説明

ヘイズの低い、赤外線吸収性の合わせガラス用中間膜

本発明は、分散剤として一又は二塩基酸リン酸エステル化合物を有する赤外線吸収性粒子を膜中で均一に分散させることによって、太陽放射が引き起こす熱に対する断熱材を供給する、安全ガラス用中間膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一に分布したナノスケールの赤外線吸収性粒子を含有する中間膜に関する。前記膜は、熱遮蔽性を有する合わせガラスの製造に有益である。また、本発明は前記膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスの製造に中間膜を使用することは、当該の技術分野で長く知られている。合わせガラスは、自動車、航空機又は建築用途で広く使用されており、太陽光の可視及び近赤外線領域に対して光学的に透明である。ガラスを通過する赤外線は、車又は建造物内部の望まれない温度上昇の主な理由となり、エネルギーを消費する空調装置によって取り除く必要がある。
【0003】
被覆ガラスを用いて、太陽光を一部反射することにより、太陽光からの赤外線を少なくとも一部取り除くことも、当該の技術分野では長く知られている。被覆ガラスは高価であり、被覆に機械的欠陥を有している。
【0004】
熱遮蔽合わせガラス製造用の赤外線吸収性を有する中間膜も知られている。このような膜は、アンチモンドープ酸化錫(ATO)又はインジウムドープ酸化錫(ITO)のような赤外線吸収物質を微粒子の形で含有している。前記粒子は、粒子の凝集によるヘイズを防ぐため、中間膜で均一に分散していなければならない。さらに、粒子は可視光の波長より小さくなければならず(すなわち300nm未満)、さもないと合わせガラスの光学的透明性が不十分となる。
【0005】
赤外線吸収中間膜の製造については、例えばEP1419999A1、EP1795508A1又はEP1785404A1に開示されている。これらの公報では、膜の製造について次のような工程が開示されている:まず、例えば可塑剤中の赤外線吸収性粒子の分散液を製造し、次に、その赤外線吸収性粒子の分散液及びポリマーマトリックス(通常はポリビニルブチラール)並びに任意で可塑剤と混合し、そして通常は押出成形によってその混合物から膜を成形する。この方法でよくある問題としては、分散液中又はポリマーマトリックス中で微粒子が再凝集する傾向にあり、結果として膜又は最終の積層物に受け入れ難いヘイズを引き起こすことである。
【0006】
従って、本発明の目的は、ナノスケールの赤外線吸収性粒子の凝集を防ぐことにより、赤外線吸収性及び優れた光学特性を有する中間膜を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、可塑化されたポリビニルアセタールをベースにした膜において、赤外線吸収性粒子の均一な分布を安定化させる分散剤として、一又は二塩基酸リン酸エステル化合物が特に適していることが分かった。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、
−少なくとも一種のポリビニルアセタールを40〜80重量%、
−少なくとも一種の可塑剤を15〜35重量%、
−赤外線吸収性粒子を0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、及び
−分散剤として少なくとも一種の一塩基酸リン酸エステル化合物及び/又は二塩基酸リン酸エステル化合物を0.001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.01〜1重量%
含む安全ガラス用中間膜である。
【0009】
一又は二塩基酸リン酸エステル化合物は、酸性であるものの、膜の接着性又は黄色度に負の影響は見られない。上述の量においては、これらはポリマーマトリックスと相容性があり、可塑剤のにじみ出やヘイズの形成は起こらない。
【0010】
分散剤として特に有用であるのは、下記式(I)の化合物である。
(HO)3−x−P(O)−(OR)
Rは、分岐又は直鎖状であって、少なくとも一種のカルボン酸基及び/又は少なくとも一種のエーテル機能を有する分子量が100〜10000の脂肪族又は脂環式炭化水素鎖であって、かつ、xが1又は2である。Rは、エトキシ化ラウリルアルコールのような炭素数3〜22のエトキシ化アルコール残基、Mnが160〜1000のエトキシ化ノニルフェノール残基、Mnが300〜1000のメトキシポリエチルグリコール残基、又は、ジ又はトリプロピレングリコールモノメチルエーテル残基からなっていてもよい。Xは1又は2でありうる。
【0011】
分散剤として特に有用であるのは、HLB値が7〜19である一又は二塩基酸リン酸エステル化合物である。HLB値は、分子、特に界面活性剤の疎水性を、それらの疎水性及び親水性基によって特徴付けた経験値である。本発明のHLB値は、式HLB=20x(1−Mhp/M)を用いて、Griffin and Stache, Tensid-Taschenbuch (1979), 70-72に従って計算されるもので、ここでMhpは分子の疎水性部分の分子量であり、Mは分子の分子量であり、1〜20であろう。
【0012】
本発明の中間膜用の分散剤は、オルトリン酸又はポリリン酸と、ポリエーテル−ポリエステル、ポリエーテル−ポリウレタン及び/又はポリエーテル−ポリエステル−ポリウレタン等のモノヒドロキシ化合物との反応物として得てもよい。反応中のこれらの化合物の理論混合比に応じて、一リン酸エステル及び/又は二リン酸エステル、又はそれらの混合物が得られる。
【0013】
例えば、ドイツのBYK Chemie GmbHから入手可能な製品“Disperbyk”が、本発明を実施するのに適した分散剤である。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、少なくとも一種のポリビニルアセタールポリマーa’を40〜80重量%、少なくとも一種の可塑剤a”を15〜40重量%、赤外線吸収性粒子を0.01〜10重量%及び分散剤として少なくとも一種の一又は二塩基酸リン酸エステル化合物を0.1〜10重量%含む少なくとも一つの層a)、並びに、少なくとも一種のポリビニルアセタールポリマーb’及び少なくとも一種の可塑剤b”を15〜40重量%含む少なくとも一つの層b)からなる多層膜である。
【0015】
ガラスに対する中間膜の接着レベルを調整するためには、一つの層a)が二つの層b)に挟まれてなることが好ましく、それによって、積層工程中に赤外線吸収性粒子とガラス表面との接触が避けられる。これは、例えばフィードブロック装置又は多層ダイで多層押出しすることによって容易になされうる。
【0016】
ポリビニルアセタールポリマーa’及びb’は、一種又は少なくとも二種の異なるポリビニルアセタールポリマーの混合物を含んでいてもよい。ポリビニルアセタールポリマーa’及びb’は、化学的に異なるか同一であってもよい。さらに、可塑剤a”及びb”は、単一化合物か少なくとも二種の可塑剤の混合物からなっていてもよい。可塑剤a”及びb”は化学的に異なっていても、同一であってもよい。
【0017】
本発明の好適なバージョンでは、層a)及びb)で使用されるポリビニルアセタールポリマーa’及びb’、可塑剤a”及びb”が同一である、及び/又は、ポリビニルアセタールポリマーa’及びb’、可塑剤a”及びb”の量が同一である。この場合、層a)及びb)は、層a)において赤外線吸収性粒子及び分散剤が添加されている以外は同一の組成を有する。
【0018】
ヘイズの発生を減少させるためには、本発明で用いられる赤外線吸収性粒子の平均粒子径は10〜300nmであるべきであり、好ましくは30〜60nmである。本発明で用いられる赤外線吸収性粒子は、例えば、インジウムドープ酸化錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、無水アンチモン酸亜鉛(ZnO xSb)、六ホウ化ランタン(LaB6)、六ホウ化セリウム(CeB)及び/又はガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)を含む。
【0019】
さらに、赤外線吸収性粒子は、単一化合物からなっていてもよいし、少なくとも二種の赤外線吸収性粒子の混合物からなっていてもよい。
【0020】
特に好ましくは、モル比が0.8〜1.2:1の(ZnO xSb)を含む赤外線吸収性粒子を使用することである。そのような物質は、日産化学工業株式会社から商品名CELNAX CX−Z693M−Fが、メタノールスラリーとして入手可能である。
【0021】
赤外線吸収性粒子、特に(ZnO xSb)のゾルにおいては、しかしながら、一次粒子が凝集し、結果として平均粒子径は約100nm以上となる。従って、より小さな又はより均一な粒子の分散液を得るために、機械的な粉砕操作を施すことが好ましい。微細に分散させるため分散液中の無水アンチモン酸亜鉛を粉砕する装置の例としては、サンドミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、アトライター、ペイントシェイカー、高速撹拌機、超音波分散機及びビーズミルが挙げられる。無水アンチモン酸亜鉛の凝集粒子は、このような装置を使用して、粉砕して分散させることが可能である。小さな平均粒子径を効率的に得るためには、ビーズミルが好適である。ビーズミルにおいては、粉砕するために、粉砕媒体としてビーズが使用される。従って、ビーズの直径は0.2mm未満であることが好ましく、特に0.1mm未満が好ましく、特に0.05mm未満が好ましい。直径0.2mmを超えるビーズが使用された場合、得られる粒子が十分に小さくならないことがある。
【0022】
粒子の再凝集を防ぎ、可塑剤及び/又はポリマーマトリックスとの混合工程を単純化させるため、粉砕工程は可塑剤及び/又は分散剤の存在下で行ってもよい。
【0023】
さらに、粉砕工程の前、途中又は後において、粒子が表面改質されてもよい。改質に用いられる改質剤は、無機粒子と有機ポリマー及び可塑剤との間の親和性を高めるべきである。
【0024】
好適な改質剤としては、例えば、シロキサン、リン酸エステル、アルキルアミン、シラン、シリケート又はアルキル側鎖を有する有機金属化合物である。改質剤として特に有用であるのは、ポリビニルアセタールであり、それにより、例えば使用される可塑剤及び/又は分散剤のメタノール溶液中で粒子が改質される。粒子を改質するのに用いられるポリビニルアセタールは、中間膜を形成する際に使用されるポリビニルアセタールと同一であってもよいし、それより低い分子量を有するポリビニルアセタールであることが好ましい。改質剤は、粒子に対して0.01〜5重量%、粒子に被覆されてもよい。
【0025】
本発明で使用されるポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールを炭素数1〜10の一種又は二種以上のアルデヒドと反応させることによって得られる。好ましくは、ブチラールアルデヒドがポリビニルブチラールの製造に使用される。
【0026】
本発明で使用されるポリビニルアセタールは、通常、ポリビニルアルコール基を11〜22重量%有し、好ましくは15〜21重量%である。
【0027】
膜における可塑剤の量は、(膜の全組成に対して)15〜40重量%であるべきであり、好ましくは20〜35重量%である。本発明の中間膜は、ポリビニルアセタールの可塑化で知られる一種又は二種以上の可塑剤を有していてもよい。特に有用であるのは、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−2−エチルヘキサノエート(4GOもしくは4G8)、ジ−2−ブトキシエチルアジペート(DBEA)、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ−2−ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート(DINP)、トリエチレングリコール−ビス−イソノナノエート、トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)及びジプロピレングリコールベンゾエートからなる群から選ばれる可塑剤である。
【0028】
本発明の中間膜は、合わせガラスの技術分野における当業者に公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤とは、例えば、UV安定剤、酸化安定剤、着色剤、顔料及び接着力調整剤である。
【0029】
接着力調整剤としては、通常、炭素数1〜10の有機酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩が使用される。好適には、ギ酸、酢酸又はオクタン酸のナトリウム、カリウム及び/又はマグネシウム塩を、膜の全組成に対して総量で0.001〜1重量%使用する。
【0030】
本発明のさらなる目的は、中間膜又は多層膜の製造方法である。
【0031】
本発明の中間膜又は多層膜は、まず赤外線吸収性粒子を分散剤中に分散させてから、得られた分散液をポリビニルアセタール及び少なくとも一種の可塑剤と同時に押出すことによって得てもよい。また、赤外線吸収性粒子を加える前に、まず少なくとも一部の可塑剤と分散剤とを混合しておくことによって赤外線吸収性粒子の分散液を得ることも可能である。
【0032】
混合及び成形のため、押出機のフィーダーに上記化合物を別々に加えてもよい。より好ましくは、まず、赤外線吸収性粒子の分散液を可塑剤の少なくとも一部と混合し、第二の分散液を得る。それから、第二の分散液を、ポリビニルアセタール及び残りの可塑剤がある場合はそれと押出条件下で混合する。
【0033】
本発明を実施する別の方法としては、まず、分散剤中に赤外線吸収性粒子を分散させ、次に、例えば押出工程中に押出機のサイドフィード法を用いて、既に調製しておいた可塑剤及びポリビニルアセタールの混合物にこの分散剤を添加する。
【0034】
本発明の多層膜は、(赤外線吸収性粒子を含有する)層a)及び(赤外線吸収性粒子を含有していない)層b)を単一の押出ダイ又はフィードブロック装置において共押出しすることにより製造してもよい。あるいは、層a)及びb)を別々に押出した後に、それらを結合する。
【0035】
さらに、本発明の多層膜に音減衰特性を付与することも可能である。このような音減衰多層膜は3層を含んでいてもよく、外層が膜の機械的剛性を付与する。中心層は外層よりも柔軟で、音減衰特性を付与する。柔軟層及び硬質層は、例えば、5〜8モル%というより高いポリビニルアセタール含有量を有するポリビニルアセタールを中心層とし、1モル%以下のポリビニルアセタールの含有量を有するポリビニルアセタールを外層として用いることにより得られる。このような膜及びポリビニルアセタールの製造は、EP 08104948に開示されている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の赤外線吸収性粒子を有する中間膜は、特に、自動車フロントガラス用又は建造物の窓のような建築用途の合わせガラスの製造に有益である。
【実施例】
【0037】
実施例を参照して本発明をより詳細に記載するが、発明は実施例により何ら限定されるものではない。次の実施例及び比較例において、分散液における平均粒子径、可視光透過率、日射透過率及びヘイズは、下記に記載した方法に従って測定した。
【0038】
[分散液中の平均粒子径]
分散液中の平均粒子径は、He−Neレーザー付の大塚電子株式会社製ダイナミック光散乱光度計“DLS−7000”を用いて測定した。
【0039】
[可視光透過率及び日射透過率]
作製した合わせガラス板に対し、島津製作所製分光光度計“Solid spec 3700”を使用して、280〜2500nmの波長領域で透過率を測定した。それから、380〜780nm領域の可視光透過率(%)を、JIS R3106に従って測定した。さらに、300〜2500nm領域の日射透過率(%)を、JIS R3106で提供されている重価係数を用いて測定した。
【0040】
[ヘイズ]
作製した合わせガラス板のヘイズ(%)をJIS K7105に従って測定した。
【0041】
[電磁波透過率]
電磁波シールド効果測定法(関西電子工業振興センター法)に従って、10MHz〜1GHzの周波数領域で反射損失値を測定し、2mm厚のガラス単板を用いて得られた値と比較した。測定周波数領域全体で比較を行い、次の基準に従って差(ΔdB)を測定することにより、電磁波透過率を評価した。
A:ΔdBが5dB以内である(合格)
B:ΔdBが5dBを超える
【0042】
実施例1
[分散液の調製]
ZnO/Sb2O5モル比が0.8〜1.2である無水アンチモン酸亜鉛の60重量%メタノール分散液(日産化学工業株式会社製“CX−Z693M−F”)を、ビーズミル(0.05mmのビーズを使用)で粉砕処理することにより、分散液(d1)を得た。無水アンチモン酸亜鉛の平均粒子径は37nmであった。分散液(d1)を0.27g、リン酸エステル“DISPERBYK 102”(BYK−Chemie GmbH製)を0.032g加えることによって、分散液(d2)を得た。更に、分散液(d2)を撹拌する間、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(以後、3G8と省略する)を可塑剤として15.2g添加することによって、無水アンチモン酸亜鉛が分散した分散液(d3)を得た。
【0043】
[合わせガラス用中間膜の製造]
上述のようにして調製した分散液(d3)を、ポリビニルブチラール(A2)(原料のポリビニルアルコールの粘度平均分子量1700、アセタール化度72モル%)40gに添加し、その後混合した。得られた混合物を、ラボプラストミル中170℃で混練してから、プレス機を用いて140℃で5分間プレス成形することにより、厚みが0.76mmの合わせガラス用中間膜を製造した。
【0044】
[合わせガラスの製造]
得られた合わせガラス用中間膜を、2枚の2mm厚ガラス板(サンゴバン株式会社製Planilux Clear)の間に挟んでから、減圧下、140℃で90分間保持することによって、合わせガラスを製造した。
【0045】
実施例2
実施例1と同様の方法で作製した分散液(d2)を撹拌している間に、可塑剤として3G8を5.2g添加することにより、無水アンチモン酸亜鉛が分散し、リン酸エステル及び可塑剤が溶解した分散液(d3)を得た。前記分散液(d3)を、可塑剤10g、25重量%酢酸マグネシウム水溶液0.18g、25重量%酢酸カリウム水溶液0.09g及びポリビニルアルコール(原料のポリビニルアルコールの粘度平均分子量1700、アセタール化度72モル%)40gの混合物と混合した。得られた混合物を実施例1と同様に成形し、サンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0046】
実施例3
分散液(d2)を調製する際、分散液(d1)を0.5g、リン酸エステル“DISPERBYK 102”(BYK−Chemie GmbH製)を0.1g加えた以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0047】
実施例4
実施例1と同様の方法で作製した分散液(d2)を撹拌している間に、可塑剤として3G8を5.2g添加することにより、無水アンチモン酸亜鉛が分散し、リン酸エステル及び可塑剤が溶解した分散液(d3)を得た。前記分散液(d3)を、可塑剤10g、25重量%酢酸マグネシウム水溶液0.18g及び25重量%酢酸カリウム水溶液0.09gの混合物と混合した。
【0048】
Leisriz2軸押出機のフィーダーに、この混合物又はその倍数量を、ポリビニルブチラール(原料のポリビニルアルコールの粘度平均分子量1700、アセタール化度72モル%)40g又はその倍数量と共に、72重量%PVB及び28重量%可塑剤の混合物が得られるような量で加えて、厚みが0.76mmの膜を220℃で押出成形した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0049】
実施例5
分散液(d1)を1.6g、“DISPERBYK 102”を0.19g使用した以外は、実施例4と同様に分散液を調製した。こうして調製された分散剤を、Leisriz2軸押出機のフィーダーにおいて、ポリビニルブチラール(原料のポリビニルアルコールの粘度平均分子量1700、アセタール化度72モル%)40g又はその倍数量に、72重量%PVB及び28重量%可塑剤の混合物が得られるような量で加えて、厚みが0.120mmの膜を220℃で押出成形した。得られた中間膜を、膜厚が0.32mmである以外は比較例3と同様にして得た2枚のPVB膜の間に挟んで、全厚みが0.76mmの多層膜を得た。多層膜は、第二の2軸押出機及びフィードブロック又は多層ダイを使用して多層押出成形によって得ることも可能である。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0050】
実施例6
実施例5と同様に分散液を調製し、こうして調製された分散剤を、Leisriz2軸押出機のフィーダーにおいて、ポリビニルブチラール(原料のポリビニルアルコールの粘度平均分子量1700、アセタール化度78モル%)40g又はその倍数量に、65重量%PVB及び35重量%可塑剤の混合物が得られるような量で加えて、厚みが0.120mmの膜を220℃で押出成形した。得られた中間膜を、膜厚が0.32mmである以外は比較例3と同様にして得た2枚のPVB膜の間に挟んで、全厚みが0.76mmの多層膜を得た。多層膜は、第二の2軸押出機及びフィードブロック又は多層ダイを使用して多層押出成形によって得ることも可能である。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0051】
比較例1
無水アンチモン酸亜鉛のメタノール分散液を使用しない以外は、実施例1と同様にサンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0052】
比較例2
リン酸エステルを添加しない以外は、実施例1と同様にサンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0053】
比較例3
リン酸エステル及び赤外線吸収性粒子を添加しない以外は、実施例4と同様にサンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0054】
比較例4
リン酸エステルを添加しない以外は、実施例4と同様にサンプルを作製した。サンプルの作製条件を表1に示す。得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0055】
[評価]
得られた合わせガラス用中間膜及び得られた合わせガラスの性能について評価した結果を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1におけるそれぞれの数字は、PVB樹脂100部に対する部数である。:25重量%酢酸マグネシウム水溶液0.45部+25重量%酢酸カリウム水溶液0.23部が接着力調整剤として添加されている。ZA:アンチモン酸亜鉛;DA:分散剤(DISPERBYK 102)
【0058】
【表2】

【0059】
表1及び2からわかるように、本発明の膜は、高い可視光透過率及び低い日射透過率を示し、それにより、許容範囲のヘイズ値に加えて良好な断熱が供給される。
【0060】
本発明の膜は十分な電磁波透過率を有しており、このことは自動車フロントガラスにおける中間膜として使用するのに重要である。赤外線吸収性粒子を含有するが分散剤のない比較例は、受け入れ難いヘイズと可視光透過率値を有する一方で、赤外線吸収性粒子及び分散剤のない膜は、断熱性を有していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤として少なくとも一種の一塩基酸リン酸エステル化合物及び/又は二塩基酸リン酸エステル化合物を0.001〜10重量%加えることを特徴とする、
−少なくとも一種のポリビニルアセタールを40〜80重量%、
−少なくとも一種の可塑剤を15〜35重量%、
−赤外線吸収性粒子を0.01〜10重量%
含む安全ガラス用中間膜。
【請求項2】
分散剤として式Iの化合物を用いることを特徴とする請求項1記載の中間膜。
(HO)3−x−P(O)−(OR)
Rは、分岐又は直鎖状であって、少なくとも一種のカルボン酸基及び/又は少なくとも一種のエーテル機能を有する分子量が100〜10000の脂肪族又は脂環式炭化水素鎖であって、かつ、xが1又は2である。
【請求項3】
上記分散剤が、オルトリン酸又はポリリン酸と、ポリエーテル−ポリエステル、ポリエーテル−ポリウレタン及び/又はポリエーテル−ポリエステル−ポリウレタン等のモノヒドロキシ化合物との反応物の反応物であることを特徴とする請求項1又は2記載の中間膜。
【請求項4】
上記赤外線吸収性粒子が、インジウムドープ酸化錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、無水アンチモン酸亜鉛(ZnO xSb)、六ホウ化ランタン(LaB6)、六ホウ化セリウム(CeB)及び/又はガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中間膜。
【請求項5】
上記赤外線吸収性粒子が、モル比が0.8〜1.2であるZnO xSbを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中間膜。
【請求項6】
上記赤外線吸収性粒子の平均粒子径が10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中間膜。
【請求項7】
少なくとも一種のポリビニルアセタールポリマーa’を40〜80重量%、少なくとも一種の可塑剤a”を15〜30重量%、赤外線吸収性粒子を0.01〜10重量%及び分散剤として少なくとも一種の一又は二塩基酸リン酸エステル化合物を0.1〜10重量%含む少なくとも一つの層a)、並びに、少なくとも一種のポリビニルアセタールポリマーb’及び少なくとも一種の可塑剤b”を15〜30重量%含む少なくとも一つの層b)からなる多層膜。
【請求項8】
層a)が二つの層b)に挟まれてなることを特徴とする請求項7記載の多層膜。
【請求項9】
層a)及びb)において、化学的に同一のポリビニルアセタールが使用されてなることを特徴とする請求項7又は8に記載の多層膜。
【請求項10】
層a)及びb)において、化学的に同一の可塑剤が使用されてなることを特徴とする請求項7又は8に記載の多層膜。
【請求項11】
層a)及びb)において、ポリビニルアセタール及び可塑剤が同量使用されてなることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の多層膜。
【請求項12】
赤外線吸収性粒子を分散剤中に分散させ、得られた分散液をポリビニルアセタール及び少なくとも一種の可塑剤と同時に押出すことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の中間膜又は多層膜の製造方法。
【請求項13】
赤外線吸収性粒子を分散剤中に分散させて得られた第一の分散液を、少なくとも一種の可塑剤の少なくとも一部と混合し、第二の分散液を得て、ポリビニルアセタール及び残りの少なくとも一種の可塑剤と押出条件下で混合することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の中間膜又は多層膜の製造方法。
【請求項14】
単一の押出ダイにおいて層a)及びb)が共押出しされることを特徴とする請求項7〜11のいずれか記載の多層膜の製造方法。
【請求項15】
層a)及びb)を別々に押出した後に、それらを結合することを特徴とする請求項7〜11のいずれか記載の多層膜の製造方法。


【公表番号】特表2012−530034(P2012−530034A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515488(P2012−515488)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058521
【国際公開番号】WO2010/146107
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507311946)クラレ・ヨーロッパ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50 Frankfurt am Main 65926 Germany
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】