説明

プーリユニットの車体取付構造

【課題】ワイヤの牽引力による車体側への負荷をより軽減することが可能なプーリユニットの車体取付構造を得る。
【解決手段】ブラケット7をプーリ6の回転軸Axの軸方向に沿って長く形成し、ブラケット7の長手方向両端部(上端部7aおよび下端部7b)を車体2に固定するとともに、ブラケット7の長手方向中間部7cにプーリユニット5を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリユニットの車体取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドドア開閉装置において、ワイヤが掛けられるプーリを含むプーリユニットを車体に直接取り付ける構造が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構造では、氷結時など、プーリが円滑に回転しにくい状態でワイヤからプーリに牽引力が作用すると、プーリユニットを車体に取り付ける部分に不本意なねじりトルクが作用することになって好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤの牽引力による車体側への負荷をより軽減することが可能なプーリユニットの車体取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、ブラケットをプーリの回転軸の軸方向に沿って長く形成し、ブラケットの長手方向両端部を車体に固定するとともに、ブラケットの長手方向中間部にプーリユニットを取り付けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワイヤの牽引力によってプーリユニットにねじりトルクが作用した場合には、ブラケットをねじり変形させることで、上記牽引力による車体側への負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかるプーリユニットの車体取付構造を搭載した車両の側面図である。
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるプーリユニットの車体取付構造を車内側から見た斜視図である。
【図5】図5は、図1のV−V断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかるプーリユニットの車体取付構造のブラケットおよびプーリユニットを示す分解斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかるプーリユニットの車体取付構造のブラケットおよびプーリユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお図中、FRは車両前方、UPは車両上方、WDは車幅方向を示す。
【0010】
本実施形態にかかるプーリユニットの車体取付構造は、前後スライド可能なスライドドア3を備えた車両1に適用される。スライドドア3は、車体2に、その側面2aに形成されたレール2bに沿って前後スライド可能に取り付けられており、車体2の側面開口部2cを開閉するものである。図2に示すように、レール2bは車幅方向外側(図2では左側)に開放された略C字状断面を有しており、スライドドア3に固定されたローラユニット3aがレール2b内に収容され、ローラ3bがレール2bの内側面上を転動することで、スライドドア3がレール2bの延設方向、すなわち前後方向に移動するようになっている。
【0011】
本実施形態では、ワイヤ4(図3参照)によってスライドドア3を前後方向に牽引することで、スライドドア3を開閉させることができるようになっている。すなわち、ワイヤ4には、スライドドア3を前方側から前方に向けて牽引する部分と、後方側から後方へ向けて牽引する部分とがあるが、このうち後方から牽引する部分については、図3に示すように、レール2bの後端部に設けられたプーリユニット5に含まれるプーリ6に掛けられている。なお、ワイヤ4は、車室内側の一部では、チューブ4aで被覆されている。
【0012】
プーリユニット5は、図4等に示すように、ブラケット7を介して車体2に取り付けられる。ブラケット7は、上下方向に細長い帯板状の金属部材から構成されており、その上端部7aおよび下端部7bは、図4,図5等に示すように、ボルト8aやナット8b等の締結具8によって車体2に固定されている。具体的には、上端部7aは、ウインドウパネル11の下縁に沿って前後方向に伸びて好適には閉断面を有する前後延伸部材2dに結合され、下端部7bは、ホイルハウス2eの上縁部から後方に伸びて好適には閉断面を有する前後延伸部材2fに結合されている。
【0013】
そして、図4〜図7に示すように、プーリユニット5は、ブラケット7の長手方向(上下方向)の中間部7cに、ボルト9aやナット9b等の締結具9によって取り付けられている。プーリユニット5は、図3に示すように、プーリ6と、当該プーリ6を覆うケース5aとを有し、プーリ6はケース5aに回転可能に保持されている。プーリ6の回転軸Axは上下方向すなわちブラケット7の長手方向に略沿っている。
【0014】
また、ケース5aのうちプーリ6が収容されるプーリ収容部5bは、回転軸Axの径方向に張り出している。そして、プーリ収容部5bに対応して、車体2の外板としてのボディサイドアウタパネル2gには貫通孔2hが形成されるとともに、ブラケット7の前縁には切欠7dが形成され、プーリ収容部5bの車幅方向外側の一部が、これら切欠7dおよび貫通孔2hから車室外に露出している。なお、車室外に露出した部分は、車室側からカバー12(図1等参照)で覆われて隠されている。また、ワイヤ4のうち、プーリユニット5から車室外側に出る部分は、レール2b内で配策されている。
【0015】
また、プーリユニット5は、図4,図6等に示すように、プーリ収容部5bから上下方向にそれぞれ伸びる板状のフランジ部5cを有しており、このフランジ部5cをブラケット7の切欠7dの上下両縁部に重ね合わせて、当該上下両縁部とフランジ部5cとを締結具9によって結合している。かかる構成により、回転軸Axを、ブラケット7の中間部7cのける厚み方向の中心位置に近付けてある(図3参照)。
【0016】
また、図5に示すように、ブラケット7は、上端部7aと中間部7cとの間、ならびに下端部7bと中間部7cとの間でそれぞれ屈曲され、これら各部には、車室外側に膨出してボディサイドアウタパネル2gの内面と間隔をあけて略平行に対向する外板対向部7eが形成されている。そして、外板対向部7eとボディサイドアウタパネル2gとの間に、発泡性材料や弾性材料等からなる可撓性の緩衝部材13が介装されている。
【0017】
また、ブラケット7の幅方向略中央部には、長手方向(すなわち上下方向)に略沿うビード7gを延設し、曲げ剛性あるいはねじり剛性の調整を図っている。
【0018】
さらに、本実施形態では、ブラケット7の中間部7cを、車体2に、ワイヤ4による牽引方向(本実施形態では前方)に変位可能に取り付けてある。本実施形態では、図6に示すように、中間部7cには貫通孔7fを形成するとともに、この貫通孔7fに対応して、車体2には、締結具10としてのスタッドボルト10aを車幅方向内側に突出する状態で固着する。また、貫通孔7fは少なくとも牽引方向(本実施形態では前方)に沿って広く形成し、スタッドボルト10aに対して中間部7cが牽引方向に相対移動できるようにする。そして、貫通孔7fにスタッドボルト10aを貫通させ、スタッドボルト10aの先端側のねじ部に、ナット10bを螺結する。ただし、ナット10bの締め付けトルクは、面方向に所要の弾性力が作用した場合に中間部7cとボディサイドアウタパネル2gとが相互に面方向にずれることができる程度に設定される。あるいは、ダブルナットとしたり、スプリングワッシャ等の介在物を設けたりしてもよい。
【0019】
以上の構成においては、プーリユニット5内でプーリ6が自在に回転できる状態であれば、ワイヤ4の牽引力(張力)によってプーリユニット5に作用するねじりモーメントは小さい。しかし、氷結等が原因で、プーリ6が回転しにくくなっている場合は、ワイヤ4の牽引力によって、プーリユニット5にねじりモーメントが生じてしまう。
【0020】
ここで、本実施形態では、上述したように、ブラケット7をプーリ6の回転軸Axの軸方向に略沿って長く形成し、その上端部7aおよび下端部7bを車体2に固定し、中間部7c(好適には上下方向の中央部)にプーリユニット5を取り付けてある。したがって、ワイヤ4の牽引力によってプーリユニット5にねじりモーメントT(図3参照)が生じた場合、ブラケット7は、プーリユニット5を取り付けた中間部7cでのねじり量(ねじり角度)が最大で、上端部7aおよび下端部7bに近付くにつれてねじり量(ねじり角度)が徐々に小さくなる形状にねじれる。したがって、本実施形態では、かかるブラケット7のねじり変形によってエネルギを吸収し、プーリユニット5を車体2に直接固定する場合に比べて、車体2への負荷を軽減することができる。なお、ブラケット7の変形は弾性変形の範囲内となるように設定するのが好ましい。
【0021】
このとき、本実施形態では、切欠7dにプーリ収容部5bを挿入して、プーリ6の回転軸Axを中間部7cの厚み方向の中央位置に近付けてあるため、車外側のワイヤ4から牽引された場合も、車内側のワイヤ4から牽引された場合も、同様にねじれることができ、ねじり方向によってエネルギ吸収量の差が生じるのを抑制することができる。
【0022】
さらに、本実施形態では、ブラケット7と車体2の外板としてのボディサイドアウタパネル2gとの間に可撓性の緩衝部材13を介装したため、ブラケット7の振動によって音や振動が生じるのを抑制することができるとともに、ブラケット7がねじれた際には、この緩衝部材13を挟んで圧縮することによってエネルギを吸収して、車体側への負荷をより一層軽減することができる。
【0023】
そして、本実施形態では、ブラケット7の中間部7cを、車体2に、ワイヤ4によるプーリ6の牽引方向に変位可能に取り付けた。すなわち、プーリ6およびプーリユニット5には、図7に示すように、ワイヤ4から前方への力(牽引力)Fが作用するのであるが、同図に示すように、本実施形態にかかるブラケット7は、前方(ワイヤ4に牽引される側)に凸となる弓形に曲げ変形可能であるため、この曲げ変形によってエネルギを吸収して、牽引力による車体2への負荷を軽減することができる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ブラケットや車体構造について、形状、長さ、幅、姿勢(延伸方向)等のスペックは、適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
2 車体
4 ワイヤ
5 プーリユニット
6 プーリ
7 ブラケット
7a 上端部(端部)
7b 下端部(端部)
7c 中間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが掛けられるプーリを含むプーリユニットをブラケットを介して車体に取り付けるプーリユニットの車体取付構造において、
前記ブラケットをプーリの回転軸の軸方向に略沿って長く形成し、
前記ブラケットの長手方向両端部を車体に固定するとともに、前記ブラケットの長手方向中間部に前記プーリユニットを取り付けたことを特徴とするプーリユニットの車体取付構造。
【請求項2】
前記ブラケットの長手方向中間部を、車体に、前記ワイヤによる前記プーリの牽引方向に変位可能な状態で取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のプーリユニットの車体取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−208467(P2010−208467A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56449(P2009−56449)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】