説明

プーリと、このプーリを用いたベルト取付方法

【課題】ベルト取付治具等を使用することなくより簡単かつ確実にプーリにベルトを巻掛けることができるプーリ及びそのベルト取付方法を提供すること。
【解決手段】回転体10の側面2dに、ベルト係止部6・7を設けたクランクプーリ2としている。そして、係るクランクプーリ2を以下のようにして用いる。先ず、オルタネータプーリ3にVリブドベルト4を巻掛けすると共に、クランクプーリ2の回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいで掛けられたVリブドベルト4をベルト係止部6に係止する。次に、ベルト係止部6のVリブドベルト4を係止する側を回転方向としてクランクプーリ2を回転させる。すると、ベルト係止部6に掛けられているVリブドベルト4がベルト係止部6を離れて回転体10の外周上へと移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリにベルトを巻掛けてなるベルト伝動機構等に使用されるプーリと、このプーリを用いたベルト取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のプーリにベルトを巻掛けてなるベルト伝動機構では、プーリ間で確実に動力を伝達させるために装着対象であるプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長を短くしてベルトに強い張力がかかるようになっている。
【0003】
このようにプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長が短いベルトをプーリに巻掛ける作業は手間がかかることがある。この手間を軽減させるために、特許文献1及び特許文献2には、ベルトを周方向に伸長させてプーリ外周に巻掛ける作業を補助するベルト取付治具が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1に係るベルト取付治具は、周方向に伸長可能なベルトをプーリに取り付ける作業を補助するためのものであり、ベルト取付治具1をプーリ5に固定するための固定手段である挟着部11と傾斜面13とでプーリの外周部10を挟むようにしてベルト取付治具1をプーリ5に装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300172号公報
【特許文献2】特許第4171517号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載のベルト取付治具1を使用すれば、確かに、プーリ5にベルト7を巻掛ける作業が容易になる。しかしながら、係るベルト取付治具1が固定手段を必要とし、ベルト取付治具1をプーリ5に固定する際に、うまく挟着部11と傾斜面13とでプーリの外周部10を挟むことができず手間がかかる場合がある。また、このベルト取付治具1を固定手段を介してプーリ5に取り付ける際、又は、取り外す際に落下させてしまうおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ベルト取付治具等を使用することなくより簡単かつ確実にプーリにベルトを巻掛けることができるプーリ及びそのベルト取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、回転体の外周にベルトが巻掛けられるプーリであって、前記回転体の少なくとも一方の側面に、前記ベルトを前記回転体に巻掛ける際に前記回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを係止するためのベルト係止部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記の第1の発明に係るプーリは、以下のようにして用いる。先ず、第1の発明に係るプーリを含む二つ以上のプーリの間にベルトを巻掛けする場合、第1の発明に係るプーリを除く全てのプーリにベルトを巻掛けすると共に、第1の発明に係るプーリの回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを前記ベルト係止部に係止する。次に、ベルト係止部におけるベルトを係止する側を回転方向として第1の発明に係るプーリを回転させる。すると、ベルト係止部が、ベルトを押し出して回転体の外周上にベルトを巻掛ける。即ちベルト係止部に係止されていたベルトがベルト係止部を離れて回転体の外周上へと移動する。
【0010】
このように、プーリの回転体の側面に、ベルトを回転体に巻掛ける際に回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられたベルトを係止するためのベルト係止部が形成されていることにより、特別な治具等を使用することなく簡単かつ確実にベルトをプーリに巻掛けることができる。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明に係るプーリにおいて、回転体の外周縁は、曲面形状をしていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、回転体の外周から外周縁をまたいでベルト係止部にベルトを係止する際にベルトと接触する回転体の外周縁が曲面形状をしているため、ベルトをプーリに巻掛ける際のベルトの損傷を防ぐことができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明に係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は、前記ベルトが係止される面が曲面形状をしていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、回転体の外周から外周縁をまたいでベルト係止部にベルトが係止される際に、ベルト係止部のベルトが係止される面が曲面形状をしているため、ベルトをプーリに巻掛ける際のベルトの損傷を防ぐことができる。
【0015】
また、第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかに係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は、前記回転体の回転中心から当該ベルト係止部に延びる線を対称軸として線対称な形状であることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、ベルト係止部が回転体の回転中心からベルト係止部に延びる線を対称軸として線対称な形状であるため、回転方向が時計回りでも反時計回りのプーリであってもベルトをプーリに巻掛けることができる。
【0017】
また、第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれかに係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は、複数あることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、ベルト係止部が複数あるため、ベルトをプーリに巻掛ける際に、最寄のベルト係止部を利用することができる。例えば、プーリが重い場合やプーリの直径が大きい場合にベルト係止部が1個であると、プーリを最大半回転させなければならず手間がかかる。しかし、ベルト係止部が複数あると、プーリを最寄のベルト係止部があるところまで回転させればよく、手間を軽減させることができる。
【0019】
また、第6の発明は、第5の発明に係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は2つであり、当該2つのベルト係止部は前記回転体の回転中心を点対称とした位置にあることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、ベルト係止部を2つとして、当該2つのベルト係止部を回転体の回転中心を点対称とした位置に配置することができる。これにより、プーリが回転する際の重心バランスを保つことができる。また、ベルト係止部が2つしかないため、ベルト係止部にベルトを掛けてプーリを回転させてベルトをプーリの外周上に巻掛ける際、ベルトが回転体の外周上に移動するのを邪魔しにくい構成とすることができる。
【0021】
また、第7の発明は、第1〜第5の発明のいずれかに係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は1つであり、前記回転体には前記ベルト係止部による重心バランスのズレを補正するための穴が設けられていることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、ベルト係止部を1つにすることができ、コストダウンを図ることができる。また、ベルト係止部が1つしかないため、ベルト係止部にベルトを掛けてプーリを回転させてベルトをプーリの外周上に巻掛ける際、ベルトが回転体の外周上に移動するのを邪魔しない構成とすることができる。また、回転体にはベルト係止部が1つであることによる重心バランスのズレを補正するための穴が設けられている。これにより、ベルト係止部が1つであることによる重心バランスのズレをキャンセルしてプーリの回転バランスを保つことができる。
【0023】
また、第8の発明は、第1〜第7の発明のいずれかに係るプーリにおいて、前記ベルト係止部のベルトを掛けて係止する側の側面と前記回転体の側面との成す角度が、90°から135°の範囲であることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、ベルト係止部のベルトを掛けて係止する側の側面と回転体の側面との成す角度を90°以上にしている。これにより、ベルト係止部のベルトを掛けて係止する側の側面がベルトに対して鋭角にならず、ベルトをプーリに巻掛ける際のベルトの損傷を防ぐことができる。また、ベルト係止部のベルトを掛けて係止する側の側面と回転体の側面との成す角度を、135°以下にしている。これにより、ベルト係止部に掛けたベルトをスリップさせずに係止することができる。
【0025】
また、第9の発明は、第1〜第8の発明のいずれかに係るプーリにおいて、前記ベルト係止部は取外し可能であることを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、ベルトをプーリに巻掛けた後に当該ベルト係止部を取り外すことができる。これにより、使用するときにだけ当該ベルト係止部をプーリに取付けて使用することができる。
【0027】
また、第10の発明は、第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリを含む二つ以上のプーリの間に、周長方向に伸縮変形可能なベルトを巻掛けするベルト取付方法であって、第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリを以下のように用いることを特徴とするベルト取付方法である。まず、(a)第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリを除く全てのプーリにベルトを巻掛けすると共に、第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリの回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを前記ベルト係止部に係止する。次に、(b)前記ベルト係止部において、前記ベルトを係止する側を回転方向として第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリを回転させる。
【0028】
上記の方法では、第1〜第9の発明のいずれかに係るプーリA(以下プーリA)を含む二つ以上のプーリの間にベルトを巻掛けする場合、先ず、プーリAを除く全てのプーリにベルトを巻掛けすると共に、プーリAの回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを前記ベルト係止部に係止する。次に、ベルト係止部におけるベルトを係止する側を回転方向としてプーリAを回転させる。すると、ベルト係止部が、ベルトを押し出してプーリAの外周上にベルトを巻掛ける。即ちベルト係止部に係止されていたベルトがベルト係止部を離れてプーリAの外周上へと移動する。このように、特別な治具等を使用することなく簡単かつ確実にベルトをプーリAに巻掛けることができる。
【発明の効果】
【0029】
ベルト取付治具等を使用することなくより簡単かつ確実にプーリにベルトを巻掛けることができるプーリ及びそのベルト取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係るエンジン本体の平面図である。
【図2】第1実施形態に係るクランクプーリの斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るクランクプーリの側面図である。
【図4】第1実施形態に係るクランクプーリの平面図である。
【図5】第1実施形態に係るベルト係止部の側面とクランクプーリの側面との成す角度を説明した説明図である。
【図6】クランクプーリを使用したベルト取付方法を説明した第一説明図である。
【図7】クランクプーリを使用したベルト取付方法を説明した第二説明図である。
【図8】クランクプーリを使用したベルト取付方法を説明した第三説明図である。
【図9】第2実施形態に係るクランクプーリの説明図である。
【図10】第3実施形態に係るクランクプーリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態に係るクランクプーリ2(プーリ)は、このクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間にVリブドベルト4を巻掛する際に使用する。先ず、図1を参照しつつ、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3に対するVリブドベルト4の巻掛けを説明し、図2〜図5を参照しつつ、クランクプーリ2の構造を説明する。
【0032】
図1に示されるように、エンジン本体1には、エンジンのクランク軸に連結されるクランクプーリ2(プーリ)と、オルタネータの入力軸に連結されるオルタネータプーリ3と、が所定の軸間距離を隔てて回転自在に支持される。このクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間には、Vリブドベルト4が巻掛けされ、もって、クランク軸の動力が、クランクプーリ2、Vリブドベルト4、オルタネータプーリ3を順に介してオルタネータの入力軸に伝動されるようになっている。本実施形態では、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間の軸間距離は変更不能とされ、また、図示するように、Vリブドベルト4に対して張力を付与する所謂オートテンショナーは搭載しない。
【0033】
ここで、上記のVリブドベルト4は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。低モジュラスベルトは、心線にポリアミド繊維を用いることで、弾性率を比較的低くしたものであり、高弾性率のもの(所謂高モジュラスベルト)と比較して急激な張力低下が抑制される。また、装着対象であるプーリ等のレイアウト周長よりもベルト周長を短くしてベルトを伸長させつつプーリに装着する方法を採用し易く、この方法の採用によりオートテンショナー等の張力調整機構が不要になる、という利点がある。
【0034】
なお、図1の太線矢印はVリブドベルト4の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト4が走行するときのクランクプーリ2の回転方向を第一回転方向Aと、この第一回転方向Aと反対の方向を第二回転方向Bと、定義する。
【0035】
(クランクプーリの構造)
図2及び図3に示すように、クランクプーリ2は、筐体となる回転体10に、Vリブドベルト4の内周に形成されるリブと嵌合可能な複数のプーリ溝2aを有し、このプーリ溝2aを回転体軸方向で挟む一対のプーリフランジ2b・2cを備えている。このプーリフランジ2b・2cは、図3に示すように、上記プーリ溝2aより回転体径方向外側へ、突出して形成されている。そして、プーリフランジ2bの外周縁は、回転体10の外周から回転体10の側面2dに向かって曲面形状をしている。また、回転体10のボス部5には、エンジンの図示しないクランク軸が挿入される。符号2d・2eは、回転体10の両側面を示す。この回転体の側面には、Vリブドベルト4を回転体10に巻掛ける際に回転体10の外周からプーリフランジ2bの外周縁をまたいで掛けられたVリブドベルト4を係止するためのベルト係止部6・7が形成されている。なお、ベルト係止部6・7は、回転体10と一体形成されている。
【0036】
このベルト係止部6は、図2〜図4に示すように、回転体10の回転中心Oから回転体径方向に引かれる線上に長辺6aを持つ楕円柱形状をしている。故に、ベルト係止部6は、Vリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛する際にVリブドベルト4と接触する面が曲面形状をしている。
【0037】
なお、本実施形態では、ベルト係止部6・7は楕円柱形状をしているが、円柱形状としてもよい。ただ、ベルト係止部6を楕円柱形状にすると、円柱形状の場合と比べて、Vリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛する際にVリブドベルト4と接触する面の曲率を小さくすることができる。即ち、Vリブドベルト4とベルト係止部6・7との接地面積を増やして、Vリブドベルト4を確実にベルト係止部6・7に係止することができる。
【0038】
また、ベルト係止部6は、図4に示すように、回転体10の回転中心Oからベルト係止部6に延びる線を対称軸Yとして線対称な形状をしている。
【0039】
また、ベルト係止部6は、図5(a)に示すように、Vリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛する際にVリブドベルト4を掛けて係止する側の側面6dと回転体10の側面2dとの成す角度が、90°となっている。ここで、この成す角度は、90°〜135°の範囲で変更可能である(図5(b)参照)。なお、ベルト係止部7もベルト係止部6と同様の構造をしている。
【0040】
また、本実施形態では、2つのベルト係止部6及びベルト係止部7が回転体10の側面2dに配置されているが、図4に示すように、この2つのベルト係止部6及びベルト係止部7は回転体10の回転中心Oを点対称とした位置にある。
【0041】
また、ベルト係止部6・7は、回転体10の側面2dの外周縁近くに設けられている。これにより、回転体10の外周から外周縁をまたいでベルト係止部6・7にかけるVリブドベルト4の長さを短くすることができる。これにより、例えば、ベルト係止部6・7を回転体10の回転中心O周りに形成させて回転体10の外周から外周縁をまたいでベルト係止部6・7にかけるVリブドベルト4の長さを長くした場合と比べて、Vリブドベルト4をベルト係止部6・7に確実かつ安定的に係止することができる。
【0042】
(ベルト取付方法)
次に、図6〜図8を参照しつつ、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間にVリブドベルト4を巻掛けするベルト取付方法を説明する。なお、図示しないが、クランクプーリ2のボス部5にレンチを連結し、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにしている。
【0043】
<手順(a)>
先ず、回転体10のベルト係止部6・7にVリブドベルト4を掛けやすい位置にくるようにレンチを回してクランクプーリ2を回転させる。そして、図6に示すように、Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に巻掛けると共に、Vリブドベルト4をクランクプーリ2の回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいでベルト係止部6・7に引っ掛けた状態となるように係止する。
【0044】
上記の状態で、Vリブドベルト4は、図6に示すように、回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいでベルト係止部6に至るに際し、回転体径方向で見て回転体10の外周とは平行でない斜めの経路を採る。また、Vリブドベルト4は、回転体10の側面2dに対して当接する。
【0045】
<手順(b)>
次に、図7に示すように、ベルト係止部6におけるVリブドベルト4を係止する側、即ち、ベルト係止部6とVリブドベルト4とが接触する側を回転方向としてレンチを用いてクランクプーリ2を回転させる。換言すれば、クランクプーリ2を第一回転方向Aに回転させる。
【0046】
更に、継続してクランクプーリ2を第一回転方向Aに回転させると、ベルト係止部6・7が、Vリブドベルト4を押し出して回転体10の外周上にVリブドベルト4を巻掛ける。即ち、図8に示すように、Vリブドベルト4と回転体10の側面2dとの上述した当接関係がベルト係止部6によって強制的に解除され、ベルト係止部6に掛けられて係止されていたVリブドベルト4は、自己の張力によってベルト係止部6を離れ、回転体10の外周上へと自発的に移動する。以上にてクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間にVリブドベルト4を巻掛ける作業が完了される。
【0047】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態に係るクランクプーリ2は、Vリブドベルト4が巻掛けられて使用されるものであって、回転体10の側面2dに、回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいで掛けられたVリブドベルト4を係止するためのベルト係止部6・7が形成されている。
【0048】
上記のクランクプーリ2は、以下のようにして用いる。先ず、クランクプーリ2を含む二つ以上のプーリの間にVリブドベルト4を巻掛けする場合、クランクプーリ2を除く全てのプーリ(本実施形態ではオルタネータプーリ3)にVリブドベルト4を巻掛けすると共に、クランクプーリ2の回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいで掛けられたVリブドベルト4をベルト係止部6又はベルト係止部7に係止する。次に、ベルト係止部6・7のVリブドベルト4を係止する側を回転方向(第一回転方向A)としてクランクプーリ2を回転させる。すると、ベルト係止部6・7が、Vリブドベルト4を押し出して回転体10の外周上にVリブドベルト4を巻掛ける。即ちベルト係止部6・7に係止されていたVリブドベルト4がベルト係止部6・7を離れて回転体10の外周上へと移動する。
【0049】
このように、クランクプーリ2の回転体10の側面2dに、Vリブドベルト4を回転体10に巻掛ける際に回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいで掛けられたVリブドベルト4を係止するためのベルト係止部6・7が形成されていることにより、特別な治具等を使用することなく簡単かつ確実にVリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛けることができる。
【0050】
また、ベルト係止部6・7は、回転体10の側面2dの外周縁近くに設けられている。これにより、回転体10の外周から外周縁をまたいでベルト係止部6・7にかけるVリブドベルト4の長さを短くすることができる。これにより、例えば、ベルト係止部6・7を回転体10の回転中心O周りに形成させて回転体10の外周から外周縁をまたいでベルト係止部6・7にかけるVリブドベルト4の長さを長くした場合と比べて、Vリブドベルト4をベルト係止部6・7に確実かつ安定的に係止することができる。
【0051】
また、上記クランクプーリ2において、回転体10の側面2dの外周縁、即ち、プーリフランジ2bの外周縁は、曲面形状をしている。この構成によれば、回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいでベルト係止部6・7にVリブドベルト4を係止する際にVリブドベルト4と接触する回転体10の側面2dの外周縁、即ち、プーリフランジ2bの外周縁が曲面形状をしているため、Vリブドベルト4を回転体10に巻掛ける際のVリブドベルト4の損傷を防ぐことができる。
【0052】
また、上記クランクプーリ2において、ベルト係止部6・7は、Vリブドベルト4が係止される側面6dが曲面形状をしている。この構成によれば、回転体10の外周からプーリフランジ2bをまたいでベルト係止部6・7にVリブドベルト4が係止される際に、ベルト係止部6・7のVリブドベルト4が係止される側面6dが曲面形状をしているため、Vリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛ける際のVリブドベルト4の損傷を防ぐことができる。
【0053】
また、上記クランクプーリ2において、ベルト係止部6・7は、回転体10の回転中心Oから当該ベルト係止部6・7に延びる線を対称軸Yとして線対称な形状である。この構成によれば、回転体10の回転方向が時計回りでも反時計回りであってもVリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛けることができる。
【0054】
また、上記クランクプーリ2において、ベルト係止部6のVリブドベルト4を掛けて係止する側の側面6dと回転体10の側面2dとの成す角度が、90°から135°の範囲である。この構成では、ベルト係止部6のVリブドベルト4を掛けて係止する側の側面6dとクランクプーリ2の側面2dとの成す角度を90°以上にしている。これにより、ベルト係止部6のVリブドベルト4を掛けて係止する側の側面6dがVリブドベルト4に対して鋭角にならず、Vリブドベルト4をクランクプーリ2に巻掛ける際のVリブドベルト4の損傷を防ぐことができる。また、ベルト係止部6のVリブドベルト4を掛けて係止する側の側面6dとクランクプーリ2の側面2dとの成す角度を、135°以下にしている。これにより、ベルト係止部6に掛けたVリブドベルト4をスリップさせずに係止することができる。
【0055】
また、上記クランクプーリ2において、2つのベルト係止部6・7があり、当該2つのベルト係止部6・7は回転体10の回転中心Oを点対称とした位置にある。この構成によれば、クランクプーリ2が回転する際の重心バランスを保つことができる。また、ベルト係止部が2つしかないため、ベルト係止部6・7にVリブドベルト4を掛けてクランクプーリ2を回転させてVリブドベルト4を回転体10の外周上に巻掛ける際、Vリブドベルト4が回転体10の外周上に移動するのを邪魔しにくい構成とすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図9を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0057】
上記第1実施形態では、クランクプーリ2の回転体10の側面2dに、2つのベルト係止部6・7を設ける構成としている。しかし、第2実施形態に係るクランクプーリ102においては、ベルト係止部は、複数、即ち、2つよりも多くてもよい。具体的には、図9に示すように、クランクプーリ102の側面102dに、4つのベルト係止部103・104.105・106を設ける構成としている。なお、各4つのベルト係止部は、周方向等間隔の位置に配置されている。こうすることにより、ベルト係止部が2つの場合と比べてクランクプーリ102が回転する際の重心バランスをより保つことができる。
【0058】
もっとも、図9に示すように、ベルト係止部が4つもあると、Vリブドベルト4を回転体10の外周からベルト係止部104に係止させてクランクプーリ102を第一回転方向Aに回転させた場合、Vリブドベルト4が回転体10の外周上へと移動する際にVリブドベルト4がベルト係止部105と接触してVリブドベルト4の進路を邪魔する場合がある。とすれば、上記点に関してはベルト係止部が2つの場合の方に利点があるといえる。
【0059】
ただし、上記ベルト係止部105がVリブドベルト4の進路を邪魔する問題に対しては、4つのベルト係止部103・104.105・106を取外し可能とすることで解決することができる。即ち、第1実施形態では、ベルト係止部6・7は、回転体10と一体形成されているが、第2実施形態では、ベルト係止部103・104.105・106を取外し可能としている。具体的には、第2実施形態に係るクランクプーリ102では、図示しないが、クランクプーリ102の回転体10の側面102dにネジ穴を設けて、各ベルト係止部103・104.105・106に設けたネジ部分をネジ穴に螺合させることにより、取り付け、及び、取外し可能にしている。これにより、Vリブドベルト4が回転体10の外周上へと移動する際にVリブドベルト4がベルト係止部105と接触してVリブドベルト4の進路を邪魔する場合、ベルト係止部105を取り外すことで上記問題を解決することができる。
【0060】
(まとめ)
上記で説明したように、第2実施形態に係るクランクプーリ102において、ベルト係止部が、複数(4つのベルト係止部103・104.105・106)ある。上記の構成によれば、ベルト係止部が複数あるため、Vリブドベルト4をクランクプーリ102に巻掛ける際に、最寄のベルト係止部を利用することができる。例えば、クランクプーリ102が重い場合やクランクプーリ102の直径が大きい場合にベルト係止部が1個であると、クランクプーリ102を最大半回転させなければならず手間がかかる。しかし、ベルト係止部が複数あると、クランクプーリ102を最寄のベルト係止部があるところまで回転させればよく、手間を軽減させることができる。
【0061】
また、クランクプーリ102において、4つのベルト係止部103・104.105・106は取外し可能である。この構成によれば、Vリブドベルト4をクランクプーリ102に巻掛けた後に当該4つのベルト係止部103・104.105・106を取り外すことができる。これにより、使用するときにだけ当該4つのベルト係止部103・104.105・106をクランクプーリ102に取付けて使用することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、図10を参照しつつ、本願発明の第3実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0063】
即ち、上記第1実施形態では、回転体10の側面2dに、2つのベルト係止部6・7を設ける構成としている。しかし、第3実施形態に係るクランクプーリ202においては、図10に示すように、ベルト係止部は1つであり(ベルト係止部206)、回転体10の側面202dにはベルト係止部206による重心バランスのズレを補正するための穴207が設けられている
【0064】
(まとめ)
上記で説明したように、第3実施形態に係るクランクプーリ202において、ベルト係止部は1つであり(ベルト係止部206)、クランクプーリ202の回転体10にはベルト係止部206による重心バランスのズレを補正するための穴207が設けられている。この構成によれば、ベルト係止部を1つにすることができ、コストダウンを図ることができる。また、ベルト係止部が1つしかないため、ベルト係止部206にVリブドベルト4を掛けてクランクプーリ202を回転させてVリブドベルト4を回転体10の外周上に巻掛ける際、Vリブドベルト4が回転体10の外周上に移動するのを邪魔しない構成とすることができる。また、回転体10にはベルト係止部206が1つであることによる重心バランスのズレを補正するための穴207が設けられている。これにより、ベルト係止部206が1つであることによる重心バランスのズレをキャンセルしてクランクプーリ202の回転バランスを保つことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本願発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0066】
例えば、第2実施形態では、4つのベルト係止部103・104.105・106が取外し可能であるとしている。これに限らず、クランクプーリ102の回転体10の側面102dに複数のネジ穴を設けて、1つのベルト係止部を便宜使用状況に応じてネジ穴に螺合させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
2 クランクプーリ
2d クランクプーリの側面
3 オルタネータプーリ
4 Vリブドベルト
6・7 ベルト係止部
10 回転体
O クランクプーリの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の外周にベルトが巻掛けられるプーリであって、
前記回転体の少なくとも一方の側面に、前記ベルトを前記回転体に巻掛ける際に前記回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを係止するためのベルト係止部が形成されていることを特徴とするプーリ。
【請求項2】
前記回転体の外周縁は、曲面形状をしていることを特徴とする請求項1に記載のプーリ。
【請求項3】
前記ベルト係止部は、前記ベルトが係止される面が曲面形状をしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプーリ。
【請求項4】
前記ベルト係止部は、前記回転体の回転中心から当該ベルト係止部に延びる線を対称軸として線対称な形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプーリ。
【請求項5】
前記ベルト係止部は、複数あることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプーリ。
【請求項6】
前記ベルト係止部は2つであり、
当該2つのベルト係止部は前記回転体の回転中心を点対称とした位置にあることを特徴とする請求項5に記載のプーリ。
【請求項7】
前記ベルト係止部は1つであり、
前記回転体には前記ベルト係止部による重心バランスのズレを補正するための穴が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプーリ。
【請求項8】
前記ベルト係止部のベルトを掛けて係止する側の側面と前記回転体の側面との成す角度が、90°から135°の範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプーリ。
【請求項9】
前記ベルト係止部は取外し可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプーリ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のプーリを含む二つ以上のプーリの間に、周長方向に伸縮変形可能なベルトを巻掛けするベルト取付方法であって、
請求項1乃至9のいずれかに記載のプーリを以下のように用いることを特徴とするベルト取付方法。
(a)前記請求項1乃至9のいずれかに記載のプーリを除く全てのプーリにベルトを巻掛けすると共に、前記請求項1乃至9のいずれかに記載のプーリの回転体の外周から外周縁をまたいで掛けられた前記ベルトを前記ベルト係止部に係止する。
(b)前記ベルト係止部において、前記ベルトを係止する側を回転方向として前記請求項1乃至9のいずれかに記載のプーリを回転させる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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