説明

ヘアドライヤー

【課題】温風と冷風とを同時に送風可能であって、有効に毛髪や地肌の過剰な過熱を防止することを可能としたヘアドライヤーの提供を図る。
【解決手段】ドライヤー本体2と送風ノズル3とから成り一のファンFで送風を行うヘアドライヤー1において、ドライヤー本体2が、境界壁6によりファンFと送出口8との中間位置にヒーターHが備えられることで温風を送風するための温風流路4と、冷風を送風するための冷風流路5とに分流された構造となっている。かかるドライヤー本体2の構造に合わせて、送風ノズル3も、境界壁12により温風を送風するための温風流路10と冷風を送風するための冷風流路11とに分流されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアドライヤーに関し、詳しくは、温風と冷風とを同時に送風可能なヘアドライヤーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘアドライヤーは、濡れた毛髪を乾燥させたり、髪型をセットする際に使用される。ところで、従来のヘアドライヤーは、温風あるいは冷風のいずれか一方のみを切替えにより送風するものであった。したがって、温風を毛髪に対して送風した際に、毛髪が熱せられすぎ、毛髪を痛めてしまうことがあった。また、毛髪を熱するだけでなく、地肌が熱せられてしまうこともあり、火傷の危険を伴うものであった。
【0003】
かかる問題を解決すべく、特開2005−334130号公報(特許文献1)に記載された技術が提案されている。これは、ヘアドライヤーの送風流路を左右の二つに分け、一方で温風を送風しつつ、他方で冷風を送風することで、温風と冷風とを同時に送風するようにしたものである。かかる提案によれば、温風と冷風を同時に送風することで、温風により毛髪や地肌が熱せられすぎた際に、即座に冷風を当てることが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−334130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1によると、温風と冷風とを同時に送風できるものの、実際にはヘアドライヤーの向きや角度を変更することで、毛髪や地肌に当たる送風が温風か冷風かを切替えるものであるため、結局のところ上述したような問題を根本から解決するものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、温風と冷風とを同時に送風可能であって、有効に毛髪や地肌の過剰な過熱を防止することを可能としたヘアドライヤーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ドライヤー本体と送風ノズルとから成り一のファンで送風を行うヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が、境界壁により、ファンと送出口との中間位置にヒーターが備えられることで温風を送風するための温風流路と、冷風を送風するための冷風流路とに分流されており、温風及び冷風を同時に送風可能とした構造となっている。
【0008】
また、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が境界壁からなる内筒と外壁とによる二重筒構造となっており、温風流路を構成する内筒の外周に該内筒と外壁とで冷風流路が構成されている構造とすることができる。
【0009】
さらに、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が外壁内に二の境界壁を備え、該二の境界壁と外壁とで温風流路が構成されているとともに、該温風流路の上下あるいは左右には夫々一の境界壁と外壁とで冷風流路が構成されている構造を採用することができる。
【0010】
そしてまた、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが、前記ドライヤー本体における温風流路並びに冷風流路に合わせて、境界壁により温風を送風するための温風流路と冷風を送風するための冷風流路とに分流されている構造を採用することもできる。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが境界壁からなる内筒と外壁とによる二重筒構造となっており、温風流路を構成する内筒の外周に該内筒と外壁とで冷風流路が構成されている構造を採ることが可能である。
【0012】
またさらに、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが外壁内に二の境界壁を備え、該二の境界壁と外壁とで温風流路が構成されているとともに、該温風流路の上下あるいは左右には夫々一の境界壁と外壁とで冷風流路が構成されている構造とすることもできる。
【0013】
そしてまた、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルにおける境界壁が、送風方向に対して傾斜角が20°〜45°の範囲内でテーパー状にあるいは角度を設けつつ絞り込まれた構造を採用することができる。
【0014】
そしてさらに、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体における冷風流路あるいは送風ノズルにおける冷風流路に、送風遮断機構が備えられている構造を採ることができる。
【0015】
またさらに、本発明は、前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体における温風流路並びに冷風流路あるいは送風ノズルにおける温風流路並びに冷風流路に、送風遮断機構が備えられている構造を採ることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるヘアドライヤーによれば、温風を送風するための温風流路を囲むようにあるいは挟むように冷風を送風するための冷風流路が配備された構造を採用しているため、温風の周囲を冷風でガードすることが可能であり、毛髪を温風で当てつつその周囲の地肌を冷風で保護することができる。
【0017】
また、本発明にかかるヘアドライヤーによれば、温風と冷風とが程良く混合することで、毛髪や地肌の過剰な過熱を有効に防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかるヘアドライヤー1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明にかかるヘアドライヤー1の実施形態を示す断面図である。
本実施形態におけるヘアドライヤー1は、図面に示すように、ドライヤー本体2と送風ノズル3とから構成され、一のファンFで送風を行うヘアドライヤー1である。
【0020】
ドライヤー本体2は、ファンFと送出口8との中間位置にヒーターHが備えられることで、温風を送風するための温風流路4が備えられている。また、該温風流路4の周囲には、冷風を送風するための冷風流路5が備えられている。かかる構造を採用することにより、該送出口8より温風及び冷風を同時に送風することが可能となっている。
【0021】
ドライヤー本体2における温風流路4と冷風流路5とは、境界壁6によって区切られ分流されている。かかる境界壁6による温風流路4並びに冷風流路5の具体的な構造については、例えば図2に示すように、境界壁6による内筒と外壁7とによる二重筒構造を採用し得る。このとき、内筒は温風流路4を構成し、該温風流路4を構成する内筒の外周には、該内筒と外壁7とで冷風流路が構成されている。
【0022】
また、かかる境界壁6による温風流路4並びに冷風流路5の具体的な構造については、例えば図3に示すように、外壁7内に二の境界壁6を備えた構造を採用し得る。このとき、二の境界壁6と外壁7とで囲まれた部分で温風流路4が構成され、該温風流路4の上下あるいは左右において、夫々一の境界壁6と外壁7とで囲まれた部分が、冷風流路5を構成することとなる。
【0023】
送風ノズル3は、境界壁12により温風を送風するための温風流路10を備えているとともに、該温風流路10の周囲には、冷風を送風するための冷風流路11が備えられている。かかる構造を採用することにより、前記ドライヤー本体2の送出口8から送られてくる温風及び冷風を、そのまま分流した状態で送風することが可能となっている。
【0024】
送風ノズル3における温風流路10と冷風流路11とは、境界壁12によって区切られ分流されている。かかる境界壁12による温風流路10並びに冷風流路11の具体的な構造については、前記ドライヤー本体2における温風流路4並びに冷風流路5に合わせた構造を採用する。例えば図2に示すように、ドライヤー本体2について二重筒構造を採用した場合、送風ノズル3についても境界壁12からなる内筒と外壁13とによる二重筒構造を採用する。このとき、内筒は温風流路10を構成し、該温風流路10を構成する内筒の外周には、該内筒と外壁13とで冷風流路11が構成されることとなる。
【0025】
また、かかる境界壁12による温風流路10並びに冷風流路11の具体的な構造について、例えば図3に示すように、ドライヤー本体2について外壁7内に二の境界壁6を備えた構造を採用した場合、送風ノズル3についても外壁13内に二の境界壁12を備えた構造を採用する。このとき、二の境界壁12と外壁13とで囲まれた部分により温風流路10が構成され、該温風流路10の上下あるいは左右において、夫々一の境界壁12と外壁7とで囲まれた部分が、冷風流路11を構成することとなる。
【0026】
なお、送風ノズル3における境界壁12については、図面に示すように、送風方向に対して20°〜45°の範囲内で傾斜角を設ける構造とすることが望ましく、かかる範囲内でも、温風並びに冷風の吹き出し角度についての経験則上、特に30°前後が最も好ましい。すなわち、該境界壁12は、図2に示すようにテーパー状に、あるいは、図3に示すように角度を設けつつ、絞り込まれた構造となる。かかる構造を採用することにより、各温風・冷風ともに夫々風圧を向上させることができるとともに、温風の外側を送風される冷風が外方向へ逃げるのを防止することができ、さらには、中心に送風される温風を外側の冷風で確実に隔離することが可能となる。
【0027】
このとき、送風ノズル3における境界壁12並びに外壁13について、図示されてはいないが、自由に角度の調節が可能なように構成することも考え得る。かかる構成を採用することで、ヘアドライヤー1の使用者に応じて、温風や冷風の吹き出し角度を自由に設定することが可能となって、使い勝手が格段に良くなる。
【0028】
本発明にかかるヘアドライヤー1は、以上の通り構成され、電源ONにすることによりファンFが作動して、ドライヤー本体2における吸入口9から吸入された空気が温風流路4や冷風流路5を通過し、送出口8から送風ノズル3へ送られ、送風ノズル3における温風流路10や冷風流路11を通過し、最終的に送風口14から送風されることとなる。このとき、温風流路4内にあるヒーターHの作用により、吸入口9から吸入された空気が熱せられ、温風流路4からは温風が送風されることとなる。また、該温風流路4の周囲に配備された冷風流路5からは、境界壁6で区切られることにより温風流路4内のヒーターHによる加熱が行われることなく、吸入口9から吸入された空気がそのまま冷風として送風されることとなる。これにより、温風と冷風とを送風ノズル3を介して同時に送風することが可能となる。
【0029】
このとき、図4に示すように、ドライヤー本体2における冷風流路5、あるいは、送風ノズル3における冷風流路11に、送風遮断機構17が備えられた構造も考え得る。なお、図面では、送風ノズル3をドライヤー本体2に対して出し入れすることで、かかる送風遮断機構17が機能する構成について示している。ただし、本発明にかかる送風遮断機構17の構造については、手動的であると自動的であるとを問わず、冷風流路5,11を塞いで冷風を効果的に遮断することが可能であれば、図示した構造に限定されるものではない。かかる構造によれば、ドライヤー本体2あるいは送風ノズル3のいずれかにおいて、冷風の送風を効果的に遮断することが可能となり、必要に応じて温風のみを送風することが可能になる。
【0030】
また、ドライヤー本体2における温風流路4あるいは送風ノズルにおける温風流路10に、送風遮断機構15を備える構造を採用することも考え得る。なお、図4では、ドライヤー本体2における温風流路4に送風遮断機構15を備えた構成について図示している。該図面では、遮断板を手動的に回転させることで温風の遮断を行う構造の送風遮断機構15について示しているが、該送風遮断機構15の構造については、手動的であると自動的であるとを問わず、温風流路4,10を塞いで温風を効果的に遮断することが可能であれば、図示した構造に限定されるものではない。かかる構造を採用することにより、必要に応じて送風遮断機構15を切替スイッチ16で操作して、冷風のみの送風、あるいは、温風及び冷風両方の送風を、自在に切替えることが可能となる。
【0031】
かかる送風遮断機構15,17について、上述において冷風流路5,11における送風遮断機構17と温風流路4,10における送風遮断機構15とを別々に説明したが、冷風流路5,11における送風遮断機構17並びに温風流路4,10における送風遮断機構15とを同時に本発明に採用することが可能であることは、いうまでもない。
【0032】
また、ドライヤー本体2において、ヒーターHによる加熱行わずに、温風流路4,10及び冷風流路5,11の両方から冷風のみを送風させることが可能であることについても、いうまでもない。
【0033】
以上のように、本発明にかかるヘアドライヤー1によれば、温風の周囲を冷風でガードしながらヘアドライヤー1を使用することができるため、毛髪にピンポイントで温風を送風しつつ、周囲の地肌には冷風を送風することが可能であり、地肌の火傷の危険を解消することができる。
そしてまた、温風と冷風とが程良く混合することで、毛髪や地肌の過剰な過熱を有効に防止することが可能になるため、毛髪を傷めたりする心配もない。
さらにまた、温風でセットした毛髪を冷風により固める作業を、容易かつ即座に行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかるヘアドライヤー1は、簡単な構造で温風と冷風とを同時に送風可能とすることで、該ヘアドライヤー1を使用することによって伴う危険を解消することができるとともに、温風のみや冷風のみを送風することが可能であり、個人的にも理美容界においても使用価値が充分であって、本発明の産業上の利用可能性は非常に大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかるヘアドライヤーの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかるヘアドライヤーの実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明にかかるヘアドライヤーの実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明にかかるヘアドライヤーの実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ヘアドライヤー
2 ドライヤー本体
3 送風ノズル
4 温風流路
5 冷風流路
6 境界壁
7 外壁
8 送出口
9 吸入口
10 温風流路
11 冷風流路
12 境界壁
13 外壁
14 送風口
15 送風遮断機構
16 切替スイッチ
17 送風遮断機構
F ファン
H ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライヤー本体と送風ノズルとから成り一のファンで送風を行うヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が、境界壁により、ファンと送出口との中間位置にヒーターが備えられることで温風を送風するための温風流路と、冷風を送風するための冷風流路とに分流されており、温風及び冷風を同時に送風可能としたことを特徴とするヘアドライヤー。
【請求項2】
前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が境界壁からなる内筒と外壁とによる二重筒構造となっており、温風流路を構成する内筒の外周に該内筒と外壁とで冷風流路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘアドライヤー。
【請求項3】
前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体が外壁内に二の境界壁を備え、該二の境界壁と外壁とで温風流路が構成されているとともに、該温風流路の上下あるいは左右には夫々一の境界壁と外壁とで冷風流路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘアドライヤー。
【請求項4】
前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが、前記ドライヤー本体における温風流路並びに冷風流路に合わせて、境界壁により温風を送風するための温風流路と冷風を送風するための冷風流路とに分流されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のヘアドライヤー。
【請求項5】
前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが境界壁からなる内筒と外壁とによる二重筒構造となっており、温風流路を構成する内筒の外周に該内筒と外壁とで冷風流路が構成されていることを特徴とする請求項4に記載のヘアドライヤー。
【請求項6】
前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルが外壁内に二の境界壁を備え、該二の境界壁と外壁とで温風流路が構成されているとともに、該温風流路の上下あるいは左右には夫々一の境界壁と外壁とで冷風流路が構成されていることを特徴とする請求項4に記載のヘアドライヤー。
【請求項7】
前記ヘアドライヤーにおいて、送風ノズルにおける境界壁が、送風方向に対して傾斜角が20°〜45°の範囲内でテーパー状にあるいは角度を設けつつ絞り込まれた構造となっていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載のヘアドライヤー。
【請求項8】
前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体における冷風流路あるいは送風ノズルにおける冷風流路に、送風遮断機構が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のヘアドライヤー。
【請求項9】
前記ヘアドライヤーにおいて、ドライヤー本体における温風流路並びに冷風流路あるいは送風ノズルにおける温風流路並びに冷風流路に、送風遮断機構が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のヘアドライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274050(P2010−274050A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132400(P2009−132400)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(501305338)
【Fターム(参考)】