、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、フィルムから切り出された切取部分によってプローブヘッドの少なくとも送受波部分(望ましくは送受波部分を越えた生体当接部分)を覆って、プローブヘッドにカバーあるいはキャップを取り付けることが可能となる。フィルムは伸縮性を有し、プローブヘッドの押し付け時にその形状に応じて切取部分が変形しまた伸長するから、そのような性質を利用してラッピングあるいはラミネートを実行することにより、様々な形状を有するプローブヘッドに切取部分を容易に密着させることができる。生体当接目的からプローブヘッドはプローブ本体から生体側へ突出しており、一般に、送受波面は電子走査方向及びそれに直交する方向に緩やかに丸まったあるいは湾曲した形状を有するから、送受波面とフィルムとの間に空気層が入ることは基本的にない。音響伝搬性をより良好にするためにはそれらの間に音響伝搬媒体(ゼリー等)を導入することも可能である。プローブ使用時にはフィルムの外側(生体当接面)へもそのような媒体を塗布してよい。媒体の導入又は塗布は手動的に又は自動的に実施される。
【0009】
フィルムへのプローブの押し付けは手作業により又は自動機構により行うことができ、保持力は人為的に又は駆動源を利用して発生させることができる。切取部分がフィルム本体つまり切取部分の周囲部分から離脱するまでフィルムの保持を確実に維持するのが望ましい。保持機構における保持部分が切断作用(カッティング作用)を発揮するように構成してもよいし、保持部分の内側に切断線が設定されるように構成してもよい。少なくとも送受波面において皺のない良好なラミネート状態を形成するために、望ましくは、切取部分がその周囲において実質的に均等な張力をもって保持されるのが望ましく、そのために切取部分を円形にし保持部分をリング状にするのが望ましい。
【0010】
フィルムは伸縮性を有し、望ましくは、薄くても物理的強度が高い、透明性、生体安全性を有する材料により構成される。生体に近い音響インピーダンスを有する材料でフィルムが構成されるのが望ましい。望ましくは、切取部分をプローブのカバーとして利用した後に、つまり被検者の超音波診断後に、当該切取部分が廃棄される。切取部分をディスポーザブルの部材とすれば被検者間のコンタミネーションを防止できる。いずれにしても、超音波診断時においては、プローブはフィルムを介して生体表面に接することになるから衛生的であり、その場合においてもフィルムがプローブヘッドに密着しているから被検者に違和感が生じることもない。切取部分の廃棄後、次の被検者の診断を行う前に、プローブに新しい切取部分つまりカバーが装着される。
【0011】
切取部分を装着した状態では、それ自体の伸縮性から、一般に、切取部分をバンド等によって止めなくても、装着状態がそのまま維持される。よって、装着作業後に特別な固定作業を行う必要もない。プローブヘッドの肥大部分を包み込むところまで、つまりプローブ本体のくびれ部分までフィルムを装着すればより脱落を防止できる。プローブ本体におけるグリップ部分までフィルムを装着することももちろん可能である。
【0012】
望ましくは、前記切取部分は当該切取部分が前記プローブヘッドを覆った密着状態において前記プローブヘッドの送受波面を越える大きさを有する。この構成によれば、良好な超音波伝搬を確保しつつ生体当接側を広く覆って衛生面での機能性を高められる。
【0013】
望ましくは、前記保持機構は、前記フィルムの一方面側に設けられ、前記プローブヘッドの通過を許容する第1開口部を備える第1保持部材と、前記フィルムの他方面側に設けられ、前記第1保持部材と共に前記フィルムを挟んで保持する部材であって、前記プローブヘッド及び前記切取部分の通過を許容する第2開口部を備える第2保持部材と、を含む。フィルムの保持に当たっては、望ましくはフィルムが両側から挟まれる。その場合に2つの保持部材が利用される。それらには切取部分へのプローブのアプローチ及び押し付け後のプローブ運動を許容するように、第1開口部と第2開口部が設けられている。それらの開口部は円形又は四角形の開口であってもよいし、U字形の開口であってもよい。フィルム送り方向において切取部分を挟んで右側及び左側をそれぞれ直線的に保持するようにしてもよい。その場合には、例えば送り方向に直交する方向に伸長した保持部材が利用される。また、その場合には2つの方向に開いている開口となる。
【0014】
望ましくは、前記フィルムには前記切取部分を取り囲む形状を有する環状ミシン目が形成され、前記ミシン目が前記切取部分を画定する分離線として機能する。事前に又は分離直前にミシン目を形成すれば、分離ラインの形状を操作できる。ミシン目を構成する孔の間隔、大きさ、等を調整することにより、どの程度の張力で分離させるのかを操作することが可能である。もっとも、局所加熱、機械的切断、等の仕組みを用いて切取部分の分離を達成するようにしてもよい。手作業によって簡易にカバー装着を行うにはミシン目又はそれに相当する加工を事前に行っておくのが望ましい。
【0015】
望ましくは、前記フィルムには当該フィルムの送り方向に複数の環状ミシン目が形成され、これにより前記フィルムにおいて前記送り方向に複数の切取部分が設定される。この構成によれば、フィルムを繰り出しながら切取部分を順次生成することができる。フィルムの送りを自動化してもよいし、手動で行うようにしてもよい。望ましくは、前記保持機構は、前記フィルムにおける前記環状ミシン目の位置又はそれよりも外側を保持する。廃棄物量削減の観点から、2つの環状ミシン目の間はフィルム保持を行える限りにおいてできるだけ小さい方が望ましい。切取部分を四角形にして、フィルムの両辺から全部分を切取部分として利用するように構成してもよい。
【0016】
本発明に係る方法は、伸縮性をもったフィルムを伸展状態にする工程と、前記伸展状態にあるフィルムに対してプローブヘッドを押し付け、前記フィルムを部分的に離脱させる工程と、を含み、前記部分的な離脱により生じた切取部分が前記プローブヘッドに密着してそのカバーとして機能する、ことを特徴とする。望ましくは、更に、前記伸展状態にあるフィルムに対して少なくともその第1面に音響伝搬媒体を導入する工程を含み、前記プローブヘッドの押し付け過程で前記フィルムの第1面と前記プローブヘッドの送受波面との間に前記音響伝搬媒体が展開する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プローブヘッドに対して膜状部材を簡便に装着できる。あるいは、本発明によれば、プローブヘッドの形状が異なってもカバーを容易に密着させることができ、しかも装着後に不用意には脱落しない膜状部材の装着法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るプローブ用カバー装着装置の上面図である。
【図2】プローブ用カバー装着装置の断面図である。
【図3】フィルムを保持した状態を示す断面図である。
【図4】フィルムに対してプローブが押し込まれた状態を示す断面図である。
【図5】プローブに対してカバーが装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係るプローブ用カバー装着装置10の好適な実施形態が示されており、図1はその上面図である。プローブは、超音波診断装置本体に対して着脱自在に装着されるものである。プローブは、プローブヘッドを有し、そのプローブヘッド内にはアレイ振動子が内蔵されている。アレイ振動子は複数の振動素子により構成され、アレイ振動子によって超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。アレイ振動子としては1Dアレイ振動子の他、2Dアレイ振動子等が知られている。図1に示されるプローブ用カバー装着装置は、プローブにおけるプローブヘッドを包み込むようにカバーを装着するための装置である。
【0021】
フィルム12は、プローブに装着されるカバーを切り出す母材となるものである。フィルム12は伸縮性を有する材料によって構成され、望ましくは透明性を有する物理的に強い材料によって構成される。超音波伝搬を良好にするために、薄い厚さを持った材料を利用するのが望ましく、また生体と等価な音響インピーダンスを有する材料によって構成されるのが望ましい。そのような材料としては例えばポリエチレンフィルムをあげることができる。図1において、符号14は送りロールを示しており、その送りロール14から送り方向Xにフィルム12が送り出される。初期状態において送りロール14は例えば数百メートルの長さを有するフィルム12を有している。符号16は巻き取りロールを示しており、以下に詳述するカバー装着作業後に送り出されるフィルム部分が巻き取りロール16によって巻き取られる。あるいはそのように巻き取られたものが巻き取りロール16である。
【0022】
フィルム12には、本実施形態において、複数のミシン目18が形成されている。複数のミシン目18は、それぞれ円形を有しており、送り方向Xに沿ってそれらが整列している。隣接するミシン目18の間隔は、後に説明する保持動作を行える限りにおいて小さく設定するのが望ましい。ミシン目18は切取部分の形状を画定するものであり、本実施形態において切取部分20は円形を有している。切取部分20の周囲は周囲部分22であり、それは切取部分20から見てフィルム本体をなす。巻き取りロール16においては、切取部分20の除去後において当該部分が欠落部分21となり、その周囲が残余部分22Aである。符号18Aは破断線を示しており、それは上述したミシン目18に相当する。
【0023】
送りロール14は、ロール軸24を有し、そのロール軸24は2つの軸受け26によって回転自在に保持されている。巻き取りロール16はロール軸28を有し、ロール軸28の一端が軸受け30によって回転自在に保持されており、ロール軸28の他端が駆動軸32に連結されている。駆動軸32は駆動源34によって回転駆動される軸であり、駆動源34はモータ、ギア等によって構成される。軸受け26、軸受け30および駆動源34等が搬送機構23を構成している。もちろん図示される機構は一例であって、いずれにしてもフィルム12を伸展状態を形成できる限りにおいて各種の機構を採用することが可能である。
【0024】
プローブ用カバー装着装置10は、切断機構36を有している。図1においては、切断機構36のうちで上側に設けられる上側プレート38が示されている。上側プレート38の下側にはフィルム12を挟んで下側プレートが設けられている。それらの2つのプレートによって必要なタイミングでフィルムが挟まれ、すなわち切取部分20の周囲においてフィルムが2つのプレートによって保持される。下側プレートに対して上側プレート38の上下運動を案内するために4つのガイドピン40が設けられている。本実施形態において、それらのガイドピン40は下側プレートに固定されている。4つのガイドピン40はフィルム12の幅方向を越えた位置に設けられている。上側プレート38は中央部に円形の開口部を有している。符号38Aはその開口縁を示している。その開口部はフィルムが適正に位置決められた場合において切取部分に一致し、より詳しくは、切取部分の中心点と開口部の中心点とが一致する。本実施形態において、開口部の直径は切取部分20の直径よりもやや小さい。
【0025】
なお、図1に示されるプローブ用カバー装着装置10が超音波診断装置に搭載されてもよい。図1に示す構成ではフィルムの送りが自動化されているが、もちろん手作業によってフィルムの送りを行うようにしてもよい。後に説明するように、ミシン目18を形成することなく、局所加熱や機械的切断の方式を使って切取部分を画定するようにしてもよい。
【0026】
図2には、プローブ用カバー装着装置10の断面図が示されている。図2においては要部構成だけが示されている。上述したように切断機構36は、上側プレート38と下側プレート42等を有する。両者の間にはフィルム12が伸展状態で差し込まれている。すなわち2つのロール14,16の作用によってフィルム12に対して左右方向に引っ張り力を与えることによりフィルム12を伸展状態にすることが可能である。保持動作後に伸展状態が形成されてもよい。
【0027】
上側プレート38と下側プレート42はそれぞれ保持部材を構成し、両者合わせて保持機構を構成する。下側プレート42の上面側には円形を有する突状部44が形成されている。突状部44は上方に尖った形態を有している。一方において、上側プレート38の下面側は平坦な面として構成されている。
【0028】
上側プレート38は開口部39を有し、下側プレート42は開口部43を有する。開口部39と開口部43はいずれも同じ大きさを有している。下側プレート42における肩部42Aは本実施形態において丸みをもって形成されている。
【0029】
符号18Bはミシン目が形成されている位置を示しており、符号44Aは突状部44が形成されている位置を表している。符号45で示されるように、2つの位置18B,44Aは互いに異なっており、すなわち、円形を有する突状部44の内側に円形を有するミシン目が位置するように構成されている。ただし、切取部分を円滑に生じさせることができる限りにおいて2つの位置が一致していてもよい。
【0030】
符号45は媒体導入経路を示しており、符号46はフィルム12上に吐出された音響整合媒体(ゼリー)を示している。そのような媒体は例えばチューブ等の部材によって切取部分20の中央部に吐出される。本実施形態においては、プローブヘッドに密着する側の面に媒体46が吐出されていたが、それとは反対側の面にも媒体を導入するようにしてもよい。そのような構成によれば、切取部分をプローブヘッドに装着した後において、切取部分の外側すなわち生体接触側に媒体を塗布する工程を省略することが可能である。
【0031】
下側プレート42はベース46に連結されている。ベース46の内部には中間プレート48が設けられ、その中間プレート48には押し戻し機構50が搭載されている。押し戻し機構50はプローブが上方に押し込まれて切取部分がプローブヘッドに装着された後において、プローブを上方に押し戻すための機構である。押し戻し機構50は、プローブが当接される台座52と、それを支持する軸54と、軸54を上方に付勢するばね56とを有している。なお軸54における中間プレート48の下方側は肥大しており、当該部分58が軸54の上方端を規定している。
【0032】
次に、図3乃至図5を用いて、上述したプローブ用カバー装着装置の動作をより詳しく説明する。
【0033】
図3において、フィルム12が引っ張られた状態において、上側プレート38が下側へ押し付けられ(符号59参照)、これによって上側プレート38と下側プレート42との間にフィルム12が挟まれる。すなわちフィルム12において切取部分の周囲すなわち外側が保持された状態が形成される。具体的には、その保持は突状形状を有する突状部44と上側プレート38の平坦な下面との間にフィルム12を挟み込むことにより達成されている。このようにフィルムを挟むことにより水平方向へのフィルムの移動を禁止することが可能である。その前あるいは後に音響整合媒体が切取部分の中央部に塗布される。そして、符号62で示されるように、上方からフィルム12における切取部分の中央に向けて上方からプローブ60が押し付けられる。
【0034】
その状態が図4に示されている。2つのプレート38,42によってフィルム12が保持されている状態において、プローブ60が上方から下方へ運動すると、すなわち切取部分に対してプローブヘッドが押し付けられると、切取部分が符号20Aで示されるように伸張し、それがプローブヘッドの形状に沿って変形することになる。それと同時に、プローブヘッドに対して切取部分が部分的にあるいは全面的に密着することになる。
【0035】
図4は切取部分の切断が生じる直前の状態を示している。図4に示す状態では、押し戻し機構50において台座52が下方に押し下げられており、これによってばね56が縮小状態におかれている。図4に示す状態後、所定のテンションに到達した時点でミシン目18において破断が発生し、これによって切取部分20Aが自己収縮を行うとともに、当該切取部分20Aがプローブヘッドに完全に密着することになる。その後、プローブ60を押し付けている力を弱めることにより、ばね56の復帰作用が働き、プローブ60は自然に上方に持ち上げられることになる。なお、そのような過程においてプローブケーブルが邪魔になるようであれば、フック等を利用してその保持を行うようにすればよい。
【0036】
図4に示す態様では、プローブ60が上方から下方に押し付けられていたが、その方向は図示のものに限られない。ただし、音響整合媒体が不用意に流れ出さないような姿勢を採用するのが望ましい。上側プレート38および下側プレート42にそれぞれ形成されている開口部は図4に示すようにプローブ60を通過させる開口であり、プローブ60の外径よりも大きな形状をもって形成される必要がある。符号20Aで示されるように切取部分が伸張した状態においても、下側プレート42の肩部は丸まっているので、予想外の地点において破れが生じてしまうといった問題も未然に防止されている。すなわちミシン目18に沿ってきれいな切断線を形成することが可能である。
【0037】
図5には、カバー装着後のプローブ60が示されている。カバーは切取部分20Bにより構成され、それはキャップとして機能する。切取部分20Bは自己収縮性により容易には脱落せず、それはプローブヘッド60Aに完全に密着している。送受波面60Bと切取部分20Bの内面との間に空気層は存在しておらず、その隙間には音響整合媒体が存在している。万が一、その部分に空気層が存在しているとしても、フィルムが透明性を有する部材によって構成されているので、そのような気泡を外部から容易に視認することが可能である。フィルムの伸縮性により送受波面60Bを含むプローブヘッドの広範囲に渡ってフィルムを皺なく密着させることができる。被検者に対して図5に示すような態様のプローブ60を用いて超音波診断を行った後に、切取部分20Bが廃棄される。そして新しい切取部分がプローブ60のプローブヘッド60Aに装着される。このような構成によれば、被検者間におけるコンタミネーションあるいは感染といった問題を効果的に防止することができる。また切取部分20Bがディスポーザブル型として用いられるため、カバーあるいはキャップの洗浄といった煩雑な工程も不要である。
【0038】
上述した実施形態においてはミシン目が利用されており、すなわち予め切取部分が画定されていた。このような構成によればプローブを押し付けるだけで必要な部分をカバーとして利用することが可能である。そのような押し付け力を自動的に発揮することもできるが、本実施形態のように手作業によってそのような押し付けを行うのが望ましい。もっとも、ミシン目を形成することなく機械的な切断あるいは局所加熱等の方式を利用して切取部分の切断を行うようにしてもよい。そのような構成を採用する場合にも、切り取るべき部分の周囲を確実に保持したうえで、プローブを当該部分に押し付け、その状態において必要な箇所を切断するようにすればよい。そのような構成によれば上記実施形態と同様に皺なくカバーを装着することが可能となる。上述した実施形態においては、押し戻し機構が採用されていたが、そのような機構は必要に応じて設けられればよいものである。プローブの押し付け後にプローブが上方に引き抜かれていたが、切取部分をフィルムの側辺に近付けることにより、プローブを下方へ押し込んだ上でそれを水平方向に逃がすことによりプローブを取り出すような方式を採用することも可能である。上述した実施形態においては一回のカバーの装着あたり材料費としては例えば1円程度で済むので、低廉性と衛生面での利点とを同時に得ることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 プローブ用カバー装着装置、12 フィルム、14 送りロール、16 巻き取りロール、18 ミシン目、20 切取部分、23 搬送機構、36 切断機構、38 上側プレート、42 下側プレート、50 押し戻し機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー用の切取部分を有する伸縮性をもったフィルムと、
前記切取部分が張られた状態において前記フィルムにおける前記切取部分の周囲を保持する保持機構と、
を含み、
前記保持機構は、前記切取部分へのプローブヘッドの押し付けによって前記切取部分が前記プローブヘッド形状に沿って伸長しつつ変形し更に前記切取部分がフィルム本体から分離するまで前記切取部分の周囲を保持する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記切取部分は当該切取部分が前記プローブヘッドを覆った密着状態において前記プローブヘッドの送受波面を越える大きさを有する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記保持機構は、
前記フィルムの一方面側に設けられ、前記プローブヘッドの通過を許容する第1開口部を備える第1保持部材と、
前記フィルムの他方面側に設けられ、前記第1保持部材と共に前記フィルムを挟んで保持する部材であって、前記プローブヘッド及び前記切取部分の通過を許容する第2開口部を備える第2保持部材と、
を含むことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、
前記フィルムには前記切取部分を取り囲む形状を有する環状ミシン目が形成され、
前記ミシン目が前記切取部分を画定する分離線として機能する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記フィルムには当該フィルムの送り方向に複数の環状ミシン目が形成され、これにより前記フィルムにおいて前記送り方向に複数の切取部分が設定された、ことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の装置において、
前記保持機構は、前記フィルムにおける前記環状ミシン目の位置又はそれよりも外側を保持する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着装置。
【請求項7】
請求項1記載のプローブ用カバー装着装置において使用されるフィルム。
【請求項8】
伸縮性をもったフィルムを伸展状態にする工程と、
前記伸展状態にあるフィルムに対してプローブヘッドを押し付け、前記フィルムを部分的に離脱させる工程と、
を含み、
前記部分的な離脱により生じた切取部分が前記プローブヘッドに密着してそのカバーとして機能する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記伸展状態にあるフィルムに対して少なくともその第1面に音響伝搬媒体を導入する工程を含み、
前記プローブヘッドの押し付け過程で前記フィルムの第1面と前記プローブヘッドの送受波面との間に前記音響伝搬媒体が展開する、ことを特徴とするプローブ用カバー装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−115551(P2012−115551A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269217(P2010−269217)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】