説明

プーリ構造体

【課題】ゴム弾性体を使用することなく、回転体に生じた回転変動を速やかに減衰させることが可能なプーリ構造体を提供することである。
【解決手段】プーリ2に設けられた複数の第1磁石17は、周方向に隣り合う2つの第1磁石17の同極の磁極面が同極間磁性体25を挟んで対向する状態と異極の磁極面が異極間磁性体26を挟んで対向する状態とが、周方向に交互に現れるように構成されている。また、ハブ3に設けられた複数の第2磁石18は、第1磁石17又は磁性体25,26と対向する磁極面において周方向に交互に異なる磁極が現れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転可能な2つの回転体を有するプーリ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、相対回転可能に連結された2つの回転体を有するプーリ構造体として、2つの回転体の一方に回転変動が生じたときに、その回転変動を減衰させるための構成を備えたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のプーリ構造体は、ベルトが巻回されるプーリと、プーリの内側において、このプーリに対して相対回転可能に設けられ、且つ、エンジンの出力軸に連結されるハブと、プーリとハブとを連結するゴム弾性体(ゴムカップリング)とを有する。そして、エンジンのトルク変動に応じてハブに回転変動が生じたときには、ハブとプーリの間のゴム弾性体が弾性変形することによって、その回転変動を吸収するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に記載のプーリ構造体は、クランクシャフトに組み付けられたダンパ本体と、ダンパ本体内側に設けられたダンパマスとを有する。ダンパマスには、周方向に配置された複数の永久磁石が固定され、一方、ダンパ本体には、ダンパマスの複数の永久磁石と対向する銅板が固定されている。そして、クランクシャフトに生じた捩り振動に起因して、ダンパ本体とダンパマスの間に回転速度差が発生すると、永久磁石と銅板の間の速度差によって銅板に渦電流が発生する。このとき、銅板に発生した渦電流によって2つの回転体(ダンパ本体とダンパマス)の間に両者間の速度差を小さくするような力が作用し、ダンパ本体の回転変動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−68540号公報
【特許文献2】特開2002−286094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のプーリ構造体のように、2つの回転体がゴム弾性体で連結されている場合には、ゴム弾性体の経年劣化や疲労破壊に起因する故障が発生する。また、一方の回転体に過大な回転変動が生じたときには、ゴム弾性体にその弾性変形の範囲を超える過大な力が作用し、ゴム弾性体が破損してしまう虞もある。さらに、ゴム弾性体の弾性変形時の発音が問題になる場合もある。
【0007】
一方、特許文献2のプーリ構造体のように、永久磁石と銅板との間の速度差に起因して銅板に生じる渦電流によって、2つの回転体に両者の速度差を小さくするような抑制力を作用させる構成では、ゴム弾性体を用いる必要がないことから、上述したような問題は生じない。しかし、渦電流により2つの回転体に作用させることのできる抑制力はかなり小さいものであり、一方の回転体に生じる回転変動が大きい場合には、その回転変動を速やかに減衰させることは困難である。
【0008】
本発明の目的は、ゴム弾性体を使用することなく、回転体に生じた回転変動を速やかに減衰させることが可能なプーリ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明のプーリ構造体は、第1回転体と、前記第1回転体に対して相対回転可能な第2回転体と、前記第1回転体に設けられた複数の第1磁石と、前記第2回転体に前記複数の第1磁石と対向可能に設けられた複数の第2磁石を有し、
前記複数の第1磁石は、回転体の周方向に磁性体を挟んで配置されるとともに、周方向に隣り合う2つの第1磁石の磁極面が前記磁性体を介して対向し、さらに、前記複数の第1磁石は、周方向に隣り合う2つの前記第1磁石の同極の磁極面が前記磁性体を挟んで対向する状態と異極の磁極面が前記磁性体を挟んで対向する状態とが、周方向に交互に現れるように構成されており、
前記複数の第2磁石は、回転体の周方向に配置されるとともに、それらの磁極面が前記第1磁石又は前記磁性体と対向し、さらに、前記複数の第2磁石は、それらの磁極面において周方向に交互に異なる磁極が現れるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、第1回転体に設けられた複数の第1磁石は周方向に配置されており、それらの磁極面は磁性体を挟んで周方向に対向している。また、複数の第1磁石は、周方向に隣り合う2つの第1磁石の同極の磁極面同士が磁性体を挟んで対向する状態と、異極の磁極面同士が磁性体を挟んで対向する状態とが、周方向に交互に現れるように構成されている。そして、異極の磁極面に挟まれた磁性体(以下、異極間磁性体と称する)では周方向に磁束が通過するのに対して、同極の磁極面に挟まれた磁性体(以下、同極間磁性体と称する)においては、両側2つの第1磁石からの磁束が外部へ流出する(あるいは、外部から流入した磁束が2つの第1磁石へ流れる)ことになる。そのため、この同極間磁性体と、第1磁石や磁性体と対向する磁極面を有する第2磁石との間に、磁束の流れが生じる。従って、第1回転体と第2回転体との間に回転速度差(位相差)が生じて、第1磁石(磁性体)と第2磁石の位相がずれたときには、前記同極間磁性体と第2磁石との間に磁力によって、第1回転体と第2回転体の間に、回転速度差を解消するようなトルクが作用することから、一方の回転体に生じた回転変動が減衰される。
【0011】
ここで、第1回転体と第2回転体に、回転速度差が小さくなるように作用する磁力は、従来の渦電流によって回転体に作用する抑制力に比べると、はるかに強力である。そのため、一方の回転体に大きな回転変動が生じた場合でも、その回転変動を速やかに減衰させることが可能となる。また、回転変動を減衰するためにゴム弾性体を使用しないことから、ゴム弾性体の経年劣化や疲労破壊、あるいは、ゴム弾性体の弾性変形時の発音といった問題が生じない。
【0012】
また、本発明では、第1磁石の磁化方向(磁極面の向く方向)は周方向である一方で、第2磁石の磁化方向は第1磁石と対向する方向であって、周方向とは異なるため、第1磁石と第2磁石の間では直接磁束の流れは生じず、磁力が作用しない。そして、この第1磁石や第1磁石と同じく周方向に磁束が流れる異極間磁性体が、第2磁石との間で磁力が作用する前記同極間磁性体の間に介在した構造となっている。従って、第1回転体と第2回転体との間の位相差が小さく、同極間磁性体と第2磁石の位相が少しずれた程度では、同極間磁性体と第2磁石とはまだ大きく離れた状態であることから、両者の間に作用する磁力は小さい。従って、回転速度差を解消するように作用するトルクが大きくなりすぎることがなく、第1回転体と第2回転体の間で共振が発生するのを防止できる。
【0013】
さらに、異極間磁性体はその内部において磁束が周方向に流れることから、この異極間磁性体と両側の2つの第1磁石とからなる磁石構造体は、周方向に磁化された1つの大きな磁石と同等とみなすことができる。つまり、1つの大きな磁石を使用した場合に対して、この大きな磁石の一部を磁性体で置換して磁性体よりも高価な磁石部分の量を減らしつつ、同等の回転変動減衰性能を発揮することができる。
【0014】
第2の発明のプーリ構造体は、前記第1の発明において、前記第2磁石は、その周方向両端面がそれぞれ回転体の半径方向と平行な、扇形形状に形成され、前記第1磁石は、ほぼ直方体形状に形成され、異極の磁極面が対向する2つの前記第1磁石と、これら2つの第1磁石の異極の磁極面の間に介在する前記磁性体とで構成される、磁石構造体が、前記第2磁石と同心状の扇形形状であることを特徴とするものである。
【0015】
扇形の第2磁石の周方向両端面が回転体の半径方向と平行ということは、第2磁石の扇形の中心は、回転体の中心と一致するということを意味する。その上で、周方向に配置される第1磁石や磁性体を、第2磁石と同様に、回転体と中心位置が一致する扇形にすることは、磁石配置をコンパクトにしつつ、磁気エネルギーを効果的に用いることができるという観点から、当然ながら望ましい。しかし、磁石製造の容易さやコスト等の観点からは、磁石形状は扇形形状よりも直方体形状の方が好ましい。そこで、本発明では、第1磁石をほぼ直方体形状にした上で、異極の磁極面が対向する2つの第1磁石と、これら2つの第1磁石の異極の磁極面の間に介在する異極間磁性体とで構成される、磁石構造体が、これに対応する第2磁石と中心位置が等しい同心状の扇形形状となっている。
【0016】
第3の発明のプーリ構造体は、前記第1又は第2の発明において、前記複数の第2磁石の、前記第1磁石とは反対側の磁極面に、磁性体からなるヨークが設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、第2磁石の、第1磁石や磁性体とは反対側の磁極面からの磁束の漏洩を極力抑えることができる。
【0018】
第4の発明のプーリ構造体は、前記第1〜第3の何れかの発明において、回転体の周方向に配置された、前記複数の第1磁石と前記複数の第2磁石が、それぞれ、環状の磁石体を構成していることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、複数の磁石及び複数の磁性体が、全周にわたって分散して配置されることから、第1回転体と第2回転体との間で、周方向に関して均等にトルクを作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る補機駆動システムの概略構成図である。
【図2】プーリ構造体の回転軸を含む面に関する断面図である。
【図3】プーリとハブとの間に配置された環状磁石体の斜視図である。
【図4】(a)は第1環状磁石体を回転軸方向から見た図、(b)は第2環状磁石体を回転軸方向から見た図である。
【図5】第1環状磁石体の一部を半径方向外側から見た図である。
【図6】図4(b)の2つの第1磁石と異極間磁性体を1つの大きな扇形磁石で置換した、環状磁石体を示す図である。
【図7】プーリとハブの間に回転速度差がないときの、第1環状磁石体と第2環状磁石体の位置関係を示す図である。
【図8】プーリとハブの間に小さな回転速度差があるときの、第1環状磁石体と第2環状磁石体の位置関係を示す図である。
【図9】プーリとハブの間に大きな回転速度差があるときの、第1環状磁石体と第2環状磁石体の位置関係を示す図である。
【図10】変更形態に係るプーリ構造体の、回転軸を含む面に関する断面図である。
【図11】別の変更形態のプーリ構造体の、回転軸を含む面に関する断面図である。
【図12】図11のプーリ構造体の環状磁石体を、回転軸方向から見た図である。
【図13】実施例1,2のプーリ構造体の、回転角とトルクの関係を示すグラフである。
【図14】実施例3,4のプーリ構造体の、回転角とトルクの関係を示すグラフである。
【図15】比較例のプーリ構造体の、回転角とトルクの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、自動車用エンジンの出力軸のトルクによって補機を駆動する、補機駆動システムに用いられるプーリ構造体に本発明を適用した一例である。
【0022】
図1は本実施形態の補機駆動システムの概略構成図である。図1に示すように、補機駆動システム100は、エンジンの出力軸101(レシプロエンジンのクランクシャフトや、ロータリーエンジンのエキセントリックシャフト等)に連結された駆動プーリ105と、ウォーターポンプやオルタネータ等の各種補機にそれぞれ連結された従動軸(補機軸)102,103と、従動軸102に取り付けられた従動プーリ104と、従動軸103に取り付けられた、本実施形態に係るプーリ構造体1のプーリ2と、駆動プーリ105、従動プーリ104、及び、プーリ構造体1のプーリ2にわたって架け渡された伝動ベルト106とを有する。尚、本実施形態では、伝動ベルト106として、ベルト長手方向に沿って互いに平行に延びる複数のVリブ106aを有するVリブドベルトが用いられている(図2参照)。
【0023】
出力軸101のトルクによって駆動プーリ105が回転駆動されると、その駆動プーリ105の回転により伝動ベルト106が駆動される。すると、この伝動ベルト106の走行に伴って、従動プーリ104やプーリ構造体1のプーリ2がそれぞれ回転駆動されることにより、従動軸102,103に連結されたウォーターポンプやオルタネータ等の補機がそれぞれ駆動される。
【0024】
次に、出力軸101から伝動ベルト106を介して伝達されるトルクを従動軸(補機軸)103に伝える、本実施形態のプーリ構造体1について詳細に説明する。図2は本実施形態のプーリ構造体1の回転軸Cを含む面に関する断面図である。図2に示すように、プーリ構造体1は、伝動ベルト106が巻回される円筒形状のプーリ2と、従動軸(補機軸)103に連結されるとともにプーリ2の内側に設けられたハブ3を備えている。尚、本実施形態においては、プーリ2が本発明における第1回転体に相当し、ハブ3が本発明における第2回転体に相当する。また、プーリ2とハブ3は軸受5を介して相対回転可能に連結されている。尚、図2における右側をプーリ構造体1の先端側、図2における左側(従動軸(補機軸)103側)をプーリ構造体1の基端側と定義して以下説明する。
【0025】
プーリ2の外周部には、その周方向に沿って延びる複数のV溝11が形成されている。そして、伝動ベルト106は、その腹面側に形成された複数のVリブ106aが、複数のV溝11にそれぞれ係合した状態で、プーリ2の外周に巻回される。
【0026】
ハブ3は、回転軸方向に沿って同軸状に並ぶ2つの円筒部材3a,3bを有し、これら2つの円筒部材3a,3bは図示しない部分において連結され、一体化されている。このハブ3の2つの円筒部材3a,3bには従動軸103の先端部が嵌挿され、ボルト等の適宜の連結手段によって従動軸103とハブ3とが相対回転不能に連結される。尚、プーリ2、及び、ハブ3を構成する2つの円筒部材3a,3bは、それぞれ非磁性材料(常磁性体や反磁性体、あるいは、反強磁性体)で形成されている。尚、非磁性材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金、あるいは、合成樹脂等を挙げられる。
【0027】
2つの円筒部材3a,3bのうち、基端側に位置する円筒部材3aに軸受5が設けられ、この軸受5を介してプーリ2が円筒部材3aに回転自在に連結されている。一方、先端側に位置する円筒部材3bと、プーリ2との間には、環状の磁石収容室16が形成され、この磁石収容室16内に、プーリ2に固定された1つの第1環状磁石体20と、ハブ3の円筒部材3bに固定された2つの第2環状磁石体21が収容されている。尚、プーリ2に固定された1つの第1環状磁石体20とハブ3に固定された2つの第2環状磁石体21は、プーリ2の回転軸Cの方向に隙間を空けて交互に配置されている。言い換えれば、第1環状磁石体20が、回転軸方向に関して、2つの第2環状磁石体21に挟まれている。
【0028】
図3は、図2に示される環状磁石体20,21の斜視図、図4(a),(b)は、環状磁石体20,21をプーリ2の回転軸C方向から見た図である。図2に示すように、第1環状磁石体20はその外周面においてプーリ2に固定されている。図3、図4(a)に示すように、この第1環状磁石体20は、複数の第1磁石17と複数の磁性体25,26で構成されている。一例として、図3、図4(a)には、12個の第1磁石17と12個の磁性体25(26)からなる第1環状磁石体20が示されている。
【0029】
複数の第1磁石17は、磁性体25(26)を挟んでプーリ2の周方向に配置されている。また、図4(a)に示すように、各第1磁石17はほぼ直方体形状に形成され、この図4(a)に矢印で示されるように、第1磁石17の磁化の方向は、回転軸方向から見たときの矩形の短手方向であって、プーリ2の周方向とほぼ平行である。つまり、第1磁石17の磁性体25(26)に接する周方向両端面がそれぞれ磁極面となる。さらに、複数の第1磁石17は、周方向に隣り合う2つの第1磁石17の同極の磁極面が磁性体25を挟んで対向する状態と異極の磁極面が磁性体26を挟んで対向する状態とが、周方向に交互に並ぶように構成されている。上記構成を、1つの第1磁石17に着目して別の表現で言い換えると、1つの第1磁石17の一方の磁極面は、磁性体25を介して別の第1磁石17の同極の磁極面と対向し、他方の磁極面は、磁性体26を介してまた別の第1磁石17の異極の磁極面と対向している。
【0030】
複数の磁性体25,26は、それぞれ磁性材料(好ましくは軟磁性材料)で形成されている。上述したように、複数の磁性体25,26は、共に複数の第1磁石17に挟まれた状態で配置されるが、隣り合う2つの第1磁石17の同極の磁極面に挟まれる磁性体25(同極間磁性体)と、2つの第1磁石17の異極の磁極面に挟まれる磁性体26(異極間磁性体)に分けられる。同極間磁性体25と異極間磁性体26は共に扇形形状に形成されているが、中心位置の異なる扇形形状となっている(同心の扇形でない)。この理由については、先に少し述べた、第1磁石17をほぼ直方体形状としている理由とあわせて、後ほど触れることにする。
【0031】
図2に示すように、第2環状磁石体21は、その内周面においてハブ3に固定されている。図3、図4(b)に示すように、この第2環状磁石体21は、周方向に並べて配置された複数(図では6つ)の第2磁石18からなる。これら複数の第2磁石18はそれぞれ扇形に形成されており、さらに、その扇形の中心は、プーリ2の回転中心と一致している。別の表現をすれば、扇形の第2磁石18の周方向両端面は、プーリ2の半径方向と平行である。また、第2磁石18の磁化の方向は、前記第1磁石17とは違ってプーリ2の回転軸方向となっており、第2磁石18の回転軸Cの方向における両面がそれぞれ磁極面となる。従って、図3からもわかるように、第2磁石18の一方の磁極面は、第1環状磁石体20を構成する第1磁石17あるいは磁性体25,26と対向する。
【0032】
尚、第1磁石17と第2磁石18は、それぞれ永久磁石で構成されている。永久磁石としては、ネオジム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコ、プラチナ、クロム、鉄、マンガン、アルミニウム、プラセオジムなどを成分とするものを使用できる。また、磁性体25,26を構成する磁性材料としては、軟鉄やフェライト(Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト)等が挙げられる。他に、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、ケイ素鋼等が使用できる。
【0033】
図5は、第1環状磁石体20の一部を半径方向外側から見た図であり、第1環状磁石体20における磁束の流れを示している。尚、図5では、第1磁石17と磁性体25(26)の区別が明確になるように、磁性体25(26)にハッチングを施してある。図5に示されるように、異極間磁性体26においては、一方の第1磁石17から他方の第1磁石17へ磁束が周方向に流れる。一方、同極間磁性体25は、第1環状磁石体20と外部との間で磁束を流出入させる作用を奏する。即ち、同極間磁性体25の両側の磁極がN極である場合には、両側2つの第1磁石17からの磁束が外部へ流れ出し、両側の磁極がS極である場合には、外部からの磁束が流入して2つの第1磁石17へ流れる。
【0034】
第1磁石17の磁化の向きは周方向である一方で、第2磁石18の磁化の向きは回転軸Cの方向であって周方向とは異なることから、第1磁石17と第2磁石18の間では直接磁束の流れは生じず、磁力が作用しない。しかしながら、同極間磁性体25において外部との間の磁束の流出入が生じるため、第2磁石18との間で磁束の干渉が生じ、これによって、同極間磁性体25と第2磁石18の間に磁力が発生することになる。
【0035】
また、先に述べたように、異極間磁性体26は、一方の第1磁石17から他方の第1磁石17へ磁束が周方向に流れるものであるが、この異極間磁性体26とその両側の2つの第1磁石17とからなる構成(図4(a)の角度βで示される部分)を、1つの大きな磁石とみなすことができる。即ち、図4(a)の第1環状磁石体20と、異極間磁性体26とその両側の2つの第1磁石17を1つの大きな磁石37で置き換えた、図6の環状磁石体51とでは、置き換えた部分での磁束の流れは共に周方向であり違いはない。別の言い方をすれば、図6の構成に対して、本実施形態では、図6の磁石37の一部を異極間磁性体26で置換することで高価な磁石部分の量を減らすことができ、さらに、図6の構成と同等の性能を発揮することができる。
【0036】
ところで、周方向に配置される第1磁石17や磁性体25(26)を、第2磁石18と同様に、プーリ2と中心位置が一致した扇形にすることは、磁石配置をコンパクトにしつつ、磁気エネルギーを効果的に用いることができるという観点から、当然ながら望ましい。しかし、扇形の磁石を製造する場合には弦方向に着磁する必要があり、表面磁束密度が不均一になりやすいなどの問題がある。また、磁石のエネルギーを効果的に使用できず、コストアップにつながるという問題もある。そこで、磁石製造の容易さやコスト等を考慮して、本実施形態では第1磁石17をほぼ直方体形状としている。
【0037】
その上で、本実施形態では、2つの直方体形状の第1磁石17と、これら2つの第1磁石の間に介在する異極間磁性体26とで構成される、磁石構造体(図4(a)の角度βで示される部分)が、これに対応する第2磁石18と中心位置が同じ扇形形状となっている。尚、上記構成の結果、2つの第1磁石17の異極に挟まれる異極間磁性体26の形状は、同極間磁性体25とは中心が異なる扇形となり、その両端面はプーリ2の半径方向と平行ではなくなっている。
【0038】
また、本実施形態では、図2に示すように、回転軸Cの方向に関して交互に配置された3つの環状磁石体21,20,21のうち、中央に位置する第1環状磁石体20はプーリ2の内面に直接取り付けられている。取付方法としては、接着や、圧入、あるいは、ネジやボルト等による固定等の方法を採用できる。一方、回転軸方向に関して外側に位置する2つの第2環状磁石体21は、それぞれ2つの環状の支持部材22,23を介してハブ3(円筒部材3b)の外周面に取り付けられている。尚、2つの支持部材22,23のハブ3への取付方法も、接着や、圧入、あるいは、ネジやボルト等による固定等の方法を採用できる。また、2つの第2環状磁石体21の支持部材22,23への取付方法も、接着や、圧入、あるいは、ネジやボルト等による固定等の方法を採用できる。
【0039】
支持部材22,23は、支持対象である2つの第2環状磁石体21(第2磁石18)の、第1環状磁石体20との対向面と反対側の面を覆うように設けられている。即ち、基端側(図2中左側)の支持部材22は第2環状磁石体21の基端側の面(図中左側の面)を覆うとともに、先端側の支持部材23は第2環状磁石体21の先端側の面(図中右側の面)を覆っている。また、2つの支持部材22,23は、それぞれ磁性材料(強磁性体)で形成されている。支持部材22,23を構成する磁性材料としては、軟鉄やフェライト(Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Ba系フェライト、あるいは、フェロックスプレーナ系フェライト)等が挙げられる。これらの磁性材料からなる支持部材22,23はヨークの役割を果たし、第2磁石18の、第1環状磁石体20との対向面と反対側の面からの磁束の漏洩が抑制される。
【0040】
また、2つの支持部材22,23のうち、先端側(図2中右側)の第2環状磁石体21を支持する支持部材23は、第2環状磁石体21の外周面をも覆っている。その上で、プーリ2の内周面には環状の摺動部材24が設けられており、支持部材23の、第2環状磁石体21を覆う外周部23aが摺動部材24に対して摺動回転となっている。つまり、支持部材23の外周部23aと摺動部材24とが軸受の役割を果たしている。尚、摺動部材24としては、表面摩擦抵抗が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料を使用することが好ましく、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、真鍮、メッキ処理が施された真鍮、青銅、メッキ処理が施された青銅などを使用できる。あるいは、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエチレンなどの合成樹脂材料を使用することもできる。
【0041】
次に、本実施形態のプーリ構造体1の作用について図7〜図9を参照して説明する。まず、図7は、プーリ2とハブ3の間に回転速度差がないときの、第1環状磁石体20と第2環状磁石体21の位置関係を示す図である。尚、図7〜図9では、環状磁石体21,20,21にそれぞれ含まれる、周方向に並ぶ磁石及び磁性体を、環状磁石体の半径方向外側から見た図で示している。
【0042】
図7に示すように、プーリ2とハブ3の間に回転速度差(位相差)がない状態では、プーリ2に固定された第1環状磁石体20の同極間磁性体25と、ハブ3に固定された第2環状磁石体21の第2磁石18との間に引き合う方向の磁力が作用し、同極間磁性体25とこれと引き合う第2磁石18が、回転軸方向(図7の左右方向)に関して対向している。
【0043】
このように、プーリ2とハブ3に回転速度差がなく、両者が一体的に回転している状態から、エンジンで発生したトルク変動がベルト106を介して伝達されて、プーリ2に回転変動が生じると、プーリ2とハブ3の間には回転速度差(位相差)が生じる。図8は、回転速度差が小さいときの、第1環状磁石体20と第2環状磁石体21の位置関係を示す図である。また、図9は、回転速度差が大きいときの、第1環状磁石体20と第2環状磁石体21の位置関係を示す図である。プーリ2とハブ3の間に回転速度差が生じると、その回転速度差に応じて、図8、図9に示すように、第1環状磁石体20の同極間磁性体25と、第2環状磁石体21の第2磁石18の周方向位置(位相)がずれる。
【0044】
図8に示すように、回転速度差(位相差)が小さい場合には、図8に矢印aで示すように、同極間磁性体25は、これとの間で反発する磁力が作用する第2磁石18に少し近づくものの、それでもまだ大きく離れていることから、両者間に作用する反発力は弱い。従って、第1環状磁石体20が固定されたプーリ2と、第2環状磁石体21が固定されたハブ3との間に、両者の回転速度差を小さくするようにトルクが発生しても、そのトルクは比較的弱いものとなる。つまり、回転変動が小さく、プーリ2とハブ3の回転速度差が小さい場合には、この回転速度差を解消するように作用するトルクが大きくなりすぎることがないことから、プーリ2とハブ3の間で共振が発生するのを防止できる。
【0045】
一方、図9に示すように、回転速度差が大きい場合には、図9に矢印bで示すように、同極間磁性体25と、これに反発する第2磁石18との距離が小さくなり、反発力が大きくなるため、プーリ2とハブ3の間に大きなトルクが発生する。従って、回転変動が大きく、プーリ2とハブ3の回転速度差が大きい場合には、その回転速度差を解消するように両者に大きなトルクが作用して、大きな回転変動を速やかに減衰させることができる。
【0046】
本実施形態のプーリ構造体1によれば、プーリ2とハブ3との間に回転速度差が生じたときに、プーリ2に設けられ、第1磁石17の同極の磁極面に挟まれて外部との間で磁束の流出入が生じる、同極間磁性体25と、ハブ3に設けられた第2磁石18との間に、回転位相差を小さくするような磁力が生じる。この磁力は、従来の渦電流によって回転体に作用する抑制力に比べると、はるかに強力である。そのため、プーリ2とハブ3の間に大きな回転変動が生じた場合でも、その回転変動を速やかに減衰させることが可能となる。また、回転変動を減衰するためにゴム弾性体を使用しないことから、ゴム弾性体の経年劣化や疲労破壊、あるいは、ゴム弾性体の弾性変形時の発音といった問題が生じない。
【0047】
第1磁石17の磁化の向きは周方向である一方で、第2磁石18の磁化の向きは周方向とは異なる方向(回転軸Cの方向:第1磁石17と対向する方向)であり、第1磁石17と第2磁石18の間では直接磁束の流れは生じず、磁力が作用しない。その上で、この第1磁石17や第1磁石17と同じく周方向に磁束が流れる異極間磁性体26が、第2磁石18との間で磁力が作用する同極間磁性体25の間に介在した構造となっている。それ故、プーリ2とハブ3との間の回転速度差が小さく、同極間磁性体25と第2磁石18の位相が少しずれた程度では、同極間磁性体25とこれに反発する第2磁石18とはまだ大きく離れた状態であり、両者の間に作用する磁力は小さい。従って、回転速度差を解消するように作用するトルクが大きくなりすぎることがなく、プーリ2とハブ3との間で共振が発生するのを防止できる。
【0048】
また、異極間磁性体26はその内部において磁束が周方向に流れることから、この異極間磁性体26と両側の2つの第1磁石17とからなる磁石構造体は、周方向に磁化された1つの大きな磁石と同等とみなすことができる。つまり、1つの大きな磁石を使用した場合に対して、この大きな磁石の一部を磁性体26で置換することで高価な磁石部分の量を減らしつつ、同等の回転変動減衰性能を発揮することができる。
【0049】
また、本実施形態では、第2磁石18(第2環状磁石体21)の、第1磁石17及び磁性体からなる第1環状磁石体20と反対側の面に、磁性材料からなる支持部材22,23が設けられており、これら支持部材22,23がヨークの役割を果たす。従って、第2磁石18の、第1磁石17や磁性体とは反対側の磁極面からの磁束の漏洩を抑制し、磁力のエネルギーを、第1環状磁石体20と第2環状磁石体21の間に効果的に作用させることができるため、プーリ2とハブ3との間でトルクを効率よく伝達することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、複数(12個)の第1磁石17及び複数(12個)の磁性体25(26)が周方向に配置されて、第1環状磁石体20を構成するとともに、複数(6個)の第2磁石18が周方向に配置されて、第2環状磁石体21を構成している。これによれば、第1磁石17、磁性体25(26)、及び、第2磁石18が全周にわたって分散して配置されることから、プーリ2とハブ3との間で、周方向に関して均等にトルクを作用させることができる。
【0051】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0052】
1]第1磁石17、磁性体25,26、及び、第2磁石18のサイズ、形状、数、材質、配置等は、プーリ2やハブ3の形状や発生しうる回転変動の程度等に応じて、適宜変更可能である。
【0053】
例えば、プーリ2の回転軸方向に並ぶ環状磁石体20,21の数は、前記実施形態のような3つ(1つの第1環状磁石体20と2つの第2環状磁石体21)に限られるものではない。例えば、図10に示すプーリ構造体1Aのように、回転軸Cの方向に関して配置される第1環状磁石体20と第2環状磁石体21の数がそれぞれ1つであってもよい。尚、図10の形態では、第1環状磁石体20の外側の面(第2環状磁石体21との対向面と反対側の面)に設けられた、支持部材22Aを磁性体(ヨーク)とすると、同極間磁性体25から出た磁束が支持部材22A内を流れてしまうため、支持部材22Aは非磁性体とすることが好ましい。また、4以上の第1環状磁石体20,21が回転軸方向に交互に並ぶように設けられてもよい。
【0054】
また、1つの環状磁石体20,21を構成する磁石17,18や磁性体25,26の数も適宜変更できる。また、第1磁石17が、前記実施形態のような直方体形状ではなく、第2磁石18と同じく扇形形状に形成されてもよい。さらには、第1磁石17及び磁性体25,26、あるいは、第2磁石18が周方向全周にわたって配置されて環状の磁石体を構成する必要はなく、周方向一部分にのみ磁石17,18や磁性体25,26が配置された構成であってもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、プーリ2側に第1磁石17と磁性体25,26が設けられ、ハブ3側に第2磁石18が設けられていたが、逆であってもよい。即ち、プーリ2側に周方向に並ぶ複数の第2磁石18が設けられ、ハブ3側に磁性体25,26を挟んで周方向に並ぶ複数の第1磁石17が設けられてもよい。尚、この形態では、第1磁石17及び磁性体25,26が設けられるハブ3が、本発明の第1回転体に相当し、第2磁石18が設けられるプーリ2が、本発明の第2回転体に相当する。
【0056】
2]前記実施形態では、第1磁石17及び磁性体25,26からなる第1環状磁石体20と第2磁石18からなる第2環状磁石体21が回転軸方向に対向しているが、第1磁石及び磁性体と、第2磁石とが、プーリ2の径方向に対向してもよい。例えば、図11に示すプーリ構造体1Bにおいては、プーリ2Bに、第1環状磁石体20Bが、非磁性材料からなる環状の支持部材22Bを介して固定される一方で、ハブ3Bには、第2環状磁石体21Bが、磁性材料からなる環状の支持部材23Bを介して固定されている。また、プーリ2B側の第1環状磁石体20Bが、ハブ3B側の第2環状磁石体21Bの径よりも径が大きいものに形成された上で、第1環状磁石体20Bの内側に径方向に隙間を空けて第2環状磁石体21Bが配置されている。
【0057】
図12に示すように、外側に位置する第1環状磁石体20Bは、周方向に交互に配置された複数の第1磁石17Bと複数の磁性体25B,26Bで構成されている。また、複数の第1磁石17Bはそれぞれ周方向に磁化され、さらに、2つの隣り合う第1磁石17Bの間で同極の磁極面が同極間磁性体25Bを挟んで対向する状態と、異極の磁極面が異極間磁性体26Bを挟んで対向する状態とが、周方向に交互に現れるように配置されている。
【0058】
また、内側に位置する第2環状磁石体21Bは、周方向に配置された複数の第2磁石18Bで構成されている。複数の第2磁石18Bはそれぞれ半径方向に磁化されており、周方向に隣り合う2つの第2磁石18Bの間で、外周面(第1磁石17Bとの対向面)の磁極が逆になっている。
【0059】
このプーリ構造体1Bの、プーリ2Bとハブ3Bとの間に回転速度差が生じたときの作用は、前記実施形態のプーリ構造体1と基本的には同じである。即ち、プーリ2Bとハブ3Bとの間に回転速度差が生じたときには、第1環状磁石体20Bの同極間磁性体25Bと第2環状磁石体21Bの第2磁石18Bの周方向位置がずれるが、その回転速度差(位相差)が小さいときには、同極間磁性体25Bとこれと反発する第2磁石との距離が離れているため、回転速度差を解消する方向に過大なトルクが発生することはない。
【0060】
5]前記実施形態では、複数の第2磁石18からなる第2環状磁石体21をハブ3に取り付ける支持部材22,23が、磁性材料で形成されていたが、本発明はこのような形態に限られるものではない。例えば、第1磁石17や第2磁石18が、対応するプーリ2やハブ3に直接固定された上で、第1磁石17や第2磁石18にヨークの役割を果たす磁性材料が別途設けられてもよい。また、プーリ2やハブ3の一部又は全部を磁性材料で形成し、この磁性部分に第1磁石17や第2磁石18が取り付けられてヨークの役割を果たすように構成されてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態として、エンジンの補機駆動システムのプーリ構造体に本発明を適用した一例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。例えば、建築建材、家具、機械装置などの分野において、窓、ドア、蓋等の開閉部材の開閉角度に応じてトルクを変化させるために使用されるプーリ構造体など、様々な用途に使用されるプーリ構造体にも適用することが可能である。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の具体的な実施例について比較例と共に説明する。
【0063】
(実施例1)
第1磁石17としては、5.6mm×15.4mm×6mmの直方体形状(5.6mmの方向に磁化)のネオジム系磁石を使用した。このネオジム系磁石をその磁化方向が周方向となるように12個放射状に並べ、磁石間にはS25Cの磁性体25,26を挿入して、第1環状磁石体20を1つ作製した。尚、同極の磁極面が対向する状態と、異極の磁極面が対向する状態が、周方向に交互に現れるように第1磁石17を配置した。以上によって得られた第1環状磁石体20は、外径56mm、内径24mm、厚さ6mmであり、同極間磁性体25の中心角(図4(a)のα)は10度、異極間磁性体26を挟む2つの第1磁石17の両端面間角度(図4(a)のβ)は50度である。
【0064】
第2磁石18としては、外径58mm、内径28mm、厚さ6mm、中心角60度の扇形で、厚さ方向に磁化されたネオジム系磁石を使用した。そして、6つの第2磁石18を磁極が逆になるように周方向に交互に配置し、第2環状磁石体21を2つ作製した。
【0065】
そして、1つの第1環状磁石体20と2つの第2環状磁石体21を0.5mm間隔で配置するとともに、外側2つの第2環状磁石体21の第1環状磁石体20と対向しない面にS25C材をバックヨークとして張り合わせた。これら3つの環状磁石体21,20,21を、図1に示すハブ3及びプーリ2に取り付けて、プーリ構造体を作製した。
【0066】
尚、この実施例1で使用した磁石の総体積は、5.6×15.4×6×12(第1磁石)+2×(1/4)×(58×58−28×28)×π×6(第2磁石)=30525(mm)である。
【0067】
(実施例2)
第1磁石を4.4mm×15.7mm×6mm(4.4mmの方向に磁化)とし、αを20度、βを40度とした以外は、実施例1と同じ仕様とした。この実施例2で使用した磁石の総体積は、4.4×15.7×6×12(第1磁石)+2×(1/4)×(58×58−28×28)×π×6(第2磁石)=29290(mm)である。
【0068】
(実施例3)
第1磁石を6.5mm×14.3mm×6mm(6.5mmの方向に磁化)として周方向に12個配置し、外径58mm、内径28mm、厚さ6mm、αが10度、βが50度の第1環状磁石体20を2つ作製した。また、外径56mm、内径24mm、厚さ6mm、中心角60度の第2磁石18を6つ使用して、第2環状磁石体21を1つ作製した。そして、2つの第1環状磁石体20が1つの第2環状磁石体21を回転軸方向に挟むように配置した上で、3つの環状磁石体20,21,20をプーリ2及びハブ3に取り付けた。但し、外側に位置する第1環状磁石体20の外面にはバックヨークを取り付けなかった。この実施例3で使用した磁石の総体積は、6.5×14.3×6×24(第1磁石)+(1/4)×(56×56−24×24)×π×6(第2磁石)=25449(mm)である。
【0069】
(実施例4)
第1磁石を3.8mm×14.8mm×6mm(3.8mmの方向に磁化)として周方向に16個配置し、αが15度、βが30度、外径58mm、内径28mm、厚さ6mmの第1環状磁石体20を2つ作製した。また、外径56mm、内径24mm、厚さ6mm、中心角45度の第2磁石18を8つ使用して、第2環状磁石体21を1つ作製した。そして、実施例3と同様に3つの環状磁石体20,21,20をプーリ2及びハブ3に取り付けた。尚、外側に位置する第1環状磁石体20にはバックヨークを取り付けなかった。この実施例4で使用した磁石の総体積は、3.8×14.8×6×32(第1磁石)+(1/4)×(56×56−24×24)×π×6(第2磁石)=22862(mm)である。
【0070】
(比較例)
外径56mm、内径24mm、厚さ6mm、中心角50度で、周方向に磁化された6つの扇形の磁石を、隣り合う磁石の間で対向する磁極面の磁極が同極となるように周方向に配置し、さらに、6つの磁石の間に磁性体(S25C)を挿入し、1つの環状磁石体を作製した(図6の環状磁石体51)。また、実施例1と同じ6つの第2磁石18からなる第2環状磁石体21を2つ作製した。そして、これら3つの環状磁石体をプーリ及びハブに取り付けて、プーリ構造体とした。この比較例で使用した磁石の総体積は、(1/4)×(56×56−24×24)×π×6×(300/360)(図6の磁石)+(1/4)×(58×58−28×28)×π×6×2(第2磁石)=34369(mm)である。
【0071】
図13は、実施例1と実施例2のプーリ構造体の回転角とトルクの関係を示すグラフ、図14は、実施例3と実施例4のプーリ構造体の回転角とトルクの関係を示すグラフ、図15は、比較例のプーリ構造体の回転角とトルクの関係を示すグラフである。また、表1に、実施例1〜4及び比較例のそれぞれについて、使用した磁石の総体積と最大トルクを示す。
【0072】
【表1】

【0073】
図13〜図15及び表1から分かるように、2つの第1磁石間に異極間磁性体26を挿入している実施例1〜4は、そうでない比較例と比べ、使用した磁石の量が少ない(実施例4では30%以上少ない)。それにもかかわらず、実施例1〜4では、それぞれ、比較例と同等の最大トルクが得られている。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B プーリ構造体
2,2A,2B プーリ
3,3A,3B ハブ
17,17B 第1磁石
18,18B 第2磁石
25,25B 磁性体
26,26B 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体に対して相対回転可能な第2回転体と、
前記第1回転体に設けられた複数の第1磁石と、
前記第2回転体に前記複数の第1磁石と対向可能に設けられた複数の第2磁石を有し、
前記複数の第1磁石は、回転体の周方向に磁性体を挟んで配置されるとともに、周方向に隣り合う2つの第1磁石の磁極面が前記磁性体を介して対向し、
さらに、前記複数の第1磁石は、周方向に隣り合う2つの前記第1磁石の同極の磁極面が前記磁性体を挟んで対向する状態と異極の磁極面が前記磁性体を挟んで対向する状態とが、周方向に交互に現れるように構成されており、
前記複数の第2磁石は、回転体の周方向に配置されるとともに、それらの磁極面が前記第1磁石又は前記磁性体と対向し、
さらに、前記複数の第2磁石は、それらの磁極面において周方向に交互に異なる磁極が現れるように構成されていることを特徴とするプーリ構造体。
【請求項2】
前記第2磁石は、その周方向両端面がそれぞれ回転体の半径方向と平行な、扇形形状に形成され、
前記第1磁石は、ほぼ直方体形状に形成され、
異極の磁極面が対向する2つの前記第1磁石と、これら2つの第1磁石の異極の磁極面の間に介在する前記磁性体とで構成される、磁石構造体が、前記第2磁石と同心状の扇形形状であることを特徴とする請求項1に記載のプーリ構造体。
【請求項3】
前記複数の第2磁石の、前記第1磁石とは反対側の磁極面に、磁性体からなるヨークが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプーリ構造体。
【請求項4】
回転体の周方向に配置された、前記複数の第1磁石と前記複数の第2磁石が、それぞれ、環状の磁石体を構成していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプーリ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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