説明

プーリ構造体

【課題】非接触で回転体間の回転変動を吸収し、安価な構成で大きな回転トルクを伝達することができるプーリ構造体を提供することである。
【解決手段】筒状の第1回転体1に、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する永久磁石6を設け、その内径側に同軸上で嵌挿された第2回転体2に、永久磁石6と半径方向で近接対向し、この対向部に回転方向で複数の閉じた枠状の閉電気回路が形成される導電体8を設けて、この導電体の閉電気回路の数と永久磁石6の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定し、閉電気回路の内側を埋めるように、透磁性材料で形成された鉄心10を配設することにより、鉄心10で埋められた閉電気回路の内側を横切る磁界を強くして、閉電気回路に大きな誘導電流が流れるようにし、大きいローレンツ力を発生させて、安価な構成で大きな回転トルクを伝達できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの回転体間の回転変動を吸収して、回転体間の回転トルクの伝達を可能としたプーリ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンによって回転駆動されるクランクシャフトから回転トルクを伝達される発電用のオルタネータ等の回転伝達部には、2つの回転体を同軸上で相対回転可能に配置し、これらの回転体間の回転変動を吸収して回転体間の回転トルクの伝達を可能とし、一方の回転体に回転トルクを入力または出力するプーリを設けたプーリ構造体が採用されている。
【0003】
この種のプーリ構造体には、2つの回転体をゴム等の弾性体で連結し、弾性体の捩じれ変形を利用して回転体間の相対回転を許容し、回転体間の回転変動を吸収して回転体間の回転トルクの伝達を可能としたもの(例えば、特許文献1参照)と、一方の回転体に他方の回転体と対向する磁石を設け、他方の回転体を導電体で形成して、回転体間の相対回転によって導電体に渦電流が生じ、渦電流が生じた導電体に作用するローレンツ力を利用して、非接触で回転体間の回転変動を吸収して、回転体間の回転トルクの伝達を可能としたもの(例えば、特許文献2、3参照)とがある。
【0004】
特許文献1に記載されたものは、2つの回転体を連結する弾性体が、繰り返しの捩じれ変形によって疲労し、寿命が短くなる問題がある。これに対して、特許文献2、3に記載されたものは、2つの回転体を弾性体で連結することなく、回転体間を非接触として回転トルクを伝達するので、このような問題はなく、長期に亘って安定してトルクを伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−68540号公報
【特許文献2】特開2002−286094号公報
【特許文献3】特開2003−247600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2、3に記載されたプーリ構造体は、いずれも円板状の導電体を磁石と軸方向で対向させ、相対回転する導電体を軸方向に横切る磁界によって、導電体の板面内に渦電流を生じさせるようにしている。この円板状の導電体の板面内に渦電流を生じさせるプーリ構造体は、ある程度の大きさのローレンツ力を発生させて、回転体間で回転トルクを伝達することができる。しかしながら、このような板面内の渦電流で発生するローレンツ力の大きさには限界があり、大きな回転トルクの伝達を必要とするプーリ構造体には採用できない問題がある。
【0007】
なお、大きなローレンツ力を発生させるためには、磁石に強力な永久磁石を用いるか、電磁石を用いることが考えられるが、強力な永久磁石は高価なものとなる。また、回転体に設ける電磁石は、回転体に取り付けたスリップリングに電力を供給するブラシを接触させるか、電磁誘導や磁界共鳴等を用いて非接触で電力を供給する必要があり、これらの電力供給手段が複雑で高価なものとなる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、非接触で回転体間の回転変動を吸収し、安価な構成で大きな回転トルクを伝達することができるプーリ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、2つの回転体を同軸上で相対回転可能に配置し、一方の回転体にプーリを設けて、回転体間を非接触として回転体間でトルクを伝達するプーリ構造体において、前記2つの回転体の一方の回転体に、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する磁石を設け、他方の回転体に、前記磁石と半径方向または軸方向で対向し、この対向部に回転方向で複数の閉じた枠状の閉電気回路が形成される導電体を設けて、この導電体の閉電気回路の数と前記磁石の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定し、前記枠状の閉電気回路の内側を埋めるように、透磁性材料で形成された鉄心を配設した構成を採用した。
【0010】
すなわち、2つの回転体の一方の回転体に、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する磁石を設け、他方の回転体に、磁石と半径方向または軸方向で対向し、この対向部に回転方向で複数の閉じた枠状の閉電気回路が形成される導電体を設けて、この導電体の閉電気回路の数と磁石の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定し、枠状の閉電気回路の内側を埋めるように、透磁性材料で形成された鉄心を配設することにより、鉄心で埋められた閉電気回路の内側を横切る磁界を強くして、閉電気回路に大きな誘導電流が流れるようにし、大きなローレンツ力を発生させて、安価な構成で大きな回転トルクを伝達できるようにした。なお、閉電気回路の数と磁石の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定したのは、後述するように、一方の数を他方の整数倍とすると、ローレンツ力による回転トルクに脈動が発生し、回転トルクを安定して伝達することができなくなるからである。
【0011】
前記鉄心は、透磁性材料で形成された複数枚の板材を、前記磁石の磁束方向と平行に向けて積層したものとするとよい。すなわち、鉄心が導電体である場合、磁石を設けた一方の回転体の回転に伴う磁束の変化によって鉄心にも渦電流が流れ、渦電流が流れるとジュール熱によりエネルギを損失することになる。渦電流は磁束に垂直な面内に流れるので、磁束と垂直な面を分断するように、鉄心を磁束方向と平行に向けて積層して、渦電流が流れないようにした。
【0012】
前記閉電気回路の数を前記磁石の磁極の数よりも多くすることにより、伝達トルクを大きくすることができる。閉電気回路の数が磁極の数よりも少なくなると、閉電気回路の領域内部に完全に含まれる磁極が存在することになり、この磁極は含まれる閉電気回路に対する磁束の時間的変化に寄与しなくなるので、伝達トルクが小さくなる。
【0013】
前記磁石の前記導電体と対向する側と反対側の背面側に、磁性材料で形成されたヨークを密着固定することにより、磁石からの磁束の漏洩を抑制して磁界を強くし、発生するローレンツ力をより大きくすることができる。ヨークを形成する磁性材料としては、軟鉄やNi−Zn系、Mn−Zn系、フェロックスプレーナ系のフェライトやFe−Si系合金等を用いることができる。
【0014】
前記磁石を永久磁石とすることにより、磁石への給電手段を不要とすることができる。永久磁石としては、ネオジム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコ、プラチナ、クロム、鉄、マンガン、アルミニウム、プラセオジム等を成分とするものを用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプーリ構造体は、2つの回転体の一方の回転体に、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する磁石を設け、他方の回転体に、磁石と半径方向または軸方向で対向し、この対向部に回転方向で複数の閉じた枠状の閉電気回路が形成される導電体を設けて、この導電体の閉電気回路の数と磁石の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定し、枠状の閉電気回路の内側に、透磁性材料で形成された鉄心を配設したので、鉄心で埋められた閉電気回路の内側を横切る磁界を強くして、閉電気回路に大きな誘導電流が流れるようにし、大きなローレンツ力を発生させて、安価な構成で大きな回転トルクを伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態のプーリ構造体を示す縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】(a)、(b)は、それぞれ図1の永久磁石と導電体を示す斜視図
【図4】実施例のトルク測定試験に用いた試験装置を示す正面図
【図5】実施例のトルク測定試験での実施例1、2と比較例1、2の伝達トルクの測定結果を示すグラフ
【図6】実施例のトルク測定試験で回転速度を変化させたときの実施例1の伝達トルクの測定結果を示すグラフ
【図7】実施例のトルク測定試験での実施例1、2と比較例3、4の伝達トルクの時間変化を示すグラフ
【図8】第2の実施形態のプーリ構造体を示す縦断面図
【図9】(a)、(b)は、それぞれ図8の永久磁石と導電体を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図7は、第1の実施形態を示す。このプーリ構造体は、図1に示すように、筒状の第1回転体1の内径側に第2回転体2が同軸上で嵌挿されており、第1回転体1の外径面に回転トルクが入力されるプーリ3が設けられ、転がり軸受4によって第1回転体1と第2回転体2が相対回転可能に支持されている。第2回転体2の内径面には、プーリ3から入力される回転トルクを出力する出力軸5が取り付けられる。
【0018】
前記第1回転体1の内径面には、円筒状の永久磁石6がヨーク7を介して嵌合固定されている。永久磁石6は、ネオジム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコ、プラチナ、クロム、鉄、マンガン、アルミニウム、プラセオジム等を成分とするものである。ヨーク7は、軟鉄やNi−Zn系、Mn−Zn系、フェロックスプレーナ系のフェライトやFe−Si系合金等の強磁性材料で形成され、永久磁石6の背面に密着固定されている。
【0019】
また、前記第2回転体2の外径面には、銅製の円筒篭状の導電体8が、永久磁石6と半径方向で近接対向するように、保持部9を介して取り付けられており、後述するように、導電体8の閉電気回路8aの内側を埋めるように、透磁性材料で形成された鉄心10が配設されている。この鉄心10は、透磁性の高い複数枚の電磁鋼板10aを、永久磁石6の磁束方向と平行に向けて積層したものである。したがって、磁束と垂直な面を分断して、鉄心10にエネルギ損失を伴う渦電流が流れないようにすることができる。
【0020】
図2および図3(a)に示すように、前記永久磁石6は、複数の円弧筒状の磁石ユニット6aを、S極とN極を交互に半径方向で反対方向に向けて周方向に配列したものであり、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する。この実施形態では、磁石ユニット6aの中心角が45°とされ、第1回転体1の回転方向での磁極数n1が8個とされている。
【0021】
図2および図3(b)に示すように、前記円筒篭状の導電体8は、両端のリング部8aと、これらのリング部8aを周方向に等間隔で連結する複数の柱部8bとで形成され、隣接する2本の柱部8bと、これらの柱部8bの間の両リング部8aの円弧部とからなる複数の閉じた枠状部に、図3(b)中に矢印で示すように、閉電気回路11が形成されるようになっている。この実施形態では、柱部8bが13本設けられ、第2回転体2の回転方向での閉電気回路数n2が13個とされている。
【0022】
また、前記各閉電気回路11には、その内側を埋めるように、リング状の電磁鋼板10aを積層した鉄心10が配設されている。各電磁鋼板10aの外周部には複数の切欠き部12が設けられ、これらの切欠き部12に、導電体8の各柱部8bが絶縁されるように通されている。したがって、第1回転体1と第2回転体2が相対回転すると、鉄心10で埋められた各閉電気回路11の内側を半径方向に横切る強い磁界の変化によって、各閉電気回路11に大きな誘導電流が流れ、第1回転体1と第2回転体2の間に大きいローレンツ力が発生して、第1回転体1から第2回転体2に大きな回転トルクが伝達される。
【0023】
前記積層される電磁鋼板10aの表面には、絶縁性の接着剤層が形成されている。この接着剤層は、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂等を、刷毛やローラによって塗布したり、吹き付け塗装することにより形成される。なお、鉄心10は、電磁鋼板10aのほかに、Fe、Co、Ni、およびこれらを含む合金、Ni−Zn系等のソフトフェライト等の透磁性材料で形成してもよい。これらの透磁性材料は、圧延で形成される板材のほかに、機械加工や粉末冶金で形成することもできる。また、鉄心10を形成する透磁性材料は、一体化したブロックとすることもできる。
【実施例】
【0024】
実施例として、前記閉電気回路数n2を13個としたプーリ構造体(実施例1)と、閉電気回路数n2を21個としたプーリ構造体(実施例2)を用意した。また、比較例として、前記導電体8を従来のように単なる円筒状として、渦電流を生じさせるようにしたもの(比較例1)、実施例1の鉄心10を配設しないもの(比較例2)、実施例1の閉電気回路数n2を8個としたもの(比較例3)、および実施例1の閉電気回路数n2を16個としたもの(比較例4)を用意した。なお、実施例と比較例のいずれのプーリ構造体についても、前記永久磁石6はネオジム系磁石とし、その磁極数n1は8個とした。実施例と比較例の各プーリ構造体の寸法諸元は以下の通りである。
・第1回転体の円筒部(ヨークを含む):外径62mm、内径:52mm、長さ36mm
・第2回転体の円筒部(保持部を含む):外径20mm、内径:16mm、長さ36mm
・永久磁石:外径52mm、内径:40mm、長さ30mm
・導電体:外径39mm、厚み2mm、長さ32mm
・鉄心(比較例1、2を除く):外径39mm、内径:20mm、厚さ0.5mmの電磁鋼板を59枚積層
【0025】
上述した各実施例と比較例のプーリ構造体について、第1回転体1から第2回転体2への伝達トルクを測定するトルク測定試験を行った。図4は、トルク測定試験に用いた試験装置を示す。この試験装置は、モータ21の出力軸21aに設けたプーリ22と第1回転体1のプーリ3との間にVリブドベルト23を巻き掛け、第1回転体1を回転駆動したときの第2回転体2への伝達トルクを、第2回転体2の出力軸5に取り付けたトルクメータ24で測定するものであり、第2回転体2の回転速度を零にするために必要な最大伝達トルクTを測定した。第1回転体1の回転速度Vは5000rpmとし、一部の試験では、回転速度Vを500、1000、10000rpmに変化させた。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に、前記トルク測定試験の試験条件と試験結果をまとめて示す。図5は、トルク測定試験での回転速度Vが5000rpmのときの最大伝達トルクTを比較して示す。この測定結果から分かるように、従来の円筒状の導電体を用いた比較例1の最大伝達トルクTが8.7Nmであるのに対して、各実施例のものは最大伝達トルクTが10Nm以上となり、最大伝達トルクTをかなり大きくすることができる。特に、閉電気回路数n2を21個と多くした実施例2は、最大伝達トルクTが比較例1の約1.5倍と大きくなっている。鉄心を配設しなかった比較例2は、最大伝達トルクTが2.3Nmと小さい。
【0028】
図6は、実施例1のものについて、回転速度Vを変化させたときの最大伝達トルクTを示す。最大伝達トルクTは回転速度Vにほぼ比例して大きくなっている。したがって、本発明に係るプーリ構造体は、高速回転で使用されるものに特に好適である。
【0029】
図7は、実施例1、2と比較例3、4のものについて、回転速度Vを0rpmから5000rpmの定常値としたときの最大伝達トルクTの時間変化を示す。閉電気回路数n2が磁極数n1の整数倍でない実施例1、2では、最大伝達トルクTが回転速度Vに追随して大きくなり、定常値に安定するのに対して、閉電気回路数n2を磁極数n1の整数倍とした比較例3、4では、最大伝達トルクTは安定せず、脈動を続ける。したがって、安定した最大伝達トルクTを得るためには、閉電気回路数n2を磁極数n1の整数倍でない異なる数にする必要があることが分かる。閉電気回路数n2と磁極数n1の関係は、互いに整数倍でなければよく、特に限定されない。
【0030】
前記比較例3、4で最大伝達トルクTが脈動したのは、閉電気回路数n2を磁極数n1の整数倍とすると、第2回転体2の導電体8の1つの柱部8bが、第1回転体1の永久磁石6の隣接する磁石ユニット6aの境界部に位置するときに、その他の境界部においても他の柱部8bが位置することになる。このため、磁極数n1個の柱部8bが同時に磁石ユニット6aの境界部に対向する状態と、どの柱部8bも境界部に対向しない状態が、時間的に交互に繰り返されるため、誘導電流の大きさが脈動して、結果として最大伝達トルクTが脈動したものと考えられる。
【0031】
図8および図9は、第2の実施形態を示す。このプーリ構造体も、図8に示すように、筒状の第1回転体1の内径側に第2回転体2が同軸上で嵌挿され、第1回転体1の外径面に回転トルクが入力されるプーリ3が設けられて、転がり軸受4によって第1回転体1と第2回転体2と相対回転可能に支持されている。第2回転体2は、転がり軸受4に支持される円筒部2aと、後述する保持部9を取り付ける円筒部2bに分割され、円筒部2bの外径面とヨーク7の内径面の間にすべり軸受13が設けられている。また、第2回転体2の内径面には、プーリ3から入力される回転トルクを出力する出力軸5が取り付けられる。
【0032】
この実施形態では、図8および図9(a)に示すように、前記第1回転体1の内径面の一端側に、リング状の永久磁石6が嵌合固定され、その背面に、強磁性材料で形成されたヨーク7が密着固定されている。永久磁石6は、複数の扇形状の磁石ユニット6aを、S極とN極を円周方向に沿って交互に配置し、かつ各磁石ユニット6aではS極とN極が軸方向で反対方向になるように配列したものであり、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する。磁石ユニット6aの中心角は45°とされ、第1回転体1の回転方向での磁極数n1は8個とされている。
【0033】
また、図8および図9(b)に示すように、前記第2回転体2の外径面には、内リング部8cと外リング部8dを複数のスポーク部8eで周方向に等間隔で連結した銅製の導電体8が、永久磁石6と軸方向で近接対向するように、保持部9を介して取り付けられている。隣接する2本のスポーク部8eと、これらのスポーク部8eの間の内外リング部8c、8dの円弧部とからなる複数の閉じた枠状部に、図9(b)中に矢印で示すように、閉電気回路11が形成されるようになっている。スポーク部8eは13本設けられ、第2回転体2の回転方向での閉電気回路数n2は13個とされている。
【0034】
前記導電体8の閉電気回路8aの内側には、透磁性材料で形成された鉄心10が配設されている。この鉄心10は、透磁性の高い複数枚の電磁鋼板10aを、永久磁石6との対向方向と平行に向けて、閉電気回路8aの内側を埋めるように積層したものであり、導電体8と絶縁されている。したがって、この実施形態では、第1回転体1と第2回転体2が相対回転すると、鉄心10で埋められた各閉電気回路11の内側を軸方向に横切る強い磁界の変化によって、各閉電気回路11に大きな誘導電流が流れ、第1回転体1と第2回転体2の間に大きいローレンツ力が発生して、第1回転体1から第2回転体2に大きな回転トルクが伝達される。
【0035】
上述した各実施形態では、回転トルクが入力されるプーリを外方の第1回転体側に設けたが、プーリは内方の第2回転体側に設けることもでき、回転トルクを出力するプーリとすることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 第1回転体
2 第2回転体
2a、2b 円筒部
3 プーリ
4 転がり軸受
5 出力軸
6 永久磁石
6a 磁石ユニット
7 ヨーク
8 導電体
8a リング部
8b 柱部
8c 内リング部
8d 外リング部
8e スポーク部
9 保持部
10 鉄心
10a 電磁鋼板
11 閉電気回路
12 切欠き部
13 すべり軸受
21 モータ
21a 出力軸
22 プーリ
23 Vリブドベルト
24 トルクメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転体を同軸上で相対回転可能に配置し、一方の回転体にプーリを設けて、回転体間を非接触として回転体間でトルクを伝達するプーリ構造体において、前記2つの回転体の一方の回転体に、回転方向で複数の異なる磁極を交互に有する磁石を設け、他方の回転体に、前記磁石と半径方向または軸方向で対向し、この対向部に回転方向で複数の閉じた枠状の閉電気回路が形成される導電体を設けて、この導電体の閉電気回路の数と前記磁石の磁極の数とを、一方が他方の整数倍とならない互いに異なる数となるように設定し、前記枠状の閉電気回路の内側を埋めるように、透磁性材料で形成された鉄心を配設したことを特徴とするプーリ構造体。
【請求項2】
前記鉄心を、透磁性材料で形成された複数枚の板材を、前記磁石の磁束方向と平行に向けて積層したものとした請求項1に記載のプーリ構造体。
【請求項3】
前記閉電気回路の数を前記磁石の磁極の数よりも多くした請求項1または2に記載のプーリ構造体。
【請求項4】
前記磁石の前記導電体と対向する側と反対側の背面側に、磁性材料で形成されたヨークを密着固定した請求項1乃至3のいずれかに記載のプーリ構造体。
【請求項5】
前記磁石を永久磁石とした請求項1乃至4のいずれかに記載のプーリ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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