説明

ヘアドライヤー

【課題】充分な量のナノミストを発生することのできるナノミスト発生手段を備えたヘアドライヤーを提供する。
【解決手段】本発明のヘアドライヤーは、一端に風吹き出し口を有する風路形成ケース、およびこの風路形成ケースの外周であって、前記風吹き出し口の近傍に配置されたナノミスト発生手段を備え、前記ナノミスト発生手段は、風吹き出し口より前方に突出した少なくとも1本のナノミスト発生ピン、このナノミスト発生ピンに水を供給する水供給手段、および前記ナノミスト発生ピンのみに高電圧を印加して、ナノミストを発生させる高電圧発生手段を有し、前記ナノミスト発生ピンは、多数の合成樹脂繊維を束ねたものからなり、内部に多くの水を含むことができ、かつこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアドライヤーに関し、さらに詳細には帯電水微粒子(ナノミスト)を発生する静電霧化装置であるナノミスト発生手段を備えたヘアドライヤーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したような静電霧化装置を備えたヘアドライヤーは従来から知られているが、従来の静電霧化装置にあっては、その構造上の問題から充分な量のナノミストを発生することが困難であった。すなわち、従来の静電霧化装置にあっては、例えば特開2006−204596号に示されているように、中空棒状の印加電極の先端部の霧化部の周りに設けられた丸孔からの水をナノミストとするため、供給される水の量が充分でなく、このため発生されるナノミストの量も充分でないという問題がある。
【0003】
このような問題は、丸孔の数を増やしたり、丸孔の径を大きくすればある程度解消できると思われるが、丸孔の数を増やすには限界があるし、また丸孔の径を大きくする方法では、あまり大きくすると水漏れが生じてしまうという新たな問題が発生してしまう。
【特許文献1】特開2006−204596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、充分な量のナノミストを発生することのできるナノミスト発生手段を備えたヘアドライヤーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明の下記(1)〜(7)の構成のいずれかによるヘアドライヤーにより解決することができる。
(1) 一端に風吹き出し口を有する風路形成ケース、およびこの風路形成ケースの外周であって、前記風吹き出し口の近傍に配置されたナノミスト発生手段を備え、前記ナノミスト発生手段は、風吹き出し口より前方に突出した少なくとも1本のナノミスト発生ピン、このナノミスト発生ピンに水を供給する水供給手段、および前記ナノミスト発生ピンのみに高電圧を印加して、ナノミストを発生させる高電圧発生手段を有し、前記ナノミスト発生ピンは、多数の合成樹脂繊維を束ねたものからなり、内部に多くの水を含むことができ、かつこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなっていることを特徴とするヘアドライヤー。
(2) 前記高電圧発生手段は、発生する高電圧が可変である上記(1)のヘアドライヤー。
(3) 前記ナノミスト発生手段は、水タンク、およびこの水タンク内の水を前記ナノミスト発生ピンに導く水路を有しており、該水路にイオン交換樹脂の粒子が充填されている上記(1)または(2)のヘアドライヤー。
(4) 前記ナノミスト発生ピンの多数の合成樹脂繊維が溶着により束ねられている上記(1)〜(3)のいずれかのヘアドライヤー。
(5) 前記ナノミスト発生ピンの先端部が、丸みを帯びている上記(1)〜(4)のいずれかのヘアドライヤー。
(6) 前記風路形成ケースは、本体ケースにより取り囲まれており、
上部において前記風路形成ケースと本体ケースの間には空間が設けられており、この空間に前記ナノミスト発生手段が配置されており、前記本体ケースの前端上部は前記ナノミスト発生ピンの先端より所定長さ前方に突出して延びている上記(1)〜(5)のいずれかのヘアドライヤー。
(7) 前記ナノミスト発生ピンの直径が2.0〜3.0mmであり、前記ナノミスト発生ピンに用いる合成樹脂繊維の平均直径が20〜30μmであり、前記ナノミスト発生ピンの内部の繊維間の空間の平均直径が20〜70μmである上記(1)〜(6)のいずれかのヘアドライヤー。
【発明の効果】
【0006】
本発明のヘアドライヤーにおいては、上記したように、前記ナノミスト発生ピンは、多数の合成樹脂繊維を束ねたものからなり、内部に多くの水を含むことができ、かつこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなっているので、従来のものより多くの水が大気に触れ蒸発するので、多くのナノミストを発生することができる。
また、本発明のヘアドライヤーのナノミスト発生手段においては、対向電極を用いることなくナノミストを発生させているので、有害なオゾンを発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の態様によるヘアドライヤーについて説明する。
本発明の実施の態様によるヘアドライヤー10は、図1に示したように一端に風吹き出し口12aを有する風路形成ケース12を内部に備える本体ケース14を備えている。本体ケース14は、風吹き出し口12aと反対側の端部に、空気吸い込み口14aを備えている。本体ケース14には、図示していないが把手部が折り畳み可能に取り付けられている。なお、図1において、符号16はファンを示し、符号18はこのファン16を駆動するモーターを示す。なお、この図には示していないが、通常のドライヤーと同様にヒーターが設置されている。
【0008】
風路形成ケース12と本体ケース14の上部の間には、空間が形成されており、この空間には、ナノミスト発生装置20が設けられている。このナノミスト発生装置20は、図2に示されているように、水を内部に貯留する水タンク22、ナノミスト発生ピン24、および水タンク22からの水をナノミスト発生ピン24に供給する水路26(図3参照)を備えている。
【0009】
図3に示されているように、水路26の後方部分には、イオン交換樹脂の粒子を樹脂のケースに封入して形成された第1吸水体28が充填されており、前方部分には、フェルトで形成された第2吸水体30が充填されている。これらの第1吸水体28および第2吸水体30により、水タンク22内の水を吸い込んで、上記ナノミスト発生ピン24に供給する。イオン交換樹脂を封入した第1吸水体28の作用により、カルシウムなどを含む通常の水道水でも、軟水化できるので、専用の蒸留水を使用することなく、使用するのに容易である。
【0010】
上記第2吸水体30の前方部分は、比較的厚い板状となっていて、ここに3本のナノミスト発生ピン24が植設されている。この例では、ナノミスト発生ピン24の本数を3としたが、少なくとも1本あればよい。上記ナノミスト発生ピン24の位置は、風吹き出し口12aの端面より前方に突出していることが好ましい。
【0011】
上記ナノミスト発生ピン24は、多数の合成樹脂繊維を方向を揃えて束ねて、溶融した合成樹脂で固めて棒状にしたものであることが好ましい。ナノミスト発生ピン24は、多数の合成樹脂繊維を束ねて熔融合成樹脂により固めたものであるが、内部の繊維間に外部と連通する空間が多数形成されたものであることが好ましい。これにより、ナノミスト発生ピン24は、内部に水を多く含むことができ、しかもこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなって、水分の蒸発量が多くなっている。また、ナノミスト発生ピン24の先端は、図4に示したように、丸みを帯びている、すなわちラウンドが付けられていることが好ましい。これにより、ナノミスト発生ピンの外部空気との接触面積がさらに大きくなる。
【0012】
上記ナノミスト発生ピン24の直径は、2.0〜3.0mmであることが好ましい。このナノミスト発生ピン24の直径が上記の範囲未満であったり、上記の範囲を超えると、ミストの発生の効率が低下する。上記ナノミスト発生ピン24に用いる合成樹脂繊維の平均直径は20〜30μmであることが好ましい。合成樹脂繊維の平均直径が上記の範囲外であると、下記する範囲のナノミスト発生ピンの空隙率が得にくい。上記ナノミスト発生ピン24の内部の繊維間の空間の平均直径は20〜70μmであることが好ましい。仮に同じ直径のピンの場合、この空間の平均直径が上記の範囲未満であるとピンの先から放出されるミスト量に比較して水分が不足し、発生ミストが途切れてしまう事がある。上記の範囲を超えると、ミスト量に比較して水分量が過剰となりミストの発生効率が低下する。上記ナノミスト発生ピン24の単位面積当たりの(断面で見たときの)空隙率は、40〜50%であることが好ましい。この空隙率が上記の範囲未満であると、ピンの先から放出されるミスト量に比較して水分が不足し、発生ミストが途切れてしまい、上記の範囲を超えると、ミスト量に比較して水分量が過剰となりミストの発生効率が低下する。
【0013】
上記の合成樹脂繊維(繊維、溶融合成樹脂ともに)の材料としては、ポリエステルやアクリルであることが好ましい。
【0014】
上記第2吸水体30の前側には、導電性の金属板32が嵌め込まれている。この金属板32には、ナノミスト発生ピン24が丁度挿通できるようなサイズで、ナノミスト発生ピンの数に合わせた丸孔34(図5参照)が設けられている。この導電性の金属板32は、電線36を介して高電圧発生装置38が接続されており、この高電圧発生装置38からの高電圧が印加されるようになっている。このように金属板32に高電圧を印加することにより、ひいてはナノミスト発生ピン24に高電圧を印加することにより、ナノミスト発生ピン24から蒸発する水分をナノサイズまで細分化して放出する。
【0015】
上記高電圧発生装置38は、発生する高電圧が可変のものであることが好ましく、ヘアドライヤーの使用者の図示していない操作ボタン等の操作により、発生する高電圧を調節することができるようにすることが好ましい。この高電圧が高いとき、ナノミストの量は増加し、低いときナノミストの量は高電圧の時に比較して少なくなる。
【0016】
本発明のヘアドライヤーにおいては、上記したように、前記ナノミスト発生ピンは、多数の合成樹脂繊維を束ねたものからなり、内部に多くの水を含むことができ、かつこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなっているので、従来のものより多くの水が大気に触れ蒸発するので、多くのナノミストを発生することができる。また、蒸発した水分に高電圧を印加してナノミストを発生するので、粒子径の揃ったナノミストを発生でき、髪に満遍なく潤いを与えることができる。
また、本発明のヘアドライヤーのナノミスト発生手段においては、対向電極を用いることなくナノミストを発生させているので、有害なオゾンを発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるヘアドライヤーの構造を説明するための長手方向断面図である。
【図2】図1に示したアドライヤーの主要部であるナノミスト発生装置の模式的斜視図である。
【図3】図2に示したナノミスト発生装置の長手方向断面図である。
【図4】ナノミスト発生装置のナノミスト発生ピンの好ましい形態を示した模式図である。
【図5】図3に示したナノミスト発生装置の先端部分を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 ヘアドライヤー
12 風路形成ケース
12a 風吹き出し口
14 本体ケース
16 ファン
18 モーター
20 ナノミスト発生装置
22 水タンク
24 ナノミスト発生ピン
26 水路
28 第1吸水体
30 第2吸水体
32 金属板
34 丸孔
36 電線
38 高電圧発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に風吹き出し口を有する風路形成ケース、およびこの風路形成ケースの外周であって、前記風吹き出し口の近傍に配置されたナノミスト発生手段を備え、前記ナノミスト発生手段は、風吹き出し口より前方に突出した少なくとも1本のナノミスト発生ピン、このナノミスト発生ピンに水を供給する水供給手段、および前記ナノミスト発生ピンのみに高電圧を印加して、ナノミストを発生させる高電圧発生手段を有し、前記ナノミスト発生ピンは、多数の合成樹脂繊維を束ねたものからなり、内部に多くの水を含むことができ、かつこの内部からの水がナノミスト発生ピンの表面に多く表れ、外部空気との接触面積が大きくなっていることを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項2】
前記高電圧発生手段は、発生する高電圧が可変である請求項1のヘアドライヤー。
【請求項3】
前記ナノミスト発生手段は、水タンク、およびこの水タンク内の水を前記ナノミスト発生ピンに導く水路を有しており、該水路にイオン交換樹脂の粒子が充填されている請求項1または2のヘアドライヤー。
【請求項4】
前記ナノミスト発生ピンの多数の合成樹脂繊維が溶融した合成樹脂により固められている請求項1〜3のいずれかのヘアドライヤー。
【請求項5】
前記ナノミスト発生ピンの先端部が、丸みを帯びている請求項1〜4のいずれかのヘアドライヤー。
【請求項6】
前記風路形成ケースは、本体ケースにより取り囲まれており、
上部において前記風路形成ケースと本体ケースの間には空間が設けられており、この空間に前記ナノミスト発生手段が配置されており、前記本体ケースの前端上部は前記ナノミスト発生ピンの先端より所定長さ前方に突出して延びている請求項1〜5のいずれかのヘアドライヤー。
【請求項7】
前記ナノミスト発生ピンの直径が2.0〜3.0mmであり、前記ナノミスト発生ピンに用いる合成樹脂繊維の平均直径が20〜30μmであり、前記ナノミスト発生ピンの内部の繊維間の空間の平均直径が20〜70μmである請求項1〜6のいずれかのヘアドライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−5718(P2009−5718A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167058(P2007−167058)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(391043996)株式会社テスコム (14)
【Fターム(参考)】