説明

プーリ抜き工具

【課題】押込み部の径がプーリに圧入された軸の径よりも大きい場合であっても、プーリを軸から抜き出すことができるプーリ抜き工具を提供する。
【解決手段】軸8が圧入されたプーリ5を軸8から抜き出すプーリ抜き工具であって、基部1と、基部1に貫通して設けられ、回転することで基部1に対して垂直方向に進退可能な押込み部2と、基部1の端部に基端部が回動可能に設けられ、先端部がプーリ5を係止する2本の挟持腕3と、押込み部2の先端部に着脱可能に設けられ、押込み部2の径より小さい径に形成された当接体7とを備え、挟持腕3でプーリ5を係止し、当接体7を軸8に当接させたまま、押込み部2を回転させて、押込み部2を基部1に対してプーリ5側に移動させることで、プーリ5から軸8を押し出して、軸8からプーリ5を抜き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基部と、この基部に貫通して設けられた押込み部と、基部の端部に設けられた複数の挟持腕とを備えたプーリ抜き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸が圧入されたプーリを前記軸から抜き出すプーリ抜き工具であって、基部と、前記基部に貫通して設けられ、回転することで前記基部に対して垂直方向に進退可能な押込み部と、前記基部の端部に基端部が回動可能に設けられ、先端部が前記プーリを係止する一対の挟持腕とを備えたプーリ抜き工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このプーリ抜き工具では、前記挟持腕で前記プーリを係止し、前記押込み部を前記軸の端面に当接させたまま、前記押込み部を回転させて、前記押込み部を前記基部に対して前記プーリ側に移動させることで、前記プーリから前記軸を押し出して、前記プーリを前記軸から抜き出す。
【0003】
【特許文献1】特開2001−162551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このものの場合、押込み部の径が軸の径より大きいと、押込み部がプーリにも当接してしまい、押込み部を軸だけに当接させることができず、プーリを軸から抜き出すことができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、押込み部の径が軸の径より大きい場合であっても、プーリを軸から抜き出すことができるプーリ抜き工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るプーリ抜き工具は、軸が圧入されたプーリを前記軸から抜き出すプーリ抜き工具であって、基部と、前記基部に貫通して設けられ、回転することで前記基部に対して垂直方向に進退可能な押込み部と、前記基部の端部に基端部が回動可能に設けられ、先端部が前記プーリを係止する複数の挟持腕と、前記押込み部の先端部に着脱可能に設けられ、前記押込み部の径より小さい径に形成された当接体とを備え、前記挟持腕で前記プーリを係止し、前記当接体を前記軸の端面に当接させたまま、前記押込み部を回転させて、前記押込み部を前記基部に対して前記プーリ側に移動させることで、前記プーリから前記軸を押し出して、前記プーリを前記軸から抜き出す。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るプーリ抜き工具によれば、押込み部の径が軸の径より大きい場合であっても、プーリを軸から抜き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るプーリ抜き工具を軸8が圧入されたプーリ5に取り付けたときの側面図、図2は図1の当接体7を除いたプーリ抜き工具の側面図、図3の(a)〜(c)は図1の当接体7の側面図である。
実施の形態1に係るプーリ抜き工具は、板形状の基部1と、この基部1に貫通して設けられ、回転することで基部1に対して垂直方向に進退可能な押込み部2と、基部1の両端部であって、互いに対向した位置に設けられた一対の挟持腕3とを備えている。
挟持腕3は、基部1の端部に第1の回動軸4aを介して一端部が回動可能に設けられた第1の挟持腕部3aと、この第1の挟持腕部3aの他端部に第2の回動軸4bを介して一端部が回動可能に設けられた第2の挟持腕部3bと、この第2の挟持腕部3bの他端部に第3の回動軸4cを介して一端部が回動可能に設けられた第3の挟持腕部3cとを有している。
第3の挟持腕部3cの他端部には、プーリ5を係止するために突出した爪部6が形成されている。
この挟持腕3は、第1の挟持腕部3a、第2の挟持腕部3bおよび第3の挟持腕部3cの回動角度を調節することで、様々な大きさの径のプーリ5に対して、爪部6により係止することができる。
【0009】
押込み部2の先端部は、軸線方向に沿って雌ネジ部2aが形成されている。
また、押込み部2の先端部には、押込み部2の径より小さい径に形成された当接体7が設けられている。当接体7の基端部には、押込み部2の雌ネジ部2aと螺着可能な雄ネジ部7aが形成されており、当接体7を回転させることで、簡単に当接体7を押込み部2に着脱することができる。
なお、押込み部2の先端部に軸線方向に沿って雄ネジ部を形成し、当接体7の基端部に押込み部2の雄ネジ部と螺着可能な雌ネジ部を形成してもよい。
当接体7は複数個用意されており、それぞれは、径および長さが異なるように形成されている。これにより、プーリ5に圧入された軸8の径に合わせて当接体7を選択することができ、当接体7をプーリ5に当接させずに、当接体7を軸8に当接させることができる。
当接体7の先端部には、軸線方向に突出した突起部7bが形成されている。この突起部7bを軸8の端面に形成された図示しない凹部に係合させることで、軸8の端面に対する当接体7の滑りを抑制することができる。
【0010】
次に、実施の形態1に係るプーリ抜き工具を用いて、軸8が圧入されたプーリ5から軸8を抜き出す手順について説明する。
まず、軸8の径より小さい径に形成された当接体7を選択して、その当接体7を押込み部2の先端部に取り付ける。
次に、第1の挟持腕部3a、第2の挟持腕部3bおよび第3の挟持腕部3cの回動角度を調節し、爪部6にプーリ5の周縁部を係止させる。
さらに、押込み部2を一方向に回転させて、押込み部2を基部1に対してプーリ5側に移動させて、当接体7と軸8の端面とを当接させる。このとき、当接体7の突起部7bを軸8の端面の凹部に係合させて、軸8の端面に対して当接体7が滑らないようにする。
最後に、当接体7と軸8の端面とを当接させたまま、押込み部2を基部1に対してプーリ5側にさらに移動させることで、軸8をプーリ5から押し出して、プーリ5を抜き出す。
【0011】
以上説明したように、実施の形態1に係るプーリ抜き工具によると、押込み部2の径がプーリ5に圧入された軸8の径より大きい場合であっても、軸8の径より小さい径に形成された当接体7を押込み部2の先端に取り付けることで、プーリ5から軸8を押し出して、プーリ5を軸8から抜き出すことができる。
【0012】
また、当接体7は、押込み部2に螺着されているので、簡単に当接体7を押込み部2に着脱することができる。
【0013】
また、一対の挟持腕3が互いに対向して配置されているので、挟持腕3は安定してプーリ5を係止することができる。
【0014】
また、軸8が圧入されたプーリ5と軸8との間に、プーリ5および軸8に係合したキー9が設けられた場合であっても、キー9に当たらない大きさの径に形成された当接体7を選択し、押込み部2の先端部に当接体7を取り付けることで、当接体7をプーリ5およびキー9に当接させずに、当接体7を軸8の端面に当接させることができるので、プーリ5から軸8を押し出して、プーリ5を軸8から抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係るプーリ抜き工具をプーリに取り付けたときの側面図である。
【図2】図1の当接体を除いたプーリ抜き工具の側面図である。
【図3】図3の(a)〜(c)は図1の当接体の側面図である
【符号の説明】
【0016】
1 基部、2 押込み部、2a 雌ネジ部、3 挟持腕、3a 第1の挟持腕部、3b 第2の挟持腕部、3c 第3の挟持腕部、4a 第1の回動軸、4b 第2の回動軸、4c 第3の回動軸、5 プーリ、6 爪部、7 当接体、7a 雄ネジ部、7b 突起部、8 軸、9 キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸が圧入されたプーリを前記軸から抜き出すプーリ抜き工具であって、
基部と、
前記基部に貫通して設けられ、回転することで前記基部に対して垂直方向に進退可能な押込み部と、
前記基部の端部に基端部が回動可能に設けられ、先端部が前記プーリを係止する複数の挟持腕と、
前記押込み部の先端部に着脱可能に設けられ、前記押込み部の径より小さい径に形成された当接体とを備え、
前記挟持腕で前記プーリを係止し、前記当接体を前記軸の端面に当接させたまま、前記押込み部を回転させて、前記押込み部を前記基部に対して前記プーリ側に移動させることで、前記プーリから前記軸を押し出して、前記プーリを前記軸から抜き出すことを特徴とするプーリ抜き工具。
【請求項2】
前記押込み部の先端部と前記当接体とは、螺着されていることを特徴とする請求項1に記載のプーリ抜き工具。
【請求項3】
前記挟持腕は、互いに対向して一対に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプーリ抜き工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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