説明

ヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法

【課題】透過光を検出することなくヘイズ値を求めることを可能とする。
【解決手段】測定光を射出する光源31と、光源31から射出された測定光を平行光束にして測定試料1に向けて射出する照射光学系33と、照射光学系33から射出された測定光による測定試料1からの反射光の光量を検出する検出光学系40と、検出光学系40により検出された反射光に含まれる正反射光成分と拡散反射光成分とに基づき、測定試料1のヘイズ値を算出する演算手段71とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性材料からなる測定試料のヘイズ値を測定するためのヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、光学結晶等の透光性材料の曇り度合いを示す指標値として、ヘイズ値が知られている。このヘイズ値は、JIS Z7105において、下記の数式(1)により定義されている。透光性材料の曇り度合いが大きくなるほど、試験片に対して平行光を照射したときに材料内部での散乱が大きくなり、試験片を透過する平行透過光(正透過光)に対する拡散透過光の割合が大きくなる結果、ヘイズ値が大きくなることになる。

【0003】
このヘイズ値の測定方法は、JIS K7105やJIS K7136に規定されており、そのヘイズ値を測定するうえでは、図5に示すような、積分球を用いた測定装置100が利用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
この従来のヘイズ値測定装置100は、図5に示すように、光源131と、光源131から射出された光を平行光にして測定試料101に向けて射出する照射光学系133と、測定試料101を透過した透過光が導入される積分球140と、積分球140内に導入された透過光を検出する光検出器153とを備えている。測定試料101を透過して積分球140内に導入される透過光としては、正透過光と拡散透過光との二種類がある。このヘイズ値測定装置100では、積分球140内での正透過光の光路中に配置されるものを標準白色板141とライトトラップ142との何れかに切り替えることが可能となっており、標準白色板141を配置した場合、全光線透過光量を光検出器153により検出することが可能となり、ライトトラップ142を配置した場合、拡散透過光量を光検出器153により検出することが可能となる。このヘイズ値測定装置100を用いて検出された全光線透過光量と拡散透過光量とから、上述のヘイズ値が算出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−356092号公報
【特許文献2】特開2007−57534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から提案されているヘイズ値の測定方法は、測定試料101に測定光を照射して得られる透過光を検出してヘイズ値を測定することとしているため、光源131及び照射光学系133と、積分球140及び光検出器153との間に測定試料101を配置する構造にならざるを得ない。このため、従来のヘイズ値の測定方法では、測定試料101の両面側に光源131、光検出器153、積分球140等の各種部品を配置せざるを得ない関係上、測定装置100全体が大型化し易くなるうえ、測定装置100のレイアウトの自由度が制限されてしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、透過光を検出することなくヘイズ値を求めることを可能とするヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記のヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法を発明した。
【0009】
第1発明に係るヘイズ値測定装置は、透光性材料からなる測定試料のヘイズ値を測定するためのヘイズ値測定装置において、測定光を射出する光源と、前記光源から射出された測定光を平行光束にして前記測定試料に向けて射出する照射光学系と、前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの反射光の光量を検出して信号を出力する検出光学系と、前記検出光学系からの出力信号に含まれる正反射光成分と拡散反射光成分とに基づき、前記測定試料のヘイズ値を算出する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係るヘイズ値測定装置は、第1発明において、前記演算手段は、前記正反射光成分と前記拡散反射光成分とに基づき前記測定試料の拡散透過率及び平行光線透過率を算出し、その算出した拡散透過率及び平行光線透過率に基づき前記測定試料のヘイズ値を算出することを特徴とする。
【0011】
第3発明に係るヘイズ値測定装置は、第1発明又は第2発明において、前記検出光学系は、前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの拡散反射光を集光するとともに、前記測定試料からの正反射光を通過させる集光器と、前記集光器により集光された拡散反射光の光量を検出する第1光検出器と、前記集光器を通過した正反射光の光量を検出する第2光検出器とを有することを特徴とする。
【0012】
第4発明に係るヘイズ値測定装置は、第1発明又は第2発明において、前記検出光学系は、前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの拡散反射光を集光するとともに、前記測定試料からの正反射光を通過させる集光器と、前記集光器により集光された光を検出する光検出器と、前記集光器を通過した正反射光を前記集光器に導く正反射光光学系と、前記正反射光光学系において前記集光器に至る光路を開閉するシャッタとを有することを特徴とする。
【0013】
第5発明に係るヘイズ値測定装置は、第3発明又は第4発明において、前記集光器は、前記照射光学系により射出される測定光を内部に入射させるとともに、前記測定試料からの正反射光を外部に射出させるための入出射用開口と、前記入出射用開口から内部に入射した測定光を前記測定試料に導くための試料用開口とを有する積分球を備えることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係るヘイズ値測定装置は、第5発明において、前記集光器は、前記積分球の試料用開口を塞ぐように配設されたコリメートレンズを更に備え、前記照射光学系は、前記積分球の外部に配設された測定試料に向けて前記コリメートレンズにより前記測定光が平行光束として射出されるように当該コリメートレンズに向けて測定光を射出することを特徴とする。
【0015】
第7発明に係るヘイズ値測定方法は、透光性材料からなる測定試料のヘイズ値を測定するためのヘイズ値測定方法において、前記測定試料に向けて平行光束にした測定光を射出して、その射出した測定光による前記測定試料からの反射光の光量を検出して信号を出力し、その出力した出力信号に含まれる拡散反射光成分と正反射光成分とに基づき、前記測定試料のヘイズ値を算出することを特徴とする。
【0016】
第8発明に係るヘイズ値測定方法は、第6発明において、前記正反射光成分と前記拡散反射光成分とに基づき前記測定試料の拡散透過率及び平行光線透過率を算出し、その算出した拡散透過率及び平行光線透過率に基づき前記測定試料のヘイズ値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明〜第8発明によれば、測定試料のヘイズ値を測定するうえで、測定試料に測定光を照射して得られる反射光からヘイズ値を求めることが可能となる。このため、測定試料のヘイズ値を測定するうえで、光源、光検出器等の各種部品を測定試料の片面側に配置するのみで足りるため、測定装置全体の小型化を図ることが可能となるうえ、測定装置のレイアウトの自由度の向上を図ることが可能となる。
【0018】
特に、第4発明によれば、シャッタを開閉することによって、一つの光検出器のみを用いた場合でも反射光の正反射光成分と拡散反射光成分とのそれぞれを求めることが可能となり、そのような場合でもヘイズ値を測定することが可能となる。
【0019】
また、第6発明によれば、集光器としての積分球の試料用開口を塞ぐように配設されたコリメートレンズにより測定試料に平行光束を射出することとしているので、測定試料からの正反射光とともに拡散反射光を効果的に集光器としての積分球内に導くことが可能となる。これにより、測定試料に対してヘイズ値測定装置を接触させることなくヘイズ値を精度よく測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】透光性材料の表面に入射する入射光について、透光性材料と外部空間との間の界面や透光性材料の内部におけるふるまいを模式的に示す図である。
【図2】透光性材料の内部に入射光を入射させたときに、透光性材料の内部において正反射を繰り返す非散乱光のふるまいを模式的に示す図である。
【図3】第1実施形態に係るヘイズ値測定装置の概要を示す概要図である。
【図4】第2実施形態に係るヘイズ値測定装置の概要を示す概要図である。
【図5】従来のヘイズ値の測定装置の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用したヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明の基本的なコンセプトについて説明する。
【0023】
本発明においては、測定対象となる透光性材料のヘイズ値を求めるうえで、測定試料に光を照射して得られる測定試料からの透過光を検出するのではなく、測定試料に光を照射して得られる測定試料からの反射光を検出し、その検出結果に基づきヘイズ値を算出することとしている。
【0024】
そもそも、透光性材料のヘイズ値を求めるためには、上述の数式(1)において示すように、測定試料となる透光性材料に光を照射したときの拡散透過率及び平行光線透過率を求める必要がある。従来においては、その拡散透過率及び平行光線透過率を求めるために、測定試料からの透過光についての光量の検出値を用いることとしていた。これに対して、本発明においては、この測定試料の拡散透過率及び平行光線透過率を求めるために、測定試料からの反射光についての光量の検出値を用いることとしている。そして、本発明においては、その検出値として求められた反射光成分から透過光成分を算出して、その算出結果からヘイズ値を求めるため、以下に説明するような新たな物理モデルを用いることとしている。
【0025】
透光性材料の表面に入射する入射光が、透光性材料と外部空間との間の界面や透光性材料の内部においてどのようにふるまうか検討する。透光性材料1の表面1aに入射した入射光は、図1に示すように、その一部が透光性材料1の表面1aを正反射して反射光として外側に射出され、残りが透光性材料1の内部に侵入する。透光性材料1の内部に侵入した光は、透光性材料1内の散乱体による散乱の影響や、透光性材料内での光吸収の影響を受けながら、透光性材料1の表面1aや裏面1bにおいて正反射を繰り返しつつ、一部が透光性材料1の表面1aから外側に反射光として射出され、残りが透光性材料1の裏面1bから外側に透過光として射出される。以下においては、透光性材料1内での光吸収の影響が無視できる程度に十分小さく、外部空間での光吸収がないものと仮定して説明する。
【0026】
反射光としては、透光性材料1の表面1aに入射光が入射するときにその表面1aを正反射した表面正反射光と、透光性材料1内において正反射を繰り返した後に透光性材料1の表面1aから外側に射出された裏面正反射光と、透光性材料1内の散乱体の影響により散乱された後に透光性材料1の表面1aから外側に射出された拡散反射光とがある。以下においては、この表面正反射光と裏面正反射光とを総称して正反射光という。
【0027】
また、透過光としては、透光性材料1内において散乱することなく透光性材料1の裏面1bから外側に射出される正透過光と、透光性材料1内において散乱された後に透光性材料1の裏面1bから外側に射出される拡散透過光とがある。
【0028】
ここで、透光性材料1内の散乱体の影響により散乱された散乱光について、透光性材料1の表面1aから裏面1bに向けて散乱された散乱光を前方散乱光とし、透光性材料1の裏面1bから表面1aに向けて散乱された散乱光を後方散乱光として、それぞれの入射光に対する散乱光率(%)をSfront、Sbackとし、入射光の光量をI0とすると、透光性材料1内の散乱体により散乱された全散乱光の散乱光率Sallは、下記の式(11)により表される。なお、上述の通り、透光性材料1内での光吸収の影響は無視できるものとしている。
0×Sall=I0×Sfront+I0×Sback ・・・(11)
【0029】
ここで、透光性材料1に散乱がないと仮定したときの入射光の光量に対する正透過光の光量の割合(以下、平行光線透過率という。)をTspe(S=0)、入射光の光量に対する正反射光の光量の割合(以下、正反射率という。)をRspe(S=0)とし、散乱がある透光性材料1の平行光線透過率をTspe、正反射率をRspeとする。すると、I0×(Tspe(S=0)+Rspe(S=0))の合計値は、透光性材料1内に入射光が入射した後に透光性材料1の内部において散乱することなく外部に射出された非散乱光の全光量、即ち、入射光の光量を表しており、I0×(Tspe+Rspe)の合計値は、その入射光の光量から透光性材料1の内部での散乱により全散乱光の光量が失われた後の非散乱光の全光量を表しており、これらの関係は下記の式(12)により表される。
0×(Tspe(S=0)+Rspe(S=0))−I0×(Tspe+Rspe)=I0×Sall ・・・ (12)
【0030】
ここで、入射光の光量I0が1であるとすると、上述の式(12)におけるTspe(S=0)+Rspe(S=0)は1で表され、(Tspe+Rspe)は(Tspe+Rspe)/(Tspe(S=0)+Rspe(S=0))で表すことができる。また、Sallの値に対してTspe(S=0)、Tspeの値が無視できる程度に小さいことから、(Tspe+Rspe)/(Tspe(S=0)+Rspe(S=0))はRspe/Rspe(S=0)と表すことができる。すると、上述の式(12)は下記の式(2)により表される。

【0031】
次に、透光性材料1の表面1aに対して直交して入射した入射光が、その透光性材料1の内部で正反射を繰り返したときの、その透光性材料1の内部における非散乱光のふるまいについて考える。以下においては、この非散乱光について、透光性材料1の表面1a側から裏面1b側に向けて進むものを前方非散乱光とし、裏面1b側から表面1a側に向けて進むものを後方非散乱光として説明する。
【0032】
上述の式(12)におけるI0×(Tspe(S=0)−Tspe)の値は、従来のヘイズ値測定装置100の限界分解能となるヘイズ値(%)の小数第二位に影響を及ぼす程度の数値になることから、無視できるものとする。すると、上述の式(11)と式(12)とを組み合わせることにより、下記の式(13)が近似的に導出される。
front=Rspe(S=0)−Rspe−Sback ・・・ (13)
【0033】
また、上述の式(12)の両辺の一部の項を移項させたうえで、上述の式(11)を組み合わせると、下記の式(14)が導出される。
spe=Tspe(S=0)+Rspe(S=0)−Rspe−Sback―Sfront ・・・(14)
【0034】
そして、上述の式(13)と式(14)とから下記の式(3)が導出される。
spe=Tspe(S=0) ・・・ (3)
【0035】
次に、上述の式(2)、(3)に含まれるRspe(S=0)、Tspe(S=0)を近似的に求める方法について説明する。
【0036】
図2は、透光性材料1の内部に入射光を入射させたときにおいて、透光性材料1の内部において正反射を繰り返す非散乱光のふるまいを模式的に示す図である。なお、図2においては、説明を容易にするため、透光性材料1の表面1aに対して傾斜した方向から入射光を入射させた状態を示しているが、実際は、透光性材料1の表面1aに対して直交する方向から入射光を入射させるものとする。
【0037】
入射光が入射した後に透光性材料1の内部を直進している非散乱光を非散乱光Lf1、非散乱光Lf1が透光性材料1の裏面1bを正反射した後に直進する非散乱光を非散乱光Lb1とし、非散乱光Lb1が透光性材料1の表面1aを正反射した後に直進する非散乱光を非散乱光Lf2とする。以降においては、nを1以上の自然数としたとき、非散乱光Lfnが透光性材料1の裏面1bを正反射した後に透光性材料1内を直進する非散乱光を非散乱光Lbnとし、非散乱光Lbnが透光性材料1の表面1aを正反射した後に透光性材料1内を直進する非散乱光を非散乱光Lf(n+1)とする。また、非散乱光Lfnが透光性材料1の裏面1bを正反射せずに通過した光を透過光Tnとし、非散乱光Lbnが透光性材料1の表面1aを正反射せずに通過した光を反射光Rnとする。また、非散乱光Lfnが散乱することにより発生する散乱光をS(2n-1)とし、非散乱光Lbnが散乱することにより発生する散乱光を散乱光S2nとする。
【0038】
また、このモデルでは、透光性材料1の板厚をd(mm)としたとき、散乱体1cが透光性材料1の板厚方向中心位置d/2にあるものと仮定し、この散乱体1cにより透光性材料1内での散乱が発生するものと仮定する。また、入射光の光量I0を1と仮定する。
【0039】
非散乱光Lf1が透光性材料1の表面1aから内部に入射した直後の非散乱光Lf1の光量をLf1a、透光性材料1の内部を透過して散乱体1cに入射する直前の非散乱光Lf1の光量をLf1b、散乱体1cに入射して散乱体1cを通過した直後の非散乱光Lf1の光量をLf1c、散乱体1cから透光性材料1の裏面1bまで通過してその裏面1bを反射、透過する直前の非散乱光Lf1の光量をLf1dとし、透光性材料1の反射率をR(%)とする。すると、光量Lf1aは、下記の式(21)により表される。また、光量Lf1bは、ランバート・ベールの法則から、下記の式(22)により表される。また、光量Lf1cは、散乱光率をS(−)とすると、下記の式(23)により表される。また、光量Lf1dは、ランバート・ベールの法則から、下記の式(24)により表される。




【0040】
なお、αは透光性材料の吸収係数(m-1)であり、透光性材料の消衰係数をκ(−)、入射光の波長をλ(m)としたとき、下記の式(51)により表される。

【0041】
次に、非散乱光Lf1が透光性材料1の裏面1bを正反射した直後の非散乱光Lb1の光量をLb1a、非散乱光Lb1が透光性材料1の内部を透過して散乱体1cに入射する直前の非散乱光Lb1の光量をLb1b、散乱体1cに入射して散乱体1cを通過した直後の非散乱光Lb1の光量をLb1c、散乱体1cから透光性材料1の表面1aまで通過してその表面1aを反射、透過する直前の非散乱光Lb1の光量をLb1dとする。すると、光量Lb1aは、下記の式(25)により表される。また、光量Lb1bは、ランバート・ベールの法則から、下記の式(26)により表される。光量Lb1cは、下記の式(27)により表される。光量Lb1dは、ランバート・ベールの法則から、下記の式(28)により表される。




【0042】
また、非散乱光Lb1が透光性材料1の表面1aを正反射した直後の非散乱光Lf2の光量をLf2aとすると、光量Lf2aは、下記の式(29)により表される。

【0043】
また、反射光Rnの光量をRqnとすると、反射光R1の光量Rq1は、下記の式(30)により表される。また、反射光R2のRq2、反射光R3のRq3は、下記の式(31)、(32)によりそれぞれ表される。式(31)、(32)における光量Lb2d、Lf3a、Lb3d、Lf4aは、式(21)〜式(28)を表したのと同様の手順によって、光量Lf2a〜Lf2d、光量Lb2a〜Lb2d、光量Lf3a〜Lf3d、光量Lb3a〜Lb3d、光量Lf4aを表すことにより求められる。



【0044】
これらの式(30)〜(32)より、反射光Rnの光量Rqnは、初項をRq1とし、公比を(1−S)2×R2×e-2αdとする等比数列のn番目の項であると考えることができる。
【0045】
ここで、初項a1、公比rの等比数列anの等比級数は、−1<r<1のときに、下記の式(40)により表されることが知られている。

【0046】
すると、反射光Rnの光量Rq1、Rq2、・・・、Rqn、・・・、Rq∞の和、即ち、裏面正反射光の光量R裏面は、下記の式(41)により求められることになる。

【0047】
また、入射光の反射光、即ち、表面正反射光の光量R表面はRで表されることから、正面反射光と裏面反射光の光量の合計値、即ち、正反射光の光量Rspeは、下記の式(42)により表されることになる。

【0048】
また、透過光Tnの光量をTqnとすると、透過光T1の光量Tq1は下記の式(33)により表される。透過光T2の光量Tq2、透過光T3の光量Tq3は、下記の式(34)、(35)によりそれぞれ表される。



【0049】
これらの式(33)〜(35)より、透過光Tnの光量Tqnは、初項をTq1とし、公比を(1−S)2×R2×e-2αdとする等比数列のn番目の項であると考えることができる。すると、透過光Tnの光量Tq1、Tq2、・・・、Tqn、・・・、Tq∞の和、即ち、正透過光の光量Tspeは、下記の式(43)により表されることになる。

【0050】
以上のことから、上述の式(2)は、Rspe(S=0)を上述の式(42)から求めると、下記の式(4)により表される。

【0051】
また、上述の式(3)は、Tspe(S=0)を上述の式(43)から求めると、下記の式(5)により表される。

【0052】
ここで、前方散乱光Sfront、後方散乱光Sbackの透光性材料1の表面1a及び裏面1bでの正反射成分については、前方散乱光、後方散乱光それぞれの光強度のR倍程度となる。ここで、ヘイズ値の測定対象となる測定試料1の反射率Rは10%前後より小さいため、前方散乱光Sfront、後方散乱光Sbackの正反射成分は、ヘイズ値の測定に影響を与えない程度の大きさとなる。従って、これらの正反射成分について無視できるとすると、Sfrontは入射光の光量に対する拡散透過光の光量の割合(以下、拡散透過率という。)を表しており、Sbackは入射光の光量に対する拡散反射光の光量の割合(以下、拡散反射率という。)を表していることになる。
【0053】
すると、式(4)、(5)において、透光性材料1の反射率R、厚みd、吸収係数αが既知であるとすると、透光性材料1の正反射率Rspeと、拡散反射率Sbackがわかれば、上述の式(4)、式(5)から、平行光線透過率Tspeと、拡散透過率Sfrontとを算出することが可能となる。この正反射率Rspeや拡散反射率Sbackは、後述のように、透光性材料1の正反射光の光量や拡散反射光の光量の検出値から求めることができることから、反射光の光量を検出することにより、平行光線透過率Tspeや拡散透過率Sfrontを算出し、この算出結果に基づいて、上述の式(1)からヘイズ値を算出することができることになる。
【0054】
次に、本発明に係るヘイズ値測定装置及びヘイズ値測定方法の実施形態について説明する。
【0055】
本発明の適用対象となる測定試料1は、例えば、ガラス、光学結晶等の透光性を有する透光性材料からなるものである。測定試料1は、可視域において透光性を有する材料が対象となる。測定試料1は、その形状について特に限定するものではないが、例えば、板状、帯状、フィルム状等にしたものが対象となる。
【0056】
第1実施形態に係るヘイズ値測定装置3は、図3に示すように、測定光を射出する光源31と、光源31から射出された測定光を平行光束にして測定試料1に向けて射出する照射光学系33と、照射光学系33から測定試料1に射出された測定光による反射光の光量を検出する検出光学系40と、検出光学系40からの出力信号に基づき演算処理を行なう演算手段としてのデータ解析装置71とを備えている。
【0057】
光源31は、例えば、ハロゲンランプ等の白色光源や、レーザーダイオード等のレーザー光源が用いられる。光源31は、可視域において連続スペクトルを有する光源が用いられる。第1実施形態においては、光源31として白色光源が用いられており、測定光として白色光が射出されることになる。
【0058】
照射光学系33は、第1実施形態において、光源31から射出された測定光を平行光束として射出するコリメートレンズ35と、コリメートレンズ35から平行光束として射出された測定光の光路中に配置されたビームスプリッター36とを備えている。コリメートレンズ35から平行光束として射出された測定光は、ビームスプリッター36を透過して測定試料1に導かれる。この測定光は、第1実施形態においては、後述の集光器41としての積分球に設けられた入出射用開口41aを通して測定試料1に導かれる。照射光学系33は、測定試料1の表面1aの法線方向に対して略同一の光軸の測定光が射出されるよう構成されている。
【0059】
検出光学系40は、第1実施形態において、照射光学系33から射出された測定光による測定試料1からの拡散反射光を集光するとともに、その測定試料1からの正反射光を外部に射出する集光器41と、その集光器41により集光された拡散反射光の光量を検出する第1光検出器53と、集光器41から射出された正反射光の光量を検出する第2光検出器63とを備えている。また、検出光学系40は、第1実施形態において、集光器41から射出された正反射光を第2光検出器63に導くための正反射光光学系80を更に備えている。
【0060】
集光器41は、第1実施形態において、積分球42を備えるものとして構成されている場合を例示しているが、測定試料1からの拡散反射光を集光しつつ正反射光を外部に射出可能であればその具体的な構成について特に限定するものではない。
【0061】
積分球42は、中空球形に形成されるものであり、その内壁面は高反射率で拡散性に優れた材料から構成されている。積分球42の内壁面は、例えば、硫酸バリウムに代表される白色物質等によりコーティングする等して設けられる。これにより、測定試料1からの拡散反射光を積分球の内壁面で繰り返し反射させることによって、拡散反射光を空間的に積分して内壁面全面に均一光として照射させることが可能となる。
【0062】
積分球42は、第1実施形態において、照射光学系33により射出される測定光を内部に入射させるための入出射用開口42aと、入出射用開口42aから内部に入射した測定光を測定試料1に導くための試料用開口42bとを備えている。また、積分球42は、この他に、積分球42の内壁面において繰り返し反射した拡散反射光を第1光検出器53に導くための検出用開口42cを備えている。入出射用開口42aからは、測定試料1からの正反射光が外部に射出される。測定試料1は、第1実施形態において、試料用開口42bをその表面1aにより塞ぐように設けられる。測定試料1は、試料用開口42bに対して図示しない試料ホルダにより固定される。
【0063】
検出用開口42cには光ファイバ46の入射端が接続されており、光ファイバ46の出射端は第1分光分析装置50に接続されている。検出用開口42cから光ファイバ46を介して第1分光分析装置50に導かれた光束は、第1分光分析装置50に設けられた第1分光器51により分光された後、その第1分光分析装置50に設けられた第1光検出器53により分光された波長ごとの光量である分光スペクトルが検出される。
【0064】
正反射光光学系80は、第1実施形態において、集光器41としての積分球42の入出射用開口42aから射出された正反射光を反射するためのビームスプリッター36と、ビームスプリッター36により反射された正反射光を集光するための集光レンズ81と、集光レンズ81により集光された光束を第2分光分析装置60に導くための光ファイバ83とを備えている。正反射光光学系80の光ファイバ83を介して第2分光分析装置60に導かれた光束は、第2分光分析装置60に設けられた第2分光器61により分光された後、その第2分光分析装置60に設けられた第2光検出器63により分光された波長ごとの光量である分光スペクトルが検出される。
【0065】
第1光検出器53、第2光検出器63により検出された光量は、電気信号に変換された後に測定試料1からの拡散透過光等の分光スペクトルデータとしてデータ解析装置71に出力される。なお、第1分光器51、第2分光器61は、例えば、回折格子、プリズム、分光フィルタ等からなるものであり、第1光検出器53、第2光検出器63は、例えば、フォトダイオード、ラインセンサ等から構成される。
【0066】
データ解析装置71は、キーボード、マウス、CPU、ROM、RAM、ディスプレイ、プリンタ等を有するコンピュータとして構成されるものである。データ解析装置71は、第1分光分析装置50、第2分光分析装置60により取得した分光スペクトルデータに対してデータ解析を行なうことにより、測定試料1のヘイズ値についての情報を取得するものとして機能する。
【0067】
次に、第1実施形態に係るヘイズ値測定方法について、第1実施形態に係るヘイズ値測定装置1の動作とともに説明する。なお、以下の各ステップは、例えば、データ解析装置71のROM等に予め記憶されたプログラムをそのデータ解析装置71が実行することにより行われる。
【0068】
まず、ステップS1において、ヘイズ値測定方法を実行するために必要となる初期パラメータを設定する。上述の通り、測定試料1の反射光成分の検出値から透過光成分を算出するためには、測定試料1の反射率R、厚みd、吸収係数α等の物性の他、入射光の光量I0を予め求めておく必要がある。このため、少なくともこれらの数値については初期パラメータとして設定する。初期パラメータは、予めデータ解析装置71に記憶されたものが用いられたり、作業員がデータ解析装置71を操作して入力したものが用いられる。初期パラメータとなる測定試料1の物性は、測定試料1に応じたものが設定され、公知の値や実験により求められた値が設定される。
【0069】
初期パラメータとなる入射光の光量I0の測定方法の一例について説明する。まず、集光器41としての積分球42の試料用開口42bを測定試料1の代わりに標準白色板で塞ぐ。そして、光源31から測定光を射出し、その標準白色板に測定光を射出したときの拡散反射光の光量Lswを第1光検出器53により検出する。標準白色板に照射された光は完全に拡散反射するため、この検出した光量Lswが入射光の光量I0となる。
【0070】
また、正反射光光学系80のように、光路中にビームスプリッター36のような光束を反射させるものがある場合、その反射による光量の減少を考慮する必要がある。このため、集光器41としての積分球42の試料用開口42bを測定試料1の代わりにミラーで塞ぎ、そのミラーに測定光を射出したときの正反射光の光量Lrmを第2光検出器63により検出する。ここで、試料用開口42bを測定試料1で塞ぎ、その測定試料1に測定光を射出したときに第2光検出器63により検出される正反射光の光量をLrsとし、正反射光光学系80全体の反射率をRallとした場合、これらの関係は下記の式(61)により表される。

【0071】
上記の数式(61)を整理すると、下記の式(6)が導出される。ここで、試料用開口42bをミラーで塞いだときの正反射光の光量Lrmと、そのミラーの反射率Mとが既知であれば、正反射光光学系80全体の反射率Rallによらず、試料用開口42bを測定試料1で塞いだときの正反射光の光量Lrsから正反射率Rspeが求められる。このことから、ステップS1においては、初期パラメータとして試料用開口42bをミラーで塞いだときの正反射光の光量Lrmとミラーの反射率Mとを設定する。

【0072】
次に、ステップS2において、集光器41としての積分球42の試料用開口42bを塞ぐように測定試料1の表面1aを配置しておき、その状態で光源31から測定光を射出し、照射光学系33によってその測定光を平行光束にして測定試料1に向けて射出し、検出光学系40によってその測定光による測定試料1からの反射光の光量を検出する。第1実施形態においては、第1光検出器53により測定試料1の拡散反射光の光量Lssを検出するとともに、第2光検出器63により測定試料1の正反射光の光量Lrsを検出する。検出光学系40により検出した光量Lss、Lrsは、電気信号に変換された後にデータ解析装置71に出力される。
【0073】
次に、ステップS3において、検出光学系40により検出した反射光に含まれる正反射光成分と拡散反射光成分とに基づき測定試料1のヘイズ値を算出する。第1実施形態においては、正反射光成分として第2光検出器63により検出した正反射光の光量Lrsを用い、拡散反射光成分として第1光検出器53により検出した拡散反射光の光量Lssを用いる。ヘイズ値を算出するうえでは、第1実施形態において、正反射光の光量Lrsを式(6)に代入することにより、測定試料1の正反射率Rspeを求める。また、拡散反射光の光量Lssを入射光の光量I0で除算することによって拡散反射率Sbackを求める。そして、求めた正反射率Rspe、拡散反射率Sbackを式(4)、式(5)に代入することによって拡散透過率Sfrontと、平行光線透過率Tspeとを求める。そして、求められた拡散透過率、平行光線透過率を式(1)に代入することにより、測定試料1のヘイズ値が算出される。
【0074】
このとき、JIS K7136において、視感度を考慮してヘイズ値を測定していることから、第1実施形態においても、視感度を考慮したヘイズ値を算出するものとする。具体的には、式(4)、式(5)を用いて求められた波長毎の拡散透過率、平行光線透過率をS(λ)front、T(λ)speとし、明所視標準比視感度曲線をV(λ)としたとき、上述の式(1)の代替として、下記の式(1)´に基づき視感度を考慮したヘイズ値を算出する。

【0075】
次に、ステップS4において、必要に応じて、前ステップS3において算出したヘイズ値を記録したり、プリンタ等により出力したりする。
【0076】
以上の第1実施形態に係るヘイズ値測定装置3及びヘイズ値測定方法によれば、測定試料1のヘイズ値を測定するうえで、測定試料1に測定光を照射して得られる反射光からヘイズ値を求めることが可能となる。このため、測定試料1のヘイズ値を測定するうえで、光源31、光検出器53等の各種部品を測定試料1の片面側に配置するのみで足りるため、測定装置3全体の小型化を図ることが可能となるうえ、測定装置3のレイアウトの自由度の向上を図ることが可能となる。
【0077】
次に、第2実施形態に係るヘイズ値測定装置について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0078】
第2実施形態に係るヘイズ値測定装置3は、照射光学系33、集光器41、測定試料1の位置、検出光学系40の構成が第1実施形態に係るヘイズ値測定装置3と相違している。
【0079】
照射光学系33は、第2実施形態において、コリメートレンズ35(以下、第1コリメートレンズ35という。)とビームスプリッター36との他に、第1コリメートレンズ35と集光器41との間の光路に配置された集光レンズ37を更に備えている。
【0080】
集光レンズ37は、積分球42の入出射用開口42aにその焦点が位置するように配置されている。これにより、第1コリメートレンズ35から射出された平行光束としての測定光が焦点となる入出射用開口42aに集光される。
【0081】
集光器41は、第2実施形態において、積分球42の試料用開口42bを塞ぐように配設された第2コリメートレンズ43を更に備えている。なお、積分球42は、第2実施形態において、入出射用開口42aから試料用開口42bにかけての距離がその積分球42の直径と略一致している。
【0082】
第2コリメートレンズ43は、その焦点距離が積分球42の直径と略一致するものが用いられる。これにより、積分球42の入出射光用開口42aを焦点として集光レンズ37により集光された測定光が平行光束として測定試料1に向けて射出されることになる。このように、照射光学系33は、測定試料1に向けて第2コリメートレンズ43により測定光が平行光束として射出されるように、その第2コリメートレンズ43に向けて測定光を射出するものとして構成されている。第2コリメートレンズ43は、図示しないホルダにより固定されている。
【0083】
測定試料1は、第2実施形態において、積分球1の外部に配設されている。この測定試料1は、例えば、図示しないホルダにより固定されたり、水平面等の載置面上に静止した状態で載置された状態で配設される。
【0084】
第2コリメートレンズ43から射出された測定光による測定試料1からの正反射光は、照射光学系33の集光レンズ37から第2コリメートレンズ43に至る光路を逆向きに導かれ、集光レンズ37から平行光束として射出される。また、その測定光による測定試料1からの拡散反射光は、その大半が第2コリメートレンズ43を通り積分球42内に導かれる。
【0085】
検出光学系40は、第2実施形態において、集光器41としての積分球42の他に、集光器41から射出された正反射光を照射光学系33とは別の光路を通して集光器41に射出する正反射光光学系80と、正反射光学系80において集光器41に至る光路を開閉するシャッタ85とを備えている。
【0086】
集光器41としての積分球42は、入出射用開口42a、試料用開口42b、検出用開口42cの他に、正反射光光学系80から射出された正反射光を内部に入射させるための正反射光用開口42dを更に備えている。
【0087】
正反射光光学系80は、第2実施形態において、ビームスプリッター36の他、ビームスプリッター36により反射された正反射光を反射させる複数のミラー87を更に備えている。複数のミラー87を反射した正反射光は集光器41としての積分球42の正反射光用開口42dを通って積分球42の内部に導かれる。
【0088】
シャッタ85は、手動制御又は電気制御により開閉可能に構成されている。正反射光光学系80から射出された正反射光は、シャッタ85を開とすることにより集光器41としての積分球42内に入射され、シャッタ85を閉とすることにより集光器41としての積分球42内に入射されないことになる。これにより、シャッタ85が開の場合、第1光検出器53により反射光として正反射光成分及び拡散反射光成分の両方が検出され、シャッタ85が閉の場合、第1光検出器53により反射光として拡散反射光成分のみが検出される。
【0089】
次に、第2実施形態に係るヘイズ値測定方法について、第2実施形態に係るヘイズ値測定装置1の動作とともに説明する。なお、第1実施形態に係るヘイズ値測定方法と共通する点については、以下での説明を省略する。
【0090】
ステップS1において設定される初期パラメータとしての入射光の光量I0の測定時においては、測定試料1の配置されている位置に、測定試料1の代替として標準白色板を配置する。そして、その標準白色板に測定光を照射したときの拡散反射光の光量Lswを第1光検出器53により検出する。この検出した拡散反射光の光量Lswは、標準白色板から第2コリメートレンズ43外に反射した拡散反射光の光束が含まれていないが、測定試料1に測定光を射出したときもその光束が同様に含まれないことになるので、第2実施形態においては、その検出したものを入射光の光量I0として設定する。
【0091】
また、正反射光光学系80での反射による光量の減少を考慮するうえでは、第1実施形態と同様に、測定試料1の配置されている位置に、測定試料1の代替としてミラーを配置する。そして、シャッタ85を開とした状態で、そのミラーに測定光を射出したときの正反射光の光量Lrmを第1光検出器53により検出する。ここで、図4に示すように測定試料1を配置し、シャッタ85を開とした状態で、その測定試料1に測定光を射出したときに第1光検出器53により検出される光量をLrsaとし、シャッタ85を閉とした状態で、その測定試料1に測定光を射出したときに第1光検出器53により検出される光量をLrsbとする。すると、これらの関係は、下記の式(71)により表される。

【0092】
上記の数式(71)を整理すると、下記の式(7)が導出される。第1実施形態と同様に、ミラーに測定光を射出したときの正反射光の光量Lrmとミラーの反射率Mとを設定すれば、測定試料1に測定光を射出したときに第1光検出器53により検出される光量Lrsa、Lrsbから正反射率Rspeが求められることになる。従って、ステップS1においては、初期パラメータとして、そのミラーに測定光を射出したときの正反射光の光量Lrmとミラーの反射率Mとを設定する

【0093】
次に、ステップS2においては、光源31から測定光を射出し、照射光学系33によってその測定光を平行光束にして測定試料1に向けて射出し、検出光学系40の第1光検出器53によってその測定光による測定試料1からの反射光の光量を検出する。第2実施形態においては、シャッタ85を開とした場合の反射光の光量Lrsaと、シャッタ85を閉とした場合の反射光の光量Lrsbとについて、第1光検出器53によって検出する。光量Lrsaは正反射光成分と拡散反射光成分との両方を含んでおり、光量Lrsbは拡散反射光成分のみを含むものとなっている。
【0094】
次に、ステップS3においては、第1光検出器53からデータ解析装置71に出力された光量Lrsb、Lrsa、即ち、反射光に含まれる正反射光成分と拡散反射光成分とに基づいて、ヘイズ値を算出する。第2実施形態において、ヘイズ値を算出するうえでは、シャッタ85を開としたときの反射光の光量Lrsaと、シャッタ85を閉としたときの反射光の光量Lrsbとを式(7)に代入することによって、正反射率Rspeを求める。また、シャッタ85を閉としたときの光量Lrsbを入射光の光量I0で除算することにより拡散反射率Sbackを求める。そして、求めた正反射率Rspe、拡散反射率Sbackを式(4)、式(5)に代入することによって拡散透過率Sfrontと、平行光線透過率Tspeとを求める。そして、求めた拡散透過率Sfrontと平行光線透過率Tspeとを式(1)に代入することにより、測定試料1のヘイズ値が算出される。
【0095】
以上の第2実施形態に係るヘイズ値測定装置3及びヘイズ値測定方法によれば、シャッタ85を開閉することによって、一つの光検出器53のみを用いた場合でも反射光の正反射光成分と拡散反射光成分とのそれぞれを求めることが可能となり、そのような場合でもヘイズ値を測定することが可能となる。また、集光器41としての積分球の試料用開口41bを塞ぐように配設された第2コリメートレンズ38により測定試料1に平行光束を射出することとしているので、測定試料1からの正反射光とともに拡散反射光を効果的に集光器41としての積分球内に導くことが可能となる。これにより、測定試料1に対してヘイズ値測定装置3を接触させることなくヘイズ値を精度よく測定することが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【実施例1】
【0097】
以下、本発明の効果を実施例により更に説明する。
【0098】
実施例1では、図3に示すような第1実施形態に係るヘイズ値測定装置3と、図5に示すような従来のヘイズ値測定装置100を用いて、実際に測定試料1のヘイズ値を求め、それぞれの場合のヘイズ値を比較することとした。以下、第1実施形態に係るヘイズ値測定装置3を用いてヘイズ値を求める場合を発明例とし、従来のヘイズ値測定装置10を用いてヘイズ値を求める場合を比較例とする。
【0099】
測定試料1としては、板厚dが2.75(mm)、吸収係数αが0.005038(mm-1)、反射率Rが4.1270(%)のフロートガラスを用いることとした。また、光源31からは波長555(nm)の単色光を照射することとした。
【0100】
この結果、発明例の場合は、拡散反射率Sbackとして0.1457%、正反射率Rspeとして7.7955%との値が算出され、この算出結果から拡散透過率Sfrontとして0.2031%、平行光線透過率Tspeとして90.8019%との値が算出され、この算出結果からヘイズ値として0.223%との値が求められた。これに対して、比較例の場合はヘイズ値として0.25%との値が求められた。このように、発明例及び比較例それぞれの場合においてもヘイズ値について小数第二位の値が僅かに相違するのみであり、本発明を適用してヘイズ値を求めた場合でも従来とほぼ同等のヘイズ値を求められることが確認できた。
【符号の説明】
【0101】
1 測定試料(透光性材料)
1a 表面
1b 裏面
1c 散乱体
3 ヘイズ値測定装置
31 光源
33 照射光学系
35 コリメートレンズ(第1コリメートレンズ)
36 ビームスプリッター
37 集光レンズ
40 検出光学系
41 集光器
42 積分球
42a 入出射用開口
42b 試料用開口
42c 検出用開口
42d 正反射光用開口
43 第2コリメートレンズ
46 光ファイバ
50 第1分光分析装置
51 第1分光器
53 第1光検出器
60 第2分光分析装置
61 第2分光器
63 第2光検出器
71 データ解析装置
80 正反射光光学系
81 集光レンズ
83 光ファイバ
85 シャッタ
87 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料からなる測定試料のヘイズ値を測定するためのヘイズ値測定装置において、
測定光を射出する光源と、
前記光源から射出された測定光を平行光束にして前記測定試料に向けて射出する照射光学系と、
前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの反射光の光量を検出する検出光学系と、
前記検出光学系により検出した反射光に含まれる正反射光成分と拡散反射光成分とに基づき、前記測定試料のヘイズ値を算出する演算手段とを備えること
を特徴とするヘイズ値測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記正反射光成分と前記拡散反射光成分とに基づき前記測定試料の拡散透過率及び平行光線透過率を算出し、その算出した拡散透過率及び平行光線透過率に基づき前記測定試料のヘイズ値を算出すること
を特徴とする請求項1記載のヘイズ値測定装置。
【請求項3】
前記検出光学系は、前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの拡散反射光を集光するとともに、前記測定試料からの正反射光を外部に射出する集光器と、前記集光器により集光された拡散反射光の光量を検出する第1光検出器と、前記集光器から射出された正反射光の光量を検出する第2光検出器とを有すること
を特徴とする請求項1又は2記載のヘイズ値測定装置。
【請求項4】
前記検出光学系は、前記照射光学系から射出された測定光による前記測定試料からの拡散反射光を集光するとともに、前記測定試料からの正反射光を外部に射出する集光器と、前記集光器から射出された正反射光を別の光路を通して前記集光器に射出する正反射光光学系と、前記集光器により集光された光を検出する光検出器と、前記正反射光光学系において前記集光器に至る光路を開閉するシャッタとを有すること
を特徴とする請求項1又は2記載のヘイズ値測定装置。
【請求項5】
前記集光器は、前記照射光学系により射出される測定光を内部に入射させるとともに、前記測定試料からの正反射光を外部に射出させるための入出射用開口と、前記入出射用開口から内部に入射した測定光を前記測定試料に導くための試料用開口とを有する積分球を備えること
を特徴とする請求項3又は4記載のヘイズ値測定装置。
【請求項6】
前記集光器は、前記積分球の試料用開口を塞ぐように配設されたコリメートレンズを更に備え、
前記照射光学系は、前記積分球の外部に配設された測定試料に向けて前記コリメートレンズにより前記測定光が平行光束として射出されるように当該コリメートレンズに向けて測定光を射出すること
を特徴とする請求項5記載のヘイズ値測定装置。
【請求項7】
透光性材料からなる測定試料のヘイズ値を測定するためのヘイズ値測定方法において、
前記測定試料に向けて平行光束にした測定光を射出し、
その射出した測定光による前記測定試料からの反射光の光量を検出し、
その検出した反射光に含まれる拡散反射光成分と正反射光成分とに基づき、前記測定試料のヘイズ値を算出すること
を特徴とするヘイズ値測定方法。
【請求項8】
前記正反射光成分と前記拡散反射光成分とに基づき前記測定試料の拡散透過率及び平行光線透過率を算出し、その算出した拡散透過率及び平行光線透過率に基づき前記測定試料のヘイズ値を算出すること
を特徴とする請求項7記載のヘイズ値測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53919(P2013−53919A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192119(P2011−192119)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】